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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158551
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発電シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20241031BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20241031BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 11/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/02
H01M4/86 B
C12N11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073843
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】澤田 高志
【テーマコード(参考)】
4B033
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NB33
4B033NB63
4B033ND16
4B033ND20
4B033NE02
4B033NF10
5H018AA01
5H018AS03
5H018DD06
5H018EE05
5H018EE17
5H126AA02
5H126BB00
5H126FF03
5H126GG05
5H126GG18
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】敷設が容易であるとともに、発電規模を大きい発電シートを実現する。
【解決手段】発電シート(1)は、土壌を被覆する第1主面(11)を有するシート(10)と、第1主面(11)に設けられ、土壌に含まれる微生物が土壌に含まれる有機物を分解するときに放出する電子を取り出す負極電極(20)と、第1主面(11)に設けられ、酸素を還元する正極電極(30)と、を備える。負極電極(20)および正極電極(30)は、第1主面(11)から突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌を被覆する第1主面を有するシートと、
前記第1主面に設けられ、土壌に含まれる微生物が土壌に含まれる有機物を分解するときに放出する電子を取り出す負極電極と、
前記第1主面に設けられ、酸素を還元する正極電極と、を備え、
前記負極電極および前記正極電極は、前記第1主面から突出している、発電シート。
【請求項2】
前記シートは、平面視したときに、前記負極電極よりも前記正極電極に近い位置に位置する穴が形成されている、請求項1に記載の発電シート。
【請求項3】
前記負極電極および前記正極電極は、
吸水することにより膨張する第1材料と、
前記第1材料を内包し、導電性および通水性を有する第2材料と、を備える、請求項1に記載の発電シート。
【請求項4】
前記第1材料は、吸水ポリマーである、請求項3に記載の発電シート。
【請求項5】
前記第2材料は、カーボンフェルトである、請求項3に記載の発電シート。
【請求項6】
前記シートの、前記第1主面とは反対側の面である第2主面に、前記第2主面から突出する複数の突出部が形成されており、
前記シートは、複数の穴が形成されており、
前記複数の突出部は、隣接する前記突出部の間に形成される溝の幅が1~100nmとなるように配置されており、
前記溝は、前記複数の穴の少なくとも1つに接続している、請求項1に記載の発電シート。
【請求項7】
前記シートは、前記第1主面に、前記負極電極および前記正極電極を覆う、ゼラチンを含むゼラチン層を有している、請求項1に記載の発電シート。
【請求項8】
前記シートの、前記第1主面とは反対側の面である第2主面は、波長が600~700nmの光のみを反射する、請求項1に記載の発電シート。
【請求項9】
前記負極電極および前記正極電極が接続されたセルを複数備え、
複数の前記セルが直列に接続されている、請求項1に記載の発電シート。
【請求項10】
前記セルが直列に接続された直列構造を複数備えており、
前記直列構造のうち少なくとも2つの前記直列構造が並列に接続されている、請求項9に記載の発電シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に含まれる微生物を利用した発電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌に含まれる微生物を利用して発電する技術が知られている。例えば、特許文献1には、土もしくは泥から供給される電流発生菌を触媒として用いて発電する微生物燃料電池が開示されている。特許文献1に開示された微生物燃料電池は、土もしくは泥から供給される有機物燃料の酸化を行うアノード電極と、空気中および水中から供給される酸素の還元を行うカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に酸素透過制限層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-54106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、アノード電極および酸素透過制限層を土壌中に埋める必要があり、設置が容易ではなく、また、大規模な発電を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、敷設が容易であるとともに、発電規模を大きくすることができる発電シートを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発電シートは、土壌を被覆する第1主面を有するシートと、前記第1主面に設けられ、土壌に含まれる微生物が土壌に含まれる有機物を分解するときに放出する電子を取り出す負極電極と、前記第1主面に設けられ、酸素を還元する正極電極と、を備え、前記負極電極および前記正極電極は、前記第1主面から突出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、発電規模を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る発電シートの斜視図である。
図2】上記発電シートを土壌に設置した様子を示す図である。
図3】上記発電シートが備える負極電極の構成の一例を示す斜視図である。
図4】上記発電シートが備える回路の一部を示す回路構成図である。
図5】本発明の実施形態2に係る発電シートの斜視図である。
図6】上記発電シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態における発電シート1の斜視図である。図2は、発電シート1を土壌Sに設置した様子を示す図である。発電シート1は、土壌Sに設置されることにより発電を行うシートである。本実施形態では、図2に示すように、発電シート1を、畑などの農地に土壌Sで形成された畝を覆うように設置して使用する例について説明する。ただし、発電シート1が設置される対象は、畝に限定されるものではない。発電シート1は、土壌Sを覆うように設置されて使用されればよく、農地以外の土壌Sを覆うように設置されて使用されてもよい。
【0010】
図1および図2に示すように、発電シート1は、シート10と、負極電極20と、正極電極30と、負極タブ40と、正極タブ50とを備えている。
【0011】
シート10は、発電シート1が設置されたときに土壌Sを被覆する。本実施形態では、シート10は、畑に形成された畝を覆うマルチシートである。シート10は、発電シート1が土壌Sに設置されたときに土壌Sに面する第1主面11と、第1主面11とは反対側の面である第2主面12とを備えている。第1主面11は、発電シート1が土壌Sに設置されたときに土壌Sを覆う側の面である。シート10を構成する材料は、導電性を有しない材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンなどを用いることができる。
【0012】
第2主面12は、波長が600~700nmの光のみを反射するように構成されていてもよい。これにより、第2主面12により波長が600~700nmの光を反射させて畝に植えられた植物に照射させることができる。その結果、植物の光合成を促進することができ、大気中の二酸化炭素を削減することができる。例えば、第2主面12に構造色加工を施すことにより、波長が600~700nmの光のみを反射するように第2主面12を構成することができる。
【0013】
負極電極20および正極電極30は、シート10の第1主面11にそれぞれ複数設けられている。負極電極20は、土壌Sに含まれる微生物が土壌Sに含まれる有機物を分解するときに放出する電子を取り出す電極である。正極電極30は、負極電極20によって取り出された電子により空気中の酸素を還元する電極である。
【0014】
本実施形態における発電シート1では、負極電極20および正極電極30は、同じ構成をしている。そのため、ここでは、負極電極20の構造についてのみ説明する。なお、負極電極20と正極電極30とは異なる構成であってもよい。図1では、負極電極20と正極電極30とを区別するために、負極電極20に対してハッチングを施して図示している。
【0015】
負極電極20は、第1主面11から突出するように形成される。本実施形態における発電シート1では、図1および図2に示すように、負極電極20は、円錐台形状となっている。ただし、負極電極20および正極電極30は、円錐台形状に限られるものではなく、第1主面11から突出していれば他の形状であってもよい。負極電極20は、例えば、直方体形状であってもよいし、円錐形状であってもよいし、円柱形状であってもよい。負極電極20および正極電極30が第1主面11から突出する長さは、特に限定されるものではないが、例えば、10~30mmであってよい。
【0016】
図3は、負極電極20の構成の一例を示す斜視図である。図3に示すように、負極電極20は、吸水することにより膨張する第1材料21と、第1材料21を内包し、導電性および通水性を有する第2材料22とにより構成されていてもよい。これにより、発電シート1を土壌Sに敷設したときに、第2材料22を透過した土壌Sに含まれていた水分を第1材料21が吸水することにより、第1材料21が膨張する。その結果、負極電極20の、第1主面11からの突出長さが大きくなるため、負極電極20を土壌Sに接触させやすくなる。当該メカニズムについては、正極電極30についても同様である。また、発電シート1を敷設する前の状態における負極電極20および正極電極30を小型化できるので、発電シート1をロール状にしやすくなる。第1材料21は、吸水することにより膨張する材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、吸水ポリマーを用いることができる。第2材料22は、導電性および通水性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、カーボンフェルトを用いることができる。
【0017】
負極電極20および正極電極30は、図3に示す構成に限られるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、負極電極20および正極電極30は、導電性を有する材料のみで構成されていてもよい。導電性を有する材料としては、白金、金、ステンレスなどの金属、カーボンなどを挙げることができる。
【0018】
図1に示すように、シート10には、複数の正極電極30のそれぞれの近傍に穴60がそれぞれ形成されている。換言すれば、シート10は、平面視したときに、負極電極20よりも正極電極30に近い位置に位置する複数の穴60が形成されている。負極電極20よりも正極電極30に近い位置に穴60が形成されていることにより、穴60を介して第2主面12側から第1主面11側に空気が送られて、当該穴60の近傍に位置する正極電極30に酸素が供給される。正極電極30は、穴60を介して供給された酸素を還元することにより、正極として機能する。換言すれば、シート10を平面視したときに穴60の近傍の電極が正極電極30として機能する。
【0019】
次に、第1主面11上における負極電極20および正極電極30の配置について説明する。図1に示すように、負極電極20および正極電極30は、複数の列上に交互に配置されている。図1に示すように、発電シート1は、負極電極20と正極電極30とが接続されたセル70を複数備えている。図4は、発電シート1が備える回路の一部を示す回路構成図である。図4に示すように、複数のセル70の一部は、直列に接続されている。以降の説明では、セル70が直列に接続された構造を直列構造71と称する。発電シート1は、直列構造71を有していることにより、発電電圧を高くすることができる。また、図4に示すように、発電シート1では、直列構造71を複数備えており、当該直列構造71のうち少なくとも2つの直列構造が並列に接続されている。これにより、並列に接続された直列構造71に含まれるセル70の1つに不具合が発生した場合に、当該セル70を含む直列構造71と並列に接続されている直列構造71により電子の移送を行うことができる。その結果、発電シート1が発電不可能になる可能性を低減することができる。
【0020】
図1に示すように、負極電極20の一部は、導電性を有する負極タブ40に電気的に接続されている。負極タブ40は、図示しない外部回路に接続されており、負極電極20により取り出した電子を上記外部回路に移送する。上記外部回路は、負極タブ40によって移送された電子を用いて発電を行う。また、正極電極30の一部は、正極タブ50に電気的に接続されている。正極タブ50は、上記外部回路に接続されており、負極電極20により取り出した電子を上記外部回路から正極電極30に移送する。負極タブ40および正極タブ50を構成する材料は、導電性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボン、金属などを用いることができる。
【0021】
以上のように、発電シート1では、負極電極20および正極電極30が第1主面11から突出している。そのため、図2に示すように、負極電極20および正極電極30を土壌Sに埋めることなく、負極電極20および正極電極30を土壌Sに接触させて発電することができる。これにより、発電シート1の敷設(設置)が容易になるとともに、発電シート1を大面積で敷設することができるので発電規模を大きくすることができる。
【0022】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0023】
図5は、本実施形態における発電シート1Aの斜視図である。図6は、発電シート1Aの断面図である。図5および図6に示すように、発電シート1Aは、実施形態1におけるシート10に代えてシート10Aを備えている。シート10Aは、実施形態1におけるシート10の構成に加えて、複数の突出部80およびゼラチン層90を備えている。
【0024】
突出部80は、図5および図6に示すように、シート10Aの第2主面12から突出している。第2主面12に突出部80が設けられていることにより、第2主面12側においてシート10Aの表面積が大きくなる。これにより、第2主面12側において空気中の水分を収集することができる。第2主面12からの突出部80の突出長さは、例えば、10~30mmであってよい。本実施形態における突出部80は、発電シート1Aを平面視したときに略矩形状になっている。ただし、突出部80の形状はこれに限られるものではなく、他の形状であってもよい。
【0025】
突出部80の間には、溝81が形成される。溝81の幅は、1~100nmとなっている。換言すれば、発電シート1Aでは、複数の突出部80が、隣接する突出部80の間に形成される溝81の幅が1~100nmとなるように配置されている。溝81は、シート10Aに設けられた穴60のいずれかに接続されている。これにより、突出部80によって回収した水を毛細管現象により、穴60に送ることができる。溝81によって穴60まで送られた水は、穴60を通って第1主面11側に移動する。その結果、第1主面11側に設けられた、負極電極20および正極電極30で生じる酸化還元反応における電子移動経路を増やすことができる。これにより、例えば、土壌Sに水分が少ない荒地などにおいても、発電効率の低下を低減することができる。
【0026】
ゼラチン層90は、ゼラチンを含む層である。ゼラチン層90は、図6に示すように、シート10Aの第1主面11に積層されている。ゼラチン層90は、負極電極20および正極電極30を覆っている。ゼラチン層90は、ゼラチンを含むことにより微生物を培養することができる。例えば、ゼラチン層90によって土壌Sに含まれる有機物を分解する微生物(発電微生物)を培養することにより、発電効率を向上させることができる。他の例として、ゼラチン層90によって植物の生育を促進する微生物、および/または、窒素肥料を生成する微生物を培養することにより、植物の成長を促進させることができる。
【0027】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る発電シートは、土壌を被覆する第1主面を有するシートと、前記第1主面に設けられ、土壌に含まれる微生物が土壌に含まれる有機物を分解するときに放出する電子を取り出す負極電極と、前記第1主面に設けられ、酸素を還元する正極電極と、を備え、前記負極電極および前記正極電極は、前記第1主面から突出している。
【0028】
本開示の態様2に係る発電シートは、上記態様1において、前記シートは、平面視したときに、前記負極電極よりも前記正極電極に近い位置に位置する穴が形成されていてもよい。
【0029】
本開示の態様3に係る発電シートは、上記態様1または2において、前記負極電極および前記正極電極は、吸水することにより膨張する第1材料と、前記第1材料を内包し、導電性および通水性を有する第2材料と、を備えていてもよい。
【0030】
本開示の態様4に係る発電シートは、上記態様3において、前記第1材料は、吸水ポリマーであってもよい。
【0031】
本開示の態様5に係る発電シートは、上記態様3または4において、前記第2材料は、カーボンフェルトであってもよい。
【0032】
本開示の態様6に係る発電シートは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記シートの、前記第1主面とは反対側の面である第2主面に、前記第2主面から突出する複数の突出部が形成されており、前記シートは、複数の穴が形成されており、前記複数の突出部は、隣接する前記突出部の間に形成される溝の幅が1~100nmとなるように配置されており、前記溝は、前記複数の穴の少なくとも1つに接続していてもよい。
【0033】
本開示の態様7に係る発電シートは、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記シートは、前記第1主面に、前記負極電極および前記正極電極を覆う、ゼラチンを含むゼラチン層を有していてもよい。
【0034】
本開示の態様8に係る発電シートは、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記シートの、前記第1主面とは反対側の面である第2主面は、波長が600~700nmの光のみを反射する構成であってもよい。
【0035】
本開示の態様9に係る発電シートは、上記態様1から8のいずれかにおいて、前記負極電極および前記正極電極が接続されたセルを複数備え、複数の前記セルが直列に接続されていてもよい。
【0036】
本開示の態様10に係る発電シートは、上記態様9において、前記セルが直列に接続された直列構造を複数備えており、 前記直列構造のうち少なくとも2つの前記直列構造が並列に接続されていてもよい。
【0037】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1、1A 発電シート
10、10A シート
11 第1主面
12 第2主面
20 負極電極
21 第1材料
22 第2材料
30 正極電極
60 穴
70 セル
71 直列構造
80 突出部
81 溝
90 ゼラチン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6