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特開2024-158553医療用切削器械、及び、カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158553
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】医療用切削器械、及び、カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/05 20060101AFI20241031BHJP
   A61C 1/08 20060101ALI20241031BHJP
   A61C 1/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61C1/05 A
A61C1/08 Z
A61C1/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073845
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大和
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052BB03
4C052CC02
4C052CC12
4C052CC21
4C052CC27
(57)【要約】
【課題】ステンレス鋼のような慣性モーメントが大きい材料を用いたタービンロータと、スピンドルと、を固定する接合部の固着力を高め、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる、医療用切削器械、及び、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジを提供する。
【解決手段】タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、中空内部に切削工具が挿入可能であり、回転部は、タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、接合部は、タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方の溝が周方向と平行である、医療用切削器械。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジであって、
前記回転部を備える、カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、カートリッジ。
【請求項8】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項9】
請求項8に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科や外科診療に用いる医療用切削器械、及び、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアタービンハンドピース等の医療用切削器械が知られている。例えば、歯科の診療においては、ヘッドにダイヤモンドポイントバーやカーバイドバー、ファイル、リーマ等の切削工具を取り付けたエアタービンハンドピースやマイクロモータハンドピース等の各種の医療用切削器械が使用されている。例えば、特許文献1には、医療用切削器械であるエアタービンハンドピースが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のエアタービンハンドピースは、ヘッド部にタービンロータとスピンドルが収容されている。スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、軸受を介してヘッド部に軸支されている。そして、タービンロータはスピンドルの外周面に固定され、スピンドルの中空内部には切削工具が挿入される。
【0004】
この種のエアタービンハンドピースでは、成型時における加工の容易さの観点から、タービンロータは、従来からアルミニウムで形成されることが一般的であった。
【0005】
一方で、特許文献2に記載の歯科用エアータービンでは、回転部(タービンロータ)がステンレス鋼で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-174901号公報
【特許文献2】特開2005-000311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなステンレス鋼で形成されたタービンロータは、慣性モーメントが大きいため、切削負荷が入力された場合にタービンロータとスピンドルとを固定する接合部に大きな負荷がかかるという課題があった。これにより、発熱や切削工具の着脱不良などによる不具合が生じる恐れがあった。
【0008】
また、慣性モーメントが大きい材料を用いたタービンロータは、高圧エアを供給を停止した際に回転が停止するまでの惰性回転が長いという欠点があった。
【0009】
本発明は、ステンレス鋼のような慣性モーメントが大きい材料を用いたタービンロータと、スピンドルと、を固定する接合部の固着力を高め、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる、医療用切削器械、及び、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する、医療用切削器械である。
【0011】
本発明の第2態様は、
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステンレス鋼のような慣性モーメントが大きい材料を用いたタービンロータとスピンドルとを固定する接合部の固着力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の回転部を備えるエアタービンハンドピースのヘッド部の断面図である。
図2】本発明の回転部の概略(タービンロータの断面とスピンドルの側面)図である。
図3a】本発明のタービンロータの断面図である。
図3b】本発明のタービンロータの斜視図である。
図4a】本発明のスピンドルの側面図である。
図4b】本発明のスピンドルの断面図である。
図5a】本発明の回転部の接合部における溝が交差する概略図である。
図5b図5aの溝近傍の拡大図である。
図6】本発明のエアタービンハンドピースのヘッド部に収容されるカートリッジのを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の医療用切削器械、及び、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジの一例としてのエアタービンハンドピースの実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態としてのエアタービンハンドピース1について、図1図5を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のエアタービンハンドピース1は、エアタービンハンドピース1の本体部分であるハンドピース本体10と、ハンドピース本体10の先端部分に設けられたヘッド部20と、を備える。ヘッド部20には、切削工具30が挿抜可能に取り付けられる。ヘッド部20には、エアタービンハンドピース1を用いて切削する切削対象等に応じて、複数種類の切削工具30が取り付け可能であってもよい。
【0017】
ヘッド部20に取り付けられる切削工具30の一端部には、円筒形状を有するシャフト部31が形成されている。切削工具30は、シャフト部31がヘッド部20に挿入されることによって、ヘッド部20に取り付けられる。切削工具30の一端部(すなわち、シャフト部31の先端部)は、ヘッド部20に収容され、切削工具30の他端部は、ヘッド部20から外部に突出している。
【0018】
ここで、本明細書等では、説明を簡潔且つ明確にするために、ヘッド部20に切削工具30が取り付けられたエアタービンハンドピース1における切削工具30のシャフト部31の軸方向を便宜上、X方向と定義する。そして、切削工具30の一端部(すなわち、シャフト部31の先端部)側をX1側、切削工具30の他端部側をX2側と定義する。また、特に断りなく、軸方向、周方向、径方向というときは、シャフト部31の軸方向を基準とした方向をいう。
【0019】
したがって、切削工具30のX1側端部にシャフト部31が形成されている。そして、切削工具30は、X1側端部がヘッド部20に収容され、X2側端部がヘッド部20からX2方向に突出している。
【0020】
ヘッド部20は、X1側が開口した有底略円筒形状を有するメインハウジング21と、メインハウジング21のX1側に開口した開口部を閉塞するヘッドキャップ22と、を備える。ヘッド部20には、メインハウジング21とヘッドキャップ22とによって囲まれた内部収容空間200が形成される。
【0021】
ヘッド部20の内部収容空間200には、X方向に延在する中空の略円筒形状を有するスピンドル41と、スピンドル41の外周面に接着剤により固定されたタービンロータ42と、スピンドル41の内周面に支持されたチャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材511及び512と、がモジュール化されたカートリッジ40が収容されている。本実施形態では、カートリッジ40は、ヘッド部20に対して着脱可能となっている(図6参照)。したがって、ヘッド部20に取り付けるカートリッジ40を交換することによって、スピンドル41、タービンロータ42、チャック機構部44、第1軸受451、第2軸受452、シール部材511及び512を、交換可能となっている。また、ヘッド部20には、エアタービンハンドピース1を用いて切削する切削対象等に応じて、複数種類のカートリッジ40が取り付け可能であってもよい。
【0022】
ヘッドキャップ22は、メインハウジング21に内嵌合して固定される略環状の外側部材221と、外側部材221の内周面に固定される略環状の内側部材222と、を有する。また、ヘッドキャップ22のX1側には、メインハウジング21及びヘッドキャップ22に対してX方向に変位可能なプッシュボタン23が設けられている。プッシュボタン23は、カートリッジ40のチャック機構部44と接続する。また、プッシュボタン23とヘッドキャップ22との間には、コイルばね24が取り付けられており、プッシュボタン23は、コイルばね24によって、ヘッドキャップ22に対してX1側に付勢されている。
【0023】
スピンドル41のX1側端部は、第1軸受451に回動自在に軸支されている。スピンドル41のX2側端部は、第2軸受452に回動自在に軸支されている。第1軸受451は、Oリング491を介してヘッドキャップ22の内側部材222の内周面に固定されており、第2軸受452は、Oリング492を介してメインハウジング21の内周面に固定されている。
【0024】
タービンロータ42は、スピンドル41の外周面に嵌合する略円筒形状の回転シャフト部421と、回転シャフト部421の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部422と、を有する。回転シャフト部421とタービンブレード部422とは、同一材料で一体に成型されていてもよいし、別材料で形成され接合により一体化されていてもよい。本実施形態では、回転シャフト部421とタービンブレード部422とは、同一材料で一体に成型されている。タービンロータ42が回転すると、スピンドル41もタービンロータ42と一体に回転する。
【0025】
チャック機構部44は、中空の略円筒形状を有し、スピンドル41の内周面に嵌合して支持されているチャック部441と、スピンドル41のX1側端部に設けられ、チャック部441を動作させるプッシャ442と、を備える。切削工具30は、スピンドル41に対して径方向に位置ずれしないようにチャック部441に支持される。
【0026】
プッシャ442は、スピンドル41の内周面に嵌合してX方向にスライド可能に支持されている。プッシャ442は、チャック部441を動作させて、切削工具30のシャフト部31のX1側端部がチャック部441に保持されている状態と、チャック部441に保持されていない状態とを切り替える。
【0027】
ユーザが、プッシュボタン23をX2側に押圧すると、プッシュボタン23と接続するプッシャ442が、X2側にスライドする。チャック部441は、開状態と閉状態とを切り替え可能であり、通常時は閉状態となっている。そして、チャック機構部44は、ユーザによるプッシュボタン23のX2側への押圧操作によってプッシャ442がX2側にスライドすると、チャック部441が開状態となる。
【0028】
切削工具30をヘッド部20に取り付ける場合、ユーザがプッシュボタン23をX2側に押すことで、プッシャ442がX2側にスライドしてチャック部441が開状態に維持され、切削工具30を受け入れ可能な状態となる。そして、チャック部441を開状態に維持した状態で、切削工具30のシャフト部31をX2側からスピンドル41の中空内部に挿入して、切削工具30のシャフト部31の先端をチャック機構部44に突き当てる。そして、切削工具30のシャフト部31の先端をチャック機構部44に突き当てた状態でユーザがプッシュボタン23を離すと、プッシャ442がX1側にスライドしてチャック部441は、切削工具30のシャフト部31を保持した状態で閉状態となり、切削工具30は、チャック機構部44に保持された状態が維持され、カートリッジ40を介してヘッド部20に取り付けられる。これにより、切削工具30は、スピンドル41及びタービンロータ42と一体に回転可能となる。
【0029】
切削工具30をヘッド部20から取り外す場合、切削工具30がチャック部441に保持された状態でユーザがプッシュボタン23をX2側に押すことで、プッシャ442がX2側にスライドしてチャック部441が開状態となり、切削工具30を取り外し可能な状態となる。そして、ユーザがプッシュボタン23をX2側に押したまま切削工具30をX2側に引き出すことで、切削工具30は、チャック機構部44から抜脱し、ヘッド部20から取り外される。
【0030】
ハンドピース本体10は、タービンロータ42の作動気体である高圧エア(圧縮空気)をヘッド部20に供給する不図示の供給ダクトと、ヘッド部20に供給された高圧エアを外部に排出する不図示の排出ダクトと、を備える。なお、ヘッド部20に供給された高圧エアは、排出ダクトからだけではなく、後述するシール部材511、512の接触片511b、512bとスピンドル41の外周面との間に生じる隙間からも、外部に排出される。
【0031】
供給ダクトから供給される高圧エアは、カートリッジ40に供給されて、タービンロータ42のタービンブレード部422に噴射される。タービンロータ42のタービンブレード部422が高圧エアを受けることで、タービンロータ42が回転する。これにより、タービンロータ42と一体に、スピンドル41と切削工具30とが回転する。
【0032】
タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されている。そして、タービンロータ42が直径10[mm]×軸方向長さ3.2[mm]で8枚のブレードを備える場合、タービンロータ42の慣性モーメントは、ステンレス鋼で形成されている場合、10.8[g・mm2]となる。参考として、同形状のタービンロータがアルミニウムで形成されている場合、タービンロータの慣性モーメントは、3.7[g・mm2]となる。
【0033】
このように、タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されていることによって、タービンロータ42の慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エア供給開始時に、タービンロータ42の回転速度が急上昇することを低減でき、第1軸受451及び第2軸受452にかかる負荷を低減できる。また、タービンロータ42の回転時に、切削工具30を介してタービンロータ42に切削負荷が入力された場合に、タービンロータ42が失速して切削工具30の切削力が低下することを抑制できる。
【0034】
さらに、タービンロータ42は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が、20以上となっており、一般に、ヤング率が異なる同一形状のものに同一の力が働く場合、ヤング率が大きいものほど変形が少ない。そして、密度が異なる同一形状のものに同一の回転を与えた場合、密度が大きいものほど物体に働く力が大きい。したがって、ヤング率が大きく密度が低いものほど回転による変形量が小さい。本実施形態では、タービンロータ42は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上となっているので、タービンロータ42を高速回転してもタービンロータ42の変形量を小さくすることができる。そのため、タービンロータ42を高速回転しても、回転シャフト部421の内径が拡大することを抑制でき、タービンロータ42とスピンドル41との固定が緩むことを防止できる。
【0035】
さらに、エアタービンハンドピース1において、重心位置をヘッド部20に近づけることができるので、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されてタービンロータ42が回転しているときに、タービンロータ42の固有振動数が高くなる。これにより、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されてタービンロータ42が回転しているときに、タービンロータ42から生じる不快音を低減できる。
【0036】
本実施形態では、タービンロータ42は、ステンレス鋼で形成されている。より詳細には、本実施形態では、タービンロータ42は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303で形成されている。
【0037】
このように、タービンロータ42は、加工が容易な材料であるステンレス鋼で形成されているので、タービンロータ42を容易に成型することができる。
【0038】
また、タービンロータ42は、熱水洗浄しても腐食しにくい材料であるオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているので、耐食性に優れる。そのため、アルマイトを皮膜する等、タービンロータ42に耐食性を向上させる表面処理を行うことが不要となる。
【0039】
タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、従来のアルミニウムに比べて慣性モーメントが大きいため、タービンロータ42の回転時の慣性力も大きくなる。そのため、切削負荷が入力された際に、切削工具30を通じて、スピンドル42に停止がかかり、回転部4の接合部46に回転方向と反対方向の負荷が生じる。接合部46のタービンロータ42とスピンドル41の固着力が弱まると、切削負荷が入力されるような軸方向に負荷が働いた場合にスピンドル41が容易に軸方向に移動してしまい、発熱や切削工具の着脱不良などによる不具合が生じる恐れがある。
【0040】
図2に示すように、タービンロータ42とスピンドル41からなる回転部4において、スピンドル41の外周面415とタービンロータ42の内周面425とが接着剤により固定される接合部46を有する。また、図3に示すように、タービンロータ42の内周面425には周方向と平行な溝426が軸方向に一定の間隔で形成されており、図4に示すように、スピンドル41の外周面415にはらせん状のネジ溝である溝416が形成されている。なお、本実施形態では、タービンロータ42の内周面425又はスピンドル41の外周面415の双方に溝を有しているが、少なくともどちらか一方に溝を有していればよい。
【0041】
このように、接合部46は、タービンロータ42の内周面425の溝426とスピンドル41の外周面415の溝416とを有するので、溝426、416に接着剤が作用し、樹脂化することで、接合部46の固着力を高めることができる。これにより、タービンロータ42がスピンドル41から脱落することを防止する。
【0042】
本実施形態では、タービンロータ42の内周面425の溝426と、スピンドル41の外周面415の溝416とが、互いに交差している。なお、タービンロータ42の内周面425の溝426とスピンドル41の外周面415の溝416との交差に制限はなく、例えば、それぞれを右方向及び左方向の逆方向のネジ溝にすることで互いに交差させてもよい。これにより、接合部46における溝426と溝416が交差する部分で樹脂化した接着剤がクサビとして作用し、接合部46の固着力をさらに高めることができ、タービンロータ42がスピンドル41から外れることを防止する。
【0043】
図5に示すように、回転部4の接合部46において、タービンロータ42の内周面425に周方向と平行な溝426と、スピンドル41の外周面415にらせん状のネジ溝である溝416とが、互いに交差している。タービンロータ42の内周面425の溝426を周方向と平行にしているため、回転時に周方向に過大な負荷が働いた場合に溝426の外周方向の接着が優先して外れ、接合部46の全体で樹脂化した接着剤の脱離を防止する。溝426の外周方向の接着が外れることで、軸方向でのタービンロータ42とスピンドル41との脱落を防止する。本実施形態では、タービンロータ42の内周面425の溝426を周方向と平行な溝としたが、本発明ではこれに限定されず、スピンドル41の外周面415の溝416を周方向と平行な溝としてもよい。
【0044】
本実施形態で使用される接着剤としては、アクリル系粘着剤であり、好ましくは、アクリル樹脂系嫌気性接着剤であり、さらに好ましくは、ロックタイト(登録商標)648である。
【0045】
第1軸受451は、互いに向かい合う内輪451a及び外輪451bと、内輪451a及び外輪451bの向かい合った隙間に位置するボール451cと、を有する。
【0046】
第1軸受451の外輪451bのX1側端部には、径方向内側に延出してシール部材511をX2側から支持する挟持部451dが形成されている。
【0047】
第1軸受451の外輪451bのX2側端部には、径方向外側に延出してOリング491をX2側から支持する延出部451eが形成されている。
【0048】
第1軸受451の内輪451aの内側には、内輪開口451a1が開口している。この内輪開口451a1は、スピンドル41の外周面に固定される。したがって、内輪451aは、スピンドル41と共に回転する。
【0049】
第1軸受451の外輪451bのX1側には、シール保持部材521が取り付けられている。シール保持部材521は、第1軸受451の外輪451bの外周面に係止される。シール保持部材521は、第1軸受451の外輪451bのX1側の面と対向するベース部521aと、ベース部521aからX1側に延出してシール部材511をX1側から支持する挟持部521bと、ベース部521aからX2側に延出してOリング491をX1側から支持し、第1軸受451の外輪451bの外周面に係止する係止部521cと、が形成されている。
【0050】
シール部材511は、弾性材料で形成されている。シール部材511は、例えば、シリコンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。なお、シール部材511は、シリコンゴム及びフッ素ゴム以外の弾性材料で形成されていてもよい。シール部材511は、スピンドル41の外周面を取り囲み、中心部分が開口したリング形状を有している。シール部材511は、もっとも厚さがある外周部511aと、この外周部511aの内縁部からリングの中心方向へと延びる接触片511bと、を備える。接触片511bは、外周部511aよりも弾性率が低く弾性変形しやすい部分となっている。シール部材511において、接触片511bよりさらにリングの中心部分は、リング開口511cが開口している。
【0051】
シール部材511の外周部511aは、X1側がシール保持部材521の挟持部521bに支持され、X2側が第1軸受451の挟持部451dに支持され、シール保持部材521の挟持部521bと、第1軸受451の挟持部451dとによって挟持されている。
【0052】
シール部材511の接触片511bは、シール保持部材521の挟持部521bの内周面とスピンドル41の外周面とに囲まれた空間に配置されている。そして、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、接触片511bは、スピンドル41の外周面に接触した状態となる。
【0053】
また、シール部材511のリング開口511cの口径は、スピンドル41の外周面の直径より小さく構成されている。したがって、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、シール部材511の接触片511bは、X1側に湾曲し、弾性力による接触圧で、スピンドル41の外周面と接触する。なお、接触片511bがスピンドル41の外周面と接触する位置は、リング開口511cの開口縁である。
【0054】
このように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されておらず、タービンロータ42が回転していないときは、スピンドル41の外周面にシール部材511の接触片511bが当接して、ヘッドキャップ22とスピンドル41との間の隙間を塞いだ状態(シールした状態)となる。
【0055】
これにより、カートリッジ40の内部に、唾液や血液等の異物の侵入を防止することができる。
【0056】
第2軸受452は、互いに向かい合う内輪452a及び外輪452bと、内輪452a及び外輪452bの向かい合った隙間に位置するボール452cと、を有する。
【0057】
第2軸受452の外輪452bのX2側端部には、径方向内側に延出してシール部材512をX1側から支持する挟持部452dが形成されている。
【0058】
第2軸受452の外輪452bのX1側端部には、径方向外側に延出してOリング492をX1側から支持する延出部452eが形成されている。
【0059】
第2軸受452の内輪452aの内側には、内輪開口452a1が開口している。この内輪開口452a1は、スピンドル41の外周面に固定される。したがって、内輪452aは、スピンドル41と共に回転する。
【0060】
第2軸受452の外輪452bのX2側には、シール保持部材522が取り付けられている。シール保持部材522は、第2軸受452の外輪452bの外周面に係止される。シール保持部材522は、第2軸受452の外輪452bのX2側の面と対向するベース部522aと、ベース部522aからX2側に延出してシール部材512をX2側から支持する挟持部522bと、ベース部522aからX1側に延出してOリング492をX2側から支持し、第2軸受452の外輪452bの外周面に係止する係止部522cと、が形成されている。
【0061】
シール部材512は、弾性材料で形成されている。シール部材512は、例えば、シリコンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。なお、シール部材512は、シリコンゴム及びフッ素ゴム以外の弾性材料で形成されていてもよい。シール部材512は、スピンドル41の外周面を取り囲み、中心部分が開口したリング形状を有している。シール部材512は、もっとも厚さがある外周部512aと、この外周部512aの内縁部からリングの中心方向へと延びる接触片512bと、を備える。接触片512bは、外周部512aよりも弾性率が低く弾性変形しやすい部分となっている。シール部材512において、接触片512bよりさらにリングの中心部分は、リング開口512cが開口している。
【0062】
シール部材512の外周部512aは、X1側が第2軸受452の挟持部452dに支持され、X2側がシール保持部材522の挟持部522bに支持され、第2軸受452の挟持部452dと、シール保持部材522の挟持部522bとによって挟持されている。
【0063】
シール部材512の接触片512bは、シール保持部材522の挟持部522bの内周面とスピンドル41の外周面とに囲まれた空間に配置されている。そして、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、接触片512bは、スピンドル41の外周面に接触した状態となる。
【0064】
また、シール部材512のリング開口512cの口径は、スピンドル41の外周面の直径より小さく構成されている。したがって、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、シール部材512の接触片512bは、X2側に湾曲し、弾性力による接触圧で、スピンドル41の外周面と接触する。なお、接触片512bがスピンドル41の外周面と接触する位置は、リング開口512cの開口縁である。
【0065】
このように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されておらず、タービンロータ42が回転していないときは、スピンドル41の外周面にシール部材512の接触片512bが当接して、メインハウジング21とスピンドル41との間の隙間を塞いだ状態(シールした状態)となる。
【0066】
これにより、カートリッジ40の内部に、唾液や血液等の異物の侵入を防止することができる。
【0067】
ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されると、内部収容空間200の気圧が高くなり、タービンロータ42が所定速度以上で回転すると、内部収容空間200からエアが、第1軸受451を通ってシール部材511の接触片511bが配置されている空間に漏れ出し、第2軸受452を通ってシール部材512の接触片512bが配置されている空間に漏れ出す。
【0068】
すると、シール部材511の接触片511bは、シール部材511の接触片511bが配置されている空間に漏れ出したエアによって、スピンドル41の径方向外側に押し広げられ、シール部材511の接触片511bがスピンドル41の外周面から離隔し、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との間に隙間が生じる。
【0069】
同様に、シール部材512の接触片512bは、シール部材512の接触片512bが配置されている空間に漏れ出したエアによって、スピンドル41の径方向外側に押し広げられ、シール部材512の接触片512bがスピンドル41の外周面から離隔し、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との間に隙間が生じる。
【0070】
前述したように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、タービンロータ42のタービンブレード部422が高圧エアを受けることで、タービンロータ42が回転し、タービンロータ42と一体にスピンドル41と切削工具30とが回転する。そして、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との間、及び、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との間、に隙間が生じるので、スピンドル41は、シール部材511の接触片511b、及び、シール部材512の接触片512bとの接触抵抗がなく、回転しやすい状態となる。
【0071】
一方、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されて、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30が一体回転している状態から、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止すると、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転速度が減速するとともに、シール部材511の接触片511bが配置されている空間、及び、シール部材512の接触片512bが配置されている空間、に漏れ出すエアが減少し、タービンロータ42の回転速度が所定速度以下になると、スピンドル41の径方向外側に押し広げられていたシール部材511の接触片511b、及び、シール部材512の接触片512bが、スピンドル41の外周面と接触した状態に戻る。そして、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との接触抵抗と、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との接触抵抗とによって、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転が制動される。このようにして、シール部材511及び512は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する、クイックストップ機構としても機能する。これにより、シール部材511及び512は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したあと、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を短時間で停止することができる。
【0072】
また、エアタービンハンドピース1は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動するクイックストップ機構としても機能するシール部材511及び512を備えるので、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したあと、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を短時間で停止することができる。
【0073】
本実施形態では、第1軸受451のX1側、及び、第2軸受452のX2側の双方にシール部材511及び512が設けられているので、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する制動力をより大きくすることができる。
【0074】
また、シール部材511及び512が、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動するクイックストップ機構として機能するので、部品点数を増やすことなくクイックストップ機構を設けることができる。
【0075】
また、エアタービンハンドピース1は、使用前にヘッド部20に潤滑剤を注入してから使用する。したがって、エアタービンハンドピース1は、ヘッド部20の内部の各部品に潤滑剤が皮膜した状態で使用される。例えば、まず、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に潤滑剤を十分に注入して、ヘッド部20の内部の各部品に付着した汚れを除去するとともに、ヘッド部20の内部の各部品に潤滑剤が皮膜している状態とし、その後、余分な潤滑剤を除去してからエアタービンハンドピース1を使用する。
【0076】
これにより、汚れの付着によるヘッド部20の内部の各部品の不良を防止することができるとともに、第1軸受451及び第2軸受452の摩耗を防止できる。また、エアタービンハンドピース1の使用時は、スピンドル41の外周面415、及び、シール部材511、512も潤滑剤が皮膜しているので、エアタービンハンドピース1の使用時において、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30が一体回転している状態から、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止し、シール部材511、512の接触片511b、512bとスピンドル41の外周面との接触抵抗によって、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する際に、シール部材511、512の接触片511b、512bが摩耗することを抑制できる。
【0077】
前述したとおり、シール部材からなるクイックストップ機構を備えているので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合に生じる長時間の惰性回転を短時間で停止することができる。一方で、クイックストップ機構のシール部材511、512がスピンドル41の外周面に接触した際には急ブレーキがかかり、回転部4の接合部46にはさらなる負荷が生じるが、溝426及び/又は溝416により固着力を高めた接合部46となっているので、タービンロータ42とスピンドル41との脱落を防止することができる。
【0078】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。以下、第1実施形態のエアタービンハンドピース1との相違点について詳細に説明する。
【0079】
第2実施形態は、第1実施形態におけるエアタービンハンドピース1のタービンロータ42の材料を限定していない点で相違する。
【0080】
これによりタービンロータ42の材料を従来のアルミニウムとした場合においても、タービンロータ42の内周面425の溝426及びスピンドル41の外周面415の溝416に接着剤が作用し、樹脂化することで、接合部46の固着力を高めることができる。
【0081】
以上、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0082】
例えば、第1実施形態のタービンロータ42において、ステンレス鋼に代えて、例えば、チタン等の金属を用いてもよい。
【0083】
また、例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、シール部材511、512は第1軸受451のX1側に複数個及び/又は第2軸受452のX2側に複数個設けられていてもよい。シール部材511及び512の数を増やすことで、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する制動力をさらに大きくすることができる。
【0084】
また、例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、スピンドル41と、タービンロータ42と、チャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材511、512とは、ヘッド部20に対して着脱可能なカートリッジ40としてモジュール化されているものとしたが、スピンドル41と、タービンロータ42と、チャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材511、512とは、モジュール化されていなくてもよい。
【0085】
また、例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、シール部材511、512は、カートリッジ40のシール保持部材521、522に固定されているものとしたが、シール部材511、512は、第1軸受451及び/又は第2軸受452に設けられていてもよい。
【0086】
また、例えば、第1実施形態において、タービンロータ42を慣性モーメントが大きい材料としたが、タービンロータ42は、タービンロータ42のX1側の面と、X2側の面とに、X方向に設けられる一対のウエイトを設けてもよい。ウエイトは、タービンロータ42の材料よりも密度の高い材料で形成されている。一対のウエイトは、いずれも、タービンロータ42の回転軸心を中心とするリング形状であり、スピンドル41の外周面に嵌合するように形成されるため、後付けが可能である。
【0087】
また、例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、タービンロータ42の内周面425には周方向と平行な溝426が軸方向に一定の間隔で形成されており、スピンドル41の外周面415にはらせん状のネジ溝である溝416が形成されているが、溝426、416の形状、大きさ、角度、深さ、間隔等に制限はなく、溝426、416において、接着剤が作用し、樹脂化することで、接合部46の固着力を高めることができればよい。
【0088】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0089】
(1) タービンロータ(タービンロータ42)と、スピンドル(スピンドル41)と、を有する回転部(回転部4)を備える医療用切削器械(エアタービンハンドピース1)であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面(内周面425)と前記スピンドルの外周面(外周面415)が接着剤により固定される接合部(接合部46)を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝(溝416、426)を有する、医療用切削器械。
【0090】
(1)によれば、慣性モーメントが大きい材料である密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されたタービンロータと、スピンドルとを固定する接合部の固着力を高め、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0091】
(2) (1)に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【0092】
(2)によれば、接合部のタービンロータの内周面及びスピンドルの外周部の双方に溝を有することで、接合部の固着力をさらに高めることができる。
【0093】
(3) (2)に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【0094】
(3)によれば、接合部のタービンロータの内周面及びスピンドルの外周部の溝が互いに交差しているので、接合部において樹脂化した接着剤が、交差する部分でクサビとして作用するため、接合部の固着力をさらにいっそう高めることができる。
【0095】
(4) (3)に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方の溝が周方向と平行である、医療用切削器械。
【0096】
(4)によれば、回転時に周方向に過大な負荷が働いた場合に溝の外周方向の接着が外れ、接合部の全体で樹脂化した接着剤の脱離を防止する。溝の外周方向の接着が優先して外れることで、軸方向でのタービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0097】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材(シール部材511、512)からなるクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【0098】
(5)によれば、シール部材からなるクイックストップ機構を備えているので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合に生じる長時間の惰性回転を短時間で停止することができる。一方で、クイックストップ機構のシール部材がスピンドルの外周面に接触した際には急ブレーキにより、回転部の接合部にはさらなる負荷がかかるが、溝により固着力を高めた接合部となっているので、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0099】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジであって、
前記回転部を備える、カートリッジ。
【0100】
(6)によれば、慣性モーメントが大きい材料を用いたタービンロータと、スピンドルとを固定する接合部の固着力を高め、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0101】
(7) (6)に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、カートリッジ。
【0102】
(7)によれば、シール部材からなるクイックストップ機構を備えているので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合に生じる長時間の惰性回転を短時間で停止することができる。一方で、クイックストップ機構のシール部材がスピンドルの外周面に接触した際には急ブレーキにより、回転部の接合部にはさらなる負荷がかかるが、溝により固着力を高めた接合部となっているので、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0103】
(8) タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【0104】
(8)によれば、タービンロータと、スピンドルとを固定する接合部の固着力をさらに高め、タービンロータとスピンドルとの脱落を防止することができる。
【0105】
(9) (8)に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【0106】
(9)によれば、タービンロータと、スピンドルとを固定する接合部の固着力をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 エアタービンハンドピース(医療用切削器械)
4 回転部
20 ヘッド部
30 切削工具
40 カートリッジ
41 スピンドル
415 スピンドルの外周面
416 溝
42 タービンロータ
421 回転シャフト部
422 タービンブレード部
425 タービンロータの内周面
426 溝
46 接合部
511、512 シール部材(クイックストップ機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、 前記タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方の溝が周方向と平行である、医療用切削器械。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジであって、
前記回転部を備える、カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、カートリッジ。
【請求項8】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項9】
請求項8に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の第1態様は、
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm3]以上、ヤング率[GPa]/密度[
g/cm3]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合
部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有す
る、医療用切削器械である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の第2態様は、
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合
部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器
械である。

【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm ]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm ]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器械。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方の溝が周方向と平行である、医療用切削器械。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジであって、
前記回転部を備える、カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材からなるクイックストップ機構を備える、カートリッジ。
【請求項8】
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合
部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面に溝を有する、医療用切削器
械。
【請求項9】
請求項8に記載の医療用切削器械であって、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面及び前記スピンドルの外周面の溝が互いに交差する、医療用切削器械。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の第1態様は、
タービンロータと、スピンドルと、を有する回転部を備える医療用切削器械であって、
前記タービンロータは、密度4.0[g/cm ]以上、ヤング率[GPa]/密度[g/cm ]の値が20以上の金属で形成されており、
前記スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、外周面が軸受に回動自在に軸支され、内周面にチャック機構部を備え、中空内部に切削工具が挿入可能であり、
前記回転部は、
前記タービンロータの内周面と前記スピンドルの外周面が接着剤により固定される接合部を有し、
前記接合部は、
前記タービンロータの内周面又は前記スピンドルの外周面の少なくとも一方に溝を有する、医療用切削器械である。