(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158557
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
A43B 11/00 20060101AFI20241031BHJP
A43B 23/17 20060101ALI20241031BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A43B11/00
A43B23/17
A43B23/02 101B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073853
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】599125342
【氏名又は名称】株式会社馬里奈
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 栄次
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050BC07
4F050BC10
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA70
(57)【要約】
【課題】手や靴ベラを使わなくても立ったままで容易に脱ぎ履きができて、しかも歩行時の足抜けや足浮きを防ぎ、履物が不用意に脱げないよう足に負担なく適切にホールドすることが可能で、かつ踵から足首にかけての形にフィットした形状にすることでアキレス腱へのサポート性を向上させることが可能な履物を提供する。
【解決手段】履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、
踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とを備えることで、足のホールド性を向上させ、踵部後部壁の靴底から足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾きが、履物前方から50度から60度の範囲とすることで足首へのフィット性を向上させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き口と、足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮と、靴底とからなる履物において、
前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、
前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、
前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とから形成されていることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記踵支持部は、水平方向にアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている硬質材料からなる踵部芯材と、前記踵部芯材を覆う弾性部材からなるクッション部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記踵部は、踵部後部壁の前記靴底から立ち上がって足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾き角が、前記履物前方から上方に50度から60度の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記甲皮における本体部の一部又は全部が伸縮可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の履物。
【請求項5】
前記甲皮の本体部は、前記甲皮を構成する素材や構造の色相が補色又は差し色の関係をなしていることを特徴とする請求項4に記載の履物。
【請求項6】
前記甲皮における側壁部と前記踵部との境界部分に、蛍光材又は反射材含有の帯状の補強部材が上下方向に付設されていることを特徴とする請求項5に記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手や靴ベラを使わなくても容易に脱ぎ履きができて、しかも歩行時などに履物が不用意に脱げないよう足に負担なく適切にホールドすることが可能で、さらに踵から足首にかけての形にフィットした形状にすることでアキレス腱へのサポート性を向上させることが可能な新規な履物に関する。
【背景技術】
【0002】
両手がふさがっている時でも手を使わずに簡単に脱ぎ履きができる履物や、足の浮腫みの病状を抱えるお年寄りが座ったり屈んだりしなくても脱ぎ履きできる履物が求められていた。
【0003】
そこで、次のような履物が提案されている。
特許文献1には、手を使わなくても簡単に履けるようにするため、甲皮後端の踵部上端に、後方斜め上方に向けて延びる硬質の突片部を形成した履物が開示されている。これにより、突片部が足の踵を確実に履物内に導くので、手や靴ベラを使わなくても履物を容易に履くことができる。しかし、突片部は上方斜め後方に長く形成されているだけのため、踵の保持効果は踵部側面に位置するパッド部でしか得られず、足のホールド感は弱かった。
【0004】
特許文献2には、履物の甲皮に、甲部と踵部の両方でファスナーを備えることによって、それぞれ左右に開くことが可能な履物が開示されている。これにより、甲部、踵部の甲皮を左右に開くことで、容易に脱ぎ履きができる。しかし、甲部及び踵部のファスナー開閉操作のために、座ったり屈んだりする必要があった。
【0005】
特許文献3には、履き入れ時の足の踵の裏面をガイドする踵ガイド部を踵部に設けた補強部材と一体的に形成するとともに、上記踵ガイド部の高さを規定した履物が開示されている。これにより、足を履き入れやすいと共に、十分に足を保持することができるほか、足首を自由に曲げることができる。しかし、踵ガイド部の高さが最大でも踵骨の高さまでとしているため、踵骨への引っ掛かりによる足のホールド感は弱かった。
【0006】
特許文献4には、踵部内周面の一側部又は他側部の少なくとも一方に突出部を設けた靴が開示されている。これにより、歩行中に履物が脱げにくくすることができる。しかし、踵部の側部における弾性体を用いた突出構造のため、圧迫が強すぎるなど、足の適切なホールド感が得にくかった。
【0007】
これらの先行技術では、手や靴ベラを使わなくても容易に脱ぎ履きができる代わりに、歩行時などに足抜けや足浮きを起こしたり、不用意に履物が脱げてしまう問題があったり、容易に脱げないようにするための弾性部材による圧迫が強すぎる問題があり、脱ぎ履きが容易でかつ履物が不用意に脱げることがないよう、足に負担なく適切にホールドすることが可能な履物は実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-139151号公報
【特許文献2】特開2012-019953号公報
【特許文献3】特許第6569154号公報
【特許文献4】特開2011-041590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、手や靴ベラを使わなくても立ったままで容易に脱ぎ履きができて、しかも歩行時の足抜けや足浮きを防ぎ、履物が不用意に脱げないよう足に負担なく適切にホールドすることが可能で、かつ踵から足首にかけての形にフィットした形状にすることでアキレス腱へのサポート性を向上させることが可能な履物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、履き口と、足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮と、靴底とからなる履物において、前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、
前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とから形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記踵支持部が、水平方向にアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている硬質材料からなる踵部芯材と、前記踵部芯材を覆う弾性部材からなるクッション部によって形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、前記踵部は、踵部後部壁の前記靴底から立ち上がって足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾き角が、前記履物前方から上方に50度から60度の範囲であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記甲皮における本体部の一部又は全部が伸縮可能となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記甲皮の本体部甲覆い部において、前記甲皮を構成する素材や構造の色相が補色又は差し色の関係をなしていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5において、
前記甲皮と前記踵部との境界部分に蛍光材又は反射材含有の帯状の補強部材が上下方向に付設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の、踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部を形成された履物は、踵部内面のアーチ状の肉厚部により、踵骨隆起を周りからしっかり押さえ込むことができるため、足のホールド性が向上する。
【0017】
特に、肉厚部を踵支持部の硬質材料からなる踵部芯材に設けることにより、一層効果が高まる。このため、履物を履いた時の足のホールド性が極めて高く、歩行時の足抜けや足浮きを抑え、不用意に履物が脱げてしまうことを避けることが可能となるため、ハンズフリーで立ったままでも容易に脱ぎ履きができ、しかも歩行時などに足に負担なく適切に足をホールドすることが可能な履物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態の履物を、側面から見た側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の履物を、上方から見た正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の履物の踵部後部壁における、
図2のA-A線断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の履物の踵部後部壁における断面の構造と、踵部後部壁の外形曲線の傾き角αを説明するための図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の履物であって、甲覆い部に2種類の伸縮性素材を用いた履物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【実施例0020】
図1~
図4は、本発明の第1の実施形態に係る履物を概略的に示した図である。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係る履物の側面から見た側面図、
図2は上方から見た正面図である。本実施形態の履物は、履き口1と、足指が差し入れられる本体部2及び踵が接触する踵部3が一体的に形成された甲皮4と、靴底5から構成されている。
【0022】
甲皮4の本体部2は、履き口1よりつま先部6までの足の甲を覆う甲覆い部7と甲覆い部7を持ち上げるためのつまみ8と、履き口1の側方から踵部3に至るまでの側壁部9から成る。踵部3は、甲覆い部7から連続する側壁部9との境界に補強材10を介在させて、踵を囲むように付設され、履き口1の後端には踵部後部壁11を有する。
【0023】
図3は、
図2の踵部後部壁11のA-A線における断面図である。甲皮4は、履物の外側に配設される外皮12と、履物の内側に配設される内皮13とから形成されている。材質は、履物全体で同一でもよく、履物の部分によって、或いは外皮12と内皮13によって異なるものを使用することができる。
【0024】
踵部後部壁11においては、外皮12と内皮13の間に挟まれた内部に、踵部3を補強し、履き口1の形状を保持するための、合成樹脂等の硬質素材から成る踵部芯材14が設けられている。
【0025】
踵部芯材14の上端には、踵部芯材14と一体的に形成されてなる踵ガイド部15が形成されており、足を履き口1に挿入する際に、踵ガイド部15の上面に沿って踵を滑り込ませることで、履き口1内に足指が誘導される。踵ガイド部15は、履き口1の履物後方に向かって上方に反り返って形成されており、踵を入れる際に踵ガイド部15の端が履物内部に巻き込まれたり折り込まれたりすることを防ぐことが可能となっている。
【0026】
踵部芯材14の踵部3の内面に、前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部16が設けられている。足を履き口1から挿入する際には、クッション部16が圧迫され変形することで足を通過させ、足が入った後はクッション部16の復元力によってアキレス腱部を押圧するため、足首に負担なく適切にホールドすることが可能になっている。クッション部16の弾性部材としては、スポンジ、ウレタン、ゴム、シリコン、フェルト、低反発材料、その他の弾性材が使用できる。
【0027】
ここで、踵部3の水平方向にはアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部17が形成されている。この踵支持部17は、踵部芯材14が、クッション部16が当接する位置を中心に、水平方向に踵を囲むようにアーチ状をなしていて、上下方向には他の部分に比べて肉厚にすることで形成されている。これにより、踵支持部17内側の上下方向の段差が強調されて、踵の踵骨隆起が、踵支持部17に設けた段差の下方に入りこんで踵支持部17に包まれた状態になるため、履物内で足に負担なく適切にホールドされると共に、不用意に履物が脱げるのを防ぐ効果をより高めることができる。
【0028】
踵部3の内面に上方に向かって肉厚状となっている踵支持部17を形成する場合、踵部芯材14やクッション部16の厚みだけで突出した構造とすると、履物の滑らかな脱ぎ履きという観点からは好ましくない。そのため、踵部後部壁11の断面に形成される略S(逆S)字状の曲線構造を利用して踵部3の内面を滑らかにするのが好適である。
図4に示すように、踵部後部壁11の断面形状は、踵を納め足首を保持するために、靴底5から上方に向けて立ち上がった後、足首に沿う形で履物前方に傾き、水平面と踵部後部壁の外形曲線のなす傾き角αが最小角度となった後、履物後方に反り返ることで足首の形状にフィットした形状となっている。
【0029】
この実施形態では、
図4に示すように、靴底5から上方に向けて立ち上がり、踵に沿って履物前方に傾いた後、足首の形状に沿って履物後方に反り返り始める場所、すなわち水平面と後部壁11の外形曲線のなす傾き角αが最小となる箇所で、それより下方では踵支持部17の踵部芯材14が踵と当接する形状とし、それより上方ではクッション部16が足首に当接する形状とすることが好適である。
【0030】
後部壁11の外形曲線のなす傾き角αの最適な角度については、履物前方の水平面から測って50度~60度の範囲が好適である。外形曲線の傾き角αが50度以下では踵を納める空間が狭くなって履き心地を悪化させ、また60度以上では踵の引っ掛かり効果が十分ではなくなる。上記の角度範囲とすることによって、踵支持部17の段差が踵骨隆起の出っ張りをより効果的に引っかけるため、足のホールド性をより高め、歩行時の足抜けや足浮きを抑え、不用意に履物が脱げてしまうことを避ける効果をさらに高めることができる。さらに、外形曲線の傾き角αは、55度~60度の範囲がより好適である。
【0031】
このため、踵部芯材14の断面形状は、全体に一様な厚さの素材に、外形曲線の傾き角αが最小角度を超える点から上方に踵ガイド部に至る範囲で、踵部芯材14に滑らかな肉厚部を設け、さらにクッション部16を踵部芯材14の肉厚部に当接させることによって、滑らかな構造を形成することで、脱ぎ履きがしやすく、かつ足に負担なく適切なホールド性を有する履物を実現できる。
【0032】
脱ぎ履きのしやすい履物を実現するための別の構造として、甲皮における甲覆い部7の一部または全体において伸縮性素材を用いることによって、甲覆い部7の伸縮自在性を持たせることができる。具体的には、メッシュ素材やニット素材、合成皮革等が用いることができるが、これらに限定されるものではない。履物の用途に応じて、メッシュ状素材等の伸縮性素材は1種類に限らず、伸縮性の異なる素材や、伸縮容易方向の異なる素材を複数組み合わせ、さらにその使用箇所や使用割合を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0033】
第1の実施形態では、甲覆い部7の伸縮性素材として1種類の素材のみを使用したが、本発明の適用はこれに限定されない。
図5は、本発明の第2の実施形態による履物を示しており、基本的構成は第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、甲覆い部7が第1の伸縮性素材18と、第2の伸縮性素材19から成っており、履物を履く際に履きやすいように、第1の伸縮性素材18により伸縮性の高い素材を用い、第2の伸縮性素材19には伸縮性のより弱い素材を用いることで履物としての構造を補強した。
【0034】
これにより、履き口1から足指を挿入して、踵ガイド部15において踵を滑らせながら履物を履く際に、足の甲部が履物前方方向に押されても、甲覆い部7の伸縮素材によってこの変形を吸収することが可能となり、また履物を履き終わった後には甲覆い部7の伸縮素材の復元力によって、足を履物内に負担なく適切にホールドすることが可能になる。
【0035】
脱ぎ履きを容易にするさらに別の構造として、暗がりで履物を履くような場合に、履物の位置や向きを分かりやすくするために目印を設けることができる。簡単な手段で目印を付ける方法の一例として、蛍光材又は反射材を履物の一部に設けて、光を放つことにより着用者に履物の位置や向きを知らせることができる。このため、甲皮4における側壁部9と踵部3の境界部分に設けられた帯状の補強材として、蛍光材又は反射材含有の補強部材10を、上下方向に付設することで着用者が履物を見やすくすることが可能である。
【0036】
また、デザイン性を高めるため、第2の伸縮性素材19に一例としてメッシュ素材を用いている。この場合、メッシュ素材の網目部分が濃い灰色であり、下地部分が山吹色である差し色の関係をなすように配色した。全体的に濃い灰色の落ち着いた色調の中に、明るい山吹色を配することによって、差し色としてワンポイントのアクセントが付与され、デザイン性に優れた履物とすることが可能になる。
【0037】
このような差し色の色相は、開示する形態の配色に限られるものではなく、例えば、一方が濃い灰色であれば、もう一方には水色、ピンク色、赤色、グリーン系の色を用いて差し色の関係を成すことで、華やかな印象を与えることができる。これ以外にも補色の組み合わせとして、赤と青緑、橙色と青、黄色と紫、赤紫と緑、水色を朱色などの補色の組み合わせを用いることができる。
【0038】
甲覆い部7と踵部3との境界部分に付設される帯状の補強部材10は、一例として履物前方に傾きを有するL字形状のものが好適であるが、これに限られるものではない。さらに、帯部分の中央に沿って、蛍光材又は反射材を含有するものを用いることができ、蛍光材又は反射材は粘着剤で固定してもよく、熱圧着で固定してもよく、縫製で固定してもよい。
【0039】
本発明の履物の作用について説明する。
履物を履く際には、手や靴ベラを使わずに、立ったままの状態で履き口1につま先から挿入して履く。足の甲を甲覆い部7の下に潜らせ、踵を踵ガイド部15に乗せて、体重をかけながら前記踵ガイド部15の上面に沿って滑らせると、踵がクッション材16を押して変形させながら通過することができ、踵の踵骨が踵支持部17に潜り込むことによって、足が履物に固定される。
【0040】
本発明の履物を履いた状態においては、踵の踵骨隆起が、踵支持部17に設けた肉厚部の下方に入りこんで踵部3に包まれた状態になるため、足に負担なく適切にホールドされると共に、踵骨隆起が踵支持部17の段差に押さえられるために不用意に履物が脱げることを避けることが可能となり、しかも、踵から足首にかけての形にフィットした形状にすることでアキレス腱へのサポート性を向上させることが可能となる。
本発明は、手や靴ベラを使わなくても容易に脱ぎ履きができて、しかも歩行時などに履物が不用意に脱げないように足に負担なく適切にホールドすることが可能で、さらに踵から足首にかけての形にフィットした形状にすることでアキレス腱へのサポート性を向上させることが可能な履物を提供することができる。
前記踵部は、踵部後部壁の前記靴底から立ち上がって足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾き角が、前記履物前方から上方に50度から60度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の履物。
前記踵部は、踵部後部壁の前記靴底から立ち上がって足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾き角が、前記履物前方から上方に50度から60度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の履物。
上記課題を解決するためになされた本発明による履物は、履き口と、足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮と、靴底とからなる履物において、前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とから形成され、前記踵ガイド部と前記踵支持部とは共通に一体化された、硬質材料からなる踵部芯材を含み、前記踵部芯材は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平方向に踵を囲むようにアーチ状に形成されると共に、水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって、前記最大に突出する箇所より上方では足首の形状に沿って履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では前記踵支持部の前記踵部芯材が踵と当接して踵をホールドする形状であり、前記クッション部は前記踵部芯材の前方に最大に突出する肉厚状の部分を覆うように設けられることを特徴とする。