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特開2024-158563ポリオールプレミックス、発泡体、及び、保温庫
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158563
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリオールプレミックス、発泡体、及び、保温庫
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20241031BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/50 033
C08G18/18
C08G18/48 083
C08G18/00 G
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073865
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】夏目 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇一
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
(72)【発明者】
【氏名】松田 雅史
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB05
4J034DC25
4J034DG02
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC33
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA16
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB16
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】発泡剤として水を用いた場合であっても、外観が良好なポリウレタンフォームを製造することが可能なポリオールプレミックス、これを用いて製造された発泡体及び保温庫を提供すること。
【解決手段】ポリオールプレミックスは、ポリオール成分と、整泡剤と、触媒と、発泡剤とを含む。前記ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールAと、ショ糖系ポリエーテルポリオールBと、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCとを含む。前記触媒は、水酸基価が200mgKOH/g以上であるアミン系触媒を含む。発泡体は、このようなポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを含む混合物を発泡、硬化させることにより得られたものからなる。保温庫は、このような発泡体を備えている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分と、整泡剤と、触媒と、発泡剤とを含み、
前記ポリオール成分は、
ポリエーテルポリオールAと、
ショ糖系ポリエーテルポリオールBと、
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCと
を含み、
前記触媒は、水酸基価が200mgKOH/g以上であるアミン系触媒を含む
ポリオールプレミックス。
【請求項2】
前記ショ糖系ポリエーテルポリオールBは、20mass%以上のプロピレンオキサイド単位を含む請求項1に記載のポリオールプレミックス。
【請求項3】
前記ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量は、1.0mass%以上25.0mass%以下であり、
前記芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量は、1.0mass%以上25.0mass%以下である
請求項1に記載のポリオールプレミックス。
【請求項4】
前記触媒は、トリアジン系触媒をさらに含み、
前記整泡剤は、分子末端に水酸基を有する化合物を含む
請求項1に記載のポリオールプレミックス。
【請求項5】
請求項1に記載のポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを含む混合物を発泡、硬化させることにより得られる発泡体。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡体を備えた保温庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオールプレミックス、発泡体、及び、保温庫に関し、さらに詳しくは、ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオールプレミックス、このようなポリオールプレミックスを用いて製造される発泡体、及び、このような発泡体を備えた保温庫に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンとは、ウレタン結合(-NH-C(O)O-)を有する高分子化合物をいう。ポリウレタンは、一般に、ポリオールの水酸基(-OH)と、ポリイソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とを重合させることにより得られる。ポリウレタンは、ポリオール及び/又はポリイソシアネートの種類を最適化することにより、多様な性質を示すことが知られている。そのため、ポリウレタンは、各種自動車部品、合成皮革、塗料、接着剤などに応用されている。また、ポリウレタンを発泡させたポリウレタンフォームは、断熱材、クッション材などに応用されている。
【0003】
ポリウレタンフォームの内、独立気泡を含むものは、硬質ポリウレタンフォームとも呼ばれている。硬質ポリウレタンフォームは、断熱性に優れていることから、米庫、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、船舶、車輌、プラント、建材、家具などに用いられる断熱材として賞用されている。このようなポリウレタンフォームの製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、
(a)ショ糖にPO・EOの順に付加したブロック付加物(平均官能基数8.0、水酸基価28、末端EO単位の含有量=20%):75質量部、
(b)グリセリンにPO・EOの順に付加したブロック付加物(平均官能基数3.0、水酸基価34、末端EO単位の含有量=20%):12質量部、
(c)所定のポリオール中において、アクリロニトリルとスチレンを共重合させた重合体ポリオール(重合体含有量30%、アクリルニトリル/スチレン比(重量比)=65/35):13質量部、
(d)水:2.0質量部、
(e)3級アミン触媒:2.0質量部、
(f)ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテルの70%ジエチレングリコール溶液:0.5質量部、及び、
(g)有機変性ポリシロキサンの調合剤:0.5質量部
を含むポリオール混合物が開示されている。
同文献には、このようなポリオール混合物とポリイソシアネート成分とを反応させると、薄肉で、触感の良好な自動車用内装材を製造することができる点が記載されている。
【0005】
ポリウレタンフォームの中でも、硬質ポリウレタンフォームを製造する場合において、発泡剤には、ハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)などのフロン化合物を用いるのが一般的である。フロン化合物は、ポリイソシアネートと反応しないために成型性に優れており、外観が良好なフォームを得やすいという利点がある。しかしながら、フロン化合物は、供給安定性が低く、価格も高価である。
【0006】
一方、硬質ポリウレタンフォームを製造する場合において、発泡剤として水を用いる方法も知られている。水は、供給安定性が高く、安価である。しかしながら、発泡剤として水を用いた場合、フロン化合物を用いた場合に比べて成型性が劣り、外観が良好なフォームを得にくいという欠点がある。
さらに、発泡剤として水を含む場合であっても、外観が良好な硬質ポリウレタンフォームを製造することが可能なポリオールプレミックスが提案された例は、従来にはほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6246235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、発泡剤として水を用いた場合であっても、外観が良好なポリウレタンフォームを製造することが可能な、新規なポリオールプレミックスを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなポリオールプレミックスを用いて製造される発泡体を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような発泡体を備えた保温庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るポリオールプレミックスは、
ポリオール成分と、整泡剤と、触媒と、発泡剤とを含み、
前記ポリオール成分は、
ポリエーテルポリオールAと、
ショ糖系ポリエーテルポリオールBと、
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCと
を含み、
前記触媒は、水酸基価が200mgKOH/g以上であるアミン系触媒を含む。
【0010】
本発明に係る発泡体は、本発明に係るポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを含む混合物を発泡、硬化させることにより得られたものからなる。
さらに、本発明に係る保温庫は、本発明に係る発泡体を備えている。
【発明の効果】
【0011】
ポリオール成分、整泡剤、触媒、及び、発泡剤を含むポリオールプレミックスにおいて、ポリオール成分及び触媒の種類を最適化すると、発泡剤として水を用いた場合であっても、外観が良好なポリウレタンフォーム、特に、硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。これは、ポリオール成分及び触媒の種類を最適化することによって、ポリオールプレミックスとポリイソシアネート成分とを混合した場合であっても、水とポリイソシアネートとの過剰な反応が抑制されるためと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. ポリオールプレミックス]
本発明に係るポリオールプレミックスは、ポリオール成分と、整泡剤と、触媒と、発泡剤とを含む。ポリオールプレミックスは、難燃剤をさらに含むものでも良い。
【0013】
[1.1. 成分]
[1.1.1. ポリオール成分]
ポリオール成分は、ポリウレタンフォームを製造するための主原料の1つである。本発明において、ポリオール成分は、
(a)ポリエーテルポリオールAと、
(b)ショ糖系ポリエーテルポリオールBと、
(c)芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCと
を含む。
ポリオール成分は、さらに、
(d)ポリエーテルポリオールD
を含むものでも良い。
【0014】
[A. ポリエーテルポリオールA]
「ポリエーテルポリオールA」とは、官能基数が4.0以上5.0以下である化合物からなる開始剤にアルキレンオキシドを付加重合させることにより得られたポリオールであって、ショ糖系ポリエーテルポリオールB、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC、及び、ポリエーテルポリオールD以外のものをいう。
【0015】
ポリエーテルポリオールAは、特に、
(a)官能基数が4.0以上5.0以下であり、
(b)水酸基価が300mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である
ものが好ましい。
【0016】
ポリエーテルポリオールAの官能基数は、ポリウレタンフォームの成型性や外観に影響を与える。ポリエーテルポリオールAの官能基数が少なくなりすぎると、硬化温度を上昇させる必要があり、成型性が悪化する場合がある。また、反応後の冷却過程において、ポリウレタンフォームが収縮する場合がある。さらに、ポリエーテルポリオールAの官能基数が少なくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度の低下を招く場合がある。従って、ポリエーテルポリオールAの官能基数は、4.0以上である必要がある。官能基数は、好ましくは、4.1以上、あるいは、4.2以上である。
一方、ポリエーテルポリオールAの官能基数が多くなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームにボイドが発生しやすくなる。従って、ポリエーテルポリオールAの官能基数は、5.0以下である必要がある。官能基数は、好ましくは、4.9以下、あるいは、4.8以下である。
【0017】
ポリエーテルポリオールAの水酸基価は、ポリウレタンフォームの機械的強度や外観に影響を与える。ポリエーテルポリオールAの水酸基価が小さくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ポリエーテルポリオールAの水酸基価は、300mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、350mgKOH/g以上、あるいは、400mgKOH/g以上である。
一方、ポリエーテルポリオールAの水酸基価が大きくなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、ポリエーテルポリオールAの水酸基価は、500mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、490mgKOH/g以下、あるいは、480mgKOH/g以下である。
【0018】
[B.ショ糖系ポリエーテルポリオールB]
「ショ糖系ポリエーテルポリオールB」とは、ショ糖にアルキレンオキシドを付加重合させることにより得られたポリオールであって、ポリエーテルポリオールA、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC、及び、ポリエーテルポリオールD以外のものをいう。
【0019】
ショ糖系ポリエーテルポリオールBは、特に、
(a)官能基数が4.0以上5.5以下であり、
(b)水酸基価が300mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である
ものが好ましい。
【0020】
ショ糖系ポリエーテルポリオールBの官能基数は、ポリウレタンフォームの機械的強度や外観に影響を与える。ショ糖系ポリエーテルポリオールBの官能基数が少なくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。また、反応後の冷却過程において、ポリウレタンフォームが収縮する場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの官能基数は、4.0以上が好ましい。官能基数は、さらに好ましくは、4.1以上、あるいは、4.2以上である。
一方、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの官能基数が多くなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの官能基数は、5.5以下が好ましい。官能基数は、さらに好ましくは、5.4以下、あるいは、5.3以下である。
【0021】
ショ糖系ポリエーテルポリオールBの水酸基価は、ポリウレタンフォームの機械的強度や外観に影響を与える。ショ糖系ポリエーテルポリオールBの水酸基価が小さくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの水酸基価は、300mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、350mgKOH/g以上、あるいは、400mgKOH/g以上である。
一方、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの水酸基価が大きくなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの水酸基価は、500mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、490mgKOH/g以下、あるいは、480mgKOH/g以下である。
【0022】
ショ糖系ポリエーテルポリオールBは、特に、20mass%以上のプロピレンオキサイド単位を含むものが好ましい。プロピレンオキサイド単位の含有量は、さらに好ましくは、25mass%以上、あるいは、30mass%以上である。このような条件を満たすショ糖系ポリエーテルポリオールBを用いると、ポリウレタンフォームの外観不良を抑制するのが容易化する。
但し、プロピレンオキサイド単位の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの機械的強度の低下を招く場合がある。従って、プロピレンオキサイド単位の含有量は、70mass%以下が好ましい。プロピレンオキサイド単位の含有量は、さらに好ましくは、60mass%以下、あるいは、50mass%以下である。
【0023】
[C.芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC]
「芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC」とは、芳香族アミンにアルキレンオキシドを付加重合させることにより得られたポリオールであって、ポリエーテルポリオールA、ショ糖系ポリエーテルポリオールB、及び、ポリエーテルポリオールD以外のものをいう。
【0024】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCは、特に、
(a)官能基数が3.0以上5.0以下であり、
(b)水酸基価が300mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である
ものが好ましい。
【0025】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの官能基数は、ポリウレタンフォームの成型性や外観に影響を与える。芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの官能基数が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下し、あるいは、反応後の冷却過程においてポリウレタンフォームが収縮する場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの官能基数は、3.0以上が好ましい。官能基数は、さらに好ましくは、3.5以上、あるいは、3.7以上である。
一方、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの官能基数が多くなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの官能基数は、5.0以下が好ましい。官能基数は、さらに好ましくは、4.5以下、あるいは、4.3以下である。
【0026】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの水酸基価は、ポリウレタンフォームの機械的強度や外観に影響を与える。芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの水酸基価が小さくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの水酸基価は、300mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、350mgKOH/g以上、あるいは、400mgKOH/g以上である。
一方、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの水酸基価が大きくなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの水酸基価は、500mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、490mgKOH/g以下、あるいは、480mgKOH/g以下である。
【0027】
[D.ポリエーテルポリオールD]
「ポリエーテルポリオールD」とは、官能基数が2.1以上3.5以下である化合物からなる開始剤にアルキレンオキシドを付加重合させることにより得られたものであって、ポリエーテルポリオールA、ショ糖系ポリエーテルポリオールB、及び、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC以外のものをいう。
【0028】
ポリエーテルポリオールDは、特に、
(a)官能基数が2.1以上3.5以下であり、
(b)水酸基価150mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である
ものが好ましい。
【0029】
ポリエーテルポリオールDの官能基数は、ポリウレタンフォームの機械的強度、外観、流動性、収縮度合いに影響を与える。ポリエーテルポリオールDの官能基数が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下し、あるいは、反応後の冷却過程においてポリウレタンフォームが収縮する場合がある。従って、ポリエーテルポリオールDの官能基数は、2.1以上である必要がある。官能基数は、好ましくは、2.5以上、あるいは、2.7以上である。
一方、ポリエーテルポリオールDの官能基数が多くなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じ、あるいは、ポリオールプレミックスとポリイソシアネート成分とを混合したときに原料混合物の流動性の低下を招くおそれがある。従って、ポリエーテルポリオールDの官能基数は、3.5以下である必要がある。官能基数は、好ましくは、3.4以下、あるいは、3.3以下である。
【0030】
ポリエーテルポリオールDの水酸基価は、ポリウレタンフォームの外観と、機械的強度に影響を与える。ポリエーテルポリオールDの水酸基価が小さくなりすぎると、反応点の数が少なくなり、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ポリエーテルポリオールDの水酸基価は、150mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、200mgKOH/g以上、300mgKOH/g以上、あるいは、400mgKOH/g以上である。
一方、ポリエーテルポリオールDの水酸基価が大きくなりすぎると、ポリイソシアネートとの反応が激しくなり、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、ポリエーテルポリオールDの水酸基価は、500mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、490mgKOH/g以下、あるいは、480mgKOH/g以下である。
【0031】
[1.1.2. 整泡剤]
整泡剤は、各原料の相溶性を高めるとともに、原料混合物の表面張力を低下させるためのものであり、気泡を安定化させ、気泡構造を調整するためのものである。
【0032】
整泡剤の種類は、ポリウレタンフォーム内のセルサイズに影響を与える。整泡力が過度に強い整泡剤(セルサイズを小さくする作用がある整泡剤)を用いると、ポリウレタンフォームの断熱性は高くなるが、ポリウレタンフォームの寸法変化が大きくなりやすく、外観不良が生じやすい。
これに対し、適度な整泡力を持つ整泡剤を用いると、セルサイズが若干大きくなり、断熱性は若干低下するが、外観不良が生じにくくなる。
【0033】
本発明において、整泡剤の種類は特に限定されないが、整泡剤は、シリコーン系整泡剤が好ましい。また、外観不良を抑制するためには、整泡剤は、分子末端に水酸基を有する化合物を含むものが好ましい。
【0034】
外観不良を抑制するためには、整泡剤は、
(a)ポリアルキレンオキシド-メチルシロキサン共重合体(OR末端)、
(b)ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH末端)、及び、
(c)ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OR末端)
からなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
これらは、適度な整泡力を持つため、外観不良を抑制する効果が大きい。整泡剤は、特に、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH末端)が好ましい。
【0035】
[1.1.3. 触媒]
本発明に係るポリオールプレミックスは、触媒として、アミン系触媒Aを含む。
「アミン系触媒A」とは、水酸基価が200mgKOH/g以上であるアミン系化合物からなる触媒をいう。
【0036】
ポリオールプレミックスは、アミン系触媒Aに加えて、
(a)泡化触媒、及び/又は、
(b)トリアジン系触媒
をさらに含むものでも良い。
【0037】
[A. アミン系触媒A]
アミン系触媒Aは、樹脂化触媒(泡化反応よりも樹脂化反応に対する寄与が大きい触媒)である。樹脂化触媒としてアミン系触媒Aを用いると、アミン系触媒A以外の樹脂化触媒を用いた場合に比べて、ポリウレタンフォームの外観不良が発生しにくくなる。
【0038】
アミン系触媒Aの水酸基価は、ポリウレタンフォームの外観に影響を与える。アミン系触媒Aの水酸基価が小さくなりすぎると、外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの水酸基価は、200mgKOH/g以上である必要がある。水酸基価は、好ましくは、210mgKOH/g以上である。
一方、アミン系触媒Aの水酸基価が大きくなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの水酸基価は、500mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは、300mgKOH/g以下、あるいは、250mgKOH/g以下である。
【0039】
アミン系触媒Aの重量平均分子量は、ポリウレタンフォームの外観に影響を与える。アミン系触媒Aの重量平均分子量が小さくなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの重量平均分子量は、300以上が好ましい。重量平均分子量は、好ましくは、400以上、あるいは、500以上である。
一方、アミン系触媒Aの重量平均分子量が大きくなりすぎると、外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの重量平均分子量は、2000以下が好ましい。重量平均分子量は、さらに好ましくは、1000以下、あるいは、700以下である。
【0040】
アミン系触媒Aとしては、例えば、
(a)メチルアミン・1,6-ヘキサンジオール重縮合物(HO-[R1-N(R2)]n-R1-OH、但し、R1はヘキサメチレン基、R2はメチル基、nは3.5(平均重合度)、水酸基価:217mgKOH/g)、
(b)N,N-ジメチルアミノヘキサノール(水酸基価:380mgKOH/g)、
などがある。
【0041】
[B. 泡化触媒]
発泡剤として水を用いる場合、ポリオールプレミックスは、触媒として、泡化触媒(樹脂化反応よりも泡化反応に対する寄与の大きい触媒)をさらに含むものが好ましい。
本発明において、泡化触媒の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な触媒を選択することができる。
【0042】
泡化触媒としては、例えば、
(a)ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、
(b)2,3-ジモルホリノジエチルエーテル、
(c)ペンタメチルジエチレントリアミン、
などがある。
【0043】
[C. トリアジン系触媒]
トリアジン系触媒は、樹脂化触媒の一種である。ポリオールプレミックスは、触媒として、トリアジン系触媒をさらに含むものでも良い。トリアジン系触媒は、ポリオールプレミックスとポリイソシアネートとを反応させるときに、キュア性をさらに向上させる作用がある。
トリアジン系触媒としては、例えば、
(a)N,N',N"-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、
(b)ヘキサヒドロトリアジン、
などがある。
【0044】
[1.1.4. 発泡剤]
「発泡剤」とは、液状の原料混合物が樹脂化していく過程で原料混合物中に気泡を生成させるための添加剤をいう。
本発明において、発泡剤は、
(a)圧力低下又は加熱によりガスを発生させる物理発泡剤、又は、
(b)熱分解又は化学反応によりガスを発生させる化学発泡剤
のいずれであっても良い。
【0045】
物理発泡剤としては、例えば、
(a-1)シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタンなどの炭化水素、
(a-2)塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ペンタフルオロイソプロピルメチルエーテルなどのハロゲン系化合物、
(a-3)ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロオレフィン(HCFO)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)
などがある。
【0046】
化学発泡剤としては、例えば、
(b-1)イソシアネート基と反応してCO2を発生させる水、
(b-2)熱分解によって、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、又は、アンモニアガスを発生させるアゾジカルボンアミド
などがある。
【0047】
これらの中でも、発泡剤は、水が好ましい。水は、供給安定性が高く、安価であるため、発泡剤として好適である。
なお、ポリオールプレミックスは、発泡剤として水のみを含むものが好ましいが、水に代えて、又は、水に加えて、水以外の発泡剤を含むものでも良い。
【0048】
[1.1.5. 難燃剤]
ポリオールプレミックスは、さらに難燃剤を含むものでも良い。難燃剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
難燃剤としては、例えば、
(a)トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン酸エステル、赤燐、リン酸塩含有難燃剤などのリン系難燃剤、
(b)臭素含有難燃剤、
(c)ホウ素含有難燃剤、
(d)アンチモン含有難燃剤、
(e)金属水酸化物、
などがある。
【0049】
[1.2. 含有量]
[1.2.1. ポリオール成分]
本発明において、ポリオール成分に含まれる第i番目のポリオール(i≧1)の「含有量(mass%)」とは、ポリオール成分の総質量に対する第i番目のポリオールの質量の割合をいう。
【0050】
[A. ポリエーテルポリオールAの含有量]
ポリエーテルポリオールAの含有量が少なくなりすぎると、ポリオールプレミックスの粘度が過度に増大し、ポリウレタンフォームに、原料同士の攪拌不良による外観不良や物性低下が生じる場合がある。従って、ポリエーテルポリオールAの含有量は、60.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、65.0mass%以上、あるいは、70.0mass%以上である。
一方、ポリエーテルポリオールAの含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ポリエーテルポリオールAの含有量は、90.0mass%以下が好ましい。
【0051】
[B. ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量]
ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量は、1.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、3.0mas%以上、あるいは、5.0mass%以上である。
一方、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、ショ糖系ポリエーテルポリオールBの含有量は、25.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、20.0mass%以下、15.0mass%以下、あるいは、10.0mass%以下である。
【0052】
[C. 芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量]
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量が少なくなりすぎると、ポリオールプレミックスのキュア性が低下する場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量は、1.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、3.0mass%以上、あるいは、5.0mass%以上である。
一方、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCの含有量は、25.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、20.0mass%以下、15.0mass%以下、あるいは、10.0mass%以下である。
【0053】
[D. ポリエーテルポリオールDの含有量]
ポリエーテルポリオールDの含有量はゼロでも良い。一般に、ポリエーテルポリオールDの含有量が多くなるほど、ポリオ-プレミックスの粘度が低下し、ポリウレタンフォームに外観不良が生じ難くなる。このような効果を得るためには、ポリエーテルポリオールDの含有量は、5.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、6.0mass%以上である。
一方、ポリエーテルポリオールDの含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する場合がある。従って、ポリエーテルポリオールDの含有量は、10.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、9.0mass%以下、あるいは、8.0mass%以下である。
【0054】
[1.2.2. ポリオール以外の成分]
ポリオールプレミックスに含まれるポリオール以外の成分(整泡剤、アミン系触媒A、泡化触媒、トリアジン系触媒、発泡剤、難燃剤など)の「含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、ポリオール以外の成分の質量をいう。
【0055】
[A. 整泡剤の含有量]
整泡剤の含有量が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、整泡剤の含有量は、3.0質量部以上が好ましい。
一方、整泡剤の含有量が過剰になると、難燃性が低下する場合がある。従って、整泡剤の含有量は、6.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、5.0質量部以下、あるいは、4.0質量部以下である。
【0056】
[B. アミン系触媒Aの含有量]
アミン系触媒Aの含有量が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの含有量は、1.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、2.0質量部以上、あるいは、3.0質量部以上である。
同様に、アミン系触媒Aの含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、アミン系触媒Aの含有量は、10.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、7.0質量部以下、あるいは、4.0質量部以下である。
【0057】
[C. 泡化触媒の含有量]
発泡剤として水を用いる場合において、泡化触媒の含有量が少なくなりすぎると、ポリオールプレミックスとポリイソシアネート成分とを混合したときの原料混合物の流動性の低下を招く場合がある。従って、泡化触媒の含有量は、0.1質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.2質量部以上である。
一方、泡化触媒の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、泡化触媒の含有量は、1.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.5質量部以下である。
【0058】
[D. トリアジン系触媒の含有量]
トリアジン系触媒の含有量は、ゼロでも良い。しかしながら、ポリオールプレミックスにトリアジン系触媒をさらに添加すると、ポリウレタンフォームのキュア性が向上する場合がある。高いキュア性を得るためには、トリアジン系触媒の含有量は、0.2質量部以上が好ましい。
一方、トリアジン系触媒の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。従って、トリアジン系触媒の含有量は、0.4質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.3質量部以下である。
【0059】
[E. 水(発泡剤)の含有量]
発泡剤として水を用いる場合において、水の含有量が少なくなりすぎると、ポリウレタンフォームの密度が過度に高くなる場合がある。従って、水の含有量は、1.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、3.0質量部以上、あるいは、5.0質量部以上である。
一方、水の含有量が過剰になると、密度が過度に低くなる場合があり、機械的強度が低下する場合がある。また、基材表面にポリウレタンフォームを形成する場合において、基材とポリウレタンフォームとの接着性が低下する場合がある。従って、水の含有量は、15.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、10.0質量部以下、あるいは、7.0質量部以下である。
【0060】
[F. 難燃剤の含有量]
難燃剤の含有量は、ゼロでも良い。しかしながら、ポリオールプレミックスに難燃剤をさらに添加すると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する場合がある。高い難燃性を得るためには、難燃剤の含有量は、15.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、20.0質量部以上、あるいは、25.0質量部以上である。
一方、難燃剤の含有量が過剰になると、ウレタン化反応に必要な成分の含有量が相対的に少なくなるために、ポリウレタンフォームのキュア性が低下する場合がある。従って、難燃剤の含有量は、30.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、29.0質量部以下、あるいは、28.0質量部以下である。
【0061】
[2. 発泡体]
本発明に係る発泡体は、本発明に係るポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを含む混合物を発泡、硬化させることにより得られる。
【0062】
[2.1. ポリオールプレミックス]
本発明に係るポリオールプレミックスは、ポリオール成分と、整泡剤と、触媒と、発泡剤とを含む。ポリオールプレミックスの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0063】
[2.2. ポリイソシアネート成分]
本発明において、ポリイソシアネート成分の種類は、特に限定されない。ポリイソシアネート成分は、1種類のポリイソシアネートを含むものでも良く、あるいは、2種以上のポリイソシアネートを含むものでも良い。
【0064】
ポリイソシアネートとしては、
(a)芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物、若しくは、脂環族系イソシアネート化合物、
(b)上記化合物の変性物
などがある。
【0065】
芳香族系イソシアネート化合物としては、例えば、
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、
粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、
ナフタレンジイソシアネート(NDI)、
p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、
テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、
トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、MDIは、ポリウレタンフォームを製造するためのポリイソシアネートとして好適である。MDIは、3種類の異性体、すなわち、
2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、
2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、及び
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)
が存在する。ポリイソシアネートは、これらのいずれか1種の異性体を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0067】
脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、
リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
【0068】
脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添加XDI(H6XDI)、
水添加MDI(H12MDI)等が挙げられる。
【0069】
変性イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0070】
[2.3. 反応]
ポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを所定の比率で混合し、原料混合物を所定の温度に加熱すると、原料混合物が発泡及び硬化し、本発明に係る発泡体が得られる。反応方法、反応条件等は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
【0071】
[3. 保温庫]
本発明に係る保温庫は、本発明に係る発泡体を備えている。保温庫において、発泡体は、断熱材として用いられる。保温庫としては、例えば、米庫、冷蔵庫、冷凍庫などがある。
【0072】
[4. 作用]
独立気泡を含むポリウレタンフォーム(硬質ポリウレタンフォーム)を製造する場合において、発泡剤としてフロン化合物を用いると、外観が良好なポリウレタンフォームを比較的容易に製造することができる。しかしながら、フロン化合物は、供給安定性が低く、高価である。
一方、発泡剤としての水は、供給安定性が高く、安価である。しかしながら、発泡剤として水を用いると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じやすい。これは、ポリオールプレミックスとポリイソシアネートとを混合したときに、増粘しやすくなるためと考えられる。
【0073】
これに対し、ポリオール成分、整泡剤、触媒、及び、発泡剤を含むポリオールプレミックスにおいて、ポリオール成分及び触媒の種類を最適化すると、発泡剤として水を用いた場合であっても、外観が良好なポリウレタンフォームを得ることができる。これは、ポリオール成分及び触媒の種類を最適化することによって、ポリオールプレミックスとポリイソシアネートとを混合した場合であっても、増粘しにくくなるためと考えられる。
【0074】
例えば、ポリオール成分として、官能基数が多いショ糖系ポリエーテルポリオールBを用いる場合において、ポリオールプレミックスに含まれる他の成分の種類及び/又は含有量が不適切であるときには、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。これに対し、官能基数が少ないショ糖系ポリエーテルポリオールBを用いると、外観不良が生じ難くなる。
【0075】
樹脂化触媒としてアミン触媒A(高級グリコール系アミン触媒)を用いると、外観不良が生じ難くなる。これは、アミン触媒Aは適度な水酸基価を持ち、樹脂化活性と泡化活性のバランスが良く、樹脂化反応と泡化反応がバランス良く進行するためと考えられる。
【0076】
ポリオール成分として、高水酸基価、低分子量のポリエーテルポリオールDをさらに用いると、外観不良が生じ難くなる場合がある。これは、架橋密度が高くなるためと考えられる。
【0077】
さらに、整泡剤として、整泡力の強い整泡剤(例えば、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OR末端))を用いると、ポリウレタンフォームに外観不良が生じる場合がある。これに対し、整泡力の強い整泡剤に比べて整泡力のやや弱い整泡剤(例えば、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH末端)などの分子末端に水酸基を持つ化合物)を用いると、外観不良が生じ難くなる。これは、適度に整泡力が強いOH末端を持つ整泡剤は、適度な流動性を持つため、整泡力が強いOR末端を持つ整泡剤と比べて、ポリウレタンフォームの端部の倒れこみによるボイドの発生を抑制できるためと考えられる。
【実施例0078】
(実施例1~6、比較例1~4)
[1. ポリオールプレミックスの作製]
ポリエーテルポリオールAには、以下のものを用いた。
(a)ポリエーテルポリオールA1:官能基数4、水酸基価400mgKOH/g、品名「PE-400」、SKC製
【0079】
ショ糖系ポリエーテルポリオールBには、以下のものを用いた。
(a)ショ糖系ポリエーテルポリオールB1:官能基数5.4、水酸基価450mgKOH/g、粘度15,000mPa・s(B型粘度測定温度:25℃)、品名「SR-453」、SKC製
(b)ショ糖系ポリエーテルポリオールB2:官能基数4.4、水酸基価460mgKOH/g、粘度5,000mPa・s(B型粘度測定温度:25℃)、品名「EXCENOL 100S」、AGC(株)製
【0080】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールCには、以下のものを用いた。
(a)芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC1:官能基数4、水酸基価400mgKOH/g、粘度16,000mPa・s(B型粘度測定温度:25℃)、品名「LUPRANOL VP9345」、BASF製
(b)芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC2:官能基数4、水酸基価400mgKOH/g、粘度17,000mPa・s(B型粘度測定温度:25℃)、品名「POLYOL RA-401」、SKC製
(c)芳香族アミン系ポリエーテルポリオールC3:官能基数4、水酸基価400mgKOH/g、粘度8,500mPa・s(B型粘度測定温度:25℃)、品名「LUPRANOL VP9234」、BASF製
【0081】
ポリエーテルポリオールDには、以下のものを用いた。
(a)ポリエーテルポリオールD1:官能基数3、水酸基価160mgKOH/g、分子量1,000、品名「LUPRANOL TP1000」、BASF製
(b)ポリエーテルポリオールD2:官能基数3、水酸基価400mgKOH/g、分子量430、品名「EXCENOL 430」、AGC(株)製
【0082】
その他のポリオールには、以下のものを用いた。
(a)ソルビトール系ポリエーテルポリオールE1:官能基数6、水酸基価450mgKOH/g、品名「SANNIX SP-750」、三洋化成工業(株)製
【0083】
難燃剤には、以下のものを用いた。
(a)難燃剤A:トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート
(b)難燃剤B:トリエチルホスフェート
【0084】
整泡剤には、以下のものを用いた。
(a)整泡剤A:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH基末端)、品名「SF2937F」、ダウ東レ(株)製
(b)整泡剤B:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OR末端)、品名「SF2938F」、ダウ東レ(株)製
(c)整泡剤C:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH末端)、品名「SZ1711」、ダウ東レ(株)製
(d)整泡剤D:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OR末端)、品名「SZ1677」、ダウ東レ(株)製
【0085】
触媒には、以下のものを用いた。
(a)触媒A(イミダゾール系触媒):N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン約12%、1-メチルイミダゾール約48%、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル約40%
(b)触媒B(泡化触媒):ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル70%、ジプロピレングリコール30%
【0086】
(c)触媒C(トリアジン系触媒):N,N',N"-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン
(d)触媒D(泡化触媒):ペンタメチルジエチレントリアミン
(e)触媒E(バランス触媒):N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン
【0087】
(f)触媒F(アミン系触媒A):メチルアミン・1,6-ヘキサンジオール重縮合物(HO-[R1-N(R2)]n-R1-OH、但し、R1はヘキサメチレン基、R2はメチル基、nは3.5(平均重合度)、水酸基価:217mgKOH/g)
(g)触媒G(アミン系触媒B):N,N-ジメチルドデシルアミン
(h)触媒H(泡化触媒):2,2-ジモルホリノジエチルエーテル
【0088】
発泡剤には、水を用いた。
上記原料を所定の比率で混合し、ポリオールプレミックスを得た。表1に、各ポリオールプレミックスの原料配合を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
[2. ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートには、以下のものを用いた。
(a)ポリイソシアネートA: 粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO含有率31%、品名「LUPRANATE M20S」、BASF製
【0091】
[3. 試験方法]
[3.1. モールド成型及び外観評価]
発泡成形型には、内寸が200mm×2000mm×t50mmの金型(2mブレッドモールド)を用いた。所定量のポリオールプレミックスと所定量のポリイソシアネートとを混合した。表2に、表1に記載の合計質量に対するポリイソシアネートの質量、及び、イソシアネートインデックス(Index)を示す。
【0092】
【表2】
【0093】
得られた原料混合物を、50℃に維持された2mブレッドモールドに注入し、型内において原料混合物を発泡及び硬化させた。所定時間(15分)経過後、脱型し、ポリウレタンフォームを得た。
さらに、得られたポリウレタンフォームの外観を目視で評価した。評価は、先端形状、上面、下面について行った。表3に、外観の評価基準を示す。
【0094】
【表3】
【0095】
[3.2. 反応性]
ポリオールプレミックスとポリイソシアネートとをそれぞれ25℃に調温した。その後、縦150mm×横150mm×高さ150mmの容器に各原料を投入し、ポリオールプレミックスとポリイソシアネートとを混合した。各原料の配合比率は、表2と同一とした。混合は、攪拌機を用いて3600rpmで5秒間攪拌することにより行った。さらに、JIS A 9511に準拠して、原料混合物のクリームタイム、ゲルタイム、ライズタイムを測定した。
【0096】
なお、「クリームタイム」とは、混合液が膨らみ始めるタイミングを目視で確認した時間をいう。
「ゲルタイム」とは、混合開始から樹脂の硬化が開始するまでの時間をいう。
「ライズタイム」とは、発泡フォームの上昇が停止したタイミングを目視で確認した時間をいう。
【0097】
さらに、得られた原料混合物を発泡及び硬化させ、密度測定用のポリウレタンフォームを得た。1日養生した後、JIS A 9511に準拠して、ポリウレタンフォームのフリー密度を測定した。
【0098】
[4. 結果]
表4に、結果を示す。表4より、以下のことが分かる。
(1)比較例1は、外観不良が発生した。これは、触媒Aを使用したことに加えて、原料として、官能基数が多いショ糖系ポリオール(SR453)、架橋密度が低い(分子量の大きさに対して、官能基数が少ない)グリセリン系ポリオール(TP1000)、及び、整泡力が強すぎる整泡剤A(SF2937F)を使用したためと考えられる。
(2)比較例2は、外観不良が発生した。これは、触媒Eを使用したことに加えて、原料として、官能基数が多いショ糖系ポリオール(SR453)、架橋密度が低い(分子量の大きさに対して、官能基数が少ない)グリセリン系ポリオール(TP1000)、及び、OR末端を持つ整泡剤B(SF2938F)を使用したためと考えられる。
【0099】
(3)比較例3は、外観不良が発生した。これは、原料としてソルビトール系ポリオール(SP-750)を使用したためと考えられる。
(4)比較例4は、外観不良が発生した。これは、触媒Eを使用したことに加えて、TDA系ポリオール(VP9234)の添加量が20部と多すぎるためと考えられる。
(5)実施例1~6は、いずれも比較例1~6に比べて外観が良好であった。
(6)実施例5~6は、実施例1~4に比べて外観が良好であった。これは、適度に整泡力が強いOH末端を持つ整泡剤C(SZ1711)を使用したためと考えられる。
【0100】
【表4】
【0101】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係るポリオールプレミックスは、米庫、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、船舶、車輌、プラント、建材、家具などの断熱材として使用されるポリウレタンフォームを製造するための原料として使用することができる。