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  • 特開-建築物の屋根 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158569
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】建築物の屋根
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20241031BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E04B7/02 521C
E04B7/02 521Z
E04B7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073872
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊介
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 義博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓海
(57)【要約】
【課題】建築物の所望の面においてのみ庇部分の張出し量を大きくすることが可能な建築物の屋根を提供することである。
【解決手段】鉄筋コンクリート造の建築物の屋根1であって、棟部11と、一対の第1傾斜部12と、第2傾斜部13とを有する寄棟屋根に形成された屋根本体部10と、第1傾斜部12の上面に取り付けられて第1傾斜部12を覆うとともに屋根本体部10から外方に張り出す板状の第1屋根材14aと、第2傾斜部13の上面に取り付けられて第2傾斜部13を覆うとともに屋根本体部10から外方に張り出す第2屋根材14bと、第1傾斜部12と第1屋根材14aとの間及び第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間の何れか一方に配置され、第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1及び第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2の何れか一方を何れか他方よりも高くするスペーサ体20と、を有する建築物の屋根1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の建築物の屋根であって、
棟部と、前記棟部の両側に設けられた一対の第1傾斜部と、一対の前記第1傾斜部の側縁に連なる第2傾斜部とを有する寄棟屋根に形成された鉄筋コンクリート製の屋根本体部と、
前記第1傾斜部の上面に取り付けられて前記第1傾斜部を覆うとともに屋根本体部から外方に張り出す板状の第1屋根材と、
前記第2傾斜部の上面に取り付けられて前記第2傾斜部を覆うとともに屋根本体部から外方に張り出す第2屋根材と、
前記第1傾斜部と前記第1屋根材との間及び前記第2傾斜部と前記第2屋根材との間の何れか一方に配置され、前記第1傾斜部から前記第1屋根材までの高さ及び前記第2傾斜部から前記第2屋根材までの高さの何れか一方を何れか他方よりも高くするスペーサ体と、を有することを特徴とする建築物の屋根。
【請求項2】
前記スペーサ体が、鉄骨を組み合わせて構成されている、請求項1に記載の建築物の屋根。
【請求項3】
前記スペーサ体が、前記第2傾斜部と前記第2屋根材との間に設けられている、請求項1または2に記載の建築物の屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の建築物の屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、学生寮、オフィスビル、商業ビルなどの鉄筋コンクリート造の建築物の屋根として、鉄筋コンクリート製の屋根本体部と、屋根本体部の上面に取り付けられて屋根本体部の上面を覆う板状の屋根材と、を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-151124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような建築物の屋根においては、屋根材を屋根本体部の下端から外方に張り出させることで、建築物に庇部分を構成することができる。
【0005】
一方、上記のような建築物の屋根において、屋根本体部を寄棟屋根に構成することが考えられる。この場合、屋根本体部を覆う屋根材も屋根本体部に対応した寄棟屋根の形状とされる。
【0006】
しかし、上記構成の寄棟屋根では、建築物の正面ないし側面などのある1つの面において庇部分の張出し量を増加させると、建築物の他の面における庇部分の張出し量も比例して大きくなり、建築物の所望の面においてのみ庇部分の張出し量を大きくすることができない。そのため、例えば壁を共有した構成の長屋の一部を解体し、その解体後のスペースに新たな建築物を建設する際など、建築物の側方のスペースが狭小な場合に、建築物の正面に張出し量の大きな庇部分を設けることが困難になるなどの問題が生じることになる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、建築物の所望の面においてのみ庇部分の張出し量を大きくすることが可能な建築物の屋根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建築物の屋根は、鉄筋コンクリート造の建築物の屋根であって、棟部と、前記棟部の両側に設けられた一対の第1傾斜部と、一対の前記第1傾斜部の側縁に連なる第2傾斜部とを有する寄棟屋根に形成された鉄筋コンクリート製の屋根本体部と、前記第1傾斜部の上面に取り付けられて前記第1傾斜部を覆うとともに屋根本体部から外方に張り出す板状の第1屋根材と、前記第2傾斜部の上面に取り付けられて前記第2傾斜部を覆うとともに屋根本体部から外方に張り出す第2屋根材と、前記第1傾斜部と前記第1屋根材との間及び前記第2傾斜部と前記第2屋根材との間の何れか一方に配置され、前記第1傾斜部から前記第1屋根材までの高さ及び前記第2傾斜部から前記第2屋根材までの高さの何れか一方を何れか他方よりも高くするスペーサ体と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の建築物の屋根は、上記構成において、前記スペーサ体が、鉄骨を組み合わせて構成されているのが好ましい。
【0010】
本発明の建築物の屋根は、上記構成において、前記スペーサ体が、前記第2傾斜部と前記第2屋根材との間に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建築物の所望の面においてのみ庇部分の張出し量を大きくすることが可能な建築物の屋根を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る建築物の屋根を備えた躯体の概略図である。
図2図1に示す躯体の平面図である。
図3図2におけるA-A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る建築物の屋根について詳細に例示説明する。
【0014】
図1に示す本実施形態に係る建築物の屋根1(以下、単に「屋根1」とする。)は、鉄筋コンクリート造の建築物2の躯体3を構成するものである。建築物2は、例えば住宅、学生寮、オフィスビル、商業ビルなどとして利用することができるものであり、複数の階層2a~2d及び吹抜け部分2eを有している。
【0015】
なお、建築物2は、鉄筋コンクリート造であれば、その階層数、吹抜け部分2eの有無、全体の形状などは種々変更可能である。
【0016】
躯体3は、鉄筋コンクリート造であり、外壁4、各階層2a~2dの床スラブ5a~5d、内壁6、基礎7及び屋根本体部10を備えている。
【0017】
屋根本体部10は、屋根1を構成する部分である。屋根本体部10は、外壁4に支持された鉄筋コンクリート製のスラブとなっており、外壁4に囲われた室内空間部分の上方を閉塞している。
【0018】
図2に示すように、屋根本体部10は寄棟屋根に形成されている。すなわち、屋根本体部10は、水平方向に真っ直ぐに延びる棟部11と、棟部11を挟んで棟部11の両側に設けられた一対の台形形状の第1傾斜部12と、一対の第1傾斜部12の側縁に連なるとともに棟部11の長手方向両側に広がる一対の三角形状の第2傾斜部13とを有している。一対の第1傾斜部12は、それぞれ水平方向に対して90度未満の角度で互いに逆向きに傾斜しており、一対の第2傾斜部13は、それぞれ水平方向に対して90度未満の角度で互いに逆向きに傾斜している。
【0019】
一対の第1傾斜部12の下方側の縁部及び一対の第2傾斜部13の下方側の縁部は、それぞれ外壁4の上端に連なっている。すなわち、一対の第1傾斜部12の下方側の縁部及び一対の第2傾斜部13の下方側の縁部は、何れも、外壁4の外側面に対して外方に張り出していない。
【0020】
屋根本体部10の上には板状の屋根材14が設けられ、屋根本体部10の上面全体が屋根材14で覆われている。屋根材14は、それぞれ対応する第1傾斜部12の上面に取り付けられて対応する第1傾斜部12を覆う一対の板状の第1屋根材14aと、それぞれ対応する第2傾斜部13の上面に取り付けられて対応する第2傾斜部13を覆う一対の板状の第2屋根材14bと、を有している。
【0021】
図1に示すように、一対の第1屋根材14aの下方側の縁部から上方に向けた所定範囲の部分は、それぞれ第1傾斜部12の下端から外方に張り出しており、当該張出した部分は、それぞれ外壁4の外側面から張り出す第1庇部分16を構成している。
【0022】
図3に示すように、第2屋根材14bの下方側の縁部から上方に向けた所定範囲の部分は、それぞれ第2傾斜部13の下端から外方に張り出しており、当該張出した部分は、それぞれ外壁4の外側面から張り出す第2庇部分17を構成している。
【0023】
なお、一対の第1屋根材14aの下方側の縁部と一対の第2屋根材14bの下方側の縁部は互いに連なっており、その地面からの高さは同一である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、屋根本体部10の第1傾斜部12の上面には、複数本の鉄骨15(便宜上、図1においては1本のみに符号を付してある。)が棟部11と平行な姿勢で互いに間隔を空けて固定されており、これらの鉄骨15の上に第1屋根材14aが固定されている。複数の鉄骨15のサイズは全て同一であり、第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1は、第1屋根材14aの全体において一定となっている。
【0025】
これに対し、図3に示すように、屋根本体部10の第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間には、スペーサ体20が配置されている。第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間にスペーサ体20が配置されることにより、第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2は、第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1よりも高くなっている。
【0026】
本実施形態では、スペーサ体20は、鉄骨を組み合わせて構成されている。より具体的には、スペーサ体20は、第2傾斜部13に沿うとともに平面視で棟部11に垂直に配置された下側鉄骨20aと、下側鉄骨20aの上方に下側鉄骨20aに対して間隔を空けて且つ下側鉄骨20aと平行に配置された上側鉄骨20bと、下側鉄骨20aと上側鉄骨20bとを連結する連結鉄骨20cと、ブラケット20d、20eを介して下側鉄骨20aの下端と上側鉄骨20bの下端とを連結する先端側鉄骨20fとを有している。また、上側鉄骨20bの上には、第1傾斜部12と第1屋根材14aとの間に設けられた鉄骨15と同様の複数本の鉄骨15(便宜上、図3においては1本のみに符号を付してある。)が棟部11と平行な姿勢で互いに間隔を空けて固定されており、これらの鉄骨15の上に第2屋根材14bが固定されている。複数の鉄骨15のサイズは全て同一であり、第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2は、第2屋根材14bの全体において一定となっている。
【0027】
詳細は図示しないが、スペーサ体20は、棟部11の長手方向に平行な方向に所定の間隔を空けて並べて複数設けられている。これら複数のスペーサ体20は、ブラケット20dにおいて棟部11と平行な姿勢で配置された連結鉄骨20gで互いに連結されている。
【0028】
なお、第2庇部分17は、その先端部分に雨樋18を備えた構成としてもよい。
【0029】
上記の通り、本実施形態の屋根1においては、屋根本体部10の第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間にスペーサ体20を配置して、第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2を第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1よりも高くするようにしたので、第1屋根材14a(第1庇部分16)の第1傾斜部12から外方への張出し量を一定としつつ、第2屋根材14b(第2庇部分17)の第2傾斜部13から外方への張出し量Lを大きくすることができる。
【0030】
本実施形態においては、屋根本体部10の第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間にスペーサ体20を配置して、第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2を第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1よりも高くするようにしているが、屋根本体部10の第1傾斜部12と第1屋根材14aとの間にスペーサ体20を配置して、第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1を第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2よりも高くするようにしてもよい。この場合、第2屋根材14b(第2庇部分17)の第2傾斜部13から外方への張出し量Lを一定としつつ、第1屋根材14a(第1庇部分16)の第1傾斜部12から外方への張出し量を大きくすることができる。
【0031】
このように、本実施形態の屋根1は、第1傾斜部12と第1屋根材14aとの間及び第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間の何れか一方に配置されるスペーサ体20を有し、このスペーサ体20により、第1傾斜部12から第1屋根材14aまでの高さH1及び第2傾斜部13から第2屋根材14bまでの高さH2の何れか一方を何れか他方よりも高くするようにしたので、建築物2の所望の面にある第1庇部分16ないし第2庇部分17の何れか一方の張出し量のみを大きくすることができる。
【0032】
これにより、スペーサ体20を第2傾斜部13と第2屋根材14bとの間に設けた構成とすることで、例えば壁を共有した構成の長屋の一部を解体し、その解体後のスペースに新たな建築物2を建設する際など、建築物2の側方のスペースが狭小な場合であっても、建築物2の側面に張り出す第1庇部分16の張出し量を小さくしつつ、建築物2の正面に張り出す第2庇部分17の張出し量Lを所望の張出し量を有する大きなものとすることができる。
【0033】
また、例えば建築物2の正面の外壁4に、第2庇部分17の下方に位置して下側庇部分30を設けた構成とした場合には、第2庇部分17の張出し量Lを、当該下側庇部分30の外壁4からの張出し量と同等の張出し量として、建築物2の美観を高めることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、スペーサ体20を、鉄骨を組み合わせて構成されたものとしたので、スペーサ体20を容易且つ安価に構成することができるようにして、屋根1のコストを低減することができる。
【0035】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0036】
例えば、本実施形態では、スペーサ体20を鉄骨で構成されたものとしているが、これに限らず、他の部材で構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 建築物の屋根
2 建築物
2a 階層
2b 階層
2c 階層
2d 階層
2e 吹抜け部分
3 躯体
4 外壁
5a 床スラブ
5b 床スラブ
5c 床スラブ
5d 床スラブ
6 内壁
7 基礎
10 屋根本体部
11 棟部
12 第1傾斜部
13 第2傾斜部
14 屋根材
14a 第1屋根材
14b 第2屋根材
15 鉄骨
16 第1庇部分
17 第2庇部分
18 雨樋
20 スペーサ体
20a 下側鉄骨
20b 上側鉄骨
20c 連結鉄骨
20d ブラケット
20e ブラケット
20f 先端側鉄骨
20g 連結鉄骨
30 下側庇部分
H1 高さ
H2 高さ
L 張出し量
図1
図2
図3