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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158578
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発電システム及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/11 20160101AFI20241031BHJP
   A01G 33/00 20060101ALI20241031BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20241031BHJP
   F03B 13/00 20060101ALI20241031BHJP
   A01K 61/80 20170101ALN20241031BHJP
【FI】
F03D9/11
A01G33/00
F03D80/00
F03B13/00
A01K61/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073887
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】523070425
【氏名又は名称】アキシオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸資
(72)【発明者】
【氏名】飛田和 義行
(72)【発明者】
【氏名】石橋 定己
【テーマコード(参考)】
2B026
2B104
3H074
3H178
【Fターム(参考)】
2B026AA01
2B026AA02
2B026AA05
2B026AB06
2B026AC02
2B026AF04
2B026BB05
2B026CA05
2B026EA02
2B026EB01
2B104AA01
2B104AA25
2B104AA26
2B104AA27
2B104BA09
2B104CC25
2B104CF02
2B104CF12
2B104CF17
2B104CF28
2B104DA03
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB11
3H074BB30
3H074CC11
3H074CC28
3H074CC36
3H074CC50
3H178AA20
3H178AA40
3H178AA43
3H178AA63
3H178BB31
3H178BB90
3H178DD22X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】
風力発電が可能であって効率的に発電を行うことができる発電システム及び発電方法の提供。
【解決手段】
発電システム201は、基体部と、風力発電部2と、水力発電部206と、蓄電部33と、を有している。風力発電部2は、基体部に設置され回転軸となる軸部と、軸部を中心に回転する翼部と、を有する。水力発電部206は、水中に位置し軸部の回転に基づいて回転する水中軸部と、水中軸部に固定された回転体と、を有する。蓄電部33は、風力発電部2及び前記水力発電部206によって発電された電力を蓄える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と、
前記基体部に設置され、回転軸となる軸部と、前記軸部を中心に回転する翼部と、を有する風力発電部と、
水中に位置し、前記軸部の回転に基づいて回転する水中軸部と、前記水中軸部に固定された回転体と、を有する水力発電部と、
前記風力発電部及び前記水力発電部によって発電された電力を蓄える蓄電部と、を有することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記基体部に設けられ、水中にフルボ酸を含む栄養添加剤を投入可能な添加ユニットをさらに有し、
前記添加ユニットは、前記回転体の水流により運ばれる位置に前記添加剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記基体部に設けられ、水中にフルボ酸を含む栄養添加剤を添加可能な添加ユニットと、
前記風力発電部と、前記水力発電部と、を繋ぐ接続ユニットと、
前記添加ユニットにおける前記添加剤の投入量と、前記接続ユニットの接続状態を生後するコントロールユニットと、をさらに有し、
前記コントロールユニットは、環境データを採取するセンサ部を有し、前記センサ部の検出結果に基づいて、前記添加ユニット及び前記接続ユニットを制御することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
基体部と、前記基体部に設置され、回転軸となる軸部と、前記軸部を中心に回転する翼部と、を有する風力発電部により発電するステップと、
水中に位置し、前記軸部の回転に基づいて回転する水中軸部と、前記水中軸部に固定された回転体と、を有する水力発電部により発電するステップと、
前記風力発電部及び前記水力発電部の少なくとも一方によって発電された電力を蓄電部に蓄えるステップと、を有することを特徴とする発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電システム及び発電方法に関し、特に風力発電を備えた水上の発電システム及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への意識が高まりつつあるなか、風力発電の実用化が進んでいる。陸上発電の場合は気象条件、騒音や景観等の周辺環境への影響などから日本で可能な地域は限定される。これに対し、海上発電では大規模施設の設置が可能となる点でメリットが大きい。
【0003】
特許文献1の浮体式の海上風力発電設備では、平面視略三角形状になるように離間して配置されたサイドカラムと、サイドカラムをそれぞれ繋ぐ網状部材と、サイドカラムの略中心に配置された水平軸風車である海上風車と、を有している。網状部材に囲まれた領域が生け簀となり、海上風力発電を行いながら海上の養殖が可能となる。これにより、浮体を備える海上風力発電設備に網状部材を取り付けて生け簀を形成しているため、生け簀用のフロートや係留設備が不要となり、発電と養殖とを同時に行うことができる。また、網状部材がサイドカラムに対して着脱可能に設けられているため、海上風力発電設備の曳航時に抵抗を小さくすることができる。
【0004】
特許文献2の海上風力発電装置は、平面視三角形状の枠組み構造物の頂点に風力発電機を設置し、枠組み構造物に養殖装置を吊り下げて魚類の養殖を行っている。養殖装置は枠組み構造物に対して昇降させる昇降装置と、風力発電機の間に配置され養殖装置に新鮮な水流を供給するためのパドルと、が設けられている。これにより、風力発電装置の設置によって減少する漁場を補うことができる。また、養殖装置を吊り下げることで、荒天時に養殖装置を海底に着底させることで気象の影響を最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-104420号公報
【特許文献2】特開2002-130113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の海上風力発電設備では網状部材によって囲まれた領域を生け簀として利用することにより魚類の養殖を行っていたが、これらの養殖設備で貝類や藻類を養殖することは難しかった。特に、貝類の養殖では、有毒プランクトンを捕食した貝の毒化による麻痺性貝毒や下痢性貝毒の発生が問題となっていた。さらに、生け簀によって覆われた状態では、海上表層のプランクトンを海底付近に存在している生物に提供することで効率的な養殖を行うことは難しかった。
【0007】
夏場に海の表面温度が上昇することで海底の海水との比重差が生じ、海水の上下の混合が発生し難くなることで海底付近に貧酸素水塊が発生する。溶存酸素量(DO値)の低い貧酸素水塊では、微生物が酸素を消費し続けた結果、貧酸素状態となり硫化水素やメタン等の有毒物質の発生リスクが生じていた。このように毒性の強い物質が発生することで、海上における養殖環境の悪化が懸念されていた。
【0008】
特許文献2の海上風力発電装置においても、枠組み構造物に着脱可能に設けられた養殖装置で養殖を行っていたが、貝類や藻類への適用が難しかった。また、枠組み構造物の中央に設けられたパドルは風力発電機により得られた電力の一部で稼働しており、風力発電機の電力が一部消費されてしまっていた。
【0009】
そこで本発明は、風力発電が可能であって効率的に発電を行うことができる発電システム及び発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、基体部と、前記基体部に設置され、回転軸となる軸部と、前記軸部を中心に回転する翼部と、を有する風力発電部と、水中に位置し、前記軸部の回転に基づいて回転する水中軸部と、前記水中軸部に固定された回転体と、を有する水力発電部と、前記風力発電部及び前記水力発電部によって発電された電力を蓄える蓄電部と、を有することを特徴とする発電システムを提供している。
【0011】
また、前記基体部に設けられ、水中にフルボ酸を含む栄養添加剤を投入可能な添加ユニットをさらに有し、前記添加ユニットは、前記回転体の水流により運ばれる位置に前記添加剤を添加することが好ましい。
【0012】
また、前記基体部に設けられ、水中にフルボ酸を含む栄養添加剤を添加可能な添加ユニットと、前記風力発電部と、前記水力発電部と、を繋ぐ接続ユニットと、前記添加ユニットにおける前記添加剤の投入量と、前記接続ユニットの接続状態を生後するコントロールユニットと、をさらに有し、前記コントロールユニットは、環境データを採取するセンサ部を有し、前記センサ部の検出結果に基づいて、前記添加ユニット及び前記接続ユニットを制御することが好ましい。
【0013】
さらに本発明では、基体部と、前記基体部に設置され、回転軸となる軸部と、前記軸部を中心に回転する翼部と、を有する風力発電部により発電するステップと、水中に位置し、前記軸部の回転に基づいて回転する水中軸部と、前記水中軸部に固定された回転体と、を有する水力発電部により発電するステップと、前記風力発電部及び前記水力発電部の少なくとも一方によって発電された電力を蓄電部に蓄えるステップと、を有することを特徴とする発電方法を提供している。
【発明の効果】
【0014】
このような構成によると、風力発電部の軸部の回転に基づいて回転する水中軸部を有する水力発電部を有しているため、自然エネルギーによる効率的な発電を実現することができる。また、水中軸部が軸部の回転に基づいているため、個別に発電する場合と比較して建設コストを削減することができる。また、蓄電部を備えているため、風力発電部及び水力発電部により発電した電力を蓄え、発電システムにおける様々な用途に利用することができる。
【0015】
このような構成によると、フルボ酸を含む栄養添加剤を投入可能な添加ユニットを有しているため、海洋生物の成長を促し効率的に周辺の水域を豊かにすることができる。また、添加ユニットによって投入された栄養添加剤は水流によって周囲に拡散するため、フルボ酸によって周辺水域が豊かになり、豊富なプランクトンによる魚類や藻類の増加等が期待される。
【0016】
本発明によれば、風力発電が可能であって効率的に発電を行うことができる発電システム及び発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態の養殖システムを海上に設置したときの全体斜視図。
図2】本発明の第1の実施の形態の養殖システムの側面図。
図3】本発明の第1の実施の形態の養殖システムのブロック図。
図4】本発明の第1の実施の形態の養殖システムの海中の状態を示す図。
図5】本発明の第1の実施の形態の養殖システムの図4から水流発生部が回転した状態を示す図。
図6】本発明の第1の実施の形態の養殖システムの海中の状態を示す図。
図7】本発明の第1の実施の形態の養殖システムの図6から水流発生部が回転した状態を示す図。
図8】本発明の第2の実施の形態の養殖システムの側面図。
図9】本発明の第2の実施の形態の養殖システムのブロック図。
図10】本発明の第2の実施の形態の養殖システムの底面図。
図11】本発明の第3の実施の形態の発電システムの側面図。
図12】本発明の第3の実施の形態の発電システムのブロック図。
図13】本発明の第4の実施の形態による養殖システムの海中の状態を示す図。
図14】本発明の第4の実施の形態の養殖システムの図13から水流発生部が回転した状態を示す図。
図15】本発明の第5の実施の形態による養殖システムの海中の状態を示す図。
図16】本発明の第6の実施の形態による養殖システムの海中の状態を示す図。
図17】本発明の第7の実施の形態による養殖システムの海中の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態による養殖システム1を図1から図7に基づき説明する。本実施の形態で養殖可能な海洋生物は、藻類、貝類、魚類、甲殻類、棘皮動物である。ここでいう藻類とは、生物の中からコケ植物、シダ植物、及び種子植物を除いたものであり、水中生活をする同化色素を有する植物を一括して称したものである。この藻類は、面積あたりの増殖性・収穫量に優れ、油脂をはじめとする有用物質を多量に蓄積し、健康食品やサプリメント、化学原料、バイオ燃料等の原料になり得て利用価値が高い。
【0019】
本実施の形態の養殖システム1によって培養される藻類は、多細胞生物であるアオノリ、アオサ等の緑藻類、カギケノリ、アサクサノリ、フノリ、テングサ等の紅藻類、コンブ、ヒジキ、モズク、ワカメの褐藻類等の海藻類又は共生藻である。貝類としては、牡蛎、ホタテ、アワビ、シジミ、アサリ等が対象となり、棘皮動物としてはウニ、ナマコが対象となる。本実施の形態では、養殖システム1において牡蛎棚20で牡蠣を養殖している。なお、魚類を養殖する際は、網等で海中に生け簀を区画する。
【0020】
養殖システム1は、海洋100に浮かぶ基体部10上に設置され、図4に示すようにアンカー11によって海底12に固定される。風力発電部2と、コントロールユニット3と、添加ユニット4と、接続ユニット5と、水流発生部6と、から構成される。図2に示すように、風力発電部2は、翼部21と、支柱22と、基部23と、から構成される。
【0021】
翼部21は、5つのブレード21Aを有する揚力タイプの垂直軸型風車であって無指向性となり、水平軸型風車のように頻繁に変化する風向に回転面を対向させる必要がない。翼部21は、風力発電部2は地上からの垂直方向の風速分布の影響を受けることもなく、ブレード21A先端における風切り音も少ない。ブレード21Aは、強風時においては大きな空気力学的負荷を受けるとともに、高速回転時は慣性力による負荷を受ける。本実施の形態では、翼部21として垂直軸型を用いたが、水平軸型を用いてもよい。また、揚力タイプでダリウス式を用いてもよく、抗力タイプのサボニウス式、パドル式、クロスフロー式、又はS字ロータ式を用いてもよい。水平軸型においては、プロペラ式、セイルウィング式、オランダ式、多翼式を用いてもよい。支柱22には、翼部21により回転される軸部22Aが内蔵されている。翼部21の回転によって風から得られたエネルギーは、軸部22Aを介して基部23内の発電機によって電力に変換され、コントロールユニット3の蓄電部33に蓄えられる。
【0022】
コントロールユニット3は基体部10上に配置され、制御部31と、操作部32と、蓄電部33と、センサ部34と、通信部35と、を有している。制御部31は、養殖システム1全体を制御しており、専用のマイコンで構成されるが、汎用コンピュータを用いてもよい。操作部32は、作業者によって操作されるタッチパネル式であり、外部端末を接続することにより操作を行うことができる。
【0023】
蓄電部33は、風力発電部2によって発電された電力を蓄えており、満充電になると図示せぬ海底ケーブルによって陸上又は他の養殖システムに送電される。本実施の形態では、リチウムイオン電池を用いるが、NAS電池、ニッケル水素電池、又は鉛蓄電池であってもよい。
【0024】
センサ部34は、蓄電部33の充電状態を検知する電池センサ34Aと、海洋100の水温、流速、水流の向き、濁り、を検知する海洋センサ34Bと、及び風力、風向、天気、湿度、温度、を検知する環境センサ34Cと、添加ユニット4の状態を検知する添加センサ34Dと、から構成される。
【0025】
通信部35は、外部端末と無線通信可能であって、養殖システム1の運転状態を遠隔監視することができる。センサ部34によって採取されたデータは、一時的に制御部31に記憶され通信部35を介して外部に定期的に送信される。
【0026】
添加ユニット4は基体部10上に配置され、貯蔵タンク41と、流量制御部42と、から構成される。貯蔵タンク41は、海洋100に添加する栄養添加剤43を貯蔵している。本実施の形態では、栄養添加剤43としてフルボ酸を含有する腐植液を用いる。栄養添加剤43は、木酢液にバイオマス原料である有機物を漬け込むことにより生成され、ヒューミン、フミン酸、フルボ酸を主成分とする。使用する木酢液は、水分が80%以上,有機酸含有量が1.0%以上でpH(H2O)5.0以下,電気伝導度が1.0mS/cm以上であることが望ましい。栄養添加剤43の製造時は、タンクに容量比で有機物1.0に対して木酢液を0.5以上の割合で混合して撹拌機等で攪拌し、少なくとも3時間以上、有機物の種類によっては600時間程度漬け込む。本実施の形態の栄養添加剤43は、得られた腐植液に公知の無気泡溶解装置を利用して二酸化炭素を溶け込ませる。これによると、腐植液に溶解している気体を二酸化炭素に置換することができるため、曝気と比較して高い二酸化炭素濃度を実現することができる。溶解させるガスは、二酸化炭素に限定されず、養殖対象に応じて窒素、水素等を選択してもよい。なお、栄養添加剤43として製造時に用いた有機物を粉砕して混入してもよく、直接混入してもよい。また、栄養添加剤43の製造のために菌床を用いた場合には、廃菌床を栄養添加剤43に混入してもよい。
【0027】
本実施の形態におけるヒューミン、フルボ酸、及びフミン酸は、日本腐植物質学会の属する国際腐植物質学会の分類に基づき、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊して生じる化学構造が特定されていない有機物(非生体有機物)である腐植物のうち、アルカリ・酸に対する溶解性での分類を行う。すなわち、フルボ酸は、アルカリに可溶であり、酸に可溶な成分であって、フミン酸もアルカリに可溶であるが、酸に不溶な成分である。ヒューミンは、アルカリに不溶であり、かつ、酸に不溶な成分である。フルボ酸液等に含まれているフルボ酸の程度は、フルボ酸が混合物質であり、かつ他の有機物の有無の影響も大きいため具体的な成分ごとの濃度で規定することが適切ではなく、具体的な数値では規定できない場合がある。
【0028】
ヒューミン、フルボ酸、及びフミン酸は多くのカルボキシル基(-COOH)やフェノール性水酸基(R-OH)を含んでおり、これらの結合の末端にある酸素(O)と水素(H)の結合力は極めて弱いため末端の水素が結合から離れると取り残された酸素には負電荷が発生する。二価鉄のような鉄イオンは陽イオンであるため、負電荷の腐植と結合する。このようにフルボ酸と鉄イオンが結合した物質をフルボ酸鉄と呼ぶ。栄養添加剤43は、フルボ酸鉄を豊富に含んでいることが望ましい。
【0029】
二価鉄は、三価鉄へと酸化すると水酸化物として沈殿しやすくなるため、海洋100や海底12のプランクトン14や養殖対象である藻類等に吸収され難い。これに対し、フルボ酸と鉄イオンが結合したフルボ酸鉄の状態だと、安定的なキレート化合物として存在するためプランクトン14や藻類等に取り込まれやすくなる。これにより、養殖システム1において効率的な養殖を行うことができるとともに海洋100が豊かになり、養殖システム1の周囲に牡蛎の栄養となるプランクトン14が豊富に発生する。
【0030】
添加センサ34Dは、栄養添加剤43の残量、DO値、溶存二酸化炭素量、温度等を検知している。流量制御部42は、図1に示す供給パイプ44によって海洋100に供給する栄養添加剤43の量を制御している。海洋100に供給される栄養添加剤43は、制御部31によって、センサ部34の検知結果に基づいて制御される。
【0031】
接続ユニット5は、風力発電部2と水流発生部6とを接続しており、回転制御部51と、駆動部52と、を有している。接続ユニット5は、一部が基部23に収容され、基体部10上に配置される。回転制御部51は、制御部31からの信号に基づいて、水流発生部6の回転を図5に示す正回転と、逆方向の逆回転と、を切り替えるとともに、翼部21の回転する軸部22Aと水流発生部6の水中軸部62との連結及び解除を制御する。回転制御部51によって水流発生部6が正回転に駆動すると、図5に示すように海洋100の表層から海底12に向かう下降流となる渦Vが発生する。回転制御部51によって水流発生部6が逆回転に駆動すると、海底12から海洋100の表層に向かう上昇流となる渦が発生する。
【0032】
駆動部52は、蓄電部33から供給される電力により駆動する。駆動部52は、回転制御部51が軸部22Aと水流発生部6とを切り離したとき、水流発生部6に連結され、水流発生部6を回転駆動する。このときの回転方向は、回転制御部51によって制御される。
【0033】
水流発生部6は海洋100に設置され、回転体61と、水中軸部62と、を有する。回転体61は、略円錐形状であってスクリュー状に溝61aが形成されている。図5に示すように、回転体61が正回転することによって、溝61aに沿って海水が流れ表層の海水が下降流の渦Vによって海底12に移動する。回転体61の形状や大きさは、養殖システム1を設置する海域、水深等に応じて任意に設定することができる。
【0034】
水中軸部62は、軸部22Aと同軸に位置し、回転制御部51によって両者が連結されているときは、翼部21の回転が軸部22Aを介して水中軸部62に伝達し、回転体61が回転して渦Vを発生させる。このとき風力発電部2では、一部のエネルギーが発電機に供給され、残りのエネルギーが回転体61の回転に利用される。
【0035】
次に、養殖システム1の運転状態における各ユニットの動作について説明する。図1に示すように、養殖システム1を牡蛎棚20の略中央に配置し、図4に示すようにアンカー11で海底12に固定する。風で翼部21が回転すると、軸部22Aを介して基部23内の発電機によって発電され、蓄電部33に蓄電される。回転制御部51が軸部22Aと水中軸部62とを連結しているときは、図5及び図7に示すように、水流発生部6が回転して下降流である渦Vが発生する。下降流によって海底12付近に存在する重金属や嫌気性微生物によって生成されたメタンや硫化水素等の有害物質13を養殖システム1の近傍から遠ざけるとともに貧酸素水塊の発生を抑制し、良好な環境で牡蛎棚20を養殖することができる。また、栄養添加剤43に含まれるフルボ酸鉄により硫化水素を硫化鉄として無害化することができる。さらに、図7に示すように、海洋100の表層付近に漂うプランクトン14が渦Vによって海底付近に運ばれるため、養殖システム1近傍において栄養豊富な海洋100を実現することができるため効率的な牡蛎棚20の養殖が可能となる。
【0036】
制御部31は、流量制御部42を制御することにより栄養添加剤43を海洋100に投入する。栄養添加剤43は、渦Vによって海底付近まで運ばれ養殖対象である牡蛎棚20及び周辺のプランクトン14により捕食され、プランクトン14が繁殖する。これにより、養殖システム1周辺の海洋100が栄養豊富な状態となって環境が改善する。制御部31は、海洋センサ34B、環境センサ34C、及び添加センサ34Dからの検知結果に基づいて、栄養添加剤43の投入量を制御する。
【0037】
養殖システム1で使用されるすべての電力は、風力発電部2によって発電され蓄電部33に蓄えられた電力により賄われる。制御部31は、環境センサ34Cにより海洋100が凪で無風状態であることを検知したときは、回転制御部51によって軸部22Aと水中軸部62とを切り離し、水流発生部6を駆動部52により駆動する。これにより、外部環境に影響を受けることなく水流発生部6によって渦Vを発生させることができる。
【0038】
回転制御部51は、軸部22Aの回転を逆回転として水中軸部62に伝達することにより、水流発生部6を図5及び図7に示す状態から逆方向に回転させる。これにより、渦Vとは逆方向に回転する上昇流となる渦が発生する。上下方向における海水の移動が生じるため、海洋100の表層に漂うプランクトン14が広く分散し、効率的に牡蛎棚20にプランクトン14及び栄養添加剤43を届けることができる。また、海洋センサ34Bからの海流や海水温の変化に応じて、水流発生部6の回転方向を変えることにより上昇流と下降流とを使い分けることができる。
【0039】
このような構成によると、翼部21の回転に基づいて海中に水流を発生させる水流発生部6が設けられているため、海底に貧酸素水塊が形成され硫化水素等の発生を抑制することができる。これにより、養殖システム1周辺の育成環境を良好に保つことができる。また、図7に示すように、水流発生部6により発生した水流で表層に存在しているプランクトンを深い海域まで届けることができる。これにより、養殖システム1において、効率的な養殖が可能となる。自然界において、ホッケが表層に存在するプランクトンを捕食するために集団になって回遊して渦(ホッケ渦)を発生させ、下降流により中層以下にいるホッケに餌を与えることが知られている。本発明においては、図7に示すように、このような渦を水流発生部6によって発生させ、表層のプランクトン14を中層以下に届けることができる。
【0040】
風力発電部2の回転軸である軸部22Aの回転に基づいて水流発生部6の水中軸部62が回転するため、風力発電部のエネルギーを利用して水流発生部6で海中に水流を発生させることができる。これにより、省エネルギーでの養殖システム1の運用が可能となる。また、蓄電部33を備えているため、風力発電部2により発電した電力を蓄え、養殖システム1における様々な用途に利用することができる。
【0041】
このような構成によると、フルボ酸を含む栄養添加剤43を投入可能な添加ユニット4を有しているため、海洋生物の成長を促し効率的に養殖を行うことができる。また、添加ユニット4によって投入された栄養添加剤43は水流によって周囲に拡散するため、効率的な養殖が可能となる。さらに、フルボ酸によって周辺海域が豊かになり、豊富なプランクトンの発生による魚類や藻類の増加等が期待される。
【0042】
このような構成によると、接続ユニット5が水流発生部6の回転方向を切り替え可能であるため、様々な方向の水流を発生させることができる。これにより、海底の貧酸素水塊形成による硫化水素等の発生を抑制するとともに、水流表層に存在しているプランクトンを深い海域まで届けることができ、効率的な養殖が可能となる。また、接続ユニット5で軸部22Aと水中軸部62とを切り離して駆動部52で水流発生部6を駆動させることにより、無風状態で風力発電部2の翼部21が回転していない状態であっても水流発生部6を回転させ、養殖環境を良好に保つことができる。さらに、軸部22Aと水中軸部62が同軸上に位置しているため、効率的に軸部22Aの回転を水中軸部62に伝えることができる。
【0043】
このような構成によると、コントロールユニット3がセンサ部34の検知結果に基づいて栄養添加剤43の投入量を制御しているため、養殖システム1によって適切な養殖環境を維持することができる。また、蓄電部33の状態に基づいて接続ユニット5を制御するため、例えば、蓄電部33の蓄電量が低い状態では軸部22Aと水中軸部62とを接続し、電力消費量を低減することが可能となる。これにより養殖システム1全体で、省エネを実現することができる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図8から図10を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0045】
養殖システム101の基体部10の底面には、海洋100の表層近傍を照らす発光部102が設けられている。発光部102は、蓄電部33の電力によって駆動し、図10に示すように、基体部10の長手方向に延び水流発生部6を挟むように設けられ、複数のLED121により構成される。発光部102は、制御部31によって発光状態が制御され、夜間は集魚灯として活用することもできる。発光部102の波長は、養殖対象に応じて任意に設定することができる。海洋生物を効率的に光合成させるためには、自然の太陽光に近いすべての波長を含んでいることが好ましい。
【0046】
このような構成によると、発光部102の光によって植物性プランクンが活性化し、動物性プランクトンが捕食するために周囲に集まり、それを捕食する小魚等が集まる。これにより、夜間であっても養殖システム101の周辺においてプランクトン14が活性化した状態を維持することができるため、効率的な養殖が可能となる。さらに、養殖システム101の周辺に定置網を設置することにより、発光部102が集魚灯となって効率的に漁を行うことができる。
【0047】
このような構成によると、フルボ酸を含む栄養添加剤43を投入可能な添加ユニット4を有しているため、海洋生物の成長を促し効率的に養殖を行うことができる。また、添加ユニット4によって投入された栄養添加剤43は水流によって周囲に拡散するため、効率的な養殖が可能となる。さらに、フルボ酸によって周辺海域が豊かになり、発光部102に集まる豊富なプランクトンによる魚類や藻類の増加等が期待される。
【0048】
また、蓄電部の電力によって発光部102を発光させるため、外部からの送電等を行う必要がない。これにより、低コストでの養殖システム101を実現することができる。
【0049】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図11及び図12を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0050】
発電システム201は、川の落差部分やダムの排水部に設置され、土台210上に設置された風力発電部2と、土台210の下方に設置された水力発電部206と、を有している。水力発電部206は、水車261と、軸部22Aと同軸の水中軸部262と、を有している。回転制御部51は、軸部22Aと水中軸部262との連結及び解除を行う。
【0051】
土台210上に設置された基部23には発電部223が収容され、風力発電部2の翼部21及び水車261により発電され一部が蓄電部33に電力が蓄えられ、残りが図示せぬ送電線により外部に送られる。このとき、制御部31が流量制御部42を制御することにより栄養添加剤43が川に流されるため、栄養添加剤43に含まれるフルボ酸が鉄と結合してフルボ酸鉄となり、海に運ばれプランクトンによって吸収される。
【0052】
このような構成によると、風力発電部2の軸部22Aの回転に基づいて回転する水中軸部262を有する水力発電部を有しているため、自然エネルギーによる効率的な発電を実現することができる。また、水中軸部262が軸部22Aの回転に基づいているため、個別に発電する場合と比較して建設コストを削減することができる。また、蓄電部33を備えているため、風力発電部2及び水力発電部206により発電した電力を蓄え、発電システム201における様々な用途に利用することができる。
【0053】
このような構成によると、フルボ酸を含む栄養添加剤43を投入可能な添加ユニット4を有しているため、海洋生物の成長を促し効率的に周辺の水域を豊かにすることができる。また、添加ユニット4によって投入された栄養添加剤43は水流によって周囲に拡散するため、フルボ酸によって周辺水域が豊かになり、豊富なプランクトンによる魚類や藻類の増加等が期待される。
【0054】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図13及び図14を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0055】
養殖システム301は、回転体361と、水中軸部362と、を有する水流発生部306を有している。水中軸部362は、軸部22Aと同軸であって接続ユニット5により軸部22Aとの連結及び解除が制御される。
【0056】
水中軸部362の下端に回転体361が設けられ、回転体361は海底12近傍に位置している。回転体361は、略短円柱形状であって、複数の傾斜したフィン361Aが円周方向全周に亘って設けられている。
【0057】
回転制御部51が軸部22Aと水中軸部362とを連結しているときは、図14に示すように、水流発生部306が回転して下降流である渦V2が発生する。下降流によって海底12付近に存在する重金属や嫌気性微生物によって生成されたメタンや硫化水素等の有害物質13を養殖システム301の近傍から遠ざけることができるため、良好な環境で牡蛎棚20を養殖することができる。また、図14に示すように、海洋100の表層付近に漂うプランクトン14が渦V2によって海底付近に運ばれるため、養殖システム301近傍において栄養豊富な海洋100を実現することができ、効率的な牡蛎の養殖が可能となる。
【0058】
次に、本発明の第5の実施の形態について、図15を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0059】
養殖システム401は、水流発生部6の回転体61の上面に上方に突出した気泡発生部444が設けられている。気泡発生部444は、基体部10に形成された貫通孔10aにより海面から露出している。水流発生部6の回転により気泡発生部444が海面を攪拌して気泡414を発生させることにより海水中に空気中の酸素等を取り込み、渦Vによって養殖システム401の周辺海域に運ばれる。これにより、周辺海域のプランクトンの状態が良化して豊かになるとともに、栄養添加剤43のフルボ酸等とも結合することで牡蛎棚20の牡蠣養殖の更なる効率化が可能となる。
【0060】
次に、本発明の第6の実施の形態について、図16を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0061】
養殖システム501は、基体部10上に気泡発生部504が設けられている。気泡発生部504は、ポンプ等により発生した水流がファインバブル発生コアを通過して旋回流を発生させ、キャビテーションを起こすことにより微細なファインバブル、又はマイクロファインバブルを発生させる。気泡発生部504内で発生した気泡414は、水流発生部6の近傍に設けられた排出口544から海水中に供給される。気泡発生部504は、旋回液流式、スタティックミキサー式、微細孔式、エゼクター式、ベンリュリー仕置き、加圧溶解式、冷却溶解式、又は混合蒸気凝縮式等を採用することができる。エゼクター式を採用した場合には、吸入ガスを任意に選択することができるため、二酸化炭素や酸素を用いてもよい。
【0062】
制御部31は、水流発生部6が回転すると同時に気泡発生部504を稼働させ、排出口544から気泡414を供給する。回転体61の回転によって気泡414は、渦Vによって養殖システム501の周辺海域に運ばれる。これにより、周辺海域のプランクトンの状態が良化して豊かになるとともに、栄養添加剤43のフルボ酸等とも結合することで牡蛎棚20の牡蠣養殖の更なる効率化が可能となる。
【0063】
次に、本発明の第7の実施の形態について、図17を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0064】
養殖システム601は、水流発生部6の下方であって海底12に固定された網状の捕集部621を備えている。捕集部621は、渦Vの中心に略円形の開口621aが形成されている。開口621aから捕集部621内に侵入した海水は、網から外部に抜けるとともに海底12に当たった水流が矢印Aのように上昇し、捕集部621の上端部に海洋プラスチック等が捕集される。具体的には、
【0065】
このような構成によると、海底に固定された捕集部621により、海洋表面に漂うプラスチックごみが渦Vによって捕集部621に捕集することができる。定期的に捕集部621をメンテナンスすることで、効率的に海洋プラスチックを捕集し養殖システム601の周辺環境を良好に保つことができる。
【0066】
本発明による発電システム及び発電方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
本発明による養殖システム1は海洋100での養殖を前提としていたが、これに限定されない。例えば、養殖システム1を陸上のプールにおける養殖に適用することもできる。陸上養殖に養殖システムを用いることで、送電用の海底ケーブル等が不要となるため、設置コストを低減することができる。また、湖等の湖畔に設置することで、ヘドロを分解するとともに栄養添加剤43により湖底の砂中に存在するしじみ等の貝類を活性化することができる。具体的には、栄養添加剤43に含まれるフルボ酸鉄と光エネルギーによって生成されたヒドロキシラジカルの作用によりヘドロが酸化分解され、海底の微生物や二枚貝等により吸収される。
【0068】
本発明の養殖システム1では、基体部10上にコントロールユニット3、添加ユニット4、及び接続ユニット5が設置されたが、これに限定されない。例えば、基体部10に太陽光パネルを設置し、蓄電部33に電力を充電してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の発電システム及び発電方法は、海上、陸上におけるプール、池、湖又は河川における発電に利用することができる。発電システムによって生成された電力は、蓄電池に蓄えてもよく、送電線により陸上に送ってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、101、301、401、501、601 養殖システム
2 風力発電部
3 コントロールユニット
4 添加ユニット
5 接続ユニット
6、206、306 水流発生部
10 基体部
21 翼部
22 支柱
22A 軸部
31 制御部
33 蓄電部
34 センサ部
41 貯蔵タンク
42 流量制御部
51 回転制御部
52 駆動部
61、261、361 回転体
62、262、362 水中軸部
102 発光部
201 発電システム
206 水力発電部
223 発電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
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