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特開2024-158579弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えたモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158579
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えたモジュール
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/72 20060101AFI20241031BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20241031BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20241031BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H9/70
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073889
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】阿野 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】古藤 祐喜
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA10
5J097AA12
5J097AA16
5J097BB15
5J097CC05
5J097KK04
5J097KK09
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB08
5J108CC04
5J108CC11
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108JJ01
(57)【要約】
【課題】より簡素な構成でアイソレーション特性を向上することができる弾性波デバイスを提供する。
【解決手段】弾性波デバイスは、第1フィルタと、第2フィルタと、グランド端子と、共通端子と、第1フィルタ用端子と、第2フィルタ用端子と、前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第1フィルタ用端子または前記第1フィルタ用端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記共通端子または前記共通端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、を備えた。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第1フィルタ用端子または前記第1フィルタ用端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記共通端子または前記共通端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた弾性波デバイス。
【請求項2】
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記共通端子または前記共通端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第2フィルタ用端子または前記第2フィルタ用端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた弾性波デバイス。
【請求項3】
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第1フィルタ用端子または前記第1フィルタ用端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第2フィルタ用端子または前記第2フィルタ用端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた弾性波デバイス。
【請求項4】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、長手方向が前記第1フィルタまたは前記第2フィルタの主モードとなる波の伝搬方向と直交するように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記入力側超音波遅延電極から前記出力側超音波遅延電極までのピッチは、前記第1フィルタまたは前記第2フィルタの主モードとなる波の1波長の0.1倍から0.5倍となるように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、これらが超音波遅延機能を有する単位超音波遅延線として形成され、複数の超音波遅延線を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記第1フィルタは、送信フィルタであり、
前記入力側金属体と前記入力側超音波遅延電極との間において直列に接続された2つの直列キャパシタと、
前記2つの直列キャパシタの間に並列に接続された並列キャパシタと、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、前記入力側金属体を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体を通過する高周波信号の位相が360度を整数倍した角度に95度から265度の間の角度を加えた角度だけ遅れるように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記グランド電極の一端および他端は、前記グランド用金属体にそれぞれ接続された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記入力側超音波遅延電極または前記出力側超音波遅延電極に隣接した表面波吸収体、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを備えたモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えたモジュールに関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、弾性波デバイスを開示する。当該弾性波デバイスは、複数のフィルタを備える。当該弾性波デバイスは、付加回路を備える。当該付加回路により、当該弾性波デバイスのアイソレーション特性を向上し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-120841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の弾性波デバイスにおいては、フィルタの他に付加回路が必要となる。このため、弾性波デバイスの構成が複雑になり得る。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、より簡素な構成でアイソレーション特性を向上することができる弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る弾性波デバイスは、
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第1フィルタ用端子または前記第1フィルタ用端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記共通端子または前記共通端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた。
【0007】
本開示に係る弾性波デバイスは、
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記共通端子または前記共通端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第2フィルタ用端子または前記第2フィルタ用端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた。
【0008】
本開示に係る弾性波デバイスは、
第1フィルタと、
第2フィルタと、
グランド端子と、
前記第1フィルタの出力側と前記第2フィルタの入力側とに接続された共通端子と、
前記第1フィルタの入力側に接続された第1フィルタ用端子と、
前記第2フィルタの出力側に接続された第2フィルタ用端子と、
前記グランド端子または前記グランド端子に接続された配線をグランド用金属体とし、前記グランド用金属体に接続されたグランド電極と、
前記グランド電極の一側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第1フィルタ用端子または前記第1フィルタ用端子に接続された配線を入力側金属体とし、前記入力側金属体に接続された入力側超音波遅延電極と、
前記グランド電極の他側において前記グランド電極と平行に配置され、前記第2フィルタ用端子または前記第2フィルタ用端子に接続された配線を出力側金属体とし、前記出力側金属体に接続された出力側超音波遅延電極と、
を備えた。
【0009】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、長手方向が前記第1フィルタまたは前記第2フィルタの主モードとなる波の伝搬方向と直交するように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記入力側超音波遅延電極から前記出力側超音波遅延電極までのピッチは、前記第1フィルタまたは前記第2フィルタの主モードとなる波の1波長の0.1倍から0.5倍となるように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0011】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、これらが超音波遅延機能を有する単位超音波遅延線として形成され、複数の超音波遅延線を含むことが、本開示の一形態とされる。
【0012】
前記第1フィルタは、送信フィルタであり、
前記入力側金属体と前記入力側超音波遅延電極との間において直列に接続された2つの直列キャパシタと、
前記2つの直列キャパシタとの間に並列に接続された並列キャパシタと、
を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0013】
前記グランド電極と前記入力側超音波遅延電極と前記出力側超音波遅延電極とは、前記入力側金属体を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体を通過する高周波信号の位相が360度を整数倍した角度に95度から265度の間の角度を加えた角度だけ遅れるように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記グランド電極の一端および他端は、前記グランド用金属体にそれぞれ接続されたことが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記入力側超音波遅延電極または前記出力側超音波遅延電極に隣接した表面波吸収体、
を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記弾性波デバイスを備えたモジュールが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、より簡素な構成でアイソレーション特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1における弾性波デバイスの断面図である。
図2】実施の形態1における弾性波デバイスにおいて配線基板を除いた後にチップ基板を下方から見た図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】実施の形態1における弾性波デバイスの概略回路図である。
図5】実施の形態1における弾性波デバイスの超音波遅延構造の模式図である。
図6】実施の形態1にかかる弾性波デバイスに含まれるフィルタと、比較例の弾性波デバイスに含まれるフィルタの通過特性を示す図である。
図7】実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の第1例を示す図である。
図8】実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の第2例を示す図である。
図9】実施の形態1における弾性波デバイスの第1変形例の概略回路図である。
図10】実施の形態1における弾性波デバイスの第2変形例の概略回路図である。
図11】実施の形態2における弾性波デバイスの超音波遅延構造の模式図である。
図12】実施の形態3における弾性波デバイスの超音波遅延構造の模式図である。
図13】実施の形態4における弾性波デバイスの超音波遅延構造の模式図である。
図14】実施の形態5における弾性波デバイスが適用されるモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0020】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における弾性波デバイスの断面図である。
【0021】
図1に示されるように、弾性波デバイス1は、配線基板2とチップ基板3と複数のバンプ4と封止部5とを備える。
【0022】
例えば、配線基板2は、樹脂を含む多層基板である。例えば、配線基板2は、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板である。例えば、配線基板2は、コンデンサまたはインダクタ等の受動素子(図示されず)を内蔵する。
【0023】
図1において、配線基板2の上面は、部品実装面である。複数の導電性パッド2Aは、配線基板2の上面に形成される。例えば、複数の導電性パッド2Aは、銅で形成される。配線基板2の下面は、マザー基板等への取付面である。複数の導電性パッド2Bは、配線基板2の下面に形成される。例えば、複数の導電性パッド2Bは、銅で形成される。複数の内部導体2Cは、配線基板2に内蔵される。例えば、複数の内部導体2Cは、銅で形成される。内部導体2Cの各々は、互いに対応した導電性パッド2Aと導電性パッド2Bとを電気的に接続する。
【0024】
チップ基板3は、配線基板2と対向する。例えば、チップ基板3は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶等の圧電単結晶で形成される。例えば、チップ基板3は、圧電セラミックスで形成される。例えば、チップ基板3は、圧電基板と支持基板とが接合されることにより形成される。例えば、支持基板は、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスで形成される。
【0025】
例えば、チップ基板3の主面(図1においては下面)において、第1フィルタと第2フィルタとが形成される。例えば、第1フィルタは、表面弾性波フィルタである。例えば、第1フィルタは、送信フィルタである。例えば、第2フィルタは、表面弾性波フィルタである。例えば、第2フィルタは、受信フィルタである。
【0026】
送信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、送信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタを含む。
【0027】
受信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、受信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタを含む。
【0028】
例えば、チップ基板3は、配線パターン3Aと複数の電極3Bとを備える。例えば、複数の電極3Bは、櫛歯状の電極指であるInterdigital Transducer(IDT)電極である。
【0029】
複数のバンプ4の各々は、金、導電接着剤、半田等である。例えば、バンプ4の高さは、10μmから50μmである。複数のバンプ4の各々は、対応した位置において導電性パッド2Aと配線パターン3Aとを電気的に接続する。
【0030】
封止部5は、配線基板2とチップ基板3との間に空間6を残しつつ、配線基板2とともにチップ基板3を気密封止する。例えば、封止部5は、合成樹脂等の絶縁体で形成される。当該合成樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド等である。
【0031】
次に、図2から図4を用いて、チップ基板3の構成を説明する。
図2は実施の形態1における弾性波デバイスにおいて配線基板を除いた後にチップ基板を下方から見た図である。図3図2のA部拡大図である。図4は実施の形態1における弾性波デバイスの概略回路図である。図5は実施の形態1における弾性波デバイスの超音波遅延構造の模式図である。
【0032】
図2に示されるように、配線パターン3Aと複数の弾性波素子8とは、チップ基板3の主面に形成される。
【0033】
例えば、配線パターン3Aは、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウム等の金属または合金で形成される。例えば、配線パターン3Aは、複数の金属層を積層して形成される。例えば、配線パターン3Aの厚みは、150nmから400nmである。
【0034】
配線パターン3Aは、4つのグランド用バンプパッドGNDとアンテナ用バンプパッドANTと送信用バンプパッドTxと受信用バンプパッドRxとを含む。グランド用バンプパッドGNDは、接地されるグランド端子として形成される。アンテナ用バンプパッドANTは、送信フィルタの出力側と受信フィルタの入力側とに接続される共通端子として形成される。送信用バンプパッドTxは、送信フィルタの入力側に接続される第1フィルタ用端子として形成される。受信用バンプパッドRxは、受信フィルタの出力側に接続される第2フィルタ用端子として形成される。これらのバンプパッドは、バンプ4(図2においては図示されず)と電気的に接続する部分である。
【0035】
複数の弾性波素子8は、複数の直列共振器TS1-1、TS1-2、TS2、TS3、TS4と複数の並列共振器TP1、TP2、TP3とを含む。複数の直列共振器TS1-1、TS1-2、TS2、TS3、TS4と複数の並列共振器TP1、TP2、TP3とは、配線パターン3Aを介して電気的に接続される。
【0036】
複数の直列共振器TS1-1、TS1-2、TS2、TS3、TS4と複数の並列共振器TP1、TP2、TP3とは、送信フィルタとして機能する。具体的には、高周波の電気信号が送信用バンプパッドTxに入力されると、当該電気信号は、複数の直列共振器TS1-1、TS1-2、TS2、TS3、TS4と複数の並列共振器TP1、TP2、TP3とを通過する。この際、所望の周波数帯域の電気信号のみがアンテナ用バンプパッドANTに到達する。その結果、所望の周波数帯域の電気信号のみがアンテナ用バンプパッドANTから出力される。
【0037】
複数の弾性波素子8は、複数の直列共振器RS1、RS2と複数の並列共振器RP1、RP2と第1多重モード型共振器DMS1と第2多重モード型共振器DMS2とを含む。複数の直列共振器RS1、RS2と複数の並列共振器RP1、RP2と第1多重モード型共振器DMS1と第2多重モード型共振器DMS2とは、配線パターン3Aを介して電気的に接続される。
【0038】
複数の直列共振器RS1、RS2と複数の並列共振器RP1、RP2と第1多重モード型共振器DMS1と第2多重モード型共振器DMS2とは、受信フィルタとして機能する。具体的には、高周波の電気信号がアンテナ用バンプパッドANTに入力されると、当該電気信号は、複数の直列共振器RS1、RS2と複数の並列共振器RP1、RP2と第1多重モード型共振器DMS1と第2多重モード型共振器DMS2とを通過する。この際、所望の周波数帯域の電気信号のみが受信用バンプパッドRxに到達する。その結果、所望の周波数帯域の電気信号のみが受信用バンプパッドRxから出力される。
【0039】
図2から図4に示されるように、本開示においては、超音波遅延構造9が設けられる。超音波遅延構造9は、金属で形成される。例えば、超音波遅延構造9は、配線パターン3Aと同じプロセスで成膜およびパターニングされる。超音波遅延構造9は、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12と入力側キャパシタ13(図4においては図示されず)と出力側キャパシタ14(図4においては図示されず)とを備える。
【0040】
グランド電極10は、グランド用バンプパッドGNDまたはグランド用バンプパッドGNDに接続された配線をグランド用金属体15とした際に当該グランド用金属体15に接続される。入力側超音波遅延電極11は、グランド電極10の一側において自らの長手方向がグランド電極10の長手方向と平行に配置される。入力側超音波遅延電極11は、送信用バンプパッドTxまたは送信用バンプパッドTxに接続された配線を入力側金属体16とした際に当該入力側金属体16に接続される。出力側超音波遅延電極12は、グランド電極10の他側において自らの長手方向がグランド電極10の長手方向と平行に配置される。出力側超音波遅延電極12は、アンテナ用バンプパッドANTまたはアンテナ用バンプパッドANTに接続された配線を出力側金属体17とした際に当該出力側金属体17に接続される。なお、これらの接続関係は、請求項1に対応する。
【0041】
グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、長手方向が送信フィルタまたは受信フィルタの主モードとなる波の伝搬方向と直交するように形成される。
【0042】
入力側キャパシタ13は、入力側金属体16と入力側超音波遅延電極11との間に形成される。出力側キャパシタ14は、出力側金属体17と出力側超音波遅延電極12との間に形成される。例えば、入力側キャパシタ13と出力側キャパシタ14とは、小型のインターデジタルキャパシタである。
【0043】
図5において、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、入力側金属体16を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体17を通過する高周波信号の位相が予め設定された角度だけ遅れるように形成される。例えば、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、入力側金属体16を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体17を通過する高周波信号の位相が95度から265度の間の角度だけ遅れるように形成される。例えば、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、入力側金属体16を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体17を通過する高周波信号の位相が360度を整数倍した角度に95度から265度の間の角度を加えた角度だけ遅れるように形成される。また、入力側キャパシタ13と出力側キャパシタ14の両方またはいずれか一方を用いて、位相が遅れる量を調整することができる。
【0044】
また、超音波遅延構造9は、その特性がフィルタ特性の減衰を確保したい周波数帯域において、同一レベルの挿入損失を持つことが望ましい。同一レベルの挿入損失とは、当該減衰を確保したい周波数帯域において、例えば、確保したい減衰が50dBであれば、超音波遅延線の挿入損失は45dBから55dBとなる。挿入損失のレベルは、超音波遅延構造9の開口長APのより設計することができる。また、フィルタ特性の減衰を確保したい周波数帯域の波長と、超音波遅延構造9の波長λは、必ずしも一致する必要はない。
【0045】
図6は、実施の形態1にかかる弾性波デバイスに含まれるフィルタと、比較例の弾性波デバイスに含まれるフィルタの通過特性を示す図である。実線は、実施の形態1にかかる弾性波デバイスに含まれるフィルタの通過特性を示す。破線は、比較例の弾性波デバイスに含まれるフィルタの通過特性を示す。
【0046】
図6の破線で示した領域Aに示すように、実施の形態1にかかる弾性波デバイスは、フィルタの通過帯域の低周波側の通過帯域近傍の周波数のアイソレーション特性が向上していることがわかる。このように、本発明は、所定のフィルタの通過帯域近傍のアイソレーション特性を向上させるのに特に有用である。また、本発明は、より大きい減衰を要求される状況乃至環境において特に有用である。また、本発明は、より高減衰特性を確保したい場合に、複数の超音波遅延構造9を用いてもよい。
【0047】
図6に示す通過特性を得る際に用いた超音波遅延構造9は、1波長分のピッチ(図5に示すλ)を1μmとして、開口長APを80λとしている。このように、超音波遅延線の1波長分のピッチを、弾性波デバイスに含まれるフィルタの主モードとなる波の1波長の0.1倍から0.5倍となるように形成することで、所望のアイソレーション特性を得ることができた。また、開口長APを80λとし、3本からなる電極であっても、アイソレーション特性を向上させたい周波数帯域において、同一レベルの挿入損失を確保することができ、所望のアイソレーション特性を得ることができた。また、開口長を80λとして超音波遅延構造9を配置することが設計上困難なときなどは、例えば、開口長APを40λとして超音波遅延構造9を2つ配置してもよい。開口長APの大きさが挿入損失のレベルと比例する。所望の周波数帯域において、挿入損失のレベルが近いほど、また、位相のずれが180度に近いほど、当該所望の周波数帯域において、アイソレーション特性を改善することができる。
【0048】
次に、図7を用いて、弾性波素子8の第1例を説明する。
図7は実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の第1例を示す図である。
【0049】
図7において、弾性波素子8は、SAW(Surface Acoustic Wave)共振器である。図7に示されるように、一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bとは、チップ基板3の主面に形成される。一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bとは、弾性表面波を励振し得るように設けられる。
【0050】
例えば、一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bとは、アルミニウムと銅の合金で形成される。例えば、一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bとは、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金で形成される。例えば、一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bとは、複数の金属層が積層した積層金属膜で形成される。
【0051】
IDT電極8Aは、複数の電極指8Dとバスバー8Eとを備える。複数の電極指8Dは、長手方向を合わせて配置される。バスバー8Eは、複数の電極指8Dを互いに対向するように接続する。一対の反射器8Bの一方は、一対のIDT電極8Aの一側に隣接する。一対の反射器8Bの他方は、一対のIDT電極8Aの他側に隣接する。例えば、一対のIDT電極8Aと一対の反射器8Bは、配線パターン3A(図7においては図示されず)と同じプロセスで成膜およびパターニングされる。
【0052】
次に、図8を用いて、弾性波素子8の第2例を説明する。
図8は実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の第2例を示す図である。
【0053】
図8において、弾性波素子8は、音響薄膜共振器である。例えば、チップ基板3は、シリコン等の半導体基板、または、サファイア、アルミナ、スピネルもしくはガラス等の絶縁基板である。圧電膜8Fは、チップ基板3の主面に設けられる。例えば、圧電膜8Fは、窒化アルミニウムで形成される。下部電極8Gと上部電極8Hとは、圧電膜8Fを挟むように設けられる。例えば、下部電極8Gと上部電極8Hとは、ルテニウム等の金属で形成される。空隙8Jは、下部電極8Gとチップ基板3との間に形成される。音響薄膜共振器において、下部電極8Gと上部電極8Hとは、圧電膜8Fの内部に厚み縦振動モードの弾性波を励振する。
【0054】
以上で説明された実施の形態1によれば、弾性波デバイス1は、超音波遅延構造9を備える。このため、より簡素な構成で弾性波デバイス1のアイソレーション特性を向上することができる。
【0055】
また、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、長手方向が送信フィルタまたは受信フィルタの主モードとなる波の伝搬方向と直交するように形成される。このため、主モードと同一モードを励振し出力側に音波が達するまでの時間が遅延することとなる。この遅延された時間により信号位相が略逆符号ノイズ信号をキャンセルすることができる。
【0056】
また、グランド電極10と入力側超音波遅延電極11と出力側超音波遅延電極12とは、入力側金属体16を通過する高周波信号の位相に対して出力側金属体17を通過する高周波信号の位相が360度を整数倍した角度に95度から265度の間の角度を加えた角度だけ遅れるように形成される。このため、超音波遅延線を通った信号と出力信号が位相合成されることでノイズ信号がキャンセルできる。
【0057】
次に、図9図10とを用いて、弾性波デバイス1の変形例を説明する。
図9は実施の形態1における弾性波デバイスの第1変形例の概略回路図である。図10は実施の形態1における弾性波デバイスの第2変形例の概略回路図である。
【0058】
図9に示されるように、アンテナ用バンプパッドANTまたはアンテナ用バンプパッドANTに接続された配線を入力側金属体16とし、受信用バンプパッドRxまたは受信用バンプパッドRxに接続された配線を出力側金属体17としてもよい。なお、これらの接続関係は、請求項2に対応する。
【0059】
図10に示されるように、送信用バンプパッドTxまたは送信用バンプパッドTxに接続された配線を入力側金属体16とし、受信用バンプパッドRxまたは受信用バンプパッドRxに接続された配線を出力側金属体17としてもよい。なお、これらの接続関係は、請求項3に対応する。
【0060】
これらの変形例においても、実施の形態1と同様に、超音波遅延構造9を設計すればよい。具体的には、所望の周波数帯域において、超音波遅延構造9の挿入損失と当該減衰を確保したい周波数帯域における挿入損失とをより近づけ、位相のずれを180渡により近づければよい。この場合、これらの変形例においても、アイソレーション特性を改善することができる。
【0061】
実施の形態2.
図11は実施の形態2における弾性波デバイスの超音波遅延構造9の模式図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0062】
図11に示されるように、実施の形態2において、超音波遅延構造9は、2つの直列キャパシタ18と並列キャパシタ19とを備える。2つの直列キャパシタ18は、入力側金属体16と入力側超音波遅延電極11との間において直列に接続される。並列キャパシタ19は、2つの直列キャパシタ18の間に並列に接続される。例えば、2つの直列キャパシタ18と並列キャパシタ19とは、小型のインターデジタルキャパシタである。
【0063】
以上で説明された実施の形態2によれば、超音波遅延構造9は、2つの直列キャパシタ18と並列キャパシタ19とを備える。このため、弾性波デバイス1の耐電力性をより確実に向上することができる。
【0064】
実施の形態3.
図12は実施の形態3における弾性波デバイスの超音波遅延構造9の模式図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0065】
図12に示されるように、実施の形態3において、グランド電極10の一端および他端は、グランド用金属体15にそれぞれ接続される。
【0066】
以上で説明された実施の形態3によれば、グランド電極10の一端および他端は、グランド用金属体15にそれぞれ接続される。このため、弾性波デバイス1のアイソレーション特性をより確実に向上することができる。
【0067】
実施の形態4.
図13は実施の形態4における弾性波デバイスの超音波遅延構造9の模式図である。なお、実施の形態3の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0068】
図13に示されるように、実施の形態4において、超音波遅延構造9は、入力側表面波吸収体20と出力側表面波吸収体21とを備える。入力側表面波吸収体20は、入力側超音波遅延電極11のグランド電極10とは反対側に隣接するように形成される。出力側表面波吸収体21は、出力側超音波遅延電極12のグランド電極10とは反対側に隣接するように形成される。例えば、入力側表面波吸収体20と出力側表面波吸収体21とは、ポリイミドで形成される。
【0069】
以上で説明された実施の形態4によれば、超音波遅延構造9は、入力側表面波吸収体20と出力側表面波吸収体21とを備える。このため、超音波遅延構造9により励振された振動が他の共振器に入ることでスプリアス等の影響が発生するが、入力側表面波吸収体20と出力側表面波吸収体21を配置することで、他の共振器に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0070】
実施の形態5.
図14は実施の形態5における弾性波デバイスが適用されるモジュール100の断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0071】
図14において、モジュール100は、配線基板101と集積回路部品102と弾性波デバイス1とインダクタ103と封止部104とを備える。
【0072】
配線基板101は、実施の形態1の配線基板2と同等である。集積回路部品102は、配線基板101の内部に実装される。集積回路部品102は、スイッチング回路とローノイズアンプとを含む。弾性波デバイス1は、配線基板101の主面に実装される。インダクタ103は、配線基板101の主面に実装される。インダクタ103は、インピーダンスマッチングのために実装される。例えば、インダクタ103は、Integrated Passive Device(IPD)である。封止部104は、弾性波デバイス1を含む複数の電子部品を封止する。
【0073】
以上で説明された実施の形態5によれば、モジュール100は、弾性波デバイス1を備える。このため、アイソレーション特性が向上した弾性波デバイス1を備えたモジュール100を得ることができる。
【0074】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0075】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0076】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0077】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0078】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0079】
1 弾性波デバイス、 2 配線基板、 2A 導電性パッド、 2B 導電性パッド、 2C 内部導体、 3 チップ基板、 3A 配線パターン、 3B 電極、 4 バンプ、 5 封止部、 6 空間、 8 弾性波素子、 8A IDT電極、 8B 反射器、 8D 電極指、 8E バスバー、 8F 圧電膜、 8G 下部電極、 8H 上部電極、 8J 空隙、 9 超音波遅延構造、 10 グランド電極、 11 入力側超音波遅延電極、 12 出力側超音波遅延電極、 13 入力側キャパシタ、 14 出力側キャパシタ、 15 グランド用金属体、 16 入力側金属体、 17 出力側金属体、 18 直列キャパシタ、 19 並列キャパシタ、 20 入力側表面波吸収体、 21 出力側表面波吸収体、 100 モジュール、 101 配線基板、 102 集積回路部品、 103 インダクタ、 104 封止部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14