(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158580
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの回収方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073891
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝禎
(72)【発明者】
【氏名】古屋敷 賢人
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA35
4F401CA46
4F401CA49
4F401FA01Y
4F401FA02Y
(57)【要約】
【課題】大規模な設備を必要とせず、分離の前提として溶融を行うことなく、複数の樹脂材料を、それぞれ単一の樹脂材料として回収可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも、相溶性を有する第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層が積層された複合材料を準備する第1ステップと、前記複合材料に熱及び圧力を付与し、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との界面の接着強度を低下させる第2ステップと、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とを剥離し、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれ回収する第3ステップと、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、相溶性を有する第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層が積層された複合材料を準備する第1ステップと、
前記複合材料に熱及び圧力を付与し、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との界面の接着強度を低下させる第2ステップと、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とを剥離し、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれ回収する第3ステップと、
を備えている、樹脂フィルムの回収方法。
【請求項2】
少なくとも第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層が接着層を介して積層され、前記接着層と前記第1樹脂フィルム層、及び/または前記接着層と前記第2樹脂フィルム層が相溶性を有する、複合材料を準備する第1ステップと、
前記複合材料に熱及び圧力を付与し、前記接着層と前記第1樹脂フィルム層との界面、及び/または前記接着層と前記第2樹脂フィルム層との界面の接着強度を低下させる第2ステップと、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とを剥離し、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれ回収する第3ステップと、
を備えている、樹脂フィルムの回収方法。
【請求項3】
前記第1樹脂フィルム層が、ポリエチレン系樹脂を含有し、
前記第2樹脂フィルム層が、ポリプロピレン系樹脂を含有する、請求項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、剥離する界面の接着強度が2.0N/cm以下である、請求項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【請求項5】
前記第3ステップでは、100℃以上の温度及び0.5MPa以上の圧力を付与する、請求項4に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【請求項6】
前記第1ステップでは、前記複合材料を巻き取った第1ロールを準備し、
前記第2ステップでは、前記第1ロールから繰り出した前記複合材料を一対のローラの間を通過させることで、熱及び圧力を付与し、
前記第3ステップでは、剥離した前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれロールに巻き取ることで回収する、請求項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂材料の回収方法により、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層を回収するステップと、
回収された前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層の少なくとも一方を用いて、前記複合材料を製造するステップと、
を備えている、複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)に代表されるポリオレフィン(PO)樹脂の生産量は、市場のプラスチック生産量の半分を占めているにも関わらず、PET樹脂などにくらべてリサイクルは進んでいない。特に、PE、PPが混合したPO樹脂については、容器包装プラスチックの主たる回収物であるが、品質的な制約から、カスケードリサイクルが中心であり、単一樹脂化等による質の向上を通じた安定した需要先の確保が課題である。特に、要求性能、要求品質の高い一部の工業用途向けのフィルムではPO樹脂であっても混入することで著しくその性能と品質を低下させる。
【0003】
そのため、積層フィルムからそれぞれの単一樹脂を回収することが出来るリサイクル性を高めたフィルムを提供する必要がある。例えば、特許文献1に記載されているように複数の樹脂を含む混合物から特定の樹脂を溶解することにより、単一の樹脂を回収する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂溶解液により効率的に単一樹脂を回収する回収方法は、大規模な設備が必要であり、また、溶解液は自然環境に影響を与える可能性がある。なお、このような問題は、PP及びPEの回収に限定された問題ではなく、他の樹脂材料を回収する際にも起こりうる問題である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、大規模な設備を必要とせず、分離の前提として溶融を行うことなく、複数の樹脂材料を、それぞれ単一の樹脂材料として回収可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.少なくとも、相溶性を有する第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層が積層された複合材料を準備する第1ステップと、
前記複合材料に熱及び圧力を付与し、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との界面の接着強度を低下させる第2ステップと、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とを剥離し、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれ回収する第3ステップと、
を備えている、樹脂フィルムの回収方法。
【0008】
項2.少なくとも第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層が接着層を介して積層され、前記接着層と前記第1樹脂フィルム層、及び/または前記接着層と前記第2樹脂フィルム層が相溶性を有する、複合材料を準備する第1ステップと、
前記複合材料に熱及び圧力を付与し、前記接着層と前記第1樹脂フィルム層との界面、及び/または前記接着層と前記第2樹脂フィルム層との界面の接着強度を低下させる第2ステップと、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とを剥離し、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれ回収する第3ステップと、
を備えている、樹脂フィルムの回収方法。
【0009】
項3.前記第1樹脂フィルム層が、ポリエチレン系樹脂を含有し、
前記第2樹脂フィルム層が、ポリプロピレン系樹脂を含有する、項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【0010】
項4.前記第2ステップでは、剥離する界面の接着強度が2.0N/cm以下である、項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【0011】
項5.前記第3ステップでは、100℃以上の温度及び0.5MPa以上の圧力を付与する、項4に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【0012】
項6.前記第1ステップでは、前記複合材料を巻き取った第1ロールを準備し、
前記第2ステップでは、前記第1ロールから繰り出した前記複合材料を一対のローラの間を通過させることで、熱及び圧力を付与し、
前記第3ステップでは、剥離した前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層をそれぞれロールに巻き取ることで回収する、項1または2に記載の樹脂フィルムの回収方法。
【0013】
項7.項1または2に記載の樹脂材料の回収方法により、前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層を回収するステップと、
回収された前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層の少なくとも一方を用いて、前記複合材料を製造するステップと、
を備えている、複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大規模な設備を必要とせず、分離の前提として溶融を行うことなく、複数の樹脂材料を、それぞれ単一の樹脂材料として回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】対象となる複合材料の一例を示す断面図である。
【
図2】対象となる複合材料の一例を示す断面図である。
【
図3】複合材料から樹脂フィルムを回収する設備の一例を示す概略図である。
【
図4】実施例1に付与した温度、圧力、及び時間と、接着強度の関係を示したグラフである。
【
図5】実施例2に付与した温度、圧力、及び時間と、接着強度の関係を示したグラフである。
【
図6】実施例3に付与した温度、圧力、及び時間と、接着強度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る樹脂フィルムの回収方法の一実施形態について説明する。本実施形態は、複数の樹脂フィルムが積層されたシート状の複合材料から各樹脂フィルムを剥離した後、これらを回収する方法である。まず、対象となるフィルムについて説明した後、分離方法について説明する。
【0017】
<1.複合材料の例>
本実施形態において対象となる複合材料は、種々のものがあるが、(1)相溶性のある樹脂フィルム同士を接着することで積層した複合材料、または(2)2つの樹脂フィルムを接着することで積層するに当たって、少なくとも一方の樹脂フィルムと接着剤とが相溶性を有している複合材料が対象となる。すなわち、樹脂フィルム同士の界面または接着層と樹脂フィルムとの界面が共有結合ではなく、相溶性を利用して接着された界面を少なくとも1つ有する複合材料である。そして、このような複合材料において、後述する方法でこの界面を剥離することで、樹脂フィルムを回収する。積層される樹脂フィルムの数は特には限定されず、例えば、一の樹脂フィルムの両面に、他種の樹脂フィルムが接着されていてもよい。この場合、剥離可能な界面は2となる。また、(1)(2)の両方を含む複合材料であってもよい。
【0018】
例えば、
図1に示すように、第1樹脂フィルム層1の両面に第2樹脂フィルム層2が積層された複合材料10を挙げることができる。この例では、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2とが互いに溶融することで接着されている。また、
図2に示すように、第1樹脂フィルム層1の両面に第2樹脂フィルム層2が接着層3を介して接着された複合材料20を挙げることができる。この例では、第1樹脂フィルム層1と接着層3とが互いに溶融することで接着されている。なお、これらは複合材料の例であり、3種以上の樹脂フィルムを積層したり、一部の樹脂フィルムの界面が共有結合により接着されたものを含んでもよく、少なくとも一部に上述したような剥離可能な界面があればよい。
【0019】
相溶性のある樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂同士を挙げることができる。また、例えば、ポリエチレン系樹脂を含有する接着剤とポリプロピレン系樹脂、あるいは、ポリプロピレン系樹脂を含有する接着剤とポリエチレン系樹脂も該当する。ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂は比重が同程度であるため、比重の差を利用して分離する方法では分離が難しい。つまり、比重が同程度の樹脂同士の複合材料の分離に好適な方法である。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、又は、これらの混合物が挙げられる。また、エチレンとα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレンを主成分として、エチレン、ブテン、α-オレフィンを共重合成分とする二元、又は、三元ランダム共重合体やブロック共重合体、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。α-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα-オレフィンを含んでいても良い。また、プロピレン系樹脂としては、異なるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂(マトリックス相)中に、プロピレンとエチレンとの共重合体ゴムが微分散している海-島構造を有するエラストマオレフィン系エラスマーであってもよい。
【0022】
複合材料を構成する各樹脂フィルムの厚みは特には限定されないが、例えば、
70~250μmであることが好ましく、80~210μmであることがさらに好ましい。また、上述した接着剤の厚みは、例えば、4~15μmであることが好ましく、6~11μmであることがさらに好ましい。
【0023】
<2.複合材料からの樹脂フィルムの回収>
次に、複合材料からの樹脂フィルムの回収について説明する。まず、上述した複合材料を準備し、これに熱及び圧力を付与する。これにより、上述した剥離可能な界面の接着強度を低下させる。低下した接着強度は、例えば、2.0N/cm以下であることが好ましく、1.5N/cm以下であることがより好ましく、1.0N/cm以下であることがさらに好ましく、0.5N/cm以下であることが特に好ましい。このように接着強度を低下させるため、複合材料には、熱及び圧力を所定時間付与する。なお、接着強度は、以下のように測定することができる。
【0024】
熱及び圧力所定時間を付与した樹脂フィルムのMD方向が長辺となるように100mm×10mmの大きさにカットし、フィルム端部の一部分を層間剥離した。樹脂フィルムの長辺方向に引張速度100mm/minで、180度方向に剥離させた時の強度(N/10mm)を、イマダ社製デジタルフォースゲージZTS-100Nを用いて測定した。なお、3回試験を行い接着強度の平均値を求めた。
【0025】
付与する温度は、接着された樹脂フィルム(または接着層)の少なくとも一方の軟化点以上であることが好ましい。但し、厳密に軟化点以上の温度でなくてもよく、例えば、軟化点から15℃低い温度以上が好ましく、軟化点から10℃低い温度以上がより好ましく、軟化点から5℃低い温度以上がさらに好ましい。上述したポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を剥離するには、例えば、80℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましく、150℃以上がより好ましい。但し、樹脂フィルムが損傷するのを防止するため、付与する温度は、170℃以下であることが好ましい。
【0026】
付与する圧力は、例えば、0.3MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましく、1.0MPa以上が特に好ましい。但し、樹脂フィルムが損傷するのを防止するため、付与する圧力は、1.5MPa以下であることが好ましい。
【0027】
上述した温度及び圧力を付与する時間は特には限定されないが、剥離する界面の接着強度が、上述した接着強度以下になればよい。例えば、0.2秒以上が好ましく、0.5秒以上がさらに好ましく、1.0秒以上がより好ましい。また、上述したような接着強度にするために、付与する温度、圧力、及び時間は適宜変更することができる。
【0028】
こうして、剥離する界面の接着強度を低下させると、その界面を挟む樹脂フィルムを剥離し、回収する。なお、樹脂フィルムと接着層との界面を剥離した場合、例えば、
図2の例では、接着層3は、第2樹脂フィルム層2に接着されたまま回収される。但し、接着層3が第2樹脂フィルム層と概ね同様の材料で形成されていれば、回収された接着層3及び第2樹脂材料は概ね単一の材料で形成されていることになる。
【0029】
上記の工程は、例えば、
図3に示すような設備で行うことができる。
図3に示す例では、
図1に示す複合材料10を巻き取った第1ロール4を準備し、この第1ロール4から複合材料10を繰り出す。そして、繰り出された複合材料10を一対のローラ5の間を通過させる。これらのローラ5は、温度及び圧力を付与するためのものである。例えば、少なくとも一方のローラ5を加熱可能に構成する。また、一対のローラ5が互いに押圧するように構成し、ローラ5の間を通過する複合材料10に圧力を付与するように構成する。
【0030】
これらローラ5の間に複合材料10を通過させることで、上述したように剥離する界面の接着強度が低下する。その後、接着強度が低下した界面で樹脂フィルム1,2の剥離を行い、各樹脂フィルム1,2を回収ローラ7~9に巻き取って回収する。
【0031】
<3.特徴>
以上のような樹脂フィルムの回収方法によれば、複合材料において、溶融することで接着した界面を再溶融することで接着強度を低下させ、その上で、樹脂フィルムを剥離して回収している。したがって、複合材料から単一の材料からなる樹脂フィルムを回収することができる。これにより、バージン原料の使用量を抑制できるため資源循環が可能になる。なお、単一の材料とは完全な単一の材料でなくてもよく、同種の材料、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が混合されたものであってもよい。複合材料の各層の原料として回収した樹脂フィルムを再利用できるため、他層に由来する異樹脂の混入を減らせることができ、品質低下やフィルム特性の変化を最小限にすることができる。つまり、回収した樹脂フィルムをその樹脂フィルムを構成する層に利用することができる。
【0032】
また、上記の回収方法では、特殊な設備は必要なく、複合材料に対して熱と圧力を付与できればよいため、簡易な設備とすることができる。また、溶剤を用いないため、環境に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0033】
上記のような複合材料から回収されたポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を複合材料として再利用する場合、複合材料を構成する材料のうち、5~100重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは20~80重量%を回収したポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂で構成することができる。これにより、バージン材料を用いた複合材料と同等の物性を得られることが本発明者により確認されている。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例に係る樹脂フィルムの回収方法、及び回収した樹脂フィルムの再利用について詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0035】
A.樹脂フィルムの回収方法
<1.対象となる複合材料>
まず、表1及び表2に示すとおり、本発明の回収方法の対象となる3種類の複合材料(実施例1~3)を準備した。実施例1,2は
図1に示すような構成であり、実施例3は
図2に示すような構成である。各実施例の層構成及び物性値は以下の通りである。なお、各樹脂の構成の単位は、重量%である。また、表2には、後述する実施例4,5,及び比較例も含めている。
【表1】
【表2】
【0036】
また、各複合材料を構成する樹脂フィルム及び接着層の材料は以下の通りである。
【表3】
【0037】
上記実施例1~3に対し、熱及び圧力を所定時間付与した。その結果、表4に示すように接着強度が低下した。ここで測定した接着強度は、実施例1,2では、中間層(第1樹脂フィルム層)と表層(第2樹脂フィルム層)との間の界面の接着強度、実施例3では、接着層と中間層との界面での接着強度である。なお、接着強度の測定は上記実施形態で示したとおりである。
【表4】
単位はN/cmである。
【0038】
図4~
図6は、それぞれ実施例1~3に付与した温度、圧力、及び時間と、接着強度との関係を示したグラフである。処理前の数値は、便宜上0℃の数値としている。これらのグラフによると、圧力が高く、時間が長い方が接着強度が低下することが分かった。また、温度が高い方が接着強度は低下するが、100℃以上は接着強度の低下が緩やかになった。実施例1~3を比較すると、接着層を用いた実施例3は、初期の接着強度が高いため、温度を150℃以上とすることで、実施例1,2に100℃の温度を付与したときと同等程度まで接着強度を低下できることが分かった。但し、処理後の接着強度が2.0N/cm以下であれば、回収には問題ないことを本発明者は確認している。
【0039】
その後、接着強度が低下した界面を挟む表層及び中間層を剥離し回収した。実施例3では、接着層と中間層との界面で両者が剥離するため、接着層は表層に接着したまま回収される。こうして、表層と中間層をそれぞれ回収することで、ポリエチレン及びポリプロピレンを単一の材料として回収することができた。
【0040】
B.回収した樹脂フィルム層の再利用
次に、上記実施例3で回収した中間層(第1樹脂フィルム層)をポリプロピレン系回収樹脂、実施例3で回収した表層(第2樹脂フィルム層)をポリエチレン系回収樹脂として原料に使用し、複合材料を以下の手順で製造した。なお、全てバージン原料により製造された、分離前の実施例3を参考例とした。
【0041】
参考例(実施例3)の中間層のポリプロピレン系樹脂の50%を本願発明の分離方法で回収したポリプロピレン系回収樹脂に代えたものを実施例4とした。参考例(実施例3)の表層のポリエチレン系樹脂の10%を本願発明の分離方法で回収したポリエチレン系回収樹脂に代えたものを実施例5とした。参考例(実施例3)の中間層のポリプロピレン系樹脂の50%を、実施例3の複合材料に代えたものを比較例とした。(つまり本願発明の分離方法を経ていない実施例3の複合材料をそのまま中間層の50%として混合した)
【表5】
【0042】
複合材料の製造条件は以下の通りである。バレル温度が180~260℃の押出機に表5の5層の材料を投入し、220~260℃の多層ダイスから、5層構造のシート状に押出し、25~30℃の引き取りロールにて冷却固化し、巻き取り機で巻き取ることによって、複合材料を得た。実施例4~5および比較例は、それぞれの前記変更点以外は実施例3(参考例)と同じ配合処方で行った。
【0043】
得られた各複合材料について、以下の物性を測定した。
【0044】
<ヘイズ>
JIS K7136に準ずる方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズを測定した。なお、ヘイズについては、各実施例、比較例、および、各参考例につき、4つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。サンプルサイズは MD方向5cm×TD方向10cmで測定を行った。
【0045】
<引張強度、引張伸度、25%モジュラス>
各複合材料を、測定するMDまたはTD方向が長辺となるように標線間隔40mmおよび幅10mmの大きさにカットし試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてJISK-6732に準拠した方法で測定した。ただし、測定雰囲気温度25℃、試験速度200mm/分にて測定した。25%モジュラスは、MD方向又はTD方向で、25%伸ばした時の応力(N)をサンプル巾(10mm)で割った値を求めた。実施例4,5および比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0046】
<ヤング率>
各複合材料を、測定するMDまたはTD方向が長辺となるように標線間隔250mmおよび5mmの大きさにカットし試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてASTM D882に準拠した方法で測定した。ヤング率は、各実施例及び各比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0047】
<乾熱収縮率>
測定するMDまたはTD方向が長辺となるように、複合材料を150mm×20mmの大きさにカットし、標線間隔が100mmとなるように標線を引き、試験片を得た。次いで、得られた試験片の片端を固定し、温度を100℃に設定したESPEC社製恒温槽PHH-102に投入した。投入から60秒後に積層フィルムを取り出し、標線間隔を測定し、下記式から収縮率を算出した。
乾熱収縮率={(100-収縮後の標線間距離(mm))/100}×100
なお、乾熱収縮率としては3つの測定試料に対する測定結果の平均値を用いた。また、平均値よりも2%以上離れた値はカウントしないこととした。
【0048】
<接着強度>
熱及び圧力所定時間を付与した樹脂フィルムのMD方向が長辺となるように100mm×10mmの大きさにカットし、フィルム端部の一部分を層間剥離した。樹脂フィルムの長辺方向に引張速度100mm/minで、180度方向に剥離させた時の強度(N/10mm)を、イマダ社製デジタルフォースゲージZTS-100Nを用いて測定した。なお、3回試験を行い接着強度の平均値を求めた。
【0049】
<全光線透過率>
日本電光株式会社製V-670を使用し、MD方向40mm×TD方向20mmにサンプルをカットし測定した。測定条件として、測定波長域は200~800nm、走査速度は100nm/minとした。
【0050】
【0051】
表6の結果からすると、バージン材料からなる複合材料(参考例)と再生材料を用いた複合材料(実施例4.5)とでは、接着強度はやや低下しているものの、その他の物性値に大きい変化はなく、再生材料を用いた複合材料をバージン材料を用いた複合材料と同等に使用できることが分かった。また、比較例は、実施例4,5に比べ、例えば、25%モジュラス、ヤング率が高く、劣っていることが分かった。したがって、比較例のように、本発明の分離方法を経ていない材料を使用して複合材料を形成すると、実施例4,5に比べ、物性値の劣化が生じることが分かった。