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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158587
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23Q 9/00 20060101AFI20241031BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F23Q9/00 F
F23D17/00 101
F23Q9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073905
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065QC04
3K065RB02
(57)【要約】
【課題】燃料噴出ノズルであるメインバーナから噴出される燃料をパイロットバーナのパイロット火炎によって確実に着火できるようにする。
【解決手段】ブラストチューブ16の中心部に設けられる燃料噴出ノズル25、35とブラストチューブ16との間に環状の空気供給路45が形成される。空気供給路45に向かい合うディフューザ46設けられる。燃料噴出ノズル25、35から噴出される燃料65、37を着火するためのパイロットバーナ55が空気供給路45に設けられる。パイロットバーナ55は、燃料供給路56、57が、ディユーザ46を貫通して、ディフューザ46における火炎拡散側に突出しているとともに、ディフューザ46における火炎拡散側に突出している突出部に、燃料供給路56、57の燃料72をディフューザ46の火炎拡散側に噴出させるための噴出口61が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラストチューブの中心部に燃料噴出ノズルが設けられ、
燃料噴出ノズルとブラストチューブとの間に環状の空気供給路が形成され、
空気供給路に向かい合う環状板状に形成されて、燃料噴出ノズルからの燃料と空気供給路からの燃焼用空気により形成される火炎をブラストチューブの軸心と交差する面方向に拡散させるディフューザが設けられ、
燃料噴出ノズルから噴出される燃料を着火するためのパイロットバーナが空気供給路に設けられ、
パイロットバーナは、燃料供給路が、ディフューザを貫通して、ディフューザの火炎拡散側に突出しているとともに、ディフューザの火炎拡散側に突出している突出部に、燃料供給路の燃料をディフューザの火炎拡散側に噴出させるための噴出口が形成されていることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
パイロットバーナは、噴出口から噴出された燃料と、空気供給路からディフューザを通り抜けた燃焼用空気とが混合して燃焼に供される構成であることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
燃料噴出ノズルは気体燃料を噴出するものであることを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項4】
燃料噴出ノズルは、液体燃料の噴出口と気体燃料の噴出口とを各別に有し、液体燃料と気体燃料とが選択的に噴出されることで、液体燃料と気体燃料とが切替専焼に供される構成であることを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項5】
燃料噴出ノズルは、液体燃料の噴出口と気体燃料の噴出口とを各別に有し、液体燃料と気体燃料とが同時に噴出されることで、液体燃料と気体燃料とが混焼に供される構成であることを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼装置に関し、特に燃料噴出ノズルから噴出される燃料を着火するためのパイロットバーナを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の燃焼装置として、液体燃料の燃焼装置と、気体燃料の燃焼装置とが挙げられる。そのほかに、気体燃料と液体燃料とを切り替えて燃焼させる燃焼装置も、例えば特許文献1によって知られている。気体燃料と液体燃料とを切り替えて燃焼させる燃焼装置であると、たとえば災害時であっても、気体燃料と液体燃料とのいずれかが供給されている限り、所望の燃焼状態を確保することができる。
【0003】
これらの公知の燃焼装置において、着火時の作動制御は、以下のようなほぼ同一の制御方法が採用されている。
【0004】
すなわち、燃焼装置を起動させると、それと同時に、燃焼用空気を供給するための送風機が起動される。次に、送風機よりも下流側の空気供給路に設置された風量調節用の空気ダンパを、最大燃焼時の開度まで開く。そして、設定された時間中、空気ダンパの最大開状態を維持して、燃焼装置のための燃焼室と、燃焼排ガスのための煙道との換気を行う。換気後、空気ダンパを最小燃焼時の開度まで閉じる。さらに、その状態でパイロットバーナを点火させる。詳細には、点火用の火花を放電により発生させるための電源をオンし、パイロットバーナの燃料用の弁を開く。第1の設定時間後に放電用電源をオフする。この状態でパイロット火炎の存在が適宜の検出器によって検出される。そこで、主となる燃焼装置すなわちメインバーナでの燃焼に移行する。メインバーナでの燃焼に移行したなら、第2の設定時間後にパイロットバーナの燃料用の弁を閉じて、パイロットバーナによる燃焼を終了する。その後は、メインバーナによる、負荷に応じた燃焼制御に移行する。
【0005】
このような燃焼装置として、ブラストチューブの中心部に燃料噴出ノズルが設けられ、燃料噴出ノズルとブラストチューブとの間に環状の空気供給路が形成され、空気供給路に向かい合う環状板状に形成されて燃料噴出ノズルからの燃料と空気供給路からの燃焼用空気により形成される火炎をブラストチューブの軸心と交差する面方向に拡散させるディフューザが設けられ、燃料噴出ノズルから噴出される燃料を着火するためのパイロットバーナが空気供給路に設けられた燃焼装置が知られている。
【0006】
上記のような燃焼装置の着火時においては、燃焼装置の最小燃焼量と、燃焼装置の最小燃焼時の排ガス酸素濃度とを、決められた狭い設定範囲内に設定することで、パイロットバーナは安定した燃焼となる。すると、パイロットバーナからの火炎は、ディフューザにおける燃焼室側の前面、すなわち空気供給路に面した側とは反対側の面に達する。これにより、燃料噴射ノズルすなわちメインバーナから噴出される燃料への火移りが、問題なく安定して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-280716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような燃焼装置において、最小燃焼量を若干多めに設定した場合や、特に排ガス酸素濃度を高めに設定した場合には、ブラストチューブ内の空気量、空気圧力、空気流の流速などの変化によって、パイロットバーナの火炎であるパイロット火炎が小さくなる。
【0009】
パイロット火炎が小さくなると、空気供給路に設けられたパイロットバーナからのパイロット火炎がディフューザを越えてディフューザの前面すなわち燃焼室側に出ることがなくなってしまう。
【0010】
燃焼装置にはパイロット火炎を検出するための火炎検出器が設けられていることが通例であるが、上記のようにパイロット火炎が小さくなっても、火炎検出器はパイロット火炎を検出する。すると、燃焼のシーケンスが進んで燃料噴射ノズルすなわちメインバーナから所定量の燃料が噴出されるが、上述のようにパロット火炎がディフューザを越えてディフューザの前面すなわち燃焼室側に出ることがなくなってしまうため、パイロット火炎が小さくなって燃料噴射ノズルすなわちメインバーナの燃料噴出位置に届きにくくなる。すると、パイロットバーナから燃料噴射ノズルすなわちメインバーナへの火移りが悪くなる。その結果、燃焼室内に未燃成分が溜まってしまい、それを原因とする不都合が生じる点も無視できなくなる。
【0011】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、燃料噴出ノズルすなわちメインバーナから噴出される燃料をパイロットバーナのパイロット火炎によって確実に着火できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明の燃焼装置は、
ブラストチューブの中心部に燃料噴出ノズルが設けられ、
燃料噴出ノズルとブラストチューブとの間に環状の空気供給路が形成され、
空気供給路に向かい合う環状板状に形成されて、燃料噴出ノズルからの燃料と空気供給路からの燃焼用空気により形成される火炎をブラストチューブの軸心と交差する面方向に拡散させるディフューザが設けられ、
燃料噴出ノズルから噴出される燃料を着火するためのパイロットバーナが空気供給路に設けられ、
パイロットバーナは、燃料供給路が、ディフューザを貫通して、ディフューザの火炎拡散側に突出しているとともに、ディフューザの火炎拡散側に突出している突出部に燃料供給路の燃料をディフューザにおける火炎拡散側に噴出させるための噴出口が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、パイロットバーナは、噴出口から噴出された燃料と、空気供給路からディフューザを通り抜けた燃焼用空気とが混合して燃焼に供される構成であることが好適である。
【0014】
また本発明によれば、燃料噴出ノズルは気体燃料を噴出するものであることが好適である。
【0015】
あるいは本発明によれば、燃料噴出ノズルは、液体燃料の噴出口と気体燃料の噴出口とを各別に有し、液体燃料と気体燃料とが選択的に噴出されることで、液体燃料と気体燃料とが切替専焼に供される構成であることが好適である。
【0016】
あるいは本発明によれば、料噴出ノズルは、液体燃料の噴出口と気体燃料の噴出口とを各別に有し、液体燃料と気体燃料とが同時に噴出されることで、液体燃料と気体燃料とが混焼に供される構成であることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パイロットバーナは、燃料供給路が、ディユーザを貫通して、ディフューザの火炎拡散側に突出しているとともに、ディフューザの火炎拡散側に突出している突出部に、燃料供給路の燃料をディフューザの火炎拡散側に噴出させるための噴出口が形成されているため、ディフューザにおける燃料噴出ノズルからの燃料が到達して燃焼用空気と混合される部分の近傍においてパイロットバーナの燃料を燃焼させることができる。したがって本発明によれば、燃料噴出ノズルすなわちメインバーナから噴出される燃料をパイロットバーナのパイロット火炎によって確実に着火させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態の燃焼装置の断面図である。
図2図1における要部を拡大して示す図である。
図3図2に示される部分の要部の右側面図である。
図4図1に示される燃焼商装置のパイロットバーナの燃焼状態を示す図である。
図5】公知のパイロットバーナの良好燃焼時の燃焼状態を示す図である。
図6】公知のパイロットバーナの燃焼不良時の燃焼状態を示す図である。
図7】本発明の実施の形態の燃焼装置の燃焼特性を、公知のパイロットバーナを備えた燃焼装置の燃焼特性と対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示される本発明の実施の形態の燃焼装置10は、ボイラ1において使用される。燃焼装置10は、炉壁2を有したボイラ1に取り付けられることで、ボイラ1の燃焼室3において必要な燃焼を行う。
【0020】
ボイラ1の炉壁2には風箱11が取り付けられている。燃料と燃焼用空気との供給装置12が、ボイラ1の外部から、風箱11と炉壁2とを経由して、燃焼室3へ導かれている。
【0021】
燃料と燃焼用空気との供給装置12は、同心状の三重管の構成とされ、径方向に沿った最も内側のインナーチューブ14と、インナーチューブ14よりも径方向に沿った外側に配置されたアウターチューブ15と、アウターチューブ15よりもさらに径方向に沿った外側に配置されたブラストチューブ16とを備える。
【0022】
風箱11には、この風箱11に燃焼用空気17を供給するためのダクト18が接続されている。ダクト18には、風箱11へ供給する燃焼用空気17の量を調節するためのダンパ19が設けられている。ダンパ19は、図外のモータなどのアクチュエータによって、その開度が調節される。
【0023】
インナーチューブ14の一端20は風箱11の内部で開口しており、この開口によって空気取入口21が形成されている。図1図3に示すようにインナーチューブ14の他端22はブラストチューブ16の内部で開口しており、この開口によって、燃焼装置10の中央の一次空気噴出口23が形成されている。
【0024】
一次空気噴出口23の中央には、液体燃料の噴出口を構成する液体燃料噴出ノズル25が設けられている。液体燃料噴出ノズル25には、液体燃料供給管26が接続されている。液体燃料供給管26は、風箱11の外部から風箱11の内部に入り込み、さらにインナーチューブ14の空気取入口21からインナーチューブ14に入り込み、インナーチューブ14の内部を経て液体燃料噴出ノズル25に達している。
【0025】
図2に詳しく示すように、液体燃料噴出ノズル25の近傍には、噴出ノズル25から噴出されたうえで、インナーチューブ14の一次空気噴出口23から噴出された燃焼用空気と混合した液体燃料を点火させるための、点火用電極27が設けられている。点火用電極27は、放電スパークを発生させることで、燃焼用空気と混合した液体燃料を点火させる。点火用電極27には、放電のための高圧電気を点火用電極27に供給するための導線28が接続されている。導線28は、液体燃料供給管26と同様に、風箱11の外部から風箱11の内部に挿入され、インナーチューブ14の内部において液体燃料供給管26に沿って配置されたうえで、点火用電極27に電気的に接続されている。導線28は、導体が絶縁体でカバーされた構成である。導線28は、この導線28の途中からの放電を防止するために、絶縁用の円筒状の碍子29を介して各部に支持されている。
【0026】
アウターチューブ15は、インナーチューブ14と同等の長さで形成されている。アウターチューブ15の一端31は、開口は有さず、アウターチューブ15とインナーチューブ14との間の環状空間33が閉じられた構成とされている。
【0027】
アウターチューブ15の他端32では、アウターチューブ15とインナーチューブ14との間の円筒状の環状空間33が環状プレート34によって閉じられている。図2および図3に詳しく示すように、環状プレート34における周方向に沿った複数の位置には、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35がそれぞれ貫通状態で形成されている。図1に示すように、環状空間33には、アウターチューブ15の一端31において接続ポート36が連通されている。接続ポート36は、風箱11の外部から風箱11の内部に入り込んで、アウターチューブ15の一端31に接続されている。接続ポート36は、気体燃料37を環状空間33へ供給することができる。環状空間33は、接続ポート36からの気体燃料37を噴出口35へ供給するための供給路として機能する。
【0028】
ブラストチューブ16は、その一端38が、風箱11の内部において、接続ポート36よりもボイラ1の炉壁2に近い位置で開口している。この開口によって、ブラストチューブ16の一端38には、ブラストチューブ16とアウターチューブ15との間において、燃焼用二次空気のための環状の空気取入口39が形成されている。
【0029】
ブラストチューブ16は、アウターチューブ15よりも径方向の外側に配置された小径部40と、小径部40の端部に連続しボイラ1の燃焼室3へ向かうにつれて次第に拡径する拡径部41と、燃焼室3の内部において拡径部41に連続する大径部42とを有する。ブラストチューブ16の他端43には、燃焼装置10にて発生した火炎すなわち燃焼ガスを燃焼室3へ案出させるための開口44が形成されている。アウターチューブ15は、その内側に液体燃料噴出ノズル25が設けられるとともに、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35を他端32に備えた構成である。この燃料噴出ノズル25、35を含んだアウターチューブ15とブラストチューブ16の小径部40との間には、環状の空気供給路45が形成されている。
【0030】
図1図3に示すように、インナーチューブ14の他端22およびアウターチューブ15の他端32よりもブラストチューブ16の開口44に近い側におけるこれら他端22、32の近傍には、板状の環状のディフューザ46が設けられている。ディフューザ46は、空気供給路45に向かい合った構成である。
【0031】
ディフューザ46の中央には、円形の開口47が貫通状態で形成されている。開口47は、アウターチューブ15に対応した大きさで形成されている。ディフューザ46の開口縁48と、インナーチューブ14の他端22、環状プレート34、アウターチューブ15の他端32との間には、隙間49が形成されている。
【0032】
ディフューザ46の外周縁50は円形に形成されている。この外周縁50とブラストチューブ16の拡径部41との間には、燃焼用二次空気のための環状の二次空気噴出口51が形成されている。
【0033】
ブラストチューブ16の小径部40と拡径部41との接続部分の内部には、すなわち空気供給路45には、パイロットバーナ55が設置されている。パイロットバーナ55は、板状のディフューザ46を厚み方向に貫通して配置されるとともにディフューザ46に固定された円筒体56を有する。
【0034】
図1に示すように、パイロットバーナ55のための燃料供給路としての燃料供給管57が、風箱11の外部から風箱11に入り込むとともに、ブラストチューブ16の一端38の空気取入口39から空気供給路45の内部に入り込んでいる。燃料供給管57の先端は、ディフューザ46よりも空気供給路45に近い位置で、燃料供給路としての円筒体56の内部に連通している。
【0035】
円筒体56は、ディフューザ46よりも空気供給路45に近い方の一端58で燃料供給管57に連通するとともに、ディフューザ46よりもブラストチューブ16の大径部42側すなわちディフューザ46の火炎拡散側に突出した他端59でプレート60によって塞がれている。円筒体56には、ディフューザ46よりもブラストチューブ16の大径部42側に突出した突出部において、円筒体56を径方向に貫通する燃料噴出口61が、円筒体56の周方向に沿って複数形成されている。
【0036】
板状のディフューザ46におけるパイロットバーナ55の円筒体56の周囲には、多数の空気噴出口62が貫通状体で形成されている。図示の例では、空気噴出口62は、燃料噴出口61からの後述する燃料72の噴出方向に沿って、それぞれ複数ずつが放射状に形成されている。
【0037】
空気供給路45における円筒体56の近傍には、パイロットバーナ55を点火させるための点火用電極63が設けられている。点火用電極63は、点火用電極27と同様の構成であるが、円筒体56と同様にディフューザザ46を厚み方向に貫通して配置され、パイロットバーナ55を点火させるために必要な放電を行うことができるように構成されている。点火用電極63には、高圧電気用の導線28が接続されている。導線28は、パイロットバーナ55への燃料供給管57と同様に、風箱11の外部から風箱11の内部に挿入され、燃料供給管57に沿って配置されたうえで、点火用電極63に電気的に接続されている。導線28は、絶縁用の碍子29を介して各部に支持されている。
【0038】
このような構成の燃焼装置10において、液体燃料65が装置外部から供給管26を通って噴出ノズル25に供給される。液体燃料65は、噴出口ノズル25から噴出される。一方、気体燃料37が、装置外部から接続ポート36を通って環状空間33に供給される。気体燃料37は、噴出口35から噴出される。燃焼装置10は切替専焼であり、液体燃料65と気体燃料37とのいずれか一方がディフューザ46の開口に向けて噴出される。
【0039】
一方、燃焼用空気17が、ダクト18を通って風箱11へ供給される。その供給量は、ダンパ19の開度を変更することによって調節できる。風箱11に供給された燃焼用空気17は、その一部が、空気取入口21からインナーチューブ14の内部に入り込んだうえで、一次空気68として噴出口23から噴出される。風箱11に供給された燃焼用空気17の残部は、空気取入口39から空気供給路45の内部に入り込んだうえで、二次空気69として噴出口51から噴出される。
【0040】
液体燃料65が噴出ノズル25から噴出されるか、あるいは気体燃料37が噴出口35から噴出されることで、噴出された燃料は噴出口23からの一次空気68および隙間49からの一部の二次空気69と混合したうえで燃焼に供される。燃料65または燃料37の燃焼により生成された火炎70は、ディフューザ46の開口47を通ったうえで、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿って二次元的に拡散されることにより、良好な燃焼状態となる。燃料65または燃料37の燃焼により生成された燃焼ガス71は、ブラストチューブ16の大径部42を経てボイラ1の燃焼室3に送られることで、ボイラ1の缶水を加熱する。
【0041】
パイロットバーナ55による燃焼装置10の点火について説明する。燃焼装置10が未着火の状態において、ダクト18の内部のダンパ19を最小開度として風箱に燃焼用空気17を供給する。すると、燃焼用空気17が二次空気69として空気供給路45を通ったうえで、噴出口51からディフューザ46の火炎拡散側の面52に向けて噴出される。一方、供給管57から円筒体56にパイロットバーナ55用の燃料72を供給する。この燃料72は、円筒体56の燃料噴出口61から、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿った方向に放射状に噴出される。これにより、燃料噴出口61の近傍では、燃料噴出口61からの燃料72と空気噴出口62からの二次空気69とが混合した状態になる。燃料72は、インナーチューブ14の他端22に形成された噴出口23から噴出されたうえでディフューザ46の開口47を通過した一次空気68とも混合した状態になる。この状態での添加用電極63の放電によって、パイロットバーナ55を点火することで、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿った円筒体56の近傍の領域において、燃料72が燃焼する。
【0042】
図4に示すように、この燃焼により発生した燃焼ガスすなわち火炎73は、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿って拡散する。このように拡散した火炎73は、安定状態でディフューザ46の開口47の近傍に存在する。
【0043】
このため、燃焼装置10の噴出ノズル25から噴出される液体燃料65または噴出口35から噴出される気体燃料37を、確実に着火させることができる。
【0044】
上記のように、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿ってパイロット火炎73を形成することができる。すると、ブラストチューブ16の内部の風圧すなわちパイロットバーナ55への燃焼用空気の風圧が変わってパイロットバーナ55における空気圧力損失が変わっても、パイロット火炎73はその変化の影響を受けないという利点がある。このため、パイロットバーナ55の火炎73を安定させることができるとともに、液体燃料噴出ノズル25からの液体燃料65や、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35からの気体燃料37への火移り、すなわちメインバーナへの火移りも、安定させることができる。このような利点は、たとえ何らかの事情によってパイロット火炎73が小さくなった場合であっても、何ら支障なく確実に発揮することができる。
【0045】
また、ディフューザ46における火炎拡散側の面52に沿ってパイロット火炎73を形成することができることから、パイロット火炎73をディフューザ46に保炎させて安定した火炎を形成することができる。このため、燃焼装置10の最小燃焼量や排ガス酸素量を増量して、ブラストチューブ16の内部の空気量、空気圧力、流速に変化が起こっても、また空気側のバーナ損失が高くなっても、ディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿ったパイロット火炎73に及ぼす影響を小さくすることができる。このため、液体燃料噴出ノズル25からの液体燃料65や、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35からの気体燃料37への火移りの安定性を大幅に向上させることができる。しかも、ディフューザ46を貫通する状態で設置した円筒体56が燃料噴出口61を有する構成とするだけで良いため、構造が簡単であり、したがって製造コストを低く抑えることができる。
【0046】
このため、上述の構成のパイロットバーナ55は、燃焼装置10が気体燃料37を燃焼させるものである場合に特に好適に用いることができる。
【0047】
この点に関し、上記においては、液体燃料噴出ノズル25と気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35との両方を備えて、液体燃料65と気体燃料37とを切替専焼させることができる燃焼装置10に上述した特有の構成のパイロットバーナ55を設けた実施の態様について説明した。しかし、本発明は、このような実施の形態に限られるものではなく、たとえば液体燃料噴出ノズルだけを備えた燃焼装置や、気体燃料噴出ノズルだけを備えた燃焼装置や、液体燃料65と気体燃料37とを同時に混焼される燃焼装置の実施の形態をも含むものである。
【0048】
上述のとおり、本発明の燃焼装置では図4に示すようにパイロットバーナ55の火炎73はディフューザ46の火炎拡散側の面52に沿って形成され、安定状態でディフューザ46の開口47の近傍に存在する。これによって、液体燃料噴出ノズル25と、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35とからの燃料を確実に安定して着火させることができる。
【0049】
以下、この点を、公知のパイロットバーナの燃焼特性と対比して説明する。図5および図6は、公知のパイロットバーナ75を用いたときの火炎76の例を示す。公知のパイロットバーナ75では、その燃料噴出口が、ディフューザ46からブラストチューブ16の小径部40側に離れて位置する。このため、図示のように、パイロットバーナ75とディフューザ46との間にパイロット火炎76が存在する。
【0050】
図5に示すように、パイロット火炎76が、ディフューザ46を越えて火炎拡散側の面52の位置まで到達することで、液体燃料噴出ノズル25からの液体燃料や、気体燃料噴出ノズルとしての気体燃料噴出口35からの気体燃料への火移りが問題なく行われて、これらの燃料を確実に安定して着火させることができる。
【0051】
しかしながら、燃焼装置においては、最小燃焼量を若干多めに設定した場合や、また特に排ガス酸素濃度を高めに設定した場合には、ブラストチューブ16の内部の空気量、空気圧、空気流速が変化する。その場合に、公知のパイロットバーナ75では、図6に示すように、パイロット火炎76が小さくなってしまうことがある。すると、図示のように火炎76はディフューザ46の火炎拡散側の面52に出なくなる。
【0052】
ところが、このような場合であっても、図外の火炎検出器が火炎76を検出するため、シーケンスが進んで、液体燃料噴出ノズル25や気体燃料噴出口35から燃料が噴出される。すると、パイロット火炎76は、小さいことから、燃料の噴出位置に届きにくい。このため、火移りが悪く、着火遅れや不着火などの不具合が発生しやすい。
【0053】
このように公知のパイロットバーナ75を備えた燃焼装置では不都合が発生する可能性があるが、上述した本発明の燃焼装置10であると、パイロットバーナ55を特異な構成としたことで、上記したような不都合の発生を防止することができる。
【0054】
図7は、パイロットバーナ55を備えた本発明の燃焼装置10と、公知のパイロットバーナ75を備えた燃焼装置との燃焼特性とを対比して示すグラフである。図7において、横軸はバーナ空気圧力損失(kPa)すなわち風箱11における空気圧と燃焼室3における空気圧との差を示し、縦軸は燃焼率(%)すなわちパイロットバーナにおける燃焼量を示す。ここでは、パイロットバーナの燃料として気体燃料を使用しており、したがってパイロットバーナにおける燃焼量は気体燃料の流量(mN/h)で表している。対応する燃焼率については、0~45%の低燃焼率の範囲が目盛られている。
【0055】
図7では、燃焼率が20%、25%、30%、35%、40%であるときの、バーナ空気圧力損失の範囲がそれぞれ破線で示されている。一転鎖線は、図5および図6に示される公知のパイロットバーナ75を備えた燃焼装置の燃焼特性を示す。実線は、パイロットバーナ55を備えた本発明の燃焼装置10の燃焼特性を示す。
【0056】
図7から、図5および図6に示される公知のパイロットバーナ75を備えた燃焼装置の場合は、特定の燃焼率すなわちパイロット燃焼量の場合において、パイロットバーナが安定に燃焼できるバーナ空気圧力損失の範囲が狭いことがわかる。これに対しパイロットバーナ55を備えた本発明の燃焼装置10では、特定の燃焼率すなわちパイロット燃焼量の場合において、パイロットバーナが安定に燃焼できるバーナ空気圧力損失の範囲が格段に広くなっていることを理解できる。
【符号の説明】
【0057】
16 ブラストチューブ
25 液体燃料噴出ノズル
35 気体燃料噴出口
37 気体燃料
45 空気供給路
46 ディフューザ
52 火炎拡散側の面
55 パイロットバーナ
56 円筒体
57 燃料供給路
61 燃料噴出口
65 液体燃料
68 一次空気
69 二次空気
70 火炎
72 燃料
73 パイロットバーナの火炎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7