(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158588
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】筐体の冷却構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073906
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 祐輝
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322EA05
(57)【要約】
【課題】冷却ファンによる空気を複数並列に配置されたプラグインユニットへと均一に分配し、効率よく強制空冷する冷却構造を提供する。
【解決手段】冷却ファンとプラグインユニットの間に空気誘導部材を設ける。ファンからの冷却空気は空気誘導部材が有する仕切りによって分配され各プラグインユニットに誘導される。ファン側を放射状に、プラグインユニット側を矩形に仕切り、各流路を連続的に繋げることで羽根外周部から噴き出した高風速域の冷却空気を各プラグインユニットに均等に分配する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器が搭載されるプラグインユニットが複数並んで実装される筐体内へ空気を送出し、前記電子機器を冷却する筐体の冷却構造であって、
空気の流れを発する軸流ファンと、
一方の面が前記軸流ファンに固定され、他方の面が前記筐体に固定される空気誘導部材を備え、
前記空気誘導部材は、前記一方の面から前記他方の面へ向けて仕切りで区分けされた複数の流路を備え、
前記一方の面には複数の扇型の開口が放射状に設けられ、前記他方の面には複数の矩形開口が設けられ、
前記軸流ファンにより流れが生じた空気は、前記扇型の開口から前記流路を流れ、前記矩形の開口より前記筐体内へ送出されることを特徴とする筐体の冷却構造。
【請求項2】
前記矩形の開口は、並んで実装される前記プラグインユニットの間に設置され、
前記軸流ファンにより送出された空気は前記矩形の開口から前記プラグインユニットの間を流れて、前記電子機器を冷却することを特徴とする請求項1記載の筐体の冷却構造。
【請求項3】
前記軸流ファンにより送出された空気は、前記流路により偏向されたのち、前記矩形の開口から前記筐体内へ送出されることを特徴とする請求項2記載の筐体の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグインユニット型の電子機器が複数並んで実装してあるサブラック構造の筐体の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラグインユニット型の電子機器は、筐体に取り付けられるサブラック内に複数並んで実装される。プラグインユニット型の電子機器は、筐体に固定された軸流ファンにより吹き付けられた冷却空気により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来のサブラック構造の筐体において、ファン9aが発する風の風量の状態を表す図である。プラグインユニット7はファン9aが発する風の風下に配置され、ファン9aから矢印で示される流れ方向へ風が流れる。この構成では軸流ファン9aの特性上、ファンの羽根外周部の高風速域のプラグインユニットに供給される風量が多くなる一方で、高風速域外のプラグインユニットに供給される風量は少なくなる傾向がある。
そのため、サブラック内に並んで実装してあるプラグインユニット7を均一に冷却できないという課題があった。冷却風量が不足したプラグインユニット7では電子部品が高温になりやすく、故障等の原因となっていた。
ここで、ファンからの冷却空気を各プラグインユニットに均等に分配するには流体を整流するためのダクト(風路)をファン9aとプラグインユニット7の間に設ける必要があり、装置の構造が大型化しやすい傾向があった。
あるいは、高風速域外のプラグインユニット7に対して風量を確保するため、ファンを大電力タイプに変更することで冷却風量を補うことがあるが、電力および冷却構造のコストが増加する傾向があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は係る筐体の冷却構造は、
電子機器が搭載されるプラグインユニットが複数並んで実装される筐体内へ空気を送出し、前記電子機器を冷却する筐体の冷却構造であって、
空気の流れを発する軸流ファンと、
一方の面が前記軸流ファンに固定され、他方の面が前記筐体に固定される空気誘導部材を備え、
前記空気誘導部材は、前記一方の面から前記他方の面へ向けて仕切りで区分けされた複数の流路を備え、
前記一方の面には複数の扇型の開口が放射状に設けられ、前記他方の面には複数の矩形開口が設けられ、
前記軸流ファンにより流れが生じた空気は、前記扇型の開口から前記流路を流れ、前記矩形の開口より前記筐体内へ送出される。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、装置を大型化することなく、低コストで、ファンの羽根外周部から噴き出した高風速域の冷却空気を各プラグインユニットに均等に分配することができ、各プラグインユニットに搭載された電子機器を均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る、プラグインユニット型の電子機器が筐体内に複数並んで実装してある筐体の冷却構造を説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るプラグインユニットを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る筐体の冷却構造における空気誘導部材の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る筐体の冷却構造における空気誘導部材を排気口から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る筐体の冷却構造における空気誘導部材の複数の断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る筐体の冷却構造における風量状態を表した模式図である。
【
図7】従来の筐体の冷却構造における風量状態を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における筐体の外観を示すものであり、電子機器を搭載するプラグインユニット7が複数並んで実装してあるサブラック構造の筐体1を示す斜視図である。
図2は、筐体1内に実装された状態から引き出されたプラグインユニット7の斜視図である。
【0009】
図1において、筐体1は、バックプレート2、トップカバー3、ボトムカバー4、サイドカバー5、リアパネル6およびプラグインユニット7を支持するガイドレール8を有する。軸流ファン9a(以下、ファン9aという)は空気誘導部材10の一方の面に固定される。空気誘導部材10の他方の面はボトムカバー4に固定される。後述するように、ファン9aにより吸引された筐体1外部の空気は空気誘導部材10に設けられた流路を経由して筐体1の内側に取り込まれる。
リアパネル6には、ファン9bが固定される。
【0010】
図2に示すようにプラグインユニット7はプリント基板11とフロントパネル12を有し、プラグインユニット7を装着するスロットに設けられたガイドレール8に沿って筐体1に挿入され、バックプレート2に固定される。
図1で示した筐体1は6スロット構成であり、6つのプラグインユニット7が各ガイドレール8に沿って挿入され筐体1に固定される。
【0011】
ファン9aにより、空気誘導部材10を介して筐体1内に取り込まれた冷却空気は、プラグインユニット7間を通過し、リアパネル6に固定されたファン9bにより筐体1の外に排出される。
ここで隣接するスロットのガイドレール8間には、冷却空気が通る矩形の開口が設けられている。ここで矩形の開口は、空気誘導部材10の一方の面に形成された矩形の形状をした流路であり、ガイドレール8間に、この矩形の形状をした流路がちょうど位置するように空気誘導部材10はボトムカバー4に固定される。
この矩形形状の流路から吹き上がる空気流によって、プリント基板上に実装された電子部品が強制空冷される。
【0012】
図3は、空気誘導部材10の斜視図であり、ファン9aが固定される面の方向からみたときの斜視図である。手前側に見えている面は、ファン9aが取り付けられ冷却空気の吸気側となる面であり、吸気面10aとする。吸気面10aの反対側の面は冷却空気の排気側の面となる面であり、排気面10bとする。
【0013】
図4は、空気誘導部材10の斜視図であり、
図3とは反対に、手前側に見える面が排気面10bであり、その反対側の面が吸気面10aとなる。
【0014】
図3のように、吸気面10aには扇型の開口が放射状に設けられている。各々の開口は放射状に仕切られた形状となっている。具体的には、吸気面10aには、12個の開口(13a、13b、13c、・・・、13l)が設けられており、各開口は放射状であって内側が狭く外側が広い扇型の形状となっている。各開口の間には仕切りが設けられ、各開口同士は区分けがされている。
【0015】
一方、排気面10bには6列2段の計12個の開口が設けられている。ただし、排気面10bに設けられた開口は、
図4のように矩形であり、各開口の間には仕切りが設けられ、各開口同士は区分けがされている。具体的には、排気面10bには、12個の開口(14a_1、14a_2、14b_1、14b_2、14c_1、14c_2、・・・、14f_1、14f_2)の開口が設けられている。
【0016】
14a_1と14a_2とで1列2段の2個の開口を成し、14a_1と14a_2の開口が、筐体1において説明した隣接するスロットのガイドレール8間に設けられた矩形の開口に該当する。
同様に、14b_1と14b_2とで2個の開口を成し、14c_1と14c_2、・・・、14f_1と14f_2とで1列2段の2個の開口を成し、各々のガイドレール8間に設置される。
【0017】
吸気面10aに設けられた開口と、排気面10bに設けられた開口とは対応関係があり、対応する開口同士は連続的な形状でなめらかに繋げられている。
例えば、吸気面10aの開口13aと開口13fは、排気面10bの矩形の開口14c_1と14c_2と対応関係があって、これらの開口は空気誘導部材10の内部で連続的な形状でなめらかに繋げられている。すなわち、吸気面10aの開口13aと開口13fと、排気面10bの矩形の開口14c_1と14c_2とは空気誘導部材10の内部で繋がっており、空気が通る流路となっている。排気面10bの開口14c_1と14c_2の矩形の形状は、プラグインユニットが挿入される際のガイドレール8間の隙間形状に合わせられている。
吸気面10aの開口13aと開口13fと、排気面10bの矩形の開口14c_1と14c_2は、ファン9aの動作によって流れる空気の流路を形成することからの流路区画と呼ぶこともできる。
【0018】
同様に、吸気面10aの開口13bと13eは空気誘導部材10の内部で排気面10bの矩形の開口14b_1と14b_2と連続的な形状でなめらかに繋げられている。吸気面10aの開口13bと13eは、空気誘導部材10の内部で合流し、ガイドレール8間の隙間形状に合わせた排気面10bの矩形の開口14b_1と14b_2を形成する。
開口13cと13dは空気誘導部材10の内部で排気面10bの矩形の開口14a_1と14a_2と連続的な形状でなめらかに繋げられている。吸気面10aの開口13cと13dは、空気誘導部材10の内部で合流し、ガイドレール8間の隙間形状に合わせた排気面10bの矩形の開口14a_1と14a_2を形成する。
【0019】
吸気面10aの放射状の開口13l、13gと、排気面10bの矩形の開口14d_1と14d_2が対応する開口である。
吸気面10aの放射状の開口13k、13hと、排気面10bの矩形の開口14e_1と14e_2が対応する開口である。
吸気面10aの放射状の開口13j、13iと、排気面10bの矩形の開口14f_1と14f_2が対応する開口である。
【0020】
吸気口10aから流入する冷却空気の流路は放射状に仕切られた開口13a、13b、13c, 13d, 13e, 13f, 13g, 13h, 13i, 13j, 13k, 13lの12区画に分割される。
分配された冷却空気はその後、対応する排気面10bの矩形の開口から吹き出されて筐体1内に取り込まれ、プラグインユニット7間を通過し、リアパネル6に固定されたファン9bにより筐体1の外に排出される。
このようにして、ファン9aの羽根外周部から吹き出した冷却空気はサブラック内に複数並んで実装されるプラグインユニット7間に分配され、筐体1から排出される。
【0021】
次に、空気誘導部材10の断面を示す。
図5は、空気誘導部材10を、ファン9aが固定される吸気面10aと平行となる面で切断したときの断面図であり、(a)、(b)、(c)、(d)の順に切断の位置を吸気面10a側から排気面10b側に移動させたものである。
ファン側の吸気面10aの放射状に仕切られた扇状の形状をした空気の流路は、排気面10b側に進むにつれて矩形の形状に変化する。
空気誘導部材10はファン9aから吐き出された冷却空気を仕切りによって偏向し、偏向によって、ファン9aの羽根外周部から噴き出した高風速域の冷却空気と、高風速域外の冷却空気とが混合して風量が均一化される。
【0022】
図6は、実施の形態1に係る筐体の冷却構造におけるプラグインユニット間を流れる風量状態を説明する模式図であり、本実施の形態においてはファン9aとプラグインユニット7の間に、空気誘導部材10が配置される。
図7で説明したように、従来の筐体においては、軸流ファンの特性上、ファンの羽根外周部の高風速域に位置するプラグインユニットに対して供給される風量が多くなる一方で、高風速域外のプラグインユニットに供給される風量は少なくなる傾向があった。一方、本実施の形態に係る筐体においては、ファンの羽根外周部の高風速域の冷却空気は、空気誘導部材10の吸気面10aに設けられた扇形の開口に流入し、流路の形状の変化に伴って排気面10b側では、矩形の開口から吹き出される。
図6に示すように空気誘導部材10を通過した冷却空気は各スロットに等分配され、筐体1内に並んで実装してあるプラグインユニット7を均一に冷却する。
【0023】
このようにして、空気誘導部材10は、ファン9aの羽根外周部から吹き出した高風速域の冷却空気を均等に分配することで、本実施の形態に係る筐体においては、各プラグインユニットに搭載された電子機器を均一に冷却することができる。
【0024】
なお、実施の形態1では6スロット分配では流路を12分岐としたが、5スロットの場合には10分岐とし、また7スロットの場合には14分岐とすれば同様にして応用可能である。
【0025】
空気誘導部材の形状は3Dプリンタで造形することにより実現可能であり、連続的な流路で分配することで、通風抵抗によるファンの風量ロスの低減が期待できる。
【符号の説明】
【0026】
1 筐体、2 バックプレート、3 トップカバー、4 ボトムカバー、5 サイドカバー、6 リアパネル、7 プラグインユニット、8 ガイドレール、9a ファン、9b ファン、10 空気誘導部材、10a 空気誘導部材の吸気面、10b 空気誘導部材の排気面、11 プリント基板、12 フロントパネル、13a 開口(流路区画_A)、13b 開口(流路区画_B)、13c 開口(流路区画_C)、13d 開口(流路区画_D)、13e 開口(流路区画_E)、13f 開口(流路区画_F)、13g 開口(流路区画_G)、13h 開口(流路区画_H)、13i 開口(流路区画_I)、13j 開口(流路区画_J)、13k 開口(流路区画_K)、13l 開口(流路区画_L)、14a 開口(流路区画_A)、14b 開口(流路区画_B)、14c 開口(流路区画_C)、14d 開口(流路区画_D)、14e 開口(流路区画_E)、14f 開口(流路区画_F)。