(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158593
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】工事用エレベータ無線通信装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20241031BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20241031BHJP
B66B 9/187 20060101ALI20241031BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20241031BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B66B7/02 B
B66B3/00 U
B66B9/187 D
H01Q13/22
H01Q1/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073918
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】592217141
【氏名又は名称】サノヤス・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】香川 学
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 秋介
(72)【発明者】
【氏名】石井 高広
【テーマコード(参考)】
3F301
3F303
3F305
5J045
5J047
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301BA08
3F301DD06
3F303FA14
3F305AA11
3F305BD03
5J045AB03
5J045DA14
5J045NA01
5J047AA02
5J047AA12
5J047AB08
(57)【要約】
【課題】工事用エレベータにおいて昇降する搬器と昇降路との間で無線通信を行うことを課題とする。
【解決手段】工事用エレベータにおける搬器10と昇降路20との間で無線通信を行う工事用エレベータ無線通信装置であって、前記搬器10に有した搬器側アンテナ11と、前記搬器10に設けたガイドローラ15、16が接触して前記搬器10の昇降をガイドする中空のパイプからなるガイドレール23と、前記ガイドレール23を構成する前記パイプ内に設けた昇降路側アンテナ24と、を備えたことを特徴とする工事用エレベータ無線通信装置100とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事用エレベータにおける搬器と昇降路との間で無線通信を行う工事用エレベータ無線通信装置であって、
前記搬器に有した搬器側アンテナと、
前記搬器に設けたガイドローラが接触して前記搬器の昇降をガイドする中空ののパイプからなるガイドレールと、
前記ガイドレールを構成する前記パイプ内に設けた昇降路側アンテナと、を備えたことを特徴とする工事用エレベータ無線通信装置。
【請求項2】
前記昇降路側アンテナと前記パイプ内面との間を支持する絶縁体を備えたことを特徴とする請求項1に記載の工事用エレベータ無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信により前記搬器の駆動を制御する制御データを送受信することを特徴とする請求項1に記載の工事用エレベータ無線通信装置。
【請求項4】
一の前記ガイドレール内に複数の前記昇降路側アンテナを前記昇降路に沿って配置したことを特徴とする請求項1に記載の工事用エレベータ無線通信装置。
【請求項5】
前記ガイドレールは平行に複数有し、その全ての前記ガイドレール、又はいずれか複数の前記ガイドレールにおける前記パイプ内に、前記昇降路側アンテナを有していることを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の工事用エレベータ無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場で使用される工事用エレベータの搬器に対して、無線で通信を行う工事用エレベータ無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場で使用される工事用エレベータにおいては、搬器内の制御盤をオペレータが操作することで搬器外に設置された制御装置に対して上昇や下降等のエレベータ駆動に関する情報が送られる。その際に、搬器から搬器外の地上に設置された制御装置までケーブルで情報通信を行っているため、高層階になるにしたがってケーブル長が長くなり高重量となって搬器を昇降させるモータの負荷が大きくなってしまう。このためエレベータ駆動に関する情報について無線通信を行うことにより、ケーブルの重量を軽減することが望まれている。
【0003】
特許文献1には、エレベータ走行路内の空間に導波管で接続されたアンテナが停止階近傍毎に複数設けられて、搬器内の携帯電話と無線通信を行うシステムの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2022-98549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、エレベータ走行路内の空間に導波管で接続されたアンテナを走行路に沿って設けるものであるが、工事用エレベータの場合はラックギヤとピニオンギヤを篏合させて搬器を昇降させるものであるため、ラックギヤの背後が壁であり、アンテナを設置する空間がないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決して、工事用エレベータにおいて昇降する搬器と昇降路との間で無線通信を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、工事用エレベータにおける搬器と昇降路との間で無線通信を行う工事用エレベータ無線通信装置であって、
前記搬器に有した搬器側アンテナと、
前記搬器に設けたガイドローラが接触して前記搬器の昇降をガイドする中空のパイプからなるガイドレールと、
前記ガイドレールを構成する前記パイプ内に設けた昇降路側アンテナと、を備えたことを特徴とする工事用エレベータ無線通信装置を提供するものである。
【0008】
この構成により、工事用エレベータにおいて昇降する搬器と昇降路との間で無線通信を行うことができる。
【0009】
工事用エレベータ無線通信装置であって、前記昇降路側アンテナと前記パイプ内面との間を支持する絶縁体を備えた構成としてもよい。
【0010】
この構成により、パイプ内において昇降路側アンテナが固定されるとともに金属製のパイプに昇降路側アンテナが接触して電波環境が悪化することを防止できる。
【0011】
工事用エレベータ無線通信装置であって、前記無線通信により前記搬器の駆動を制御する制御データを送受信する構成としてもよい。
【0012】
この構成により、搬器と地上とを結ぶケーブルを少なくして軽重量化できる。
【0013】
工事用エレベータ無線通信装置であって、前記ガイドレール内に複数の前記昇降路側アンテナを前記昇降路に沿って配置した構成としてもよい。
【0014】
この構成により、昇降路の高さに応じて複数の昇降路側アンテナを配置することで、高層階においても低層階においても安定した無線通信を行うことができる。
【0015】
工事用エレベータ無線通信装置であって、前記ガイドレールは平行に複数有し、その全ての前記ガイドレール、又はいずれか複数の前記ガイドレールにおける前記パイプ内に、前記昇降路側アンテナを有している構成としてもよい。
【0016】
この構成により、予備の昇降路側アンテナや搬器内にいる人が持つ携帯電話用の昇降路側アンテナを設置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の工事用エレベータ無線通信装置により、工事用エレベータにおいて昇降する搬器と昇降路との間で無線通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1における工事用エレベータを説明する概略図である。
【
図2】本発明の実施例1における工事用エレベータを説明する断面図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるガイドレール内の昇降路側アンテナを説明する断面図である。
【
図4】本発明の実施例2におけるガイドレール内の昇降路側アンテナを説明する断面図である。
【
図5】本発明の実施例3におけるガイドレール内の昇降路側アンテナを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0019】
本発明の実施例1について、
図1-
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における工事用エレベータを説明する概略図である。
図2は、本発明の実施例1における工事用エレベータを説明する断面図である。
図3は、本発明の実施例1におけるガイドレール内の昇降路側アンテナを説明する断面図である。
【0020】
本発明の実施例1における工事用エレベータ100は、
図1に示すように、建物の壁Wに沿って昇降路20が設けられ、この昇降路20に沿って搬器10が昇降する。昇降路20には、ラックギヤ21が設けられており、このラックギヤ21に篏合する搬器10側のピニオンギヤ17をモータ14(14a、14b)が駆動することで、搬器10が上昇又は下降する。
【0021】
搬器10と地上Gに設置された制御部22との間は、ケーブル12により電源やモータ駆動信号が伝達される。一方、搬器10の上昇指示や下降指示、又は上昇速度や下降速度等の制御信号は搬器10の天面に設けた搬器側アンテナ11と後述する昇降路側アンテナ24(24a)との間の無線通信によって搬器外の地上Gに設置された制御部22まで伝達される。
【0022】
なお、実施例1においては、搬器10の下部にモータ14(14a、14b)が設けられているため、搬器側アンテナ11を搬器10の天面に設けたが、モータが搬器の上部に設けられる場合は、搬器側アンテナ11を搬器10の下部に設けてもよい。
【0023】
昇降路20には、鉄等の金属製からなる断面略円形のパイプからなる4本のガイドレール23(23a、23b、23c、23d)が地上から昇降路20と同じ高さまで設けられている。このガイドレール23(23a、23b、23c、23d)は、搬器10に設けられて回転自在のガイドローラ15(15a、15b、15c)及びガイドローラ16(16a、16b、16c)が接触、押圧することで搬器10を昇降路20に沿って昇降させることができる。4本のガイドレール23(23a、23b、23c、23d)内は中空となっており、後述する昇降路側アンテナ24(24a、24b)を挿入して設けることができる。
【0024】
なお、実施例1においては、ガイドレール23(23a、23b、23c、23d)を断面略円形としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、断面正方形や断面長方形の断面四角形としてもよいし、断面三角形としてもよい。
【0025】
具体的には、ガイドローラ15aが壁Wに向う方向(
図2におけるY方向)にガイドレール23aを押圧し、ガイドローラ15bがガイドローラ15aと対向するように壁Wから反対方向にガイドレール23aを押圧し、ガイドローラ15cがガイドローラ15a及びガイドローラ15bとは直交する方向(
図2におけるX方向)にガイドレール23aを押圧する。
【0026】
また、ガイドローラ16aが壁Wに向う方向(
図2におけるY方向)にガイドレール23bを押圧し、ガイドローラ16bがガイドローラ16aと対向するように壁Wから反対方向にガイドレール23bを押圧し、ガイドローラ16cがガイドローラ16a及びガイドローラ16bとは直交する方向(
図2におけるーX方向)にガイドレール23bを押圧する。
【0027】
そして、4本のガイドレール23(23a、23b、23c、23d)のうち搬器10に近いガイドレール23aの中には、昇降路側アンテナ24aが地上Gから高層階まで設けられている。この昇降路側アンテナ24aは地上Gの制御部22までケーブルで接続され、受信した信号は制御部22に伝達される。
【0028】
ガイドレール23aの断面を
図3に示す。パイプ状のガイドレール23aの中において、昇降路側アンテナ24aが絶縁体25(25a及び25b)によりガイドレール23aの内面に固定されている。つまり、絶縁体25は合成樹脂からなり、昇降路側アンテナ24aの外形とほぼ同じ内径を有した断面略円形部25aを有して昇降路側アンテナ24aを保持できる。また、絶縁体25の断面略円形部25aの外側からは3本の脚部25bが形成されていてガイドレール23aの内面に接触して昇降路側アンテナ24aを支持している。この絶縁体25は、昇降路側アンテナ24aの長さと同じか少し短い長さを備えていればよいが、昇降路側アンテナ24aが長い場合は、昇降路側アンテナ24aより短いものを複数備えるようにしてもよい。
【0029】
なお、実施例1においては、絶縁体25が断面略円形部25aと3本の脚部25bを備えるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、昇降路側アンテナ24aの断面が略円形ではなく角部を有した形状であれば、角部に合わせた断面角部を有して昇降路側アンテナ24aを保持してもよい。また、ガイドレール23aの内面に接触して押圧する大きさの断面略円形部を備え、3本の脚部25bの一方側が昇降路側アンテナ24aに接触し、他方側は断面略円形部と一体となる構成としてもよく、昇降路側アンテナ24aをガイドレール23aの中に保持して固定できれば、任意の形状の絶縁体としてよい。
【0030】
さらに、実施例1においては、絶縁体25を合成樹脂で構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、セラミックや木材やゴムなどの任意の絶縁物で構成することができる。
【0031】
昇降路側アンテナ24aがガイドレール23aよりも短く高層階まで届かない場合は、複数の昇降路側アンテナ24aを直列に1本のガイドレール23a内に挿入して配置すればよい。その際、必要に応じてブースター等を接続してもよい。これにより、搬器10が昇降路20のどの位置にあっても昇降路側アンテナ24aと搬器側アンテナ11との間で無線通信することができる。
【0032】
(無線通信試験)
30m長のLCXアンテナ(エイチ・シー・ネットワークス社製)を昇降路側アンテナ24aとしてガイドレールの中に挿入して次のように無線通信試験を実施した。
1回目の試験:ガイドレール23a(搬器側アンテナ11からの距離が約500mm)内にLCXアンテナを挿入し、3階(地上から約15m)と1階とで試験用データによる無線通信を行い、問題なく通信できることを確認した。
2回目の試験:ガイドレール23c(搬器側アンテナ11からの距離が約1,100mm)内にLCXアンテナを挿入し、3階(地上から約15m)と1階とで試験用データによる無線通信を行い、問題なく通信できることを確認した。
【0033】
このように、本発明の実施例1においては、工事用エレベータにおける搬器と昇降路との間で無線通信を行う工事用エレベータ無線通信装置であって、
前記搬器に有した搬器側アンテナと、
前記搬器に設けたガイドローラが接触して前記搬器の昇降をガイドする中空のパイプからなるガイドレールと、
前記ガイドレールを構成する前記パイプ内に設けた昇降路側アンテナと、を備えたことを特徴とする工事用エレベータ無線通信装置により、工事用エレベータにおいて昇降する搬器と昇降路との間で無線通信を行うことができる。
実施例2における工事用エレベータ無線通信装置200においては、4本のガイドレール23(23a、23b、23c、23d)のうち、搬器10の搬器側アンテナ11に近いガイドレール23aの中に昇降路側アンテナ24aを備えるとともに、ガイドレール23bの中に昇降路側アンテナ24bを備えている。昇降路側アンテナ24aは、実施例1と同様に、搬器側アンテナ11との間で搬器10の上昇指示や下降指示、又は上昇速度や下降速度等の制御信号を無線通信するものである。また、昇降路側アンテナ24bは、昇降路側アンテナ24aが故障した場合などに使用される予備の昇降路側アンテナである。昇降路側アンテナ24aから昇降路側アンテナ24bへの切り替えは昇降路側アンテナ24aの故障を検知して自動で行ってもよいし、手動で行ってもよい。