(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158594
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】研磨剤用組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20241031BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241031BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241031BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073919
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉 直紀
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一紀
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
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3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
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3C158ED26
5F057AA17
5F057AA28
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5F057EA01
5F057EA21
5F057EA31
5F057EC30
5F057FA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属酸化物粒子の凝集を抑えるために、スラリーのpHの変動を小さくし、高い研磨選択性を有する研磨剤スラリーを与える研磨剤用組成物を提供することにある。
【解決手段】α,β-不飽和モノカルボン酸(a1)30~85モル%及びアルキル基の炭素数が1~6である脂肪族(メタ)アクリレート(a2)10~60モル%を含む反応成分の重合体を含む研磨剤用組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-不飽和モノカルボン酸(a1)30~85モル%及びアルキル基の炭素数が1~6である脂肪族(メタ)アクリレート(a2)10~60モル%を含む反応成分の重合体を含む研磨剤用組成物。
【請求項2】
pHが3~9である請求項1に記載の研磨剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程においては、素子の高密度化及び微細化のために、機械的研磨(ポリシング)や化学機械的研磨(CMP)等の研磨が施される。その際に使用される研磨剤スラリーとしては、金属化合物粒子、分散剤及び水を含むものが一般的である。
【0003】
前記粒子としては、例えば、アルミナ粒子、シリカ粒子、酸化セリウム粒子、酸化鉄粒子等の金属酸化物等が挙げられる。アルミナ粒子は、他のものに比べて、非常に硬い粒子を分散させており、古くから研磨に使用され、また酸化セリウム粒子は、アルミナ粒子やシリカ粒子に比べて硬度が低く、被研磨面に傷が入りにくい性質を有し、CMPに良く使用されており、また基板としては、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜等を単独又は双方が用いられる。
【0004】
また、分散剤としては、酸化セリウム粒子を含む研磨液の場合、ポリアクリル酸、又はアクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体等を使用したもの等が公知とされている(特許文献1、2)。しかしながら、このような分散剤を使用した場合、粒子の凝集が発生して大粒子を形成し、研磨傷を被研磨面に増大させる場合があった。
【0005】
研磨傷を少なくするためには、粒子を安定的に分散させて凝集を抑えることと、研磨後には基板の研磨速度比を小さくして、ウエハ全面が平坦となる(以下、研磨選択性という。)ことが要求される。粒子の分散を抑えるには、研磨剤スラリーのpHの変動を小さくすることが挙げられ、これらを解決する手段として、水溶性高分子又は有機酸を添加する技術が公知である(特許文献3、4)が、これらの場合にも粒子の凝集が起こる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-154672号公報
【特許文献2】特開2000-017195号公報
【特許文献3】国際公開2000/039843号
【特許文献4】国際公開2012/086781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属酸化物粒子の凝集を抑えるために、スラリーのpHの変動を小さくし、高い研磨選択性を有する研磨剤スラリーを与える研磨剤用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、重合体をなすモノマー組成及び使用量に着目して検討したところ、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の研磨剤用組成物に関する。
【0009】
1.α,β-不飽和モノカルボン酸(a1)30~85モル%及びアルキル基の炭素数が1~6である脂肪族(メタ)アクリレート(a2)10~60モル%を含む反応成分の重合体を含む研磨剤用組成物。
【0010】
2.pHが3~9である前項1に記載の研磨剤用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研磨剤用組成物によれば、スラリーのpHの変動を小さくし、高い研磨選択性を有する研磨剤スラリーを与える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の研磨剤用組成物は、α,β-不飽和モノカルボン酸(a1)(以下、(a1)成分という。)35~85モル%及びアルキル基の炭素数が1~6である脂肪族(メタ)アクリレート(a2)(以下、(a2)成分という。)10~60モル%を含む反応成分の重合体(A)を含むものである。
【0013】
(a1)成分は、α,β-不飽和モノカルボン酸であり、金属酸化物粒子の凝集を抑えるための成分である。「不飽和」とは、分子中に炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を1つ以上有することを指す(以下同様)。
【0014】
(a1)成分としては、例えば、アクリル酸(2-プロペン酸)、メタクリル酸(2-メチル-2-プロペン酸)、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、2-メチル-2-ヘキセン酸、3-メチル-2-ヘキセン酸、4-メチル-3-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、4-ヘプテン酸、5-ヘプテン酸、6-ヘプテン酸又はこれらの酸無水物等が挙げられる。また、(a1)成分としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等のアンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等でも使用できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも生成した重合体(A)を含む研磨剤スラリーにおいて、金属酸化物粒子が安定して分散しやすくする点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0015】
(a1)成分の使用量としては、全反応成分を100モル%として、30~85モル%である。なお、全反応成分とは、後述する添加剤、溶媒を除いた成分をいう(以下同様)。(a1)成分の使用量が30モル%未満であると、研磨剤スラリーが分散しにくくなり、保管時にpHが変動しやすくなる。また、当該使用量が85モル%を超えると、研磨選択性が劣りやすくなる。また、同様の点から、(a1)成分の使用量は、40~80モル%が好ましく、45~75モル%がより好ましい。
【0016】
(a2)成分は、アルキル基の炭素数が1~6の脂肪族(メタ)アクリレートであり、金属酸化物粒子の凝集を抑えるための成分である。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを指す(以下同様)。
【0017】
(a2)成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも金属酸化物粒子の凝集を抑えやすくする点から、アルキル基の炭素数が2~5の脂肪族(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数3~4がより好ましい。より好ましい(a2)成分としては、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
(a2)成分の使用量としては、全反応成分を100モル%として、10~60モル%である。(a2)成分の使用量が10モル%未満であると、研磨選択性が劣りやすくなり、60モル%を超えると、研磨剤スラリーが分散しにくくなり、保管時にpHが変動しやすくなる。また、同様の点から、(a2)成分の使用量は、15~55モル%が好ましく、20~50モル%がより好ましい。
【0019】
前記反応成分には、更に(a1)成分及び(a2)成分以外の不飽和モノマー(a3)(以下、(a3)成分という。)を使用しても良い。(a3)成分としては、例えば、(メタ)アクリルアミド類、ヒドロキシ基を有する不飽和モノマー、アミノ基を有する不飽和モノマー、α,β-不飽和ジカルボン酸、スルホニル基を有する不飽和モノマー、スチレン類、メルカプタン、アルコール、芳香族化合物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。「(メタ)アクリル」とは、メタクリル又はアクリルを指す(以下同様)。
【0020】
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0021】
ヒドロキシ基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0022】
アミノ基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、1級アミノ基を有する重合性モノマー、2級アミノ基を有する重合性モノマー、3級アミノ基を有する重合性モノマー、これらの重合性モノマーの4級化塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
1級アミノ基を有する重合性モノマーとしては、例えば、ビニルアミン、アリルアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0024】
2級アミノ基を有する重合性モノマーとしては、例えば、ジアリルアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0025】
3級アミノ基を有する重合性モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0026】
これらのモノマーの4級化塩とは、前記1級アミノ基を有する重合性モノマー、前記2級アミノ基を有する重合性モノマー又は前記3級アミノ基を有する重合性モノマーと、4級化剤とを反応させてなるもの等を意味し、4級化塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩であっても、酢酸塩等の有機酸塩であっても良い。また、4級化剤としては、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0027】
α,β-不飽和ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、α,β-不飽和ジカルボン酸としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等のアンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等の塩等でも使用できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0028】
スルホニル基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸等が挙げられる。また、スルホニル基を有する不飽和モノマーとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩等でも使用できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0029】
スチレン類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
メルカプタン類としては、例えば、2-メルカプトエタノール、n-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0031】
アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ペンチルアルコール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0032】
芳香族化合物としては、例えば、α-メチルスチレンダイマー、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0033】
(a3)成分の使用量としては、金属酸化物粒子の凝集を抑え、当該粒子が安定して分散しやすくする点から、全反応成分を100モル%として、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
【0034】
本発明の重合体(A)の製造においては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の無機酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、APS変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉等の澱粉類;ポリビニルアルコール、尿素、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤等の添加剤を加えても良い。これらは単独でも2種以上組み合わせても良く、添加するタイミング(製造前、製造中、製造後)も自由に選択できる。
【0035】
重合体(A)の製造方法としては、(a1)及び(a2)成分、必要に応じて、(a3)成分及び添加剤を加えて、重合開始剤の存在下で重合することが挙げられ、添加順序や添加方法(同時、分割、滴下又はこれらの組合せ等)等も特に限定されない。重合反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行っても良く、圧力も常圧、加圧、減圧等を自由に選択できる。さらに、前記重合においては、溶媒を使用しても良い。
【0036】
前記重合条件としては、例えば、温度が、通常は30~100℃であり、好ましくは50~90℃である。また時間は、通常は1~20時間であり、好ましくは2~10時間である。
【0037】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ系重合開始剤;過酸化水素水等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。重合開始剤の使用量としては、全反応成分100重量部に対して、0.01~20重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましい。
【0038】
また任意ではあるが、有機過酸化物のラジカル発生を容易にする点で還元剤を併用しても良い。還元剤としては、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;トリエタノールアミン、硫酸第一銅等が挙げられる。
【0039】
溶媒としては、例えば、水道水、イオン交換水、工業用水、純水、超純水等の水;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-オクチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、水が好ましい。また、溶媒を使用する場合には、重合濃度が5~50重量%となるように調整されることが好ましい。
【0040】
得られた重合体(A)には、例えば、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤(シリコーン系消泡剤等)、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料等を添加しても良い。
【0041】
前記製造方法で得られた重合体(A)の物性としては、例えば、pHが3~9あることが好ましく、4~8であることがより好ましく、5~7であることが更に好ましい。ここでのpHは、標準物質で校正された市販のpHメーターで測定した値である。pHが前記の数値を示すことにより、重合体(A)の水に対する溶解性が高まり、研磨剤スラリーを長期保管した際に、沈降物の発生を抑えられやすくなる。
【0042】
また、重合体(A)の不揮発分濃度は、1~50重量%が好ましく、5~50重量%がより好ましい。
【0043】
本発明の研磨剤用組成物は、金属化合物粒子及び前述の溶媒と混合して、研磨剤スラリーを調製できる。金属化合物粒子としては、例えば、シリカ粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子、アルミナ粒子、アルミナジルコニア粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化鉄粒子、酸化チタン粒子、酸化クロム粒子又はこれらの混合粒子等が挙げられる。また、調製する際には、重合体(A)以外の分散剤等を加えても良い。
【0044】
重合体(A)以外の分散剤としては、例えば、ノニオン性分散剤、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤等を添加できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0045】
研磨剤スラリーの製造方法としては、例えば、重合体(A)、金属化合物粒子及び溶媒、必要に応じて、重合体(A)以外の分散剤を混合すること等が挙げられる。また、混合の際には加熱又は冷却しても良い。
【0046】
研磨剤スラリーを調製する際の各成分の含有量も自由に選択できる。得られた研磨剤スラリーのスラリー濃度としては、研磨剤スラリーの取り扱いやすさから0.5~20重量%の範囲が好ましい。
【0047】
本発明の研磨剤用組成物、及びそれを含む研磨剤スラリーは、砥石研磨、バフ研磨、ラッピング研磨、バレル研磨等の用途に使用でき、好ましくはラッピング研磨に好適で、CMP(化学機械的)研磨に最適である。
【実施例0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0049】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水100.0g、イソプロピルアルコール200.0gを入れ、窒素ガスで反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。滴下ロート(I)にメタクリル酸(MAA)133.0g(80モル%)及びイソプロピルメタクリレート(iPrMA)50.0g(20モル%)のモノマー混合液を、滴下ロート(II)に、過硫酸アンモニウム(APS)12.0gとイオン交換水100.0gとの開始剤水溶液をそれぞれ仕込んだ。次に、滴下ロートから系内にモノマー混合液および開始剤水溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.5gをイオン交換水5.0gに溶解した液を加えて、2時間保温した。減圧蒸留によってイソプロピルアルコールを留去した後、25%アンモニア水溶液でpH7にして、不揮発分濃度20%の重合体(A-1)を得た。
【0050】
実施例2~4、比較例1~2
表1に示す組成及びモル割合に変更して、実施例1と同様の方法で行い、pH7及び不揮発分濃度20%の重合体(A-2)~(A-4)、(B-1)~(B-2)の水溶液をそれぞれ得た。
【0051】
重合体(A-1)~(A-4)、(B-1)~(B-2)をそのまま研磨剤スラリー用組成物として用いた。
【0052】
<研磨剤スラリーの調製>
酸化セリウム粒子200.0g及びイオン交換水795.0gを混合した後、各研磨剤スラリー組成物5.0g(不揮発分濃度:20%)を加え、撹拌しながら、超音波分散(周波数:400kHz、時間:30分)させた。次いで分級して、イオン交換水で希釈することにより、不揮発分濃度5%の研磨剤スラリーをそれぞれ調製した。
【0053】
<研磨選択性>
ブランケットウエハとして、後述の基板(a)及び基板(b)を下記条件でそれぞれ研磨し、純水でよく洗浄した後に乾燥した。次いで、膜厚測定装置(商品名:「ラムダエース VL-M8000LS」、大日本スクリーン製造(株)製)を用いて、基板(a)及び(b)における研磨前後での膜厚差を測定した後、膜厚差の結果に基づいて研磨速度を求め、酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比を算出して、以下の基準で評価した。
【0054】
(基板)
(a)CVD法でシリコンウエハ上に形成された酸化ケイ素膜(厚さ:1000nm)を有する直径200mmの基板
(b)CVD法でシリコンウエハ上に形成された窒化ケイ素膜(厚さ:200nm)を有する直径200mmの基板
【0055】
(研磨条件)
・研磨装置-商品名:「Mirra」、Applied Materials社製
・研磨パッド-型番:「IC1010」、Rohm and Haas社製
・加工荷重-21kPa
・研磨剤スラリーの供給速度-150mL/分
・定盤回転数-90回転/分
・基板回転数-90回転/分
・研磨時間-60秒
【0056】
(評価基準)
◎:酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比が0.2%未満
○:酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比が0.2%以上0.5%未満
△:酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比が0.5%以上1%未満
×:酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比が1%以上
【0057】
(pH安定性)
各研磨剤スラリーをpHが7となるように、10%酢酸水溶液又は10%アンモニア水溶液を用いて調節した。50℃で2週間静置した後の研磨剤スラリーのpHを市販のpHメータ計((株)堀場製作所製)を用いて測定し、その変化幅の絶対値を読み取り、以下の基準で評価した。表1に結果を示す(以下同様)。
【0058】
(評価基準)
◎:変化幅の絶対値が0.1未満であった。
○:変化幅の絶対値が0.1以上0.2未満であった。
△:変化幅の絶対値が0.2以上0.3未満であった。
×:変化幅の絶対値が0.3以上であった。
【0059】
【0060】
表1に示す略号は以下のモノマーを表す。
・MAA:メタクリル酸
・i-PrMA:イソプロピルメタクリレート
・IBMA:イソブチルメタクリレート
【0061】
表1の結果より各実施例の研磨剤用組成物は、研磨剤スラリーを調製して用いた際に、酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の研磨速度比を小さくでき、基板全体として平坦となり(すなわち、研磨選択性に優れることを意味する。)、また、50℃で長期保管してもpH安定性に優れることがわかった。