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  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158596
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241031BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20241031BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20241031BHJP
   G02B 30/00 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13 505
G02F1/133 505
G02B30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073928
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 毅
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
2H199
【Fターム(参考)】
2H088EA05
2H088EA13
2H088EA23
2H088EA45
2H088HA21
2H088HA23
2H088HA26
2H088HA28
2H088MA03
2H193ZD37
2H193ZJ20
2H193ZR03
2H193ZR10
2H199BA20
2H199BA61
2H199BB04
2H199BB18
2H199BB19
2H199BB42
2H199BB52
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA30
(57)【要約】
【課題】光線再生方式の構成において低解像度の表示パネルが配置される場合であっても、立体表示の解像度を向上する。
【解決手段】表示像となる表示光Lを出射する光源22と、光源22が出射した表示光Lに基づき表示像を表示する表示パネル26と、表示パネル26の前側に設けられた3Dレンチキュラレンズ24と、3Dレンチキュラレンズ24よりも前側に設けられ、入射された表示光Lを偏向するON状態と偏向しないOFF状態とを切り替え可能に構成された偏向部材25と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を透光部材に向けて射出することで前記表示光が表す表示像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示像となる光を出射する光源と、
前記光源が出射した光に基づき前記表示像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルの前側に設けられた3Dレンチキュラレンズと、
前記3Dレンチキュラレンズよりも前記前側に設けられ、入射された光を偏向するON状態と偏向しないOFF状態とを切り替え可能に構成された偏向部材と、
を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記偏向部材を、所定周期で前記ON状態又は前記OFF状態に切り替え制御する制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記表示パネルにおける前記表示像を表す光の切替信号に同期して、前記偏向部材を、前記ON状態及び前記OFF状態のいずれか一方に切り替える
ことを特徴とする請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記偏向部材は、
前記ON状態において偏向して出射する角度間隔が、前記3Dレンチキュラレンズの角度分解能の略1/2に等しい
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記表示パネルの解像度は、100[ppi]以上600[ppi]以下である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して所望の表示を行うヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置が知られている。このヘッドアップディスプレイ装置は、バックライトと、液晶パネルと、レンチキュラレンズとを備え、複数の画素から立体表示上の1点を構成する所謂光線再生方式の構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-18257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のヘッドアップディスプレイ装置のように光線再生方式の場合、射出される光線数は液晶パネルの解像度によって決まり、それが多くなるほど立体表示の表示品位は高くなる。そのため、例えばレンチキュラレンズの1つの凸部に対して表示パネルに1~2個の画素が配置されるような比較的低解像度の表示パネルを用いる場合、立体表示の解像度が低下するという問題点があった。なお、これを回避するためには、高解像度の表示パネルを採用すればよいが、その場合、表示パネルの透過率が低下してより高出力のバックライトが要求されることや、パネル自体のコストが上昇を招く。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、光線再生方式の構成において低解像度の表示パネルが配置される場合であっても、立体表示の解像度を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表示光Lを透光部材WSに向けて射出することで前記表示光Lが表す表示像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置1であって、前記表示像となる光を出射する光源22と、前記光源22が出射した光に基づき前記表示像を表示する表示パネル26と、前記表示パネル26の前側に設けられた3Dレンチキュラレンズ24と、前記3Dレンチキュラレンズ24よりも前記前側に設けられ、入射された光を偏向するON状態と偏向しないOFF状態とを切り替え可能に構成された偏向部材25と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光線再生方式の構成において低解像度の表示パネルが配置される場合であっても、立体表示の解像度を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置の全体構成を示す模式図。
図2図1に示した表示器の詳細構成を示す模式図。
図3図2に示した偏向部材の詳細構成を示す模式図。
図4図2に示した偏向部材の偏向切替挙動を表す説明図。
図5図2に示した偏向部材の偏向切替を液晶表示パネルの光の切替信号と同期させる場合の挙動を表すタイムチャート。
図6】(a)従来手法による立体表示画像の例、及び、(b)本発明の一実施形態による立体表示画像の例、をそれぞれ表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<HUD装置の全体構成>
図1は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下適宜、HUD装置という)の全体構成を表す図である。HUD装置1は、車両CのウィンドシールドWS(透光部材)の下方(例えばインストゥルメントパネルの内部)に配置されている。HUD装置1は、表示光Lを生成する表示器21と、表示器21から出射した表示光Lを反射する第1反射鏡31と、第1反射鏡31で反射した表示光Lを拡大してウィンドシールドWSに反射させる第2反射鏡32と、これらを収容する筐体50と、筐体50の内部を保護するために開口部に配置されるカバーガラス52とを備える。HUD装置1はまた、表示器21の表示内容を制御するための図示しない制御基板62(制御部)を備える。なお、カバーガラス52には表示光Lを透光する透光部52aが設けられている。
【0011】
第1反射鏡31及び第2反射鏡32は、例えば合成樹脂やガラス等から形成された凹面状の基材と、その基材の凹面に形成された金属の反射膜とからなり、表示パネル26(後述の図2参照)からの表示光Lを補正、拡大等しながらウィンドシールドWSに導く光学系を構成する。第1反射鏡31は、筐体50の体積を削減するべく光路を折り返すために設けられている。第2反射鏡32は、自由曲面形状のミラーであり、映像を拡大し、カバーガラス52を通してウィンドシールドWSへ表示光を投射する。
【0012】
筐体50は、遮光性を有する樹脂により箱状に形成され、表示器21、第1反射鏡31及び第2反射鏡32を収容する。筐体50の上部には、表示光Lを透過させるための開口部が設けられており、当該開口部には、筐体50の内部を保護すると共に第2反射鏡32で反射された表示光LをウィンドシールドWSに透光するカバーガラス52が被覆されている。
【0013】
<表示器>
図2は、表示器21の詳細構成を表す図である。表示器21は、例えば白色の光を出射するLEDからなる光源22と、光源22よりも光軸に沿って出射側に配置される1つ以上のレンズからなる光学系により構成され、光源22の光を効率よく表示パネル26に照射するためのバックライト光学系23と、バックライト光学系23よりも光軸に沿って出射側(前側)に配置され、当該バックライト光学系23から入射した光で画像を生成する(表示像を表示する)表示パネル26と、表示パネル26よりも光軸に沿って出射側(前側)に配置される3Dレンチキュラレンズ24と、3Dレンチキュラレンズ24よりも光軸に沿って出射側(前側)に配置され、3Dレンチキュラレンズ24から出射された光を適宜に偏向して画像を生成し表示光Lとして出射する偏向部材25と、制御基板62(図示せず)と、を有する。
【0014】
表示パネル26は,例えば,液晶ディスプレイであり、制御基板62から入力される信号に基づいて、表示光Lの元になるパターンを生成する。本実施形態では、表示パネル26は、比較的解像度が低いもの(例えば100[ppi](pixels per inchi)以上600[ppi]以下)が用いられる。3Dレンチキュラレンズ24は,表示パネル26のパターンの画素と3Dレンチキュラレンズ24の相対的な位置関係に基づいて、表示光Lを特定の方向に射出する。なお、解像度の低い表示パネル26は、3Dレンチキュラレンズ24の1つの凸形状に対し、画素が1~2個配置される。これに対し、解像度の高い表示パネル26は、3Dレンチキュラレンズ24の1つの凸形状に対し、画素が10個以上配置される。
【0015】
上記構成により、HUD装置1は、表示器21で生成された表示光Lを出射し、ウィンドシールドWSへ投影する。表示器21で生成された表示光Lは光学系(第1反射鏡31や第2反射鏡32)を伝うことで、筐体50の開口部から出射される。車両Cの乗員は、視点EBからウィンドシールドWSに反射した表示光Lを視認することで、ウィンドシールドWSの奥側に、表示光Lが表す表示像の虚像V1を見ることができる。
【0016】
虚像V1には、例えば車両Cの速度やエンジン回転数と言った車両情報や、ターンバイターンや地図などの経路案内表示、ブラインドスポットインジケータや制限速度超過警告などの警告表示など、乗員へ注意喚起する必要性が高い情報が、当該乗員から見てウィンドシールドWSの向こう側に表示される。この表示により、視点移動及び眼の焦点距離調整の必要が低減された運転環境が提供される。虚像V1にはこれらの情報を示す文字やアイコンの他、背景部分も含まれており、乗員からの平面視ではこれは例えば略矩形状をなしている。
【0017】
<偏向部材による表示光の偏向>
本実施形態の特徴は、偏向部材25における偏向特性の切り替えにある。偏向部材25の詳細構成を図3に示す。
【0018】
図3に示すように、偏向部材25は、例えば、プリズム層25Aと、封入された液晶からなる液晶層25Bと、からなる液晶プリズムである。プリズム層25Aは、断面がプリズム状の形状(三角形状が連続したのこぎり刃形状)を有する透明材料であり、例えば、ポリカーボネートを成形したものである。液晶層25Bは、電圧を印加した場合は、プリズム層25Aと同じ屈折率となり、印加しない場合は、より低い屈折率を有するように、液晶材料が選定されている。その結果、偏向部材25は、制御基板62から制御信号としての電圧が印加されることによって、透過する光の向きを偏向することが可能である。すなわち、偏向部材25は、制御基板62からの制御信号に応じて、3Dレンチキュラレンズ24から入射された表示光Lを偏向するON状態と、3Dレンチキュラレンズ24から入射された表示光Lを偏向しないOFF状態と、が切り替えられる。
【0019】
図4は、その偏向部材25における偏向挙動を表す説明図である。例えば、電圧が印加された場合(この例ではON状態に相当)には、図4(a)に示すように、偏向部材25は入射した光を偏向することなくそのまま透過させる結果、表示光L1が出射される。電圧が印加されない場合(この例ではOFF状態に相当)には、図4(b)に示すように、偏向部材25は入射した光を偏向する(曲げる)ように動作する結果、表示光L2が出射される。
【0020】
このとき、制御基板62は、偏向部材25の上記ON状態とOFF状態とを所定周期で切替制御するようにしてもよい。その際、特に、制御基板62から表示パネル26へ出力される、表示像を表す光の切替信号に同期して、ON状態及びOFF状態のいずれか一方に切り替えるようにしてもよい。この場合、図5に示すように、偏向部材25がOFF状態となり表示光L1が出射される期間はこれに合わせたOFF時の映像が表示パネル26に表示され、偏向部材25がON状態となり表示光L2が出射される期間はこれに合わせたON時の映像が表示パネル26に表示される。
【0021】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のHUD装置1においては、3Dレンチキュラレンズ24の前側に配置された偏向部材25が、ON状態とOFF状態とが切り替え可能に構成されている。OFF状態では偏向部材25に入射された光は偏向されることなく偏向部材25から表示光L1として出射される一方、ON状態では偏向部材25に入射された光は所定の偏向角度に偏向されて表示光L2として偏向部材25から出射される。すなわち、OFF状態にあるときの偏向部材25からの出射方向とON状態にあるときの偏向部材25からの出射方向とを異なるせることができる。これにより、偏向部材25から出射する見かけ上の光線数を増加させることができる。この結果、比較的低解像度の表示パネル26が用いられる場合であっても立体表示における像品位を改善し、高解像度に近い高品質な画像を形成することができる。すなわち、例えば偏向部材25を設けない場合は図6(a)に示すような低解像度のままの虚像V1の立体表示画像となるが、偏向部材25を設けて上記のように見かけ光線数を増加させることで、図6(b)に示すように高品質な虚像V1の立体表示画像を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態では特に、制御基板62が、偏向部材25を、所定周期でON状態又はOFF状態に切り替え制御する。互いに出射方向が異なるOFF状態とON状態とを交互に切り替えることにより、偏向部材25から射出する見かけ上の光線数を確実に疑似的に増加させることができる。
【0023】
また、本実施形態では特に、制御基板62は、表示パネル26における表示像を表す光の切替信号に同期して、偏向部材25をON状態及びOFF状態のいずれか一方に切り替える。すなわち、表示パネル26側の光の切替信号に同期したいわゆる時分割制御の形で、より多くの方向に光線を射出することができる。その結果、表示パネル26の解像度を上げることなく、確実に見かけ上の光線数を増加させることができる。
【0024】
また、本実施形態では特に、例えば解像度100[ppi]以上600[ppi]以下の比較的低解像度の表示パネル26を用いてコストダウンを図る場合であっても、確実に高品質な画像を形成することができる。
【0025】
<変形例>
なお、上記構成において、ON状態において偏向して出射される表示光L2の角度間隔を、3Dレンチキュラレンズ24の角度分解能の略1/2に等しくしてもよい。具体的には、偏向部材25のプリズム層25Aの偏向角度を、3Dレンチキュラレンズ24の角度分解能の略1/2に設定する。この場合、例えば、3Dレンチキュラレンズ24からの光線の出射角度が60°(2時方向)の場合、OFF状態では偏向部材25から表示光L1がそのまま2時方向へと出射される一方、ON状態では偏向部材25からは表示光L2が30°(1時方向)へと出射される。この結果、視覚的には、60°(2時方向)及び30°(1時方向)の光線(表示光L1と表示光L2)が出射されるように光が倍増して見える(60°間隔の光線の中間が補われるように見える)こととなり、確実に高品質な画像を形成することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
21 表示器
22 光源
23 バックライト光学系
24 3Dレンチキュラレンズ
25 偏向部材
25A プリズム層
25B 液晶層
26 表示パネル
31 第1反射鏡
32 第2反射鏡
50 筐体
52 カバーガラス
52a 透光部
62 制御基板
C 車両
EB 視点
L 表示光
L1 表示光
L2 表示光
V1 虚像
WS ウィンドシールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6