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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158598
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20241031BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20241031BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/005 108
A41D1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073931
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】517312135
【氏名又は名称】株式会社リブレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 邦彦
【テーマコード(参考)】
3B030
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA03
3B030AA06
3B030AB08
3B030AB12
3B211AB01
3B211AC01
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、適度に冷やした状態となった冷却流体により、着用者に冷却効果をもたらすことができる冷却衣服を提供する。
【解決手段】冷却衣服1は、凝固可能な冷却物質M入りのペットボトル90を、立ち姿勢の態様で出し入れ自在な収容部50を、衣服本体に有し、衣服本体の内面側で循環経路をなすチューブ71に対し、流入部72と流出部73とが収容部50に配設され、収容部50に貯留した冷却流体Nを、ペットボトル90と接触させ、流出部73から循環経路への流通を経て、流入部72から収容部50に還流させる冷却流体循環経路2を備え、収容部50内でペットボトル90の下側に近接する流出部73と、上側に近接する流入部72とが、ペットボトル90の中心軸Qを挟み、Y方向かつX方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられ、収容部50に貯留された冷却流体Nに流入部72を浸漬させた状態で、使用される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固可能な冷却物質入りのペットボトルを、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部を、衣服本体に有し、該衣服本体の内面側で循環経路をなすチューブに対し、一端側の流入部と他端側の流出部とが該収容部に配設され、該収容部に貯留された冷却流体を、該ペットボトルとの接触を介して、ポンプにより、該流出部から該循環経路への流通を経て、該流入部から該収容部に還流させる冷却流体循環経路を備えた冷却衣服において、
静置条件の下、前記収容部に収容された前記ペットボトルに対し、立ち姿勢の中心軸に沿う第1方向と直交する方向を、当該冷却衣服の着用者の前後方向に沿う第2方向と、当該冷却衣服の着用者の左右方向に沿う第3方向としたとき、
前記収容部内で前記ペットボトルの下側に近接する前記流出部と、上側に近接する前記流入部とが、前記ペットボトルの前記中心軸を挟み、前記第2方向かつ前記第3方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられ、
当該冷却衣服は、前記収容部内に貯留された前記冷却流体に、前記流入部と前記ペットボトルを浸漬させた状態で、使用するものであること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載する冷却衣服において、
前記収容部は、可撓性を有したシート材により、袋状に形成され、前記流出部は、前記第2方向に対し、当該冷却衣服を着用する人の身体と近接する側に配置されていること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
前記冷却流体は、前記ペットボトルの大きさに依らず、設定された同じ深さで、前記収容部内に貯留されること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項4】
請求項3に記載する冷却衣服において、
前記収容部内に貯留する前記冷却流体の設定深さは、内容量350mlに相当する小型サイズで、最上部にキャップを有した前記ペットボトルの高さを基準に、前記キャップ下の外周面で前記冷却流体との接触を可能とする条件を満たす深さであること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
前記冷却流体循環経路では、前記チューブは、前記衣服本体の前記内面に固着したアーチ状のガイド部を挿通することにより、保持されていること、
を特徴とする冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の身体を冷やす冷却衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
人にとって不快な猛暑日は近年、年間を通じて数多くあり、このような猛暑日には、熱中症の防止策として、小まめな水分補給をはじめ、適度な冷房装置の使用が、奨励されている。しかしながら、冷房装置の設備がない、または冷房の効きが十分でない等の理由により、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人は、冷房装置で涼を取ることはできない。そこで、避暑を求める人向けに、冷却機能を備えた衣服が普及し、近年では、冷水を循環させる冷却経路を衣服本体に装着した冷却衣服も開発されている。その一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、ポンプによる送出で、チューブ一端側から収容部に流入した冷却流体を、ペットボトルに接触させ、ペットボトルの外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却したこの冷却流体を、チューブ他端側に戻す流れにより、チューブを流通する冷却流体循環経路を構成した冷却衣服である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-11483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、冷却流体循環経路で循環させる冷却流体(水)を、身体を効果的に冷やすことができる低温の冷水にすることができる点で優れているが、特許文献1のような技術には、以下の問題があった。すなわち、特許文献1では、収容部に還流した冷却流体は、滴下によりペットボトルの外面に接触させているため、ペットボトル内の氷との間で、急速に熱交換が進み易い。それ故に、熱交換後の冷却流体は、冷却衣服の着用者にとって冷やし過ぎる程、過度な低温の冷水となってしまう虞がある。このような低温の冷水が、チューブ一端側から冷却流体循環経路に流通すると、冷却衣服の着用者に不快感が生じる。
【0006】
このことから、特許文献1では、低温の冷水を冷却流体循環経路に断続的に送出するため、ポンプを間欠的に作動させる制御機能を設けているが、この制御機能を付加することは、コストアップの一因となる。また、特許文献1のような冷却衣服の使用する人々の中には、過度な低温の冷水で着用者の身体を冷やすのではなく、適度な低温の冷水を持続的に循環させて身体を冷やす冷却衣服を希求する人も多く存在し、そのような冷却衣服の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、着用者にとって使い勝手が良く、簡単な構成で、適度に冷やした状態とした冷却流体により、着用者に冷却効果をもたらすことができる冷却衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、以下の構成を有する。
【0009】
(1)凝固可能な冷却物質入りのペットボトルを、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部を、衣服本体に有し、該衣服本体の内面側で循環経路をなすチューブに対し、一端側の流入部と他端側の流出部とが該収容部に配設され、該収容部に貯留された冷却流体を、該ペットボトルとの接触を介して、ポンプにより、該流出部から該循環経路への流通を経て、該流入部から該収容部に還流させる冷却流体循環経路を備えた冷却衣服において、静置条件の下、前記収容部に収容された前記ペットボトルに対し、立ち姿勢の中心軸に沿う第1方向と直交する方向を、当該冷却衣服の着用者の前後方向に沿う第2方向と、当該冷却衣服の着用者の左右方向に沿う第3方向としたとき、前記収容部内で前記ペットボトルの下側に近接する前記流出部と、上側に近接する前記流入部とが、前記ペットボトルの前記中心軸を挟み、前記第2方向かつ前記第3方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられ、当該冷却衣服は、前記収容部内に貯留された前記冷却流体に、前記流入部と前記ペットボトルを浸漬させた状態で、使用するものであること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する冷却衣服において、前記収容部は、可撓性を有したシート材により、袋状に形成され、前記流出部は、前記第2方向に対し、当該冷却衣服を着用する人の身体と近接する側に配置されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する冷却衣服において、前記冷却流体は、前記ペットボトルの大きさに依らず、設定された同じ深さで、前記収容部内に貯留されること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する冷却衣服において、前記収容部内に貯留する前記冷却流体の設定深さは、内容量350mlに相当する小型サイズで、最上部にキャップを有した前記ペットボトルの高さを基準に、前記キャップ下の外周面で前記冷却流体との接触を可能とする条件を満たす深さであること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する冷却衣服において、前記冷却流体循環経路では、前記チューブは、前記衣服本体の前記内面に固着したアーチ状のガイド部を挿通することにより、保持されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明に係る冷却衣服の作用・効果について説明する。
【0011】
(1)凝固可能な冷却物質入りのペットボトルを、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部を、衣服本体に有し、該衣服本体の内面側で循環経路をなすチューブに対し、一端側の流入部と他端側の流出部とが該収容部に配設され、該収容部に貯留された冷却流体を、該ペットボトルとの接触を介して、ポンプにより、該流出部から該循環経路への流通を経て、該流入部から該収容部に還流させる冷却流体循環経路を備えた冷却衣服において、静置条件の下、収容部に収容されたペットボトルに対し、立ち姿勢の中心軸に沿う第1方向と直交する方向を、当該冷却衣服の着用者の前後方向に沿う第2方向と、当該冷却衣服の着用者の左右方向に沿う第3方向としたとき、収容部内でペットボトルの下側に近接する流出部と、上側に近接する流入部とが、ペットボトルの中心軸を挟み、第2方向かつ第3方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられ、当該冷却衣服は、収容部内に貯留された冷却流体に、流入部とペットボトルを浸漬させた状態で、使用するものであること、を特徴とする。
【0012】
この特徴により、本発明に係る冷却衣服は、冷却流体循環経路により、収容部に貯留された冷却流体を、着用者に快適さを感じる適温に調整することができることから、着用者に良好な冷却効果をもたらすことが可能となり、着用者にとって、本発明に係る冷却衣服の使い勝手は良い。しかも、本発明に係る冷却衣服は、冷却流体循環経路の構成を簡単にして、このように優れた冷却効果を効率良く生み出すことができる。そのため、低温の冷水を冷却流体循環経路に断続的に送出するのに、ポンプを間欠的に作動させる制御機能を設けた特許文献1の技術とは異なり、本発明に係る冷却衣服では、このような制御機能は不要で、余分にコストアップとなる要因は排除されており、本発明に係る冷却衣服に呈するコストパフォーマンスは、より高いものになっている。
【0013】
従って、本発明に係る冷却衣服によれば、着用者にとって使い勝手が良く、簡単な構成で、適度に冷やした状態とした冷却流体により、着用者に冷却効果をもたらすことができている、という優れた効果を奏する。
【0014】
(2)に記載する冷却衣服において、収容部は、可撓性を有したシート材により、袋状に形成され、流出部は、第2方向に対し、当該冷却衣服を着用する人の身体と近接する側に配置されていること、を特徴とする。
【0015】
この特徴により、冷却物質として、例えば、凝固した状態にあるペットボトル内の冷却物質(水や飲料水等)と、収容部内に貯留した冷却流体との熱交換後、本発明に係る冷却衣服の着用者の身体に面した冷却流体循環経路で冷却流体を循環させる上で、冷えた状態にある冷却流体が、常に着用者の身体側に送出される。そのため、本発明に係る冷却衣服よる着用者への冷却効果は、流出部を身体と離間する側に配置する場合に比べて高くなる。
【0016】
(3)に記載する冷却衣服において、冷却流体は、ペットボトルの大きさに依らず、設定された同じ深さで、収容部内に貯留されること、を特徴とする。また、(4)に記載する冷却衣服において、収容部内に貯留する冷却流体の設定深さは、内容量350mlに相当する小型サイズで、最上部にキャップを有したペットボトルの高さを基準に、キャップ下の外周面で冷却流体との接触を可能とする条件を満たす深さであること、を特徴とする。
【0017】
このような特徴により、本発明に係る冷却衣服は、その着用者にとって、極度に冷たくなり過ぎず、快適さを感じる適温に調整された温度で、着用者を持続的に冷やすことができる。
【0018】
(5)に記載する冷却衣服において、冷却流体循環経路では、チューブは、衣服本体の内面に固着したアーチ状のガイド部を挿通することにより、保持されていること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、本発明に係る冷却衣服を洗濯する場合等、冷却流体循環経路を衣服本体から取り外す場合や、冷却流体循環経路を衣服本体に装着する場合に、衣服本体に対し、チューブの着脱が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る冷却衣服を示す斜視図である。
図2図1に示す冷却衣服の正面図である。
図3図1に示す冷却衣服の背面図である。
図4図1に示す冷却衣服を展開した状態で示す平面図である。
図5】実施形態に係る冷却衣服の収容部にペットボトルを出し入れする要領を示す説明図である。
図6】実施形態に係る冷却衣服の収容部にペットボトルを収容した状態を模式的に示した説明図である。
図7】実施形態に係る冷却衣服で、冷却流体と共にペットボトルが収容された収容部内の様子を模式的に示す説明図である。
図8図7中、A-A矢視断面を用いて収容部内の様子を示す模式図である。
図9図7中、B-B矢視断面を用いて収容部内の様子を示す模式図である。
図10】実施形態に係る冷却衣服において、小型サイズのペットボトル内の冷却物質で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図である。
図11】実施形態に係る冷却衣服において、大型サイズのペットボトル内の冷却物質で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る冷却衣服について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る冷却衣服は、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でのレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人等、着用者の身体を冷やすために使用される。この冷却衣服の形態は、作業時に着衣する作業服のほか、娯楽やレジャー、イベントや行事、スポーツ、ジョキング、自転車等をはじめ、様々な用途で着用可能な多目的の上着・ベスト等である。
【0022】
はじめに、冷却衣服1について、図1図5を用いて簡単に説明する。図1は、実施形態に係る冷却衣服を示す斜視図であり、図1に示す冷却衣服の正面図を図2に、背面図を図3に、図1に示す冷却衣服を展開した状態で示す平面図を図4に、それぞれ示す。図5は、実施形態に係る冷却衣服の収容部にペットボトルを出し入れする要領を示す説明図である。
【0023】
<衣服本体10の概要>
図1図5に示すように、冷却衣服1は、例えば、水、飲料水等、凝固可能な冷却物質Mの入ったペットボトル90を立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部50を、衣服本体10に有し、この衣服本体10の内面10a側に冷却流体循環経路2を備えている。冷却衣服1では、衣服本体10は、本実施形態では、ベストの形態で形成され、例えば、ナイロン(nylon)、ポリエステル(polyester)等、耐熱性、耐強度、蒸散性に優れた合成樹脂繊維製の生地からなる。衣服本体10の内面10aは、メッシュ状の生地で形成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、衣服本体10は、左右に分割された前身頃11、後身頃12、肩部13、襟部14、脇腹部15等を有し、肩部13からせり上がった襟部14は、着用者の首回りを覆う態様となっている。脇腹部15は、前身頃11と後身頃12との間の脇下部分で、左右両側の前身頃11に連結していると共に、後身頃12と連結している。
【0025】
また、図2に示すように、衣服本体10は、左側の前身頃11と右側の前身頃11との間には、前身頃11と後身頃12とから延出された一対のベルト(ベルト41A、ベルト41B)を2組有し、2組とも、ベルト41A、ベルト41B同士が、移動カン42を介して長さ調整可能に連結されている。これにより、前身頃11と後身頃12から延出した一対のベルト(ベルト41A、ベルト41B)は、着脱自在に連結することができている。
【0026】
図2及び図3に示すように、衣服本体10は、その外面側で、左右両側とも前身頃11の腹部付近に、ファスナで開閉可能な第1ポケット21を、収容部50上方の肩部13に、ファスナで開閉可能な第2ポケット22を、後身頃12の腰部付近に、ファスナで開閉可能な第3ポケット23を、それぞれ具備している。第1ポケット21~第3ポケット23はいずれも、2枚の袋布をパッチ状に重合してなる。
【0027】
<冷却流体循環経路2について>
図1図3に示すように、冷却流体循環経路2は、収容部50と、長尺状のチューブ71と、チューブ71の一端側に流入部72と、その反対側の他端側に流出部73と、チューブ71内に冷却流体N(本実施形態では、水)を送出させるポンプ74等を有する。流入部72と流出部73は、後に詳述する収容部50に配設されている。冷却流体循環経路2は、予め収容部50に冷却流体Nを充填すると共に、ペットボトル90を収容した上で、ポンプ74により、収容部50に貯留した冷却流体Nを、流出部73から送出してチューブ71内を流通させ、流入部72から収容部50に冷却流体Nを、ペットボトル90の外周面90aに接触させて還流させる役割を果たす。ポンプ74は、第3ポケット23内に収容されている。
【0028】
冷却流体循環経路2は、衣服本体10の内面10a側に配設されている。チューブ71は、可撓性を有した樹脂からなり、後身頃12から肩部13、左右双方の前身頃11を経て、再び後身頃12に戻る循環経路をなしている。冷却流体循環経路2では、左右双方の前身頃11、後身頃12、及び肩部13で、ガイド部45が、衣服本体10の内面10aに設けられている。ガイド部45は、短冊状の部材の長手方向両端部を、衣服本体10の内面10aに固着してアーチ状に形成され、チューブ71は、ガイド部45を挿通して保持されている。
【0029】
<収容部50について>
図1及び図5に示すように、収容部50は、第2ポケット22内に収容されている。収容部50は、防水性と可撓性を有した合成樹脂製のシート材により、平袋状に形成されており、その一部に収容口51が設けられている。収容口51は、収容部50の内部空間50Sを、衣服本体10の外部と連通可能に形成されている。
【0030】
収容口51は、ペットボトル90を自在に出し入れできる大きさに形成され、収容口51には、ペットボトル90のほか、冷却流体循環経路2を流通させる冷却流体Nが充填される。収容口51には、蓋体52が、衣服本体10の外面側にある口金53と、紐54で連結して設けられている。蓋体52は、収容口51を液密に閉塞すると共に、収容部50の内部空間50Sとその外部との間で、ペットボトル90及び冷却流体Nの出入りを行うときに開放される。
【0031】
図6は、実施形態に係る冷却衣服の収容部にペットボトルを収容した状態を模式的に示した説明図である。図7は、実施形態に係る冷却衣服で、冷却流体と共にペットボトルが収容された収容部内の様子を模式的に示す説明図である。図8は、図7中、A-A矢視断面を用いて収容部内の様子を示す模式図であり、図9は、図7中、B-B矢視断面を用いて収容部内の様子を示す模式図である。図10は、実施形態に係る冷却衣服において、小型サイズのペットボトル内の冷却物質で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図であり、図11は、大型サイズのペットボトル内の冷却物質で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図である。なお、図6図11に示すように、静置条件の下、収容部50の内部空間50Sに収容されたペットボトル90に対し、立ち姿勢の中心軸Qに沿うZ方向(第1方向)と直交する方向を、当該冷却衣服1の着用者の前後方向に沿うY方向(第2方向)と、当該冷却衣服1の着用者の左右方向に沿うX方向(第3方向)と、説明の便宜上、定義する。
【0032】
冷却衣服1は、収容部50の内部空間50Sに貯留された冷却流体Nに、流入部72とペットボトル90の外周面90aを浸漬させた状態で、使用するものである。収容部50では、内部空間50Sに収容されたペットボトル90に対し、下側に近接して、チューブ71の流出部73は配設されていると共に、上側に近接して、チューブ71の流入部72は配設されている。しかも、流入部72と流出部73とが、最も膨らむ収容部50内の中央付近で、収容部50との部分的な接触を伴う保持状態で収容されたペットボトル90と干渉しないよう、ペットボトル90の中心軸Qを挟み、Y方向かつX方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられている。流出部73は、本実施形態では、Y方向に対し、当該冷却衣服1を着用する人の身体と近接する側(図6及び図7の紙面奥側、図8及び図9の上側)に配置されている。
【0033】
また、図6図11に示すように、水等の冷却流体Nが、ペットボトル90の大きさに依らず、設定された同じ深さhで収容部50の内部空間50Sに充填されている。収容部50内に充填する冷却流体Nの設定深さhは、内容量350mlに相当する小型サイズ(全高150~170mm程度)で、最上部にキャップ91を有したペットボトル90の高さを基準に、キャップ91の下にある外周面90aで冷却流体Nとの接触を可能とする条件を満たす深さである。具合的には、設定深さhは、図6に示すように、静置条件の下、ペットボトル90を収容した内部空間50Sの底から、一例として100mm程度である。
【0034】
なお、図6及び図7図10には、収容部50の内部空間50Sに収容するペットボトル90を、内容量350mlに相当する小型サイズとした。しかしながら、収容するペットボトル90は、小型サイズのほかに、例えば、内容量500~600mlに相当する中型サイズや、内容量900~1000ml以上に相当する大型サイズでも良く、内部空間50Sに収容するペットボトル90のサイズは限定されるものでなはい。
【0035】
但し、流入部72は、小型サイズのペットボトル90の高さを基準にして設定されているため、より大きなペットボトル90を用いた場合でも、冷却流体Nは、先に例示した100mm程と、小型サイズのペットボトル90の使用条件に対応した設定深さhで、収容部50内に充填される。
【0036】
また、冷却衣服1は、その着用者上半身に着用するベストであるため、むやみにサイズの大きいペットボトル90を使用して、冷却物質Mが満杯の状態にあると、背中に重量感を強く抱いてしまうこと、身動きし辛くなってしまうこと、冷却衣服1の着心地を損ねてしまうこと等、種々の問題が生じる虞もある。そのため、実施形態に係る冷却衣服1を、使い勝手が良く、より快適に使用する上でも、収容部50内での冷却流体Nが、小型サイズのペットボトル90を基準とした設定深さhで貯留されていることが好ましい。
【0037】
さらに、この冷却衣服1では、小型サイズのペットボトル90の使用条件に対応した設定深さhで、冷却流体Nが収容部50内に充填されるため、冷たくなり過ぎない適度な温度で、着用者を冷やすことができる。その理由について、図10及び図11を用いて説明する。
【0038】
図10及び図11に示すように、冷却流体循環経路2では、循環経路をなすチューブ71全体の流路を含んだ上で、収容部50の内部空間50Sに設定深さhに貯留できるよう、冷却流体N(水等)を収容部50に充填すると共に、内部空間50Sに貯留した冷却流体Nに、冷却物質M(水や飲料水等)を凝固させた状態(または、例えば、零度に近い低温に冷やされた液体状態)にしたペットボトル90の外周面90aを浸漬した状態で、冷却衣服1は使用される。収容部50は、合成樹脂製のシート材で平袋状に形成されているため、図8及び図9に示すように、ペットボトル90に対し、部分的な間隙を伴いながら、Y方向に必然的に当接状態となることを利用して拘束することで、ペットボトル90の立ち姿勢が維持されるようになる。
【0039】
内部空間50Sに貯留した冷却流体Nは、図2図10に示すように、ポンプ74により、流出部73からチューブ71内の流路に送出される。冷却流体Nは、循環経路をなすチューブ71内の流通を経て、再び収容部50の内部空間50Sに戻され、ポンプ74による送出流量を維持したまま、貯留している冷却流体N中に向けて流入部72から吐出される。
【0040】
このとき、流入部72から吐出した冷却流体Nは、図7及び図10に示すように、ペットボトル90の外周面90aに沿った周方向に、外周面90aとの接触を伴いながら流動しはじめ、収容部50との間隙を通過して、流出部73に到達するようになる。その流動の間に、冷却流体Nは、ペットボトル90の外周面90aを介して、冷却物質Mとの間で熱交換を行うことにより、冷却衣服1の着用者にとって、極度に冷たくなり過ぎず、快適さを感じる適温に調整され、着用者を持続的に冷やすことが可能な温度となる。
【0041】
すなわち、冷却流体Nが、循環経路をなすチューブ71内を流通している過程で、冷却衣服1の着用者の身体との間で熱交換を行って、身体の熱を奪うため、流入部72から吐出直後の状態にある冷却流体Nの流れ(図10に示す小クロス図示入り矢印)は、比較的高温化している。
【0042】
しかしながら、この冷却流体Nが、図10中、大クロス図示入り矢印と粗斜線図示入り矢印に示すように、ペットボトル90の外周面90aに沿った周方向に流れることにより、ペットボトル90の外周面90aを介して、凝固状態の冷却物質M(氷、凍結した飲料水等)、または融解状態の冷却物質M(冷水、低温に冷やされた飲料水等)との熱交換を経て、次第に冷却される。そして、流出部73で送出直前の状態にある冷却流体Nの流れ(図10に示す細斜線図示入り矢印)になると、冷却流体Nは、冷却衣服1の着用者にとって、極度に冷たくなり過ぎず、着用者を適温で冷やすことが可能な温度に調整できている。
【0043】
ところで、収容部50の内部空間50Sに収容するペットボトル90を、小型サイズのペットボトル90以外にも、図11に示すように、内容量500~600mlに相当する中型サイズや、内容量900~1000ml以上に相当する大型サイズを用いて、冷却物質Mを凍らせた状態で、着用者が、冷却衣服1を使用する場合も想定される。これらのペットボトル90では、満杯の状態で充填された冷却物質Mは、収容部50に入れる前に予め凍らせて凝固状冷却流体Kとなっており、冷却衣服1の使用を開始すると、流入部72から吐出した冷却流体Nは、凝固状冷却流体K(氷、凍結した飲料水等)と熱交換を行って冷却される。
【0044】
そして、ペットボトル90内の凝固状冷却流体Kは、経時的にペットボトル90の底側から、飲み口側(図11中、Z方向上側)向けて徐々に融解していく。収容部50では、飲み口側で、外周面90aを介して、内部空間50Sに晒されて残っている凝固状冷却流体Kによっても、融解したペットボトル90底側の冷却物質Mは、冷やされるため、ペットボトル90底側では、冷却物質Mの温度上昇が抑制される。それ故に、高温化して流入部72から吐出される冷却流体Nは、ペットボトル90内の冷却物質Mにより、急激に冷やされることなく、冷却物質Mと行う熱交換の持続時間をより長くして、冷却されるようになり、冷却衣服1は、着用者に快適な温度に調整して、上体を冷やすことができている。
【0045】
次に、本実施形態に係る冷却衣服1の作用・効果について説明する。
【0046】
本実施形態に係る冷却衣服1は、凝固可能な冷却物質M入りのペットボトル90を、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部50を、衣服本体10に有し、衣服本体10の内面10a側で循環経路をなすチューブ71に対し、一端側の流入部72と他端側の流出部73とが収容部50に配設され、収容部50に貯留された冷却流体Nを、ペットボトル90との接触を介して、ポンプ74により、流出部73から循環経路への流通を経て、流入部72から収容部50に還流させる冷却流体循環経路2を備えた冷却衣服において、静置条件の下、収容部50に収容されたペットボトル90に対し、立ち姿勢の中心軸Qに沿うZ方向と直交する方向を、当該冷却衣服1の着用者の前後方向に沿うY方向と、当該冷却衣服1の着用者の左右方向に沿うX方向としたとき、収容部50内でペットボトル90の下側に近接する流出部73と、上側に近接する流入部72とが、ペットボトル90の中心軸Qを挟み、Y方向かつX方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられ、当該冷却衣服1は、収容部50内に貯留された冷却流体Nに、流入部72とペットボトル90を浸漬させた状態で、使用するものであること、を特徴とする。
【0047】
この特徴により、冷却衣服1は、冷却流体循環経路2により、収容部50に貯留された冷却流体Nを、冷却衣服1の着用者に快適さを感じる適温に調整することができることから、着用者に良好な冷却効果をもたらすことが可能となり、着用者にとって、冷却衣服1の使い勝手は良い。しかも、冷却衣服1は、冷却流体循環経路2の構成を簡単にして、このように優れた冷却効果を効率良く生み出すことができる。そのため、低温の冷水を冷却流体循環経路に断続的に送出するのに、ポンプを間欠的に作動させる制御機能を設けた特許文献1の技術とは異なり、冷却衣服1では、このような制御機能は不要で、余分にコストアップとなる要因は排除されており、冷却衣服1に呈するコストパフォーマンスは、より高いものになっている。
【0048】
従って、本実施形態に係る冷却衣服1によれば、着用者にとって使い勝手が良く、簡単な構成で、適度に冷やした状態となった冷却流体Nにより、着用者に冷却効果をもたらすことができている、という優れた効果を奏する。
【0049】
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、収容部50は、可撓性を有したシート材により、袋状に形成され、流出部73は、Y方向に対し、当該冷却衣服1を着用する人の身体と近接する側に配置されていること、を特徴とする。
【0050】
この特徴により、凝固した状態にあるペットボトル90内の冷却物質M(水や飲料水等)と、収容部50内に貯留した冷却流体Nとの熱交換後、冷却衣服1の着用者の身体に面した冷却流体循環経路2で、冷却流体Nを循環させる上で、冷えた状態にある冷却流体Nが、常に着用者の身体側に送出される。そのため、冷却衣服1による着用者への冷却効果は、流出部73を身体と離間する側に配置する場合に比べ、高くなる。
【0051】
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、冷却流体Nは、ペットボトル90の大きさに依らず、設定された同じ深さhで、収容部50内に貯留されること、を特徴とする。また、本実施形態に係る冷却衣服1では、収容部50内に貯留する冷却流体Nの設定深さhは、内容量350mlに相当する小型サイズで、最上部にキャップ91を有したペットボトル90の高さを基準に、キャップ91の下にある外周面90aで冷却流体Nとの接触を可能とする条件を満たす深さであること、を特徴とする。
【0052】
このような特徴により、冷却衣服1は、その着用者にとって、極度に冷たくなり過ぎず、快適さを感じる適温に調整された温度で、着用者を持続的に冷やすことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、冷却流体循環経路2では、チューブ71は、衣服本体10の内面10aに固着したアーチ状のガイド部45を挿通することにより、保持されていること、を特徴とする。
【0054】
この特徴により、冷却衣服1を洗濯する場合等、冷却流体循環経路2を衣服本体10から取り外す場合や、冷却流体循環経路2を衣服本体10に装着する場合に、衣服本体10に対し、チューブ71の着脱が容易である。しかも、ガイド部45は、短冊状の部材の長手方向両端部を、衣服本体10の内面10aにアーチ状の形態で固着するものであるため、溶着、接着等により、ガイド部45の両端部を衣服本体10の内面10aに固着できる場合には、冷却衣服1の製造コストを抑制することが可能になる。
【0055】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0056】
例えば、実施形態では、ベストの形態で形成した冷却衣服1を挙げたが、本発明に係る冷却衣服は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、長袖の上着、ジャケット等、種々変更可能である。
【0057】
また、実施形態では、冷却衣服1の外形を、図1図5に示す形状としたが、冷却衣服1の外形形状は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、冷却流体循環経路2をなすチューブの配置態様についても、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0058】
また、冷却流体循環経路2をなすチューブ71を、衣服本体10の内面10aに配するあたり、図2図4に例示した箇所にガイド部45を配置して保持したが、衣服本体10の内面10aに配するガイド部の配置位置、配置数量、配置間隔、一つのガイド部につき、保持するチューブの数量等、ガイド部を配する態様は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却衣服
2 冷却流体循環経路
10 衣服本体
10a 衣服本体の内面
45 ガイド部
50 収容部
71 チューブ
72 流入部
73 流出部
74 ポンプ
90 ペットボトル
M 冷却物質
N 冷却流体
Q 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固可能な冷却物質入りのペットボトルを、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な収容部を、衣服本体に有し、該衣服本体の内面側で循環経路をなすチューブに対し、一端側の流入部と他端側の流出部とが該収容部に配設され、該収容部に貯留された所定量の貯留冷却流体を、該ペットボトルとの接触を介して、ポンプにより、該流出部から該循環経路への流通を経て、冷却流体として、該流入部から該収容部に還流させる冷却流体循環経路を備えた冷却衣服において、
静置条件の下、前記収容部に収容された前記ペットボトルに対し、立ち姿勢の中心軸に沿う第1方向と直交する方向を、当該冷却衣服の着用者の前後方向に沿う第2方向と、当該冷却衣服の着用者の左右方向に沿う第3方向としたとき、
前記収容部内で前記ペットボトルの下側に近接する前記流出部と、上側に近接する前記流入部とが、前記ペットボトルの前記中心軸を挟み、前記第2方向かつ前記第3方向にそれぞれ対向する位置関係を維持可能な配置位置に設けられていること
前記流入部は、前記貯留冷却流体の流体表面より下に位置するように、前記収容部に対し、その高さ方向における中間部に設けられており、前記流入部から前記収容部に流入する前記冷却流体は、前記貯留冷却流体と合流した後、前記冷却物質との間で熱交換を行うことにより、前記冷却流体が冷却されること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載する冷却衣服において、
前記収容部は、可撓性を有したシート材により、袋状に形成され、前記流出部は、前記第2方向に対し、当該冷却衣服を着用する人の身体と近接する側に配置されていること、
を特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
前記冷却流体循環経路では、前記チューブは、前記衣服本体の前記内面に固着したアーチ状のガイド部を挿通することにより、保持されていること、
を特徴とする冷却衣服。