(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015860
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】無機繊維成形体、無機繊維成形体の製造方法、及び断熱材
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240130BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20240130BHJP
D04H 1/4209 20120101ALI20240130BHJP
【FI】
C04B38/00 301C
F16L59/04
D04H1/4209
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118206
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】平田 慧
(72)【発明者】
【氏名】松吉 瑞治
(72)【発明者】
【氏名】西 太樹
【テーマコード(参考)】
3H036
4G019
4L047
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB24
3H036AC01
3H036AE01
4G019CA01
4G019CB01
4G019CC01
4L047AA04
4L047AB02
4L047BA12
4L047CB06
(57)【要約】
【課題】耐スケール性に優れる無機繊維成形体を提供すること。
【解決手段】本開示の一側面は、アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーを含み、上記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90.0質量%以上であり、上記無機フィラーの含有量が、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、上記無機バインダーはアルミナを含有する、無機繊維成形体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーを含み、
前記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90.0質量%以上であり、
前記無機フィラーの含有量が、前記アルミナファイバー及び前記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、
前記無機バインダーはアルミナを含有する、無機繊維成形体。
【請求項2】
前記アルミナファイバー中の結晶性鉱物の割合が30~80質量%である、請求項1に記載の無機繊維成形体。
【請求項3】
前記無機バインダーにおけるアルミナの含有量が50質量%以上である、請求項1又は2に記載の無機繊維成形体。
【請求項4】
前記無機バインダーにおけるシリカの含有量が50質量%未満である、請求項1又は2に記載の無機繊維成形体。
【請求項5】
前記無機フィラーは、CaO・6AlO3で表される組成を有する一次粒子及び前記一次粒子の凝集体を含有する組成物を含む、請求項1又は2に記載の無機繊維成形体。
【請求項6】
前記組成物は、体積基準の粒子径の分布曲線において、小粒径からの積算値が全体の95%に達した時の粒子径をD95としたときに、D95が300μm以下である、請求項5に記載の無機繊維成形体。
【請求項7】
かさ密度が200kg/m3超である、請求項1又は2に記載の無機繊維成形体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の無機繊維成形体を含む、断熱材。
【請求項9】
アルミナファイバー、無機フィラー、及び金属酸化物のコロイド溶液を、水中に分散させたスラリーから、水の含有量を低減することによって、成形体を得ることを含み、
前記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90.0質量%以上であり、
前記無機フィラーの配合量は、前記アルミナファイバー及び前記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、
前記金属酸化物はアルミナを含有する、無機繊維成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無機繊維成形体、無機繊維成形体の製造方法、及び断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナファイバー及びシリカファイバー等の無機繊維、無機フィラー、並びにバインダーを含むスラリーから分散媒を除去し、成形して得られる無機繊維成形体は、断熱材、耐火材等として使用されている。例えば、加熱炉の内壁を構成する材料等に使用されている。
【0003】
特許文献1は、無機繊維と無機粉末と結合材からなる無機繊維成形体において、無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカジルコニア繊維およびジルコニア繊維から選んだ一種以上の繊維からなり、無機粉末は、石英および石英ガラスの一種以上からなり、結合材は、シリカゾルおよびアルミナゾルの一種以上からなり、一体に結合されていることを特徴とする無機繊維成形体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、アルミナ繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーとを含み、ASTM C522による通気抵抗率が6×105Pa・S/m2以下で、かさ密度が100~200kg/m3である、ことを特徴とする無機繊維成形体が開示されている。
【0005】
また特許文献3には、アルミナファイバー、無機多孔質フィラー、及びコロイダルシリカを含む、断熱性、耐熱性に優れた無機繊維成形体であって、であって、前記アルミナファイバー中の結晶性鉱物の割合が30質量%以上80質量%以下、前記無機多孔質フィラーが、体積頻度粒度分布において累積値が95%となる粒子径D95が300μm以下であるCaO・6Al2O3組成物を含む、無機繊維成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-278676号公報
【特許文献2】特開2010-155733号公報
【特許文献3】特開2021-088475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、エネルギー効率や環境対策の観点から、加熱炉などの炉に対する断熱技術への要求水準は益々高くなってきている。しかし、このような炉内に使用される部材は、スケール等の高熱源体に接触すると、熱的・化学的な劣化を引き起こし、断熱性が低下する恐れがある。
【0008】
本開示は、耐スケール性に優れる無機繊維成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、耐スケール性に優れる断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の[1]~[6]を提供する。
【0010】
[1]
アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーを含み、
前記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90.0質量%以上であり、
前記無機フィラーの含有量が、前記アルミナファイバー及び前記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、
前記無機バインダーはアルミナを含有する、無機繊維成形体。
[2]
前記アルミナファイバー中の結晶性鉱物の割合が30~80質量%である、[1]に記載の無機繊維成形体。
[3]
前記無機バインダーにおけるアルミナの含有量が50質量%以上である、[1]又は[2]に記載の無機繊維成形体。
[4]
前記無機バインダーにおけるシリカの含有量が50質量%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の無機繊維成形体。
[5]
前記無機フィラーは、CaO・6AlO3で表される組成を有する一次粒子及び前記一次粒子の凝集体を含有する組成物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の無機繊維成形体。
[6]
前記組成物は、体積基準の粒子径の分布曲線において、小粒径からの積算値が全体の95%に達した時の粒子径をD95としたときに、D95が300μm以下である、[5]に記載の無機繊維成形体。
[7]
かさ密度が200kg/m3超である、[1]~[6]のいずれかに記載の無機繊維成形体。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の無機繊維成形体を含む、断熱材。
[9]
アルミナファイバー、無機フィラー、及び金属酸化物のコロイド溶液を、水中に分散させたスラリーから、水の含有量を低減することによって、成形体を得ることを含み、
前記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90.0質量%以上であり、
前記無機フィラーの配合量は、前記アルミナファイバー及び前記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、
前記金属酸化物はアルミナを含有する、無機繊維成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、耐スケール性に優れる無機繊維成形体及びその製造方法を提供できる。本開示によればまた、耐スケール性に優れる断熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例において調製した無機繊維成形体のかさ密度とFeO浸食速度との関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例において調製した無機繊維成形体のかさ密度と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例におけるFeO浸食速度の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、場合によって図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合によって重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
無機繊維成形体の一実施形態は、アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーを含む。ここで、無機繊維成形体とは、アルミナファイバー等の原料及び分散媒を含むスラリーから、分散媒を低減すると共に成形することによって得られた成形体であり、例えば、常圧下、100℃以下の温度で乾燥すること等によって分散媒を除去したものであってもよい。上記無機繊維成形体は、無機繊維として、少なくともアルミナファイバーを含むものであるが、無機繊維として、例えば、チタニア及びシリカ等の酸化物からなる繊維を更に含んでもよい。
【0016】
上記無機繊維成形体において、アルミナファイバーは、アルミナを主成分とするセラミックファイバーを意味する。アルミナファイバーの平均繊維径は、例えば、3~8μmであってよい。
【0017】
上記アルミナファイバーにおけるアルミナの含有量の下限値は、アルミナファイバー全量基準で、90.0質量%以上であるが、例えば、92.0質量%以上、95.0質量%以上、又は96.0質量%以上であってよい。上記アルミナの含有量の下限値が上記範囲内であることで、無機繊維成形体の耐スケール性をより向上し得る。上記アルミナファイバーにおけるアルミナの含有量の上限値は、アルミナファイバー全量基準で、例えば、99.0質量%以下、98.5質量%以下、又は98.0質量%以下であってよい。上記アルミナの含有量の上限値が上記範囲内であることで、高温環境下における熱収縮を低減できる。上記アルミナファイバーにおけるアルミナの含有量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、90.0~99.0質量%、又は92.0~98.5質量%であってよい。
【0018】
アルミナファイバー中のアルミナの含有量は、蛍光X線分析法によって測定される値を意味する。
【0019】
アルミナファイバーは結晶質の繊維であるが、ファイバー中に結晶性鉱物が含まれ得る。結晶性鉱物としては、コランダム(αアルミナともいう)及びムライトが挙げられる。のそこで、アルミナファイバー中の結晶性鉱物の割合は、アルミナファイバー全量を基準として、例えば、30~80質量%であってよい。結晶性鉱物の割合の上限値は、アルミナファイバー全量を基準として、例えば、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。結晶性鉱物の割合が高くなると脆さが生じ得ることから、上記割合の上限値が上記範囲内であることで、得られる無機繊維成形体の機械的強度の低下をより抑制し得る。結晶性鉱物の割合の下限値は、アルミナファイバー全量を基準として、例えば、31質量%以上、32質量%以上、又は33質量%以上であってよい。
【0020】
アルミナファイバー中の結晶性鉱物の割合は、粉末X線回折法によって決定することができる。より具体的には、粉末X線回折法によって得られる各結晶性鉱物の回折パターン等のパラメータを元にリートベルト解析により定量化した値を結晶性鉱物の割合とする。
【0021】
アルミナファイバーとしては、例えば、アルミナ及びシリカを含むファイバーであってよい。
【0022】
上記無機フィラーは、例えば、カルシウムアルミネート(CA6:CaO・6AlO3、CA2:CaO・2Al2O3、CA:CaO・Al2O3、C12A7:12CaO・7Al2O3、C3A:3CaO・Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、スピネル(Al2O3・MgO)、シリカ(SiO2)、及び炭化ケイ素(SiC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでよい。上記無機フィラーは、断熱性や軽量性の観点から、好ましくは、カルシウムアルミネート(CaO・6AlO3)を含み、より好ましくは、カルシウムアルミネート(CaO・6AlO3)からなる。なお、カルシウムアルミネート(CaO・6AlO3)の一次粒子は、板状形状を有する。
【0023】
上記無機フィラーのうち、粒子径が0.5μm以上であるフィラーの平均粒子径の下限値は、例えば、2μm以上、5μm以上、10μm以上、13μm以上、又は15μm以上であってよい。上記平均粒子径の下限値が上記範囲内であることで、成形体を軽量化することができる。上記粒子径が0.5μmμm以上であるフィラーの平均粒子径の上限値は、例えば、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってよい。上記平均粒子径の上限値が上記範囲内であることで、成形体内の粗大気孔が低減され、断熱性が向上できる。上記粒子径が0.5μm以上であるフィラーの平均粒子径は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2~45μm、又は15~30μmであってよい。
【0024】
上記無機フィラーのうち、粒子径が0.5μm以上であるフィラーの平均粒子径は、以下の方法によって測定される値を意味する。まず、走査型電子顕微鏡によって無機繊維成形体の画像を取得する。この際の観察倍率は、4000倍とする。得られた画像を画像解析ソフトウエアに取り込み、粒子径が0.5μm以上の粒子を対象として、500個の粒子を任意に選択し、その粒子径を測定する。得られた粒子径の算術平均値を無機フィラーの平均粒子径とする。粒子径が0.5μm未満のものは、無機バインダーに由来するものとして測定対象から除外するものとする。走査型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子株式会社製の「JSM-6010LA」(所品名)等を使用できる。画像解析ソフトウエアとしては、例えば、マウンテック社製の「Mac-View」(商品名)を使用できる。
【0025】
無機フィラーは、CaO・6AlO3で表される組成を有する一次粒子及び上記一次粒子の凝集体を含有する組成物を含んでよい。無機フィラーが、複数の一次粒子が凝集して構成されるような凝集体を含む場合、凝集体の構造は、いわゆるカードハウス構造等といわれるような三次元連結構造であってよい。この場合、凝集体は、多孔質粒子ということもできる。凝集体がこのような構造を有することで、熱伝導率をより低下させた無機繊維成形体とすることができる。
【0026】
無機フィラーは、CaO・6AlO3で表される組成を有する一次粒子及び上記一次粒子の凝集体を含有する組成物を含む場合、上記組成物は、体積基準の粒子径の分布曲線において、小粒径からの積算値が全体の95%に達した時の粒子径をD95としたときに、D95の上限値は、例えば、300μm以下であってよい。上記組成物のD95の上限値は、例えば、280μm以下、又は270μm以下であってよい。上記組成物のD95の上限値が上記範囲内であることで、成形体からのフィラーの脱離を防ぐことができ、CaO・6AlO3による断熱効果の維持がより容易なものとなる。上記組成物のD95の下限値は、例えば、15μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよい。上記組成物のD95の下限値が上記範囲内であることで、高温環境下におけるフィラーとファイバーの融着を抑制できる。上記組成物のD95は上述の範囲内で調整してよく、例えば、15~300μmであってよい。
【0027】
上記無機繊維成形体において上記組成物のD95は、以下の方法に基づいて測定する値を意味する。まず、走査型電子顕微鏡によって無機繊維成形体の画像を取得する。この際の観察倍率は、4000倍とする。得られた画像を画像解析ソフトウエアに取り込み、粒子径が0.5μm以上の粒子を対象として、500個の粒子を任意に選択し、その粒子径を測定する。測定結果から、体積基準の粒子径の分布曲線を作成し、小粒径からの積算値が全体の95%に達した時の粒子径をD95とする。粒子径が0.5μm未満のものは、無機バインダーに由来するものとして測定対象から除外するものとする。走査型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子株式会社製の「JSM-6010LA」(所品名)等を使用できる。画像解析ソフトウエアとしては、例えば、マウンテック社製の「Mac-View」(商品名)を使用できる。
【0028】
上記無機繊維成形体において、上記無機フィラーの含有量は、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であってよい。上記無機フィラーの含有量の下限値は、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、例えば、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってよい。上記無機フィラーの含有量の下限値が上記範囲内であることで、高温域での熱電伝導率を低下させ、より断熱性に優れた無機繊維成形体とすることができる。上記無機フィラーの含有量の上限値は、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、例えば、75質量%以下、72質量%以下、70質量%以下、又は68質量%以下であってよい。上記無機フィラーの含有量の上限値が上記範囲内であると、高温環境下における熱収縮を低減し、成形体を軽量化できる。
【0029】
無機フィラーの含有量は、無機繊維成形体の製造時の配合によって特定することができる。
【0030】
上記無機繊維成形体において、上記無機バインダーは、アルミナファイバー及び無機フィラー等の成分同士を固着させる機能を有する成分である。上記無機バインダーは、アルミナ等の金属酸化物の粒子も含み得る。当該粒子の粒子径は、上記無機フィラーの平均粒子径よりも小さく、通常、0.10μm以下である。上記無機バインダーの平均粒子径も上記無機フィラーの平均粒子径よりも小さく、0.05μm以下であってよい。上記無機フィラーと上記無機バインダーとの粒子径の違いは、走査型電子顕微鏡等による観察によって確認することができる。
【0031】
上記無機バインダーはアルミナを含有する。上記無機バインダーは、アルミナに加えて、他の無機バインダーを含んでもよいが、アルミナのみからなってもよい。他の無機バインダーとしては、例えば、シリカ(SiO2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、カルシウムアルミネート(CA2:CaO・2Al2O3、CA:CaO・Al2O3、C12A7:12CaO・7Al2O3、C3A:3CaO・Al2O3)、及びムライト(3Al2O3・2SiO2)等が挙げられる。
【0032】
上記無機バインダーにおけるアルミナの含有量の下限値は、上記無機バインダーの全量を基準として、例えば、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。アルミナの含有量の下限値が上記範囲内であることで、断熱性により優れた無機繊維成形体とすることができる。上記無機バインダーにおけるアルミナの含有量の上限値は、特に限定されるものではなく、上記無機バインダーの全量を基準として、例えば、100質量%であってもよく、99質量%以下であってよい。上記無機バインダーにおけるアルミナの含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記無機バインダーの全量を基準として、例えば、60~100質量%、又は60~90質量%であってよい。
【0033】
上記無機バインダーがシリカを含み、その含有量が多い場合、得られる無機繊維成形体の熱伝導率が高くなる傾向にあることから、シリカの含有量は低いことが望ましい。シリカの含有量は、上記無機バインダー全量を基準として、例えば、50質量%未満、40質量%未満、30質量%未満、15質量%未満、5質量%未満、又は1質量%未満であってよく、0質量%(シリカを含まない)であってもよい。
【0034】
従前、無機バインダーとしては、コロイダルシリカ等に由来するシリカを主成分として使用することが一般的であるが、本発明者らの検討によれば、無機バインダーにおけるシリカの含有量が大きい場合には無機繊維成形体の断熱性が低下し得ること、また無機バインダーとしてアルミナを採用し、シリカの割合を低減又は使用しないことによって、従前想定していた以上の断熱性を発揮し得ることを見出した。そこで、より断熱性に優れる無機繊維成形体とする観点から、上述の無機バインダーがアルミナを含有し、且つ上述の無機バインダーにおけるシリカの含有量が50質量%未満であってよい。
【0035】
無機バインダーとしてのアルミナ、その他の無機バインダーの含有量は、蛍光X線分析によって測定される値を意味する。無機バインダーとしてのアルミナ、その他の無機バインダーの含有量は、無機繊維成形体の製造時の配合によって特定することもできる。
【0036】
無機バインダーとしてのシリカの含有量は、無機繊維成形体の全量を基準として、例えば、2質量%未満であってよく、1質量%未満、又は0質量%(シリカを含まない)であってもよい。
【0037】
上記無機繊維成形体は、アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーに加えて、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、有機バインダーなどが挙げられる。有機バインダーは、後述する無機繊維成形体の製造方法に関する説明において例示した化合物等であってよい。
【0038】
上記無機繊維成形体のかさ密度の下限値は、例えば、200kg/m3超、220kg/m3以上、230kg/m3以上、又は240kg/m3以上であってよい。上記かさ密度の下限値が上記範囲内であることで、断熱性や耐スケール性が改善される。上記無機繊維成形体のかさ密度の上限値は、800kg/m3以下、700kg/m3以下、600kg/m3以下、550kg/m3以下、500kg/m3以下、470kg/m3以下、又は450kg/m3以下であってよい。上記かさ密度の上限値が上記範囲内であることで、高温環境下における熱収縮を低減し、成形体を軽量化できる。上記無機繊維成形体のかさ密度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、200kg/m3超800kg/m3以下、220~800kg/m3、又は240~470kg/m3であってよい。
【0039】
無機繊維成形体のかさ密度は、無機繊維体の体積及び質量から算出される値である。
【0040】
無機繊維成形体の厚さは、例えば、1~100mm、又は10~60mmであってよい。無機繊維成形体の厚さが上記範囲内であることで、取扱い性をより向上し得る。
【0041】
無機繊維成形体の一態様は、アルミナファイバー、無機フィラー、及び無機バインダーを含み、上記アルミナファイバーはアルミナの含有量が90質量%以上であり、上記無機フィラーの含有量が、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であり、上記無機バインダーはアルミナを含有する。上記無機繊維成形体は、アルミナ含有量の高いアルミナファイバーと、無機バインダーとしてアルミナを含有することによって、優れた耐スケール性を発揮し得る。上記無機繊維成形体は、更に無機フィラーを所定量で含有することを含む上述の構成によって、熱伝導率の上昇を抑制し、優れた断熱性を発揮し得る。
【0042】
上述の無機繊維成形体は、同等のかさ密度を有する従前の無機繊維成形体と比べて、熱伝導率が低く、例えば、断熱材等に有用である。断熱材の一実施形態は、上述の無機繊維成形体を含んでよく、上述の無機繊維成形体からなってもよい。断熱材の変形態様では、上述の無機繊維成形体の加熱処理物又は焼成体を含んでもよく、上述の加熱処理物又は焼成体からなってもよい。上記無機繊維成形体の加熱処理又は焼成は、例えば、1400℃以上で行ってよく、600~1200℃、又は800~1000℃で行ってよい。
【0043】
上記断熱材は、耐熱性の要求される用途に適する。上記断熱材は、例えば、加熱炉及び窯炉設備等の装置の構成部材等に使用できる。上記断熱材はまた、鉄鋼、金属、セラミックス、及び自動車などの幅広い分野において、高温用耐火断熱材として使用することもできる。
【0044】
無機繊維成形体の製造方法の一例は、アルミナファイバー、無機フィラー、及び金属酸化物のコロイド溶液を、水中に分散させたスラリーから、水の含有量を低減することによって、成形体を得ることを含む。
【0045】
アルミナファイバーは、アルミナの含有量が90.0質量%以上であれば、一般に入手可能なものを使用してもよく、別途調製したものを使用することもできる。すなわち、上記製造方法は、アルミナファイバーを調製することを更に含んでもよい。アルミナファイバーの調製は、例えば、アルミナ源を含む原液調製、紡糸、集綿、及び焼成を含む操作によって行うことができる。この場合、アルミナファイバーは、例えば、バルク状の綿状繊維として得られる。
【0046】
アルミナファイバーを調製する際の原液は、アルミナ源、及びシリカ源を含む。アルミナファイバーにおけるアルミナの含有量は、上記原液中のアルミナ源の配合量を調整すること等によって調整できる。上記原液は、その他、紡糸助剤等を含んでもよい。アルミナ源は、例えば、オキシ塩化アルミニウム水溶液、及びアルミナゾル等を使用できる。シリカ源は、例えば、ポリシロキサン及びシリカゾル等を使用できる。紡糸助剤は、例えば、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコール等を使用できる。
【0047】
次に、上述の成分を所望の割合で混合し、更に減圧濃縮することによって紡糸用原液を調製し、紡糸することで、アルミナファイバーの前駆体を繊維状の形態で得ることができる。紡糸ノズルの細孔径、及び押出速度等の紡糸の条件は、目的とするアルミナファイバーの平均繊維径、繊維径分布、及びショットと呼ばれる非繊維化物の割合等に合わせて調整してよい。なお、50μm以上の長さのショットの割合は、アルミナファイバーの質量を基準として、1質量%未満であることが望ましい。
【0048】
次に、上記アルミナファイバーの前駆体を集綿し、繊維状の前駆体の集積物を調製する。集綿は、例えば、集綿室内に設置したネットコンベアの下部から、上述の繊維状の前駆体を吸引することによって、集積され、アルミナファイバーの前駆体で構成される集積物が得られる。ネットコンベアの速度を調節することによって、得られる集積物の厚み及び面重量を調整できる。
【0049】
上記集積物を焼成することによってアルミナファイバーで構成されるシートを得ることができる。焼成には、焼成装置を用いることができる。焼成の過程で、脱脂、及び結晶化されることで、上述の繊維状の前駆体がアルミナファイバーとなる。焼成の処理温度によって、アルミナファイバー中の結晶性鉱物の量を調整できる。上述の前駆体中のアルミナの含有量が大きい場合、コランダムの総量も多くなることから、結晶性を高めるためには、焼成温度を高く調整することが必要となる傾向にある。一方で、上述の前駆体中のアルミナの含有量が低く、アルミナがムライトを含む組成である場合には、焼成温度が低い場合でも、結晶性を高めることができる。
【0050】
無機フィラーは一般に入手可能なものを使用してもよく、別途調製したものを使用することができる。無機フィラーが、カルシウムアルミネートを含有する場合、カルシウムアルミネートの一次粒子の凝集体を別途調製して用いてもよい。
【0051】
カルシウムアルミネートの多孔質粒子は、例えば、以下のような方法でも調製できる。まず、カルシア原料及びアルミナ原料等の骨材を混合し、粉砕して、CaOとAl2O3とがモル比でおおよそ1:6の割合になるように配合する。得られた配合物を、水と混練して成形し、1300~1700℃の温度で焼成して得られたものを、粉砕機によって粉砕することで所望の多孔質粒子を調製できる。
【0052】
カルシウムアルミネートの多孔質粒子を用いる場合、多孔質粒子は、熱伝導率を低くする観点から、鉱物相がCaO・6Al2O3(CA6ともいう)を主成分として含むことが望ましい。多孔質粒子は、その他の鉱物相を含んでもよい。その他の鉱物相は、例えば、3CaO・Al2O3(C3Aともいう)、CaO・Al2O3(CAともいう)、及びCaO・2Al2O3(CA2ともいう)等であってよい。
【0053】
無機フィラーは、CaO・6AlO3で表される組成を有する一次粒子及び上記一次粒子の凝集体を含有する組成物を含んでよい。この場合、上記組成物は、体積基準の粒子径の分布曲線において、小粒径からの積算値が全体の95%に達した時の粒子径をD95としたときに、D95の上限値は、例えば、300μm以下であってよい。上記組成物のD95の上限値は、例えば、280μm以下、又は270μm以下であってよい。上記組成物のD95の上限値が上記範囲内であることで、アルミナファイバー及び無機フィラー、無機フィラー同士の付着をより容易なものとすることができ、アルミナファイバー及び無機フィラーが互いに分離することを抑制できることから、スラリーを調製する際に原料が分離することを抑制できる。上記組成物のD95の下限値は、例えば、15μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよい。上記組成物のD95の下限値が上記範囲内であることで、金網等を使用する抄造を行う方法で無機繊維成形体を製造する場合には、金網の目詰まりの発生を抑制し、より均質な組織の無機繊維成形体を調製し得る。上記組成物のD95は上述の範囲内で調整してよく、例えば、15~300μmであってよい。
【0054】
上記組成物のD95は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定した値を意味する。測定には、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を使用する。なお、測定の際はホモジナイザーによる処理を行わずに、凝集体が存在する状況で測定を行うものとする。レーザー回折散乱法粒度分布測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル社製のマイクロトラック「MT-3000II」(商品名)等を使用できる。
【0055】
多孔質粒子のかさ密度の上限値は、例えば、0.90g/cm3以下、又は0.89g/cm3以下であってよい。多孔質粒子のかさ密度の上限値を上記範囲内とすることで、断熱性により優れる無機繊維成形体を調製し得る。多孔質粒子のかさ密度の下限値は、例えば、0.6g/cm3以上、又は0.61g/cm3以上であってよい。多孔質粒子のかさ密度の下限値が上記範囲内であることで、機械的強度に優れる無機繊維成形体を調製し得る。
【0056】
多孔質粒子のかさ密度は、多孔質粒子の体積及び質量から算出される値である。まず、内容積が15.8cm3のガラス瓶に測定対象となる多孔質粒子の骨材をガラス瓶の口から溢れるまで盛った後、数回タッピング(高さ1cmより落下)させる。その後、ガラス瓶の口から溢れている骨材をすり切り、ガラス瓶の重さ増分を内容積で割った値を、多孔質粒子のかさ密度とする。
【0057】
上記製造方法において、上記無機フィラーの配合量は、上記アルミナファイバー及び上記無機フィラーの合計量100質量%を基準として、20~79質量%であってよく、例えば、35~75質量%、50~73質量%、又は60~70質量%であってよい。
【0058】
金属酸化物のコロイド溶液は、アルミナファイバー及び無機フィラーを結合させ、無機繊維成形体における無機バインダーとなる成分である。
【0059】
上記金属酸化物は、アルミナを含有する。つまり、金属酸化物のコロイド溶液としては、アルミナゾルを使用できる。
【0060】
上記金属酸化物におけるアルミナの含有量の下限値は、上記金属酸化物の全量を基準として、例えば、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。アルミナの含有量の下限値が上記範囲内であることで、断熱性により優れた無機繊維成形体とすることができる。上記金属酸化物におけるアルミナの含有量の上限値は、特に限定されるものではなく、上記金属酸化物の全量を基準として、例えば、100質量%であってもよく、99質量%以下であってよい。上記金属酸化物におけるアルミナの含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記金属酸化物の全量を基準として、例えば、60~100質量%、又は60~90質量%であってよい。
【0061】
上記金属酸化物における上記シリカの含有量は50質量%未満であってよい。上記金属酸化物のコロイド溶液は、場合によって、シリカゾルを含み得るが、その配合量は低いことが望ましい。上記シリカの含有量は、上記金属酸化物の全量を基準として、例えば、30質量%未満、15質量%未満、5質量%未満、1質量%未満であってよく、0質量%(シリカを含まない)であってもよい。
【0062】
上記金属酸化物はアルミナを含有し、シリカの含有量が50質量%未満であってよい。
【0063】
上記製造方法において、スラリーは、アルミナファイバー、無機フィラー、及び金属酸化物のコロイド溶液に加えて、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、有機バインダー等が挙げられる。
【0064】
有機バインダーは、例えば、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び接着剤等が挙げられる。接着剤は、例えば、エポキシ系、フェノール系、アクリル酸エステル系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリイミド系、及び酢酸ビニル系等であってよく、また各種ゴム系の接着剤であってもよい。
【0065】
上記製造方法では、スラリーから分散媒である水の含有量を低減することによって、成形体を得る。水の含有量の低減による成形体の調製は、例えば、抄造(例えば、真空成形法)、プレス成形法、及び押出成形法等の方法で行ってもよい。真空成形法は、例えば、スラリーから水分を真空吸引することによって、水の含有量を低減する方法であってよい。
【0066】
抄造によって成形体を得る場合、例えば、水を通過させるが、アルミナファイバー等を通過させない所定の目開きを有する網を備える成形型を用いてよい。上記網の表面形状は、適宜に選択され、平面状でもよく、一部に立体構造を備えるものであってもよい。上記網の素材は特に限定されず、例えば、金属であってよく、より具体的には、銅であってよい。成形型は、無機フィラー及び結合剤等の通過をより十分に抑制させる観点から、ろ紙を備えてもよい。
【0067】
抄造を真空吸引によって行う場合、水の含有量の低減がより容易であり、成形型の網上にアルミナファイバー等の固形原料を残存させ、抄造体を得ることができる。ここで、「抄造体」という用語は、繊維材料を漉く手法を使用して得られた物の状態を示す技術用語として一般的に使用されるものである。
【0068】
水の含有量を低減した成形体を100℃以下の温度で加熱することで、更に水の含有量を低減させてもよい。
【0069】
真空吸引法のより具体的な態様としては、例えば、底面に網板を備えた箱型容器にスラリーを流し込み、網板の下方から真空吸引しながら脱水し、網板上のケーキを乾燥する方式、及び、スラリー中に吸引機構を備えた平網を沈め、真空吸引して漉き上げたケーキを乾燥する方式等が挙げられる。真空吸引の際にケーキに荷重をかけてもよい。ケーキの乾燥は熱風乾燥で行ってもよい。箱型容器の形状は特に限定されるものではなく、例えば、円筒状であってよい。
【0070】
上記製造方法は、例えば、上述のように得られた成形体に対して、加圧処理、又は加熱加圧処理すること、並びに、形状加工を行うこと等を更に含んでもよい。加圧処理及び加熱加圧処理は、プレス機等を使用できる。形状加工によって、成形体を所望の形に調整してよい。
【0071】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【実施例0072】
以下、本開示について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
以下の実施例及び比較例では、以下に示す原料を使用した。
【0074】
(アルミナファイバー)
ファイバーA:デンカ株式会社製、商品名:デンカアルセンB97NK2(組成:Al2O3の含有量が97質量%、SiO2の含有量が3質量%、結晶性鉱物割合:46質量%)
ファイバーB:デンカ株式会社製、商品名:デンカアルセンB80K2(組成:Al2O3の含有量が80質量%、SiO2の含有量が20質量%、結晶性鉱物割合:60質量%)
【0075】
(無機フィラー)
フィラーA:以下の方法に沿って、調製したものを用いた。まず、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムをCaOとAl2O3とのモル比が1:6の成分割合になるように混合した混合物を調製した。上記混合物とデンプンとの質量比が60:40となるように、デンプンを添加した原料混合物を調製した。原料混合物に対して、45質量%となるように水を外掛けで加えて混練し、成形して成形物を得た。得られた成形物を、電気炉を用いて大気雰囲気にて最高1500℃で1時間加熱処理を施し、気孔率が78%のカルシウムアルミネートを得た。さらにこれを粉砕し、0.3mmの篩で篩分けを施し、篩を通過したもの(CA6を主成分とした多孔質粒子(凝集体)、D95:235μm、かさ密度:0.61g/cm3)を用いた。
【0076】
(無機バインダー)
バインダーA:アルミナゾル(日産化学株式会社製、商品名:AS-520-A、固形分濃度:20質量%)
バインダーB:シリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス30、固形分濃度:30質量%)
【0077】
(有機バインダー)
デンプン:日本コーンスターチ株式会社、商品名:SK-20
【0078】
(実施例1)
[無機繊維成形体の調製]
アルミナファイバー(アルミナ含有量:97質量%)、無機フィラー、無機バインダー、及び有機バインダーを表1に示す配合量となるように計量し、アルミナファイバー、無機フィラー、無機バインダー、及び有機バインダーの合計量100質量部に対して、2000質量部の水を加えて、20分間湿式混合することによって、スラリーを調製した。
【0079】
次に、得られたスラリー中に、目開きが80メッシュ、直径:210mmの金網が供えられた円筒上の成形型を、底面網の下方より真空ポンプで吸引しながら浸漬させた。スラリーを吸引することで、金網上に原料を堆積させ、荷重をかけながら、その堆積層の厚みが30mmを超えた時点で、成形型をスラリーから取り出し、円柱状の抄造体を調製し、吸引を停止した。
【0080】
得られた抄造体を、常圧下、100℃の熱風乾燥機で16時間乾燥した。乾燥後、厚みが25mmとなるように、円柱状の抄造体の上端部及び下端部を切断し、研磨することによって、板状の無機繊維成形体を得た。
【0081】
(実施例2~13)
抄造体を調製する際の加重を変更することで、表1に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0082】
(実施例14~17)
抄造体を調製する際に荷重をかけずに、表1に示すようにかさ密度を変更したこと以外は実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0083】
(実施例18,19)
アルミナファイバー及び無機フィラーの配合割合を表1に示すように変更したこと、及び、抄造体を調製する際に荷重をかけずに、表1に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0084】
(比較例1)
アルミナゾルに変えてシリカゾルを無機バインダーとして使用し、表2に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0085】
(比較例2,3)
アルミナファイバー及び無機フィラーの配合割合を表2に示すように変更し、アルミナゾルに変えてシリカゾルを無機バインダーとして使用し、表2に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0086】
(比較例4)
アルミナファイバーの種類を変更し、アルミナ含有量が80質量%であるものを使用し、アルミナゾルに変えてシリカゾルを無機バインダーとして使用し、表3に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0087】
(比較例5,6)
アルミナファイバーの種類を変更し、アルミナ含有量が80質量%であるものを使用し、アルミナファイバー及び無機フィラーの配合割合を表3に示すように変更し、アルミナゾルに変えてシリカゾルを無機バインダーとして使用し、表3に示すようにかさ密度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無機繊維成形体を得た。
【0088】
<無機繊維成形体の耐スケール性評価:FeO浸食速度>
実施例及び比較例で得られた無機繊維成形体の耐スケール性について、以下の方法で評価した。具体的には、直方体形状の無機繊維成形体を厚み方向に2個重ね、サンプルの表面に平ワッシャー(トラスコ中山社製、品番:B26-0010、平座金、材質:冷間圧延鋼板(SPCC)、表面処理:三価クロッメート、内径d:10.5mm、厚さt:1.6mm、質量:4.1g)を1枚静置し、
図3の(a)に示すような評価用サンプルを作製した。次に、昇降式電気炉の炉内を1350℃まで昇温し、この温度を維持した。大気環境下にて、昇温した昇降式電気炉の炉床を下げ、炉内を開放し、この炉床上に、上記評価用サンプル(ワッシャーを載せたサンプル)を設置し、再び炉床を上げ、炉内が密封されてから、15分間、炉内に評価用サンプルを保持した(加熱処理)。なお、密封直後から炉内温度が1350℃に戻って安定するまでの時間は約4~5分間であった。加熱処理を15分間保持した後、昇降式電気炉の炉床を下げ、評価用サンプルを取り出した。冷却後、
図3の(b)に示すように、加熱処理後の評価用サンプルにおいて、平ワッシャーが無機繊維成形体を浸食した深さが(サンプル表面を基準に)最も大きい部分を測定し、浸食深さ(mm)とした。測定された浸食深さを保持時間の15分間で除して、FeO浸食速度(mm/分)を算出した。また、上述の測定を行った評価用サンプルの表面とは、反対側の面(裏面)に、平ワッシャーを載せて、上述の操作と同様にして、FeO浸食速度を算出した。サンプルの表面と裏面における各FeO浸食速度の算術平均値を求め、これを評価対象の無機繊維成形体のFeO浸食速度とした。結果を表1、表2、表3、及び
図1に示す。なお、
図1には、実施例1~19の測定結果の分布についての指数近似曲線と、比較例4~6の測定結果の分布についての指数近似曲線とを併記した。
【0089】
<無機繊維成形体の断熱性評価:熱伝導率>
実施例及び比較例で得られた無機繊維成形体の熱伝導率について、JIS R 2251-1:2007「耐火物の熱伝導率の試験方法-第1部:熱線法(直交法)」に準拠して、室温(RT)~1400℃までの温度範囲において測定し、1400℃における熱伝導率(W/m・K)で評価した。結果を表1、表2、表3、及び
図2に示す。なお、
図2には、実施例1~19の測定結果の分布についての指数近似曲線と、比較例1~3の測定結果の分布についての指数近似曲線とを併記した。
【0090】
【0091】
【0092】