IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特開-ポンプ式吐出器 図1
  • 特開-ポンプ式吐出器 図2
  • 特開-ポンプ式吐出器 図3
  • 特開-ポンプ式吐出器 図4
  • 特開-ポンプ式吐出器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158602
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073937
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】長島 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA04
3E084HB03
3E084HC03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案する。
【解決手段】ポンプ式吐出器100は、ステム7aが進退移動することによって駆動するポンプと、吐出口13dを有するとともにステム7aに連結するヘッド13と、を備え、ヘッド13及びキャップの何れか一方に、ヘッド13及びキャップの何れか他方に向けて延出された延出部13eが設けられ、ヘッド13及びキャップの何れか他方に、ヘッド13をキャップに向けて前進させた際に延出部13eによって中心軸線Oに近づく向きに撓む内倒れ弾性片11eと、内倒れ弾性片11eの径方向外側に位置する周壁11bと、内倒れ弾性片11eと周壁11bとをつなぐとともに内倒れ弾性片11eと周壁11bとの間隔が広がる向きに弾性変形可能な連結部11fが設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッド及び前記キャップの何れか一方に、該ヘッド及び該キャップの何れか他方に向けて延出された延出部が設けられ、
前記ヘッド及び該キャップの何れか他方に、該ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線に近づく向きに撓む内倒れ弾性片と、該内倒れ弾性片の径方向外側に位置する周壁と、該内倒れ弾性片と該周壁とをつなぐとともに該内倒れ弾性片と該周壁との間隔が広がる向きに弾性変形可能な連結部が設けられたポンプ式吐出器。
【請求項2】
前記連結部は、前記内倒れ弾性片から水平方向に延在する一端部と、前記周壁から水平方向に延在する他端部と、該一端部から下方に向けて延在した後に折り返されて上方に向けて延在して該他端部につながる折返し部と、を備える請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項3】
前記ヘッドを前記キャップに向けて前進限まで移動させた際に、前記連結部と前記延出部の先端部は接触する、又は該連結部と該延出部の先端部との間に隙間を有する請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項4】
前記ヘッド及び該キャップの何れか他方に、一対の前記内倒れ弾性片のそれぞれに隣り合う位置において、該ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む一対の外倒れ弾性片が設けられた請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式吐出器として、容器の口部に装着されるキャップと、キャップにより口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、ステムに連結するヘッドとを備え、ヘッドをキャップに向けて移動させることによって容器内の内容液をヘッドの吐出口から吐出させるものが既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなポンプ式吐出器の内部には、特許文献1に示されているように、キャップに向けて移動させたヘッドを初期位置に復帰させるためにコイルスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-31950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのようなポンプ式吐出器は、大部分の部材は合成樹脂製であるものの、コイルスプリングは金属製である。このため使用後に廃棄するにあたって、このままの状態では樹脂品としてリサイクルすることができない。また一般にこの種のポンプ式吐出器では、通常の使用時において部材が外れてしまうことを避けるべく、例えば嵌合等によって部材同士は強固に固定されている。従って、ポンプ式吐出器を分解してコイルスプリングと他の部材とに分別するにも手間を要することとなる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッド及び前記キャップの何れか一方に、該ヘッド及び該キャップの何れか他方に向けて延出された延出部が設けられ、
前記ヘッド及び該キャップの何れか他方に、該ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線に近づく向きに撓む内倒れ弾性片と、該内倒れ弾性片の径方向外側に位置する周壁と、該内倒れ弾性片と該周壁とをつなぐとともに該内倒れ弾性片と該周壁との間隔が広がる向きに弾性変形可能な連結部が設けられたポンプ式吐出器である。
【0008】
前記連結部は、前記内倒れ弾性片から水平方向に延在する一端部と、前記周壁から水平方向に延在する他端部と、該一端部から下方に向けて延在した後に折り返されて上方に向けて延在して該他端部につながる折返し部と、を備えることが好ましい。
【0009】
前記ヘッドを前記キャップに向けて前進限まで移動させた際に、前記連結部と前記延出部の先端部は接触する、又は該連結部と該延出部の先端部との間に隙間を有することが好ましい。
【0010】
前記ヘッド及び該キャップの何れか他方に、一対の前記内倒れ弾性片のそれぞれに隣り合う位置において、該ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む一対の外倒れ弾性片が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプ式吐出器によれば、ヘッドをキャップに向けて移動させた際、延出部によって一対の内倒れ弾性片がステムの中心軸線に近づく向きに撓むため、撓んだ内倒れ弾性片が復元する際にヘッドを初期位置に復帰させることができる。更に、一対の内倒れ弾性片と該周壁とをつなぐとともに該内倒れ弾性片と該周壁との間隔が広がる向きに弾性変形可能な連結部を備えていて、ヘッドには連結部が復元する力も作用するため、ヘッドをより確実に復帰させることができる。従って、作動させる際の摺動抵抗が比較的大きなポンプを採用する場合でも、ヘッドを問題無く初期位置に復帰させることができる。また、内倒れ弾性片の如き撓み変形可能な弾性片は、比較的大きな負荷でもって繰り返し撓ませるとへたりが生じて復元性が低下することがあるが、本発明のポンプ式吐出器では、内倒れ弾性片と連結部の両方でヘッドを復帰させることによって内倒れ弾性片が受ける負荷を減らすことができるため、へたりの影響を抑えることができる。また本発明のポンプ式吐出器によれば、金属製のコイルスプリングに換えて上記のような内倒れ弾性片や連結部を用いているため、従来のポンプ式吐出器のように廃棄にあたって金属部品を分別する必要がなく、また樹脂品として再利用することができることからリサイクル性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態における外倒れ弾性片が撓む前の状態を示した側面視での縦断面図(図3における矢印Bに沿う視点での縦断面図)である。
図2図1に示した実施形態における内倒れ弾性片が撓む前の状態を示した背面視での縦断面図(図3における矢印Cに沿う視点での縦断面図)である。
図3】撓む前の外倒れ弾性片、内倒れ弾性片、及び連結部を、図1図2における矢印Aに沿う視点で示した図である。
図4図1の状態からヘッドを押圧して外倒れ弾性片が撓んだ状態を示した側面視での縦断面図である。
図5図2の状態からヘッドを押圧して内倒れ弾性片が撓んだ状態を示した背面視での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態であるポンプ式吐出器100について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した中心軸線O(後述するステム7aの中心軸線)に沿う向きであって、パイプ4が位置する側が「下」であり、ヘッド13が位置する側が「上」である。また径方向とは、中心軸線Oに対して垂直な面内で中心軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で中心軸線Oを中心として周回する方向である。また正面側とは、後述するノズル13cが指向する側(図1における左側)であり、背面側とは、その逆側(図1における右側)である。また左側、右側とは、正面側から背面側に向かって視る際の左右方向である。
【0014】
本実施形態のポンプ式吐出器100は、ボトル状をなす不図示の容器の口部に装着して使用される。ポンプ式吐出器100で吐出させる内容液は、例えば化粧料(一例として乳液や化粧水)、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等である。
【0015】
ポンプ式吐出器100は、シリンダー1、弁部材2、パイプ4、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、ホルダー8、パッキン9、下キャップ10、上キャップ11、カバー12、ヘッド13で構成されている。ここでシリンダー1、弁部材2、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、及びホルダー8は、本明細書等における「ポンプ」を構成する部材であり、下キャップ10、及び上キャップ11は、本明細書等における「キャップ」を構成する部材である。また上記の部材のうち、弁部材2、ピストン6、パッキン9は、弾性を有する軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン(LDPE、HDPE、発泡PE))により形成されていて、その他の部材は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリアセタール(POM)・ポリケトン(POK)樹脂等)で形成されている。そしてポンプ式吐出器100を構成する各部材は、基本的に中心軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0016】
シリンダー1は、円板状をなしていて中央部が上方に突出する底壁部1aと、底壁部1aの外縁部から起立する円筒状の筒壁部1bと、筒壁部1bの上部から径方向外側に向けて延在するフランジ壁1cを備えている。底壁部1aにおける中央部の突出する部位には、貫通孔(吸込口1d)が設けられている。また底壁部1aの下面には、吸込口1dを取り囲んで下方に向けて延在し、パイプ4を保持する筒状の保持筒1eが設けられている。そして筒壁部1bには、貫通孔(通気口1f)が設けられている。
【0017】
弁部材2は、基部2aと、吸込口1dを覆って底壁部1aの上面に着座する弁体部2bと、基部2aと弁体部2bとを連結する弾性変形可能な連結片2cとを備えている。弁部材2は逆止弁として機能するものであって、シリンダー1内が減圧状態になると、吸込口1dを閉鎖していた弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dを開放させることができる。
【0018】
基部2aは、本実施形態では有蓋筒状をなしていて、吸込口1dを通過した内容液が通過する不図示の開口を備えている。基部2aは、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるものであり、これにより弁部材2は、シリンダー1内で保持される。
【0019】
パイプ4は、中空状をなすものであって、上端部は保持筒1eに挿入されてこれに嵌合保持されている。
【0020】
内部部材5は、シリンダー1の内部に配置され、シリンダー1に対して上下動する部材である。内部部材5は、円筒状をなす連結筒5aと、連結筒5aの下端部を閉鎖するとともに径方向外側に延在する底部5bとを備えている。また連結筒5aには、これを貫通する孔(連通口5c)が設けられていて、底部5bの上面には、連結筒5aとの連結部よりも径方向外側に位置する環状部5dが設けられている。
【0021】
ピストン6は、連結筒5aに挿通されて底部5bの上方に配置される。本実施形態のピストン6は、円環状の基部6aを備えている。基部6aの外縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する外側摺動片6bが設けられている。外側摺動片6bは、筒壁部1bの内周面に対して摺動可能に液密に当接するものである。そして基部6aの内縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する内側摺動片6cが設けられている。内側摺動片6cは、その下部は環状部5dの内周面に対して摺動可能に液密に当接し、その上部は筒状部材7における後述する拡径部7bの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。
【0022】
筒状部材7は、全体的に筒状をなす部材である。筒状部材7は、円筒状をなすステム7aと、ステム7aの下端部に連結するとともにステム7aよりも大径になる拡径部7bを備えている。ステム7aの内側に連結筒5aを挿入すると両者は嵌合されるため、内部部材5と筒状部材7は、シリンダー1に対して一体的に移動する。
【0023】
ホルダー8は、ステム7aの径方向外側に位置する部位と拡径部7bの径方向外側に位置する部位を持ち、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるホルダー基部8aを備えている。ホルダー基部8aの上端部には、径方向外側に向けて延在するフランジ8bが設けられている。ホルダー8によって、内部部材5、ピストン6、筒状部材7のシリンダー1からの抜け出しを防止している。
【0024】
パッキン9は、円環板状をなすものであって、シリンダー1の筒壁部1bに挿通されてこれに嵌合保持されている。ポンプ式吐出器100を不図示の容器に取り付けた際、パッキン9は容器の口部とフランジ壁1cに挟持される。これにより、例えば容器を倒した際に内容液が口部から溢れる等の不具合が防止される。
【0025】
下キャップ10は、円板状をなしていて中央部に貫通孔を備える下側天壁10aを備えている。下側天壁10aの外縁部には、下方に向けて延在する円筒状の下側周壁10bが設けられている。下側周壁10bの内周面における上部は、径方向内側に向けて膨出してフランジ壁1cを嵌合保持することが可能であって、これによりシリンダー1は、下キャップ10に保持される。また下キャップ10の内周面には、容器の口部に設けた雄ねじ部に螺合する雌ねじ部10cが設けられていて、雄ねじ部と雌ねじ部10cとを螺合させることにより、下キャップ10を容器に装着することができる。そして下側周壁10bの外周面には、図1の部分拡大図に示すように、上下方向に延在する回り止め凹部10dが設けられている。回り止め凹部10dは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。また下側周壁10bの外周面における上部には、外向き爪状になる下キャップ係合部10eが設けられている。
【0026】
上キャップ11は、下側天壁10aの上方に位置し、円板状をなしていて中央部に貫通孔を備える上側天壁11aを備えている。上側天壁11aの外縁部には、円筒状の上側周壁11bが設けられている。上側周壁11bは、本明細書等における「周壁」に相当する。上側周壁11bは、その下端部が上側天壁11aよりも下方に突出していて、下端部における内周面には、凹状になる上キャップ係合部11cが設けられている。上キャップ係合部11cは下キャップ係合部10eに係合するものであり、両者が係合することで上キャップ11は下キャップ10に保持される。
【0027】
また上キャップ11は、図1に示すように、上側天壁11aの上面から上方に向けて延在し、径方向外側に向けて弾性変形可能な板状の外倒れ弾性片11dを備えている。本実施形態の外倒れ弾性片11dは、図3に示すように平面視において、中心軸線Oを中心とする円弧状である。外倒れ弾性片11dの上端部は、図1に示すように上方に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜している。また本実施形態の外倒れ弾性片11dは、中心軸線Oに対向するように正面側と背面側にそれぞれ1つ(合計2つ)設けられている。
【0028】
更に上キャップ11は、図2に示すように、上側天壁11aの上面から上方に向けて延在し、径方向内側に向けて弾性変形可能な板状の内倒れ弾性片11eを備えている。本実施形態の内倒れ弾性片11eは、図3に示すように平面視において、中心軸線Oを中心とする円弧状である。内倒れ弾性片11eの上端部は、図2に示すように上方に向かうにつれて径方向内側に狭まるように傾斜している。また内倒れ弾性片11eは、本実施形態では合計2つ設けられていて、それぞれの内倒れ弾性片11eは、2つの外倒れ弾性片11dのそれぞれに隣り合う位置に(本実施形態では中心軸線Oに対向するように左側と右側に)設けられている。
【0029】
また上キャップ11は、内倒れ弾性片11eと上側周壁11bをつなぐ連結部11fを備えている。連結部11fは、内倒れ弾性片11eと上側周壁11bとの間隔が広がる向きに弾性変形可能である。本実施形態の連結部11fは、図2に示すように、内倒れ弾性片11eから水平方向に延在する一端部11gと、上側周壁11bから水平方向に延在する他端部11hと、一端部11gから下方に向けて延在した後に折り返されて上方に向けて延在して他端部11hにつながるU字状の折返し部11kを備えている。折返し部11kは、一端部11gにつながる部位と他端部11hにつながる部位との間隔が開くように弾性変形可能である。なお一端部11gは、内倒れ弾性片11eにおける上下方向中間部よりもやや下側で内倒れ弾性片11eにつながっている。この位置は、図5に示すようにヘッド13が最も下方に押し下げられた状態において、後述する延出部13eの先端部が一端部11gに接触する、又は延出部13eの先端部と一端部11gとの間に隙間があく位置である。本実施形態において連結部11fは、図3に示すように、1つの内倒れ弾性片11eに対して周方向に間隔をあけて一対設けられている。また図2図3に示すように連結部11fの下方には、上側天壁11aを上下方向に貫く貫通孔11mが設けられている。上キャップ11を金型で形成するにあたり、貫通孔11mが設けられていなければ連結部11fを形作るための金型の構成が複雑になるが、貫通孔11mを設けることによって、二つに分離する一方の金型部分で連結部11fの下面を形作り、他方の金型部分で連結部11fの上面を形作ることが可能となるため、金型の構成を簡素化できる。
【0030】
カバー12は、円筒状になるカバー周壁12aを備えている。カバー周壁12aは、下側周壁10bと上側周壁11bを取り囲んでいる。カバー周壁12aの下端部には、径方向内側に向けて突出して下側周壁10bの下端部に係合する抜け止め凸部12bが設けられている。カバー周壁12aの内周面には、上下方向に延在し、下部は回り止め凹部10dに係合して上部は上側周壁11bを径方向外側から支持する回り止めリブ12cが設けられている。回り止めリブ12cが回り止め凹部10dに係合することによって、カバー12は下キャップ10に回り止め保持される。カバー周壁12aの上端部には、径方向内側に向けて延在する内向きフランジ12dが設けられていて、内向きフランジ12dの下面には、上側周壁11bの径方向内側に位置して上側周壁11bに係合する係合凸部12eが設けられている。
【0031】
ヘッド13は、円筒状をなし、内側にステム7aが挿入されてこれに嵌合保持される筒状部13aを備えている。筒状部13aの上部には、上面が下方に凹むように形作られ、内部に筒状部13aに通じる通路を有する頂部13bが設けられている。頂部13bには、円筒状をなしていて径方向外側に向けて延在し、頂部13bの内部に設けた通路に通じるノズル13cが設けられている。ノズル13cの先端には、ポンプ式吐出器100によって内容液が吐出される吐出口13dが設けられている。
【0032】
またヘッド13は、頂部13b及びノズル13cから下方に向けて延出された延出部13eを備えている。本実施形態の延出部13eは、中心軸線Oを中心とする円筒状である。また延出部13eの下端部(先端部)は、図1図2、及び図4図5に示すように、概ね下方に向かうにつれて径方向内側に狭まるように傾斜している。なお、図1図2では、
外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eは垂直方向に延在し、外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eの上端部に対して延出部13eの下端部が重なるように図示したが、実際にはこの重なりが解消されるように、外倒れ弾性片11dは径方向外側に向けて若干傾いた状態にあり、内倒れ弾性片11eは径方向内側に向けて若干傾いた状態にあって、ヘッド13は上昇限(後退限)まで移動している。
【0033】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器100は、図1図3に示すようにヘッド13を押圧する前の状態においては、外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eに延出部13eの先端部が接触し、ヘッド13は上昇した状態(ヘッド13は上キャップ11から後退した状態)にある。
【0034】
そしてヘッド13を上方から押圧してヘッド13を下降させる(ヘッド13を上キャップ11に向けて前進させる)と、図4図5に示すように、ステム7aがヘッド13とともに押し下げられる(中心軸線Oに沿ってステム7aが上キャップ11に向けて移動する)。またステム7aが押し下げられるに伴い、連結筒5aを介して底部5bも下降するため、環状部5dと内側摺動片6cの下部との液密な当接が解除される。そしてヘッド13を更に押し下げていくと、筒状部材7及び内部部材5とともにピストン6も下降して、シリンダー1の内部が加圧される。このためシリンダー1内の内容液は、連通口5cを通過し、連結筒5a、ステム7a、筒状部13a、頂部13bの内部に設けた通路、及びノズル13cの内側を通って吐出口13dから外界に吐出される。なお、ヘッド13を押圧してピストン6が通気口1fよりも下降すると、不図示の容器は、通気口1fを介して外界と連通する。これにより容器に収容した内容液が減っても容器内は負圧化されず、容器がつぶれるように変形する不具合が防止される。
【0035】
またヘッド13が押し下げられると、延出部13eが外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eに押圧力を付与するため、外倒れ弾性片11dは径方向外側に撓んでいき、内倒れ弾性片11eは径方向内側に撓んでいく。また、ヘッド13が押し下げられるにつれて内倒れ弾性片11eと上側周壁11bとの間隔が広がるため、図5に示すように連結部11fは、折返し部11kにおける一端部11gにつながる部位と他端部11hにつながる部位との間隔が開くように弾性変形する。なお上述したように一端部11gは、ヘッド13を最も下方に押し下げた(前進限まで移動させた)状態(図5に示した状態)において、延出部13eの先端部が接触する、又は延出部13eの先端部の間に隙間があく位置に設けられているため、下方に移動した延出部13eによって連結部11fの弾性変形が阻害されることはない。
【0036】
その後、ヘッド13への押圧を解除すると、弾性変形していた外倒れ弾性片11d、内倒れ弾性片11e、及び連結部11fの復元力がヘッド13に作用し、ヘッド13は上昇し始める。これに伴い、環状部5dに対して内側摺動片6cの下部が再び液密に当接しつつ、ピストン6が内部部材5とともに上昇するため、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dが開放されて、パイプ4を通して容器内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0037】
このように本実施形態のポンプ式吐出器100によれば、金属製のコイルスプリングを用いずとも、内容液を吐出させた後のヘッド13を復帰させることができ、従来のポンプ式吐出器と同じように使用することができる。また、外倒れ弾性片11dや内倒れ弾性片11eの如き撓み変形可能な弾性片は、比較的大きな負荷でもって繰り返し撓ませるとへたりが生じて復元性が低下することがあるが、ポンプ式吐出器100では、連結部11fの復元力もヘッド13の復帰に寄与していて、外倒れ弾性片11dや内倒れ弾性片11eが受ける負荷を減らすことができるため、へたりの影響を抑えることができる。そして、外倒れ弾性片11dが撓む方向と内倒れ弾性片11eが撓む方向は逆であるため、外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eとの間では延出部13eを捻り出すような力も作用する。従って、ヘッド13をより確実に復帰させることができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0039】
例えば上述したポンプは一例であって、他の形式のポンプを採用した場合も本発明に含まれる。そして、外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eの数は、上述した実施形態に限られるものではなく、適宜変更可能である。外倒れ弾性片11dと内倒れ弾性片11eを設ける位置も適宜変更可能であり、例えば外倒れ弾性片11dを上キャップ11の左側と右側に設け、内倒れ弾性片11eを上キャップ11の正面側と背面側に設けてもよい。更に内倒れ弾性片11eと外倒れ弾性片11dは、図示したように平面視で円弧状になるものに限られず、例えば平面視で直線状になるものでもよい。また延出部13eは円筒状になるものに限られず、例えば角筒状になるものでもよい。
【0040】
そして連結部11fも適宜変更可能であって、上記のように1つの内倒れ弾性片11eに対して2つ設ける場合に限られず、1つでもよいし3つ以上でもよい。また連結部11fの形状は、図2に示したように一端部11gと他端部11hが水平方向に延在して折返し部11kがU字状になるものに限られず、一端部11gと他端部11hを省略してもよいし、折返し部11kが上下逆向きのU字状になるものでもよいし、折返し部11kがV字状になるものでもよいし、折返し部11kが水平面内でU字状になるものでもよい。
【0041】
また上述した実施形態では、上キャップ11に上側周壁11b、外倒れ弾性片11d、内倒れ弾性片11e、及び連結部11fを設け、ヘッド13に延出部13eを設けたが、相互に入れ替えてヘッド13に上側周壁11b、外倒れ弾性片11d、内倒れ弾性片11e、及び連結部11fを設け、上キャップ11に延出部13eを設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:シリンダー
1a:底壁部
1b:筒壁部
1c:フランジ壁
1d:吸込口
1e:保持筒
1f:通気口
2:弁部材
2a:基部
2b:弁体部
2c:連結片
4:パイプ
5:内部部材
5a:連結筒
5b:底部
5c:連通口
5d:環状部
6:ピストン
6a:基部
6b:外側摺動片
6c:内側摺動片
7:筒状部材
7a:ステム
7b:拡径部
8:ホルダー
8a:ホルダー基部
8b:フランジ
9:パッキン
10:下キャップ
10a:下側天壁
10b:下側周壁
10c:雌ねじ部
10d:回り止め凹部
10e:下キャップ係合部
11:上キャップ
11a:上側天壁
11b:上側周壁(周壁)
11c:上キャップ係合部
11d:外倒れ弾性片
11e:内倒れ弾性片
11f:連結部
11g:一端部
11h:他端部
11k:折返し部
11m:貫通孔
12:カバー
12a:カバー周壁
12b:抜け止め凸部
12c:回り止めリブ
12d:内向きフランジ
12e:係合凸部
13:ヘッド
13a:筒状部
13b:頂部
13c:ノズル
13d:吐出口
13e:延出部
100:ポンプ式吐出器
O:中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5