(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158607
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素の吸収液および二酸化炭素の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241031BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241031BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241031BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241031BHJP
C07D 211/58 20060101ALN20241031BHJP
C07D 401/14 20060101ALN20241031BHJP
C07D 295/13 20060101ALN20241031BHJP
C07D 401/12 20060101ALN20241031BHJP
C07D 405/12 20060101ALN20241031BHJP
C07D 213/74 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
C07D211/58
C07D401/14
C07D295/13
C07D401/12
C07D405/12
C07D213/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073950
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 純平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】土屋 瑞穂
【テーマコード(参考)】
4C055
4C063
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA52
4C055BB02
4C055BB08
4C055CA02
4C055CA06
4C055DA01
4C055EA01
4C063AA01
4C063AA05
4C063BB07
4C063BB09
4C063CC10
4C063CC43
4C063CC71
4C063DD07
4C063DD08
4C063DD10
4C063EE10
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002FA01
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4D002GB11
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB25
4D020CC09
4G146JA02
4G146JC18
4G146JC28
4G146JC29
4G146JC30
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素をより少ないエネルギーで効率的に分離回収するための吸収液及びこれを用いた二酸化炭素の分離回収方法を提供すること。
【解決手段】
上記課題は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
アミン化合物及び非水系液状媒体を含有し、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(1)を満たし、且つ表面張力Aが50mN/m以下であることを特徴とする吸収液である。
式(1)A-B<10.0
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
アミン化合物及び液状媒体を含有し、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(1)を満たし、且つ表面張力Aが50mN/m以下であることを特徴とする吸収液。
式(1)A-B<10.0
【請求項2】
液状媒体が非水系液状媒体を含むことを特徴とする請求項1に記載の吸収液。
【請求項3】
前記アミン化合物が、アルカノールアミン類、アルキレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びそれらのエポキシ変性物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むこと特徴とする請求項1又は2に記載の吸収液。
【請求項4】
以下の工程AおよびBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収する方法であって、
工程A:請求項1又は2に記載の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を放出して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程、である方法。
【請求項5】
前記工程Aの、前記吸収液と、前記二酸化炭素を含むガスとを接触させる際の温度が0℃以上60℃未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程Bの加熱温度が50℃以上120℃以下である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高効率に分離回収するための吸収液、および、該吸収液を用いた二酸化炭素を分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会活動に付随する二酸化炭素やメタンといった温室効果ガス排出量の急激な増加が地球温暖化の原因の1つに挙げられている。特に、二酸化炭素は温室効果ガスの中でも、最も主要なものであり、2016年に発効されたパリ協定に従い、二酸化炭素排出量削減に向けての対策が急務となっている。
【0003】
二酸化炭素排出量削減に向けた取組みとして、二酸化炭素の分離回収が注目されており、二酸化炭素吸収液の開発が盛んにおこなわれている。そのため、近年では、発電所や製鉄所から排出される二酸化炭素含有ガスを対象として、アミン化合物の水溶液を主成分とする化学吸収法による二酸化炭素分離回収技術の開発が精力的に推進されている。
【0004】
化学吸収法においては、概して、吸収剤を含む水性液を吸収液として、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する放散塔とを循環させて、吸収及び再生を交互に繰り返す。放散塔においては、二酸化炭素を放出させるための加熱が必要であり、再生後の吸収液は、吸収塔において再使用するために冷却される。
【0005】
また、二酸化炭素の回収効率を向上させる回収方法および回収装置としては、特許文献1に示す、吸収塔および放散塔で用いられる充填剤の濡れ性を向上させるために、充填材を構成する金属素材の種類や素材表面に対する化学的または機械的な粗面化処理を施すことで、二酸化炭素吸収液との濡れ性を改善し、化学吸収法における二酸化炭素の吸収および放散効率を向上することを報告している。
【0006】
一方、アミン化合物と水からなる二酸化炭素の水系吸収液の表面張力と吸収液性能の関連性について、特許文献2で報告されている。具体的には、特定のアミン水溶液に界面活性剤を添加することで、アミンを高濃度にした場合でも吸収速度の低下の抑制や吸収量や放出量の増加を見出している。
【0007】
一方、アミン化合物と水ではない液状媒体からなるアミン吸収液に関する報告もなされている。非特許文献1では、非水系アミン吸収液としての二酸化炭素の放出挙動に関する報告があるが、二酸化炭素の吸収および放散工程における吸収液からの発泡が指摘されている。特に、吸収液からの発泡が発生する場合、二酸化炭素を吸収した後の吸収液の表面張力が著しく低下していることが示唆されるもののそれらに関する記載はない。
【0008】
このように従来技術では、放出時にアミン吸収液が泡立ってしまうことで、二酸化炭素の回収および放散効率の著しい低下や、吸収液の経時での損失にともなうランニングコストの増加が懸念される。また、発泡に伴い回収装置のメンテナンス面で課題があることから、アミンの放出性能のさらなる改善や、長期の運転に対応出来る吸収液が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-022877号公報
【特許文献2】特開2012-011309号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Non-Aqueous Solvent (NAS) CO2 Capture Process」, Energy Procedia,(発行国), 2014, Vol.63, p. 580 - 594,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、二酸化炭素の高い放散効率、及び、放散時に発泡が生じない二酸化炭素吸収放出剤と二酸化炭素の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための、アミン化合物及び非水系液状媒体を含有した吸収液であって、二酸化炭素を効率的に吸収し、且つ、低エネルギーで放出し、高純度の二酸化炭素を高効率で回収できるだけでなく、吸収と放出を繰り返し行っても発泡しにくい吸収液について鋭意検討した結果、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(1)を満たし、且つ表面張力Aが50mN/m以下であることを特徴とする吸収液に関する。
式(1)A-B<10.0
【0013】
また、本発明は、更に水を含むことを特徴とする吸収液に関する。
【0014】
また、本発明は、前記アミン化合物が、アルカノールアミン類、アルキレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びそれらのエポキシ変性物からなる群から選ばれる少なくとも1つを特徴とする吸収液に関する。
【0015】
以下の工程AおよびBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収する方法であって、
工程A:吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を放出して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程、である方法に関する。
【0016】
また本発明は、前記工程Aの、前記吸収液と、前記二酸化炭素を含むガスとを接触させる際の温度が0℃以上60℃未満である二酸化炭素を分離回収する方法に関する。
【0017】
前記工程Bの加熱温度が50℃以上120℃以下である特徴とする二酸化炭素を分離回収する方法に関する
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二酸化炭素の吸収前の該吸収液と二酸化炭素を吸収した後の該吸収液の表面張力の差が一定の範囲である吸収液を用いることにより、二酸化炭素回収装置において、高い二酸化炭素回収量を有すること、低いエネルギーでの二酸化炭素の放出能を有すること、および、放散時に発泡が生じないことで、システム全体として低いエネルギーでの二酸化炭素分離回収が可能となる。さらに、よりコンパクトな二酸化炭素分離回収設備の設計が可能となり、初期コストが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について説明する。
【0020】
[二酸化炭素を分離回収するための吸収液]
本発明の吸収液は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
アミン化合物及び液状媒体を含有し、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(1)を満たし、且つ表面張力Aが50mN/m以下であることが特徴である。
式(1)A-B<10.0
【0021】
(アミン化合物)
具体的なアミン化合物としては、アルカノールアミン類、アルキレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びそれらのエポキシ変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物が挙げられる。
【0022】
本発明において、前記のアルカノールアミン類としては、具体例としては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-N-エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エタノールアミン、N-[2-{2-(ジメチルアミノ)エトキシ}エチル]-N-メチルエタノールアミン、又はN-[2-{2-(ジエチルアミノ)エトキシ}エチル],N-エチルエタノールアミン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記のアルキレンポリアミン類としては、分子内に窒素原子が2つ以上含まれ、且つ、直鎖のアルキレン基を1つ以上有する構造である。直鎖のアルキレン基として好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、特に好ましくはエチレン基、プロピレン基が挙げられる。アルキレンポリアミンの具体例としては、直鎖のアルキレン基を1つ有するアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、N,N,N'-トリメチルエチレンジアミン、N,N'-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N'-ジターシャリブチルエチレンジアミン等のエチレンポリアミン類、1,3-ジアミノプロパン、3-メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,3-ビス(ジエチルアミノ)プロパン等のプロピレンポリアミン類、直鎖のアルキレン基を2つ以上有するポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、又は8以上のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン、2,2'-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、3,3'-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、等が挙げられる。そのなかでも、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、例えば、3-メチルアミノプロピルアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン, 又は1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、等が好ましい。これらのうち、3-メチルアミノプロピルアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミンであることが好ましい。
【0024】
ここで、前記の「TETA」とは、4つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を4つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TETAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又は1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジン等が挙げられる。
【0025】
また、前記の「TEPA」とは、5つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を5つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TEPAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N'-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又はビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミン等が挙げられる。
【0026】
また、前記の「PEHA」とは、6つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を6つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。PEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N',N'-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N'-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN,N'-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0027】
また、前記の「HEHA」とは、7つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を7つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。HEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N',N'-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN-(2-アミノエチル)-N,N'-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0028】
また、前記の「8以上のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン」とは、8つ以上のアミノ基がアルキレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を8つ以上有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。8以上のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミンの具体例としては、例えば、商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)、ポリアルキレンイミン等が挙げられる。
【0029】
本発明において、前記のピペラジン類としては、具体例としては、例えば、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、2-アミノメチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-アミノ-4―メチルピペラジン、1,4-ビスアミノプロピルピペラジン、
1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール等が挙げられる。
【0030】
本発明において、前記のピペリジン類としては、具体例としては、例えば、ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、3-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシエチル)ピペリジン、2-(アミノメチル)ピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、4-アミノ-2,2',6,6'-テトラメチルピペリジン、2,2',6,6'-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0031】
本発明において、前記のモルホリン類としては、具体例としては、例えば、モルホリン、2-メチルモルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-モルホリン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-モルホリン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-モルホリン等が挙げられる。
【0032】
本発明において、ピロリジン類としては、具体例としては、例えば、ピロリジン、2-メチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピロリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピロリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピロリジン、又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0033】
本発明において、前記のアゼパン類としては、具体例としては、例えば、アゼパン、2-メチルアゼパン、2,7-ジメチルアゼパン、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0034】
これらのアミン化合物のエポキシ変性物としては、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物が好ましく挙げられる。
【0035】
【0036】
一般式(1)中、R1は、水素原子、または、メチル基であり、R2は、水素原子、または、炭素数1~8のアルキル基であり、R3、R4、R5、および、R6は、それぞれ独立して、水素原子、またはメチル基であり、
Xは、直接結合、または酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表す。
【0037】
上記、一般式(1)において、R1は、水素原子、および、メチル基を表す。
【0038】
上記、一般式(1)において、R2は、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基を表す。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、セカンダリ-ペンチル基、ターシャリペンチル基、シクロペンチル基、1-ヘキシル基、2-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、オクチル基、2ーエチルヘキシル基などが挙げられる。
【0039】
上記、一般式(1)において、R3、R4、R5、および、R6は水素原子またはメチル基を表す。
【0040】
上記、一般式(1)において、Xは、直接結合、または酸素原子を表す。
【0041】
上記、一般式(1)において、Aは、n価の有機残基を表す。n価の有機残基としては、炭素原子を1つ以上することが好ましく、n価の有機残基の好ましい具体例としては、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基、n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル残基、n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基、n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基、n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基、または、n価の置換基を有しても良いアミノ残基であり、それらの残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有していてもよい。
また、nは1~6の整数を表す。
【0042】
上記、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基の直鎖もしくは分岐炭化水素としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0043】
具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2―エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、といった炭素数1~18のアルキルが挙げられる。
【0044】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-オクテニル基、1-デセニル基、1-オクタデセニル基といった炭素数2~18のアルケニルが挙げられる。
【0045】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-オクタデシニル基といった炭素数2~18のアルキニルが挙げられる。
【0046】
上記、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基としては、直鎖または分岐のアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキル基、フェニル基、4-ニトロフェニル基、2-メトキシフェニル基、水酸基、ハロゲン原子、エポキシ基などが挙げられ、上記置換基はさらに置換基を有していても良く、置換基としては上記の置換基が挙がられる。
【0047】
置換基としての具体的なアルキル基は、前述の、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基のアルキル基と同義である。
【0048】
置換基としての具体的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0049】
置換基としての具体的なポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖または分岐のプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0050】
置換基としての具体的なハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、要素原子が挙げられる。
【0051】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0052】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖または分岐のプロピレンオキシド基があげられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、アルキル基、フェニル基、水酸基などが好ましい。
【0053】
n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基としては、(メタ)アクリロイル基としては、メタクリル基、アクリロイル基が挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0054】
n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基のアルキルエステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピリルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、ヘプチルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ヘキサデシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、1,2―シクロヘキサンジエステル基、1,2―シクロヘキセンジエステル基、等が挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0055】
n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基の芳香族エステル基としては、フェニルエステル基、4-tert―ブチルフェニルエステル基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0056】
n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基、2-インデノ基といった炭素数3~18のシクロアルキルが挙げられる。
また、脂環式炭化水素基としては、複数のシクロアルキル基が、アルキレン基などで連結された基も含む。
上記、n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基における、置換基については、前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは分岐のアルキレン基であり、特に好ましくは、tert―ブチレン基が挙げられる
【0057】
n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基の芳香族炭化水素としては縮合数1~4の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、9,9-ジフェニルフルオレン、ビス(3-メチルフェニル)フルオレン、ビナフチルなどが挙げられる。
【0058】
上記、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基における、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは、アルキル基、アルキレン基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、メチル基、メチレン基、tert-ブチレン基、臭素原子が挙げられる。
【0059】
上記、n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基の芳香族複素環としては、縮合数1~4の芳香族複素環であり、例えば、ピロール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、フタルイミドなどが挙げられる。置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0060】
n価の置換基を有しても良いアミノ残基のアミノ基としては、アニリン基が挙げられる。また置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくはアルキル基があり、より好ましくはメチル基が挙げられる。
【0061】
上記、一般式(1)におけるAは、好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基、または、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基であり、さらに好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基であり、特に好ましくは、n価の直鎖炭化水素残基である。
【0062】
一般式(1)で表されるアミン化合物は、ピぺリジン類のエポキシ変性物であり、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)とを反応させて得ることができる。
【0063】
具体的には、本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物は、4-アミノ-2.2.6.6-テトラメチルピペリジンと単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)との反応を適当な溶媒中で実施することで得ることが出来る。溶媒としては、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。なお反応は、無水条件下で実施することが目的物である一般式(1)で表されるアミン化合物を得る上で好ましい。
【0064】
単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)のエポキシ当量に対して、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの1級アミノ基当量比で、0.95~1.1当量の範囲で反応させることで得ることができる。
【0065】
単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)としては、グリシジルイソプロピルエーテル、ノルマルブチルグリシジルエーテル、ターシャリブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、および、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが挙げられ、その中でも入手性や性能の観点から、好ましくは、グリシジルイソプロピルエーテル、ノルマルブチルグリシジルエーテル、および、ターシャリブチルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0066】
本発明における一般式(1)で表されるアミン化合物の代表例を表1に示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【表1】
【表1】
【表1】
【表1】
【表1】
【0067】
【0068】
一般式(2)中、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または置換基を有してもよいシクロアルキル基を表し、
Xは、直接結合、または酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、nは、1~6の整数を表す。
【0069】
R11及びR12における、「置換基を有してもよいアルキル基」、「置換基を有してもよい複素環基」、「置換基を有してもよいシクロアルキル基」における「置換基」としては、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、スルファモイル基、N-置換スルファモイル基、カルボキシル基、スルホ基、スルファニル基などが挙げられる。
【0070】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」は、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、デシルスルファニル基、ドデシルスルファニル基、オクタデシルスルファニル基、メトキシエチルスルファニル基、アミノエチルスルファニル基、ベンジルアミノエチルスルファニル基、メチルカルボニルアミノエチルスルファニル基、フェニルカルボニルアミノエチルスルファニル基アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、アミノドデシル基、アミノオクタデシル基、、スルファニルメチル基、2-スルファニルエチル基、1-スルファニルエチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、アミノドデシル基、アミノオクタデシル基、アミノエトキシメチル基、アミノエチルアミノエチル基、アミノエチルアミノメチルフェニル基、アミノエチルアミノカルボニルメチル基、アミノエチルアミノカルボニルフェニル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0071】
置換基を有してもよい複素環基は、例えば、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピローリル基、3-ピローリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-イミダゾリル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基、ピペリジノ基、4-ピペリジル基、モルホリノ基、2-モルホリニル基、N-インドリル基、2-インドリル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-キノリノ基、N-カルバゾリル基などが挙げられる。
【0072】
置換基を有してもよいシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロへキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記、一般式(2)において、Xは、直接結合、または酸素原子を表す。
【0073】
上記、一般式(2)において、Aは、n価の有機残基を表す。n価の有機残基としては、一般式(1)記載のn価の有機残基と同義である。
【0074】
上記、一般式(2)におけるAは、好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基、または、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基であり、さらに好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基であり、特に好ましくは、n価の直鎖炭化水素残基である。
【0075】
一般式(2)で表されるアミン化合物は、アルカノールアミン類、アルキレンポリアミン類、ピペラジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類等のアミン化合物のエポキシ変性物であり、例えば、アルキレンポリアミン類と単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)とを反応させて得ることができる。
【0076】
本発明における一般式(2)で表されるアミン化合物の代表例を表2に示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【0077】
【0078】
アミン化合物は、アルカノールアミン類、アルキレンポリアミン類、ピペリジン類、およびピペラジン類が好ましい。また、一般式(2)のR11が置換基を有しても良いアルキル基であり、その置換基がアミノ基を含む構造が二酸化炭素の吸収性能、放散性能、および吸収液の方散時の発泡の観点から好ましい。
【0079】
次に、本発明の吸収液で用いる、液状媒体について説明する。
【0080】
(液状媒体)
本発明に用いる液状媒体は、上記のアミン化合物を混和することが可能な水及び/又は非水系液状媒体を適宜選択すればよく特に限定されないが、非水系液状媒体が好ましい。
【0081】
具体的な非水系液状媒体としては、水以外の液状媒体であれば特に限定されないが、有機溶媒、および、イオン性液体、または、これらの混合溶媒を使用することが出来る。
【0082】
有機溶媒の具体例を、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)と共に表2に記載する。
【0083】
(全ハンセン溶解度パラメータ(δT))
ハンセンパラメータは、全ヒルデブランド値を、分散力(δD)、極性成分(δP)、及び水素結合(δH)成分の3つの部分に分割する。ヒルデブランド値は、気化、ファンデルワールス力、及び溶解度の間の関係を用いて計算される。全ハンセン溶解度パラメータ (δT)は、分散(δD)、極性(δP)、及び水素結合(δH)力に分解され、式(2)を用いて計算される。
δT2=δD2+δP2 +δH2(2)
式中、
・δDは、分散成分であり、
・δPは、極性成分であり、
・δHは、水素結合成分である。
【0084】
なお、本明細書において、「ハンセン溶解度パラメータ」の計算は、コンピュータソフトウェア「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)」を用いて計算した値を意味する。なお、計算に使用した「HSPiP」のバージョンは「5.4.02」である。
【0085】
また液状媒体を2種以上用いる場合は、それぞれの溶媒の質量分率を重みとした加重平均を用いる。
【0086】
表3は、異なる溶媒の分散成分、極性成分、及び水素結合成分、並びに異なる溶媒に対する全ハンセン溶解度パラメータ(δT)計算結果を示す。
【0087】
【0088】
【0089】
本発明の液状媒体としては、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、さらに好ましくは、20MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、特に好ましくは、23MPa1/2~35MPa1/2上の有機溶媒、もしくはイオン性液体である。
【0090】
本発明のイオン性液体としては、カチオンとアニオンからなり、100℃、大気圧で液体の塩である。本発明に係るイオン液体は、特に室温(25℃)で液体であると好ましい。すなわち、本発明に係るイオン液体の融点は、100℃以下であれば特に限定されないが、50℃未満であると好ましく、25℃未満であるとより好ましく、10℃未満であると特に好ましい。また、本発明に係るイオン液体の融点の下限は、特に限定されない。なお、イオン液体は融点以下でも過冷却となり液体状態をとることが多く、そのような液体状態を保持できれば融点が高くとも限定されない。また、イオン液体の融点はアミン類の混合により低下することがあり、二酸化炭素吸収液として利用できれば限定されない。
【0091】
本発明に係るイオン液体を構成するアニオンは、リン酸、ホスホン酸、リン酸エステル又はホスホン酸エステルのアニオンなどが挙げられる。
【0092】
本発明に係るイオン液体において、カチオンは特に限定されないが、イミダゾリウム類、アンモニウム類、又はホスホニウム類であると好ましい。
【0093】
液状媒体は、使用するアミンを溶解できるものを適宜選択すればよいが、一実施形態として、液状媒体中、非水系液状媒体の含有量は好ましくは20質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくはより好ましくは20質量%以上40質量%以下である。上記範囲であると、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)との差が小さくなりやすいため好ましい。
【0094】
本発明の吸収液において、吸収液中のアミン化合物と非水系液状媒体との質量比は好ましくは、5:95~95:5の範囲であり、さらに好ましくは、5:95~50:50の範囲であり、特に好ましくは、10:90~25:75の範囲である。吸収液中のアミン化合物の含有率は、5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上であり、特に好ましくは、25質量%以上であり、75質量%以下が好ましい。上記範囲であると、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)との差が小さくなりやすいため好ましい。
【0095】
本発明の吸収液は、アミン化合物及び非水系液状媒体以外の成分を、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。その他の成分としては、本発明の吸収液の化学的又は物理的安定性を確保するための安定剤(酸化防止剤等の副反応抑制剤)、本発明の吸収液を用いる装置や設備の材質の劣化を防ぐための防止剤(腐食防止剤等)、吸収液の泡立ちを防ぐための添加剤(消泡剤)、pH調整剤、粘度調整剤が挙げられる。本発明の吸収液におけるこれらその他の成分の含有量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限的なものではないが、質量濃度で5%以下が好ましい。
【0096】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0097】
上記腐食防止剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-,1-ホスホ
ン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ホスホノプロパン-2-ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、マレイン酸系重合体(例えばマレイン酸及びアミレンの共重合体、又はマレイン酸、アクリル酸、及びスチレンの三元共重合体)等が挙げられる。
【0098】
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、ポリエーテル系、アセチレンジオール系、金属石鹸系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系等が挙げられる。
【0099】
上記pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等)、有機酸(クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸等)、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ピペラジンエタノールアミン、トリエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0100】
上記粘度調整剤としては、例えば、ポリイミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0101】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0102】
上記腐食防止剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ホスホノプロパン-2-ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、マレイン酸系重合体(例えばマレイン酸及びアミレンの共重合体、又はマレイン酸、アクリル酸、及びスチレンの三元共重合体)等が挙げられる。
【0103】
(表面張力)
本発明の二酸化炭素吸収液における、二酸化炭素を吸収させる前の表面張力Aは好ましくは50mN/m以下、より好ましくは48mN/m以下、更に好ましくは45mN/m以下であり、且つ、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(1)を満たす。
式(1)A-B<10.0
表面張力をこの範囲に設定することで、吸収液の二酸化炭素の吸収速度や放散速度を向上させることができる。本発明における表面張力は、協和界面科学(株)Drop Master 300を使用して懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により25℃で測定される値とする。
【0104】
本明細書において、二酸化炭素吸収後の表面張力Bとは、二酸化炭素の吸収が飽和状態のときの表面張力の値であり、吸収液を洗浄瓶に50g充填し、40℃の恒温水槽内に浸し、目の粗さ100μm、直径13mmのガラスフィルターを通して、大気圧、0.1L/分で二酸化炭素10体積%および窒素90体積%を含む混合ガスを泡状に分散させて二酸化炭素を吸収させ、吸収液から系外へ放出される混合ガスの二酸化炭素の濃度が10体積%になるまで吸収させることで、二酸化炭素の吸収が飽和状態であるとみなすことができる。
【0105】
式(1)においてA-Bは、10.0未満が好ましく、6.0未満がより好ましい。表面張力を上記範囲とすることにより、二酸化炭素を含むガスと吸収液との接触効率が向上することや、吸収液からの発泡が抑制されることで、二酸化炭素の吸収効率を大幅に向上させることができる。
【0106】
また、化学吸収法では、吸収塔と放散塔の間で、吸収液を循環させて二酸化炭素を吸収および放散させるサイクルを行う。そのため、二酸化炭素の吸収前の吸収液と二酸化炭素の吸収後の吸収液の濡れ性、つまり表面張力の差が小さいことは、吸収液の吸収および放出能力に優れるだけでなく、回収装置のコスト面やメンテナンスからも有利であることが考えられる。
【0107】
本発明の二酸化炭素吸収液は、二酸化炭素吸収前の表面張力A(mN/m)と二酸化炭素吸収後の表面張力B(mN/m)とが以下の関係式(2)を満たすことが好ましい。
式(2)B/A≧0.85
式(2)においてB/Aは、0.85以上が好ましく、0.88以上がより好ましい。
【0108】
表面張力を上記範囲に調整するためには、液状媒体と、アミン化合物とその濃度を任意選択することができる。アミン化合物の濃度が高いほど二酸化炭素吸収後の表面張力Bは小さくなる傾向があるため、小さくなりすぎない程度にアミン濃度を調整することが望ましい。
【0109】
二酸化炭素を含むガスとしては、例えば、石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、製造所のボイラー、セメント工場のキルン、コークスで酸化鉄を還元する製鐵高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鉄転炉、石炭ガス化複合発電設備等からの排ガス、採掘時天然ガス、改質ガスなどが挙げられ、該ガス中の二酸化炭素濃度は、体積濃度で通常5~50%程度、特に10~40%程度であればよい。かかる二酸化炭素濃度範囲では、本発明の作用効果が好適に発揮される。なお、二酸化炭素を含むガスには、二酸化炭素以外に窒素、水蒸気、一酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、二酸化硫黄、二酸化窒素、メタン、水素等のガスが含まれていてもよい。
【0110】
[吸収液による二酸化炭素の分離回収方法]
本発明の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法は、二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を分離回収するための方法であって、本発明の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程A、及び、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を放出して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程Bを含むことを特徴とする。
【0111】
(工程A)
工程Aでは、吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させることで、該二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて分離する。
【0112】
工程Aにおける、吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、吸収液中に二酸化炭素を含むガスをバブリングさせる方法、二酸化炭素を含むガス中に吸収液を霧状に降らす方法(噴霧乃至スプレー方式)、磁製や金属網製の充填材が入った吸収塔内で高圧の二酸化炭素を含むガスと吸収液とを向流接触させる方法等が挙げられる。
【0113】
工程Aにおける温度は、0℃以上60℃未満、好ましくは25~40℃、より好ましくは25~35℃とすることができる。この範囲であれば、吸収液が二酸化炭素回収量及び二酸化炭素吸収速度に優れる。
【0114】
工程Aにおける圧力は、通常1.0bar以上、好ましくは1.0~3.5barとすることができる。また、より高い圧力で行うことで更に高い二酸化炭素の吸収性能が得られる。
【0115】
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を放出して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する。
【0116】
工程Bの二酸化炭素を放出して放散させる工程における温度は、50~120℃とすることができる。この範囲であれば、吸収液が二酸化炭素の放散速度に優れる。工程Bにおける温度は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは50~60℃である。
【0117】
工程Bの二酸化炭素を放出して放散させる工程における圧力は、通常3.5bar以下、好ましくは1.0~3.5barとすることができる。また、より低い圧力で行うことで更に高い二酸化炭素の放散性能が得られる。
【0118】
二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、二酸化炭素を放出して放散させ、回収する方法は、特に限定されるものではない。例えば、蒸留と同じく、吸収液を加熱して釜で泡立てて放出する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製、金属網製等の充填材の入った放散塔内で液界面を広げて加熱する方法等が挙げられる。これらの方法により、純粋な、あるいは非常に高濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【0119】
工程Bにおいて二酸化炭素を放散した後の吸収液は、再び工程Aに戻し、循環再利用することができる。該循環過程において、工程Bで加えられた熱は、二酸化炭素を吸収した吸収液との熱交換により、吸収液の昇温に利用される。該熱交換により二酸化炭素分離回収工程全体のエネルギーの低減が計られる。
【0120】
本実施形態に係る二酸化炭素分離回収方法において、吸収工程と放散(加熱再生)工程とを連続的に行う場合、1サイクル目の二酸化炭素回収率(吸収工程に吸収した二酸化炭素を放散工程(加熱再生工程で放散により回収する割合)よりも、2サイクル目以降の二酸化炭素回収率が回収装置全体のランニングコストの観点では重要である。一般的に二酸化炭素回収効率を向上させるためには、吸収工程に対して、放散工程との間の温度差を大きくしなければならず、加熱に要するエネルギーが多大となる。
【0121】
本発明の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法により分離回収された二酸化炭素は、通常95~100%の体積濃度を持ち、純粋で、あるいは非常に高濃度であり得る。該分離回収された二酸化炭素は、現在その技術が開発されつつある地中や海底等への隔離貯蔵(CCS)や石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery、EOR)に供することができる。その他、該分離回収された二酸化炭素の利用用途は、特に限定されるものではない。例えば、化成品等の合成原料、或いは食品冷凍用の冷剤等が挙げられる。
【実施例0122】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0123】
評価に用いたガス種は表4の通りである。
【0124】
【0125】
<吸収液の作製、および、吸収液の表面張力測定>
【0126】
<実施例1:吸収液1の調整および吸収前および吸収後の吸収液の表面張力測定>
(合成例1)
化合物A-(1)の合成方法
【化3】
【0127】
窒素雰囲気下、メタノール100mlと混合した4-アミノ-2,2',6,6'-テトラメチルピペリジン25.0g(160.0mmol)とエチレングリコールジグリシジルエーテル55.75g(320.0mmol)を加え、撹拌を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応原料である4-アミノ-2,2',6,6'-テトラメチルピペリジンが検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物A-(1)を得た。
【0128】
化合物A-(1)を40g用い、ジメチルスルホキシド60gを加えて混合攪拌して、吸収液1を100g調製した。この吸収液の25℃における二酸化炭素を吸収する前の表面張力は、協和界面科学(株)DropMaster300で測定した結果、42.7mN/mであった。この吸収液を洗浄瓶に50g充填し、40℃の恒温水槽内に浸し、目の粗さ100μm、直径13mmのガラスフィルターを通して、大気圧、0.1L/分で二酸化炭素10体積%および窒素90体積%を含む混合ガスを泡状に分散させて二酸化炭素を吸収させた。その後、吸収液から系外へ放出される混合ガスの二酸化炭素の濃度が10体積%になるまで吸収させることで、吸収液1は二酸化炭素が飽和吸収状態であるとみなした。その後、吸収液の25℃における二酸化炭素を吸収する前の表面張力を同様に測定した結果、38.2mN/mであった。
【0129】
[合成例2~114]
合成例1と同様に、アミンと単官能もしくは多官能のエポキシ化合物を用いて表2記載のアミン化合物A-(2)からA-(114)をそれぞれ合成した。
【0130】
<実施例2:吸収液2の調整および吸収前および吸収後の吸収液の表面張力測定>
実施例1の吸収液組成である、化合物A-(1)40gを化合物A-(63)35gに変更し、同様に二酸化炭素吸収液(100g)を調製した。この吸収液の二酸化炭素の吸収前および吸収後における表面張力の測定を行った。評価結果を表5に示す。
【0131】
<実施例3~43、比較例1~6(吸収液3~49)>
実施例1記載の化合物A-(1)、液状媒体としてジメチルスルホキシドおよび配合組成を表1記載のアミン化合物、液状媒体および配合組成にそれぞれ変更し、同様の実験を行った。評価結果を表5に示す。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
[二酸化炭素吸収放散試験および吸収液の発泡挙動]
<実施例44(吸収液1)>
【0136】
液の温度が40℃になるように設定した恒温水槽内に、ステンレス製のガス洗浄ビンを浸し、これに実施例1の吸収液を15 mlを充填した。この液の中に、大気圧、0.1L/minで二酸化炭素10体積%及び窒素90体積%を含む混合ガスを泡状に分散させて60分間吸収させた。その後、吸収入口及び吸収液出口のガス中の二酸化炭素濃度を、赤外線式の二酸化炭素計で連続的に測定して、入口及び出口の二酸化炭素流量の差から二酸化炭素吸収量を測定した。
ついで同じガス気流中で液温を数分にて60℃ に上げて、60分間同条件にて二酸化炭素放出量を測定した。その結果より、二酸化炭素放出量÷二酸化炭素吸収量より二酸化炭素放出効率として算出した。
【0137】
算出した二酸化炭素放出効率から、以下の通り基準を設け評価した◎および○を実使用可能領域とした。評価結果を表6に示す。
◎:放出効率が0.7以上
○:放出効率が0.4以上0.7未満
△:放出効率が0.3以上0.4未満
×:放出効率が0.3未満
【0138】
また、上記試験において、吸収液の発泡の有無について目視で確認を行った。その結果を以下の通り基準を設け評価を行った。○を実用可能領域とした。評価結果を表6に示す。
○:発泡なし
×:発泡あり。
【0139】
[実施例45~86(吸収液2~43)]
実施例44の吸収液を表6に記載したものに変更し、同様の実験を行った。評価結果を表6に示す。
【0140】
[比較例7~12(吸収液44~49)]
実施例44の吸収液を表6に記載したものに変更し、同様の実験を行った。評価結果を表6に示す。
【0141】
【0142】
以上の結果より、本発明の吸収液は、二酸化炭素を吸収する前の表面張力が50mN/m以下であり、且つ、二酸化炭素を吸収する前(A)および吸収した後の吸収液(B)の表面張力の差(A-B)が10.0未満であることにより、二酸化炭素の放出効率が著しく増加することが示された。
【0143】
一方、比較例に記載の吸収液はいずれも、二酸化炭素を吸収する前(A)および吸収した後の吸収液(B)の表面張力の差(A-B)が10以上であることから二酸化炭素の吸収放出効率が高くない結果であった。
本発明によれば、二酸化炭素分離回収工程に置いて、本発明の二酸化炭素吸収液を用いることで、吸収および放散を連続的に効率よく行うことが出来るため、二酸化炭素分離回収を省エネルギーで行うことが出来る。