(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158608
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】撮像装置、基板観察装置、基板処理装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/66 20230101AFI20241031BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241031BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20241031BHJP
H04N 23/73 20230101ALI20241031BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20241031BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H04N23/66
H04N23/60 500
H04N23/50
H04N23/73
H04N23/56
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073951
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 大輔
【テーマコード(参考)】
2G051
5C122
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB08
2G051BB11
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC11
2G051DA08
5C122DA12
5C122DA13
5C122EA42
5C122FA11
5C122FF09
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH18
5C122GA01
5C122GA23
5C122GG01
5C122HA82
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】基板の周縁部を複数方向から多面的に観察するのに好適な画像を取得する。
【解決手段】この発明に係る撮像装置、基板観察装置、基板処理装置および撮像方法は、周縁部から出射される光を撮像部に導いて、周縁部を第1方向および第2方向から見た第1の像および第2の像を撮像部の撮像視野内に作りながら周期的に撮像を実行し、撮像部により撮像された第1の像を含む第1画像と第2の像を含む第2画像とのそれぞれに対し画像処理を行う。撮像部は、複数の撮像条件を撮像ごとに循環的に切り替え、ここで複数の撮像条件は、第1の像の撮像に対応する第1条件と、第2の像の撮像に対応する第2条件とを含む。画像処理部は、撮像部が第1条件で撮像した画像から第1画像を取得する一方、撮像部が第2条件で撮像した画像から第2画像を取得する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板の周縁部を撮像する撮像装置であって、
周期的に撮像を実行する撮像部と、
前記周縁部から出射される光を前記撮像部に導いて、第1方向から前記周縁部を見た第1の像と、前記第1方向と異なる第2方向から前記周縁部を見た第2の像とを前記撮像部の撮像視野内に作る導光部と、
前記撮像部により撮像された前記第1の像を含む第1画像と前記第2の像を含む第2画像とのそれぞれに対し画像処理を行う画像処理部と
を備え、
前記撮像部は、複数の撮像条件を前記撮像ごとに循環的に切り替え、前記複数の撮像条件は、前記第1の像の撮像に対応する第1条件と、前記第2の像の撮像に対応する第2条件とを含み、
前記画像処理部は、前記撮像部が前記第1条件で撮像した画像から前記第1画像を取得する一方、前記撮像部が前記第2条件で撮像した画像から前記第2画像を取得する、撮像装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記撮像視野内の一部である関心領域に対応する画像データを出力し、かつ前記関心領域を変更設定可能である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像条件には、前記撮像視野中における前記関心領域の範囲に関する設定が含まれる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記複数の撮像条件を記憶する記憶部を有し、前記記憶部から読み出した前記撮像条件を適用して前記撮像を実行する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記基板が1回転する間に、前記複数の撮像条件の各々につき、それぞれ複数回の前記撮像を実行する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、互いに異なる時刻に撮像された複数の前記第1画像を合成して合成画像を作成する、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像部は、撮像時刻が最も近い2つの前記第1画像同士が互いに部分的にオーバーラップするように撮像する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1条件と前記第2条件とでは露光時間が互いに異なる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の像は前記基板の主面の像であり、前記第2の像は前記基板の側面の像である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
基板を保持し前記基板の主面と垂直な回転軸回りに回転させる回転機構と、
請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像装置と同一構成を有する撮像機構と
を備える、基板観察装置。
【請求項11】
基板を保持し前記基板の主面と垂直な回転軸回りに回転させる回転機構と、
回転する前記基板に対し所定の処理を実行する処理部と、
請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像装置と同一構成を有する撮像機構と
を備える、基板処理装置。
【請求項12】
回転する基板の周縁部を撮像する撮像方法であって、
前記周縁部から出射される光を前記撮像部に導いて、第1方向から前記周縁部を見た第1の像と、前記第1方向と異なる第2方向から前記周縁部を見た第2の像とを撮像部の撮像視野内に作りながら、前記撮像部が周期的に撮像を実行する工程と、
前記撮像部により撮像された前記第1の像を含む第1画像と前記第2の像を含む第2画像とのそれぞれに対し画像処理を行う工程と
を備え、
前記撮像部は、複数の撮像条件を前記撮像ごとに循環的に切り替え、前記複数の撮像条件は、前記第1の像の撮像に対応する第1条件と、前記第2の像の撮像に対応する第2条件とを含み、
前記画像処理部は、前記撮像部が前記第1条件で撮像した画像から前記第1画像を取得する一方、前記撮像部が前記第2条件で撮像した画像から前記第2画像を取得する、撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば検査等の目的で半導体ウエハなどの基板の周縁部を撮像する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの被撮像物の周縁部に対して種々の処理を施す処理システムが知られている。このような基板処理システムでは、例えば処理状態を監視するために、処理される基板を照明しCCDカメラ等の撮像手段によって撮像することが行われる。基板の周縁部の形状としては様々であるが、例えば研磨加工により表面を傾斜面とした、いわゆるベベル部が設けられたものがある。
【0003】
このような基板のベベル部における仕上がり状態を観察する目的には、基板を一方向から撮像した画像だけでは十分とは言えない。すなわち、基板の周縁部の断面形状は様々であり、一の方向から撮像した画像だけではその全体を観察することは不可能である。また、基板の表面状態も、その主面や側面等の領域ごとに、またその処理状態によっても異なってくる。そのため、照明状態や露光時間等の撮像条件についても、単一の設定では観察に適した良好な画像を得ることが難しい場合がある。
【0004】
このような状況下での撮像に適用可能な技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この技術は、例えばCCDまたはCMOSセンサーを撮像素子とするデジタルカメラを使用した撮像システムに関するものであり、予め設定された複数の撮像条件をカメラの記憶部に記憶させておき、撮像ごとにそれらの撮像条件を切り替えながら撮像を行って撮像データを出力するという機能を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベベル部を含む基板の周縁部を観察するという目的においても、上記機能を利用することで基板の周縁部を様々な撮像条件で撮像して多面的に観察を行うことが期待される。しかしながら、このような機能を活用して基板の周縁部を撮像するための具体的な手法に関しては、これまで提案されるに至っていない。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、撮像ごとに撮像条件を切り替えながら撮像を行うことで、基板の周縁部を複数方向から多面的に観察するのに好適な画像を取得することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、回転する基板の周縁部を撮像する撮像装置であって、周期的に撮像を実行する撮像部と、前記周縁部から出射される光を前記撮像部に導いて、第1方向から前記周縁部を見た第1の像と、前記第1方向と異なる第2方向から前記周縁部を見た第2の像とを前記撮像部の撮像視野内に作る導光部と、前記撮像部により撮像された前記第1の像を含む第1画像と前記第2の像を含む第2画像とのそれぞれに対し画像処理を行う画像処理部とを備えている。
【0009】
また、この発明の一の態様は、回転する基板の周縁部を撮像する撮像方法であって、前記周縁部から出射される光を前記撮像部に導いて、第1方向から前記周縁部を見た第1の像と、前記第1方向と異なる第2方向から前記周縁部を見た第2の像とを撮像部の撮像視野内に作りながら、前記撮像部が周期的に撮像を実行する工程と、前記撮像部により撮像された前記第1の像を含む第1画像と前記第2の像を含む第2画像とのそれぞれに対し画像処理を行う工程とを備えている。
【0010】
これらの発明において、前記撮像部は、複数の撮像条件を前記撮像ごとに循環的に切り替え、前記複数の撮像条件は、前記第1の像の撮像に対応する第1条件と、前記第2の像の撮像に対応する第2条件とを含み、前記画像処理部は、前記撮像部が前記第1条件で撮像した画像から前記第1画像を取得する一方、前記撮像部が前記第2条件で撮像した画像から前記第2画像を取得する。
【0011】
このように構成された発明では、撮像部の撮像視野に、基板の周縁部を互いに異なる方向から見た複数の像が共に含まれる。したがって、撮像視野内を撮像した画像を、基板の周縁部を複数の方向から観察する目的に供することが可能である。ただし、複数の像の各々を撮像するのに好適な撮像条件は必ずしも同じではない。そこで、本発明では、複数の撮像条件が撮像ごとに循環的に切り替えられて撮像が行われる。
【0012】
具体的には、周縁部を第1方向から見た像である第1の像を撮像するための撮像条件としての第1条件と、周縁部を第2方向から見た像である第2の像を撮像するための撮像条件としての第2条件とが、循環的に切り替えられる撮像条件に含まれる。したがって、撮像部により実行される周期的な撮像においては、第1条件での撮像と第2条件での撮像とがそれぞれ繰り返して実行される。
【0013】
そして、画像処理部は、第1条件で撮像された画像から第1の像を含む第1画像を取得し、第2条件で撮像された画像から第2の像を含む第2画像を取得し、それらの画像に対して画像処理を実行する。したがって、第1画像における第1の像および第2画像における第2の像について、いずれも適正な撮像条件で撮像することで良好な画像品質を得ることができる。
【0014】
このように、本発明は、基板周縁部を異なる方向から見た複数の像が撮像部の撮像視野内に含まれるように基板からの出射光を撮像部に導く導光部と、複数の撮像条件を循環的に変更しながら周期的に取得する撮像部と、それぞれの像に対応して設定された撮像条件で撮像された画像を処理対象とする画像処理部とを組み合わせた構成を有している。そのため、基板の周縁部を複数の方向から見た画像を、良好な画像品質で観察に供することが可能である。
【0015】
また、この発明は、基板を保持し前記基板の主面と垂直な回転軸回りに回転させる回転機構と、上記した撮像装置と同一構成を有する撮像機構とを備える基板観察装置、あるいは、基板を保持し前記基板の主面と垂直な回転軸回りに回転させる回転機構と、回転する前記基板に対し所定の処理を実行する処理部と、上記した撮像装置と同一構成を有する撮像機構とを備える基板処理装置として実現することが可能である。このように構成された発明では、上記原理により、基板の周縁部を複数の方向から効果的に観察することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、基板の周縁部を複数の方向から見た像が共に撮像視野に入る状態で、各像に対応させて撮像ごとに撮像条件を切り替えながら撮像を行い、そのうち適切な撮像条件で撮像された画像を選択して処理の対象とする。このため、基板の周縁部を複数方向から多面的に観察するのに好適で、かつ画像品質の良好な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
【
図4】撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
【
図5】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図8】側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図9】撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
【
図10】この実施形態における撮像部の構成例を示す図である。
【
図12】撮像部が実行する撮像動作を示すフローチャートである。
【
図13】撮像結果から全周縁画像を作成する処理を示す概念図である。
【
図14】全周縁画像の作成に適用可能な画像処理を示すフローチャートである。
【
図15】撮像タイミングと基板の回転速度との好ましい関係を示す図である。
【
図16】画像処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。基板処理システム200は、例えば半導体ウエハなどの円板状の基板Sに対して処理を施す基板処理部210と、この基板処理部210に結合されたインデクサ部220とを備えている。インデクサ部220は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部221と、この容器保持部221に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット222を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0019】
本明細書では、基板Sの両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターンが形成されている面を意味する。
【0020】
インデクサロボット222は、装置筐体に固定されたベース部222aと、ベース部222aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム222bと、多関節アーム222bの先端に取り付けられたハンド222cとを備える。ハンド222cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0021】
基板処理部210は、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット211と、この基板搬送ロボット211を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット211が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置されている。処理ユニット1の主要構成は処理チャンバ100の内部に設置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット211は適時アクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置に相当している。
【0022】
図2は基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
図3は基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
図4は撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
図5は
図2および
図3に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0023】
基板処理装置(処理ユニット)1は、回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5および撮像機構6を備えている。これら各部2~6は、処理チャンバ100の内部空間101に収容された状態で、装置全体を制御する制御ユニット9と電気的に接続されている。そして、各部2~6は、制御ユニット9からの指示に応じて動作する。
【0024】
制御ユニット9としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順に従って演算処理部91としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。これによって、基板処理装置1は、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給してベベルエッチング処理を実行する。なお、制御ユニット9の詳しい構成および動作については、後で詳述する。また、本実施形態では、各基板処理装置1に対して制御ユニット9を設けているが、1台の制御ユニットにより複数の基板処理装置1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム200全体を制御する制御ユニット(図示省略)により基板処理装置1を制御するように構成してもよい。
【0025】
回転機構2は、基板Sを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転方向AR1(
図3)に回転させる。回転機構2は、基板Sの主面中心を通る鉛直な回転軸AXまわりに回転させる。回転機構2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御ユニット9からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線周りに回転駆動する。したがって、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を回転軸AX中心に回転させる機能を担っている。
【0026】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管を介してポンプ24(
図5)が接続されている。ポンプ24およびバルブは、制御ユニット9に電気的に接続されており、制御ユニット9からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Sがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ24が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Sを下方から吸着保持する。一方、ポンプ24が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Sはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ24の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Sは水平移動可能となる。
【0027】
飛散防止機構3は、
図3に示すように、スピンチャック21に保持された基板Sの外周を囲むように設けられた概略筒状のカップ31と、カップ31の外周部の下方に設けられた液受け部32とを有している。制御ユニット9からの制御指令に応じてガード駆動部33(
図5)が作動することで、カップ31が昇降する。カップ31が下方位置に位置決めされると、
図2に示すように、カップ31の上端部はスピンチャック21に保持された基板Sの周縁部Ssよりも下方に位置する。逆に、カップ31が上方位置に位置決めされると、カップ31の上端部は基板Sの周縁部Ssよりも上方に位置する。
【0028】
カップ31が下方位置にあるときには、
図2に示すように、スピンチャック21に保持される基板Sがカップ31外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック21への基板Sの搬入および搬出時にカップ31が障害となることが防止される。
【0029】
一方、カップ31が上方位置にあるときには、カップ31の内周面はスピンチャック21に保持される基板Sの外周を取り囲む。これにより、後述するベベルエッチング処理時に基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴が処理チャンバ100内に飛散するのを防止することができる。また、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴はカップ31の内周面に付着して下方へ流下し、カップ31の下方に配置された液受け部32により集められて回収される。
【0030】
処理機構4は、ベース41と、回動支軸42と、アーム43と、処理液ノズル44とを有している。ベース41は処理チャンバ100に固定されている。このベース41に対し、回動支軸42が回動自在に設けられている。回動支軸42からアーム43が水平に伸びており、その先端に処理液ノズル44が取り付けられている。回動支軸42が制御ユニット9からの制御指令に応じて回動することによりアーム43が揺動し、アーム43先端の処理液ノズル44が、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動する。
図3において2点鎖線により示されるノズル44は退避位置にある状態を、実線により示されるノズル44は処理位置にある状態を、それぞれ示している。
【0031】
処理液ノズル44は処理液供給部45(
図5)に接続されている。そして、制御ユニット9からの供給指令に応じて処理液供給部45が処理液を処理液ノズル44に向けて供給すると、処理液ノズル44から処理開始位置Psに向けて処理液が吐出される。この処理開始位置Psは、基板Sの周縁部Ssが移動する経路上の1点である。したがって、処理液ノズル44が処理液を吐出しつつスピンチャック21が回転することで、基板Sの周縁部Ssの各部は処理開始位置Psを通過する間に処理液の供給を受ける。その結果、基板Sの周縁部Ss全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0032】
周縁加熱機構5は環状のヒーター51を備えている。ヒーター51は、基板Sの下面周縁部に沿って基板Sの周方向に延在された発熱体を内蔵している。このヒーター51に対して制御ユニット9から加熱指令が与えられると、発熱体から放出される熱によって基板Sの周縁部Ssが下方から加熱される。それによって、周縁部Ssの温度がベベルエッチング処理に適した値に昇温される。
【0033】
撮像機構6は、ベース6Aと、回動支軸6Bと、アーム6Cと、ヘッド駆動部6Dと、光源6Eと、撮像部6Fと、ヘッド部6Gと、を有している。ベース6Aは処理チャンバ100に固定されている。このベース6Aに対し、回動支軸6Bが回動自在に設けられている。回動支軸6Bからアーム6Cが水平に伸びており、その先端にヘッド部6Gが取り付けられている。そして、アーム6Cを駆動するヘッド駆動部6D(
図5)に対して制御ユニット9から制御指令が与えられると、当該指令に応じてヘッド駆動部6Dは
図3中の1点鎖線で示すようにアーム6Cを揺動する。これによって、アーム6C先端に取り付けられたヘッド部6Gが、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置P1と、基板Sの周縁部Ssを撮像する撮像位置P2との間で往復移動する。
図3において実線により示されるヘッド部6Gは退避位置にある状態を、一点鎖線により示されるヘッド部6Gは撮像位置にある状態を、それぞれ示している。撮像位置P2では、ヘッド部6Gは基板Sの(-Y)側端部に近接して配置される。
【0034】
図3に示すように、撮像位置P2からX方向に離間した離間位置P3に光源6Eおよび撮像部6Fが設けられている。この離間位置P3は、基板Sやカップ31などのベベルエッチング処理を行う各部(回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5)から離間している。光源6Eは、カップ31の外側から撮像位置P2に向けて照明光L1を照射する。このとき、カップ31は下方位置に位置決めされるとともに、ヘッド部6Gが撮像位置P2に位置決めされており、照明光L1がヘッド部6Gに入射する。この照明光L1はヘッド部6Gで拡散反射される。こうして発生する拡散光で基板Sの周縁部Ssは照明される。そして、基板Sの周縁部Ssで反射された反射光L2がさらにヘッド部6Gで反射される。反射光L2はヘッド部6Gから離間位置P3に向けて導光され、撮像部6Fに入射される。これによって、撮像部6Fは基板Sの周縁部Ssの像を取得し、その画像データを制御ユニット9に送る。
【0035】
ここで、本実施形態において撮像対象となる基板Sの周縁部Ssについて、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、半導体ウエハなどの基板Sでは、その周縁部に傾斜面を有するベベル部が形成されたものがある。ここでいう「ベベル部」とは、基板Sの周縁部Ssのうち、基板Sが水平姿勢にあるときに表面が水平面に対し傾いた状態にある領域の全体を指すものとする。
【0036】
ベベル部の断面形状および寸法については、図に点線で示す最大寸法Dmaxと破線で示す最小寸法Dminとが標準規格として規定され、これらの間に収まっている限りにおいては比較的高い自由度が与えられているのが一般的である。ベベル部の断面は、
図4に示すように傾きの異なる複数の面で構成されるケースが多いが、湾曲面で構成されるケースもある。
【0037】
以下において必要な場合には、基板Sの周縁部Ssのうち基板Sの上面と同一平面である部分を「A面」と称して符号Saを付し、基板Sの端面を「C面」と称して符号Scを付す。そして、A面SaとC面Scとを接続する傾斜面を「B面」と称し符号Sbを付す。また、基板Sの下面と同一平面である部分を「E面」と称して符号Seを付し、C面ScとE面Seとを接続する傾斜面を「D面」と称し符号Sdを付す。本明細書における「周縁部Ss」は、これらの各面を包括的に含む概念である。
【0038】
上記したように、ヘッド部6Gは、光源6Eからの照明光L1を受けて拡散光を発生させ、当該拡散光により基板Sの周縁部Ssを照明する拡散照明機能と、周縁部Ssで反射された反射光L2を撮像部6Fに導くガイド機能とを兼ね備えている。以下、ヘッド部6Gの構成および動作を
図6ないし
図9を参照しつつ説明する。
【0039】
図6は撮像機構のヘッド部を示す斜視図である。より具体的には、
図6(a)はヘッド部6Gが撮像位置P2に配置された状態を表す図であり、これから基板Sを取り除いた状態を表すのが
図6(b)である。ヘッド部6Gは、拡散面610を有する拡散照明部61と、それぞれ拡散面610で囲まれた3枚のミラー部材62a~62cで構成されるガイド部62と、拡散照明部61を保持する保持部63とを有している。
図6では、拡散照明部61との区別のために、保持部63に該当する領域にドットを付している。
【0040】
拡散照明部61は、白色の樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)で構成されている。拡散照明部61は、YZ平面に略平行なプレート形状を有しており、(+Y)方向側の端部に切欠部611が形成されている。この切欠部611は、(+X)方向側から見てU字を時計方向に90゜回転させた形状を有している。
【0041】
拡散照明部61では、切欠部611に沿って拡散面610が設けられている。拡散面610は、上下方向および(-Y)方向から切欠部611を取り囲むように設けられ、切欠部611に近づくにしたがって(-X)方向に傾斜するように仕上げられたテーパー面である。その表面は入射光を拡散反射させるように仕上げられており、後述するように、照明光を拡散反射させて基板Sの周縁部Ssに入射させる拡散面610として機能する。
【0042】
拡散面610に取り囲まれるように、ミラー部材62a~62cが取り付けられている。より具体的には、拡散面610のうち、切欠部611の鉛直上方に当たる位置には第1のミラー部材62aが、切欠部611の(-Y)側には第2のミラー部材62bが、切欠部611の鉛直下方に当たる位置には第3のミラー部材62cが、それぞれ取り付けられている。なお、本実施形態では、耐薬性や耐熱性などを考慮して、ミラー部材62a~62cはSi(シリコン)で構成されている。
【0043】
一方、保持部63は、薬液および熱に対する耐性の高い樹脂、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)で構成され、外形が概ね拡散照明部61と同等に形成されたプレート状部材である。保持部63は、拡散照明部61の背面、つまり(-X)側主面に結合されてバックアップ部材として機能する。また、保持部63はアーム6Cに結合されている。したがって、アーム6Cの揺動により、拡散照明部61と保持部63とが一体的に、退避位置P1と撮像位置P2との間を移動する。
【0044】
図6(a)に示すように、ヘッド部6Gが撮像位置P2にあり、かつ基板Sがスピンチャック21により保持されているとき、基板Sの周縁部Ssが切欠部611の間に入り込む位置関係となる。切欠部611を(+X)側から(-X)方向に見たとき、第1のミラー部材62aには、基板周縁部Ssのうち上方から見たときに見える部分、つまりA面SaおよびB面Sbの像が映り込む。同様に、第2のミラー部材62bには、基板周縁部Ssのうち側方から見たときに見える部分、つまりB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映り込む。また、第3のミラー部材62cには、基板周縁部Ssのうち下方から見たときに見える部分、つまりD面SdおよびE面Seの像が映り込む。
【0045】
詳しくは後述するが、撮像部6Fは、(+X)側から3つのミラー部材62a~62cの全てを含むように設定された撮像視野で撮像を行う。これにより、ミラー部材62a~62cのそれぞれに映り込んだ基板Sの像が1つの画像内に取り込まれる。すなわち、撮像部6Fは、基板SsのA面Sa、B面Sb、C面Sc、D面Sd、E面Seの全てを1つの画像に一括して撮像することができる。基板Sの回転に伴い複数回撮像を行うことで、周縁部Ssのうち周方向に沿って互いに位置の異なる複数の領域の画像を取得することができる。
【0046】
以下の説明では、第1のミラー部材62aに映り込んだ基板SのA面SaおよびB面Sbの像を撮像することを「上面撮像」と称する。また、第2のミラー部材62bに映り込んだ基板SのB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像を撮像することを「側面撮像」と称する。また、第3のミラー部材62cに映り込んだ基板SのD面SdおよびE面Seの像を撮像することを「下面撮像」と称する。
【0047】
図7は上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図7(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図7(b)はその垂直切断面における断面図である。
図7(a)および
図7(b)に実線矢印で示すように、基板Sの上面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1aは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射する。拡散面610のうち特に切欠部611の上方に位置する上方拡散面61aに入射し拡散反射された光が種々の方向から基板Sの上面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0048】
点線矢印で示すように、基板Sで反射された反射光は種々の方向へ進み得るが、このうちミラー部材62aに入射し、かつミラー部材62aで反射されて(+X)方向に進む光L2aが、その光路上に配置された撮像部6Fに入射する。この光を受光することで、基板Sの上面側から見た周縁部Ssを撮像する「上面撮像」が実現される。
【0049】
図7(b)に示すように、基板Sの下面側でも上面側と同様の現象が生じる。すなわち、ヘッド部6Gは上下対称な構造を有しており、基板Sの下面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1cは、拡散面610のうち特に切欠部611の下方に位置する下方拡散面61cに入射し拡散反射されて、基板Sの下面を照明する。このとき基板Sおよびミラー部材62cで反射され(+X)方向へ向かう反射光L2cを受光することで、基板Sの下面側から見た周縁部Ssを撮像する「下面撮像」が実現される。
【0050】
図8は側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図8(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図8(b)はその水平切断面における断面図である。
図8(a)および
図8(b)に実線矢印で示すように、基板Sの側方を(-X)方向に進む照明光L1bは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射し、そのうち特に切欠部611の側方に位置する側方拡散面61bで拡散反射される。この光が種々の方向から基板Sの側面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0051】
そして、点線矢印で示される基板Sからの反射光のうち、ミラー部材62bで反射されて(+X)方向に進む光L2bが、その光路上に配置された撮像部6Fに入射する。これにより、基板Sの側方から見た周縁部Ssを撮像する「側面撮像」が実現される。
【0052】
撮像部6Fは、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系6Faと、CMOSカメラ6Fbとを有している。したがって、上記反射光のうち観察レンズ系6Faの光軸に平行な光線L2(L2a,L2b,L2c)のみがCMOSカメラ6Fbのセンサー面に入射され、基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域の像がセンサー面上に結像される。こうして撮像部6Fは基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域を撮像し、例えば
図9に示す、上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcを含む画像Imを取得する。そして、その画像を示す画像データを撮像部6Fは制御ユニット9に送信する。
【0053】
図9は撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
図9(a)はヘッド部6Gおよび基板Sを(+X)側から(-X)方向に見た模式図であり、破線で囲まれた領域FVが撮像部6Fの撮像視野を表している。このように、撮像部6Fの撮像視野FVは、ヘッド部6Gのうちミラー部材62a~62cを含むように設定されている。
【0054】
図9(b)は撮像視野FV内の各ミラー部材62a~62cに映る基板Sの像を模式的に示している。
図9(b)に示すように、第1のミラー部材62aには、基板Sの周縁部SsのうちA面SaとB面Sbとの像が映る。また、第2のミラー部材62bには、基板Sの周縁部SsのうちB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映る。また、第3のミラー部材62cには、基板Sの周縁部SsのうちD面SdとE面Seとの像が映る。撮像部6Fはこれらの像を一括して同時に撮像し1つの画像を取得する。1つの画像に含まれる各面Sa~Seは同時に撮像されたものであり、基板Sにおける周方向の位置が実質的に互いに同一であるという関係にある。
【0055】
図9(c)は撮像により実際に得られる画像を模式化したものである。上記した構成の撮像機構6では、光源6Eからの照明光を拡散面610で拡散させることで基板Sを照明し、基板Sからの反射光の一部を受光することで撮像を行っている。このため、照明光量および受光光量はいずれも十分とは言えない。このような状況で良好に撮像を行うためにカメラの感度を高くする必要があり、その結果、ヘッド部6Gの詳細な構造は、いわゆる白飛びによって画像にはほとんど反映されなくなる。
【0056】
そのため、
図9(c)に示すように、実際に得られる画像Imは、切欠部611に相当しその内部に非合焦状態で映る基板Sの側面の像を含む暗い領域Mdと、上方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する上面画像領域Maと、側方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する側面画像領域Mbと、下方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する下面画像領域Mcとを含んだものとなる。
【0057】
これらの各領域を含む画像Imを解析することで、周方向における基板Sの周縁部の形状やエッチング状況などを示す情報を取得することができる。そして、これらの情報から、スピンチャック21に載置された基板Sの回転軸AXに対する偏心量、基板Sの反り量やベベルエッチング結果(エッチング幅)などを検査することができる。
【0058】
そこで、上記のように構成された撮像機構6を装備する基板処理装置1では、制御ユニット9が、装置各部を制御し、(A)ベベルエッチング処理前の基板検査、(B)アライメント処理、(C)アライメント処理後のベベルエッチング処理および(D)ベベルエッチング処理後の基板検査を実行する。この制御ユニット9は、
図5に示すように、各種演算処理を行う演算処理部91、基本プログラムや画像データを記憶する記憶部92および各種情報を表示するとともに操作者からの入力を受け付ける入力表示部93を有している。
【0059】
そして、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順にしたがって主制御部としての演算処理部(CPU)91が演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を以下のように制御する。すなわち、演算処理部91は、
図5に示すように、ヘッド部6Gの位置決めを行う位置決め制御部911、全周縁画像を取得する全周縁画像取得部912、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの偏心量を導出する偏心量導出部913、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの反り量を導出する反り量導出部914、ベベルエッチング処理後の全周縁画像からエッチング幅を導出するエッチング幅導出部915、および全周縁画像を画像処理して得られる残渣強調画像から残渣を分析する残渣分析部916として機能する。
【0060】
なお、
図5中の符号7は上記偏心量だけ基板Sを移動させて回転軸AXに対する基板Sの偏心を補正する偏心補正機構である。偏心補正機構については、従来周知のものを使用することができるため、ここでは偏心補正機構7の詳しい構成については説明を省略する。
【0061】
ここまで説明してきたように、この実施形態では、基板Sの周縁部Ssがヘッド部6Gの切欠部611に挿入された状態で、撮像部6Fが周縁部Ssを撮像する。基板Sは一定速度で回転しており、基板Sが1周する間、撮像部6Fが定期的に撮像を行い、各時刻で撮像された画像を合成することによって、基板Sの全周分に対応する周縁部Ssの画像、つまり全周縁画像を取得することが可能である。
【0062】
撮像される画像Imには、周縁部Ssを上方から見た画像に対応する上面画像領域Ma、側方から見た画像に対応する側面画像領域Mb、下方から見た画像に対応する下面画像領域Mcを含んでいる。したがって、全周縁画像は、基板Sの全周分について、周縁部Ssを上方、側方および下方からそれぞれ見たときの基板Sの状態を表す情報を含んでいる。この全周縁画像を適宜の画像処理技術を用いて解析することで、周縁部Ssの外観検査を行うことができる。
【0063】
ところで、上記した画像Imの撮像およびそれに基づく画像処理においては、1回の撮像で同時に取得された上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcを用いて観察を行うこととしている。ただし、現実的には、場合によって以下の2つの問題が生じ得る。
【0064】
第1には、上記した各画像領域の画像品質の問題である。基板Sの周縁部Ssの表面状態は均一ではなく、単一の撮像条件ではそれぞれの面を良好な画像品質で撮像できないことがある。特に、基板Sの上面、側面および下面の間では、形成されている被膜の種類や厚さ、加工状態等が互いに異なるため、表面状態が大きく異なっている場合がある。このことに起因して、それぞれの面を撮像するのに適した撮像条件は一律ではない。例えば基板Sの上面に反射率の低い被膜が形成されている場合、それを良好に撮像するべく露出を調整すると、側面側や下面側で露出過剰となり画像に白飛びが生じることがある。
【0065】
逆に、反射率の高い面に合わせて露出を調整すると、反射率の低い面の画像の明るさが不足し、画像ノイズの影響を受けやすく、また観察のための十分なコントラストが得られない場合が生じる。このように、単一の撮像条件では各面をそれぞれ良好な画像品質で撮像することが難しいことがある。なお露出の調整については、例えば照明光量や露光時間の増減により行うことが可能である。
【0066】
第2には、データ容量の問題である。画像Imには観察の対象となる上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mc以外の領域が含まれている。このような不使用の領域については、演算処理部91が画像処理を行うことによって除去することが可能である。しかしながら、撮像部6Fから送出される画像信号はこのような不使用領域のデータを含んだものとなっており、これが記憶部92の記憶容量や機器間の通信回線の容量を圧迫することがある。
【0067】
例えば全周縁画像を取得するという目的においては、基板Sを回転させながら短時間に多数回の撮像を行う必要があり、一時的に大量の画像データが生成されることになる。特に、この実施形態の基板処理システム200(
図1)のように処理ユニット1を複数備えている場合において、それらを単一の、あるいは処理ユニット1の配設数より少数の制御ユニット9によって制御している場合には、各処理ユニット1の撮像部6Fがそれぞれ個別のタイミングで送出する画像データが通信回線や記憶資源を大きく占有することがあり得る。このことがシステム全体の動作に支障を及ぼすことが懸念される。
【0068】
この実施形態では、周期的に撮像を行う撮像部6Fが、予め設定された複数の撮像条件を循環的に撮像ごとに切り替えながら撮像を行うことで第1の問題に対応している。例えば特許文献1に記載の技術は、予め撮像装置の記憶部に複数の撮像条件を登録しておき、撮像ごとにそれらを循環的に呼び出して適用し撮像を行うというものである。このような機能はシーケンシャルシャッタ機能またはシーケンサー機能等と称されている。
【0069】
また、第2の問題への対応としては、撮像部6Fの撮像視野FV(
図8(a))のうち、観察に供される領域のみを画像データ化して撮像部6Fから送出するようにする。不使用領域の画像データを送出しないことにより、通信回線や記憶資源を圧迫するのを回避することが可能である。撮像視野のうちの一部を関心領域(Region of Interest;ROI)として設定し、該関心領域内の像のみを画像データ化して出力する機能は、ROI機能、ROIモード等と称されているが、以下では「ROI設定機能」と称することとする。
【0070】
この機能を用いれば、単にデータ量を削減することができるというだけでなく、例えば必要な領域とそうでない領域とで画質レベルを異ならせたり、不要な領域の走査を省くことでフレームレートを通常より高くしたりすることが可能になる。
【0071】
上記したシーケンシャルシャッタ機能とROI設定機能とを兼備した撮像装置も産業用カメラとして市販されており、本実施形態でも、このような機能を有する撮像装置を撮像部6Fとして使用することができる。
【0072】
図10はこの実施形態における撮像部の構成例を示す図である。撮像部6Fは、上記したシーケンシャルシャッタ機能およびROI設定機能を有する撮像装置として市販されているカメラであり、主たる構成として撮像素子6Fa、撮像光学系6Fb、制御部6Fc、記憶部6Fdおよびインターフェース6Feなどを備えている。撮像素子6Faは例えばCCDセンサーまたはCMOSセンサーであり、その受光面の各位置に入射する光量に応じた画像信号を出力する。撮像光学系6Fbは、入射する光を受光面に収束させて撮像視野FV内の光学像を結像させる。
【0073】
制御部6Fcは撮像部6Fの各部を制御し、記憶部6Fdは各種情報を記憶する。この情報には、撮像により生成された画像データの他、フレームレートや感度に関する情報、上記した撮像条件の設定および関心領域(ROI)の設定に関する情報等が含まれる。これらの各部が協働することで、次に説明する本実施形態の撮像動作が実現される。インターフェース6Feは通信路Cを介して制御ユニット9と接続され、制御ユニット9から撮像に関する制御指令を受け取り、また撮像により取得された画像データを制御ユニット9へ送信する。
【0074】
なお、この撮像部6Fが有する、予め設定した複数の撮像条件を切り替えながら撮像するシーケンシャルシャッタ機能、および、撮像視野のうち一部の関心領域のみをデータ化して出力するROI設定機能については、上記の通り既に実用化されたものであるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0075】
この実施形態の撮像部6Fは、撮像視野FVに含まれる上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcをそれぞれ最適な撮像条件で撮像する一方、これら以外の領域についてはデータ化しないことで、上記した2つの問題を共に解消する。具体的には、上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcのそれぞれに最適化された3種類の撮像条件を予め定めておき、撮像部6Fはこれらの3種類の撮像条件を撮像ごとに切り替えながら周期的に撮像を行う。
【0076】
ここでは、上面画像領域Maの撮像に適した撮像条件(以下、「撮像条件(1)」という)と、側面画像領域Mbの撮像に適した撮像条件(以下、「撮像条件(2)」という)と、下面画像領域Mcの撮像に適した撮像条件(以下、「撮像条件(3)」という)との3種類が用いられるものとする。
【0077】
なお、この実施形態では、露光時間の長さと関心領域の範囲とが撮像条件を定める可変パラメーターとして設定されることとするが、使用パラメーターはこれに限定されない。例えば、フレームレート、撮像素子6Faの分解能や感度、撮像光学系6Fbの絞り値、照明光量等、画像品質に影響を与える各種の因子を可変パラメーターとして使用することが可能である。また、以下で挙げる具体的な数値等は単なる説明用の設定例であり、設定値はこれらの事例に限定されず目的に応じて適宜変更可能である。
【0078】
図11は撮像条件の例を示す図である。撮像条件(1)は、基板Sの上面を上方向から下向きに見た状態での撮像における画像品質を最適化するための撮像条件である。この撮像条件(1)で撮像を行うことで、基板周縁部Ssのうち上方から見えるA面SaおよびB面Sbを観察対象とするのに好適な画像品質を有する画像を取得することができる。この目的のために、露光時間は100μsとされる。また撮像視野FV中の関心領域(ROI)については、上面画像領域Maを確実にかつ十分な面積で含み、しかも観察に必要のない領域をできるだけ除外した領域Raに設定される。
【0079】
また、撮像条件(2)は、基板Sの側面を側方から見た状態での撮像における画像品質を最適化するための撮像条件である。この撮像条件(2)で撮像を行うことで、基板周縁部Ssのうち側方から見えるB面Sb、C面ScおよびD面Sdを観察対象とするのに好適な画像品質を有する画像を取得することができる。この目的のために、露光時間は50μsとされる。また撮像視野FV中の関心領域(ROI)については、側面画像領域Mbを確実にかつ十分な面積で含み、しかも観察に必要のない領域をできるだけ除外した領域Rbに設定される。
【0080】
また、撮像条件(3)は、基板Sの下面を下方から上向きに見た状態での撮像における画像品質を最適化するための撮像条件である。この撮像条件(3)で撮像を行うことで、基板周縁部Ssのうち下方から見えるD面SdおよびE面Seを観察対象とするのに好適な画像品質を有する画像を取得することができる。この目的のために、露光時間は150μsとされる。また撮像視野FV中の関心領域(ROI)については、下面画像領域Mcを確実にかつ十分な面積で含み、しかも観察に必要のない領域をできるだけ除外した領域Rcに設定される。
【0081】
図12は撮像部が実行する撮像動作を示すフローチャートである。この動作は、制御ユニット9からの制御指令に応じて撮像機構6、特に撮像部6Fが作動することにより実行される。なお、撮像部6Fの作動については、制御部6Fcが記憶部6Fdに予め記憶された制御プログラムを実行することにより実現可能であるが、制御ユニット9の演算処理部91が記憶部92に記憶された制御プログラムに基づき撮像部6Fを直接制御する態様であってもよい。
【0082】
最初に、周期的撮像におけるフレームレートおよび撮像条件の設定が行われる(ステップS101)。この実施形態では、基板周縁部Ssを周期的に撮像するのに際して、フレームレートは最初に設定された値が維持される。すなわち、撮像ごとのフレームレートの変更は行われない。また、撮像条件としては、撮像条件(1)~撮像条件(N)のN種類(Nは2以上の自然数)が登録可能であるが、上記事例ではN=3であり、各撮像条件の内容は上記した通りである。これらの設定に関する情報は、制御ユニット9から通信路Cを介して撮像部6Fのインターフェース6Feに与えられ、記憶部6Fdに記憶される。こうして撮像条件が撮像部6Fに登録される。以後は、制御部6Fcが記憶部6Fdからこれらの情報を読み出しつつ、以下のように撮像素子6Fa等を制御して撮像を行う。
【0083】
最初に内部パラメーターiが初期値1に設定される(ステップS102)。そして、予め登録されている撮像条件のうち、内部パラメーターiにより特定される撮像条件(i)が選択され(ステップS103)、当該撮像条件を適用した撮像(露光)が実行される(ステップS104)。
【0084】
制御部6Fcは、露光された撮像視野FVのうちの関心領域について画像をデータ化し、生成された画像データを、インターフェース6Feを介し制御ユニット9へ出力する(ステップS105)。制御ユニット9が受信した画像データは記憶部92に記憶保存される。第1回目の処理では内部パラメーターiが1であるため、撮像には撮像条件(1)が適用され、画像データは上面画像領域Maに対応して設定された関心領域Raに関するもののみが出力される。したがって、上面画像領域Maを良好な画像品質で撮像することができ、しかも出力されるデータ量は少なくて済む。
【0085】
こうして第1回目の撮像を行った後、内部パラメーターiを1つインクリメントし(ステップS106)、条件式「i>N」が成立するまで(ステップS107)、ステップS103~S106を繰り返す。これにより、第2回目の撮像では撮像条件(2)が適用され、側面画像領域Mbに対応して設定された関心領域Rbの画像データが出力される。同様に、第3回目の撮像では撮像条件(3)が適用され、下面画像領域Mcに対応して設定された関心領域Rcの画像データが出力される。さらに、第4回目以降の撮像では、撮像条件(1)~(3)が循環的に適用され、関心領域Ra,Rb,Rc,Ra,…の画像データが順番に取得される。
【0086】
基板Sを所定速度で回転させながら上記の撮像動作が繰り返される。基板Sの少なくとも1周分につき画像が取得されると、撮像終了と判断することができる(ステップS108)。このようにして、撮像条件(1)で撮像された関心領域Raの画像データ、撮像条件(2)で撮像された関心領域Rbの画像データ、撮像条件(3)で撮像された関心領域Rcの画像データが、それぞれ基板Sの1周分につき取得される。これらの画像データを用いて、基板周縁部Ssを上方、側方および下方から見た全周縁画像をそれぞれ作成することができる。
【0087】
ここで、後の説明のために、ステップS102~S108の処理ループを「撮像ループ」と定義し、最初に実行される撮像ループを「撮像ループ1」または単に「ループ1」ということとする。また2回目以降の撮像ループについても、「撮像ループ2(またはループ2)」、「撮像ループ3(またはループ3)」、…ということとする。
【0088】
図13は撮像結果から全周縁画像を作成する処理を示す概念図である。上記した撮像動作により、時刻T1において撮像条件(1)を適用して関心領域Raを撮像することで画像Ra1が取得されると考える。同様に、時刻T2では撮像条件(2)を適用して関心領域Rbを撮像した画像Rb2が、時刻T3では撮像条件(3)を適用して関心領域Rcを撮像した画像Rc3が取得される。時刻T4では、再び撮像条件(1)を適用して関心領域Raが撮像され、画像Ra4が取得される。時刻T5以降についても同様に考えることができる。
【0089】
基板周縁部Ssを上方から見た全周縁画像は、上面画像領域Maを関心領域Raとして撮像条件(1)で撮像された画像Ra1,Ra4,Ra7,…を基板Sの周方向に対応する方向に並べて合成することで作成可能である。また、基板周縁部Ssを側方から見た全周縁画像は、側面画像領域Mbを関心領域Rbとして撮像条件(2)で撮像された画像Rb2,Rb5,Rb8,…を基板Sの周方向に対応する方向に並べて合成することで作成可能である。また、基板周縁部Ssを下方から見た全周縁画像は、下面画像領域Mcを関心領域Rcとして撮像条件(3)で撮像された画像Rc3,Rc6,Rc9,…を基板Sの周方向に対応する方向に並べて合成することで作成可能である。
【0090】
図14は全周縁画像の作成に適用可能な画像処理を示すフローチャートである。この処理は、制御ユニット9の演算処理部91が記憶部92に予め記憶された制御プログラムを実行し、撮像部6Fにより取得され記憶部92に記憶された画像データに対し所定の処理を実行することにより実現される。
【0091】
最初に内部パラメーターjが初期値1に設定される(ステップS201)。そして、記憶部92にデータが記憶された画像の中から、撮像条件(j)で撮像された画像が抽出され(ステップS202)、基板1周分の画像をつなぎ合わせる合成処理を実行することで(ステップS203)、全周縁画像が作成される。作成された全周縁画像の画像データは記憶部92に記憶保存される。内部パラメーターjを1つずつ増加させながら(ステップS204)、この処理をN回繰り返すことで(ステップS205)、必要な全ての全周縁画像が作成される。
【0092】
例えば撮像条件(1)で撮像された画像Ra1,Ra4,Ra7,…を合成することで、基板周縁部Ssを上方から見たときの全周縁画像を作成することができる。撮像条件(2)、撮像条件(3)でそれぞれ撮像された画像についても同様に考えることが可能である。
【0093】
次に、上記のようにして基板Sの周縁部Ssを撮像し全周縁画像を作成するに当たり、考慮すべき他の問題について説明する。上記処理では、3か所の関心領域Ra,Rb,Rcを順番に撮像しているため、1つの関心領域については3回の撮像ごとに1つの画像が得られることとなる。全周縁画像を作成するためには、基板Sの1周分について、画像情報を欠落させることなく周縁部Ssの画像を取得する必要があり、これを可能にするために必要な撮像タイミングと基板の回転速度との関係を考える。
【0094】
図15は撮像タイミングと基板の回転速度との好ましい関係を模式的に示す図である。
図15に示すように、適宜に定めた基準位置からの基板Sの回転位相角θを横軸、時刻Tを縦軸として撮像タイミングを考える。内部パラメーターiを1,2,3,…と変化させながら周期的に撮像を行うとき、撮像が行われる時刻T1,T2,T3,…が到来する度に、画像Ra1,Rb2,Rc3,…が順次取得される。この間、基板Sは回転しているため、回転位相角θも順次変化してゆく。なお、ここでは説明の便宜上、関心領域Ra,Rb,Rcの画像が全て同サイズとして表されているが、
図11に示した通り、これらの画像のサイズは必ずしも同じではない。
【0095】
関心領域Raに関する全周縁画像は、i=1、つまり撮像条件(1)で撮像された画像Ra1,Ra4,Ra7,…をつなぎ合わせることで作成される。このとき基板Sに関する情報の欠落を防止するためには、これらの画像Ra1,Ra4,Ra7の撮像範囲が基板S上でオーバーラップを有することが必要である。
【0096】
ここで、
・1回に撮像される関心領域の幅(撮像幅)を符号W[mm]、
・撮像のフレームレートを符号R[fps=frames per second]、
・基板Sの直径を符号D[mm]、
・基板Sの回転数を符号n[rpm=revolutions per minute]
=n/60[rps=revolutions per second]
により表すとする。
【0097】
基板Sが1周する間の撮像回数は(60R/n)と表せるから、N種類の撮像条件を循環的に切り替える場合、同一撮像条件での1周当たりの撮像回数は60R/(Nn)と表すことができる。例えばN=3の場合、同一撮像条件での1周当たりの撮像回数は20R/nにより表せる。
【0098】
一方、基板Sの周長は円周率πを用いてπDにより表せるから、撮像条件が同じで隣り合う画像間が重なり合うための条件は、
W>πD/{60R/(Nn)}=πDNn/(60R) … (式1)
により表すことができる。例えばN=3の場合には、(式1)を次式:
W>πDn/(20R) … (式2)
と書き直すことができる。この条件を満たすように各値を設定すれば、互いにオーバーラップ部分を有する複数の画像を取得することができる。オーバーラップ部分を有しつつ撮像範囲が異なる画像同士をつなぎ合わせる技術は公知であり、そのような公知技術を利用して、欠落のない全周縁画像を形成することができる。
【0099】
なお、基板Sの直径D、回転数nは基板処理の仕様によって定まるものであり、また撮像条件の数Nは観察の目的に応じて設定されるので、これらを任意に選ぶことはできないものと考えられる。したがって、現実的には撮像幅WとフレームレートRとの組み合わせを選ぶことで上記条件の充足を図ることができる。
【0100】
一例として、基板Sの直径D=300[mm]、回転数n=20[rpm]、撮像条件の数N=3である場合には、(式1)を次式:
W>300π/R … (式3)
と書き直すことができる。この場合、例えばW=3[mm]、R=360[fps]とすることで上記条件は満たされる。またこのときの撮像周期(1/R)は約2.8msであるから、上記各撮像条件で規定した露光時間50~150μsを充分に確保することが可能である。
【0101】
因みに、単一の撮像条件で3つの関心領域を同時に撮像する、つまりN=1の場合には、撮像幅Wが同じ(3mm)であればフレームレートRは120fpsでよいこととなる。言い換えれば、本実施形態を実施するためには、単一条件での撮像に比べてより高いフレームレートが必要とされる。一般的な撮像装置が実現可能なフレームレートには当然に上限があるが、ROI設定機能を有する撮像装置であれば、撮像視野FVの全体ではなくそのうち関心領域(ROI)のみをデータ化することで、撮像視野FV全体をデータ化する場合よりも高いフレームレートを実現することが可能である。
【0102】
例えば撮像素子6FaがCCDセンサーまたはCMOSセンサーを用いたものである場合、光電変換された信号を関心領域のみについて読み出せばよいから、通常より高いフレームレートを実現可能である。したがって、撮像視野FV全体をフレームレート120fpsで撮像可能な撮像装置であれば、例えば撮像ごとの関心領域の面積が撮像視野FVの(1/3)よりも小さくなるようにすることで、フレームレート360fpsでの撮像を実現可能である。
【0103】
また、
図15下図に示すように、この実施形態の撮像動作では、関心領域Ra,Rb,Rcを同時に撮像していないため、同じ撮像ループ内で撮像された画像間では基板Sの回転角度にしてΔθ[rad]の位置ずれが発生する。Δθについては次式:
Δθ=2πn/(60R)=πn/(30R) … (式4)
で表すことができる。異なる撮像条件で作成された全周縁画像同士で位置を対比して観察を行う場合には、この位置ずれ分を補正する必要がある。
【0104】
以上のように、この実施形態では、3つのミラー部材62a~62cを有するヘッド部6Gにより、基板Sの周縁部Ssを異なる方向から見たときの像、より具体的には上方から見た像に対応する上面画像領域Ma、側方から見た像に対応する側面画像領域Mb、および、下方から見た像に対応する下面画像領域Mcが、共に撮像部6Fの撮像視野FVに現れるようにしている。
【0105】
そして、撮像部6Fは、予め設定登録された複数の撮像条件を循環的に切り替えながら周期的に撮像を行い、撮像条件で設定された関心領域の画像データのみを出力する。一方、画像データを受け取った演算処理部91は、こうして取得された複数の画像のうち同じ撮像条件で撮像されたものを抽出して画像処理を行う。
【0106】
このように、複数の方向から見た基板Sの像を撮像視野FVへ導くための構成と、複数の撮像条件を循環的に切り替えながら撮像する構成と、撮像視野FVのうち関心領域の画像データのみを出力する構成と、同じ撮像条件で撮像されたものを抽出して画像処理を行う構成とを組み合わせたことにより、本実施形態では、次のような効果を得ることができる。
【0107】
第1に、基板Sを異なる方向から見た像をそれぞれに適した撮像条件で撮像することができるので、いずれの像についても良好な画像品質の画像を取得することができる。そして、これに付随する第2の効果として、複数の関心領域のそれぞれについて、撮像条件が最適化された状態の画像を基板Sが1周する間に全て取得することが可能である。
【0108】
また第3に、撮像視野FVのうち必要な領域のみをデータ化することで、撮像の高速化が可能であり、より高いフレームレートを実現することができる。第4に、必要な領域の画像データのみを出力することで、データ容量を削減しデータ通信路および記憶資源への圧迫を軽減することができる。特に、基板Sの全周分の画像を取得してから処理を行う場合や、複数の処理ユニット1から出力される画像データを処理する場合において、その効果は顕著なものとなる。
【0109】
なお、上記実施形態では、撮像装置のROI設定機能を利用して撮像視野FVのうち一部領域のみをデータ化しているが、フレームレートおよびデータ容量に余裕がある場合には、ROI設定機能によらず、撮像視野FV全体を撮像した画像から事後的に関心領域Ra,Rb,Rcを切り出すようにすることも可能である。
【0110】
この場合の撮像動作は、
図12に示す処理を、常に撮像視野FV全体を関心領域とするように変更すればよい。これにより、関心領域は一定であるが、他の撮像条件、例えば露光時間が撮像ごとに変化する状態で撮像が行われる。これにより、撮像視野FV全体に対し露光時間を互いに異ならせた複数の画像が取得されることになる。一方、演算処理部91での画像処理は以下のようにすることができる。
【0111】
図16は画像処理の変形例を示すフローチャートである。内部パラメーターjを用い、撮像条件(j)で撮像された画像を取得する点は(ステップS301,S302)、
図14に示す処理と同じである。このときの画像には、上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcが含まれるが、良好な画像品質で撮像されているのはそのうちのいずれかであり、他の画像領域の画像品質は必ずしも保証されない。そこで、撮像条件(j)で良好な画像品質が得られる領域が、関心領域R(j)として切り出される(ステップS303)。
【0112】
こうして切り出された関心領域R(j)の画像内容は、撮像段階で当該関心領域のみをデータ化した場合の画像内容と実質的に同じである。したがって、同じ条件で撮像された画像から切り出された関心領域を合成することで(ステップS304)、全周縁画像を作成することができる。パラメーターjをインクリメントしながら処理を繰り返す点も(ステップS305,S306)も、
図14の処理と同様である。
【0113】
以上説明したように、上記実施形態では、処理ユニット1が本発明の「撮像装置」、「基板観察装置」、「基板処理装置」としての機能を有している。また、回転機構2、処理機構4、演算処理部91がそれぞれ本発明の「回転機構」、「処理部」、「画像処理部」として機能している。また、撮像機構6の撮像部6Fおよびヘッド部6Gがそれぞれ本発明の「撮像部」および「導光部」として機能しており、撮像機構6と演算処理部91とが協働して、本発明の「撮像装置」および「撮像機構」として機能することとなる。また、撮像部6Fに設けられた記憶部6Fdが、本発明の「記憶部」として機能している。
【0114】
また、この実施形態では、基板Sの周縁部Ssを上方、側方および下方のそれぞれから見た像を観察対象としており、これらの方向の一を本発明の「第1方向」、他の方向の一を本発明の「第2方向」と解することができる。同様に、これらの像の一を本発明の「第1の像」、他の像の一を本発明の「第2の像」と解することができ、それらを個別に表した画像が本発明の「第1画像」および「第2画像」に相当することとなる。さらに、複数の撮像条件(1)~(N)の一を本発明の「第1条件」、他の一を本発明の「第2条件」と解することができる。
【0115】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば実施形態では、基板Sの周縁部Ssを上方、側方および下方の三方向からそれぞれ見た像を個別に含む関心領域を観察対象として、それらに適合させた3種類の撮像条件を設定している。しかしながら、関心領域の数はこれに限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定可能である。また、関心領域の数と撮像条件の設定数とが同じでなくてもよい。例えば複数の関心領域の間で同一の撮像条件を適用可能な状況であれば、1回の撮像でそれら複数の関心領域の画像を取得することも可能である。
【0116】
またこれとは逆に、1つの関心領域が互いに異なる複数の撮像条件で撮像されてもよい。例えば、1つの関心領域を露光時間が異なる複数の撮像条件で撮像することで、同じ領域について明るさの異なる画像を取得することも可能である。例えば基板Sの表面状態のばらつきが大きくその明るさが位置により変動するような場合でも、露光時間を異ならせて撮像した画像を取得しておくことで、効率よく観察を行うことが可能となる。
【0117】
上記実施形態に則して具体的な例を示すと、例えば上面画像領域Maの撮像に対して露光時間の異なる2種類の撮像条件を設定し、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcの撮像に対してそれぞれ1種類の撮像条件を設定したとすれば、合計4種類の撮像条件を循環的に切り替えながら撮像が行われることとなる。そして、上面画像領域Maについては、異なる撮像条件で撮像され明るさ等が異なる2つの全周縁画像を作成することが可能になる。
【0118】
また例えば、同一の関心領域を同一の撮像条件で複数回撮像することで、実質的な分解能の向上および画像ノイズの低減を図ることもできる。なお、ここでいう「同一の関心領域」は撮像時の設定領域を指しており、必ずしも実際に撮像される範囲が同一であることを意味しない。すなわち、回転する基板Sを異なる時刻に複数回撮像する以上、撮像される基板S上の領域の範囲は少しずつ異なる。しかしながら、上記の通り、基板Sの回転数と撮像周期とに基づき、この位置ずれ量を把握することができるから、必要に応じて補正を行うことが可能である。
【0119】
このように、撮像視野FV内にいくつの関心領域を設定するか、またそれぞれに対していくつの撮像条件を設定するかは任意であり、また撮像条件としてどの因子を変化させるかについても任意である。
【0120】
また、上記実施形態では、撮像部6Fの観察レンズ系は、物体側テレセントリックレンズで構成しているが、撮像部6Fの観察レンズ系の構成はこれに限られるものではない。撮像部6Fの観察レンズ系は、他のレンズで構成されてもよい。
【0121】
また、拡散照明部61の拡散面610(61a~61c)の構成は限定されない。例えば、拡散照明部61または保持部63の少なくとも一部が金属材料から構成される場合、拡散面61a~61cは、金属材料の表面にショットブラスト加工が施されたものでもよい。
【0122】
また、ミラー部材62a~62cについても、Si(シリコン)に限定されるものではない。すなわち、処理液に対する耐薬性および処理温度に対する耐熱性を有する材料であれば、他の材料を用いてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有する材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。また、ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性が要求されない環境下で使用される場合、構成材料は限定されない。ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性を有しない材料から構成されてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有しない材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、基板Sの周縁部Ssをベベルエッチングする基板処理装置1に本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、基板の周縁部を観察するために撮像を行う技術全般に適用可能である。例えば、撮像された画像に基づいて基板を検査する検査技術などについても、本発明を適用可能である。また、本発明に係る撮像装置に相当する撮像機構6と演算処理部91とは、例えば、塗布膜が形成された基板Sの周縁部に塗布膜の除去液を供給して、基板Sの周縁部の塗布膜を除去する基板処理装置にも適用可能である。
【0124】
また、上記実施形態の処理ユニット1は、基板を処理するための処理部と、基板の周縁部を撮像するための撮像部とを備えるものであるが、基板に対する処理を実行する装置と、観察のために基板を撮像する装置とが別体として構成されている場合にも、後者における画像処理として本発明を適用することが可能である。
【0125】
以上、特定の実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る撮像装置、これと同一構成の撮像機構を有する基板観察装置および基板処理装置、ならびに撮像装置を用いた撮像方法において、撮像部は、撮像視野内の一部である関心領域に対応する画像データを出力し、かつ関心領域を変更設定可能なものであってもよい。またこの場合において、撮像視野中における関心領域の範囲に関する設定が撮像条件に含まれてもよい。
【0126】
このような構成によれば、画像に対応するデータの容量を小さくして、データを送信するための通信路および記憶資源への負担を軽減することが可能である。また、画像をデータ化するのに要する時間を短縮することで撮像周期をより短くして、より高いフレームレートで撮像を行うことが可能となる。
【0127】
また例えば、撮像部は、複数の撮像条件を記憶する記憶部を有し、記憶部から読み出した撮像条件を適用して撮像を実行するように構成されてもよい。このような構成によれば、撮像部が自律的に撮像条件を変更しながら周期的に撮像を行うことが可能であり、撮像の度に撮像条件を外部から指定する必要がなくなる。
【0128】
また例えば、撮像部は、基板が1回転する間に、複数の撮像条件の各々につき、それぞれ複数回の撮像を実行するように構成されてもよい。このような構成によれば、基板の周縁部を、その周方向に位置を変えて複数箇所で撮像することができる。また、このような撮像を行うことで、画像処理部は、互いに異なる時刻に撮像された複数の第1画像を合成して合成画像を作成することが可能になる。
【0129】
この場合、撮像部は、撮像時刻が最も近い2つの第1画像同士が互いに部分的にオーバーラップするように撮像することが好ましい。このような構成によれば、基板の周縁部をその全周分につき欠落なくカバーした合成画像を作成することができる。
【0130】
また、複数の撮像条件としては、例えば露光時間を互いに異ならせることができる。基板の種類は加工状態等により表面の光学的状態は様々であり、単一の露光時間での撮像では全ての方向について、観察に適した明るさおよび良好な画像品質を得ることが難しい場合がある。露光時間を異ならせて撮像することで、この問題を解消することができる。
【0131】
また例えば、第1の像は基板の主面の像であり、第2の像は基板の側面の像であってもよい。この発明では、基板を複数方向から見た像を良好な画像品質で取得可能であるから、表面状態が大きく異なる基板の主面と側面とを効率よく観察することができる。例えば基板のベベル部の処理状態を検査する目的では、主面側および側面側の両方を観察する必要があり、本発明はこのような用途に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
この発明は、基板、特に半導体ウエハなどの円形基板の周縁部を撮像し観察する用途に適用することが可能であり、特に基板の周方向を複数の方向から観察する必要がある用途に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 処理ユニット(撮像装置、基板観察装置、基板処理装置)
2 回転機構
4 処理機構(処理部)
6 撮像機構
6E 光源
6F 撮像部(撮像部)
6Fd 記憶部
6G ヘッド部(導光部)
91 演算処理部(画像処理部)
S 基板
Ss 周縁部