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特開2024-158619生活習慣病の予防または治療のための食事習慣改善のための支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158619
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】生活習慣病の予防または治療のための食事習慣改善のための支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20241031BHJP
【FI】
G16H20/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073971
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】506111240
【氏名又は名称】学校法人 愛知医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 純生
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】ユーザの嗜好性を加味した食事習慣支援技術を提供する。
【解決手段】ここで開示される支援システム1は、ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報を含む基礎情報と、ユーザの食事情報とが記憶された記憶部23と、上記食事情報に基づき、栄養バランスの偏りを判定する判定部24と、少なくとも上記基礎情報と、上記判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づき、ユーザが摂取を控えるべき食物である改善対象食物を抽出する第1抽出部31と、上記改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する第2抽出部32と、ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する取得部40と、ユーザの嗜好性に基づいて上記摂取推奨食物を使用した食事レシピを提示する提示部50とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの食事習慣を改善するための支援システムであって、
前記ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報を含む基礎情報と、前記ユーザの食事情報とが記憶された記憶部と、
前記食事情報に基づき、栄養バランスの偏りを判定する判定部と、
少なくとも前記基礎情報と、前記判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づき、前記ユーザが摂取を控えるべき食物である改善対象食物を抽出する第1抽出部と、
前記改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する第2抽出部と、
前記ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する取得部と、
前記ユーザの嗜好性に基づいて前記摂取推奨食物を使用した食事レシピを提示する提示部と
を備える、支援システム。
【請求項2】
前記提示部が、2以上の前記摂取推奨食物を前記ユーザに提示するように構成されており、
前記取得部が、前記ユーザが前記提示された摂取推奨食物の中から1または複数選択した情報を前記ユーザの嗜好性の情報として取得するよう構成されている、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記提示部が、さらに、調理方法及び/又は味付けを前記ユーザに提示するように構成されており、
前記取得部が、前記ユーザが前記提示された調理方法及び/又は味付けの中から1または複数選択した情報を前記ユーザの嗜好性の情報として取得するように構成されている、請求項2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記第1抽出部が、前記リスク因子に関する情報及び/又は前記判定された栄養バランスの偏りの情報に基づいて、推奨される調理方法及び/又は味付けを抽出するように構成されており、
前記ユーザに提示される前記調理方法及び/又は味付けが、前記抽出された推奨される調理方法及び/又は味付けである、請求項3に記載の支援システム。
【請求項5】
前記判定部が、前記栄養バランスの偏りを、前記食事情報から算出される総摂取カロリーに占める炭水化物のカロリーの割合、脂質のカロリーの割合、およびタンパク質のカロリーの割合からなる群より選ばれた少なくとも一つに基づいて判定するように構成されている、請求項1に記載の支援システム。
【請求項6】
前記リスク因子として、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧症、メタボリック症候群、慢性腎臓病および脂肪肝からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む、請求項1に記載の支援システム。
【請求項7】
前記基礎情報が、前記ユーザの体重およびユーザの身体活動量の情報を含んでおり、
前記判定部が、前記ユーザの前記食事情報に基づいて算出される前記ユーザの所定の単位期間における摂取カロリーが、前記ユーザの体重および前記ユーザの身体活動量に基づく基準摂取カロリーの範囲よりも過剰若しくは不足か否かを判定するよう構成されており、
前記提示部が、当該判定結果に基づいて前記ユーザに食事指導に関する情報を提示するよう構成されている、請求項1に記載の支援システム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1~7のいずれか一項に記載の支援システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生活習慣病の予防または治療のための食事習慣改善のための支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病(非感染性疾患ともいう)は、発症に生活習慣が大きく関連する疾患であり、その予防または治療に食事療法が重要な役割を果たす。生活習慣病の予防または治療のための食事指導は、例えば、対象者の食事調査の記載や、対面による聴取などの情報を基づいて行われる。例えば、特許文献1には、対象者(ユーザ)に適した栄養指導を提供することにより、目標達成に向けてのユーザの取り組みの継続性を高めることが可能な栄養指導システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-009446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生活習慣の改善は個別化指導が望ましい。個人によって、改善のポイント、取り組みへの意欲等が異なるからである。例えば、食事指導においては、対象者の食材への好みや、味付けへの好み等の嗜好性を加味した個別化指導が望まれている。対象者の嗜好性を加味することで、対象者は継続して食事指導に取り組み易くなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される技術の一態様は、ユーザの食事習慣を改善するための支援システムである。ここで開示される支援システムの一態様では、支援システムは、上記ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報を含む基礎情報と、上記ユーザの食事情報とが記憶された記憶部と、上記食事情報に基づき、栄養バランスの偏りを判定する判定部と、少なくとも上記基礎情報と、上記判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づき、上記ユーザが摂取を控えるべき食物である改善対象食物を抽出する第1抽出部と、上記改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する第2抽出部と、上記ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する取得部と、上記ユーザの嗜好性に基づいて上記摂取推奨食物を使用した食事レシピを提示する提示部とを備える。
【0006】
かかる構成の支援システムによれば、ユーザの嗜好性が加味された摂取推奨食物を使用した食事レシピがユーザに提示されるため、ユーザは前向きに食事習慣の改善に取り組み易くなる。これにより、ユーザは継続して食事習慣の改善を行うことができ得る。
【0007】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記提示部が、2以上の上記摂取推奨食物を上記ユーザに提示するように構成されており、上記取得部が、上記ユーザが上記提示された摂取推奨食物の中から1または複数選択した情報を上記ユーザの嗜好性の情報として取得するよう構成されている。かかる構成によれば、ユーザ自らが選択した摂取推奨食物に対する嗜好性が反映した食事レシピが提示されるため、ユーザはより食事習慣の改善に取り組み易くなる。
【0008】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記提示部が、さらに、調理方法及び/又は味付けを上記ユーザに提示するように構成されており、上記取得部が、上記ユーザが上記提示された調理方法及び/又は味付けの中から1または複数選択した情報を上記ユーザの嗜好性の情報として取得するように構成されている。これにより、ユーザ自ら選択した調理方法及び/又は味付けに対する嗜好性が反映した食事レシピが提示されるため、ユーザはより食事習慣の改善に取り組み易くなる。
【0009】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記第1抽出部が、上記リスク因子に関する情報及び/又は上記判定された栄養バランスの偏りの情報に基づいて、推奨される調理方法及び/又は味付けを抽出するように構成されており、上記ユーザに提示される上記調理方法及び/又は味付けが、上記抽出された推奨される調理方法及び/又は味付けである。これにより、食事習慣の改善効果がより高くなる。
【0010】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記判定部が、上記栄養バランスの偏りを、上記食事情報から算出される総摂取カロリーに占める炭水化物のカロリーの割合、脂質のカロリーの割合、およびタンパク質のカロリーの割合からなる群より選ばれた少なくとも一つに基づいて判定するように構成されている。これにより、炭水化物、脂質、及び/又はタンパク質の摂取量が適切であるかを判定することができる。
【0011】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記リスク因子として、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧症、メタボリック症候群、慢性腎臓病および脂肪肝からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む。これにより、上述したリスク因子を加味した改善対象食物が抽出される。
【0012】
ここで開示される支援システムの一態様では、上記基礎情報が、上記ユーザの体重および上記ユーザの身体活動量の情報を含んでおり、上記判定部が、上記ユーザの上記食事情報に基づいて算出される上記ユーザの所定の単位期間における摂取カロリーが、上記ユーザの体重および上記ユーザの身体活動量に基づく基準摂取カロリーの範囲よりも過剰若しくは不足か否かを判定するよう構成されており、上記提示部が、当該判定結果に基づいて上記ユーザに食事指導に関する情報を提示するよう構成されている。これにより、ユーザの摂取カロリーを加味して、食事指導を行うことができる。
【0013】
ここで開示される技術の一態様は、コンピュータプログラムであり得る。ここで開示されるコンピュータプログラムの一態様は、コンピュータを、ここで開示される支援システムとして動作させるように構成されている。これにより、例えばコンピュータプログラムをオンラインで、あるいは、記録媒体に記録された形態で入手することで、任意のコンピュータを用いて上記支援システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る支援システムを示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る支援システムを用いた食事習慣改善方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、図2のステップS20における摂取カロリー評価の一例を示す表である。
図4図4は、ステップS30の改善対象食物を抽出する方法の一例を示すフロー図である。
図5図5は、図4で分類されたパターンと、当該パターンにより抽出される改善対象食物との対応の一例を示す表である。
図6図6は、図2のステップS50~S70における具体的な一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照しつつ、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本技術の実施に必要な事柄(基本的なアルゴリズム等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同様の作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0016】
本明細書において「食物」とは、人が経口摂取するもの全般を指す。例えば、食物は、食材、食品(加工食品を含む)、調味料、菓子類などを含み得る。また、食物は、汁物、漬物、揚げ物などの調理形態による概念も含み得る。
【0017】
本明細書において、「生活習慣病」とは、発症に生活習慣が関わる(例えば因果が存在する)疾患のことをいう。生活習慣としては、例えば、運動習慣、食事習慣、睡眠、喫煙、飲酒等が挙げられる。生活習慣病としては、例えば、高血圧、脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満などにより発症する心血管疾患(例えば、虚血性心疾患、脳梗塞、末梢動脈疾患などのアテローム性動脈硬化症等)や、脂肪肝により発症し、肝硬変や肝ガンを引き起こす非アルコール性脂肪性肝炎などが挙げられる。なお、生活習慣病として挙げられる疾患は、連続的に他の生活習慣病の疾患の発症の原因になり得るため、生活習慣病のリスク因子としても理解され得る。
【0018】
図1は、一実施形態に係る支援システム1を示すブロック図である。支援システム1は、例えば、ユーザの食事習慣の改善を支援するために用いられる。支援システム1は、ユーザ端末10と、管理サーバ20とを備えている。ここで開示される支援システムは、例えば、生活習慣病を罹患した患者(例えば、心血管疾患患者、非アルコール性脂肪性肝炎患者等)、病態が重症化した患者(例えば、心不全患者、フレイル患者等)、生活習慣病は罹患していないが生活習慣の改善(生活習慣病の予防を含む)を望む希望者等を対象に使用することができる。なお、当該希望者は、生活習慣病のリスク因子を持つ人、生活習慣病のリスク因子を持たない人、または生活習慣病のリスク因子についての診断を受けたことがない人等が含まれる。
【0019】
[ユーザ端末]
ユーザ端末10は、食事習慣の改善対象者であるユーザが使用する端末である。ユーザ端末は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、デスクトップ型やラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよい。ユーザ端末10は、画面12と、タッチパネル、キーボードまたはマウスなどのユーザが操作して入力する入力手段14と、端末制御装置16とを備えている。端末制御装置16は、画面12および入力手段14と通信可能に接続されている。
【0020】
[管理サーバ]
管理サーバ20は、ユーザ端末10と通信可能に接続されている。管理サーバ20は、単一のコンピュータによって実現されていてもよいし、複数のコンピュータが協働して実現されるものであってもよい。管理サーバ20は、制御装置21を備えている。なお、図示は省略されているが、本実施形態では、管理サーバ20は、ユーザ端末10と同様に、画面と、入力手段とを備えている。
【0021】
(制御装置)
制御装置21の構成は、特に限定されない。制御装置21は、ここでは、例えばマイクロコンピュータである。制御装置21は、例えばI/F(Interface)と、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備えている。図1に示すように、本実施形態では、制御装置21は、通信部22と、記憶部23と、判定部24と、抽出部30と、取得部40と、提示部50とを備えている。制御装置21を構成する各部22~53は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、他の実施形態において、制御装置21を構成する各部は適宜省略されてもよい。
【0022】
(通信部)
通信部22は、ユーザ端末10と通信可能に構成されている。ここでは、通信部22は、ユーザ端末10の端末制御装置16と通信可能に接続されている。また、通信部22は、ユーザ端末10との間で各種情報を送受信可能に構成されている。さらに、通信部22は、図示は省略しているが、ユーザ端末10以外に、例えば、医療従事者、栄養士等が使用する指導管理者端末と送受信可能なように構成され得る。
【0023】
(記憶部)
記憶部23は、ユーザに関する情報、データベース等が記憶するよう構成される。記憶部23には、例えばユーザの基礎情報が記憶されている。ここで、基礎情報とは、例えば、ユーザの健康情報、ユーザの医療情報等を含み得る。
【0024】
ユーザの健康情報は、例えば、ユーザの氏名、性別、年齢、身長、体重ならびにその推移、BMI(body mass index)、体脂肪率、脈拍数、身体活動量、ダイエットへの取り組みの有無、運動習慣、睡眠時間等を含み得る。ユーザの健康情報(例えば身体活動量)は、例えば、質問紙法や、ユーザが装着するセンサーデバイス(例えば、三軸加速度センサーや脈拍センサー等の機能が付属されたセンサーデバイス)によって取得され得る。身体活動量の情報は、例えば、身体活動による消費カロリーの、活動強度(METs)、SBやMVPA等の身体活動を実施した時間(分/日)等を含み得る。ここで、METsとは、運動強度の単位であり、安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかによって活動の強度を示したものである。また、SBとは、例えば臥位・座位・立位等の1.5METs以下程度の低強度の身体活動を意味し得る。そして、MVPAとは、早歩き等の軽く息がはずむ活動(例えば3.0METs程度)以上の中等度~高強度の身体活動を意味し得る。
【0025】
ユーザの医療情報は、例えば、医療機関によって診察、診断される情報を含み得る。医療情報は、例えば、ユーザの病歴、アレルギーの有無、処方薬とその服用の有無、生活習慣病のリスク因子に関する情報、病態重症度等を含み得る。ここで、「生活習慣病のリスク因子」とは、生活習慣病の発症に関わる因子(疾患を含む)のことをいう。生活習慣病のリスク因子としては、例えば、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧症、メタボリック症候群、慢性腎臓病、脂肪肝等が挙げられる。生活習慣病のリスク因子に関する情報とは、例えば、リスク因子である疾患の罹患又は既往の有無、治療のための薬剤の服用の有無等が含まれ得る。また、「病態重症度」は、例えば、生活習慣病の病態の重症度、生活習慣病の進行により生じる病態(例えば、心不全等の心疾患)、フレイル等の重症度を含む。かかる重症度は、例えば、医療機関の診断に基づいて分類される。
なお、ユーザの健康情報とユーザの医療情報にそれぞれ含まれる情報は明確に区別されるものではなく、上記健康情報として具体的に例示した情報が医療情報として含まれてもよく、上記医療情報として具体的に例示した情報が健康情報として含まれてもよい。
【0026】
また、記憶部23には、例えば、ユーザの食事情報が記憶されている。ユーザの食事情報は、例えば、ユーザの食事習慣に関する情報を含む。ユーザの食事情報は、例えば、ユーザが摂取した飲食物の種類、量などの情報や、食行動に関する情報等を含み得る。ユーザの食事情報は、例えば、1食ごとの飲食物の情報、所定の期間内における摂取した飲食物の情報等を含み得る。食行動に関する情報は、例えば、ユーザの食べる速度、咀嚼の回数、咀嚼回数へのユーザの意識、主食とおかずとを別々に噛んで食べているか否か等の情報を含み得る。
【0027】
また、記憶部23には、例えばユーザが摂取を控えるべき食物(本明細書において「改善対象食物」ともいう。)の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物の情報が記憶されている。改善対象食物は、後述する抽出部30により抽出され得る。記憶部23には、例えば、改善対象食物と、それに対応する摂取推奨食物とが入力されたデータベースが記憶されている。かかるデータベースは、さらに、後述する判定部24により判定される栄養バランスの偏り、ユーザの基礎情報(例えば、ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報、病態重症度)等の情報によって、摂取推奨食物が分類されたマトリックスであってもよい。なお、摂取推奨食物は、例えば、ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報及び/又は病態重症度に基づいて抽出される食物を含み得る、例えば、摂取推奨食物は、ユーザの疾病の治療に寄与する栄養素を含む食物を含み得る。一例では、フレイルの患者には、高タンパク質の食物が摂取推奨食物として抽出される。
【0028】
また、記憶部23には、摂取推奨食物を使用した食事レシピのデータベースが記憶されている。食事レシピのデータベースは、後述する第2取得部42が取得したユーザの嗜好性の情報に基づいて検索可能なように構成され得る。
【0029】
なお、記憶部23に記憶され各種データベースは、随時更新可能なように構成され得る。
【0030】
(判定部)
判定部24は、例えば、ユーザの食事情報に基づき、ユーザが摂取した栄養バランスの偏りを判定するよう構成され得る。栄養バランスの偏りは、例えば、ユーザが所定の期間内に摂取した飲食物から計算される栄養素の総量に基づいて判定される。例えば、タンパク質、脂質、炭水化物の摂取カロリー割合をそれぞれ計算し、それらの割合が、予め設定される基準範囲内に含まれるか否かにより、栄養バランスの偏りの有無が判定される。また、判定部24は、ユーザをいくつかのグループに分類するよう構成され得る。詳細は後述する。
【0031】
(抽出部)
抽出部30は、本実施形態では、第1抽出部31と、第2抽出部32と、第3抽出部33とを有する。なお、第1抽出部31、第2抽出部32、および第3抽出部33は、抽出部30が備え得る複数の機能の説明のために分けて呼称しているにすぎず、第1抽出部31、第2抽出部32、および第3抽出部33が別個に設けられなくてもよい。
【0032】
(第1抽出部)
第1抽出部31は、例えば、ユーザの基礎情報(例えばユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報)と、判定部24により判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づいて、ユーザが摂取を控えるべき食物(本明細書において「改善対象食物」ともいう。)を抽出する。第1抽出部31は、例えば、ユーザの基礎情報のうち、ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報に基づいて、改善対象食物を抽出することが好ましい。例えば、ユーザが高血圧症を罹患している場合には、改善対象食物として「塩分の高い食物(例えば、スープ類(汁物)、漬物、梅干し等)」が抽出される。第1抽出部31で抽出される改善対象食物の他の具体例は後述する。
【0033】
また、第1抽出部31は、ユーザの基礎情報(例えば、ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報)と、判定部24により判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づいて、推奨される調理方法及び/又は味付けを抽出するよう構成され得る。
【0034】
(第2抽出部)
第2抽出部32は、抽出した改善対象食物に代えて摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出するように構成され得る。例えば、記憶部23に記憶されたデータベースから改善対象食物に対応する摂取推奨食物が抽出される。
【0035】
(第3抽出部)
第3抽出部33は、例えば、摂取推奨食物を使用した食事レシピを抽出するように構成され得る。例えば、記憶部23に記憶されたデータベースから、ユーザの嗜好性に基づいて抽出された摂取推奨食物を使用した食事レシピが抽出される。
【0036】
(取得部)
取得部40は、本実施形態では、取得部40は第1取得部41と、第2取得部42とを備えている。取得部40は、ユーザ端末10からの情報や、図示していない医療機関や、管理者端末等から情報を取得でき得る。また、管理サーバ20に直接入力された情報を取得することもでき得る。なお、第1取得部41および第2取得部42は、取得部40が備え得る複数の機能の説明のために分けて呼称しているにすぎず、第1取得部41および第2取得部42が別個に設けられなくてもよい。
【0037】
(第1取得部)
第1取得部41は、例えば、ユーザの基礎情報を取得する。例えば、第1取得部41は、ユーザがユーザ端末10に入力した基礎情報を取得できるよう構成され得る。また、第1取得部41はユーザが受信した医療機関(かかりつけ医を含む)等から基礎情報を取得できるよう構成され得る。また、第1取得部41は、例えば、ユーザの食事情報を取得する。例えば、第1取得部41は、ユーザがユーザ端末10に入力した食事情報を取得できるよう構成され得る。また、第1取得部41は、ユーザの食事情報を聴取した医療従事者や栄養士等の指導管理者が入力したユーザの食事情報を取得できるよう構成され得る。第1取得部41が取得したユーザの基礎情報及び/又は食事情報は、記憶部23に記憶され得る。
【0038】
(第2取得部)
第2取得部42は、例えば、ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する。ここで、「嗜好性」とは、ユーザの食物に対する好みのみならず、ユーザが対象の食物の摂取を所望するか否かの度合いや、ユーザが好む調理方法、ユーザが好む食事の味付け等を含み得る。ユーザの食事に対する嗜好性の情報は、例えば、ユーザの食事情報から得られる食物ごとの摂取頻度、各栄養素の摂取量等に基づいた情報であってもよい。また、ユーザの食事に対する嗜好性の情報は、医療従事者や栄養士等の指導管理者がユーザから聴取した内容であってよい。また、ユーザの嗜好性の情報は、ユーザが提示された複数の食物の選択肢の中から好みの食物として選択した1または複数の食物の情報であってもよい。例えば、第2取得部42は、後述する食物提示部51が提示した2以上の摂取推奨食物の中からユーザが選択した摂取推奨食物の情報をユーザの嗜好性の情報として取得し得る。
【0039】
(提示部)
提示部50は、本実施形態において、食物提示部51と、レシピ提示部52と、指導提示部53とを備えている。提示部50は、ユーザに諸情報を提示する。提示部50は、例えば、通信部22を介して、ユーザ端末10に諸情報を提示し得る。なお、他の実施形態において、食物提示部51、レシピ提示部52、および指導提示部53はそれぞれ省略されてもよい。なお、食物提示部51と、レシピ提示部52と、指導提示部53とは、提示部50が備え得る複数の機能の説明のために分けて呼称しているにすぎず、食物提示部51と、レシピ提示部52と、指導提示部53とが別個に設けられなくてもよい。
【0040】
(食物提示部)
食物提示部51は、抽出部30で抽出された改善対象食物に代わる摂取推奨食物の選択肢をユーザに提示するよう構成され得る。例えば、ユーザ端末10の画面12に摂取推奨食物を選択可能な状態で表示することで、摂取推奨食物がユーザに提示される。提示される摂取推奨食物は、1または2以上の複数であり得る。好ましくは、2以上の摂取推奨食物がユーザに提示される。これにより、ユーザが複数の選択肢の中から好みの食物を選択することができるため、ユーザの嗜好がより確実に反映される。提示される摂取推奨食物の並び順は特に限定されないが、例えば、ユーザの基礎情報及び/又は食事情報に基づいて、特に摂取が推奨される食物の順番に並べて提示してもよい。例えば、画面12の上から順番に特に摂取が推奨される食物を並べるよう構成されてもよい。
【0041】
また、食物提示部51は、ユーザが選択した改善対象食物の調理方法及び/又は味付けの選択肢をユーザに提示するように構成され得る。提示される改善対象食物の調理方法及び/又は味付けは、上述した第1抽出部31で抽出された調理方法及び/又は味付けであることが好ましい。
【0042】
(レシピ提示部)
レシピ提示部52は、例えば、記憶部23に記憶された食事レシピのデータベースから1または2以上の食事レシピをユーザに提示するよう構成される。提示される食事レシピは、ユーザの摂取推奨食材が使用された食事レシピであることが好ましい。また、提示される食事レシピは、ユーザの嗜好性の情報に基づいて抽出されていることが好ましい。
【0043】
(指導提示部)
指導提示部53は、ユーザに生活習慣に関する指導内容(コメント)を提示するよう構成され得る。生活習慣に関する指導内容は、例えば、食事指導、減量指導等を含む。食事指導は、例えば、抽出された改善推奨食物及びこれに関する情報(例えば、摂取を控えるべき理由等)、摂取推奨食物及びこれに関する情報(例えば、摂取が推奨される理由、栄養素の情報等)等を提示することを含み得る。減量指導は、例えば、ユーザの基礎情報(例えば、体重、BMI、ダイエットへの取り組みの有無等)や、ユーザの食事情報(例えば、一日あたりの摂取カロリー等)等に基づいて、ユーザに減量(ダイエット)を推奨するか否かの情報を提示することを含み得る。
【0044】
[コンピュータプログラム]
本開示により、コンピュータプログラムが提供される。該コンピュータプログラムは、コンピュータをここで開示される支援システム1として機能させるように構成されている。このコンピュータは、例えば、上記ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報を含む基礎情報と、上記ユーザの食事情報とが記憶された記憶部と、上記食事情報に基づき、栄養バランスの偏りを判定する判定部と、少なくとも上記基礎情報と、上記判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づき、上記ユーザが摂取を控えるべき食物である改善対象食物を抽出する第1抽出部と、上記改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する第2抽出部と、上記ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する取得部と、上記ユーザの嗜好性に基づいて上記摂取推奨食物を使用した食事レシピを提示する提示部として機能するように構成されている。
【0045】
[食事習慣改善方法]
以下、本実施形態に係る支援システム1を用いた食事習慣改善方法について説明する。図2は、本実施形態に係る支援システム1を用いた食事習慣改善方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る方法は、ステップS10~S70を含む。なお、ステップS10~S70は、他の実施形態において、必要に応じて省略することができる。また、各ステップは、図2に示す順番で必ずしも実行されなくてもよく、適宜順番を変更してもよい。
【0046】
1.食事調査
図2のステップS10では、ユーザの食事習慣の調査を行う。食事習慣の調査は、例えば、多肢選択式のアンケート、記載式のアンケート、及びユーザからの聴取等で行うことができる。食事調査は、例えば、食事時間、摂取した食物の種類、飲料、食行動、味付け等に関する質問を有し得る。摂取した食物の種類は、例えば、主食、主菜、副菜、果物、乳製品、嗜好食品(例えば、菓子類、アイスクリーム、甘い飲み物等)等が挙げられる。摂取した食物の種類、飲料に関する質問は、例えば、摂取した具体的な食物の種類、摂取量等の質問を有し得る。アンケートは、例えば、ユーザ端末10に表示され、ユーザがその回答を入力し、制御装置21へと送信されることで、当該情報が記憶部23に記憶される。
【0047】
2.摂取カロリー評価
図3は、図2のステップS20における摂取カロリー評価の一例を示す表である。図2のステップS20では、図3に示すように、摂取カロリーが過剰、適正、若しくは不足であるかを判定することを含む1または複数の判定基準により、ユーザを複数に分類している。ここでは、ステップS20は、ユーザのBMIが予め設定された基準BMIの範囲内にあるか否かを判定することを含んでいる。また、ステップS20は、ユーザがダイエットをしているか否かを判定することを含んでいる。しかしながら、これらの判定基準は一例にすぎず、適宜変更することもできる。ステップS20は、例えば判定部24により実現され得る。なお、ステップS20は、他の実施形態において省略することができる。
【0048】
ステップS20では、ユーザの食事情報に基づき、所定の単位期間あたりの摂取カロリーを算出する。所定の単位期間とは、特に限定されないが、例えば、1日~1週間あたりであってよく、1食あたりであってもよい。かかる摂取カロリーの算出は、例えば、判定部24により実現され得る。次に、算出された単位期間あたりの摂取カロリーと、予め設定された基準摂取カロリーの範囲とを比較する。これにより、算出された単位期間あたりの摂取カロリーが上記基準摂取カロリーの範囲よりも過剰であるか、不足であるか、若しくは適正(基準摂取カロリーの範囲内)であるかを判定する。基準摂取カロリーの範囲の設定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ユーザの体重に基づいて設定される。例えば、ユーザの現体重(kg)×30kcalを基準値として、その基準値±10%を基準摂取カロリーの範囲とすることができる。なお、体重(kg)に乗じるカロリーの値は、30kcalに限定されず適宜変更可能であり、例えば、20kcal~40kcalに設定され得る。また、基準値からの許容範囲は、±10%でなくてもよく、例えば、±5~±15%程度としてもよい。
【0049】
また、現体重の代わりに目標体重を基準として基準摂取カロリーの範囲を設定してもよい。特に、ユーザのBMIが予め設定された基準BMIの範囲から外れている場合に、目標体重を基準とすることが好ましい。このとき、目標体重は、健康への影響や、ユーザの食事習慣是正への継続意欲等を考慮し、例えば、現体重の10%以下(例えば6%以下)の増減の範囲で設定されることが好ましい。また、ユーザのBMIが予め設定された基準BMI以上である場合には、体重(kg)に乗じるカロリーの値を、基準BMI未満である場合に設定される体重(kg)に乗じるカロリーの値よりも低くするよう構成されることが好ましい。
【0050】
また、上記基準摂取カロリーの範囲は、ユーザの身体活動量の情報に基づいて設定してもよい。例えば、ユーザの身体活動による消費カロリーが、予め設定される身体活動による標準消費カロリーよりも高い場合には、ユーザの現体重または目標体重に基づいて設定された基準摂取カロリーの範囲をより高い範囲となるように設定してもよい。また、ユーザの身体活動による消費カロリーが、予め設定される身体活動による標準消費カロリーよりも低い場合には、ユーザの現体重または目標体重に基づいて設定された基準摂取カロリーの範囲をより低い範囲となるように設定してもよい。なお、上記身体活動による標準消費カロリーA(kcal)は、例えば、次式:(ユーザの基礎代謝量)×P/24×Qに基づいて求めることができる。ユーザの基礎代謝量は、ここでは、次式:[0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢(歳)-(定数)]×1,000÷4.186、で求めることができる。なお、上記定数は、男性では0.4235、女性では0.9708と規定することができる。また、Pはユーザの日中活動時間であり、Qはユーザの日中活動時間におけるユーザの身体活動レベルであり、低強度の身体活動レベルでは1.5、中等度の身体活動レベルでは1.75、高強度の身体活動レベルでは2.0とすることができる。
【0051】
ステップS20では、ユーザのBMIが予め設定された基準BMIの範囲内にあるか否かを判定し得る。図3では、一例として、ユーザのBMIが25kg/m以上か否かを判定している。図3では、BMIが25kg/m以上の場合を「○」、BMIが25kg/m未満の場合を「×」として示している。なお、基準BMIの範囲は、適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。
【0052】
ステップS20では、ユーザがダイエットをしているか否かを判定し得る。図3では、ダイエットをしている場合を「○」、ダイエットをしていない場合を「×」として示している。ダイエットをしているか否かの基準は、適宜変更され、特に限定されない。例えば、ユーザからダイエットに取り組んでいるか否かの情報を聴取又はアンケートにより取得してもよい。また、ユーザのダイエットの取り組み内容(例えばカロリー制限、運動量など)を具体的に入手し、その内容が予め設定された基準値を満たすか否かで判定することもできる。
【0053】
図3に示すように、ここでは、上述した3つの判定基準により、ユーザが12のグループのいずれかに分類されており、その分類に合わせたユーザへの指導内容(指導コメント)が設定されている。なお、図3に示す各分類における指導内容は一例であり、本技術を何ら限定するものではない。かかる指導内容は、例えば、後述するステップS50において、指導提示部53によりユーザに提示され得る。
【0054】
3.改善対象食物の抽出
図2のステップS30では、改善対象食物が抽出される。改善対象食物の抽出は、例えば、判定部24がユーザをいくつかの基準に基づいて予め設定される複数のパターンのいずれかに分類した後、第1抽出部31が当該パターンに割り当てられた改善対象食物を抽出することで実現される。かかる基準としては、例えば、栄養バランスの偏り、生活習慣病のリスク因子、総摂取カロリー、ユーザの病歴、ユーザの食事の速度、ユーザの体脂肪率、ユーザの体重等が挙げられる。図4は、ステップS30の改善対象食物を抽出する方法の一例を示すフロー図である。図5は、図4で分類されたパターンと、当該パターンにより抽出される改善対象食物との対応の一例を示す表である。本実施形態においては、ステップS30は、栄養バランスの偏りの有無(ステップS31~S32)と、生活習慣病のリスク因子の有無(ステップS34~S35)に基づいてユーザを分類する。
【0055】
栄養バランスの偏りは、例えば、所定の単位期間あたりの総摂取カロリーの合計に占める炭水化物由来のカロリーの割合、脂質由来のカロリーの割合、及び/又はタンパク質のカロリーの割合等に基づいて判定することができる。本実施形態では、一例として、炭水化物と脂質の摂取割合を基準に栄養バランスの偏りの有無を判定している。図4のステップS31では、総摂取カロリーに占める炭水化物由来のカロリーが基準値(ここでは60%)よりも高いか否かを判定する。ここで、炭水化物由来のカロリーが60%よりも高い場合(Yesの場合)、ステップS33において「炭水化物過剰」と判定される。炭水化物由来のカロリーが60%以下の場合(Noの場合)には、ステップS32へと進む。図4のステップS32では、ステップS31において総摂取カロリーに占める脂質由来のカロリーが基準値(30%)よりも高いか否かを判定する。ここで、脂質由来のカロリーが30%よりも高い場合(Yesの場合)、ステップS33において「脂質過剰」と判定される。脂質由来のカロリーが30%以下の場合(Noの場合)、ステップS33において「栄養バランスの偏りなし」(栄養バランス良好)と判定される。なお、ステップS31とステップS32は、順番を入れ替えてもよい。また、ステップS31およびステップS32における基準値は適宜変更することができる。栄養バランスの偏りを判定する基準は、1つあってよく、2以上であってもよい(本実施形態では炭水化物および脂質の2つを基準としている)。
【0056】
いくつかの実施形態においては、栄養バランスの偏りは、例えば、特定の栄養素の摂取が予め設定される基準値よりも多い又は少ないことにより判定してもよい。この場合、炭水化物、脂質、タンパク質以外の栄養素として、例えば、食物繊維、ミネラル(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等)、ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等)、塩分等が挙げられる。
【0057】
ステップS34~S35では、ユーザの生活習慣病のリスク因子の有無によりユーザを分類する。ステップS34では、リスク因子Aを罹患若しくはリスク因子Aの治療のための薬剤を服用しているか否かでユーザを分類する。リスク因子Aとしては、例えば、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧症、メタボリック症候群、慢性腎臓病、脂肪肝等が挙げられる。判定されるリスク因子Aは1つであってもよいが、複数のリスク因子からなる群であってもよい。本実施形態では、リスク因子Aとして糖尿病、脂質異常症、および肥満からなる群が設定されている。ユーザが糖尿病、脂質異常症、および肥満の少なくとも1つを罹患若しくはその治療のための薬剤を服用している場合(Yesの場合)、ユーザはステップS36において、ユーザはパターン1、4、または7に分類される。これ以外の場合(Noの場合)、ステップS35に進む。ステップS35では、リスク因子Bを罹患若しくはリスク因子Bの治療のための薬剤を服用しているか否かでユーザを分類する。リスク因子Bは、リスク因子Aとは異なるリスク因子であり得る。リスク因子Bは、上述したリスク因子Aの例示と同様であり得る。本実施形態では、リスク因子Bとして、高血圧症が設定されている。ユーザが高血圧症を罹患若しくはその治療のための薬剤を服用している場合(Yesの場合)、ユーザはステップS36において、パターン2、5、または8に分類される。これ以外の場合(Noの場合)、ステップS36においてパターン3、6、または9に分類される。
【0058】
その後、分類されたパターン1~9に基づいて、改善対象食物が抽出される。図5は、抽出される改善対象食物の一例を示している。改善対象食物は、例えば、図5に示す「○○が多い食物」のようなグループ(ここで「○○」は、任意の栄養素)であってよく、具体的な食物であってもよい。分類されたパターンと、抽出される改善対象食物との対応は記憶部23に予めデータベース(マトリックス)として記憶されていることが好ましい。抽出される改善対象食物としては、例えば、炭水化物が多い食物(例えば主食など)、脂質が多い食物(例えば菓子類、食肉加工品、バターなど)、塩分が多い食物(例えば、スープ類、梅干し、漬物など)、脂身の多い肉、甘い飲料等が挙げられる。抽出される改善対象食物は、上記分類パターンとユーザの食事情報とに基づいて抽出されてもよい。例えば、図5に示すような抽出された改善対象食物のグループに属する食物であって、ユーザが摂取した具体的な食物が改善対象食物として抽出され得る。ユーザが摂取した具体的な食物は、ユーザの食事情報に基づいて抽出することができる。なお、ユーザが摂取した具体的な食物であっても、その摂取量が予め設定される基準値よりも少ない場合に抽出されないよう設定されてもよい。
【0059】
4.摂取推奨食物の抽出
図2のステップS40では、第2抽出部32が、例えば、抽出された改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する。摂取推奨食物は、例えば、記憶部23に記憶された改善対象食物とそれに対応する摂取推奨食物とが入力されたデータベース(マトリックス)から抽出することができる。かかるデータベースには、1つの改善対象食物に対し、複数の摂取推奨食物が割り当てられていることが好ましい。例えば、改善対象食物が「脂身の多い肉」である場合に、摂取推奨食物として、「鶏肉」、「青魚」、「豆類・大豆食品」等が割り当てられる。また、第2抽出部32は、ユーザの基礎情報に基づいて、摂取推奨食物を選別するよう構成されていてもよい。例えば、第2抽出部32は、ユーザのアレルギー、病態等の情報に基づき、抽出された摂取推奨食物からユーザが摂取すべきでない食物を除外するよう構成され得る。
【0060】
5.コメントの提示
図6は、図2のステップS50~S70における具体的な一例を示すフロー図である。図2のステップS50では、例えば、指導提示部53が、ユーザに生活習慣の改善に関する情報(例えば、コメント)を提示する。かかるコメントは、改善目標を含むことが好ましい。ユーザに生活習慣の改善に関するコメントは、例えば、ユーザ端末10の画面12に表示される。ステップS50は、例えば、指導提示部53により実現される。生活習慣の改善に関するコメントは、例えば、食事指導に関するコメントを含む。食事指導に関するコメントは、例えば、ステップS30で抽出された改善対象食物のグループまたは具体的な食物を提示する内容や、当該提示した改善対象食物の摂取を控えるまたは摂取量を減らすことを促す内容等を含み得る。また、食事指導に関するコメントは、例えば、ステップS40で抽出された摂取推奨食物を提示する内容、当該提示した摂取推奨食物を推奨する理由等が含まれ得る。また、食事指導に関するコメントは食事改善目標を含み得る。食事改善目標は、例えば、摂取推奨食物の目標摂取量や、改善対象食物の摂取制限量等を含み得る。
【0061】
また、ユーザに生活習慣の改善に関するコメントは、例えば、減量指導に関するコメントを含み得る。減量指導に関するコメントは、ステップS20による分類に準じて提示され得る。減量指導に関するコメントは、例えば、目標摂取カロリー量(カロリー制限)、所定期間における運動量、食事時間の是正などを含み得る。
【0062】
6.摂取推奨食物の選択
ステップS60は、ユーザが複数の選択肢から選択したものをユーザの嗜好性の情報として取得するステップである。ここで取得されるユーザの嗜好性の情報は、後述するユーザに提示される食事レシピの種類に反映され得る。図6に示すように、ステップS60は、2以上の摂取推奨食物を選択肢としてユーザに提示するステップS61を含んでいる。また、本実施形態では、2以上の調理方法及び/又は味付けを選択肢としてユーザに提示するステップS62を含んでいる。
【0063】
ステップS61では、食物提示部51が、ステップS40で抽出された摂取推奨食物をユーザに複数提示する。提示される摂取推奨食物の数は特に限定されず、例えば2~20であり得る。次に、ユーザは、提示された複数の摂取推奨食物の中から、摂取したい食物(好みの食物)を1または複数選択する。選択された摂取推奨食物は、ユーザの嗜好性の情報として第2取得部42により取得される。このように、ユーザが摂取したい食物を自発的に選択することで、食事習慣の改善が継続し易くなる。
【0064】
ステップS62では、例えばユーザに複数の調理方法が提示される。かかる調理方法は、ステップS61で選択したユーザが選択した摂取したい食物の調理方法である。提示される調理方法の数は特に限定されず、例えば、2~10であり得る。ユーザは、提示された複数の調理方法から、好みの調理方法を1または複数選択する。選択された調理方法は、第2取得部42によりユーザの嗜好性の情報の一つとして取得される。提示される調理方法は特に限定されないが、例えば、焼く、煮込む、蒸す、揚げる、茹でる、和える等が挙げられる。また、提示される調理方法は、例えば、食べたい料理の温度に関する情報を含んでいてもよい。料理の温度は、例えば、冷たい、温かい、常温等の選択肢であってよい。
【0065】
また、提示される複数の調理方法は、ユーザの食事情報に基づいて提示されることが好ましい。例えば、判定部24がステップS20で評価した栄養バランスの偏りに基づいて推奨される調理方法を1または複数抽出する。例えば、栄養バランスの評価が「脂質過剰」と判定されたユーザには、油の使用が少ない調理方法(例えば、蒸す、茹でる等)が推奨される。これにより、食事習慣の改善効果が高くなり得る。また、推奨される調理方法のうち、特に推奨される順番に提示される調理方法を並び替えてもよい。例えば、ユーザの目に留まりやすい画面12の上部から下部に向かって、推奨される順番となるように調理方法が並べてもよい。推奨される調理方法は、栄養バランスの偏りのパターンと、そのパターンに対応する推奨される調理方法とを情報を含むデータベース(マトリックス)を予め記憶部23に記憶させておくとよい。
【0066】
ステップS62では、例えばユーザに複数の味付けが提示される。かかる味付けは、ステップS61で選択したユーザが選択した摂取したい食物の味付けである。提示される味付けの数は特に限定されず、例えば、2~10であり得る。ユーザは、提示された複数の味付けから、好み(食べたい)の味付けを1または複数選択する。選択された味付けは、第2取得部42によりユーザの嗜好性の情報の一つとして取得される。提示される味付けは、例えば、調味料の種類、味の濃さ、味の種類等であり得る、調味料の種類としては、例えば、砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ、ポン酢、酒、みりん、うま味調味料、コンソメ、ケチャップ、マヨネーズ、香辛料等であり得る。味の濃さとしては、例えば、薄め、濃いめ、あっさり、こってり等が挙げられる。味の種類としては、例えば、甘い、辛い、さっぱり、スパイシー、エスニック風等の抽象的な表現であってもよい。このような表現を提示される選択肢に入れることで、料理に詳しくないユーザでも選びやすくなる。
【0067】
また、提示される複数の味付けは、ユーザの食事情報に基づいて提示されることが好ましい。例えば、判定部24が、ステップS20で分類したパターンに基づいて推奨される味付けを1または複数抽出する。例えば、塩分の摂取を控えた方がよいユーザには、比較的塩分の少ない味付け(例えば、ポン酢、香辛料等)が推奨される。これにより、食事習慣の改善効果が高くなり得る。また、推奨される味付けのうち、特に推奨される順番となるように提示される味付けを並べてもよい。例えば、ユーザの目に留まりやすい画面12の上部から下部に向かって、推奨される順番に味付けが並べられていてもよい。推奨される味付けは、栄養バランスの偏りのパターンまたはステップS36で分類されるパターンと、そのパターンに対応する推奨される味付けとの情報を含むデータベース(マトリックス)を予め記憶部23に記憶させておくとよい。
【0068】
7.食事レシピの提示
ステップS70では、レシピ提示部52によりユーザに食事レシピが提示される。食事レシピは、第3抽出部33がユーザの嗜好性に基づいて記憶部23に記憶されているデータベースから抽出されたレシピであり得る。例えば、食事レシピは、ステップS60において、ユーザが選択した摂取推奨食物が使用されたレシピである。なお、ここでいう「ユーザの嗜好性」は、ユーザの積極的(ポジティブ)な嗜好性であることが好ましい。即ち、ユーザが摂取を希望する、好みの食物である等の嗜好性の情報を基に食事レシピが提示されるとよい。これにより、ユーザは前向きに食事習慣の改善に取り組むことができるため、継続して食事習慣の改善に取り組み易くなり得る。
【0069】
また、食事レシピは、例えば、ステップS62でユーザが選択した調理方法及び/又は味付けが反映される。食事レシピは、例えば、レシピ提示部52により提示され、ユーザ端末10の画面12に表示される。提示される食事レシピの数は、特に限定されず、1または複数(例えば2~10)であり得る。好ましくは、食事レシピは複数提示される。ユーザは、提示された食事レシピの中から作りたいレシピを選択することで、摂取推奨食材を用いた食事レシピを入手することができる。かかる食事レシピは、ユーザの嗜好性の情報に基づいて抽出されたレシピであるため、ユーザは、食事習慣の改善に継続して取り組み易くなる。
【0070】
選択された食事レシピは、ユーザの食事情報として、記憶部23に蓄積されてもよい。食事レシピが記憶部23に蓄積されることで、食事情報の正確性が向上し、より適切な生活習慣の支援を行うことができる。
【0071】
以上、本技術のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。特許請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0072】
上述した実施形態では、ステップS60において、ユーザが自発的に摂取したい摂取推奨食物等を選択したが、他の実施形態においては、ステップS60を省略し、ユーザの食事情報及び/又は基礎情報に基づいて、食事のレシピが提示されてもよい。また、記憶部23に蓄積されたユーザが過去に選択した摂取推奨食物、調理方法及び/又は味付けの情報に基づき、食事のレシピが抽出されてもよい。
【0073】
また、抽出される食事レシピが食事の時間帯を選択できるよう構成されてもよい。例えば、ステップS60の前に、提示部50が、朝食、昼食、夕食、間食等の食事の時間帯を選択できるようにユーザに提示するよう構成されてもよい。これにより、ユーザは食事計画を立てやすくなり、食材等の準備をし易くなる。
【0074】
また、上述した実施形態では、ステップS61において、ユーザが摂取したい食物を選択したが、ユーザが摂取を望まない食物を選択するようにしてもよい。例えば、食物提示部51が提示する複数の摂取推奨食物の中から、ユーザが摂取を望まない摂取推奨食物を選択するように選択するよう構成することで、ステップS70で提示される食事レシピから選択した摂取推奨食物を含んだレシピまたは比較的多量に含まれるレシピを除外するよう構成されてもよい。なお、ステップS62においても同様の構成にしてもよい。
【0075】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:ユーザの食事習慣を改善するための支援システムであって、
上記ユーザの生活習慣病のリスク因子に関する情報を含む基礎情報と、上記ユーザの食事情報とが記憶された記憶部と、
上記食事情報に基づき、栄養バランスの偏りを判定する判定部と、
少なくとも上記基礎情報と、上記判定された栄養バランスの偏りの情報とに基づき、上記ユーザが摂取を控えるべき食物である改善対象食物を抽出する第1抽出部と、
上記改善対象食物の代わりに摂取が推奨される摂取推奨食物を抽出する第2抽出部と、
上記ユーザの食事に対する嗜好性の情報を取得する取得部と、
上記ユーザの嗜好性に基づいて上記摂取推奨食物を使用した食事レシピを提示する提示部とを備える、支援システム。
項2:上記提示部が、2以上の上記摂取推奨食物を上記ユーザに提示するように構成されており、
上記取得部が、上記ユーザが上記提示された摂取推奨食物の中から1または複数選択した情報を上記ユーザの嗜好性の情報として取得するよう構成されている、項1に記載の支援システム。
項3:上記提示部が、さらに、調理方法及び/又は味付けを上記ユーザに提示するように構成されており、
上記取得部が、上記ユーザが上記提示された調理方法及び/又は味付けの中から1または複数選択した情報を上記ユーザの嗜好性の情報として取得するように構成されている、項1または2に記載の支援システム。
項4:上記第1抽出部が、上記リスク因子に関する情報及び/又は上記判定された栄養バランスの偏りの情報に基づいて、推奨される調理方法及び/又は味付けを抽出するように構成されており、
上記ユーザに提示される上記調理方法及び/又は味付けが、上記抽出された推奨される調理方法及び/又は味付けである、項3に記載の支援システム。
項5:上記判定部が、上記栄養バランスの偏りを、上記食事情報から算出される総摂取カロリーに占める炭水化物のカロリーの割合、脂質のカロリーの割合、およびタンパク質のカロリーの割合からなる群より選ばれた少なくとも一つに基づいて判定するように構成されている、項1~4のいずれか一項に記載の支援システム。
項6:上記リスク因子として、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧症、メタボリック症候群、慢性腎臓病および脂肪肝からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む、項1~5のいずれか一項に記載の支援システム。
項7:上記基礎情報が、上記ユーザの体重および上記ユーザの身体活動量の情報を含んでおり、
上記判定部が、上記ユーザの上記食事情報に基づいて算出される上記ユーザの所定の単位期間における摂取カロリーが、上記ユーザの体重および上記ユーザの身体活動量に基づく基準摂取カロリーの範囲よりも過剰若しくは不足か否かを判定するよう構成されており、
上記提示部が、当該判定結果に基づいて上記ユーザに食事指導に関する情報を提示するよう構成されている、項1~6のいずれか一項に記載の支援システム。
項8:コンピュータを、項1~7のいずれか一項に記載の支援システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0076】
1 支援システム
10 ユーザ端末
20 管理サーバ
21 制御装置
22 通信部
23 記憶部
24 判定部
30 抽出部
40 取得部
50 提示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6