(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158651
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】無線通信機及び無線通信ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/10 20090101AFI20241031BHJP
H04W 72/542 20230101ALI20241031BHJP
H04W 84/08 20090101ALI20241031BHJP
【FI】
H04W4/10
H04W72/542
H04W84/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074015
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067CC05
5K067EE02
5K067EE25
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】親局等を介さず単信方式のグループ無線通信を行うネットワークで、端末による既設定チャネルのキャリアセンス(CS)で混信した場合に、良好な空きチャネルへの変更を確実且つ円滑に行う。
【解決手段】端末が送受信部(TX1/RX1)と全チャネル走査用の受信復調部RX2を備え、受信・待受モードではRX2の走査による各チャネルのRSSIに閾値を適用して空きチャネルを検出し、さらにRSSIのレベルの昇順でチャネル選択順位データを作成する一方、混信チャネルの受信信号からグループ識別コードとチャネル変更コマンドを検出した場合には、TX1/RX1にその混信したチャネルを設定する。送信モードで既設定チャネルが混信の場合は、チャネル選択順位データの上位チャネルから設定し、CSで混信が無ければ、グループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信した後、入力音声信号を送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調送信部と第1の受信復調部からなる送受信部と共に、チャネル走査用の第2の受信復調部を備え、同一構成の他の無線通信機とグループネットワークを構成して単信方式による無線通信を行う無線通信機であって、
前記送受信部が受信・待受モードの状態においては、
前記第2の受信復調部により前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査させるチャネル走査制御手順と、
前記第2の受信復調部が全チャネルを一回走査する度に、各チャネルで得られる受信信号強度に基づいて空きチャネルか否かを判定し、空きチャネルについて前記受信信号強度の昇順に、又は現在から遡及する一定期間における空きチャネルとしての判定回数の降順に順位付けしたチャネル選択順位データを作成するデータ作成手順と、
前記データ作成手順でチャネル選択順位データが作成される度に、記憶手段に対して新たに作成されたチャネル選択順位データを更新記録するデータ更新記録手順と、
前記第2の受信復調部による全チャネルの走査過程で混信状態と判定されたチャネルについて、その受信信号に前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれているか否かを確認する混信チャネル分析手順と、
前記混信チャネル分析手順において混信チャネルでの受信信号にグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれていた場合に、前記送受信部の変調送信部と第1の受信復調部をその混信チャネルに設定するチャネル設定手順とを実行し、
前記送受信部の送信モードへの移行に際しては、
前記送受信部の第1の受信復調部による現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が無い場合には、その設定チャネルをそのまま送受信チャネルとした送信モードへ移行させ、前記キャリアセンスで混信がある場合には、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信した後、通話信号の送信へ移行させる送信制御手順を実行する
ことを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
前記送信制御手順において、現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が有る場合には、それ以降の手順を所定操作キーのオン操作信号を待って実行させることとした請求項1に記載の無線通信機。
【請求項3】
前記送受信部が受信モード又は待受モードの状態において前記所定操作キー又は別の所定操作キーのオン操作信号があった場合に、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信する手順を実行することとした請求項1又は2に記載の無線通信機。
【請求項4】
前記請求項1に記載の無線通信機をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、
何れかの構成端末が、
送信モードへ移行して、キャリアセンスにより現状使用チャネルに混信がある場合に、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定すると共に、前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信する一方、
前記構成端末以外の各構成端末が、
受信・待受モードの状態にあって前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査している過程において、混信状態と判定されたチャネルから前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを受信・検出した場合に、送受信チャネルを前記混信状態と判定されたチャネルに変更設定する
ことを特徴とする無線通信ネットワークシステム。
【請求項5】
前記請求項2に記載の無線通信機をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、
何れかの構成端末が、送信モードへ移行して、キャリアセンスにより現状使用チャネルに混信があり、且つ所定操作キーのオン操作信号があった場合に、
前記何れかの構成端末とそれ以外の各構成端末が前記請求項4に記載の手順と同一の手順を実行することとした無線通信ネットワークシステム。
【請求項6】
前記請求項3に記載の無線通信機をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、
何れかの構成端末が、送信モードへ移行して、キャリアセンスにより現状使用チャネルに混信があった場合若しくは前記混信があった場合で且つ所定操作キーのオン操作信号があった場合又は受信モード又は待受モードの状態で前記所定操作キー又は別の所定操作キーのオン操作信号があった場合に、
前記何れかの構成端末とそれ以外の各構成端末が前記請求項4に記載の手順と同一の手順を実行することとした無線通信ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単信方式のグループ無線通信において使用中のチャネルに混信が生じた場合に、グループ全体が迅速に空きチャネルへ切り替えて安定した通信を維持させるための無線通信装置及び無線通信ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
特定小電力規格の無線通信機は400MHz帯を使用した近距離での音声通信を行うものであり、免許不要局でもあることから、屋外の場合は建設現場などの様々な工事現場において、屋内の場合は比較的大きな飲食店や広いスペースのホームセンター等において、それぞれ従業者相互間の業務上の連絡に利用されている。
【0003】
そして、下記非特許文献1では前記無線通信機の運用に係るシステムの技術的条件として電波の型式、通信方式、使用周波数及び空中線電力を定めており、通信方式が単信の場合については、422.0500~422.1750MHzを12.5kHz間隔で区分してチャネル番号をCH20~30とした11チャネル分と、422.2000~422.3000MHzを12.5kHz間隔で区分してチャネル番号をCH41~49とした9チャネル分とからなる20チャネル分が割り当てられている。
【0004】
したがって、前記無線通信機を用いた単信方式でのグループ通信では前記20チャネル、又はそれらのチャネルから予め選択した数チャネルの中から空きチャネルを選択して通信を行うことになるが、市販されている無線通信機には自動チャネル選択機能を有する機種が多く見受けられる。
【0005】
この自動チャネル選択機能では、一対の変調送信部と受信復調部を備えた無線通信機で単信方式によるグループ通信のネットワークを構成し、自動チャネル選択モードにおいては、特定の無線通信機が送信側となり、他の無線通信機は受信側となる。
自動チャネル選択モードが設定されると、送信側の無線通信機では、受信復調部でキャリアセンスを実行して送信不可であった場合に、チャネル番号等に従ってチャネルを1つ移動させてキャリアセンスを実行するという手順を送信可になるまで繰り返して、送信可となったチャネルで送信モードとなり、一方、受信側の無線通信機は、受信復調部で常時全チャネルの走査を実行し、グループコードが一致した信号を受信した時点で走査を停止させて音声再生回路を開き、受信が終了すれば走査を再開させる。
【0006】
また、送信側と受信側の各無線通信機では、それぞれ通話終了信号の送信/受信後、応答を待つために2秒間程度は直前の通話で使用していたチャネルの設定状態を維持して受信を行い、受信信号が検出されないことを確認してから、双方とも全チャネルの走査を開始する。
なお、送信側の無線通信機では、全チャネルの走査が開始された後も、PTTスイッチが押されると、キャリアセンスによる送信不可が発生しない限りは、前回と同一のチャネルで送信を開始する。
【0007】
一方、前記自動チャネル選択機能に関連して適用し得る先行技術として、下記特許文献1には、予め捜査対象に設定された複数のチャネルを順次走査して空きチャネルか否かを判断する手順を複数回繰り返し、空きチャネルと判断されたか否かによってそのチャネルの頻度カウント値を変更し、捜査対象チャネルをその頻度カウント値の順に並べ換えてメモリに書き込むようにした無線通信機の空きチャネル捜査装置が提案されており、事前に空きチャネルである確率の高いチャネルを自動的に求めて選択することを可能にしている。
【0008】
また、交信中のチャネルに混信が生じて他の空きチャネルに切り替える場合の方式として、下記特許文献2(無線通信機)では、交信中の一方の無線通信機が、不要電波による混信を検出すると、空きチャネルを検索して、検出した空きチャネル情報に切換信号を付したチャネル切換信号を作成する手段を備え、交信中のチャネルの不要電波のレベルが降下して交信可能なレベルになった状態が検出されると、前記チャネル切換信号を送信すると共に、自機の使用チャネルを前記チャネル切換信号で指定されている空きチャネルに設定し、交信中の他方の無線通信機は前記チャネル切換信号を受信検出すると切換了解信号を送信してチャネル切換信号で指定されたチャネルに切り換わり、また、交信中以外の他の待受状態にある無線通信機は前記切換了解信号を受信して前記チャネル切換信号で指定されたチャネルに切り換わることとした無線通信ネットワークが開示されている。
【0009】
さらに、下記特許文献3においては、データ通信を行う子局と、各子局の制御を行う親局からなる無線ネットワークにあって、親局が立ち上がり時に使用可能な全無線チャネルの電波状況を判断して最適チャネルを決定すると共に(親局は空きチャネル情報をビーコンの中に含めて送信)、定期的にネットワークの送信を停止させて(親局が一定時間子局の送信を禁止する監視ビーコンを送信)、各子局が分散して近隣の電波状態を監視することにより(監視ビーコンを受信した子局が送信停止期間中に受信電界強度を測定してその結果を親局へ送信して通知)、無線ネットワークに最適チャネルを選択する(親局が各子局から受信した受信電界強度の測定結果に基づいて最適チャネルを選択し、その最適チャネル情報をビーコン中に含めて各子局へ送信)方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6-112859号公報
【特許文献2】特開平10-75194号公報
【特許文献3】特開2002-158667号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】社団法人電波産業会、「特定小電力無線局/無線電話用無線設備/標準規格」,RCR STD-20 5.1版、令和3年10月29日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来からの上記自動チャネル選択機能は、ネットワーク通信の開始前に使用チャネルを合理的に設定するものであるが、その後に使用チャネルで混信が生じるようになった場合には、その混信状態のチャネルを用いて再度自動チャネル選択モードを設定する旨をネットワークの全ての無線通信機へ通知しなければならないため、混信状態の如何によってはチャネルの移行が徹底されずにネットワークを構成できない場合がある。
【0013】
前記特許文献1の提案は、使用可能なチャネルについて繰り返し走査を行うことにより、予め各チャネルに係る過去の空きチャネル頻度を求めておいて、現在使用しているチャネルに混信が生じた際に、最も空きチャネル頻度が高かったチャネルを移動先チャネルとして選択するものである。
この提案は、使用チャネルに混信が発生した場合のチャネル選択基準に係るものであり、ネットワークの運用中に混信が生じたときに、ネットワーク全体の使用チャネルを如何にして変更するかの具体的手順については触れていない。
また、時間軸上でみた混信の発生状態はネットワーク自体のロケーションによって様々に異なり、空きチャネル頻度を求めるための遡及期間の設定の仕方によっては、その空きチャネル頻度の高さが必ずしも現在時点でのチャネル選択に適応したものとは言えない場合も発生する。
【0014】
前記特許文献2の提案は、ネットワーク又は相対での無線通信において混信が生じた場合において、交信中の一方の無線通信機が、混信を生じさせている不要電波のレベルが降下して交信可能なレベルになった状態で、予め空きチャネル検索を実行して得られている空きチャネル情報と切換信号とからなるチャネル切換信号を他の無線通信機へ送信することにより、ネットワーク又は相対での通信の使用チャネルを変更させるものである。
この提案は、上記自動チャネル選択機能を補足する技術であり、現在使用中で混信が発生しているチャネルにおいて、不要電波のレベルが交信可能なレベルにまで低下することが条件になっているが、一度混信が発生した後、必ずその条件が成立するとは限らず、混信状態が長時間継続した場合にはそのまま待機せざるを得ないことになるため、常に空きチャネルへの切換えが可能である保証はない。
【0015】
前記特許文献3の提案は、親局と複数の子局とからなり、親局がビーコンを用いて子局を制御するネットワークに関するものであって、ネットワークの立上げ時には、親局が全無線チャネルの電波状況を確認して最善の空きチャネルを選択すると共に、それを全無線チャネルの走査状態にある子局へ通知することによりネットワークの使用チャネルとし、その後は、親局が定期的に子局の送信動作を停止させて、各子局に全無線チャネルに係る受信電界強度を測定させると共に、その結果を親局へ送信通知させるようにし、親局が各子局側の受信電界強度の測定情報に基づいてネットワークでの使用する最適チャネルを求めて各子局へ通知するという構成になっている。
この提案は、親局をアクセスポイントとするインフラストラクチャモードのネットワークに相当し、安定してより最適化された運用を可能にするが、親局と各子局で無線通信機のソフトウェアシステムが異なっており、親局と各子局の無線通信機は常にセットで運用されなければならない。
また、定期的に子局の送信動作が停止せしめられるため、通話の継続性が妨げられる可能性がある。
【0016】
なお、前記非特許文献1には通信方式が単信の場合のチャネル番号CH31に周波数制御チャネル(422.1875MHz)が設けられており、同チャネルを利用した使用チャネルの変更が可能になっているが、その送信時間は0.5sec以内に制限されており、また単一チャネルの共用になるために混信している可能性が高いこともあり、使い勝手の点で問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、親局や中継器を介することなく単信方式の無線通信を行うグループネットワークの構成端末として、ネットワークの現状使用チャネルに混信が発生した場合に、予め検出されている空きチャネルを用いて、使用チャネルをその空きチャネルへ変更させることをネットワーク全体に指示通知し、チャネルの移行を円滑に行える無線通信装置及び同装置で構成された無線通信ネットワークシステムを提供し、以って上記各従来技術の問題点を合理的に解消したネットワーク通信を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の無線通信機(A1)は、変調送信部と第1の受信復調部からなる送受信部と共に、チャネル走査用の第2の受信復調部を備え、同一構成の他の無線通信機とグループネットワークを構成して単信方式による無線通信を行う無線通信機であって、前記送受信部が受信・待受モードの状態においては、前記第2の受信復調部により前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査させるチャネル走査制御手順と、前記第2の受信復調部が全チャネルを一回走査する度に、各チャネルで得られる受信信号強度に基づいて空きチャネルか否かを判定し、空きチャネルについて前記受信信号強度の昇順に、又は現在から遡及する一定期間における空きチャネルとしての判定回数の降順に順位付けしたチャネル選択順位データを作成するデータ作成手順と、前記データ作成手順でチャネル選択順位データが作成される度に、記憶手段に対して新たに作成されたチャネル選択順位データを更新記録するデータ更新記録手順と、前記第2の受信復調部による全チャネルの走査過程で混信状態と判定されたチャネルについて、その受信信号に前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれているか否かを確認する混信チャネル分析手順と、前記混信チャネル分析手順において混信チャネルでの受信信号にグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれていた場合に、前記送受信部の変調送信部と第1の受信復調部をその混信チャネルに設定するチャネル設定手順とを実行し、前記送受信部の送信モードへの移行に際しては、前記送受信部の第1の受信復調部による現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が無い場合には、その設定チャネルをそのまま送受信チャネルとした送信モードへ移行させ、前記キャリアセンスで混信がある場合には、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信した後、通話信号の送信へ移行させる送信制御手順を実行することを特徴とするものである。
【0019】
この無線通信機(A1)では、通常の送受信部としての変調送信部と第1の受信復調部を有しながら、別途にチャネル走査用の第2の受信復調部も具備し、送受信部が送信モード以外の状態(受信・待受モードの状態)において、第2の受信復調部がグループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査するようにしており(チャネル走査制御手順)、各チャネルの受信信号強度が閾値を超えているかどうかで混信チャネルか空きチャネルかを判定する(データ作成手順)。
ところで、業務用無線通信機のネットワークでは、殆どの場合に複数の空きチャネルが見込めるが、空きチャネルについても当然にその空き状態にも質的な相違がある。
この無線通信機(A1)では、SN比に関連する事項である受信信号強度の大小や、空き状態の安定性に関連する事項である遡及する一定期間における空きチャネルとしての判定回数の大小において、質的優位性の順序付けを行っておく(データ作成手順)。すなわち、前者の場合は受信信号強度の昇順が、後者の場合は空きチャネルとしての判定回数の降順が質的優位性の順序となる。
データ作成手順による作成データはチャネル選択順位データという意義を有しており、前記全チャネル走査の度に記憶手段に逐次更新記録される(データ更新記録手順)。
送信モード以外の状態(受信・待受モードの状態)でのもう一つの重要な手順として、混信チャネルについての取り扱いがある。
混信チャネルは受信信号強度が一定以上の何等かの信号が含まれているチャネルであるが、グループネットワーク内の他の無線通信機からの使用チャネル変更に係る送信電波(後述)を受信している可能性があるため、その受信信号に当該グループのグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれているか否かを分析・確認して(混信チャネル分析手順)、もし含まれていれば送受信部の変調送信部と第1の受信復調部をその混信チャネルに設定する(チャネル設定手順)。
一方、送受信部の送信モードへの移行に際しては、現状設定チャネルで混信がないのであれば、そのままチャネルを維持すればよいが、現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が確認されると、受信・待受モードで記憶手段に更新記録されてきたチャネル選択順位データを利用する(送信制御手順)。
すなわち、チャネル選択順位データの最上位チャネルでキャリアセンスを行って混信が無ければ同チャネルを送受信チャネルとして設定するが、混信が有った場合には次の順位のチャネルで同様に試行して、所定順位のチャネルに至るまでで最先で混信の無かったチャネルを送受信チャネルとして設定する(送信制御手順)。
送受信部を受信・待受モードから送信モードに切り替えた場合、現状設定チャネルでのキャリアセンスの時間を見込んでも、混信した場合のキャリアセンスは僅か数秒前の全チャネル走査で得られたチャネル選択順位データに基づくものであるため、殆どの場合では最上位チャネルで混信無しの結果が得られるであろうが、様々な条件で空きチャネルは変遷するため、第2順位以下、所定順位まで選択可能としておくことが望ましい。
そして、選択されたチャネルが送受信部の送受信チャネルとして設定され、変調送信部からグループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信することになるが(送信制御手順)、この送信電波はグループ内の他の無線通信機においてチャネル走査制御手順とデータ作成手順を実行する中で混信チャネルとして扱われるものであり、混信チャネル分析手順とチャネル設定手順により、前記グループ内の他の無線通信機における送受信部には前記選択チャネルが設定される。
すなわち、グループの全ての無線通信機の送受信部の設定チャネルが前記選択チャネルとなり、グループネットワークの使用チャネルが合理的に変更されることになる。
なお、この無線通信機(A1)の前記データ作成手順による空きチャネルのチャネル選択順位データの作成方法については、前記受信信号強度の昇順とするか、又は現在から遡及する一定時間における空きチャネルとしての判定回数の降順とするか、いずれか一つの方法を適用することになるが、いずれを適用するかを選択できるようにしておいてもよい。
前者の受信信号強度の昇順とする場合はSN比の高い空きチャネルを優先的に選択させる傾向があり、後者の空きチャネルとしての判定回数の降順とする場合は空きチャネルとしての継続時間が安定している空きチャネルを優先的に選択させる傾向があることから、ネットワークのノイズ環境等を考慮して選択すればよい。
【0020】
本発明の無線通信機(A2)は、前記無線通信機(A1)の前記送信制御手順において、現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が有る場合に、それ以降の手順を所定操作キーのオン操作信号を待って実行させることとしたものである。
現状設定チャネルで混信している場合、実際にはそれが一時的なものであることが少なくなく、直ちに且つ自動的に送信制御手順が実行されるようにするよりも、一旦時間を設けて対応した方が運用面で上手くゆくことがある。
その場合、キャリアセンスから第1の所定操作キーがオン操作されるまでの時間を制限することになるが、操作されるまでの時間、また操作されない場合には前記制限時間まで現状設定チャネルでのキャリアセンスを繰り返し実行させるようにしてもよい。
【0021】
本発明の無線通信機(A3)は、前記無線通信機(A1)又は(A2)において、前記送受信部が受信モード又は待受モードの状態において前記所定操作キー又は別の所定操作キーのオン操作信号があった場合に、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信する手順を実行するようにしたものである。
これは、前記のように送受信部の送信モードへの移行に際して送信制御手順を実行するだけでなく、受信モードや待受モードにおいてグループネットワークの現状設定チャネルに明らかな混信状態がある場合に、現状設定チャネルでのキャリアセンスを行わずに直接チャネル変更を行えるようにするものである。
【0022】
本発明の無線通信ネットワークシステム(B1)は、前記無線通信機(A1)をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、何れかの構成端末が、送信モードへ移行して、キャリアセンスにより現状使用チャネルに混信がある場合に、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定すると共に、前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信する一方、前記構成端末以外の各構成端末が、受信・待受モードの状態にあって前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査している過程において、混信状態と判定されたチャネルから前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを受信・検出した場合に、送受信チャネルを前記混信状態と判定されたチャネルに変更設定することを特徴とするものである。
なお、以下においては「何れかの構成端末が、“前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから・・・(中略)・・・、前記構成端末以外の各構成端末が、・・・(中略)・・・前記混信状態と判定されたチャネルに変更設定する”手順」(ただし、クオーテーションマーク間は前文を部分引用)を「ネットワークチャネル変更手順」という。
【0023】
本発明の無線通信ネットワークシステム(B2)は、前記無線通信機(A2)をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、何れかの構成端末が、送信モードへ移行して、キャリアセンスにより現状使用チャネルに混信があり、且つ所定操作キーのオン操作信号があった場合に、前記ネットワークチャネル変更手順を実行するものである。
前記無線通信ネットワークシステム(B1)のように送信モードで現状使用チャネルに混信が有ることが確認された条件だけで自動的に前記ネットワークチャネル変更手順が実行されるのではなく、一旦端末ユーザの状況判断を介在させて、所定操作キーにより前記ネットワークチャネル変更手順を実行させる。
【0024】
本発明の無線通信ネットワークシステム(B3)は、前記無線通信機(A3)をグループ無線通信のネットワークの各構成端末とした無線通信ネットワークシステムであって、前記無線通信ネットワークシステム(B1)又は(B2)において、受信モード又は待受モードの状態で前記所定操作キー又は別の所定操作キーのオン操作信号があった場合にも、前記ネットワークチャネル変更手順を実行させるものである。
送信モードにある端末だけでなく、現状設定チャネルで明らかな混信が認められる場合等に、必要に応じてネットワークの各構成端末の送受信チャネルを変更させることを可能にする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の無線通信機及び無線通信ネットワークシステムによれば、親局や中継器を介さないで単信方式の無線通信を行うグループネットワークにおいて、ネットワーク構成端末(無線通信機)が送信モードへ移行してネットワークの現状設定チャネルに混信が生じている場合や、受信・待受モードで明らかに混信が生じているような場合に、ネットワークの全ての構成端末をSN比が高く、より安定している空きチャネルへ迅速且つ合理的に移行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信機のブロック図である。
【
図2】上記非特許文献1の特定小電力無線局/無線電話用無線設備 標準規格 RCR STD-20における単信方式の無線通信で使用される周波数とそのチャネル番号をまとめた表3.3及び表3.5である。
【
図3】実施形態のグループネットワークの無線通信で使用される通信フレームフォーマット図である。
【
図4】実施形態の無線通信機の全体的動作手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図3のステップS20に相当する送信手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の送信手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図7】受信モード又は待受モードでのネットワークチャネル変更手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図4に示されているチャネル選択順位データの作成方法とは別の作成方法を説明するための模式的表である。
【
図9】実施形態に係る無線通信機5台を端末とするグループネットワークの簡略構成図(以下、「ネットワークの簡略構成図」と略す。)であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、全端末51~55が待受モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図10】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、端末51が送信モードであり、他の端末52~55が受信モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図11】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、端末55が送信モードであり、他の端末51~54が受信モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図12】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、端末53が送信モードとなりCH21でキャリアセンスを実行し、端末51,52,54,55が待受モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図13】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、端末53が送信モードのままCH28でキャリアセンスを実行し、端末51,52,54,55が待受モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図14】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、端末53が送信モードのままCH28でグループ識別コードとCH変更コマンドを送信し、端末51,52,54,55が全チャネル走査の過程でそれらを受信している状態を示す。
【
図15】ネットワークの簡略構成図であり、端末51,52,54,55が送受信チャネルをCH28へ変更してネットワークの使用チャネルはCH28、端末53はそのまま通話可能であり、端末51,52,54,55は受信モードでその通話を聴取すると共に全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図16】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH28、全端末51~55が待受モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図17】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、
図13における端末53によるCH28でのキャリアセンスで混信があったためにCH30に切り替えてキャリアセンスを実行しており、端末51,52,54,55は待受モードで全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【
図18】ネットワークの簡略構成図であり、ネットワークの使用チャネルはCH21、
図17におけるCH30でのキャリアセンスで混信がなく、端末53が送信モードのままCH30でグループ識別コードとCH変更コマンドを送信し、端末51,52,54,55が全チャネル走査の過程でそれらを受信している状態を示す。
【
図19】ネットワークの簡略構成図であり、端末51,52,54,55が送受信チャネルをCH30へ変更してネットワークの使用チャネルはCH30、端末53はそのまま送信可能であり、端末51,52,54,55は受信モードでその送信に係る音声を聴取すると共に、全チャネル走査を繰り返し実行中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の無線通信機及び無線通信ネットワークの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、
図1は本発明の実施形態に係る業務用無線通信機(特定小電力無線局相当)のブロック図であり、この無線通信機は
図9から
図19のネットワークの簡略構成図においてはグループネットワークの構成端末となる。
【0028】
アンテナ11での受信信号は2つの受信復調部RX1,RX2に入力されるが、それら受信復調部RX1,RX2における受信チャネルの設定制御はシステム制御部10によって行われる。
受信復調部RX1は設定された受信チャネルに対応する受信信号だけを取り込み、その受信信号に係る変調波信号を復調して増幅器12へ出力し、増幅器12で増幅された復調信号がスピーカ(又はイヤホン)13で音声再生される。また、送信に際してはキャリアセンスを行うために、受信復調部RX1での復調信号はシステム制御部10へも出力されている。
受信復調部RX2も設定された受信チャネルに対応する受信信号だけを取り込んで復調することは受信復調部RX1と同様であるが、この受信復調部RX2はチャネル走査用に設けられたものであり、その復調後の信号は音声再生系へは出力されず、システム制御部10へ出力されて分析される。
【0029】
送信系については、マイクロホン14の音声信号が増幅器15で増幅されて変調送信部TX1へ出力され、変調送信部TX1では搬送波を音声信号で変調して増幅器16へ出力し、電力増幅された変調信号がアンテナ17から無線送信される。
この送信に係る送信チャネルの設定制御もシステム制御部10によって行われる。
【0030】
なお、システム制御部10は、PTTボタンや各種キーを備えた操作部18からの指示入力及び内蔵プログラムに基づいて、受信復調部RX1,RX2や変調送信部TX1を制御するだけでなく、増幅器12,15,16や液晶表示部19などを含むシステム全体の制御を担っており、その制御に際してはメモリ20に各種データを格納・更新・消去することもある。
【0031】
図2は特定小電力無線局が単信方式の無線通信で使用可能な周波数とそのチャネル番号をまとめたものである。ただし、同図の表3.3及び表3.5のチャネル番号は20~30と41~49で途中が抜けた番号になっているため、後述する
図4のフローチャートでの表現の便宜上、インデックス番号(IDX)をチャネル番号に対応させてある。
なお、この実施形態に係る無線通信機では前記表に掲載されている全てのチャネルが使用可能な条件で説明しているが、必ずしも全てのチャネルを使用する必要はなく、いくつかのチャネルに限定して使用する設定であってもよい。
【0032】
この実施形態に係る無線通信機がグループネットワークの構成端末として使用される場合には、
図3に示されるような通信フレームフォーマットが採用され、送信側端末では同フォーマットに組み込まれた音声情報等に係るベースバンド信号によりMSK(Minimum Shift Keying)等で変調した変調波を送信し、受信側端末ではその変調波に係る受信信号を復調して音声信号を再生する一方、データペイロードに組み込まれている情報は分離検出されて、システム制御部10による動作制御のためのデータとされる。
この実施形態では、通信フレームフォーマットのデータペイロードには自機IDや送信CH情報がセットされていると共に、グループ識別コードとCH変更コマンド等が適応的にセットされるようになっている。
【0033】
次に、この実施形態に係る無線通信機のグループ通信モードでの動作を
図4、
図5、
図6及び
図7のフローチャートを用いて説明する。
図4はグループ通信モードの全体的制御手順を示し、先ず操作部18からグループ識別コードを入力してグループ通信モードを設定する(S0)。
以降、グループ通信モードが設定されていると、受信モード又は待受モード(以下、「受信・待受モード」)という)の状態(S2-N,S12-N)ではステップS3~S11の手順を実行し、一方、操作部18のPTTボタンで送信モードが設定されると、ステップS20(送信手順)へ移行して、具体的には
図5又は
図6に示される手順(ステップ21~S40)を実行することになる。
また、付加するかどうかは選択的ではあるが、受信・待受モードの状態で操作部18に設けたCHシフトキーをオン操作すると(S12)、ステップS50(ネットワークチャネル変更手順)へ移行して、
図7に示される手順(ステップS51~S58)を実行する。
【0034】
<<受信・待受モードでのチャネル選択順位データの作成と自機の送受信チャネルの変更(
図4)>>
この受信・待受モードでは、変調送信部TX1がオフ状態、受信復調部RX1,RX2がオン状態とされ、受信復調部RX1は既設定のチャネルのままであるが、受信復調部RX2の受信チャネルについては
図2のIDXが1~20のチャネルを順次繰り返して走査するように制御される。
【0035】
受信復調部RX2はIDXがn(=1~20)のチャネルに設定され、同チャネルの電波を受信して復調すると、その復調信号からRSSI(受信信号強度)を求め、RSSIのレベル値が所定閾値を超えているか否かで受信信号の有無(混信の有無)を判定する(S3,S4)。
そして、IDX=nのチャネルについてRSSIが所定閾値より小さく、混信が無いと判断された場合には、そのチャネル番号とRSSIのレベル値をメモリ20にセーブする(S5,S6)。
【0036】
前記手順がIDXで1~20の全チャネルについて実行されて1回の走査が完了すると、その段階でメモリ20には混信が無いと判断されたチャネル(空きチャネル)に係るチャネル番号とRSSIのレベル値がセーブされていることになるが(S1・S2~S7→S8→S2/S7-Y)、この実施形態では、それらの空きチャネルについてRSSIのレベル値比較で昇順となるチャネル選択順位データを作成する(S9)。
そして、受信・待受モードにおいてはIDXが1~20のチャネルに対する前記走査が繰り返し実行されており(S1~S9→S1)、メモリ20には前回の走査で得られているチャネル選択順位データがセーブされているが、その前回のデータは今回のデータで書き替えられ(S9)、常に最新のチャネル選択順位データがメモリ20に記録されていることになる。
【0037】
ここで、チャネル選択順位データの有する意義は、RSSIが所定閾値より小さい条件で空きチャネルとみなされても含まれているノイズレベルはチャネルごとに相違しており、RSSIのレベル値の昇順でチャネルの選択順位を定めることにより、空きチャネルをSN比の高いチャネルから優先的に選択されるようにできるという点にある。
なお、20チャネル分の走査に要する時間は1チャネル当たりに約100msec程度を要するので約2sec程度となるが、使用チャネルを限定した場合には当然にその時間は短縮される。
【0038】
前記のステップS5(混信の有無判断)においては走査したチャネルに混信が無いと判断した場合の手順について説明しているが、混信があると判断した場合については、この実施形態の場合、グループネットワークの他の構成端末からのチャネル変更指示に係る受信電波によるものである可能性を考慮しなければならない。
そこで、混信があると判断した場合には、その混信に係る復調信号を分析し、通信フレームフォーマット(
図3)を確認してそのデータペイロードで当該グループネットワークのグループ識別コードとCH変更コマンドが検出された場合には、送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1を当該混信があると判断したチャネルに設定する(S5→S10,S11)。
なお、グループ識別コードとCH変更コマンドが検出されなかった場合は、前記チャネル走査とチャネル選択順位データの作成・更新を継続して実行する(S10→S6,S7,S8→S2~S5)。
【0039】
<<送信モードでのネットワークチャネルの変更(
図5、
図6)>>
PTTボタンをオン操作して、現状設定チャネル、すなわち
図4のグループ通信モードの設定段階(ステップS0)における初期設定チャネル又はステップS11での設定チャネルでキャリアセンスを実行することになるが、それらのチャネルで混信があるかどうかによって実行手順が分かれる(S21,S22)。
【0040】
前記キャリアセンスで混信が無い場合は、グループ内の他の無線通信機に対して現状設定チャネルで単信方式による送信が可能であり、PTTボタンをオンにしたまま送信(通話)を実行した後、PTTボタンの押圧を解除して送信モードを解除する(S22→S23~S25)。
【0041】
一方、前記キャリアセンスで混信が有った場合には、メモリ20にセーブされている現状のチャネル選択順位データにおける最上位のチャネルを受信復調部RX1に設定してキャリアセンスを実行する(S22→S30,S31)。
その場合、受信・待受モードから送信モードへ移行したが、メモリ20のチャネル選択順位データは受信・待受モードにおいて短時間のサイクル(本実施形態では約2sec程度)で更新されているのであるから、通常はこのキャリアセンスで殆どが混信無しの結果になるが、電波の状態が頻繁に変化する環境下では混信有りとなる場合もあり得る。
この実施形態では、前記チャネル選択順位データにおいて最上位のチャネルのキャリアセンスで混信有りとなった場合は、第2順位にあるチャネルで、更にそれでも混信となった場合には第3順位にあるチャネルまでキャリアセンスを実行できるようにし(S30~S34)、ほぼ確実に空きチャネルが適用できる条件を整えている。
【0042】
そして、前記キャリアセンスで混信の無い空きチャネルがあれば、送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1にそのチャネルを設定し、所属しているグループネットワークのグループ識別コードとCH変更コマンドを
図3の通信フレームフォーマットのデータペイロードに組み込んで送信する(S32→S36)。
その結果、
図4のステップS5→ステップS10,S11で説明したように、この無線通信機と同機能を備えているグループ内の他の無線通信機においては、受信・待受モードにおける受信復調部RX2によるチャネル走査過程で混信のあるチャネルの受信信号であって、且つグループ識別コードとCH変更コマンドが検出されることになり、それに基づいて自機の送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1にそれらのコードとコマンドを検出したチャネルと同一のチャネルを設定する(S37)。
【0043】
すなわち、前記ステップS30~S37でネットワークチャネル変更手順が実行されており、その結果、この無線通信機からグループ内の他の無線通信機への送信条件が整ったことになり、PTTボタンをオンにしたまま単信方式での送信(通話)を実行した後、PTTボタンの押圧を解除して送信モードを解除する(S38,S39,S40)。
なお、前記送信条件が整うまでには若干の時間が見込まれるため、送信(通話)の開始タイミングを指示通知するための手段(電子音やインジケータ点灯)を設けてもよい。
【0044】
ところで、
図5のステップS21,S22→S30~S34においては、初期設定チャネル又は
図4のステップS11での設定チャネル、すなわち現状設定チャネルでキャリアセンスを実行して混信があった場合に、直ちにメモリ20にセーブされているチャネル選択順位データを用いたキャリアセンスに移行しているが、
図6に示すように、ステップS22とステップS30の間に特定のCHシフトキーのオン操作手順を介在させて、一定時間だけ混信状態のまま待機する時間を設けてもよい(S22→S26~S28)。
これは、混信状態が一時的である場合もあり、自動的に手順を進行させるよりも、混信状態の様子を一定時間みた上でチャネルを変更させた方がよい場合があることを考慮したものである。
【0045】
<<受信・待受モードでのネットワークチャネルの変更(
図7)>>
前記送信モードでは、同モードを設定した際に、一旦既設定のチャネルでキャリアセンスを実行し(
図5及び
図6のS21,S22)、混信が有った場合にネットワークチャネル変更手順を実行するようになっている(
図5及び
図6のS22→S30~S37)。
ところで、受信・待受モードで明らかにグループ以外の通話音が聞こえているような現状設定チャネルの混信状態においても、次に送信モードになって通話を行おうとする無線通信機は、当然に混信結果となるにも拘わらず現状設定チャネルでキャリアセンスを行った後にチャネル選択順位データの最上位チャネルからキャリアセンスを行ってチャネル変更を行うことになる。
したがって、そのように受信・待受モードにおいてグループネットワークの各無線通信機で混信状態が明らかになっているような場合には、むしろ受信・待受モードで先んじて空きチャネルへ変更させておいた方がよい場合もある。
【0046】
そこで、受信・待受モードにおいて操作部18のCHシフトキーをオン操作することで、その信号を検知したシステム制御部10が
図7に示すネットワークチャネル変更手順を実行する(
図4のS12→S50)。
図7のネットワークチャネル変更手順(S51~S58)は送信モードにおける
図5及び
図6のステップS30~S37とほぼ同様であるため、その具体的な説明は省略する。
相違している点としては、送信モード(
図5及び
図6)での最終手順がチャネル変更の如何によらず同モードを解除して受信・待受モードに戻るのに対して(S35/S40/S28→
図4のS1)、この受信・待受モードでのネットワークチャネル変更手順ではそのままモードを維持して終了する点にあるに過ぎない(S56又は58→
図4のS1)。
【0047】
なお、このネットワークチャネルの変更に係る指示操作はCHシフトキーによることとしており、送信モードにおける
図6でのチャネル変更の開始指示操作も同様にCHシフトキーにより行われているが、操作時のモードが相違しているために別の動作を実行させる上での支障はない。
尤も、区別した方が分かり易いのであれば、それぞれを別の操作キーに割り当てるか、同一操作キーの長押しと短押しで判別させるようにすればよい。
【0048】
<<その他の変形例(
図8)>>
また、前記実施形態では、受信復調部RX2のチャネル走査による各チャネルでの復調信号のRSSIのレベル値と閾値とを比較して空きチャネルか否かを判定し、空きチャネルについては更にRSSIのレベル値を昇順に順位付けしてチャネル選択順位データを作成しているが、その順位付けの方法については、過去一定期間での空きチャネルとしての判定回数の降順で行ったものであってもよい。
【0049】
具体的には、チャネル走査毎の空きチャネルか否かの判定結果を、
図2に示すチャネル毎にメモリ20へリングバッファ方式で2700回分だけセーブするようにして、チャネル走査が1回完了する度に、2700回中の空きチャネルとしての判定回数を求め、その降順にチャネル選択の順位を決定する。
これを模式的に表にまとめると
図8のようになり、「*」部分には各チャネルについての混信無し(空きチャネル)の結果である“1”と混信有り(非空きチャネル)の結果である“0”が入り、各チャネルの空き回数Nが求められて、その降順に並べてチャネル選択順位としている。
なお、2700回分はチャネル走査1回の所要時間を2secとして約1.5時間に相当する。
【0050】
このチャネル選択順位データの作成方法によれば、各チャネルについて過去の空きチャネル状態の時間的実績に基づいて、空きチャネルの選択優先順位を定めるものであり、チャネル選択後における通信チャネルとしての安定性の確保に資することになる。
なお、上記の2つのチャネル選択順位データの作成方法を単一の無線通信機にソフトウエアとして搭載させ、グループネットワークが運用される場所の電波環境などに対応させて、操作部18のキー操作で選択できるようにしてもよい。
【0051】
<<グループネットワークへの適用>>
上記では、主に無線通信機自体の観点から、単信方式で無線通信を行うグループネットワークの構成端末として、ネットワークでの現状設定チャネルに混信が生じた場合に、自機及びネットワークに属する他の無線通信機の送受信チャネルを他の空きチャネルへ移行させる手順について説明したが、以下では、ネットワークシステムの観点からみた各端末の通信状態の変遷について
図9から
図19を用いて説明する。
【0052】
先ず、
図9において51~55は前記実施形態に係る無線通信機(以下、「端末」という。)であり、前記グループネットワークを構成しており、各端末51~55における3つの方形ブロックは送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1及びチャネル走査用の受信復調部RX2に相当し、変調送信部TX1と受信復調部RX1については設定チャネルのチャネル番号(
図2参照)も付記し、受信復調部RX2は「-SCAN」を付記して走査用であることを示してある。
また、各端末51~55の下側には、受信・待受モードにおいて受信復調部RX2のチャネル走査に基づいて作成されたチャネル選択順位データが順位表として付記されている。
【0053】
図9は、ネットワークの現状使用チャネルがCH21(チャネル番号21のチャネルを示し、以下同様の表記とする。)であり、全端末51~55の受信復調部RX1-CH21は待受モードにあり、また受信復調部RX2-SCANは全チャネル走査を実行し、その1回の走査毎にチャネル選択順位データが更新されている状態を示す。
ここに、各端末51~55で作成・更新されているチャネル選択順位データは必ずしも同一ではなく、それぞれのロケーションの相違により微妙に異なったチャネル選択順位になっている。
【0054】
図10は、
図9の状態から端末51が送信モードとなり、CH21でのキャリアセンスで混信が無いため、変調送信部TX1-CH21から音声信号による変調波の電波を送信する一方、端末52~55は受信モードとなり受信復調部RX1-CH21において前記電波を受信・復調して音声再生している状態を示している。
なお、端末51は、変調送信部TX1-CH21が送信状態になったことで、受信復調部RX1-CH21と受信復調部RX2-SCANはOFF状態とされ、端末52~55の受信復調部RX2-SCANは継続して全チャネル走査を実行してチャネル選択順位データの作成・更新を行っている。
【0055】
図11は、
図10の端末51から他の端末52~55に送信された音声メッセージに対して端末55が応答して音声を返信している状態を示し、
図10の状態で送信モードにあった端末51は受信モードに戻り、端末55が送信モードになっている。
その場合、端末55はCH21でのキャリアセンスで混信が無いため、変調送信部TX1-CH21から音声信号による変調波の電波を送信する一方、端末51~54は受信モードとなり受信復調部RX1-CH21において前記電波を受信・復調して音声再生している。
なお、端末55は、変調送信部TX1-CH21が送信状態になったことで、受信復調部RX1-CH21と受信復調部RX2-SCANはOFF状態とされ、また、端末51~54の受信復調部RX2-SCANは全チャネル走査を実行してチャネル選択順位データの作成・更新を行っている。
【0056】
このように、各端末51~55がネットワークの現状設定チャネルCH21を送受信部の設定チャネルとして維持しながら、待受モードからいずれか一つの端末が送信モードとなって他の端末に対して音声メッセージを送信するという単信方式でのグループ通信を実現している。
そして、各端末51~55では、送信モード以外の期間、すなわち待受モード又は受信モードにおいて、常に受信復調部RX2-SCANに全チャネル走査を繰り返し実行させてチャネル選択順位データの作成・更新を行っており、各端末51~55はそれぞれのロケーションにおける最新の空きチャネルの選択順位情報をセーブしている。
【0057】
図12は、端末53が現状使用チャネルCH21で送信モードを設定し、受信復調部RX1-CH21でキャリアセンスを実行したところ混信していた場合を示す。
端末53は送信モードでの受信復調部RX1-CH21によるキャリアセンスに際しては変調送信部TX1-CH21と受信復調部RX2-SCANをオフ状態とし、他の端末51,52,54,55は待受状態であり変調送信部TX1-CH21をオフ状態としているが、受信復調部RX1-CH21と受信復調部RX2-SCANはオン状態にあり、受信復調部RX2-SCANによる全チャネル走査は継続されている。
【0058】
図13は、
図12における端末53の受信復調部RX1-CH21によるキャリアセンスの結果がネットワークに属する他の端末51,52,54,55の送信電波以外の電波による混信状態であったことを受けて、端末53が自機のチャネル選択順位データの最上位にあるCH28を送受信部の変調送信部TX1と受信復調部RX1に設定し、受信復調部RX1-CH28によりキャリアセンスを実行している状態を示す。
したがって、端末53の変調送信部TX1-CH28と受信復調部RX2-SCANのオフ状態は継続され、他の端末51,52,54,55は現状設定チャネルCH21のままで待受状態にあり、変調送信部TX1-CH21をオフ状態としているが、受信復調部RX1-CH21と受信復調部RX2-SCANはオン状態にあって、受信復調部RX2-SCANによる全チャネル走査は継続されている。
【0059】
図14は、
図13における端末53の受信復調部RX1-CH28によるCH28でのキャリアセンスで混信がなかった場合において、端末53の変調送信部TX1-CH28がCH28でグループ識別コードとCH変更コマンドを送信している状態を示す。
この場合、端末53は変調送信部TX1-CH28をオン状態とするため受信復調部RX1-CH28と受信復調部RX2-SCANはオフ状態としており、一方、他の端末51,52,54,55は現状設定チャネルCH21の設定状態のまま待受状態にあり、変調送信部TX1-CH21をオフ状態としているが、受信復調部RX1-CH21と受信復調部RX2-SCANはオン状態にあって、受信復調部RX2-SCANによる全チャネル走査を継続させているため、その過程におけるCH28の走査中に端末53が送信したグループ識別コードとCH変更コマンドを受信・検出することができる。
【0060】
図15は、
図14において端末51,52,54,55が受信復調部RX2-SCANで端末53からのグループ識別コードとCH変更コマンドを受信・検出したことに基づいて、それぞれ自機の送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1の現状設定チャネルであるCH21を、受信復調部RX2-SCANによる走査過程でのグループ識別コードとCH変更コマンドの受信チャネルであるCH28へ変更した状態を示す。
この場合、端末53は送信モードで変調送信部TX1-CH28がオン状態、受信復調部RX1-CH28と受信復調部RX2-SCANがオフ状態であり、一方、端末51,52,54,55は待受モードで変調送信部TX1-CH28がオフ状態、受信復調部RX1-CH28と受信復調部RX2-SCANがオン状態であることから、端末53からそのまま引き続いて音声メッセージを送信でき、端末51,52,54,55はそれを受信することで受信モードとなって音声再生を行う。
なお、端末51,52,54,55は受信・待受モードであるから受信復調部RX2-SCANでのチャネル走査とチャネル選択順位データの作成・更新を継続的に実行している。
【0061】
図16は、
図15において各端末51~55の送受信部の使用チャネルがCH21からCH28へ変更され、ネットワークの使用チャネルがCH28に移行して待受モードになった状態を示す。
図9の状態に対して、各端末51~55の変調送信部TX1と受信復調部RX1の設定チャネルがCH28に変更されただけで、受信復調部RX2-SCANが全チャネル走査を実行してチャネル選択順位データの作成・更新を行っていることも変わりない。
【0062】
図17から
図19は、
図13での端末53によるチャネル選択順位データの最上位のCH28でキャリアセンスを実行した場合に混信していたため、チャネル選択順位データの第2順位であるCH30でキャリアセンスを実行し、前記混信が無かったのでグループネットワークでの使用チャネルをCH30に設定した場合のネットワークの簡略構成図での流れを示している。
端末53の送受信部に対するチャネル設定がCH28とCH30とで異なるだけで、
図13は
図17に、
図14は
図18に、
図15は
図19に対応している。
【0063】
そして、このグループネットワークの各端末51~55は、
図5及び
図6のステップS31~34に示したとおり、送信モードになった端末が作成・更新しているチャネル選択順位データの第1順位から第3順位までのチャネルでキャリアセンスが実行できるようになっているため、仮に最上位のチャネルが混信状態になっていた場合であっても、第2順位又は第3順位のチャネルのキャリアセンスで殆ど確実に混信の無い空きチャネルがあるため、混乱することなくネットワークのチャネル変更を行わせることができる。
【0064】
ところで、以上のグループネットワークでの端末51~55の運用においては、送信モードへ移行して現状設定チャネルでキャリアセンスを行ったときに混信が生じた場合に、ネットワークチャネル変更手順を実行させている。
一方、
図9から
図19までのネットワークの簡略構成図において、受信・待受モードにある端末(送信モード以外の端末)では常に受信復調部RX1が現状設定チャネルの受信信号を取り込んで復調して音声再生を行っているため、その端末ユーザは自機が属するグループネットワークでの通話音声以外の他の無線通信機間の通話や近隣の電波発生源からのノイズ等の再生音から現状設定チャネルの混信度合いをリアルタイムに確認できる。
【0065】
したがって、受信・待受モードにある端末51~55で現状設定チャネルでの混信が明らかで通信に支障をきたすような状況になっている場合には、受信・待受モードにある端末から直接にネットワークチャネル変更手順(
図7)を実行させた方がよい場合もある。
【0066】
例えば、
図9において、待受モードにある端末53のユーザがその受信復調部RX1-CH21による復調信号の再生音からチャネルCH21が混信状態にあると確認した場合には、端末53のユーザが待受モードのまま操作部18のCHシフトキーをオン操作すると
図7のネットワークチャネル変更手順(
図4:S12→S50=
図7:S51~S58)が実行される。
【0067】
ネットワークチャネル変更手順のステップS51~S57においては、メモリ20に更新記録されているチャネル選択順位データの順位1~3のチャネルの内、キャリアセンスで最先に空きチャネルになっていたチャネルが送受信部である変調送信部TX1と受信復調部RX1に設定される。
この場合、
図9における端末53のチャネル選択順位データでの順位1~3のチャネルはCH28,CH30,CH32の順になっており、順位1のCH28がキャリアセンスで空きチャネルであることが確認されれば、端末53の送受信部のチャネルがCH28に設定される。
【0068】
ただし、その段階では端末53の送受信チャネルだけがCH28で、他の端末51,52,54,55の送受信チャネルはCH21のままである。
ネットワークチャネル変更手順のステップS57では自機のチャネルを変更設定すると共に、その変更設定されたチャネルCH28でキャリアセンスを実行後、グループコードとCH変更コマンドを送信する。
そして、その状態はネットワークの簡略構成図における
図13及び
図14に相当する。
【0069】
一方、他の各端末51,52,54,55では全チャネル走査を行っている受信復調部RX2-SCANでそのグループコードとCH変更コマンドを受信し(
図14)、それによって自機の送受信チャネルをCH28に変更する(
図4のS10,S11)。
その結果、グループネットワークの全端末51~55の送受信チャネルがCH28に変更されたことになり、端末53が待受モードへ戻ると、前記ネットワークの簡略構成図における
図16に示されるような全端末51~55の待受モード状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明はグループネットワークを構成する特定小電力無線局である業務用無線通信機として利用でき、グループネットワークシステムにおいて使用中のチャネルに混信が生じた場合のチャネル変更方式として適用できる。
【符号の説明】
【0071】
RX1,RX2…受信復調部、TX1…変調送信部、10…システム制御部、11…アンテナ、12…増幅器、13…スピーカ(又はイヤホン)、14…マイクロホン、15…増幅器、16…増幅器、17…アンテナ、18…操作部、19…液晶表示部、51,52,53,54,55…グループネットワークの構成端末(無線通信機)
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、単信方式のグループ無線通信において使用中のチャネルに混信が生じた場合に、グループ全体が迅速に空きチャネルへ切り替えて安定した通信を維持させるための無線通信機及び無線通信ネットワークに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
そこで、本発明は、親局や中継器を介することなく単信方式の無線通信を行うグループネットワークの構成端末として、ネットワークの現状使用チャネルに混信が発生した場合に、予め検出されている空きチャネルを用いて、使用チャネルをその空きチャネルへ変更させることをネットワーク全体に指示通知し、チャネルの移行を円滑に行える無線通信機及び同無線通信機で構成された無線通信ネットワークシステムを提供し、以って上記各従来技術の問題点を合理的に解消したネットワーク通信を実現することを目的とする。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
変調送信部と第1の受信復調部からなる送受信部と共に、チャネル走査用の第2の受信復調部を備え、同一構成の他の無線通信機とグループネットワークを構成して単信方式による無線通信を行う無線通信機であって、
前記送受信部が受信・待受モードの状態においては、
前記第2の受信復調部により前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査させるチャネル走査制御手順と、
前記第2の受信復調部が全チャネルを一回走査する度に、各チャネルで得られる受信信号強度に基づいて空きチャネルか否かを判定し、空きチャネルについて前記受信信号強度の昇順に、又は現在から遡及する一定期間における空きチャネルとしての判定回数の降順に順位付けしたチャネル選択順位データを作成するデータ作成手順と、
前記データ作成手順でチャネル選択順位データが作成される度に、記憶手段に対して新たに作成されたチャネル選択順位データを更新記録するデータ更新記録手順と、
前記第2の受信復調部による全チャネルの走査過程で混信状態と判定されたチャネルにおける前記第2の受信復調部の受信信号に前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれているか否かを確認する混信チャネル分析手順と、
前記混信チャネル分析手順において混信チャネルでの受信信号にグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれていた場合に、前記送受信部の変調送信部と第1の受信復調部をその混信チャネルに設定するチャネル設定手順とを実行し、
前記送受信部の送信モードへの移行に際しては、
前記送受信部の第1の受信復調部による現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が無い場合には、その現状設定チャネルをそのまま送受信チャネルとした送信モードへ移行させ、前記キャリアセンスで混信がある場合には、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信した後、通話信号の送信へ移行させる送信制御手順を実行する
ことを特徴とする無線通信機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の無線通信機(A1)は、変調送信部と第1の受信復調部からなる送受信部と共に、チャネル走査用の第2の受信復調部を備え、同一構成の他の無線通信機とグループネットワークを構成して単信方式による無線通信を行う無線通信機であって、前記送受信部が受信・待受モードの状態においては、前記第2の受信復調部により前記グループネットワークで使用可能な全チャネルを繰り返し走査させるチャネル走査制御手順と、前記第2の受信復調部が全チャネルを一回走査する度に、各チャネルで得られる受信信号強度に基づいて空きチャネルか否かを判定し、空きチャネルについて前記受信信号強度の昇順に、又は現在から遡及する一定期間における空きチャネルとしての判定回数の降順に順位付けしたチャネル選択順位データを作成するデータ作成手順と、前記データ作成手順でチャネル選択順位データが作成される度に、記憶手段に対して新たに作成されたチャネル選択順位データを更新記録するデータ更新記録手順と、前記第2の受信復調部による全チャネルの走査過程で混信状態と判定されたチャネルにおける前記第2の受信復調部の受信信号に前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれているか否かを確認する混信チャネル分析手順と、前記混信チャネル分析手順において混信チャネルでの受信信号にグループ識別コードとチャネル変更コマンドが含まれていた場合に、前記送受信部の変調送信部と第1の受信復調部をその混信チャネルに設定するチャネル設定手順とを実行し、前記送受信部の送信モードへの移行に際しては、前記送受信部の第1の受信復調部による現状設定チャネルでのキャリアセンスで混信が無い場合には、その現状設定チャネルをそのまま送受信チャネルとした送信モードへ移行させ、前記キャリアセンスで混信がある場合には、前記記憶手段のチャネル選択順位データの最上位チャネルから所定順位のチャネルまで順次キャリアセンスを行う中で最先に検出された混信の無いチャネルを送受信チャネルとして設定し、前記変調送信部から前記グループネットワークのグループ識別コードとチャネル変更コマンドを送信した後、通話信号の送信へ移行させる送信制御手順を実行することを特徴とするものである。