(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158668
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/17 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K1/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074034
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】松浦 透
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健介
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CB04
5H622PP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の永久磁石で構成したステータ磁石群をスロット内に配置しても、上記ステータ磁石群の破損を防止できる電動機を提供すること。
【解決手段】本発明の電動機は、ロータとステータとを備える。ステータは、内径側が開口したスロットを有するステータコアと、上記スロット内に配置されたコイル線と、上記スロット内の上記コイル線よりも内径側に、複数の永久磁石が周方向に並んで配置されたステータ磁石群を、含み、上記ステータコアは、上記スロットの両側のティースからスロット内に向かって周方向突出した保持部を、有し、上記保持部が、上記ステータ磁石群の内径側と、上記ステータ磁石群とコイル線との間と、に配置され、上記ステータ磁石群の永久磁石は、その内径側の周方向両端の稜線の少なくとも一方が、上記内径側の保持部に掛かり上記ステータコアに保持される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを備える電動機であって、
上記ステータは、
内径側が開口したスロットを有するステータコアと、
上記スロット内に配置されたコイル線と、
上記スロット内の上記コイル線よりも内径側に、複数の永久磁石が周方向に並んで配置されたステータ磁石群を、含み、
上記ステータコアは、上記スロットの両側のティースからスロット内に向かって周方向突出した保持部を、有し、
上記保持部が、上記ステータ磁石群の内径側と、上記ステータ磁石群とコイル線との間と、に配置され、
上記ステータ磁石群の永久磁石は、その内径側の周方向両端の稜線の少なくとも一方が、上記内径側の保持部に掛かり上記ステータコアに保持されていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
上記ステータコアのティースは、上記ステータ磁石群と接する部分が、内径側に向かうにしたがって拡がる形状であることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
上記ステータ磁石群の永久磁石は、外径側の周方向両端の稜線の少なくとも一方が、上記ステータ磁石群の外径側の上記保持部に掛かり上記ステータコアに保持されていることを特徴とする請求項1に電動機。
【請求項4】
上記ステータ磁石群は、周方向の幅が外径側に向かうにしたがって狭まるテーパ形状の永久磁石を含み、
上記テーパ形状の永久磁石が、上記ステータ磁石群の中央部に配置され、
ステータ磁石群の外径側の保持部間の間隔が、内径側の保持部間の間隔よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項5】
上記スロット内に配置されたコイル線と永久磁石との間の隙間に冷却媒体が流れることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項6】
上記ステータ磁石群を構成する複数の永久磁石の配向列が、ハルバッハ配列であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の電動機。
【請求項7】
上記ロータは、上記ステータのティースの数をm、極対数をn、但し、m、nは整数とするとき、極対数がm±nであり、
上記ロータの周方向に並ぶ永久磁石は、すべての永久磁石の着磁方向がエアギャップ方向を向いて配置され、
上記永久磁石間の少なくとも一部に空気よりも透磁率の高い部材を有することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に係り、更に詳細には、永久磁石を有するステータを備える電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアのスロット内にコイル線とステータ磁石とを有し、上記ステータ磁石をステータコアの内周側に配列したステータを備える磁気ギアード電動機が知られている。
上記電動機のステータは、トルク向上の観点から、スロットのロータ側が広く開口していることが好ましい。
【0003】
特許文献1には、1つのスロット内に1つのステータ磁石を配置し、ステータコアのティース先端に、スロット内に向かって周方向に突出する保持部を設け、この保持部によって開口部を有するスロット内のステータ磁石を脱落不能に保持したステータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のステータは、1つのスロット内に1つのステータ磁石を配置するものであって、複数の永久磁石で構成されたステータ磁石群をスロット内に配置するものではないため、上記ステータ磁石群を用いると破損する虞がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の永久磁石で構成したステータ磁石群をスロット内に配置しても、上記ステータ磁石群の破損を防止できる電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ステータ磁石群を構成するすべての永久磁石が、その少なくとも一部がスロット内に突出する保持部に掛かるように配置することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の電動機は、ロータとステータとを備える。
そして、上記ステータは、内径側が開口したスロットを有するステータコアと、上記スロット内に配置されたコイル線と、上記スロット内の上記コイル線よりも内径側に、複数の永久磁石が周方向に並んで配置されたステータ磁石群を、含み、
上記ステータコアは、上記スロットの両側のティースからスロット内に向かって周方向突出した保持部を、有し、
上記保持部が、上記ステータ磁石群の内径側と、上記ステータ磁石群とコイル線との間と、に配置され、
上記ステータ磁石群の永久磁石は、その内径側の周方向両端の稜線の少なくとも一方が、上記内径側の保持部に掛かり上記ステータコアに保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステータ磁石群を構成するすべての永久磁石が、その内径側の周方向両端の稜線の少なくとも一方が上記保持部に掛かり、永久磁石の少なくとも一部がステータコアに保持されていることしたため、ステータ磁石群の破損を防止できる電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電動機の一例を示す軸方向から見た断面図である。
【
図2】
図1中、四角で囲んだ部分の一例を示す要部拡大断面図である。
【
図3】ステータコアのティース内径側に向かうにしたがって拡がる形状のときのステータ磁石群の配置状態を説明する要部拡大断面図である。
【
図4】テーパ形状の永久磁石をステータ磁石群の配置状態を説明する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電動機について詳細に説明する。
本発明の電動機は、
図1に示すように、ロータとステータとを備える。
【0012】
上記ステータ1は、
図2の要部拡大図に示すように、ステータコア10と、コイル線2と、複数の永久磁石31が周方向に並び隣接する永久磁石同士が接着して形成されたステータ磁石群3と、を有する。
【0013】
上記ステータコアは、軸6を中心とする円環状のバックヨーク11から内径側に突き出た複数のティース12が周方向に並び、上記ティース間に内径側が開口したスロットを形成しており、このスロット内の外径側にコイル線が配置され、内径側にステータ磁石群が配置される。
【0014】
上記ステータコアは、スロットの両側のティース12からそのスロット内に向かって周方向に突出した保持部13a、13bを有し、この保持部は、上記ステータ磁石群の内径側と、上記ステータ磁石群とコイル線との間にそれぞれ配置されている。
【0015】
上記内径側の保持部13bは、その外径側がステータ磁石群3の内径側に当接してステータ磁石群を保持し、ステータ磁石群とコイル線との間の外径側の保持部13aは、その内径側がステータ磁石群3の外径側に当接して、ステータ磁石群の外径から保持しており、これら内径側及び外径側の保持部によって、ステータ磁石群全体の径方向へのズレを防止している。
【0016】
しかし、モータの作動時には、上記ステータ磁石群にロータ5からの電磁力が作用し、この電磁力は、ロータの回転に伴って、ロータの回転方向から径方向内側、さらにロータの回転方向とは逆方向に引張り力を逐次変化させながら、上記ステータ磁石群を構成する永久磁石31をそれぞれ引張る。
【0017】
上記引張り力は、その方向が逐次変化するので、隣接する永久磁石同士であっても、引張り方向の変化タイミングにずれが生じ、隣接する永久磁石間に異なる方向の引張り力が作用するため、ステータ磁石群の接着面32に応力が集中し易い。そして、この接着面32は、永久磁石が連続しておらず、永久磁石が連続した他の部分よりも強度が低いので破損が生じ易い。
【0018】
本発明の電動機においては、ステータ磁石群を構成する各永久磁石が、その内径側の周方向両端の稜線、すなわち、ステータ磁石群の表面に現れる永久磁石同士の接着面32の2つの繋目のうち、少なくとも一方が保持部13bに掛かり上記ステータコア10に保持されている。
【0019】
つまり、内径側の保持部間の開口部14に掛かる位置に配置された、ステータ磁石群の中央部の永久磁石31は、ステータ磁石群が奇数個の永久磁石で構成されている場合は、中央の1つの永久磁石が上記開口部14を跨ぎ、内径側の周方向両端の稜線がともに内径側の保持部13bに掛かって保持される。
【0020】
また、ステータ磁石群が偶数個の永久磁石で構成されている場合は、上記奇数個の永久磁石で構成されている場合の中央の1つの永久磁石が2つに分割された状態と把握することができ、中央部の周方向右側の永久磁石は、その右端の稜線が内径側の保持部に掛かって保持され、中央部の周方向左側の永久磁石はその左端の稜線が内径側の保持部に掛かって保持される。
【0021】
このように、本発明においては、ステータ磁石群を構成するすべての永久磁石31が、その内径側の面の全部又は一部が保持部13bに当接して保持されているため、永久磁石に径方向内側に引張り力がかかっても、すべての永久磁石が上記保持部で支えられ、上記接着面のみで支える永久磁石が存在しない。
【0022】
したがって、上記接着面への応力集中が抑制され、上記ステータ磁石群が内径方向に引っ張られて破損することを防止することができる。
【0023】
上記ステータコアのティース12は、
図3に示すように、上記ステータ磁石群3と接する部分が内径側に向かうにしたがって拡がる形状、換言すれば、ステータ磁石群3の形状が、周方向の幅が、外径側が広く内径側が狭いテーパ形状であることが好ましい。
【0024】
これにより、ステータ磁石群3の周方向端面とティース12とが接した接触面によってもステータ磁石群3が内径方向にずれることを防止できるので、上記内径側の保持部13bの径方向の厚さを薄くすることができ、ステータ磁石群の径方向の厚さを増加させたり、ロータの外径を増加させたりすることが可能であり、トルクを向上させることができる。
【0025】
また、永久磁石それぞれの外径方向へのずれは、上記ステータ磁石群3とコイル線2との間に配置された外径側の保持部13aによって防止できる。
【0026】
具体的には、上記内径側と同様に、
図2に示す、外径側の周方向両端の稜線、すなわち繋目の少なくとも一方が、外径側の上記保持部に掛かり上記ステータコアに保持された構造の他、
図3、4に示す、上記ステータ磁石群の中央部に、周方向の幅が外径側に向かうにしたがって狭まるテーパ形状の永久磁石を配置した構造を挙げることができる。
【0027】
これにより、外径側の保持部13aは、周方向に繋がっている必要がないので、外径側の保持部同士の間に形成される、コイル線2と永久磁石31との間の隙間に、ステータコア10を軸方向に貫く冷却媒体流路4を形成することができる。
【0028】
この冷却媒体流路14に冷却媒体を流すことで、ステータ磁石群、コイル線及びステータコアを同時に冷却することが可能であり、連続出力定格を向上させることが可能である。
【0029】
特に、冷却効率向上観点から、
図3,4に示すように、上記テーパ形状の永久磁石をステータ磁石群の中央部に配置した構造であることが好ましい。
【0030】
つまり、上記テーパ形状の永久磁石をステータ磁石群の中央部に配置した構造は、上記テーパ形状の永久磁石が隣接する永久磁石間に挟まれているので、その形状によって、隣接する永久磁石よりも外径方向にずれることが防止される。
【0031】
そして、隣接する永久磁石が外径側の上記保持部13aに掛かり、ステータ磁石群全体の外径方向へのずれが防止されれば、上記テーパ形状の永久磁石も外径方向にずれることがないので、上記外径側の保持部によって上記テーパ形状の永久磁石の外径側を保持する必要がない。
【0032】
したがって、上記テーパ形状の永久磁石を中央部に配置することで、ティースからスロット内に突出する外径側の保持部間の間隔を、内径側の保持部間の間隔よりも広くして、冷却媒体流路の周方向の幅を拡げることが可能である。
【0033】
このため、ステータ磁石群及びコイル線との冷却媒体の接触面積が増大し、冷却媒体が中央部の永久磁石だけでなく、隣接する永久磁石にも接触するので、冷却効率を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の電動機は、複数の永久磁石でステータ磁石群を構成しても、上記のように、ステータ磁石群の破損を防止できるので、ステータ磁石群を構成するそれぞれの永久磁石の着磁方向を調整することができ、磁気回路の設計自由度が高い。
【0035】
したがって、ステータ磁石群を構成する複数の永久磁石の配向列を、ステータ磁石群の磁界が片側に集中するハルバッハ配列にすることで、磁束漏れを低減させてトルクの向上を図ることができる。
【0036】
さらに、本発明の電動機は、上記ステータのティースの数をm、極対数をn、但し、m、nは整数とするとき、上記ロータの極対数はm±nであることが好ましい。
【0037】
そして、上記ロータの周方向に並ぶすべての永久磁石を、その着磁方向がエアギャップ方向を向くように配置し、上記ロータの永久磁石間の少なくとも一部に空気よりも透磁率の高い部材、例えば、電磁鋼板を配置することで、Consequent pole型モータとなり、磁気変調効果を向上させて、さらにトルクを向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ステータ
10 ステータコア
11 バックヨーク
12 ティース
13a 保持部(外径側)
13b 保持部(内径側)
14 開口部
2 コイル線
3 ステータ磁石群
31 永久磁石
32 接着面
4 冷却媒体流路
5 ロータ
51 ロータ磁石(永久磁石)
6 軸
7 エアギャップ