(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158676
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20241031BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241031BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241031BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20241031BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20241031BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20241031BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 512
G03F7/027 502
G03F7/029
G03F7/031
G03F7/027 515
C08F8/46
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074063
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 颯太
(72)【発明者】
【氏名】小山 楓賀
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC32
2H225AC33
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2H225AC44
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2H225CC13
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(57)【要約】
【課題】解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及びエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)と、の反応生成物である。カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は0mol%超60mol%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であり、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)以外のエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)と、の反応生成物であり、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつ前記エチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は0mol%超60mol%以下であり、
前記光硬化性樹脂組成物から10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における前記硬化物の光透過率は、85%以上である、
光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記多塩基酸無水物(a4)は、シクロヘキサン骨格を有する、
請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
芳香環を有し、かつノボラック骨格を有しないカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を、更に含有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤(B)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)を含有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光重合開始剤(B)は、オキシムエステル系光重合開始剤(B2)を含有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、2官能性(メタ)アクリレート化合物(C1)を含有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物の乾燥物、又は半硬化物を含む、
ドライフィルム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物に関する。詳細には、光硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム、及び光硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸基含有(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物が開示されている。酸基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル共重合体(A)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)と、を必須の原料とすることが記載されている。共重合体(A)は、芳香環を有するメタクリレート化合物(a1)、及び化合物(a1)以外の反応性官能基及び重合性不飽和基を有する化合物(a2)を必須の原料とする共重合体である。化合物(B)は、共重合体(A)と、共重合体(A)が有する化合物(a2)由来の反応性官能基と反応し得る官能基を有し、化合物(a1)及び化合物(a2)以外の重合性不飽和基を有する。そして、この硬化性樹脂組成物から高い反射性を有し、耐熱黄変性に優れる硬化物が作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らの独自の調査によれば、樹脂組成物の解像性を確保しつつ、その硬化物に透明性を付与すること、及び凹凸面の少ない下地材への密着性を付与することを両立させることは難しいことがわかった。
【0005】
本開示の目的は、解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する。前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及びエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)以外のエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)との反応生成物である。前記カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつ前記エチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は0mol%超60mol%以下である。前記光硬化性樹脂組成物から10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における前記硬化物の光透過率は、85%以上である。
【0007】
本開示の一態様に係るドライフィルムは、前記光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る硬化物は、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2Aから
図2Dは、本実施の他の一形態の積層体の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.概要
本実施形態の光硬化性樹脂組成物の概要について説明する。なお、以下の説明を含む本開示において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートのうち少なくとも一方を意味する。
【0012】
本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と化合物(a1)以外のエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)との反応生成物である。カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は0mol%超60mol%以下である。光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上である。これにより、本実施形態の光硬化性樹脂組成物によれば、解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる。
【0013】
具体的には、カルボキシル基含有樹脂(A)は、特定の共重合体にエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)が付加した中間反応生成物に、更に多塩基酸無水物(a4)が付加した生成物である。ここで、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)とが特定の割合で配合されることで、カルボキシル基含有樹脂(A)の全残基に対して、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(a1)及びエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する構造単位である残基を特定のモル比で有するため、光硬化性樹脂組成物のアルカリ耐性を特に高めやすい。これにより、光硬化性樹脂組成物のUV硬化箇所がアルカリ現像処理されてもその表面は荒らされにくく、平滑性を保ちやすくできるため、光の散乱を起こしにくく、良好な低いヘイズを実現しやすい。また、この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の透明性を向上させることができる。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A)は、上記の特定の割合でモノマー由来の構造単位を有する共重合体に対しエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)の一部又は全部が付加した中間反応生成物に、多塩基酸無水物(a4)が更に付加した生成物であることで、この反応で生じうるカルボキシル基を有するため、光硬化性樹脂組成物の解像性の向上に寄与しうる。さらに、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、上記の特定のカルボキシル基含有樹脂(A)を含有するため、高い密着性を有しうる。なお、本開示における密着性とは、光硬化性樹脂組成物を塗布等する対象物(例えば下地材)と、皮膜又は硬化物との密着力の程度を意味するが、本実施形態の光硬化性樹脂組成物では、下地材として銅スパッタ膜を用いた場合、銅スパッタ膜に対する密着性を特に高めることができる。銅スパッタ膜は、例えば後掲の実施例の方法(『(4-6)密着性2(銅スパッタ膜に対する密着性』参照)で作製しうるが、その表面に凹凸がほとんど形成されていない金属製の下地材である。通常、樹脂組成物又はその硬化物は、凹凸がない表面には、凹凸が形成された表面(例えば、銅メッキ後に表面粗化された表面等)に比べて、密着性を高めにくいことが多いが、本実施形態の光硬化性樹脂組成物によれば、表面に凹凸がほとんど形成されていない場合であっても密着性を高めやすい。もちろん、本実施形態の光硬化性樹脂組成物によれば、下地材としてフィルム(例えばポリエチレンテレフタレート製のフィルム等)を用いた場合の密着性にも優れる。
【0014】
さらに、本実施形態では、光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が85%以上であることにより、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物は、高い透明性を有する。特に、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、アルカリ溶液で処理を行った後の透明性にも優れる。
【0015】
そして、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、例えば10μm以下の厚み寸法を有し、かつ透明性を有するドライフィルム、及び10μm以下の厚み寸法を有し、かつ透明性を有する硬化物を作製するために特に好適に用いることができる。ただし、本実施形態の光硬化性樹脂組成物から10μm以外の厚み寸法で硬化物を作製することを何ら制限するものではない。
【0016】
2.詳細
以下、本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物について具体的に説明する。
【0017】
[光硬化性樹脂組成物]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及びエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)以外のエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)と、の反応生成物である。カルボキシル基含有樹脂(A)において、カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対してエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は、0mol%超60mol%以下である。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A)は、光硬化性樹脂組成物に、優れた解像性、及び硬化物の高い透明性及び密着性を付与しうる。
【0018】
光硬化性樹脂組成物は、この光硬化性樹脂組成物から10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上である。このため、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い透明性を有する。さらに、本実施形態の光硬化性樹脂組成物によれば、その硬化物のヘイズも低くしやすい。硬化物の透明性に関しては、樹脂組成物において、硬化した際、硬化した直後の透明性を確保することができる場合が多いが、外的刺激(解像液やレジスト液などの処理剤による影響、光、熱等の環境的影響など)や、経時的に劣化し、透明性を維持することが難しいことがある。これに対し、本実施形態の光硬化性樹脂組成物によれば、耐光性に優れ、ヘイズも低く抑えられうる。そのため、外的刺激等があっても高い透明性をより良好に維持しうる。
【0019】
本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物が含有しうる成分について、詳細に説明する。
【0020】
<カルボキシル基含有樹脂>
カルボキシル基含有樹脂(A)は、1分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物である。このため、光硬化性樹脂組成物は、アルカリ溶液によって良好に現像をすることができる。
【0021】
本実施形態のカルボキシル基含有樹脂(A)は、上述のとおり、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及びエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)との反応生成物である。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及びエチレン性不飽和化合物(a2)を重合して得られる共重合体と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)と、を反応させ、それにより得られた中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)と、を反応させることで合成される。
【0022】
本実施形態のカルボキシル基含有樹脂(A)は、1分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有することが好ましい。この場合、光硬化性を高めることに寄与しうる。
【0023】
以下、カルボキシル基含有樹脂(A)の合成について具体的に説明する。以下の説明において、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との共重合体を「共重合体(X)」、共重合体(共重合体(X))とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物を「生成物(Y)」、中間反応生成物(生成物(Y))と、多塩基酸無水物(a4)との反応生成物を「生成物(Z)」、とそれぞれ称することがある。
【0024】
(共重合体)
共重合体(X)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)とが重合反応することで得られる重合体である。
【0025】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)は、1分子内に少なくとも1つのエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ有する化合物である。そのため、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)は2官能性以上の化合物であるといえる。エポキシ基は、例えばグリシジルエーテル基を含む。エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)は、1分子内に少なくとも1つのグリシジルエーテル基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ有することが好ましい。
【0026】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、及びジグリシジルビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)は、グリシジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。この場合、良好に共重合体(X)を得やすく、光硬化性樹脂組成物の光硬化性をより向上させやすい。そのため、光硬化性樹脂組成物の硬化物の良好な耐光性、及び低いヘイズを実現しやすい。
【0027】
エチレン性不飽和化合物(a2)は、1分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物である。また、エチレン性不飽和化合物(a2)は、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(a1)と共重合しうる成分でもある。ただし、エチレン性不飽和化合物(a2)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)以外の、エチレン性不飽和基を有する化合物である。そのため、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に含まれる化合物は、エチレン性不飽和化合物(a2)ではない。
【0028】
エチレン性不飽和化合物(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-クロロスチレン、ビニルナフタレン、プロペン、ブテン、ビニルシクロヘキサン、(メタ)アクリロニトリル、α-クロロ(メタ)アクリロニトリル、α-エチル(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、マレイミド、N-アルキルマレイミド、及びN-フェニルマレイミドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(単量体)が挙げられる。
【0029】
共重合させるにあたっては、エチレン性不飽和化合物(a2)として、上記に含まれうる少なくとも一種の化合物(単量体)を用いることで、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と重合が可能である。そのため、エチレン性不飽和化合物(a2)は、上記に含まれうる化合物のうち二種以上を、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と重合させることで共重合体(X)を合成してもよい。
【0030】
共重合体(X)は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と、エチレン性不飽和化合物(a2)とを、適宜の溶剤、及び重合開始剤(例えばラジカル重合開始剤)と混合し、加熱することで得られる。本実施形態では、共重合体(X)を合成するにあたり、得られる共重合体(X)を構成する残基の全モルに対し、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a)を40mol%以上100mol%未満、エチレン性不飽和化合物(a2)を0mol%超60mol%以下の割合で重合することが好ましい。共重合体(X)を合成するにあたり、共重合体(X)を構成する残基の全モルに対するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a)の割合は、50mol%以上であればより好ましく55mol%以上であれば更に好ましい。また共重合体(X)全モルに対するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a)の割合は、90mol%以下であればより好ましく、80mol%以下であれば更に好ましい。
【0031】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と、エチレン性不飽和化合物(a2)との重合反応では、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)のエチレン性不飽和結合及びエチレン性不飽和化合物(a2)のエチレン性不飽和結合が連結し、共重合体(X)を生成する。エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との重合反応は、互いのエチレン性不飽和結合を介して進行するため、共重合体(X)は、複数(少なくとも2以上)のエポキシ基を有している。
【0032】
(中間反応生成物)
中間反応生成物(生成物(Y))は、上記の共重合体(X)と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)とが反応することで得られる生成物である。生成物(Y)は、カルボキシル基含有樹脂(A)における中間体の一種ともいえる。そのため、生成物(Y)は、共重合体(X)に由来する残基を有し、すなわち、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基、及びエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基を有する。
【0033】
エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)は、例えば、(メタ)アクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0034】
生成物(Y)は、例えば以下のようにして合成される。
【0035】
共重合体(X)とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)とが反応して生成する生成物(Y)は、共重合体(X)における複数のエポキシ基のうち、2つのエポキシ基の各々にエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(Y1)を含有する。この生成物(Y1)は、エポキシ基とカルボキシル基との反応により生じた二級の水酸基と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)に由来するエチレン性不飽和基とを有する。生成物(Y)は、共重合体(X)における上述の2つのエポキシ基のうち一方のみにエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(Y2)も含有しうる。生成物(Y2)は、二級の水酸基と、エチレン性不飽和基と、エポキシ基とを有する。生成物(Y)は未反応の共重合体(X)も含有しうる。すなわち、生成物(Y)はエポキシ基を有する成分を含有することがあり、この成分は生成物(Y2)と共重合体(X)とのうち少なくとも一方を含みうる。
【0036】
共重合体(X)とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)とを反応させるにあたっては、適宜の方法が採用され得る。例えば、共重合体(X)と溶剤とを含む溶液にエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)を加え、更に必要に応じて重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を適宜の方法により、好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、生成物(Y)を得ることができる。この場合における溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。重合禁止剤は、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、及びメトキノン等からなる群から選択される少なくとも一種のハイドロキノン系重合禁止剤を含む。触媒は、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0037】
触媒が、特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、共重合体(X)と(メタ)アクリル酸(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、共重合体(X)におけるエポキシ基とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との開環付加反応が特に促進されやすく、95%以上、あるいは97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0038】
共重合体(X)とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)とを反応させる際の共重合体(X)のエポキシ基1モルに対するエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)のカルボン酸の当量は、0.7当量以上1.2当量以下とすることが好ましい。この当量比で反応させると、カルボキシル基含有樹脂(A)が光硬化性樹脂組成物に優れた感光性と保存安定性とを付与しうる。共重合体(X)のエポキシ基1モルに対するエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)のカルボン酸の当量は、0.9当量以上であればより好ましい。また、共重合体(X)のエポキシ基1モルに対するエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)のカルボン酸の当量は1.1当量以下であればより好ましい。
【0039】
このようにして得られる生成物(Y)は、共重合体(X)のエポキシ基とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)のカルボキシル基との反応で生成された水酸基を備えうる。
【0040】
(反応生成物)
反応生成物(生成物(Z))は、上記の生成物(Y)と、多塩基酸無水物(a4)とが反応することで得られる生成物である。そのため、生成物(Z)は、生成物(Y)に由来する残基、すなわち共重合体(X)に由来する残基を有し、言い換えればエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基、及びエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基を有する。
【0041】
多塩基酸無水物(a4)は、酸一無水物(a41)と酸二無水物(a42)とのうち少なくとも一方を含有する。
【0042】
酸一無水物(a41)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a41)は、例えばジカルボン酸の無水物を含有しうる。酸一無水物(a41)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。多塩基酸無水物(a4)は、シクロヘキサン骨格を有することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の透明性を向上させやすく、特に硬化物の耐光性を向上させやすい。本開示における耐光性とは、特に光に対する耐性の程度をいい、後掲の実施例の方法で評価できる。
【0043】
酸一無水物(a41)は、ヘキサヒドロフタル酸無水物とシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物とのうちいずれか一方又は両方を含有することがより好ましい。なお、カルボキシル基含有樹脂(A)において、多塩基酸無水物(a4)の残基を確認することで、酸一無水物(a41)がシクロヘキサン骨格を有するか否か確認できる。カルボキシル基含有樹脂(A)における多塩基酸無水物(a4)の残基は、核磁気共鳴、ガスクロマトグラフ質量分析、赤外吸収分光法等により複合的に成分分析を行うことにより定量的に確認可能である。
【0044】
酸二無水物(a42)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a42)は、例えばテトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a42)は、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。酸二無水物(a42)がシクロヘキサン骨格を有する場合には、カルボキシル基含有樹脂(A)において、上述の酸一無水物(a41)の場合と同様に、多塩基酸無水物(a4)の残基を確認することで、酸二無水物(a41)がシクロヘキサン骨格を有するか否か確認できる。
【0045】
生成物(Z)は、例えば以下のように合成できる。
【0046】
生成物(Y)と多塩基酸無水物(a4)とを反応させるにあたっては、適宜の方法が採用されうる。例えば、生成物(Y)の溶剤溶液に多塩基酸無水物(a4)を加え、更に必要に応じて重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは70℃以上120℃以下の温度で反応させることで、生成物(Z)が得られる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、生成物(Y)の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0047】
触媒は、トリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、生成物(Y)と、多塩基酸無水物(a4)とを反応させることが好ましい。この場合、生成物(Y)における二級の水酸基と多塩基酸無水物(a4)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0048】
多塩基酸無水物(a4)が酸二無水物(a42)を含有する場合、生成物(Y)と多塩基酸無水物(a4)とが反応して生成する反応生成物(Z)は、生成物(Y)と酸二無水物(a42)との反応により生成する成分(Z1)を含有しうる。成分(Z1)は、酸二無水物(a42)に由来するカルボキシル基を有しうる。また、酸二無水物(a42)による架橋反応が生じうることから、成分(Z1)には分子量分布が生じやすい。
【0049】
多塩基酸無水物(a4)が、酸一無水物(a41)を含有する場合、生成物(Y)と多塩基酸無水物(a4)とが反応して生成する反応生成物(Z)は、生成物(Y)と酸一無水物(a41)との反応により生成する成分(Z2)を含有しうる。成分(Z2)は、酸一無水物(a41)に由来するカルボキシル基を有する。
【0050】
また、多塩基酸無水物(a4)が、酸二無水物(a42)と酸一無水物(a41)とを含有する場合、生成物(Y)と酸二無水物(a42)との反応により生成する成分(Z1)、及び生成物(Y)と酸一無水物(a41)との反応により生成する成分(Z2)を含有しうる。具体的には、生成物(Y)中の二級の水酸基のうちの一部と酸二無水物(a42)とを反応させ、生成物(Y)中の二級の水酸基のうちの別の一部と酸一無水物(a41)とを反応させる。これにより、生成物(Z)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)の残基と、酸二無水物(a42)の残基とカルボキシル基とを有する構造を有する成分(Z1)、及びエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)の残基と酸一無水物(a41)の残基とカルボキシル基とを有する構造を有する成分(Z2)を含みうる。
【0051】
生成物(Z)は、酸二無水物(a42)中の2つの酸無水物基のうち1つのみが生成物(Y)における二級の水酸基と反応することで有する構造を有する成分(Z3)を有することもある。成分(Z3)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)の残基、及び酸二無水物(a42)の残基を有することがある。
【0052】
また、生成物(Z)には、未反応の生成物(Y)も含まれうる。そのため、生成物(Z)は、エポキシ基を有することがありうる。
【0053】
上述のとおり、酸二無水物(a42)を含有する場合には、生成物(Z)の分子量は、酸二無水物(a42)による架橋の数に依存するため、合成時において、反応条件を最適化することで、生成物(Z)は適度な分子量分布を有しうる。反応条件は、酸一無水物(a41)及び酸二無水物(a42)の量、酸二無水物(a42)に対する酸一無水物(a41)の量を制御することを含む。これにより、所望の分子量及び多分散度を有する生成物(Z)、すなわちカルボキシル基含有樹脂(A)が容易に得られる。
【0054】
多塩基酸無水物(a4)が酸二無水物(a42)を含有する場合、共重合体(X)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a42)の量は、0.01モル以上0.24モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A)が容易に得られる。酸二無水物(a42)の量は、0.04モル以上0.22モル以下であることがより好ましい。
【0055】
多塩基酸無水物(a4)が酸一無水物(a41)を含有する場合、共重合体(X)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a41)の量は、0.05モル以上0.8モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A)が容易に得られる。
【0056】
生成物(Y)と、多塩基酸無水物(a4)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A)の過度な分子量増大が抑制されることで、光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上しうる。
【0057】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸(a3)に由来するエチレン性不飽和基を有することにより、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A)は、光硬化性樹脂組成物に、感光性(具体的には紫外線硬化性)を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A)は、多塩基酸無水物(a4)に由来するカルボキシル基を有することで、光硬化性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、多塩基酸無水物(a4)が酸二無水物(a42)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A)の分子量は、酸二無水物(a42)による架橋の数に依存しうる。このため、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A)が得られる。また、多塩基酸無水物(a4)が酸二無水物(a42)を含有する場合、酸二無水物(a42)の量を制御することで、所望の分子量及び酸価のカルボキシル基含有樹脂(A)が容易に得られる。
【0058】
このようにして得られた生成物(Z)、すなわちカルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は、0mol%超60mol%以下である。本開示において、カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合、及びエチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は、例えばカルボキシル基含有樹脂(A)の質量分析(例えばGC-MS法)に基づき、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)由来の構造単位、及びエチレン性不飽和化合物(a2)由来の構造単位のそれぞれの割合を定量することでカルボキシル基含有樹脂(A)の全量に対するモル比を算出することで確認できる。
【0059】
カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、4000以上50000以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が向上しやすい。重量平均分子量は、5000以上であればより好ましく、6000以上であれば更に好ましい。また、重量平均分子量は、35000以下であればより好ましく、20000以下であれば更に好ましい。
【0060】
カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:昭和電工社製SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1mL/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0061】
カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、45mgKOH/g以上であればより好ましく、55mgKOH/g以上であれば更に好ましく、65mgKOH/g以上であれば特に好ましい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、130mgKOH/g以下であればより好ましく、120mgKOH/g以下であれば更に好ましく、110mgKOH/g以下であれば特に好ましい。
【0062】
なお、上記を満たす限り、カルボキシル基含樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有していてもよい。カルボキシル基含有樹脂(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することで、光硬化性樹脂組成物の解像度を更に向上させやすい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することで、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の物性を向上させやすい。
【0063】
<光重合開始剤>
光重合開始剤(B)は、光硬化性樹脂組成物の感光性を向上させうる成分である。光重合開始剤(B)は、例えばアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)、オキシムエステル系光重合開始剤(B2)、及びα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(B3)からなる群から選択される少なくとも1種を含有しうる。この場合、光硬化性樹脂組成物を紫外線等の光を照射して露光する場合に、光硬化性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)とオキシムエステル系光重合開始剤(B2)とのうちいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物に高い感光性を付与でき、硬化物への着色の程度を低減でき、かつ硬化性樹脂組成物の硬化物の高い透明性をより維持しやすい。また、光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)を含有する場合は、光硬化性樹脂組成物の深部硬化性を高めやすいため、光硬化性樹脂組成物の硬化物が良好に硬化されやすい。光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)とオキシムエステル系光重合開始剤(B2)との両方を含有することがより好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物により高い感光性を付与でき、硬化物への着色の程度を低減でき、かつ光硬化性樹脂組成物の硬化物の高い透明性をより維持しやすい。また、光重合開始剤(B)がオキシムエステル系光重合開始剤(B2)を含有する場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物における密着性と耐光性とをバランスよく良好に維持しやすい。
【0064】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0065】
オキシムエステル系光重合開始剤(B2)は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(О-ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。オキシムエステル系光重合開始剤の具体的な市販品としては、例えばBASFジャパン株式会社製の品番Irgacure OXE01、OXE02、OXE03、OXE04や、株式会社ADEKA製の品番アデカアークルーズN-1919T、NCI-831E、NCI-930、NCI-730等を含む。
【0066】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(B3)は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0067】
なお、光重合開始剤(B)は、上記以外の光重合開始剤を含有してもよい。
【0068】
光硬化性樹脂組成物は、更に適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を含有してもよい。例えば光硬化性樹脂組成物は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のヒドロキシケトン類;ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)と共に、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の適宜の光重合促進剤及び増感剤等を含有してもよい。光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性接着剤組成物は、光重合開始剤(B)と共に、レーザー露光法用増感剤である7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0069】
カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量は、0.1質量部以上であれば好ましく、0.5質量部以上であればより好ましく、1.0質量部以上であれば更に好ましい。前記範囲であると、光硬化性樹脂組成物のより高い硬化性を確保でき、かつ硬化物の透明性も維持しうる。なお、前記含有量の好ましい上限は、40質量部以下である。
【0070】
光重合開始剤(B)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)を含有する場合、光重合開始剤(B)全量に対するアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)の質量割合は、10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0071】
光重合開始剤(B)がオキシムエステル系光重合開始剤(B2)を含有する場合、光重合開始剤(B)全量に対するオキシムエステル系光重合開始剤(B2)の質量割合は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0072】
<多官能性(メタ)アクリレート化合物>
多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、1分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この場合、光硬化性樹脂組成物から作製される皮膜(乾燥皮膜、ドライフィルム)を露光して現像する場合の解像性が特に向上し、かつ光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。なお、多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、上述のカルボキシル基含有樹脂(A)で説明したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)又はエチレン性不飽和化合物(a2)と重複しうる。
【0073】
多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、光重合開始剤(B)の存在により、光硬化性樹脂組成物に光硬化性を付与しうる。多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、1分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するのであれば、光重合性モノマー、及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。光重合性モノマーは、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0074】
光重合性プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、及びオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0075】
多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、2官能性(メタ)アクリレート化合物(C1)を含有することが好ましい。2官能性(メタ)アクリレート化合物(C1)は、1分子内に2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の解像性及び密着性を良好に維持しつつ、低ヘイズを実現しやすい。なお、多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有してもよい。
【0076】
カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)の量は、1質量部以上60質量部以下であれば好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)の量は、5質量部以上であればより好ましく、15質量部以上であれば更に好ましい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)の量は、55質量部以下であればより好ましく、50質量部以下であれば更に好ましく、40質量部以下であれば特に好ましい。
【0077】
<カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物>
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を、更に含有することが好ましい。本開示において、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)とは、芳香環を有し、かつノボラック骨格を有しない化合物である。より具体的には、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、1分子内に、カルボキシル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、及び芳香環をそれぞれ少なくとも1つ有するが、ノボラック骨格は有していない。光硬化性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A)に加えて、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を含有していると、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性及び絶縁信頼性という優れた物性を実現しうる。なお、上述のとおり、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、カルボキシル基含有樹脂ともいえるが、上述のカルボキシル基含有樹脂(A)には含まれないカルボキシル基含有樹脂である。
【0078】
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0079】
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応生成物である樹脂を含有する。このエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、前記の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば(メタ)アクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(ただし、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。なお、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、上述のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)と重複しうる。
【0080】
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有することが好ましい。この場合、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)が300~330nmの波長域の光を吸収しやすいため、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性を更に向上させうる。また、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)がビスフェノールフルオレン骨格を有する場合、かさ高い構造をもつため、生成するラジカル種の光硬化性樹脂組成物中での拡散を防ぐことができ、300~330nmの波長域を有さない光で露光した場合においても、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性が向上しうる。
【0081】
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、例えば、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸とが反応して生成する生成物と、多塩基酸無水物と、の反応物である。すなわち、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸とを反応させ、それにより得られた生成物と、多塩基酸無水物とを反応させることで合成される。
【0082】
【0083】
式(1)におけるR1~R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性あるいは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0084】
ビスフェノールフルオレン骨格を有する、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を得るために用いるエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば下記式(2)に示す構造を有していてもよい。式(2)中のnは、例えば0~20の範囲内の整数である。カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0~1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0~1の範囲内であれば、酸無水物(a3)が酸二無水物を含有する場合でも、過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。また、式(2)において、R1~R8は各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。
【0085】
【0086】
光硬化性樹脂組成物がカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A)とカルボキシル基含エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)との合計量に対するカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)の量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0087】
なお、光硬化性樹脂組成物は、上述のカルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)以外のカルボキシル基を有する樹脂を、更に含有してもよい。カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)以外のカルボキシル基を有する樹脂は、例えば、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれないもののうち、ノボラック骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0088】
(その他の成分)
本実施形態では、光硬化性樹脂組成物は、着色剤を含有してもよいが、着色剤を含有しないことが好ましい。通常、樹脂組成物から薄膜を作製するにあたり、解像性の低下を補うために樹脂組成物に着色剤を配合することがあるが、この場合、着色剤の影響で透明性が低下することがある。また、逆に着色剤を含有しないと透明性の向上が見込まれるが、薄膜の場合には解像性が不十分になることがある。これに対し、本実施形態では、着色剤を配合しなくても、光硬化性樹脂組成物から薄膜を作製した場合であっても解像性を損なうことなく、その硬化物が特に高い透明性を有しうる。
【0089】
着色剤には、着色顔料、及び染料等が含まれる。また、着色剤には、白色の着色剤、白色以外の着色剤(例えば、黒色、青色、赤色、緑色、黄色等)といった色の着色成分が含まれうる。白色の着色剤としては、例えば酸化チタンである。なお、着色剤が白色着色剤である場合、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する白色着色剤の割合は、5質量%以下であれば好ましく、3質量%以下であればより好ましく、1質量%以下であれば更に好ましく、0.5質量%以下であれば特に好ましい。着色剤が白色着色剤以外の場合、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する白色着色剤以外の着色剤の割合は、0.3質量%以下であれば好ましく、0.1質量%以下であればより好ましく、0.05質量%以下であれば更に好ましく、0.01質量%以下であれば特に好ましい。なお、本開示において、「光硬化性樹脂組成物の固形分全量」とは、光硬化性樹脂組成物に含まれ得る成分全体から揮発性の成分の量を除いた成分の合計量をいう。揮発性の成分とは、光硬化性樹脂組成物を加熱して乾燥物が作製される過程、又は光照射して硬化物が作製される過程で揮発し、乾燥物、半硬化物、又は硬化物を構成しない成分のことであり、例えば溶剤等である。
【0090】
光硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよいが、無機フィラーを含有しないことが好ましい。光硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含有しない場合、光硬化性樹脂組成物、並びに光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム、及び硬化物のより高い透明性を実現しうる。光硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含有する場合には、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合は、15質量%以下であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合が15質量%以下であれば、光硬化性樹脂組成物、及び光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の良好な透明性を確保しうる。また、この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物のヘイズの過度な上昇を生じにくくできる。光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合は、10質量%以下であればより好ましく、5質量%以下であれば更に好ましく、1質量%以下であれば特に好ましい。無機フィラーとしては、例えば結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、及びセピオライトからなる群から選択される少なくとも一種の無機成分が挙げられる。
【0091】
光硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤は、水、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等の直鎖、分岐、2級又は多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種のアルコール系溶剤を含有しうる。すなわち、光硬化性樹脂組成物は、アルコール系溶剤を含有しうる。この場合、光硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光硬化性樹脂組成物の塗布性及び均一性をより向上させることができる。また、基材に熱可塑性のフィルムを用いた場合においても、基材の溶解を生じにくくでき基材に損傷を与えにくい。溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含むことがより好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の塗布性及び均一性を更に向上させることができ、かつ良好な乾燥性も得られる。プロピレングリコールモノメチルエーテルは、溶剤全体に対して50質量%以上の割合で含有することが更に好ましい。
【0092】
光硬化性樹脂組成物中の成分の量は、光硬化性樹脂組成物が光硬化性を有し、かつアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0093】
具体的には、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の量は、55質量%以上であれば好ましく、60質量%以上であればより好ましく、65質量%以上であれば更に好ましい。また、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の量は、95質量%以下であれば好ましく、90質量%以下であればより好ましく、85質量%以下であれば更に好ましい。
【0094】
光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量は、0.1質量%以上であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化性を更に高めうる。
【0095】
光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量は、0.5質量%以上であればより好ましく、1質量%以上であれば更に好ましい。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量の上限は、特に制限されないが、25質量%以下であることが好ましい。
【0096】
光硬化性樹脂組成物が、溶剤を含有する場合、この溶剤の割合は、光硬化性樹脂組成物全体に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物を塗布するにあたって、光硬化性樹脂組成物の塗布性が向上しうる。
【0097】
本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、光硬化性樹脂組成物は、上記で説明した成分以外の成分を、更に含有してもよい。
【0098】
光硬化性樹脂組成物は、密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、表面改質剤、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0099】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物を調製するにあたっては、適宜の方法で調製すればよい。例えば光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の原料を混合し、撹拌することにより調製可能である。また、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、光硬化性樹脂組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、光硬化性樹脂組成物を調製してもよい。光硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、まず原料のうち、溶剤の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。
【0100】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、上述のとおり、この光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物が作製された場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が85%以上である。これにより、光硬化性樹脂組成物から透明性の高い硬化膜(透明硬化膜)が得られ、透明硬化膜は、光学用途に特に好適に用いられうる。光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の吸収スペクトルは、例えば分光光度計等の分光分析装置により測定される。具体的な測定方法は、後掲の実施例の評価試験(4-1)と同様にして測定できる。光硬化性樹脂組成物から作製された硬化物の吸収スペクトルを測定することにより、光透過率を得ることができる。光硬化性樹脂組成物から、厚み10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における光透過率は、90%以上であればより好ましく、95%以上であれば更に好ましい。なお、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上であるので、10μmの厚み寸法より更に薄い寸法(すなわち10μm以下)の硬化物は、当然に、前記波長範囲における光透過率が85%以上である。
【0101】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、基材、及び半導体素子等の電子部品等の表面を保護するための保護層、特に透明保護層を作製するために好適に用いることができる。なお、これに限らず、光硬化性樹脂組成物は高い透明性を有するため、光学用途の電気絶縁性の層を作製するために用いてもよい。電気絶縁性の層としては、例えばソルダーレジスト層、層間絶縁層、めっきレジスト層を挙げることができる。
【0102】
光硬化性樹脂組成物は、厚み25μmの皮膜であっても炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるような性質を有することが好ましい。この場合、十分に厚い電気絶縁性の層を、光硬化性樹脂組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、光硬化性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、上述のとおり、光硬化性樹脂組成物から厚み25μmより薄い、特に10μm以下の保護層、及び電気絶縁性の層を作製することも可能である。
【0103】
厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるかどうかは、次の方法で確認できる。適当な基材上に光硬化性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を作製し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てた状態で、皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して露光を行う。露光後に、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する処理を行う。この処理後に皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であると判断できる。なお、他の厚み(例えば30μm)の皮膜についても、同様に、炭酸ナトリウム水溶液での現像が可能かどうかを確認することができる。
【0104】
[ドライフィルム、及び硬化物]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム、及び硬化物について、
図1A~
図1Cを参照しながら、「ドライフィルム」及び「硬化物」に符号を付して具体的に説明する。
【0105】
本実施形態のドライフィルム1は、上記の光硬化性樹脂組成物を乾燥、又は半硬化させることにより得られる。すなわち、ドライフィルム1は、光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物である。光硬化性樹脂組成物の半硬化物とは、光硬化性樹脂組成物中の成分の一部が硬化しつつ、完全には硬化していない状態をさす。
【0106】
ドライフィルム1は、例えば、以下のようにして作製可能である。
【0107】
まず、光硬化性樹脂組成物を支持するための支持基材(例えば基材2)と、光硬化性樹脂組成物を用意し、基材2上に、光硬化性樹脂組成物を塗布する。
【0108】
基材2としては、例えばガラス、プラスチック、及びセラミック等といった適宜の基板を挙げることができる。より具体的には、例えば基材2は、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー及びポリカーボネート等の熱可塑性樹脂製のフィルムを含む。基材2には、後述のコア材21が含まれる。すなわち、基材2は、プリント配線板等のように絶縁層、及び導体、導体配線等といった導電層を備える基板であってもよい。
【0109】
続いて、塗布後の光硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することで乾燥皮膜を作製する。光硬化性樹脂組成物から乾燥皮膜を作製する方法は、例えば、塗布法とドライフィルム法とがある。
【0110】
塗布法では、例えば基材2上に光硬化性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物の塗布方法は、適宜の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、光硬化性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60℃~130℃の範囲内の温度下で適宜の時間、例えば1~80分間、湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、乾燥皮膜を得ることができる。
【0111】
ドライフィルム法では、まずポリエステルなどで構成される適宜の支持体上に光硬化性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に光硬化性樹脂組成物の乾燥物であるドライフィルム1を形成する。これにより、ドライフィルム1と、ドライフィルム1を支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルム(
図1Aに示す積層体10参照)が得られる。積層体10は、ドライフィルム1の、基材2とは反対側の面に重なる被覆層(例えば、カバーフィルム4)を設けた積層体101としてもよい(
図1B参照)。カバーフィルム4は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP:Oriented Polypropylene)、及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。また、被覆層として、離型処理されたフィルムを用いてもよい。
【0112】
光硬化性樹脂組成物の半硬化物は、基材2上に作製した乾燥皮膜を一部硬化させることにより得られる。
【0113】
このように、光硬化性樹脂組成物からドライフィルム1を作製できる。また、上記方法によれば、基材2と、ドライフィルム1を備える積層体10(後述の第2の積層体と区別するため、「第1の積層体10」ということもある。)を得ることもできる。なお、第1の積層体10は、
図1Aに示す構成に限らず、例えば基材2とドライフィルム1との間に、基材2及びドライフィルム1とは異なる層を備えていてもよい。なお、上述のとおり、光硬化性樹脂組成物の半硬化物は基材2上に作製されるものには限られず、適宜の対象物に塗布すること等により作製可能である。
【0114】
本実施形態の硬化物11は、上記の光硬化性樹脂組成物を硬化することにより作製できる。硬化物11は、上記のドライフィルム1を硬化させることにより作製してもよい。光硬化性樹脂組成物、又はドライフィルム1を光硬化する方法については、後に詳述する。
【0115】
このような方法により、基材2と、基材2に重なる硬化物11とを備える、積層体20(上述の第1の積層体10と区別するため、「第2の積層体20」ということもある。)を作製可能である。上記の第1の積層体10に光を照射することで、ドライフィルム1を硬化させて硬化物11とし、第2の積層体2を作製してもよい(
図1C参照)。第2の積層体20は、光硬化性樹脂組成物に由来する硬化物11を備えるため、光学用途に好適に利用可能である。そのため、本実施形態の光硬化性樹脂組成物の硬化物11は、透明硬化膜ということもできる。なお、第2の積層体10は、
図1Cに示す構成に限らず、例えば基材2と硬化物11との間に、基材2及び硬化物11とは異なる層を更に備えていてもよい。
【0116】
本実施形態のドライフィルム1及び硬化物11は、上記以外の方法で作製してもよい。具体的には、ドライフィルム1は、例えば以下のようにして使用し、硬化物を作製することも可能である。ただし、ドライフィルム、及び硬化物の使用方法はこれらに制限されるものではない。
【0117】
基材2上に光硬化性樹脂組成物の皮膜(ドライフィルム1)を作製するには、まず、
図2Aに示すように、基材2としてコア材21を用意する。コア材21は、例えば少なくとも一つの絶縁層200と少なくとも一つの導電層3とを備える。導電層3は、導体配線であってもよい。コア材21の一面上に設けられている導電層3を、以下第一の導体配線31という。
【0118】
続いて、
図2Bに示すように、コア材21の第一の導体配線31が設けられている面上に、光硬化性樹脂組成物から作製される塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物からドライフィルム1を形成するには、例えば上述の塗布法、及びドライフィルム法等と同様の方法により、形成すればよい。
【0119】
塗布法では、例えばコア材21等の基材2上に光硬化性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物の塗布方法は、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、光硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を揮発させるために、例えば60~120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、ドライフィルム1(乾燥塗膜)を得ることができる。
【0120】
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体(基材2)上に光硬化性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に光硬化性樹脂組成物を含むドライフィルム1を形成する。これにより、ドライフィルム1と、ドライフィルム1を支持する支持体(基材2)とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。支持体付きドライフィルム(例えば積層体10)には、ドライフィルム1の、基材2とは反対側の面に重なる被覆層(例えばカバーフィルム4)を設けてもよい(
図1B参照)。
【0121】
この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルム1をコア材21に重ねてから、ドライフィルム1とコア材21に圧力をかけ、続いて支持体である基材2をドライフィルム1から剥離することで、ドライフィルム1を支持体上からコア材21上へ転写する(
図2C及び
図2D参照)。
【0122】
これにより、コア材21上に、ドライフィルム1が作製される。支持体付きドライフィルムがカバーフィルム4を備える場合は、コア材21にドライフィルム1に重ねる前に、ドライフィルム1からカバーフィルム4を剥離してから、コア材21にドライフィルム1を重ね、上記と同様にドライフィルム1を作製すればよい。
【0123】
このようにして、コア材21等の基材2上に光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム1を配置し、コア材21(基材2)上にドライフィルム1を形成することができる。
【0124】
光硬化性樹脂組成物から作製した皮膜を露光することで皮膜を全体的に又は部分的に硬化させる。なお、皮膜は、光硬化性樹脂組成物の乾燥物を含むため、皮膜はドライフィルム1であってもよい。この場合、部分的に露光するにあたっては、例えばネガマスクを皮膜に当ててから、皮膜に紫外線を照射してもよい。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部は適宜の硬化させることを求めない位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、光硬化性樹脂組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0125】
なお、露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば、光源から発せられる紫外線を皮膜の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、光硬化性樹脂組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0126】
また、ドライフィルム法では、支持体(基材2)付きドライフィルムにおけるドライフィルム1を別の基材2又はコア材21に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を通して紫外線をドライフィルム1からなる皮膜に照射することで皮膜を露光し、続いて現像処理前にドライフィルム1から支持体を剥離してもよい。この場合、露光時の酸素阻害をより防ぐことができ、硬化性が向上する。
【0127】
皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去してもよい。現像処理では、光硬化性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンを含有する溶液である。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0128】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0129】
また、現像処理後の皮膜には、更にUV照射と加熱処理とのうちの一方又は両方を行ってもよい。
【0130】
これにより、基材2上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物11を備える第2の積層体20が得られる。上記で説明したように、コア材21上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物11を備える積層体20を作製してもよい。
【0131】
このように、第1の積層体10におけるドライフィルム1を部分的に露光してから、アルカリ現像液によって現像してパターン形成を行うことで、基材2に重なり、パターンを有する硬化物11(透明硬化膜ともいう)が作製可能である。
【0132】
硬化物11の厚みは、適宜調整可能であるが、例えば10μm以下とすることもできる。本実施形態では、上述のとおり光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物11は、高い透明性を有している。そして、光硬化性樹脂組成物から作製した皮膜を、例えば10μm以下のように比較的薄く(薄膜化)しても、硬化物の高い解像性を実現することができる。また、硬化物の厚みが10μm以下であると、例えば保護層としても好適に用いることができる。なお、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上であるので、10μmの厚み寸法より更に薄い寸法の硬化物は、当然に、前記範囲における光透過率が85%以上である。
【0133】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物では、この乾燥物であるドライフィルムから、あるいは光硬化性樹脂組成物の塗膜から、めっきレジスト層、ソルダーレジスト層、及び層間絶縁層等の電気絶縁性層を特に良好に形成することができる。
【実施例0134】
以下、本開示の具体的な実施例を提示する。ただし、本開示は実施例のみに制限されない。
【0135】
(1)カルボキシル基を有する樹脂の合成
以下の合成例A-1~E-2では、いずれもカルボキシル基を有する樹脂を合成しているため、各合成例から得られた樹脂を便宜的に「カルボキシル基含有樹脂」と称している。本開示では、特に断りのない限り、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0136】
(1-1)合成例A-1(カルボキシル基含有樹脂A-1)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、メチルメタクリレート40部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%の共重合体溶液を得た。
【0137】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてテトラヒドロ無水フタル酸31.92部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.16部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-1(Mw:7200、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0138】
(1-2)合成例A-2(カルボキシル基含有樹脂A-2)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%の共重合体溶液を得た。
【0139】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてテトラヒドロ無水フタル酸31.92部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.16部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-2(Mw:7400、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0140】
(1-3)合成例A-3(カルボキシル基含有樹脂A-3)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、スチレン20部、メチルメタクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%の共重合体溶液を得た。
【0141】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてテトラヒドロ無水フタル酸31.92部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.16部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-3(Mw:7500、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0142】
(1-4)合成例A-4(カルボキシル基含有樹脂A-4)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド20部、メチルメタクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%の共重合体溶液を得た。
【0143】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてテトラヒドロ無水フタル酸31.92部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.16部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-4(Mw:7400、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0144】
(1-5)合成例A-5(カルボキシル基含有樹脂A-5)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0145】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてテトラヒドロ無水フタル酸31.92部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.16部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-5(Mw:7800、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0146】
(1-6)合成例A-6(カルボキシル基含有樹脂A-6)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0147】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてヘキサヒドロ無水フタル酸32.34部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.58部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-6(Mw:8000、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0148】
(1-7)合成例A-7(カルボキシル基含有樹脂A-7)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0149】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いて無水フタル酸31.11部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.35部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-7(Mw:8200、酸価73mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0150】
(1-8)合成例A-8(カルボキシル基含有樹脂A-8)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0151】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物20.79部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート51.03部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-8(Mw:8400、酸価78mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0152】
(1-9)合成例A-9(カルボキシル基含有樹脂A-9)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート60部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0153】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸30.24部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いて無水トリメリット酸20.18部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50.42部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-9(Mw:8500、酸価78mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0154】
(1-10)合成例A-10(カルボキシル基含有樹脂A-10)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート45部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0155】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸23.04部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてヘキサヒドロ無水フタル酸24.64部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47.68部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂A-10(Mw:7600、酸価61mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0156】
(1-11)合成例B-1(カルボキシル基含有樹脂B-1)
還流冷却管、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート35部、N-フェニルマレイミド10部、ベンジルメタクリレート20部、メチルメタクリレート35部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、アゾビスイソブチロニトリル8部を加え、窒素気流下に加熱し、95℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。
【0157】
上記50%共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)を0.1部、アクリル酸18部、トリフェニルホスフィン1部を加え、110℃で24時間付加反応を行い、続いてヘキサヒドロ無水フタル酸19.25部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート37.25部を加えて、エアバブリング下で攪拌しながら、80℃で3時間反応させ、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂B-1(Mw:7100、酸価51mgKOH/g)の50%溶液を得た。
【0158】
(1-12)合成例C-1(カルボキシル基含有樹脂C-1)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、メタクリル酸40質量部、メチルメタクリレート47.5質量部、スチレン12.5質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル215質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル1.75質量部を加えた。この四つ口フラスコ内の混合液を、窒素気流下で撹拌しながら、加熱温度75℃で5時間加熱して重合反応を進行させた。これにより、濃度32%の共重合体溶液を得た。
【0159】
続いて、この共重合体溶液に、メトキノン(p-Methoxyphenol)0.05質量部、グリシジルメタクリレート32質量部、ジメチルベンジルアミン0.4質量部を投入した。これらを、エアバブリング下で撹拌しながら、加熱温度80℃、加熱時間24時間の条件で加熱することで付加反応を進行させた。これにより、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂C-1(Mw:22400、酸価104mgKOH/g)の38質量%溶液を得た。
【0160】
(1-13)合成例D-1(カルボキシル基含有樹脂D-1)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(下記式(2)で示され、式(2)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量252g/eqのエポキシ化合物)252質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、4-メトキシフェノール0.2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0161】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物73.55質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら加熱温度115℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂D-1(Mw:3400、酸価69mgKOH/g)の65質量%溶液を得た。
【0162】
【0163】
(1-14)合成例D-2(カルボキシル基含有樹脂D-2)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(上記式(2)で示され、式(2)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量252g/eqのエポキシ化合物)252質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量、4-メトキシフェノール0.2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0164】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら加熱温度115℃、加熱時間6時間の条件で加熱し、更にエアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度60℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂D-2(Mw:2900、酸価104mgKOH/g)の65質量%溶液を得た。
【0165】
(1-15)合成例E-1(カルボキシル基含有樹脂E-2)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番EPICLON N-770、エポキシ当量188)188質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。
【0166】
続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸76質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.8質量部を加えてから、更に混合物を加熱温度90℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂E-1(Mw:7700、酸価84mgKOH/g)の65質量%溶液を得た。
【0167】
(1-16)合成例E-2(カルボキシル基含有樹脂E-2)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、更に混合物をエアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度90℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂E-2(Mw:6200、酸価67mgKOH/g)の65質量%溶液を得た。
【0168】
上記合成例A-1からE-2について、用いた成分(原料等)を一覧にしたものを下記表1に示す。なお、合成例C-1については、「GMA」を合成例A-1~A-10とは異なる態様でカルボキシル基含有樹脂を得ているため、別の表記(※、●等の印)をした。また、表1中、「第1反応」とは、共重合体と(メタ)アクリル酸とにおける反応、「第2反応」とは、中間反応生成物と多塩基酸無水物とにおける反応である。
上記のとおり表1に示す「原料」の詳細は下記のとおりである。
・GMA:グリシジルメタクリレート
・MMA;メチルメタクリレート
・BZMA:ベンジルメタクリレート
・ST:スチレン
・PM:フェニルマレイミド
・BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物
・PNE:フェノールノボラック型エポキシ樹脂
・CNE:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
・Aa:アクリル酸
・THPA:テトラヒドロ無水フタル酸
・HHPA:ヘキサヒドロ無水フタル酸(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)
・PA:無水フタル酸
・H-TMA:シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物
・TMA:無水トリメリット酸
・BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0169】
【0170】
(2)樹脂組成物の調製
[各実施例及び比較例]
後掲の表に示す成分をフラスコ内に加え、温度35℃で撹拌混合することで、樹脂組成物を得た。なお、表に示される成分の詳細は次のとおりである。表中の数値は、質量部であり、カルボキシル基含有樹脂については、固形分に換算した質量部である。
-光重合開始剤
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad TPO H)。
・光重合開始剤B:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 907)。
・光重合開始剤C:オキシムエステル系光開始剤(1,2-オクタジエノン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)(BASFジャパン株式会社製の製品名Irgacure OXE01))。
・光重合開始剤D:オキシムエステル系光開始剤、BASFジャパン株式会社製の製品名Irgacure OXE04。
-多官能性(メタ)アクリレート化合物
・重合性化合物A:1.9-ノナンジオールジアクリレート。
・重合性化合物B:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート。
・重合性化合物C:トリメチロールプロパントリアクリレート。
-その他成分
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、品番Irganox 1010)。
・表面改質剤:DIC株式会社製、品番メガファックF-563)
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル。なお、溶剤は、樹脂組成物における成分の固形分量が30質量%となるように調整して配合している。
【0171】
(3)ドライフィルムの作製
上記(2)で調製した樹脂組成物から、ドライフィルムを次のようにして作製した。
【0172】
まず、厚み16μmのポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)製のフィルム(ベースフィルム)を用意した。このフィルム上に、各実施例及び比較例の組成物を、スピンコーターで塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜に、110℃で5分間の条件で、熱乾燥を行い、PET上に厚み10μmの皮膜を形成し、ドライフィルムを作製した。
【0173】
(4)評価
各実施例及び比較例について、下記の評価(4-1)~(4-8)を行った。評価結果は、後掲の表2-4に示す。
【0174】
(4-1)透過率(透過率曲線 450nm~800nm)
(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムの全面に、超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、続いて露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。
【0175】
これにより、PET製のフィルム(ベースフィルム)上に光硬化性樹脂組成物の硬化物を作製した。硬化物を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の品番UV-3100PC)にセットして、硬化物の450nm~800nmの透過率を測定し、透過率曲線を得た。リファレンスには、基材(ベースフィルム)であるPET製のフィルムを使用した。得られた透過率曲線に基づき、透過率を以下の基準で評価した。
○:450nm~800nmの波長範囲において、透過率がすべて85%以上であった。
×:450nm~800nmの波長範囲において、透過率が85%未満となる波長範囲があった。
【0176】
(4-2)ヘイズ
(4-1)で作製した各実施例及び比較例の硬化物のヘイズ値について、ヘイズメータ(日本電色株式会社製の品番NDH7000)を用いて、JISK7105に準じて、測定し、以下の基準で評価した。
A:ヘイズ値が0.8%未満である。
B:ヘイズ値が0.8以上1.0%未満である。
C:ヘイズ値が1.0%以上1.5%未満である。
D:ヘイズ値が1.5%以上である。
【0177】
(4-3)耐光性
(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムの全面に、超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、続いて露光後の皮膜に現像処理を施した。
【0178】
現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。
【0179】
これにより、PET製のフィルム(ベースフィルム)上に光硬化性樹脂組成物の硬化物を作製した。
【0180】
この硬化物を、メタルハライド光源により、2000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した後、目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:硬化物に、黄変はみられない。
B:硬化物に、極僅かな黄変が見られる。
C:硬化物に、若干の黄変が見られる。
D:硬化物に、大きな黄変が見られる。
【0181】
(4-4)感度
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR-4タイプ)を用意した。この銅張積層板の一面全面に、(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、銅張積層板上にドライフィルムからなる膜厚10μmの皮膜を形成した。
【0182】
皮膜に、PET製のフィルム(ベースフィルム)をつけたままの状態で、フォトツール『ストファーステップタブレット21段(Stouffer step tablet 21 steps)』をPET製フィルム上にあてがい、減圧条件で密着させた後、超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。露光後の皮膜からPET製のフィルム(ベースフィルム)を剥がし、皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。現像後の硬化膜における残存したステップの段数(残存ステップ段)を求めた。
【0183】
(4-5)解像性
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR-4タイプ)を用意した。この銅張積層板の一面全面に、(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、銅張積層板上にドライフィルムからなる膜厚10μmの皮膜を形成した。
【0184】
皮膜に、PET製のフィルム(ベースフィルム)をつけたままの状態で、幅80μm、90μm及び100μmのライン/スペースを含むパターンを有するネガマスクをあてがい、減圧条件で密着させた後、超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。露光後の皮膜からPET製のフィルム(ベースフィルム)を剥がし、皮膜に現像処理を施した。
【0185】
現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、皮膜にライン抜けのパターンを形成した。このテストピースを観察し、以下の基準で評価した。
A:幅80μmのライン/スペースが解像できる。
B:幅90μmのライン/スペースが解像できるが、幅80μmのライン/スペースが解像できない。
C:幅100μmのライン/スペースが解像できるが、幅90μmのライン/スペースが解像できない。
D:幅100μmのライン/スペースが解像できない。
【0186】
(4-6)密着性1(PETフィルムに対する密着性)
PET製のフィルム一面全面に、(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、PET製のフィルム上にドライフィルムからなる膜厚10μmの皮膜を形成した。
【0187】
皮膜に、PET製のフィルム(ベースフィルム)をつけたままの状態で、皮膜全面に超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。
【0188】
露光後の皮膜からPET製のフィルム(ベースフィルム)を剥がし、皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。その後、皮膜全面にメタルハライドランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、テストピースを作製した。
【0189】
JIS D0202に準拠して、各実施例、及び比較例のテストピースに対し、碁盤目状にクロスカット(10本×10本:1mm間隔)を入れ、これにセロハン粘着テープを貼り付けてピーリングテストを行った。ピーリングテスト後の、テストピースにおける剥がれの状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、以下の基準は、JIS K5600-5-6の『第6節:付着性(クロスカット法)』に基づく。
A:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
B:カットの交差点における塗膜に小さな剥がれが見られる。また、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
C:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
D:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全体的に大きな剥がれが生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全体的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に15%を超える。
【0190】
(4-7)密着性2(銅スパッタ膜に対する密着性)
PET製のフィルム上に銅スパッタ膜を形成した基材を準備した。この基材一面全面に、(3)で作製した各実施例及び比較例のドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、PET製のフィルム上にドライフィルムからなる膜厚10μmの皮膜を形成した。
【0191】
皮膜に、PET製のフィルム(ベースフィルム)をつけたままの状態で、皮膜全面に超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。
【0192】
露光後の皮膜からPET製のフィルム(ベースフィルム)を剥がし、皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で30秒間噴射した。
【0193】
その後、皮膜全面にメタルハライドランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、テストピースを作製した。
【0194】
JIS D0202に準拠して、各実施例、及び比較例のテストピースに対し、碁盤目状にクロスカット(10本×10本:1mm間隔)を入れ、これにセロハン粘着テープを貼り付けてピーリングテストを行った。ピーリングテスト後の、テストピースにおける剥がれの状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
B:カットの交差点における塗膜に小さな剥れが見られる。また、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
C:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
D:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全体的に大はがれが生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全体的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に15%を超える。
【0195】
(4-8)鉛筆硬度
上記(4-6)で作製した各実施例、及び比較例のテストピースの硬化物の鉛筆硬度を、JIS K5400の規定に準拠して、鉛筆として三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて測定した。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
3.まとめ
以上の実施形態及び実施例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0200】
第1の態様の光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する。前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)以外のエチレン性不飽和化合物(a2)の共重合体とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a3)との中間反応生成物と、多塩基酸無水物(a4)と、の反応生成物である。前記カルボキシル基含有樹脂(A)を構成する全残基に対して、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)に由来する残基の割合は、40mol%以上100mol%未満であり、かつ前記エチレン性不飽和化合物(a2)に由来する残基の割合は0mol%超60mol%以下である。前記光硬化性樹脂組成物から10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における前記硬化物の光透過率は、85%以上である。
【0201】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物の解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる。
【0202】
第2の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1の態様において、前記多塩基酸無水物(a4)は、シクロヘキサン骨格を有する。
【0203】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物の硬化物の透明性を向上させやすく、特に硬化物の耐光性を向上させやすい。
【0204】
第3の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1又は第2の態様において、芳香環を有し、かつノボラック骨格を有しないカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(D)を、更に含有する。
【0205】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性及び絶縁信頼性という優れた物性を実現しうる。
【0206】
第4の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である。
【0207】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性が特に向上しうる。
【0208】
第5の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記光重合開始剤(B)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)を含有する。
【0209】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物により高い感光性を付与でき、硬化物への着色の程度を低減でき、かつ光硬化性樹脂組成物の硬化物の高い透明性をより維持しやすい。
【0210】
第6の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記光重合開始剤(B)は、オキシムエステル系光重合開始剤(B2)を含有する。
【0211】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物の硬化物における密着性と耐光性とをバランスよく良好に維持しやすい。
【0212】
第7の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第6のいずれか1つの態様において、前記多官能性(メタ)アクリレート化合物(C)は、2官能性(メタ)アクリレート化合物(C1)を含有する。
【0213】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物から作製される皮膜(乾燥皮膜、ドライフィルム)を露光して現像する場合の解像性が特に向上し、かつ光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0214】
第8の態様のドライフィルムは、第1から第7のいずれか1つの態様の光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0215】
この態様によれば、ドライフィルムの解像性を確保でき、かつ硬化物の高い透明性を維持しながら、下地材に対する密着性を有しうる。
【0216】
第9の態様の硬化物は、第1から第8のいずれか1つの態様の光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0217】
この態様によれば、硬化物が高い透明性を有し、かつ硬化物の下地材に対する密着性に優れる。