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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158677
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 23/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
D06F23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074064
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 真
(72)【発明者】
【氏名】金内 優
(72)【発明者】
【氏名】傅 瀛申
(72)【発明者】
【氏名】松井 康博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂東 昌
(72)【発明者】
【氏名】勝山 忠俊
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA02
3B165AA04
3B165AA05
3B165AE01
3B165AE02
3B165AE05
3B165BA15
3B165BA24
3B165BA45
3B165BA59
3B165BA82
3B165BA84
3B165CA01
3B165CA02
3B165CA03
3B165CA04
3B165CA05
3B165CA11
3B165CA21
3B165CB01
3B165CB02
3B165CB31
3B165CB36
3B165CB55
3B165CC02
3B165CD02
3B165CD05
3B165CD10
3B165CD15
3B165DW03
3B165DW05
3B165FA02
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA25
3B165GH03
3B165JM02
3B165JM03
(57)【要約】
【課題】洗濯槽の大容量化と低振動化の両立が可能な洗濯機を提供する。
【解決手段】筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水が入れられる外槽10と、外槽10内に設けられ、洗濯物が入れられるドラム20と、ドラム20の開口部20gの外周に配置され、液体を収納し、周方向に移動できるよう流路隔壁20sで形成した流路を有する円管構造の流体バランサ20dと、を備え、流体バランサ20dの液体を収納する構造の流路隔壁20sは、カウンタウェイト20xが取り付けられるカウンタウェイト取付部として固定台座20yを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、洗濯水が入れられる外槽と、
前記外槽内に設けられ、洗濯物が入れられる内槽と、
前記内槽の開口部の外周に配置され、液体を収納し、周方向に移動できるよう隔壁で形成した流路を有する円管構造の流体バランサと、を備え、
前記流体バランサの液体を収納する構造の隔壁は、カウンタウェイトが取り付けられるカウンタウェイト取付部を有することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記隔壁は、当該隔壁の最内周部に円環状の厚肉部が形成され、
前記カウンタウェイト取付部は、前記円環状の厚肉部に前記カウンタウェイトを取り付けるための台座が設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、前記隔壁の前後方向の前方に設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、前記隔壁の前後方向の中央より前方に設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、前記隔壁の前後方向の前側が後側よりも肉厚に形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、前記液体を収納する空洞側に突出して形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、径方向の長さより前後方向の長さの方が長く形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項8】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記円環状の厚肉部は、前記カウンタウェイトが収納される凹部が形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項9】
請求項8に記載の洗濯機において、
前記凹部には、周方向に間隔を空けて仕切りが形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項10】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記カウンタウェイトを前記台座にねじを介して固定する場合、
前記ねじの軸方向と、前記隔壁の最内周部の長手方向とが同軸であることを特徴とする洗濯機。
【請求項11】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記カウンタウェイトは、前記流体バランサの前面に位置する前記隔壁よりも前方に突出して固定されていることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の洗濯機では、洗濯時間の短縮と洗濯回数の低減のニーズに応えるため、洗濯機の大容量化が進んでいる。一方で当然に、洗濯機の外形のコンパクトさも求められる。そこで、脱水運転時の衣類の片寄りに起因する振動の低減が重要となる。
【0003】
洗濯機は、ドラムとともに回転する流体バランサが取り付けられている。この流体バランサは、液体が内部を周方向に移動できる中空の円管構造であり、液体が内部の空洞体積の半分程度封入される。液体には、比重の大きい塩水が用いられる。液体の遠心力が衣類の遠心力に抗することで防振が図られている。円管構造は、同心円状に重ねて径方向に多層に配置した構造となる。これは、層数に比例して防振効果を得ることができるからである。
【0004】
脱水運転では、まずドラムの回転数(回転速度)を徐々に上昇させていき、最終的に衣類を脱水する最高回転数に至る。この間、衣類の片寄りに起因したアンバランスによって洗濯槽が振動する。振動中、円管内部の液体は、回転時の円管の中心が停止時の円管の中心から振動変位する方向に片寄る。ドラムの回転数が上昇し、最終的に衣類を脱水する最高回転数に至る間、洗濯槽とばねとダンパで構成される振動系の共振回転数を通過する。これが洗濯槽全体が剛体的に揺れる共振モードである。ここを通過後、洗濯槽の振動変位の位相は、衣類の片寄りに起因した加振力の位相に対して遅れ、逆位相となる。つまり、液体の片寄りが衣類の片寄りの反対側に形成されることで、衣類の片寄りに起因した加振力を打ち消し、洗濯槽や筐体の振動が低減される。
【0005】
洗濯槽全体が剛体的に揺れる共振回転数を通過後、最高回転数へと至る間、ドラムの回転数は、ドラムと外槽が回転軸に対して弾性的に変形して揺れる共振回転数に近づいていく。剛体的に揺れる共振回転数を通過した後、弾性的に変形して揺れる共振回転数に向かってドラムの回転数が上昇する間の洗濯槽の振動変位の位相は、衣類の片寄りに起因した加振力の位相と完全には逆位相とならない。つまり、流体バランサの防振効果が減少する。このときのドラム内のアンバランスを低減するための技術として、特許文献1が開示されている。
【0006】
特許文献1に示す洗濯機には、ドラム前方の流体バランサの流体を収納する構造の内周部にカウンタウェイトを収納するための凹部が設けられている。これにより、ドラムと外槽が回転軸に対して弾性的に変形して揺れる共振回転数に近づいていく、流体バランサの防振効果が減少する過程において、カウンタウェイトがドラム内のアンバランスを効果的に低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-13820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今後、洗濯機をさらに大容量化するため、ドラム内容積を拡大するとともに、衣類を収納しやすくすることも求められる。このことからドラム投入口を広げる必要性が高まる。当然に流体バランサ自体の小型化、軸方向の薄型化と内径の大径化が必須となる。流体バランサ自体の防振性能と、軸方向の薄型化および内径の大径化の両立には、液体が移動する流路のさらなる多層化が有効となる。一方で、カウンタウェイトを収納する凹部は、流体バランサの内径の大径化を図っていくうえで、流路面積の確保と取り合いとなる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に示す洗濯機では、洗濯槽全体が剛体的に揺れる共振回転数を通過するときの防振性能と、最高回転数へと至る間にドラムと外槽が回転軸に対して弾性的に変形して揺れる共振回転数に近づいていくときの防振性能とで、流路面積の確保とカウンタウェイトを収納する凹部の確保とがトレードオフとなる。
【0010】
また、遠心力を受ける円管構造の内径を大径化すると、一般に周方向に発生する応力が増加することで内径部の耐遠心強度が低下する。このため流体バランサの内周部の耐遠心強度の確保が必要になる。
【0011】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、洗濯槽の大容量化と低振動化の両立が可能な洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、筐体と、前記筐体内に設けられ、洗濯水が入れられる外槽と、前記外槽内に設けられ、洗濯物が入れられる内槽と、前記内槽の開口部の外周に配置され、液体を収納し、周方向に移動できるよう隔壁で形成した流路を有する円管構造の流体バランサと、を備え、前記流体バランサの液体を収納する構造の隔壁は、カウンタウェイトが取り付けられるカウンタウェイト取付部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗濯槽の大容量化と低振動化の両立が可能な洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の洗濯機を側方から見た断面図である。
図2】洗濯機の制御装置を含む電気的構成のブロック図である。
図3】流体バランサが回転していないときの図1のI方向矢視断面図である。
図4】流体バランサが回転しているときの図1のI方向矢視断面図である。
図5】第1実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
図6】第2実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
図7】第3実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
図8】第4実施形態の洗濯機の流体バランサを前側から見た斜視図である。
図9】第5実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。なお、以下では、図1に示す方向を基準にして説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の洗濯機Sを側方から見た断面図である。
図1に示すように、第1実施形態の洗濯機S(ドラム式洗濯機)は、ベース1の上部に、鋼板と樹脂成形品を組み合わせて外殻を構成する筐体2が設置されている。筐体2は、前面パネル2a、背面パネル2b、左右の側面パネル(不図示)、上面パネル2dで構成されている。筐体2の前面には布類を出し入れするドア3が設けられている。利用者は、ドア3を開閉して布類を出し入れする。
【0016】
筐体2の上部の前面には、利用者が洗濯機Sの操作を行うための操作パネル4が設けられている。この操作パネル4には、電源のオン/オフ、運転のスタートまたは一時停止、コース選択などの操作ボタン、時間や運転条件を表示する画面が備わっている。
【0017】
筐体2の上部には、給水ホース15hが接続される給水ユニット15が設けられる。給水ユニット15と洗剤ケース16は配管17を介して接続されている。洗剤ケース16は、配管18を介して外槽10の前方に接続されている。給水ユニット15に流入した水は洗剤ケース16を経由して外槽10に流入する。
【0018】
洗濯槽10Sは、筐体2内に設けられ、洗濯水が供給される外槽10と、外槽10に内包される円筒状のドラム20(内槽)とで構成されている。ドラム20には、洗濯するための布類等(洗濯物)が入れられる。
【0019】
外槽10は、前面板と背面板とを有し、略水平の中心線Cをもって略円筒状に形成されている。外槽10の前面板には、開口部10aが形成されている。開口部10aは、洗濯物の出し入れに使用される。また、外槽10は、開口部10aがある前部の槽カバー10bと、後部の水槽10cとで構成されている。槽カバー10bと水槽10cとは、ボルトb1が締結され固定されている。外槽10は、ドラム20を内包し水槽の役割を果たす。
【0020】
外槽10の前面の開口部10aは、円筒状のゴムベローズ11を介して筐体2の前面に接続されている。そして、開口部10aはドア3を閉めることで水封される。ドラム20は略水平の中心線(回転軸)C廻りに回転自在に外槽10の内側に配置されている。なお、ドラム20の中心線(回転軸)の手前側が後側よりも高くなるように傾斜したドラムを備えた洗濯機であってもよい。
【0021】
ベース1の下部には排水ホース9が取り付けられている。洗濯槽10Sの外槽10の下部には排水口7と排水弁8が設けられている。外槽10は、排水口7、排水弁8を経由して、排水ホース9に繋がっている。
【0022】
外槽10の上部には、外槽10を筐体2に吊り下げるためのばね14が取り付けられている。外槽10の下部には、前面ダンパ41と背面ダンパ42がそれぞれ複数取り付けられている。前面ダンパ41と背面ダンパ42は、ドラム20内の布類の片寄りに起因する加振力を多方向に分散しつつ粘性減衰力で減衰させる。前面ダンパ41と背面ダンパ42は、それぞれ圧縮コイルばねと流体の粘性力が作用する油圧、空圧等の流体を用いる流体ダンパや、流体の粘性力が作用する油圧、空圧等の流体を用いる流体ダンパが使用される。なお、流体ダンパに使用する流体は空気、油以外の流体を使用してもよい。
【0023】
前面ダンパ41の一方端は、外槽10の台座部41aに取り付けられる。前面ダンパ41の他方端はベース1に取り付けられている。同様に、背面ダンパ42の一方端は、外槽10の台座部42aに取り付けられる。背面ダンパ42の他方端はベース1に取り付けられている。
【0024】
外槽10の下面には外槽10の上下、左右、前後方向の振動を検知できる加速度センサ10eが取り付けられている。運転時に外槽10の振動を加速度センサ10eで計測して所定値を超えた場合にはドラム20の回転を停止するように制御装置5(図2参照)によって制御される。
【0025】
円筒状のドラム20は、そのドラム胴板20aに脱水および通風用の小孔の脱水孔20cが設けられている。ドラム20の内側には、布類を掻き揚げる複数個のリフタ20eが設けられている。円筒状のドラム20の背面にあるドラム底板20bは、ドラム20の補強部材である。ドラム20の前面の端部の開口部(衣類投入口20t)には、防振用の流体バランサ20dが取り付けられている。つまり、防振用の流体バランサ20dは、合成樹脂製であり、ドラム20の前側に固定されている。
【0026】
流体バランサ20dは、ドラム20とともに回転する。流体バランサ20dは、脱水運転時、内封された液体がドラム20内の布類の片寄りを打ち消す方向、つまり布類の片寄りの反対側に移動することで、外槽10の振動を抑制する。
【0027】
ドラム20は、ドラム底板20bに接続されたシャフト31、軸受(図示せず)を介して外槽10に回転自在に支持されている。シャフト31は、例えばプーリ33と直結される。駆動モータ32は、外槽10の背面下方に固定される。駆動モータ32は、プーリ33とゴムベルト34を介して接続されている。駆動モータ32は、ゴムベルト34、プーリ33、シャフト31を介して、ドラム20を回転させる。
【0028】
駆動モータ32には、回転検知センサ47(図2参照)が設けられる。回転検知センサ47は、運転時に駆動モータ32の回転速度を検出する。制御装置5(図2参照)は、回転検知センサ47の検出値に基づいて減速比を用いてドラム20の回転速度を演算する。
【0029】
図2は、洗濯機の制御装置を含む電気的構成のブロック図である。
図2に示すように、制御装置5には、図1に示す操作パネル4の信号が入力される。また、制御装置5には、駆動モータ32の回転検知センサ47で検出した駆動モータ32の回転検知信号、外槽10の加速度センサ10eで検出した振動検知信号が入力される。
【0030】
制御装置5は、ドラム20の回転速度や外槽10の振動変位を、減速比、積分等を用いた演算により取得することができる。制御装置5は、取得した情報を基に記憶させた制御プログラムにより駆動モータ32を駆動する駆動回路6に制御信号を伝達する。
【0031】
次に、洗濯機Sの動作について図1を参照して説明する。
洗濯機Sにおいて洗濯するに際して、利用者は、ドア3を開いてドラム20(図1参照)の中に洗濯物を投入する。そして、洗剤ケース16内に洗剤を投入した後、操作パネル4に入力して洗濯機Sの運転を開始する。操作パネル4に操作信号が入力されると、制御装置5が駆動回路6等に制御信号を伝達し、洗い工程、脱水工程、すすぎ工程、乾燥工程の順に運転を実行する。
【0032】
洗い工程では、まず給水ユニット15内に設けられた給水弁が開き、給水された水は、洗剤ケース16を経由して洗剤と共に外槽10内に入る。ドラム20内の布類は、複数のリフタ20eによって回転方向に持ち上げられては落下する。布類がリフタ20eで持ち上げられた高さから落下する攪拌動作が繰り返され、たたき洗いされる。たたき洗いの動作を所定時間行った後、洗い工程を終了する。
【0033】
脱水工程に移行すると、まず排水弁8が開き、外槽10内の水が排水ホース9を経由して排水される。その後、ドラム20を所定時間高速で一定回転させることで、遠心力により布類の水分を脱水させる。ドラム20の高速回転の動作を所定時間行った後、脱水工程が終了する。
【0034】
すすぎ工程に移行すると、まず給水弁を開いて給水し、給水ユニット15と外槽10とを接続する配管19を経由して外槽10内に注水される。すすぎ工程は、洗い工程と同様に、洗濯物がドラム20のリフタ20eによって回転方向に持ち上げられては、その高さ位置から落下する攪拌動作(たたき洗い動作)が繰り返される。この動作により布類に含まれる洗剤は給水される水に希釈されてすすがれる。
【0035】
すすぎ工程を行った後、再び脱水工程を行い、洗濯運転が終了する。なお、脱水工程の間、加速度センサ10eを用いて脱水運転時の外槽10の振動を計測し、外槽10の振幅が所定値を超えた場合には、制御装置5はドラム20の回転を停止する。
【0036】
各工程の初期段階では、回転検知センサ47(図2参照)によって布量を検知する動作が行われる。布量検知動作は、例えばドラム20を所定の回転速度まで上昇させた後、ドラム20の回転を停止して惰性回転(慣性力による回転)させて所定の回転速度まで下降させる。制御装置5は、ドラム20の回転速度の上昇から下降するまでに要した時間をもとに布量を決定する。そして、制御装置5は、決定した布量を参照してドラム20の回転速度を制御する。
【0037】
また、各工程の初期段階では回転検知センサ47によって布類の片寄りを検知する動作も行われる。この動作は、例えばドラム20の内面に布類が遠心力で張り付く程度に高い回転速度と、洗濯槽10Sとこれを支持する部材に起因した共振回転速度よりも十分低い回転速度の間の所定の回転速度で一定回転させる。この間、ドラム20の回転速度はリフタ20eが布類を持ち上げる際のトルクの変動の影響を受けて時間的に変動する。この回転速度の変動をもとに制御装置5によって、布類の片寄りが決定される。そして、制御装置5は、片寄りを参照してドラム20の回転速度を駆動モータ32の回転制御によって制御する。
【0038】
乾燥機能を備えた洗濯機Sの場合には、脱水工程後に乾燥工程を実行する。
【0039】
図3は、流体バランサ20dが回転していないときの図1のI方向矢視断面図である。以下では、説明を簡単にするため流体バランサ20dが単層の場合を例に説明するが、本発明を単層に限定する意図はない。また、流体バランサ20dの円周方向および半径方向のことをそれぞれ周方向および径方向と記す。また、流体バランサ20dの内部に設けられる液体51をドットを付して示している。
【0040】
流体バランサ20dは、ドラム20に取り付けられており、ドラム20とともに回転する。流体バランサ20dは、液体51が内部を周方向に移動できる中空の円管構造となっている。中空円管の内部の空洞20kは液体51が流れる流路となる。流体バランサ20dは、中空円管を同心円状に重ねて配置し、多層構造(図1参照)または単層構造(図3参照)にして用いられる。流体バランサ20dは、層数に比例して振動低減効果を向上させることができる。流体バランサ20dの円管には、内部の空洞20kの体積の半分程度の液体51が封入される。液体51は、比重を稼ぐ目的で塩水などが用いられる。液体51は、比重が重い方がよい。流体バランサ20d内の液体51に加わる遠心力が衣類の偏りによる遠心力に抗して防振を図る。
【0041】
流体バランサ20dの円管内部の流路53r(空洞20k)の途中にはバッフル板54が周方向に等間隔に配置される。隣り合うバッフル板54との間の空間は液体51が流れる空間となっている。
【0042】
ドラム20が停止しているとき、液体51は重力により流体バランサ20dの下方に溜まる。流体バランサ20dの円管の内壁53は、内周側に設けられた内壁53aと、外周側に設けられた内壁53bとで構成される。内周側の内壁53aと、外周側の内壁53bとで、円環状の空洞20kである流路53rが形成されている。
【0043】
図3に示す流体バランサ20dは、円管の外周側の内壁53bにバッフル板54が設けられた形態を示す。ドラム20(図1参照)が回転し始めると、バッフル板54が液体51を掻き揚げながら流れを調節する。バッフル板54は、流体バランサ20dにおけるドラム20の奥行き方向(図1の紙面右側)へ延び、平板状に形成されている。
【0044】
図4は、流体バランサが回転しているときの図1のI方向矢視断面図である。
図4に示すように、ドラム20が回転すると、液体51は遠心力により円管の流路53rの外周側の内壁53bに徐々に貼り付いていく。布類の片寄り50に起因して洗濯槽10S(図1参照)が振動すると、液体51はドラム20の回転時の円管の中心O1が停止時の円管の中心Oから振動により変位する方向に片寄る。
【0045】
液体51が流体バランサ20d内で片寄る位置は、洗濯槽10Sの外槽10、ドラム20と、ばね14と、前面ダンパ41、背面ダンパ42とで構成される振動系の共振回転数(共振回転速度)を通過する前後で変化する。図4は、布類の片寄り50を打ち消す効果を発揮する位置に液体51の片寄り51yが形成されている状態を示す。つまり、布類の片寄り50を打ち消す布類とは反対側の位置に液体51の片寄り51yが形成されている状態を示す。
【0046】
共振回転数(共振回転速度)を通過した後の十分高い回転速度でドラム20が回転するとき、洗濯槽10S(ドラム20、外槽10)の振動変位の位相が布類の片寄り50に起因した加振力の位相に対して遅れていき、やがて逆位相になる。つまり、液体51の片寄り51yが布類の片寄り50の反対側の位置に形成される。これにより、液体51の片寄り51yが布類の片寄り50に釣り合うように働く。
【0047】
こうして、液体51の片寄り51yが反対側の位置の布類の片寄り50に起因した加振力を打ち消すことで洗濯槽10Sや筐体2の振動が低減される。この状況下では、液体51の片寄り51yは、流体バランサ20dの各円管内で遷移せず、液体51は流体バランサ20dの円管に貼り付いてほぼ同期して回転する。
【0048】
共振回転数(共振回転速度)を通過する前の十分低い回転速度でドラム20が回転するとき、ドラム20の振動変位の方向が布類の片寄り50に対して同位相になる。つまり、液体51は布類の片寄り50と同じ側にある。そのため、液体51の片寄り51yは布類の片寄り50に起因した加振力を打ち消さない。
【0049】
共振回転数を通過する過程では、液体51は布類の片寄り50の反対側へ流れ遷移している。流体バランサ20d内での液体51の流れ易さはバッフル板54の配置によって異なる。流体バランサ20d内の液体51は円管の中をなるべく早く遷移する方が望ましい。液体51の遷移が早いほど液体51が布類の片寄り50の反対側の位置に移動する時間が短く、共振回転数を通過した直後の振動低減効果が大きい。
【0050】
ドラム20の回転数が上昇し、最終的に衣類を脱水する最高回転数へと至る間、洗濯槽10Sの外槽10、ドラム20と、ばね14と、前面ダンパ41、背面ダンパ42とで構成される振動系の共振回転数を通過した後、ドラム20と外槽10が回転軸に対して弾性的に変形して揺れる共振回転数に近づいていく。
【0051】
剛体的に揺れる共振回転数を通過した後、弾性的に変形して揺れる共振回転数に向かってドラム20の回転数が上昇する間、剛体的に揺れる共振モードと弾性的に変形して揺れる共振モードが重畳した揺れ方となるため、洗濯槽10Sの振動変位の位相は、衣類の片寄りに起因した加振力の位相と完全には逆位相とならない。ドラム20の回転数が弾性的に変形して揺れる共振回転数へ近づくほど、流体バランサ20dの防振効果は減少する。脱水運転中、ドラム20の回転数を徐々に上昇させていき、最終的に衣類を脱水する最高回転数へと至る間、流体バランサ20dの防振効果は変化する。
【0052】
図5は、第1実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。なお、図5は、流体バランサ20dの上部を縦方向に切断したときの断面図である。
図5に示すように、洗濯機Sは、洗濯槽10Sとして、外槽10とドラム20とを有している。ドラム20の開口部20gの外周には、流体バランサ20dが配置されている。流体バランサ20dは、周方向に液体51(図4参照)が移動できるように円環状に形成されてドラム20の径方向に多層の構造に設計されている。なお、洗濯機Sでは、ドラム20内の大容量化のために流体バランサ20dを槽カバー10bとの分割面10d(図1参照)より手前側の衣類投入口20t(図1参照)の外周側に設けている。
【0053】
流体バランサ20dの液体を収納する流路隔壁20sは、前面側に位置する前面側隔壁20s1、後面側に位置する後面側隔壁20s2、前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2との間に位置して径方向に複数の流路に仕切る仕切隔壁20s3を有している。
【0054】
仕切隔壁20s3は、流体バランサ20dの最内周に位置する最内周隔壁部20s4(隔壁の最内周部)、最内周隔壁部20s4の径方向外側に位置する隔壁部20s5を有している。また、仕切隔壁20s3は、隔壁部20s5の径方向外側に位置する隔壁部20s6、隔壁部20s6の径方向外側に位置する隔壁部20s7、隔壁部20s7の径方向外側に位置する隔壁部20s8、最外周に位置する隔壁部20s9を有している。
【0055】
最内周隔壁部20s4と隔壁部20s5と前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2とによって、最内周に位置する空洞20k1(20k)が形成されている。隔壁部20s5と隔壁部20s6と前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2とによって、空洞20k1の径方向外側に位置する空洞20k2(20k)が形成されている。隔壁部20s6と隔壁部20s7と前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2とによって、空洞20k2の径方向外側に位置する空洞20k3(20k)が形成されている。隔壁部20s7と隔壁部20s8と前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2とによって、空洞20k3の径方向外側に位置する空洞20k4(20k)が形成されている。隔壁部20s8と隔壁部20s9と前面側隔壁20s1と後面側隔壁20s2とによって、空洞20k4の径方向外側に位置する空洞20k5(20k)が形成されている。なお、空洞20k5は、流体バランサ20dを多層に設ける関係上、他の空洞20k(20k1~20k4)よりも流路容積が小さく形成されている。なお、図示していないが、各空洞20k(20k1~20k5)には図4および図5において示したバッフル板が設けられている。
【0056】
流路隔壁20sには、径方向に肉厚に形成された厚肉部20y1を有している。この厚肉部20y1は、円環状に形成され、流路隔壁20sの最内周部に形成されている。円環状に形成されているとは、流体バランサ20dの前後方向に延びる最内周に位置する流路隔壁20s(最内周隔壁部20s4)に沿ってリング状に形成されていることを意味する。
【0057】
また、厚肉部20y1は、厚肉部20y1が形成されていない最内周隔壁部20s4の外壁面20w1よりも径方向内側に突出して形成されている。また、厚肉部20y1が形成されていない内壁面20w2は、厚肉部20y1の内壁面20w3と面一になるように形成されている。つまり、厚肉部20y1は、空洞20k1内に突出しないように形成されている。
【0058】
厚肉部20y1には、カウンタウェイト20xを取り付けるための固定台座20y(台座、カウンタウェイト取付部)が設けられている。なお、カウンタウェイト20xは、1個当たり10グラム程度の重りである。固定台座20yは、流体バランサ20dの最内周に位置する最内周隔壁部20s4に形成されている。
【0059】
また、円環状の厚肉部20y1は、流路隔壁20sの前後方向の前方に設けられている。換言すると、円環状の厚肉部20y1は、流路隔壁20sである最内周隔壁部20s4および隔壁部20s5~20s8の前後方向の中央20fより前方に設けられている。
【0060】
また、厚肉部20y1には、前記した固定台座20yとともに、カウンタウェイト20xが収納される収納凹部20y2が設けられている。収納凹部20y2は、円環状に形成されている。固定台座20yは、収納凹部20y2よりも前後方向の奥側(後側)に設けられている。例えば、カウンタウェイト20xをねじ固定する場合には、固定台座20yには、ねじ穴20zが設けられる。このねじ穴20zは、周方向に等間隔に形成されている。収納凹部20y2にカウンタウェイト20xが収納された状態において、ねじ20nが前後方向の前側からカウンタウェイト20xを貫通するようにして挿通され、固定台座20yのねじ穴20zにねじ込まれることで、カウンタウェイト20xが厚肉部20y1(収納凹部20y2)に固定される。
【0061】
また、厚肉部20y1は、最内周隔壁部20s4に形成され、前面側隔壁20s1より前方(手前側)に突出しないように構成されている。なお、カウンタウェイト20xは、必要な分だけ、固定台座20yのねじ穴20zにねじ20nを介して固定される。例えば、製品の出荷前に検査して、振動が小さくなる位置にカウンタウェイト20x(重り)を取り付ける。
【0062】
このように、円環状の厚肉部20y1を流路隔壁20sの最内周部である最内周隔壁部20s4に形成することで、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度をより確保でき、しかもカウンタウェイト20xを取り付ける固定台座20yも備えることができる。また、固定台座20yを流体バランサ20dの最内周部(最内周隔壁部20s4)に設けることで、遠心力で流路(空洞20k1)内の外周側の内壁20mに張り付くように移動する液体51(図4参照)の流れも阻害せず、流路スペースも確保できる。
【0063】
ところで、洗濯機Sの脱水工程時には、洗濯物の片寄りで振動が発生する。本発明では、洗濯機Sの脱水工程時の防振のために用いる流体バランサ20dの下記の点に着目した発明である。
流体バランサ20dは、ドラム20内の洗濯物の容量に応じて最内径と最外径とが設計される。液体が内部を周方向に移動できるように隔壁で仕切られた中空の円管構造は、最内径と最外径の範囲内で同心円状に重ねて径方向に多層に配置される。層数に比例して防振効果を得られるからである。しかし、径方向に多層構造にするほど各層の空洞20kの高さは低くなるが、流体バランサ20dの内部の流路スペースを最大限確保するように設計される。
【0064】
また、ドラム20の回転数(回転速度)が上昇し、最終的に衣類を脱水する最高回転数へと至る間、洗濯槽全体が剛体的に揺れる共振モードを通過した後には、ドラム20の回転数は、ドラム20と外槽10が回転軸に対して弾性的に変形して揺れる共振回転数に近づいていく。この間、流体バランサ20dの防振効果が減少する。そこで、本実施形態では、ドラム20の前方の流体バランサ20dの流体(液体51)を収納する構造の内周部にカウンタウェイト20xを収納する凹部(収納凹部20y2)を設けるようにしたものである。
【0065】
また、洗濯機Sをさらに大容量化していくうえで、ドラム20の内容積を拡大するとともに、ドラム20の衣類投入口20t(開口部20g)を広げるには、流体バランサ20d自体の小型化、軸方向の薄型化、内径の大径化を図る必要がある。このとき、カウンタウェイト20xを収納する凹部(収納凹部20y2)は、流体バランサ20dの内径の大径化を図っていくうえで、流路スペースと取り合いとなる。また、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度の確保も必要になる。そこで、本実施形態では、流体バランサ20dの液体51を収納する構造の流路隔壁20sの最内周隔壁部20s4に、カウンタウェイト取付部(固定台座20y)を設け、円環状の厚肉部20y1に固定台座20yを設けたものである。このようにすれば、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度を確保しながら、流体バランサ20dの軸方向の薄型化と内径の大径化を図りつつカウンタウェイト20xを取り付けでき、しかもドラム20の投入口(開口部20g)を拡大できることで衣類を投入し易くできる。その結果、洗濯槽10Sの大容量化と低振動化の両立が可能になる。
【0066】
以上説明したように、第1実施形態の洗濯機Sでは、筐体2と、筐体2内に設けられ、洗濯水が入れられる外槽10と、外槽10内に設けられ、洗濯物が入れられるドラム20と、ドラム20の開口部20gの外周に配置され、液体51を収納し、周方向に移動できるよう流路隔壁20sで形成した流路を有する円管構造の流体バランサ20dと、を備える。流体バランサ20dの液体51を収納する構造の流路隔壁20sは、カウンタウェイト20xが取り付けられるカウンタウェイト取付部である固定台座20yを有する。これによれば、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度を確保しつつ、流体バランサ20dの軸方向の薄型化と内径の大径化を図ることが可能になる。その結果、カウンタウェイト20xを収納可能としながら、ドラム投入口である開口部20gを拡大して衣類を投入し易くし、洗濯槽10Sの大容量化と低振動化の両立が可能な洗濯機Sを提供できる。
【0067】
また、第1実施形態では、流路隔壁20sは、該流路隔壁20sの最内周部(最内周隔壁部20s4)に円環状の厚肉部20y1が形成されている。カウンタウェイト取付部は、円環状の厚肉部20y1にカウンタウェイト20xを取り付けるための固定台座20yが設けられている。これによれば、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度を確保しつつ、流体バランサ20dの軸方向の薄型化と内径の大径化を図ることが可能になる。
【0068】
また、第1実施形態では、円環状の厚肉部20y1は、流路隔壁20sの前後方向の前方に設けられている。ドラム20の開口部20gは、前後方向の奥方向(後ろ方向)に行くほど直径を大きくできる。この位置(流路隔壁20sの前後方向の前方)に円環状の厚肉部20y1を設けることで、ドラム20の後側の径を拡大できるので、内容積を稼ぐ(広げる)ことが可能になり、ドラム20内に洗濯物がより投入しやすくなる。なお、ドラム20の内容積は、流体バランサ20dの内周に位置する板材で構成される開口部20gの部分を含む。
【0069】
また、第1実施形態では、円環状の厚肉部20y1は、ドラム20の奥行き方向(前後方向)の流体バランサ20dの空洞20kの中央20fより前方に位置している。これにより、ドラム20の内容積を稼ぐ(広げる)ことができ、洗濯物をより投入し易くなる。
【0070】
また、第1実施形態では、円環状の厚肉部20y1は、径方向の長さより前後方向の長さの方が長く形成されている。これによれば、径方向の長さが前後方向の長さよりも長い場合に比べて、ドラム20の開口部20gの径を拡大でき、ドラム20の内容積を稼ぐ(広げる)ことが可能になる。
【0071】
また、第1実施形態では、円環状の厚肉部20y1は、カウンタウェイト20xが収納される収納凹部20y2が形成されている。これによれば、カウンタウェイト20xを保護しつつ、厚肉部20y1を大きく形成することができるので流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度を高めることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
図6に示すように、洗濯機S1は、円環状の厚肉部20y3を備えている。この厚肉部20y3は、最内周隔壁部20s4に形成されている。また、厚肉部20y3は、液体が収納される空洞20k1側とドラム20の開口部20g側の両方向に突出して厚肉に形成されている。換言すると、厚肉部20y3は、中央20fより前方の厚肉部20y3の内壁面20w3が、中央20fより後方の最内周隔壁部20s4の内壁面20w2よりも空洞20k1側に突出している。また、厚肉部20y3は、中央20fより前方の厚肉部20y3の外壁20w4が、中央20fより後方の最内周隔壁部20s4の外壁面20w1よりも開口部20g側に突出している。なお、厚肉部20y3を空洞20k1側に突出させる量は、ドラム20の回転時に液体51の流れを妨げない程度である。これにより、第1実施形態の厚肉部20y1よりも厚肉部20y3を径方向外側に配置することが可能になる。
【0073】
第2実施形態では、円環状の厚肉部20y3は、液体51を収納する空洞20k1側に突出して形成されている。これにより、開口部20gの径をさらに広げることができ、ドラム20の内容積をさらに稼ぐ(広げる)ことができ、ドラム20内に洗濯物を投入し易くなる。
【0074】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。
図7に示すように、洗濯機S2は、円環状の厚肉部20y4を備えている。この厚肉部20y4は、前後方向の前側が厚肉に形成され、後側が前側よりも薄肉に形成されている。換言すると、厚肉部20y4は、隔壁の前後方向の前側が後側よりも肉厚に形成されている。また、中央20fより後方の最内周隔壁部20s4の内壁面20w2は、中央20fより前方の厚肉部20y4の内壁面20w3と面一に形成されている。これにより、ドラム20の開口部20gの形状を、第1実施形態よりもドラム20の手前側から内径を拡大できるので、第1実施形態よりも内容積を稼ぐ(広げる)ことができ、ドラム20内に洗濯物を投入し易くなる。
【0075】
また、カウンタウェイト20xを固定台座20yにねじ20nを介して取り付ける場合、ねじ20nの軸方向g1(ねじの軸方向)と流路隔壁20s(最内周隔壁部20s4)の長手方向g2(隔壁の最内周部の長手方向)は同軸とする。このようにすることで、円環状の厚肉部20y4を不要に肉厚にすることなく、ドラム20の内容積を稼ぐ(広げる)ことができ、ドラム20内に洗濯物を投入し易くなる。
【0076】
なお、第3実施形態では、中央20fより前方の厚肉部20y4の内壁面20w3と、中央20fより後方の最内周隔壁部20s4の内壁面20w2とが面一の場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態のように、厚肉部20y4を空洞20k1側に突出させる構成であってもよい。これにより、ドラム20の内容積をさらに稼ぐ(広げる)ことができる。
【0077】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態の洗濯機の流体バランサを前側から見た斜視図である。なお、図8は、カウンタウェイト20xを取り外した状態を示している。
図8に示すように、円環状の厚肉部20y1は、カウンタウェイト20x(図5参照)が収納される収納凹部20y2(凹部)が形成されている。収納凹部20y2には、周方向に等間隔に仕切板20v(仕切り)が形成されている。なお、第4実施形態の仕切板20vは、厚肉部20y1の表面(前面)から収納凹部20y2の底面までの全体に壁を形成して仕切っているが、一部を仕切る形状であってもよい。
【0078】
それぞれの収納凹部20y2には、固定台座20yが形成されている。この固定台座20yには、ねじ穴20zが形成されている。これにより、円環状の厚肉部20y1には、カウンタウェイト20xを周方向に複数取り付けることができる。
【0079】
第4実施形態では、円環状の厚肉部20y1の収納凹部20y2に仕切板20vが周方向に間隔を空けて形成されている。これにより、円環状の厚肉部20y1の径方向の変形を抑制する補強リブの役割を果たすことができる。このため、流体バランサ20dの内周部の耐遠心強度をより確保できる。
【0080】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態の洗濯機の流体バランサを側方から見た断面図である。なお、図9では、流体バランサ20dの内周側の一部とドラム20の一部を図示している。
図9に示すように、第5実施形態の洗濯機は、円環状の厚肉部20y5が形成されている。厚肉部20y5は、流体バランサ20dの前後方向の中央20fよりも前方に位置している。また、厚肉部20y5には、固定台座20yが形成されている。固定台座20yにはねじ穴20zが形成されている。また、厚肉部20y5は、前後方向の長さが径方向の長さよりも長く形成されている。また、厚肉部20y5の前面は、流体バランサ20dの前面側隔壁20s1から前方に突出しない形状である。
【0081】
厚肉部20y5の前面には、カウンタウェイト20xの一部が収納される収納凹部20y6が形成されている。カウンタウェイト20xは、収納凹部20y6に収納され、ねじ20nを介して固定されている。カウンタウェイト20xは、前面側隔壁20s1から前方に突出した状態で収納凹部20y6に固定されている。
【0082】
第5実施形態では、カウンタウェイト20xは、流体バランサ20dの前面側隔壁20s1(前面に位置する隔壁)よりも前方に突出して固定されている。これによれば、厚肉部20y5を流体バランサ20dの中央20fよりも前方に配置できるので、開口部20gの径をより手前側から拡大することができ、ドラム20の内容積をさらに稼ぐ(広げる)ことができる。
【0083】
なお、カウンタウェイト20xを固定台座20yに取り付ける形態の別パターンとしては、カウンタウェイト20xを圧入や埋め込みなどによって取り付けることができる。これにより、上記と同じ効果を得ることができる。また、カウンタウェイト20xを圧入によって取り付けることで、ねじ穴20zを不要にできるので、カウンタウェイト20xの取付作業が容易になる。また、カウンタウェイト20xをインサート成形によって埋め込むことで、カウンタウェイト20xの流体バランサ20dへの取り付けが不要になる。
【0084】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。例えば、前記実施形態では、流体バランサ20dが径方向に複数層設けられた場合を例に説明したが、流体バランサ20dが単層であっても適用できる。
【0085】
また、前記実施形態では、洗濯機として略水平の回転軸をもつ洗濯機Sを例に挙げて説明したが、略鉛直方向の回転軸をもつ縦型洗濯機(洗濯機)においても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
2 筐体
10 外槽
14 ばね
20 ドラム(内槽)
20d 流体バランサ
20f 中央(流体バランサの前後方向の中央)
20g 開口部
20k、20k1、20k2、20k3、20k4、20k5 空洞
20n ねじ
20s 流路隔壁(隔壁)
20s1 前面側隔壁
20s2 後面側隔壁
20s3 仕切隔壁
20s4 最内周隔壁部(隔壁の最内周部)
20s5,20s6,20s7,20s8,20s9 隔壁部
20k、20k1,20k2,20k3,20k4,20k5 空洞
20v 仕切板(仕切り)
20x カウンタウェイト
20y 固定台座(台座)
20y1,20y3,20y4,20y5 厚肉部
20y2 収納凹部(凹部)
20z ねじ穴
41 前面ダンパ
42 背面ダンパ
50 布類の片寄り
51 液体
g1 軸方向(ねじの軸方向)
g2 長手方向(隔壁の最内周部の長手方向)
S,S1,S2 洗濯機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9