(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158688
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び電動アシスト車、並びに情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01P15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074089
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】植原 彪之介
(72)【発明者】
【氏名】保坂 康夫
(72)【発明者】
【氏名】白川 弘和
(57)【要約】
【課題】電動アシスト車の適切な加速度を検出する。
【解決手段】本発明に係る制御装置は、(A)車両に備えられた車輪の回転と同期して回転するモータの回転情報に基づき、車両の加速度を算出する算出部と、(B)モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに関する情報に基づき、算出部により特定の時点について算出された第1の加速度と、当該第1の加速度とは異なり且つ予め定められた規則によって決定される第2の加速度とのいずれかを、採用すべき加速度として選択する選択部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられた車輪の回転と同期して回転するモータの回転情報に基づき、前記車両の加速度を算出する算出部と、
前記モータの稼働状態と前記車両の乗員による操作状態との少なくともいずれかに関する情報に基づき、前記算出部により特定の時点について算出された第1の加速度と、当該第1の加速度とは異なり且つ予め定められた規則によって決定される第2の加速度とのいずれかを、採用すべき加速度として選択する選択部と、
を有する制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、
前記モータの稼働状態と前記車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに関する情報から所定のイベントを検出した場合、当該イベントの検出から所定時間内において、前記第2の加速度を選択する
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2の加速度は、前記所定のイベントの検出直前における躍度に基づき補正された加速度である
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2の加速度は、前記所定のイベントの検出時より前に前記算出部により算出された加速度である
請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
前記特定の時点が、現在から一定時間前の時点であり、
前記第2の加速度が、直前に採用された加速度である
請求項2記載の制御装置。
【請求項6】
選択された前記加速度に対して予め定められた処理を行うことで得られた値に基づき、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項7】
前記処理が、フィルタ処理又は微分処理である
請求項6記載の制御装置。
【請求項8】
前記処理は、前記加速度を平滑化した第2の値を基準に閾値を生成する処理であり、
前記判別部は、
選択された前記加速度と前記閾値とを比較することで、前記路面の状況を判別する
請求項6記載の制御装置。
【請求項9】
前記処理は、前記第2の値に対して所定値を加算することで閾値を生成する処理である
請求項8記載の制御装置。
【請求項10】
前記所定値が、前記モータの出力トルク又は前記車両の速度に応じて変化する
請求項9記載の制御装置。
【請求項11】
前記処理は、前記第2の値に対して第1の所定値を加算して第1の閾値を生成し、前記第2の値に対して第2の所定値を減算して第2の閾値を生成する処理である
請求項9記載の制御装置。
【請求項12】
前記判別部は、前記モータの稼働状態と前記車両の乗員による操作状態との少なくともいずれかが条件を満たす場合に、前記閾値を無効化する
請求項6記載の制御装置。
【請求項13】
選択された前記加速度が、所定時間内に、正の第1の閾値を超えること及び負の第2の閾値を下回ることの両方が発生したか否かを判断することで、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項14】
選択された前記加速度が、所定時間内に、正の第1の閾値を超え且つ負の第2の閾値を下回ること、前記第2の閾値より小さい負の第3の閾値を下回り且つ前記第1の閾値より小さい正の第4の閾値を超えることのいずれかが発生したか否かを判断することで、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項15】
選択された前記加速度と閾値とを比較することで、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、
前記モータの稼働状態と前記車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに応じて、前記閾値を決定するか、又は、前記閾値を無効化する閾値決定部と、
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項16】
前記閾値決定部は、
前記モータによる力行駆動、前記モータによる回生制動、前記車両の乗員による入力トルク、又は前記車両の乗員によるブレーキ操作が検出された場合には、前記閾値を無効化するか、又は前記閾値の絶対値を増加させる
請求項15記載の制御装置。
【請求項17】
前記閾値決定部は、
前記モータによる力行駆動又は前記車両の乗員による入力トルクが検出された場合には、正の閾値を無効化するか、又は、前記正の閾値の絶対値を増加させ、
前記モータによる回生制動又は前記車両の乗員によるブレーキ操作が検出された場合には、負の閾値を無効化するか、又は、前記負の閾値の絶対値を増加させる
請求項15記載の制御装置。
【請求項18】
前記閾値決定部は、
前記車両の速度、前記モータの出力トルク、前記車両の乗員による入力トルク、又は前記車両の乗員によるブレーキ操作の有無に応じて、前記閾値を調整する
請求項15記載の制御装置。
【請求項19】
前記モータの稼働状態と前記車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに関する情報から所定のイベントを検出した場合、所定期間、前記判別部が判別を停止する
請求項6、13、14又は15に記載の制御装置。
【請求項20】
選択された前記加速度と閾値とを比較することで、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、
前記路面の状況のうち前記路面の凹凸を検出した位置を記録する記録部と、
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項21】
請求項20の制御装置において前記路面の状況のうち前記路面の凹凸を検出した位置のデータを取得し、記憶装置に格納する取得部と、
前記記憶装置に格納された前記位置のデータに基づき、異常箇所を抽出する抽出部と、
を有する情報処理装置。
【請求項22】
前記抽出部は、前記記憶装置に格納された位置の検出回数に基づき、異常箇所を抽出する
請求項21記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記取得部は、前記路面の凹凸を検出した位置又は当該位置の近隣における加速度をさらに取得して、前記記憶装置に格納し、
前記抽出部は、前記記憶装置に格納された加速度に基づき、前記異常箇所を順序づける
請求項21記載の情報処理装置。
【請求項24】
選択された前記加速度と閾値とを比較することで、前記車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、
前記路面の状況のうち前記路面の凹凸を検出した回数に基づき、前記モータによる人力の補助度合いを抑制するか又は前記モータによる人力の補助度合いの時間変化率を規制する制御部と、
をさらに有する請求項1記載の制御装置。
【請求項25】
請求項1記載の制御装置を搭載した電動アシスト車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の加速度を得るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、人力による主駆動力と、電動機による補助駆動力とによって駆動するように構成した電動自転車が、補助駆動力を生成する電動機と、電動機へ電力を供給するためのバッテリと、電動自転車の走行加速度を検出する加速度センサと、電動機が検出された走行加速度の大きさに対応する補助駆動力を出力するように電動機への電力供給量を制御する制御手段を有することが開示されている。この文献によれば、加速度センサを用いて加速度を検出しており、その分コストが増加する。
【0003】
また、例えば特許文献2には、モータの回転速度で自転車の速度を検出する速度センサにより検出された速度に基づき、進行方向の加速度を算出する機能を有する補助動力付き自転車が開示されている。しかしながら、モータの回転速度に基づき単純に算出される加速度は、必ずしも適切とは言えない場合があるが、その点については触れられていない。
【0004】
さらに、例えば特許文献3には、車輪の回転速度を表す車輪速を、運転状態検出手段から取得し、路面凹凸検出手段は、車輪速の変化がしきい値以上か否かに基づき、路面の凹凸を検出することが開示されている。この文献では、電動アシスト車が対象とはなっていないが、車輪速の変化という、進行方向の加速度に類似するパラメータに基づき、路面の凹凸を検出しているが、車輪速の単純変化は、必ずしも適切な値とは言えない場合があり、その点については触れられていない。
【0005】
また、路面状況の検出という観点では、例えば特許文献4には、4輪の車両上に備えられた加速度センサで各方向の加速度を測定し、測定された加速度を基に路面状況を検出することが開示されている。このような複数方向の加速度を測定できるような加速度センサは、より多くのコストが掛かる。また、主に上下方向の加速度、又は前後方向、左右方向、および上下方向の加速度を複合した複合加速度を基に路面状況を検出しているが、上下方向の加速度が得られない場合については考慮されていない。
【0006】
電動アシスト車(電動補助車両等とも呼ぶ)の一例である電動アシスト自転車では、進行方向(すなわち車両の前後方向)の加速度に基づく制御を行う場合もあり、適切な加速度を検出することは、適切な制御を行う上で重要である。また、上でも例示しているように、加速度から凹凸(段差とも呼ぶ)を検出するような場合においても、適切な加速度を検出することは重要である。しかしながら、加速度センサというハードウエアに依存せずに、電動アシスト車の適切な加速度を検出するような技術は存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-258782号公報
【特許文献2】WO2014/050474公報
【特許文献2】特開2015-021858号公報
【特許文献3】特開2015-094680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、一側面によれば、電動アシスト車の適切な加速度を検出するための新規な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御装置は、(A)車両に備えられた車輪の回転と同期して回転するモータの回転情報に基づき、車両の加速度を算出する算出部と、(B)モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態との少なくともいずれかに関する情報に基づき、算出部により特定の時点について算出された第1の加速度と、当該第1の加速度とは異なり且つ予め定められた規則によって決定される第2の加速度とのいずれかを、採用すべき加速度として選択する選択部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
一側面によれば、電動アシスト車の適切な加速度を検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態における電動アシスト自転車の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、モータ制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る制御部の機能構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係る処理フローを示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態の変形例2に係る処理フローを示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る制御部の機能構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る処理の適用例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態の変形例1に係る処理フローを示す図である。
【
図11】
図11(a)乃至(c)は、第2の実施の形態の変形例1に係る処理の適用例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態の変形例2に係る処理フローを示す図である。
【
図13】
図13(a)乃至(c)は、第2の実施の形態の変形例2に係る処理の適用例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態の変形例5に係る処理フローを示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施の形態の変形例6に係る処理の説明のための図である。
【
図16】
図16は、第2の実施の形態の変形例6に係る処理の説明のための図である。
【
図17】
図17は、第2の実施の形態の変形例5に係る処理フローを示す図である。
【
図18】
図18は、第2の実施の形態の変形例5に係る処理フローを示す図である。
【
図19】
図19は、第2の実施の形態の変形例5に係る処理フローを示す図である。
【
図20】
図20(a)乃至(e)は、第2の実施の形態の変形例6に係る処理の適用例を説明するための図である。
【
図21】
図21は、第3の実施の形態に係る制御部の機能構成例を示す図である。
【
図22】
図22は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図23】
図23は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図24】
図24(a)乃至(d)は、第3の実施の形態に係る処理の適用例を説明するための図である。
【
図25】
図25は、第4の実施の形態に係るシステムの概要を示す図である。
【
図26】
図26は、第5の実施の形態に係る処理の適用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の例をもって説明する。しかしながら、本発明の実施の形態は、電動アシスト自転車だけに適用対象を限定するものではなく、人力に応じて移動する移動体(例えば、台車、車いすなど)の移動を補助するモータなどに対するモータ制御装置等についても適用可能である。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の一例を示す外観図である。この電動アシスト自転車1は、モータ駆動装置を搭載している。モータ駆動装置は、バッテリパック101と、モータ制御装置102と、トルクセンサ103と、クランク回転センサ104と、モータ105と、表示機106と、ブレーキセンサ107とを有する。
【0014】
また、電動アシスト自転車1は、前輪、後輪、前照灯、フリーホイール、変速機等も有している。
【0015】
バッテリパック101は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、他種の電池、例えばリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池などであってもよい。そして、バッテリパック101は、モータ制御装置102を介してモータ105に対して電力を供給し、回生時にはモータ制御装置102を介してモータ105からの回生電力によって充電も行う。
【0016】
トルクセンサ103は、クランク軸周辺に設けられており、ユーザによるペダルの踏力(即ち入力トルク)を検出し、この検出結果をモータ制御装置102に出力する。また、クランク回転センサ104は、トルクセンサ103と同様に、クランク軸周辺に設けられており、クランクの回転に応じた信号をモータ制御装置102に出力する。
【0017】
モータ105は、例えば周知の三相直流ブラシレスモータであり、例えば電動アシスト自転車1の前輪に装着されている。モータ105は、前輪を回転させるとともに、前輪の回転に応じてローターが回転するように、ローターが前輪に連結されている。さらに、モータ105はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転情報(すなわちホール信号)をモータ制御装置102に出力する。
【0018】
モータ制御装置102は、モータ105の回転センサ、トルクセンサ103及びクランク回転センサ104等からの信号に基づき所定の演算を行って、モータ105の駆動を制御し、モータ105による回生の制御も行う。
【0019】
ブレーキセンサ107は、ユーザのブレーキ操作を検出して、ブレーキ操作に関するブレーキ信号(例えば、ブレーキの有無を表す信号)をモータ制御装置102に出力する。具体的には、磁石とリードスイッチを用いたセンサである。
【0020】
本実施の形態に係るモータ制御装置102に関連する構成を
図2に示す。モータ制御装置102は、制御器1020と、FET(Field Effect Transistor)ブリッジ1030とを有する。FETブリッジ1030は、モータ105のU相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Suh)及びローサイドFET(Sul)と、モータ105のV相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Svh)及びローサイドFET(Svl)と、モータ105のW相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Swh)及びローサイドFET(Swl)とを含む。このFETブリッジ1030は、モータ105に対するインバータであり、コンプリメンタリ型スイッチングアンプの一部を構成している。
【0021】
また、制御器1020は、演算部1021と、クランク回転入力部1022と、モータ回転入力部1024と、可変遅延回路1025と、モータ駆動タイミング生成部1026と、トルク入力部1027と、ブレーキ入力部1028と、AD(Analog-Digital)入力部1029とを有する。
【0022】
演算部1021は、表示機106からの入力(例えば電源のオン/オフなど)、クランク回転入力部1022からの入力、モータ回転入力部1024からの入力、トルク入力部1027からの入力、ブレーキ入力部1028からの入力、AD入力部1029からの入力を用いて所定の演算を行って、モータ駆動タイミング生成部1026及び可変遅延回路1025に対して出力を行う。なお、演算部1021は、メモリ10211を有しており、メモリ10211は、演算に用いる各種データ及び処理途中のデータ等を格納する。さらに、演算部1021は、プログラムをプロセッサが実行することによって実現される場合もあり、この場合には当該プログラムがメモリ10211に記録されている場合もある。また、メモリ10211は、演算部1021とは別に設けられる場合もある。
【0023】
クランク回転入力部1022は、クランク回転センサ104からの、クランク回転位相角(回転方向を表す信号を含む場合もある)を、ディジタル化して演算部1021に出力する。モータ回転入力部1024は、モータ105が出力するホール信号からモータ105の回転(本実施の形態においては前輪の回転)に関する信号(例えば回転位相角、回転方向など)を、ディジタル化して演算部1021に出力する。トルク入力部1027は、トルクセンサ103からの踏力に相当する信号をディジタル化して演算部1021に出力する。ブレーキ入力部1028は、ブレーキセンサ107からのブレーキ有り又は無しを表す信号をディジタル化して演算部1021に出力する。AD入力部1029は、二次電池からの出力電圧をディジタル化して演算部1021に出力する。
【0024】
演算部1021は、演算結果として進角値を可変遅延回路1025に出力する。可変遅延回路1025は、演算部1021から受け取った進角値に基づきホール信号の位相を調整してモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。演算部1021は、演算結果として例えばPWM(Pulse Width Modulation)のデューティー比に相当するPWMコードをモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。モータ駆動タイミング生成部1026は、可変遅延回路1025からの調整後のホール信号と演算部1021からのPWMコードとに基づいて、FETブリッジ1030に含まれる各FETに対するスイッチング信号を生成して出力する。演算部1021の演算結果によって、モータ105は、力行駆動を行う場合もあれば、回生制動を行う場合もある。なお、モータ駆動の基本動作については、国際公開第2012/086459号パンフレット等に記載されており、本実施の形態の主要部ではないので、ここでは説明を省略する。
【0025】
上で述べたように、
図1に示した電動アシスト自転車1では、前輪にモータ105が装着されており、前輪の回転とモータ105の回転は同期している。このように、車輪回転とモータ回転とが同期していれば、ホール信号から得られるモータ回転数と車速との関係は特定できるため、モータ回転数から車速が算出される。例えば、半径rの車輪で、モータ1回転で車輪1回転する場合には、モータ回転数N[rpm]から、車速V[m/h]=2πr×N×60が算出される。
【0026】
また、車速Vを時間微分することで車両前後方向の加速度を算出することも可能である。これにより、加速度センサを車両に搭載すること無く、加速度が得られるので、コスト低減やシステム単純化につながる。
【0027】
なお、車輪回転とモータ回転が必ずしも同期しない構造、例えば車輪とモータの動力伝達機構間にワンウェイクラッチ等が介在し、モータが力行駆動する時以外は勝手に動力伝達が切断されるシステムは、モータの駆動を制御している制御装置からすると、どの期間車輪回転とモータ回転とが同期しているのか不明であるから、本実施の形態の適用先として好ましくない。その他、回生制動が不可能なシステム(例えば、上述のワンウェイクラッチがあるシステムや、
図1のように車輪にモータが装着されているハブモータにクラッチがあり力行駆動中以外はモータと車輪回転が切り離されるシステム)や、車両退行時(モータ逆転時)の車輪回転がモータに伝達されないシステムでは、加速度が検知できない期間が生ずる。但し、クラッチの接続及び切断を制御できるような仕組みを備えている場合には、加速度を検出できる期間を特定できるので、本実施の形態の適用先から除外されるものでは無い。
【0028】
さらに、車輪回転とモータ回転との関係が特定できていれば良いので、
図1のようにモータ105が前輪(場合によっては後輪)に装着されている場合に限られず、ギヤ比の変更などによって車輪回転とモータ回転との関係が変化する場合においても、その変化を特定できれば、本実施の形態の適用先となる。
【0029】
但し、上で述べたように、車輪回転とモータ回転との関係から単純に加速度を算出するのでは、例えば、モータ非駆動状態からモータ駆動状態に切り替わる際にモータ105にショックが加わることなどによるノイズが、加速度などに重畳してしまう場合がある。本実施の形態では、このようなノイズなどを除去して適切な加速度を得るようにする。
【0030】
このために、演算部1021において本実施の形態に関係する処理を行う制御部3000に関連する機能ブロック構成例を、
図3に示す。制御部3000は、加速度などを算出する算出部3100と、モータ105の駆動制御を行う駆動制御部3400と、駆動制御部3400からの出力と算出部3100からの出力とに基づき以下に述べる処理を行って適切な加速度を出力する選択部3200と、選択部3200から出力される加速度を用いた処理を実行する後処理部3300とを有する。
【0031】
算出部3100は、モータ回転入力部1024からのモータ回転入力に基づき、上で述べたような、モータ回転と車輪回転との関係から、電動アシスト自転車1の進行方向における車速及び加速度を算出する。駆動制御部3400は、例えばトルク入力部1027からの入力トルクと算出部3100からの車速とに基づき、モータ105の出力トルクを算出し、出力トルクが0を超えている状態(すなわち駆動状態)とそれ以外の非駆動状態とを選択部3200に通知する。選択部3200は、通常時には算出部3100から出力される加速度を選択するが、モータ105の駆動状態と非駆動状態との切り替えの発生を駆動制御部3400からの通知に基づき検出した場合には、予め定められた規則によって決められる加速度を選択して、後処理部3300に出力する。後処理部3300は、後に述べるような路面状況(例えば凹凸(段差)などを含む)を判別する処理部であっても良いし、さらに路面状況から駆動制御部3400におけるアシスト比を変化させるべき状態を検出するような処理部であっても良い。
【0032】
次に、
図4を用いて、主に選択部3200の処理内容について説明する。なお、
図4の処理は、制御周期毎に実行される。
【0033】
算出部3100は、モータ回転入力部1024からのモータ回転入力に基づく、その時点におけるモータ105の回転数から、電動アシスト車1の車速及びその微分値である加速度を算出し、選択部3200に出力する。なお、このように算出された加速度は、例えばメモリ10211における所定の領域に、後に用いるため、ある程度の期間保持される場合もある。
【0034】
選択部3200は、算出部3100から得られた加速度(すなわちモータ回転に基づく加速度)を仮加速度として保持する(ステップS1)。また、選択部3200は、駆動制御部3400から通知されるモータの状態(駆動状態又は非駆動状態)を現在モータ状態として取得する(ステップS3)。
【0035】
そして、選択部3200は、前回モータ状態と現在モータ状態とが一致するか否かを判断する(ステップS5)。前回モータ状態は、1回前の制御周期におけるモータ状態であり、初期的には、例えば駆動状態でも非駆動状態でもない状態を設定しておき、ステップS5で必ず不一致とするようにしても良い。
【0036】
前回モータ状態と現在モータ状態とが不一致である場合には、選択部3200は、モータ状態の切り替えを検出してからの時間を計測するためのタイマを初期化する(ステップS7)。そして処理はステップS9に移行する。一方、前回モータ状態と現在モータ状態とが一致する場合には、処理はステップS9に移行する。
【0037】
そして、選択部3200は、タイマ値が所定時間T1(例えば20ms)を超えたか否かを判断する(ステップS9)。タイマ値が所定時間T1以下である場合には、処理はステップS13に移行する。この意味は、ステップS12として示すように、選択部3200の出力である加速度(=車体加速度)は変更が無く、前回出力された車体加速度が維持されるというものである。
【0038】
すなわち、モータ状態の切り替えが検出された後、所定時間T1の間は、当該切り替え直前の加速度を維持することで、モータ状態の切り替えに応じて生ずるノイズを除去できるようになる。なお、LPF(Low Pass Filter)のようなフィルタ処理によって上記ノイズを除去することも可能ではあるが、LPFによって処理負荷が高くなったり、後処理で行われることが想定される路面状況検出のための成分が失われたり、加速度変化が車体加速度に反映されるのが遅れる(応答性の悪化)といった問題がある。本実施の形態であれば、このような問題は生じにくい。
【0039】
初期的には、切り替え直前の加速度が存在していないので、初期の所定時間T1においては、加速度不定というようにしても良いし、予め定められた値を出力するようにしても良いし、初期の所定時間T1においては、ステップS11を実行するようにしても良い。
【0040】
一方、タイマ値が所定時間T1を超えた場合には、選択部3200は、車体加速度にステップS1で得られた仮加速度を設定して、後処理部3300に出力する(ステップS11)。そして処理はステップS13に移行する。
【0041】
その後、選択部3200は、現在モータ状態を前回モータ状態として保存する(ステップS13)。また、選択部3200は、タイマを制御周期分増分させる(ステップS15)。
【0042】
そして、制御部3000は、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS17)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理はステップS1に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0043】
このような処理を実行することで、モータの駆動状態と非駆動状態との切り替えによって生ずるノイズを除去した形で加速度を得ることができるようになる。
【0044】
[実施の形態1の変形例1]
第1の実施の形態では、モータ状態の切り替え直前の加速度を維持する例を示したが、モータ状態の切り替えを検出した時点で既に加速度にノイズが重畳している可能性もある。すなわち、モータ状態の切り替えの検知が遅延する可能性がある。そのため、例えば
図4を
図5のように変形してもよい。なお、基本的な処理の流れは、
図4と同様であるから、変更部分のみを説明する。
【0045】
変形例1では、ステップS11の代わりにステップS21が導入されており、このステップS21では、選択部3200は、現在から一定時間T2前の仮加速度を例えばメモリ10211から読み出して、車体加速度に設定して、後処理部3300に出力する(ステップS21)。すなわち、原則として、時間T2だけ前の仮加速度を用いる。なお、所定時間T1はノイズの長さに対して十分長い値(例えば100ms)とし、一定時間T2は、検知の遅延よりも長い、例えば(T1)/2と設定する。これにより、モータ状態変化の検知直前、及びタイマ値が所定時間T1を超えた直後の加速度にノイズが重畳することを抑制できる。
【0046】
また、変形例1では、ステップS9でタイマ値が所定時間T1以下である場合に、ステップS23が追加されており、選択部3200は、出力である車体加速度として、前回加速度を設定する。そして処理はステップS13に移行する。
【0047】
さらに、変形例1では、ステップS13の後に、ステップS25が追加されており、選択部3200は、前回加速度に対して、車体加速度を設定する。そしてステップS15に移行する。
【0048】
このような処理を行うことで、モータ状態が切り替えられると、直前の車体加速度を選択して、所定時間T1の間維持することになる。
【0049】
変形例1によれば、モータ状態の切り替えによって生ずるノイズの影響を抑制できるようになる。
【0050】
[実施の形態1の変形例2]
変形例1及び2とは異なる形、例えばモータ状態の切り替えを検出する直前の躍度(すなわち加速度の微分値)を用いて、車体加速度を推定するようにしても良い。この場合の処理フローを
図6に示す。なお、基本的な処理の流れは、
図4と同様であるから、変更部分のみを説明する。
【0051】
変形例2では、ステップS7の後に、ステップS31を追加しており、このステップS31では、選択部3200は、モータ状態の切り替えが検出されたタイミングの直前の躍度(加速度の微分値)を算出して、当該躍度を基準躍度として設定する。そして処理はステップS9に移行する。
【0052】
また、変形例2では、ステップS9でタイマ値が所定時間T1以下である場合に、ステップS33が追加されており、選択部3200は、出力である車体加速度として、前回加速度+基準躍度×制御周期の値を設定する。そして処理はステップS13に移行する。
【0053】
本実施の形態では、モータ状態の切り替え直前における躍度(=基準躍度)が維持されているものとして、前回加速度+基準躍度×制御周期で、現在の加速度を推定するものである。
【0054】
さらに、変形例2では、ステップS13の後に、ステップS35が追加されており、選択部3200は、前回加速度に対して、車体加速度を設定する。そしてステップS15に移行する。
【0055】
このような処理を行うことで、モータ状態が切り替えられる前の傾向を加味した形で加速度を推定して、その値を採用することができるようになる。なお、ステップS33の算式は一例であって、他の規則に基づき加速度を推定するようにしても良い。
【0056】
[実施の形態1の変形例3]
第1の実施の形態では、モータ駆動状態とモータ非駆動状態との切り替わりを検出するような例を示したが、ノイズが生じ得るのは、そのような切り替えだけではない。例えば、モータ105に回生制動を行わせる場合にも、ノイズが生じ得る。さらに、電動アシスト自転車1であれば、乗員がブレーキを掛けたりする場合にも、ノイズが生じ得る。また、電動アシスト自転車1であれば、乗員がクランクを回転させた場合にも、ノイズが生じ得る。
【0057】
従って、モータ105を力行駆動させているか否か、回生制動させているか否かといったモータ105の稼働状態、クランク回転、クランク回転によるトルク入力、ブレーキ操作といった乗員による操作状態に関する情報に基づき、ノイズ発生のイベントを検出して、当該イベントで生じ得るノイズの影響を避けるように、上で述べた第1の実施の形態や変形例で述べた手法を採用するようにしても良い。モータ105の稼働状態については、駆動制御部3400が回生制動をも制御する場合には、駆動制御部3400から得られる。回生制御部が別に設けられる場合には当該回生制御部から得られる。クランク回転を用いる場合にはクランク回転入力部1022からのクランク回転入力、入力トルクを用いる場合にはトルク入力部1027からの入力トルク、ブレーキ操作を用いる場合にはブレーキ入力部1028からのブレーキ入力を用いて、選択部3200が処理を行う。
【0058】
さらに、上で述べた処理では、ノイズ発生のイベントを検出してから所定期間T1の間は、算出部3100で算出された加速度を採用しない例を示したが、イベント等によっては、イベント発生検出から所定期間T3前までの間において、算出部3100で算出された加速度を採用しないようにしても良い。これは、事後的に加速度を算出するような場面において採用される。なお、イベント発生検出前後の期間において、算出部3100で算出された加速度を採用しないようにしても良い。
【0059】
[実施の形態2]
次に、第1の実施の形態において選択された加速度(=車体加速度)の活用の一例として、路面状況の判別に係る基本的な実施の形態を説明する。
【0060】
図7に、演算部1021において本実施の形態に関係する処理を行う制御部3000bに関連する機能ブロック構成例を示す。
【0061】
本実施の形態に係る制御部3000bは、算出部3100bと、加速度に基づき路面状況を判別する判別部3500と、判別部3500の処理結果に基づき処理を行う後処理部3600と、駆動制御部3400bとを有する。
【0062】
本実施の形態に係る算出部3100bは、第1の実施の形態に係る算出部3100と選択部3200とを含むものである。判別部3500は、算出部3100から出力された加速度に基づき、路面に凹凸(段差、陥没なども含む)が存在するか否かを判別する。判別部3500及び後処理部3600が、第1の実施の形態に係る後処理部3300に対応する。本実施の形態に係る後処理部3600は、例えばGPS(Global Positioning System)による測位部から、路面に凹凸を検出した場合にその位置データを取得して記録する処理を行うものである。また、本実施の形態に係る後処理部3600は、路面に凹凸が高頻度で検出されると、駆動制御部3400bに対してアシスト比を下げるように指示することで、スリップを防止させるというような処理を行うものである場合もある。
【0063】
なお、第1の実施の形態において得られる加速度は、電動アシスト自転車1の車体前後方向の加速度ではあるが、凹凸通過時の衝撃等によりモータ回転に不規則な変化が生じるため、その変化を加速度から判断することにより路面における凹凸を検出することが可能となる。よって、路面状況検出は、路面での振動がモータに容易に伝わるハブモータを採用することが好ましい。但し、ハブモータ以外の方式、例えばクランク軸付近にモータを搭載するセンタモータ方式であっても、モータ回転と車輪回転とが同期するようになっていれば、ある程度は路面状況を判別可能な場合もある。
【0064】
次に、
図8及び
図9を用いて、主に判別部3500の処理内容について説明する。なお、
図8の処理については、制御周期毎に実行される。
【0065】
まず、算出部3100bは、第1の実施の形態で述べたような処理を行うことで、加速度(=車体加速度)を判別部3500に出力する。判別部3500は、算出部3100bから加速度を取得する(ステップS41)。判別部3500は、取得した加速度が、予め設定されている正の閾値TH1以上であるか、又は予め設定されている負の閾値TH2以下であるか否かを判断する(ステップS43)。閾値TH1及びTH2は、凹凸のない路面の走行時には反応せず、検出すべき凹凸については走行時に反応するように設定される。なお、閾値TH1とTH2の絶対値が同じで無くても良い。
【0066】
加速度がステップS43の条件を満たす場合には、判別部3500は、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS45)。そして処理はステップS49に移行する。一方、加速度がステップS43の条件を満たさない場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS47)。そして処理はステップS49に移行する。
【0067】
そして、制御部3000bは、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS49)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理はステップS41に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0068】
図8に示した処理の適用例を、
図9に示す。
図9(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化を表しており、
図9(b)は、判別部3500による凹凸の検出状況を示すものである。なお、本例では、|TH1|=|TH2|=0.2[G]としている。
図9(a)のように加速度が変化する場合には、3回正の閾値TH1以上となっており、1回負の閾値TH2以下となるので、全部で4回凹凸を検出することになる。
【0069】
このようにすることで、適切な加速度に応じて、路面状況を判別できるようになる。
【0070】
なお、TH1とTH2とのいずれかのみを用いることが好ましい場合もある。
【0071】
[実施の形態2の変形例1]
第2の実施の形態では、加速度そのものに対して閾値を設定する場合を示したが、例えば通常の加減速による加速度の増減を排除するのが難しい場合がある。このため、変形例1では、凹凸判別を阻害する加速度成分を排除するような時定数(例えば0.1秒)のHPF(High Pass Filter)を用いる。
【0072】
変形例1に係る判別部3500の処理内容について、
図10を用いて説明する。なお、
図10の処理については、制御周期毎に実行される。
【0073】
まず、算出部3100bは、第1の実施の形態で述べたような処理を行うことで、加速度(=車体加速度)を判別部3500に出力する。判別部3500は、算出部3100bから加速度を取得する(ステップS51)。また、判別部3500は、取得した加速度に対してHPF処理を実行する(ステップS53)。
【0074】
そして、判別部3500は、HPF処理後の加速度が、予め設定されている正の閾値TH11以上であるか、又は予め設定されている負の閾値TH12以下であるか否かを判断する(ステップS55)。閾値TH11及びTH12は、凹凸のない路面の走行時には反応せず、検出すべき凹凸については走行時に反応するように設定される。なお、閾値TH11とTH12の絶対値が同じで無くても良い。
【0075】
HPF処理後の加速度がステップS55の条件を満たす場合には、判別部3500は、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS57)。そして処理はステップS61に移行する。一方、HPF処理後の加速度がステップS55の条件を満たさない場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS59)。そして処理はステップS61に移行する。
【0076】
そして、制御部3000bは、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS61)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理はステップS51に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0077】
図10に示した処理の適用例を、
図11に示す。
図11(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化を表しており、
図11(b)は、HPF処理後の加速度の時間変化を表しており、
図11(c)は、判別部3500による凹凸の検出状況を表す図である。
【0078】
図11(a)に示すように、停止、加速、惰行、減速、停止といった順に発生する走行状態において、加速や減速の度合いが大きい場合には、閾値TH1及びTH2を適切に設定しないと、誤検出が生じ得る。これに対して、
図11(b)に示すように、HPF処理後の加速度については、加速や減速による加速度変化は除去されて、惰行中において発生する鋭い加速度変化のみが抽出されて、
図11(c)に示すように、時刻t1及びt2において、ステップS55の条件を満たすようになる。なお、厳密には時刻t1付近で2回、時刻t2付近で2回、凹凸が検出されるが、ここでは図示の都合でそれぞれ1回のみ示している。
【0079】
このようにすることで、加速度の低周波成分を排除して、適切に路面の凹凸を検出できるようになる。
【0080】
なお、HPFだけではなく、微小な振動による成分を排除して誤検出を抑制するために、LPFや移動平均フィルタを追加で適用するようにしても良い。
【0081】
さらに、加速度の微分をHPF処理の代わりに行うようにしても良い。この場合、HPF処理後の加速度の代わりに躍度を用いることになる。
【0082】
[実施の形態2の変形例2]
第2の実施の形態及びその変形例1では、閾値は固定であったが、閾値を適切に時間変化させることで、変形例1のように通常の加減速などの影響を排除できるようになる。
【0083】
変形例2に係る判別部3500の処理内容について、
図12を用いて説明する。なお、
図12の処理については、制御周期毎に実行される。
【0084】
まず、算出部3100bは、第1の実施の形態で述べたような処理を行うことで、加速度(=車体加速度)を判別部3500に出力する。判別部3500は、算出部3100bから加速度を取得する(ステップS71)。
【0085】
さらに、判別部3500は、取得した加速度に対して平滑化処理を実行する(ステップS73)。例えば、直前一定期間(例えば100ms)の加速度を平均するという処理を実行する。そして、判別部3500は、正の閾値TH3として、平滑化加速度+所定値d1を設定する(ステップS75)。また、判別部3500は、負の閾値TH4として、平滑化加速度-d2を設定する(ステップS77)。なお、d1及びd2は正の値であり、それらは同じであることも異なることもある。
【0086】
そして、判別部3500は、取得した加速度が、正の閾値TH3以上であるか、又は負の閾値TH4以下であるか否かを判断する(ステップS79)。
【0087】
加速度がステップS79の条件を満たす場合には、判別部3500は、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS81)。そして処理はステップS85に移行する。一方、加速度がステップS79の条件を満たさない場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS83)。そして処理はステップS85に移行する。
【0088】
そして、制御部3000bは、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS85)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理はステップS71に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0089】
図12に示した処理の適用例を、
図13に示す。
図13(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化と、閾値TH3及びTH4の時間変化を表しており、
図13(b)は、平滑化加速度の時間変化を表しており、
図13(c)は、判別部3500による凹凸の検出状況を表す。
【0090】
図13(b)に示すように、平滑化加速度は、加速度の大まかな変化を表しており、これに所定値d1(ここではd1=d2)を加減算することで、閾値TH3及びTH4が、
図13(a)に示すように設定される。このように、通常の加減速で緩やかに加速度が変化する場合には、閾値TH3及びTH4はそれに沿って増減するので、通常の加減速のような場面において、凹凸を誤検出することを抑制できるようになる。この例では、鋭い加速度変化のみが抽出されて、
図13(c)に示すように、時刻t3及びt4において、ステップS79の条件を満たすようになる。なお、厳密には時刻t3付近で2回、時刻t4付近で2回、凹凸が検出されるが、ここでは図示の都合でそれぞれ1回のみ示している。
【0091】
なお、このように判別部3500には、閾値決定部が含まれており、当該閾値決定部により例えばステップS73乃至S77が実行されるとも言える。さらに、判別部3500とは別に閾値決定部が設けられている場合もある。
【0092】
[実施の形態2の変形例3]
第2の実施の形態の変形例2では、所定値d1及びd2については固定値を用いている例を示したが、例えば速度に応じて変動させるようにしても良い。例えば、速度が速い場合には、加速度変化も大きくなるので、所定値の大きさを大きくするようにしても良い。
【0093】
さらに、モータ駆動中は凹凸検出感度が下がるため、駆動制御部3400bがモータ105に要求する出力トルクが大きくなると、所定値d1及びd2を小さくし、出力トルクが小さくなると、所定値d1及びd2を大きくするといった調整を行うようにしても良い。
【0094】
さらに、モータ105が駆動状態にある場合に加速度に重畳するノイズが増加して誤検出が増加するといった場合には、駆動制御部3400bがモータ105に要求する出力トルクが閾値を超える又はモータ105が駆動状態にあるということを検出すると、閾値を無効化するようにしても良い。また、閾値の絶対値を大きな値にして感度を下げるようにしても良い。
【0095】
このような事項は、閾値を用いた凹凸検出一般に適用可能である。
【0096】
[実施の形態2の変形例4]
適切な時定数を設定すれば、車速に対してHPF処理を行うことで、速度の微分値と同等の値が得られるので、当該HPF処理後の車速について、上で述べたような技術を適用しても良い。
【0097】
[実施の形態2の変形例5]
電動アシスト自転車1が凹凸を走行する場合、加速度は、
図9等で示したように、その時の実際の加速度を0とした場合に、短時間で正負に振れるような波形となることが多い。従って、加速度が所定時間T4以内(例えば100ms)に正と負の閾値をそれぞれ超えた場合にのみ、凹凸検出と判断しても良い。
【0098】
このような検出を行うための処理フローを
図14乃至
図19に示す。なお、ステップS95からステップS135を制御周期毎に実行する。
【0099】
まず、判別部3500は、所定時間T4を計測するためのカウントをリセットする(
図14:ステップS91)。また、判別部3500は、動作開始時における誤検出を防止するための初回検出フラグをオフにセットする(ステップS93)。
【0100】
そして、算出部3100bは、第1の実施の形態で述べたような処理を行うことで、加速度(=車体加速度)を判別部3500に出力する。判別部3500は、算出部3100bから加速度を現在加速度として取得する(ステップS95)。
【0101】
その後、判別部3500は、前回加速度(1制御周期前の加速度)及び現在加速度が、条件1を満たしたか否かを判断する(ステップS97)。条件1は、前回加速度≧閾値TH21、且つ、現在加速度<閾値TH21である。すなわち、
図15における矢印aで模式的に示すように、閾値TH21を上から交差した、という条件を示している。前回加速度及び現在加速度が条件1を満たしている場合には、判別部3500は、現在加速度が閾値TH22以下であるか否かを判断する(ステップS99)。これは、
図15における矢印bで模式的に示すように、1制御周期で閾値TH22とも交差する、という状態であるか否かを判断するものである。ステップS99の条件を満たす場合には、処理は端子Aを介して
図18のステップS125に移行する。一方、ステップS99の条件を満たさない場合は、端子Bを介して
図17のステップS107に移行する。
【0102】
一方、前回加速度及び現在加速度が条件1を満たしていない場合には、判別部3500は、前回加速度及び現在加速度が、条件2を満たしたか否かを判断する(ステップS101)。条件2は、前回加速度≦閾値TH22、且つ、現在加速度>閾値TH22である。すなわち、
図16における矢印dで模式的に示すように、閾値TH22を下から交差した、という条件を示している。前回加速度及び現在加速度が条件2を満たしている場合には、判別部3500は、現在加速度が閾値TH21以上であるか否かを判断する(ステップS103)。これは、
図16における矢印eで模式的に示すように、1制御周期で閾値TH21とも交差する、という状態であるか否かを判断するものである。ステップS103の条件を満たす場合には、処理は端子Cを介して
図17のステップS111に移行する。一方、ステップS103の条件を満たさない場合は、端子Dを介して
図18のステップS121に移行する。
【0103】
一方、前回加速度及び現在加速度が条件2も満たしていない場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS105)。そして処理は端子Eを介して
図19の処理に移行する。
【0104】
図17の処理(端子B以降の処理)の説明に移行して、判別部3500は、カウンタ値が所定時間T4以下であり、且つ、初回検出フラグがオンとなっているか否かを判断する(ステップS107)。カウンタ値が所定時間T4を超えている場合、又は初回検出フラグがオフになっている場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS113)。そして処理は、ステップS115に移行する。
【0105】
一方、ステップS107の条件を満たしている場合には、判別部3500は、前回検出した閾値超過の種別である前回検出が「負の閾値超過」であるか否かを判断する(ステップS109)。前回検出が「正の閾値超過」であれば、正の閾値超過が繰り返されたことになるので、本変形例5では凹凸を検出したとは言えない。よって、処理はステップS113に移行する。
【0106】
一方、前回検出が「負の閾値超過」である場合には、
図15に矢印cで模式的に示すように、所定時間T4以内に閾値TH22を下回るような加速度変化が検出されたことになるので、負の閾値以下となる変化と正の閾値以上となる変化とが所定時間T4以内に発生したことを検出したことになる。よって、判別部3500は、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS111)。そして処理は、ステップS115に移行する。
【0107】
そうすると、判別部3500は、今回検出されたのは「正の閾値超過」であるから、これを保存するために「正の閾値超過」を前回検出として保存する(ステップS115)。また、判別部3500は、初回検出フラグをオンにセットする(ステップS117)。さらに、判別部3500は、所定時間T4を測定するためのカウンタをリセットする(ステップS119)。そして処理は、端子Eを回して介して
図19の処理に移行する。
【0108】
図18の処理(端子D以降の処理)の説明に移行して、判別部3500は、カウンタ値が所定時間T4以下であり、且つ、初回検出フラグがオンとなっているか否かを判断する(ステップS121)。カウンタ値が所定時間T4を超えている場合、又は初回検出フラグがオフになっている場合には、判別部3500は、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS127)。そして処理は、ステップS129に移行する。
【0109】
一方、ステップS121の条件を満たしている場合には、判別部3500は、前回検出した閾値超過の種別である前回検出が「正の閾値超過」であるか否かを判断する(ステップS123)。前回検出が「負の閾値超過」であれば、負の閾値超過が繰り返されたことになるので、本変形例5では凹凸を検出したとは言えない。よって、処理はステップS127に移行する。
【0110】
一方、前回検出が「正の閾値超過」である場合には、
図16に矢印fで模式的に示すように、所定時間T4以内に閾値TH21を上回るような加速度変化が検出されたことになるので、正の閾値以上となる変化と負の閾値以下となる変化とが所定時間T4以内に発生したことを検出したことになる。よって、判別部3500は、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS125)。そして処理は、ステップS129に移行する。
【0111】
そうすると、判別部3500は、今回検出されたのは「負の閾値超過」であるから、これを保存するために「負の閾値超過」を前回検出として保存する(ステップS129)。そして処理は端子Gを介して
図17のステップS117に移行する。
【0112】
図19の処理(端子E以降の処理)の説明に移行して、判別部3500は、カウンタを1制御周期分増分させる(ステップS131)。また、判別部3500は、次の制御周期の処理のために、現在加速度を、前回加速度として保存する(ステップS133)。
【0113】
また、制御部3000bは、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS135)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理は端子Fを介してステップS95に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0114】
このような処理を行うことで、
図9のような正及び負の閾値を所定時間T4以内で超過するような鋭い加速度変化を検出した場合に、凹凸検出と判断できるようになる。
【0115】
図20を用いて、本変形例5の適用例を説明する。
図20(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化を表しており、
図20(b)は、カウンタ値の時間変化を表し、
図20(c)は、初回検出フラグの時間変化を表しており、
図20(d)は、前回検出(正の閾値超過又は負の閾値超過)の時間変化を表しており、
図20(e)は、凹凸検出の状況を表している。
【0116】
図15及び
図16で示したように、検出のトリガとなるのは、正の閾値TH21を上から交差する加速度変化と、負の閾値TH22を下から交差する加速度変化である。
図20(a)の例では、時刻t11で、
図15の矢印aの加速度変化を検出して、
図20(c)に示すような初回検知フラグがオンになり、
図20(d)に示すように前回検出が「正の閾値超過」が設定されることになる。また、
図20(b)に示すように、カウンタがカウントを開始する。
【0117】
その後、
図20(a)の例では、時刻t12で、
図16の矢印dの加速度変化を検出しているが、
図20(b)に示すように、カウンタ値がT4を大きく超えているので、時刻t12においては凹凸検出とはならない。なお、この時刻t12で、
図20(d)に示すように、前回検出が「負の閾値超過」ということになる。しかし、その後、
図20(a)に示すように時刻t13で、
図15の矢印aの加速度変化を検出することになり、
図20(b)で示すようにカウンタ値がT4に達していないので、所定時間T4以内で正負の閾値超過が検出されたことになるので、
図20(e)に示したように、時刻t13において、凹凸検出となる。なお、
図20(d)に示すように、前回検出は「正の閾値超過」に反転する。
【0118】
その後、
図20(a)に示すように、時刻t14で、
図16の矢印dの加速度変化を検出しているが、
図20(b)に示すように、カウンタ値は既にT4を超えているので、凹凸検出とはならない。但し、
図20(d)に示すように、前回検出が「負の閾値超過」に反転することになる。
【0119】
その後、
図20(a)に示すように、時刻t15で、
図15の矢印aの加速度変化を検出しているが、
図20(b)に示すように、カウンタ値は既にT4を大きく超えているので、凹凸検出とはならない。但し、
図20(d)に示すように、前回検出が「正の閾値超過」に反転することになる。
【0120】
その後、
図20(a)に示すように、時刻t16で、
図15の矢印aの加速度変化を検出しているが、
図20(b)に示すように、カウンタ値は既にT4を超えているので、凹凸検出とはならない。また、
図15の矢印aの加速度変化であったので、
図20(d)に示すように、前回検出は「正の閾値超過」が維持される。同様に、
図20(a)に示すように、時刻t17で、
図15の矢印aの加速変化を検出しており、
図20(b)に示すように、カウンタ値はT4に達していないが、前回検出が「正の閾値超過」のままであるから、時刻t17でも凹凸検出とはならない。
【0121】
その後、
図20(a)に示すように、時刻t18で、
図15の矢印aの加速度変化を検出しているが、
図20(b)に示すように、カウンタ値は既にT4を超えているので、凹凸検出とはならない。前回検出も「正の閾値超過」が維持される。一方、
図20(a)に示すように、時刻t19で、
図16の矢印dの加速度変化が検出され、
図20(b)に示すように、カウンタ値もT4に達しておらず、所定時間T4以内で正負の閾値超過が検出されたことになるので、
図20(e)に示したように、時刻t19において、凹凸検出となる。なお、
図20(d)に示すように、前回検出は「負の閾値超過」に反転する。
【0122】
さらに、
図20(a)に示すように、時刻t20で、
図15の矢印aの加速度変化を検出しており、
図20(b)に示すように、カウンタ値もT4に達しておらず、所定時間T4以内で負正の閾値超過が検出されたことになるので、
図20(e)に示したように、時刻t20において、凹凸検出となる。なお、
図20(d)に示すように、前回検出は「正の閾値超過」に反転することになる。
【0123】
その後、
図20(a)に示すように、時刻t21でも、
図16の矢印dの加速度変化を検出しており、
図20(b)に示すように、カウンタ値もT4に達しておらず、所定時間T4以内に正負の閾値超過が検出されたことになるので、
図20(e)に示すように、時刻t21においても、凹凸検出となる。なお、
図20(d)に示すように、前回検出は「負の閾値超過」に反転することになる。その後は、凹凸検出はない。
【0124】
このように適切に凹凸を検出することができるようになる。
【0125】
なお、以上の処理フローでは、初回検出フラグは、電源オンとなった後所定時間T4以内に加速度が一度のみ閾値を超えた場合に、凹凸検出とならないように導入したものであるが、同様の作用をもたらす他の仕組みを採用するようにしても良い。
【0126】
また、所定時間T4>制御周期でないと適切に凹凸を検出できないので、所定時間を適切に設定するものとする。
【0127】
さらに、「前回検出」により「正の閾値超過」から「負の閾値超過」に切り替わる場合、又は「負の閾値超過」から「正の閾値超過」に切り替わる場合に、凹凸検出としたが、場合によっては所定時間T4以内に連続して閾値超過が検出できれば良い場合もある。
【0128】
さらに、閾値TH21よりも絶対値が小さい正の閾値TH23と、閾値TH22よりも絶対値が小さい負の閾値TH24とを導入して、加速度が閾値TH21以上となった前後の所定時間T4内で、閾値TH24以下となる場合、加速度が閾値TH22以下となった前後の所定時間T4内で、閾値TH23以上となる場合に、凹凸検出としても良い。これは、凹凸を走行した場合に加速度が正負に振れる幅が同等ではない場合もあるので、このような場合でも凹凸と検出するためである。閾値TH23及びTH24を単純に採用するよりも、このような閾値TH21及びTH22に閾値TH23及びTH24を導入する方が、適切に凹凸を検出できる可能性が高まる。
【0129】
[実施の形態2の変形例6]
上では算出部3100bを用いる例を示したが、場合によっては第1の実施の形態における算出部3100を用いるようにしても良い。
【0130】
[実施の形態3]
第2の実施の形態では、加速度と閾値との比較によって路面状況を判定していたが、モータの稼働状態や乗員による操作状態によっては、凹凸検出に工夫を加えることが好ましい場合もある。
【0131】
本実施の形態では、凹凸誤検出が発生する可能性が高くなるイベントを検出して、影響を受ける閾値を無効化する閾値決定部を導入することで、凹凸誤検出を抑制する手法を採用する。
【0132】
本実施の形態に係る制御部3000cの機能構成例を
図21に示す。制御部3000cは、算出部3100bと、判別部3500bと、後処理部3600と、閾値決定部3700と、モータ制御部3800とを含む。
【0133】
算出部3100bは、第2の実施の形態における算出部3100bと同じであるが、場合によっては第1の実施の形態における算出部3100であっても良い。判別部3500bは、閾値決定部3700の指示に応じた閾値に基づき、算出部3100bからの出力である加速度と閾値との比較を行って、凹凸の有無を判別する。後処理部3600は、第2の実施の形態における後処理部3600と同様である。モータ制御部3800は、クランク回転、モータ回転、クランク回転に基づく入力トルク及びブレーキ入力等に基づき、力行駆動及び回生制動などのモータ105に対する制御を行う。なお、具体的な制御の方式については、本実施の形態の主要部では無く、また従来と同じなので説明は省略する。閾値決定部3700は、ブレーキ入力、入力トルク、及びモータ制御部3800からの出力に基づき、判別部3500bで用いるべき閾値を決定して、判別部3500bに出力する。
【0134】
次に、
図22乃至
図24を用いて、本実施の形態に係る処理内容について説明する。
【0135】
算出部3100bは、第1の実施の形態で述べたような処理を行うことで、加速度(=車体加速度)を判別部3500bに出力する。判別部3500bは、算出部3100bから加速度を現在加速度として取得する(ステップS141)。なお、モータ制御部3800も、クランク回転、モータ回転、クランク回転に基づく入力トルク及びブレーキ入力等を取得し、それらに基づき、モータ105の出力トルクを決定する。また、モータ制御部3800は、閾値決定部3700にも出力トルクの値を出力する。なお、正の出力トルクをモータ105に指示する場合は力行駆動、負の出力トルクをモータ105に指示する場合には回生制動となる。
【0136】
そうすると、閾値決定部3700は、電動アシスト自転車1が制動状態であるか否かを判断する(ステップS143)。より具体的には、出力トルク<0、又はブレーキ入力からブレーキ操作ありを検出したかを判断する。制動状態でなければ、処理は端子Hを介して
図23の処理に移行する。
【0137】
一方、制動状態であれば、閾値決定部3700は、負の閾値TH32を無効化して正の閾値TH31を有効化して、判別部3500bに通知する。そうすると、判別部3500bは、取得した加速度が正の閾値TH31以上であるか否かを判断する(ステップS145)。無効化された負の閾値TH32以下であるかは判断しないようになる。
【0138】
加速度が閾値TH31以上であれば、判別部3500bは、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS147)。そして処理は、ステップS151に移行する。
【0139】
一方、加速度が閾値TH31未満であれば、判別部3500bは、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS149)。そして処理は、ステップS151に移行する。
【0140】
また、制御部3000cは、電源オフのような処理終了条件を満たしたか否かを判断し(ステップS151)、処理終了条件を満たしていない場合には、処理はステップS141に戻り、処理終了条件を満たした場合には、処理を終了させる。
【0141】
図23の処理(端子H以降の処理)の説明に移行して、閾値決定部3700は、電動アシスト自転車1が力行状態であるか否かを判断する(ステップS153)。具体的には、出力トルク>0、又はクランク回転による入力トルク>0であるかを判断する。力行状態でなければ、処理はステップS159に移行する。
【0142】
一方、力行状態であれば、閾値決定部3700は、正の閾値TH31を無効化して負の閾値TH32を有効化して、判別部3500bに通知する。そうすると、判別部3500bは、取得した加速度が負の閾値TH32以下であるか否かを判断する(ステップS155)。無効化された正の閾値TH31以上であるかは判断しないようになる。
【0143】
加速度が閾値TH32以下であれば、判別部3500bは、凹凸ありを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS157)。そして処理は、端子Jを介してステップS151に移行する。
【0144】
一方、加速度が閾値TH32を超えていれば、判別部3500bは、凹凸なしを、例えばメモリ10211に記録したり、後処理部3600に出力する(ステップS161)。そして処理は、端子Jを介してステップS151に移行する。
【0145】
一方、力行状態でも制動状態でもなければ、閾値決定部3700は、正の閾値TH31及び負の閾値TH32のいずれも有効化して、判別部3500bに通知する。そうすると、判別部3500bは、加速度が閾値TH31以上であるか、又は、加速度が閾値TH32以下であるか否かを判断する(ステップS159)。ステップS159の条件を満たす場合には、処理はステップS157に移行し、ステップS159の条件を満たさない場合には、処理はステップS161に移行する。
【0146】
このような処理を行うことで、制動状態中や力行状態中における凹凸誤検出の発生確率を下げ、適切な凹凸検出が可能となる。
【0147】
本実施の形態に係る処理の適用例を、
図24に示す。
図24(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化、及び閾値TH31及びTH32の有効無効の時間変化を表しており、
図24(b)は、力行状態の有無の時間変化を表し、
図24(c)は、制動状態の有無の時間変化を表し、
図24(d)は、凹凸検出の状況を表している。
【0148】
図24(b)に示すように、時刻t21から時刻t22までは、力行状態にあるので、
図24(a)で点線で示すように正の閾値TH31は無効化されてしまう。従って、
図24(a)に示すように、加速度が閾値TH31以上となっていても、凹凸検出とはならない。一方、時刻t25から時刻t26までは、制動状態にあるので、
図24(a)で点線で示すように負の閾値TH32は無効化されてしまう。従って、
図24(a)に示すように、加速度が閾値TH32以下となっていても、凹凸検出とはならない。一方、制動状態でも力行状態でもなく、惰行している時刻t23及びt24では、正の閾値TH31及び負の閾値TH32の両方が有効化されているので、正の閾値TH31以上となった時刻t23と、負の閾値TH32以下となった時刻t24とで、凹凸が検出されることになる。
【0149】
上では、閾値を無効化することで凹凸の誤検出を抑制していたが、閾値決定部3700が、閾値の絶対値を大きくして凹凸検出の感度を下げることで、同様の効果を得ることも可能である。
【0150】
[実施の形態3の変形例1]
閾値を調整する手法として、出力トルク、クランク回転による入力トルク、ブレーキ操作に基づく閾値の調整だけではなく、車速を用いるようにしても良い。
【0151】
同じ凹凸を走行する場合でも、車速が速いほど衝撃は大きくなる。それに従い、凹凸を走行することによる加速度の変化幅は、車速が速いほど大きくなる傾向にある。すなわち、一定の閾値を用いると、車速が速くなるに従い凹凸検出の感度が上がってしまうことになる。このため、少なくとも所定の高速域に車速が入った場合には、正の閾値は車速と正の相関を持つように変化させることが望ましい。同様に、負の閾値の絶対値が車速と正の相関を持つように変化させることが望ましい。なお、低速域で閾値が小さくなりすぎないように、閾値を変更すべき車速の範囲については、適切に設定すべきである。
【0152】
[実施の形態4]
上で述べた実施の形態では単に路面状況として凹凸を検出しただけであったが、本実施の形態では、凹凸の検出結果を、道路の補修に活用する例を説明する。
【0153】
例えば、複数の電動アシスト自転車1から、凹凸の検出位置のデータを収集することで、道路を補修すべき箇所を特定する。
【0154】
このために、例えば
図25に示すようなシステムを導入する。本実施の形態に係る電動アシスト自転車1bは、制御部3000dと、GPSなどにより電動アシスト自転車1の位置を測定する測位部4000と、凹凸の検出位置のデータを送信する通信部5000とを有する。
【0155】
本実施の形態に係る制御部3000dは、後処理部3600として、判別部3500又は3500bが凹凸を検出したタイミングにて測位部4000が測定した位置データ(すなわち緯度経度等)を、メモリ10211等の記憶装置に記録する。通信部5000は、例えば無線通信装置であって、適切なタイミングにて、例えばインターネット10000等のネットワークを介して、凹凸の検出位置のデータを収集する情報処理装置9000へ送信する。
【0156】
なお、電動アシスト自転車1のモータ制御装置102に通信部5000が含まれずに、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの外付けの記憶装置を接続し、当該記憶装置に凹凸の検出位置のデータを書き出すようにしても良い。同様に、電動アシスト自転車1のモータ制御装置102に通信部5000及び測位部4000が含まれずに、電動アシスト自転車1のモータ制御装置にスマートフォンなどの携帯端末を接続して走行し、モータ制御装置102から出力される凹凸検出イベントに応じて、携帯端末における測位部が位置を検出して、当該位置のデータを、携帯端末から情報処理装置9000に送信するようにしても良い。
【0157】
情報処理装置9000は、複数の電動アシスト自転車1から凹凸の検出位置のデータを受信する受信部9100と、当該受信部9100が受信した位置のデータを蓄積するデータ格納部9200と、データ格納部9200に蓄積されたデータに対して所定の処理を行って例えば補修すべき箇所のデータを例えば道路管理者に出力する出力処理部9300とを有する。例えば、地図上に、凹凸の検出位置をマッピングするような処理を行うようにしても良い。
【0158】
また、凹凸の検出位置のデータを情報処理装置9000に送信するタイミングは任意であり、定期的でもリアルタイムでも、情報処理装置9000からの要求に応じて、又は他の任意のタイミングであっても良い。
【0159】
このようにすれば、補修すべき箇所の特定が容易になる。すなわち、同様の情報は、従来であれば道路管理者による直接の確認又は道路使用者等からの通報でしか把握できなかったが、このようなシステムを採用することで情報の収集が容易になる。例えばレンタサイクルやシェアサイクル等に本システムを導入すれば、より効果的である。また、電動アシスト車を用いることで、自動車が走行しない道又はあまり走行しないような道路又は道路の部分(路肩など)の路面状況を把握することが期待される。
【0160】
出力処理部9300は、単に凹凸の検出位置を地図上に出力するといった処理では無く、予め定められた単位領域毎の検出頻度を算出して、高頻度に検出される単位領域を抽出するような処理を行っても良い。例えば所定回数以上凹凸が検出された箇所を抽出するようにすれば、走行頻度が高い箇所であることも確認でき、凹凸の誤検出も除去することができ、より補修を優先すべき箇所を特定しやすくなる。なお、単なる検出頻度ではなく、他の統計的な指標値を定義しておき、当該指標値に基づき、補修すべき箇所を抽出するようにしても良い。
【0161】
さらに、電動アシスト自転車1から収集するデータは、位置データに限定されない。記録部3900に、凹凸検出時以外でも位置データを走行経路データとして記録させ、凹凸検出時の位置については凹凸検出を表すデータを紐付けて記録させるようにしても良い。さらに、時刻データを付加するようにしても良い。さらに、凹凸検出時のピーク加速度(正の閾値以上となった場合には最大値。負の閾値以下となった場合には最小値)を記録していても良い。このように記録したデータを、情報処理装置9000に蓄積するようにしても良い。
【0162】
走行経路データが収集されれば、出力処理部9300は、同様な走行経路を表す走行経路データを抽出して、同様な走行経路において高確率で凹凸が検出される箇所を抽出するようにしても良い。この際には、同様な走行経路の記録件数で、足切りするようにしても良い。
【0163】
さらに、凹凸検出時のピーク加速度も収集できる場合には、出力処理部9300は、当該ピーク加速度によって凹凸の程度を判定するようにしても良い。段差の落差が大きいほどピーク加速度も大きくなるため、ピーク加速度から凹凸の大きさを推測でき、補修優先順位の決定等に用いることができる。なお、記録部3900がピーク加速度と閾値の比を記録しておき、情報処理装置9000に蓄積するようにしても良い。車速と閾値が連動する場合、段差の程度が車速により補正されるため、このようなデータが得られればより適正に凹凸の大きさを推測できる。凹凸検出位置の車速も記録して情報処理装置9000に蓄積しておき、出力処理部9300で、段差の程度を判別する処理を行うようにしても良い。なお、情報処理装置9000は、一台の情報処理装置ではなく、複数台の情報処理装置にて上記の機能を実現する場合もある。
【0164】
[実施の形態5]
本実施の形態では、例えばモータ制御部3800による力行駆動の制御に、凹凸の検出結果を反映させても良い。
【0165】
例えば、スリップしやすい未舗装の道(例えば砂利道などの粗い路面)や凹凸が多い路面を走行する間、加速度は頻繁に上下に振れるように変化する。従って、その間高頻度で凹凸を検出することになる。このように、凹凸検出をスリップしやすい路面の走行中であるか否かの判断に用いることができる。スリップしやすい路面において、大きな出力トルクをモータ105に出力させることは好ましくないので、モータ105の出力トルクを抑制するようにする。例えばクランク回転による入力トルクに対するモータ105による出力トルクの比率であるアシスト比を下げるようにする。
【0166】
図26に、本実施の形態に係る動作例を示す。
図26(a)は、加速度(=車体加速度)の時間変化を表し、
図26(b)は、凹凸検出の状況を表し、
図26(c)は、所定時間(例えば1秒)内における凹凸検出回数の時間変化を表し、
図26(d)は、スリップしやすい路面の検出状況を表し、
図26(e)は、アシスト比の最大値の時間変化を表す。なお、ここでは加速度が正の閾値以上又は負の閾値以下となった場合に凹凸を検出するものとしている。また、凹凸検出回数の閾値(所定回数)は、例えば3である。
【0167】
この例では、時刻t31及びt32では、それぞれ凹凸検出がなされており、凹凸検出回数が2まで上昇するが、それ以上は凹凸検出が続かず、時刻t33の直前で、所定時間(例えば1秒以内)の凹凸検出回数が0になってしまっている。その後、時刻t33、時刻t34及び時刻t35において凹凸検出がなされて、凹凸検出回数が3に達するので、時刻t35で、
図26(d)に示すように、スリップしやすい路面を走行中であると判定される。そうすると、
図26(e)に示すように、時刻t35で、アシスト比の最大値を、下げるようにモータ制御部3800に指示がなされるようになる。例えば、元々のアシスト比の最大値から、所定値(例えば0.5)を差し引いたり、元々のアシスト比の最大値に対して所定値(例えば0.8)を乗ずるなどして、アシスト比の最大値を下げることで、適用されるアシスト比を下げるようにする。これによって安全性が高まることになる。元々のアシスト比の最大値は、ユーザの指示やシステムの設定などによって定まるものである。
【0168】
なお、
図26の例では、この後次々と凹凸が検出されて、所定時間内の凹凸検出回数が所定回数を超えている状態が継続されるが、凹凸検出回数が所定回数を下回るようになった場合には、その際に、アシスト比の最大値を元の値に戻すようにする。
【0169】
なお、アシスト比の最大値を下げることでアシスト比を下げるようにするのでは無く、モータ105による出力トルクの時間変化率最大値を所定の値(例えば10Nm/s)に抑制するようにしても良い。急加速が生じてスリップするリスクを低減できるようになる。
【0170】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、目的に応じて、上で述べた各実施の形態における任意の技術的特徴を削除するようにしても良いし、他の実施の形態で述べた任意の技術的特徴を追加するようにしても良い。さらに、いずれかの実施の形態における任意の技術的特徴を組み合わせるようにしても良い。
【0171】
さらに、上で述べた機能ブロック図は一例であって、1の機能ブロックを複数の機能ブロックに分けても良いし、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックに統合しても良い。処理フローについても、処理内容が変わらない限り、ステップの順番を入れ替えたり、複数のステップを並列に実行するようにしても良い。
【0172】
さらに、第1の実施の形態において、駆動状態と非駆動状態との切り替えから所定時間において、算出部3100により算出された加速度をそのまま採用せず、予め定められたルールに従って決定される加速度を選択するという例を示したが、判別部3500などにより路面状況の判別を行う場合には、所定期間において、路面状況の判別を停止させるようにしても良い。なお、駆動状態と非駆動状態との切り替えで無く、算出部3100により算出された加速度をそのまま採用しないイベントを検出すると、同様に判別を停止させても良い。さらに、路面状況は、単なる凹凸の有無だけではなく、凹凸が頻出するような滑りやすい路面というものも含まれる。
【0173】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0174】
本実施の形態に係る制御装置は、(A)車両に備えられた車輪の回転と同期して回転するモータの回転情報に基づき、車両の加速度を算出する算出部と、(B)モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態との少なくともいずれかに関する情報に基づき、算出部により特定の時点(例えば処理時点又は処理時点から一定時間前の時点)について算出された第1の加速度と、当該第1の加速度とは異なり且つ予め定められた規則によって決定される第2の加速度とのいずれかを、採用すべき加速度として選択する選択部とを有する。
【0175】
電動アシスト車の場合、モータの稼働状態や車両の乗員による操作状態によっては、モータの回転に影響が及び、そのために当該モータの回転情報から算出される車両の加速度にも影響が及ぶ場合がある。これに対処するため、上で述べたような選択部を導入することで、適切な加速度を得られるようにするものである。
【0176】
なお、上で述べた選択部は、モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに関する情報から所定のイベントを検出した場合、当該イベントの検出から所定時間内において、第2の加速度を選択するようにしても良い。上で述べたような影響を適切に抑制するためである。
【0177】
また、上で述べた第2の加速度は、所定のイベントの検出直前における躍度に基づき補正された加速度である場合もある。加速度の直前の変化度合いが継続するものと仮定して加速度を推定するものである。
【0178】
また、上で述べた第2の加速度は、所定のイベントの検出時より前に上記算出部により算出された加速度である場合もある。ノイズが載ってしまうので、そのノイズを除去するためである。
【0179】
なお、上で述べた特定の時点が、現在から一定時間前の時点であり、上で述べた第2の加速度が、直前に採用された加速度である場合もある。このようにすることで、所定のイベントの検出が遅れても、当該所定のイベントの影響を抑制することができるようになる。なお、所定時間>一定時間が好ましい。
【0180】
さらに、上で述べた制御装置が、選択された加速度に対して予め定められた処理を行うことで得られた値に基づき、車両が走行している路面の状況を判別する判別部をさらに有するようにしても良い。このように加速度を路面の状況を判別するのに用いるようにしても良い。なお、路面の状況を判別するのに用いる加速度は、場合によっては上記算出部により算出された加速度の場合もある。
【0181】
なお、上で述べた処理が、フィルタ処理又は微分処理である場合もある。フィルタ処理は、例えばHPF、又はHPFとLPFの組み合わせ、場合によってはBPF(Band Pass Filter)である場合もある。
【0182】
また、上で述べた処理は、選択された加速度を平滑化した第2の値を基準に閾値を生成する処理である場合もあり、その場合、上で述べた判別部は、選択された加速度と閾値とを比較することで、路面の状況を判別するものである場合もある。単純な加速度の増加又は減少により、固定の閾値では路面状況の誤検出が発生する可能性があるので、それに対処するためである。
【0183】
また、上で述べた処理は、第2の値に対して所定値を加算することで閾値を生成する処理である場合もある。所定値は、正の値、負の値、若しくはそれら両方である場合もある。さらに、正の値と負の値の絶対値は、一致しない場合もある。
【0184】
また、所定値が、モータの出力トルク又は車両の速度に応じて変化する場合もある。例えば、モータの駆動による加速度が単調増加する場合や、車両の速度によって凹凸で生ずる加速度が大きくなる場合もあるので、所定値を調整することで、適切に凹凸を検出できるように閾値を設定するものである。
【0185】
さらに、上で述べた処理は、第2の値に対して第1の所定値を加算して第1の閾値を生成し、第2の値に対して第2の所定値を減算して第2の閾値を生成する処理である場合もある。このようにすれば、第2の値に沿って変化する第1の閾値及び第2の閾値を生成でき、単純な加速度の増加又は減少により生ずる、路面の状況の誤検出を抑制できるようになる。
【0186】
さらに、上で述べた判別部は、モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態との少なくともいずれかが条件を満たす場合に、上記閾値を無効化するようにしても良い。誤検出が発生する可能性が高い場合には、閾値と加速度との比較を行わないようにすることで、誤検出を抑制する。
【0187】
また、上で述べた制御装置は、選択された加速度が、所定時間内に、正の第1の閾値を超えること及び負の第2の閾値を下回ることの両方が発生したか否かを判断することで、車両が走行している路面の状況を判別する判別部をさらに有するようにしても良い。電動アシスト車での走行では、凹凸があると加速度に正のピークと負のピークとがセットで発生する場合が多い。これを適切に検出するためである。なお、路面の状況を判別するのに用いる加速度は、場合によっては上記算出部により算出された加速度の場合もある。
【0188】
また、上で述べた制御装置は、選択された加速度が、所定時間内に、正の第1の閾値(例えばTH21)を超え且つ負の第2の閾値(例えば閾値TH24)を下回ること、第2の閾値より小さい負の第3の閾値(例えばTH22)を下回り且つ第1の閾値より小さい正の第4の閾値(例えば閾値TH23)を超えることのいずれかが発生したか否かを判断することで、車両が走行している路面の状況を判別する判別部をさらに有するようにしても良い。第1の閾値>第4の閾値>第3の閾値>第2の閾値という関係である。加速度の正のピークと負のピークの現れ方が非対称である場合もあるので、このような閾値設定であれば、適切に凹凸を検出できるようになる。なお、路面の状況を判別するのに用いる加速度は、場合によっては上記算出部により算出された加速度の場合もある。
【0189】
さらに、上で述べた制御装置は、選択された加速度と閾値とを比較することで、車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに応じて、閾値を決定するか、又は、閾値を無効化する閾値決定部とをさらに有するようにしても良い。誤検出の発生が想定される場合には、それに備えるためである。
【0190】
より具体的には、上で述べた閾値決定部は、モータによる力行駆動、モータによる回生制動、車両の乗員による入力トルク、又は車両の乗員によるブレーキ操作が検出された場合には、閾値を無効化するか、又は閾値の絶対値を増加させるようにしても良い。
【0191】
さらに、上で述べた閾値決定部は、モータによる力行駆動又は車両の乗員による入力トルクが検出された場合には、正の閾値を無効化するか、又は、正の閾値の絶対値を増加させ、モータによる回生制動又は車両の乗員によるブレーキ操作が検出された場合には、負の閾値を無効化するか、又は、負の閾値の絶対値を増加させるようにしても良い。
【0192】
また、上で述べた閾値決定部は、車両の速度、モータの出力トルク、車両の乗員による入力トルク、又は車両の乗員によるブレーキ操作の有無に応じて、閾値を調整するようにしても良い。例えば、感度が下がるような値に閾値を設定するようにしても良い。
【0193】
さらに、モータの稼働状態と車両の乗員による操作状態とのうち少なくともいずれかに関する情報から所定のイベントを検出した場合、所定期間、判別部が判別を停止するようにしても良い。誤検出の抑制が図られるためである。
【0194】
さらに、上で述べた制御装置は、選択された加速度と閾値とを比較することで、車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、路面の状況のうち路面の凹凸を検出した位置を記録する記録部とをさらに有するようにしても良い。このように凹凸を検出した位置のデータを、通信等にて取り出して、情報処理装置等に蓄積すれば、路面状況を統計的な観点で把握できるようになる。なお、路面の状況を判別するのに用いる加速度は、場合によっては上記算出部により算出された加速度の場合もある。
【0195】
さらに、上で述べた制御装置において路面の状況のうち路面の凹凸を検出した位置のデータを取得し、記憶装置に格納する取得部と、記憶装置に格納された位置のデータに基づき、異常箇所(例えば補修すべき箇所)を抽出する抽出部とを有する情報処理装置を用いるようにしても良い。
【0196】
また、上で述べた抽出部は、記憶装置に格納された位置の検出回数に基づき、異常箇所を抽出するようにしても良い。1回のみの検出では誤検出の場合もあるが、多数回検出された箇所であれば、凹凸存在の可能性が高くなるためである。なお、検出回数を加工した指標値にて異常箇所か否かを判断しても良い。
【0197】
さらに、上で述べた取得部は、路面の凹凸を検出した位置又は当該位置の近隣における加速度(例えば極大又は極小(すなわちピーク)の加速度)をさらに取得して、記憶装置に格納しても良い。そして、上で述べた抽出部は、記憶装置に格納された加速度に基づき、異常箇所を順序づけるようにしても良い。大きな加速度が検出された箇所であれば、凹凸の程度が大きいことが予測されるので、大きな加速度又は当該加速度から得られる指標値が大きな値を示す箇所の補修を優先させるなどの処置が執りやすくなる。
【0198】
また、上で述べた制御装置は、選択された加速度と閾値とを比較することで、車両が走行している路面の状況を判別する判別部と、路面の状況のうち路面の凹凸を検出した回数に基づき、モータによる人力の補助度合いを抑制するか又はモータによる人力の補助度合いの時間変化率を規制する制御部とをさらに有するようにしても良い。凹凸が頻出するような路面では電動アシスト車がスリップしやすい路面であるから、モータによる補助度合いを下げたり、急加速しないように補助度合いの時間変化率をより抑制したりすることで、安全性を高めるものである。なお、路面の状況を判別するのに用いる加速度は、場合によっては上記算出部により算出された加速度の場合もある。
【0199】
このような構成は、実施の形態に述べられた事項に限定されるものではなく、実質的に同一の効果を奏する他の構成にて実施される場合もある。
【符号の説明】
【0200】
3000,3000b,3000c 制御部
3100,3100b 算出部
3200 選択部
3300,3600 後処理部
3400,駆動処理部
3500,3500b 判別部
3700 閾値決定部
3800 モータ制御部