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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158703
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20241031BHJP
   F24F 11/38 20180101ALI20241031BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F25B49/02 520E
F24F11/38
F25B13/00 J
F25B13/00 104
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074113
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】日和 航大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 薫
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092AA11
3L092EA06
3L092GA05
3L092HA01
3L092KA06
3L260AB03
3L260BA52
3L260CB15
3L260CB62
3L260EA07
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】本開示は、一方の室内機が冷房運転を行い、異なる室内機が暖房運転を行う時間帯が存在する場合に、冷媒量不足の有無を適正に推定する空気調和システムを提供する。
【解決手段】管理装置は、第1期間において、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、第1期間の運転デ-タに基づき、冷媒量に関する情報の推定を行わない推定有無判定部をさらに備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室内機と室外機を有する空気調和装置と、前記空気調和装置と通信可能な管理装置と、を備える空気調和システムであって、
前記管理装置は、
前記空気調和装置から、第1期間における運転デ-タを取得する取得部と、
前記取得した運転デ-タに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部と、を備え、
前記管理装置は、前記第1期間において、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、当該第1期間の運転デ-タに基づき、前記冷媒量に関する情報の推定を行わない推定有無判定部をさらに備える、空気調和システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記第1期間において、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、前記空気調和装置に強制運転モ-ドを実行させ、前記強制運転モ-ドの運転により得られた運転デ-タに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記取得部により取得した運転デ-タの内、冷房運転または暖房運転の連続運転時間が第2期間よりも短い運転デ-タがある場合、当該運転デ-タを除外して、前記推定有無判定部および前記推定部を実行する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記取得部により取得した運転デ-タの内、除霜運転の運転デ-タがある場合、当該運転デ-タを除外して、前記推定有無判定部および前記推定部を実行する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記管理装置は、
前記取得部により前記複数の室内機の各々の運転デ-タを取得し、
前記の各々の運転デ-タを統合して、仮想的な1台の室内機の運転デ-タである統合室内機デ-タを生成し、
前記統合室内機デ-タを用いて、冷媒量に関する情報を推定する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項6】
複数の室内機と室外機を有する空気調和装置と、前記空気調和装置と通信可能な管理装置と、を備える空気調和システムであって、
前記管理装置は、
前記空気調和装置から、第1期間における運転デ-タを取得する取得部と、
前記取得した運転デ-タに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部と、を備え、
前記管理装置は、前記第1期間において、冷房運転を実行する室内機と、暖房運転を実行する室内機が存在する場合、当該第1期間の運転デ-タに基づき、前記冷媒量に関する情報の推定を行わない推定有無判定部をさらに備える、空気調和システム。
【請求項7】
室内機と室外機を有する空気調和装置と、前記空気調和装置と通信可能な管理装置と、を備える空気調和システムであって、
前記管理装置は、
前記空気調和装置から、第1期間における運転デ-タを取得する取得部と、
前記取得した運転デ-タに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部と、を備え、
前記管理装置は、前記第1期間において、冷房運転と暖房運転が実行されている場合、当該第1期間の運転デ-タに基づき、前記冷媒量に関する情報の推定を行わない推定有無判定部をさらに備える、空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空調装置の運転データに基づき、空調装置内の冷媒封入量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-156532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の室内機を有する空気調和システムにおいて、冷媒量の推定期間の内、一方の室内機が冷房運転を行い、異なる室内機が暖房運転を行う時間帯が存在する場合に、冷媒量不足の有無を適正に推定する空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和システムは、空気調和装置から、第1期間における運転データを取得する取得部と、取得した運転データに基づき、空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部を備える。管理装置は、第1期間において、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、当該第1期間の運転データに基づき、冷媒量に関する情報を推定しない判定部をさらに備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における空気調和システムは、第1期間において、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行する冷暖混在運転が実行されている場合でも、適正に冷媒量推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態における空気調和システムの構成を示す図
図2】本実施の形態における冷媒回路図
図3】(a)本実施の形態における空気調和装置から取得する運転データの一例を示す図、(b)本実施の形態における空気調和装置の統合処理の一例を示す図
図4】本実施の形態における、冷媒量推定処理を実行しない運転パターンの一例を示す図
図5】本実施の形態における、冷媒量推定モデルを生成する処理を示すフローチャート
図6】本実施の形態における、冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
特許文献1には、下記の技術が開示されている。すなわち、空気調和機は、圧縮機、室外熱交換器及び膨張弁を有する室外機と、室内熱交換器を有する室内機とを有し、前記室外機と前記室内機とが冷媒配管で接続されて形成される冷媒回路を有し、当該冷媒回路に所定量の冷媒が充填される空気調和機であって、前記空気調和機の現在の運転状態量を用いて、前記冷媒回路に充填される前記冷媒の前記所定量に対する冷媒不足率を推定する推定モデルを有する。
【0009】
一方、複数の室内機を有する空気調和システムにおいて、冷媒を推定するために用いる室内機の運転データは、複数の室内機毎に互いに相違する。そのため、例えば、室内機の各々が異なる運転モードで運転している場合には、特許文献1に記載の技術では冷媒量不足の有無について誤判定する虞がある、という課題を有していた。
【0010】
そこで、発明者らは、複数の室内機のうち、少なくとも1台の室内機が冷房運転を実行し、且つ、少なくとも1台の室内機が暖房運転を実行している場合は、冷房運転の冷媒量推定モデルと暖房運転の冷媒量推定モデルのいずれを適用しても、冷媒量の推定が困難であることを見出した。
【0011】
本開示は、複数の室内機を有する空気調和システムにおいて、冷媒量不足の有無を適正に推定できる空気調和システムを提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
[1―1.構成]
図1は、本実施の形態における、空気調和システムの構成を示す図である。図1に示すように、空気調和システム1は、空気調和装置2と、サーバ装置3と、端末装置4と、を備える。
【0014】
[1―1―1.空気調和装置2の構成]
図2は、本実施の形態における空気調和装置2の冷媒回路構成である。
【0015】
空気調和装置2は、例えば、ビルのオフィスに配置される。空気調和装置2は、冷媒配管220により接続される室外機200、第1室内機210A、第2室内機210B、及び第3室内機210Cを備える。また、空気調和装置2は、空調通信部21と空調制御部22を備える。
【0016】
室外機200は、圧縮機201、四方弁202、室外熱交換器203、および、膨張弁204を備える。圧縮機201は、冷媒を圧縮する装置である。四方弁202は、冷房運転と暖房運転で冷媒の流動経路を変更する装置である。室外熱交換器203は、室外の空気と、冷媒と、の間で熱を交換させる装置である。膨張弁204は、冷媒を減圧させる装置である。
【0017】
また、室外機200は、室外熱交温度センサT1、吸込温度センサT2、及び吐出温度センサT3を備える。室外熱交温度センサT1は、室外熱交換器203に設けられ、室外熱交換器203内の冷媒温度を検出する。吸込温度センサT2は、圧縮機201の上流側に設けられ、圧縮機201の吸込冷媒温度を検出する。吐出温度センサT3は、圧縮機201の下流側に設けられ、圧縮機201の吐出冷媒温度を検出するセンサである。
【0018】
第1室内機210A、第2室内機210B及び第3室内機210Cは、例えば、オフィスの室内の天井に配置される。第1室内機210A、第2室内機210B及び第3室内機210Cは、それぞれ、室内熱交換器211A、室内熱交換器211B及び室内熱交換器211Cを備える。室内熱交換器211A、室内熱交換器211B及び室内熱交換器211Cは、被空調空間内の空気と、冷媒と、の間で熱を交換させる装置である。第1室内機210A、第2室内機210B及び第3室内機210Cは、それぞれ、室内膨張弁212A、室内膨張弁212B、及び室内膨張弁212Cを備える。また、第1室内機210A、第2室内機210B及び第3室内機210Cは、それぞれ、室内熱交温度センサT4A、室内熱交温度センサT4B及び室内熱交温度センサT4Cを備える。室内熱交温度センサT4A、室内熱交温度センサT4B及び室内熱交温度センサT4Cは、それぞれ、室内熱交換器211A、室内熱交換器211B及び室内熱交換器211C内の冷媒温度を検出するセンサである。
【0019】
第1室内機210Aは、室内送風ファン(図示せず)を駆動させることで、室内熱交換器211A内を流れる冷媒と、空気と、の間で熱を交換し、熱交換された空気を吹出口(図示せず)から被空調空間内に吹き出すことで、被空調空間の室温を調整する。第2室内機210Bと第3室内機210Cも同様である。
【0020】
空調通信部21は、ネットワークNWと通信可能に構成される。空気調和装置2は、空調通信部21を介して、サーバ装置3へ運転データを送信する。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)でも良いし、LAN(Local
Area Network)でもよいし、インターネットでもよい。
【0021】
空調制御部22は、室外機200、第1室内機210A、第2室内機210B、第3室内機210C、及び、空調通信部21を制御する装置である。空調制御部22は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等により構成される。
【0022】
尚、本実施の形態では、空気調和装置2は、1台の室外機と3台の室内機が冷媒配管220により接続される構成で説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、室内機は、1台でも良いし、2台でも良いし、4台以上でもよい。また、室外機は複数台で構成されていても良い。
【0023】
[1―1―2.サーバ装置3の構成]
サーバ装置3は、空気調和装置2から運転データを受信し、当該運転データに基づき、空気調和装置2の冷媒量に関する情報を推定する。サーバ装置3は、「管理装置」の一例に対応する。
【0024】
サーバ装置3は、サーバメモリ300とサーバプロセッサ310を有するサーバ制御装置30と、サーバ通信部31と、を備える。サーバ通信部31は、ネットワークNWと通信する機能である。
【0025】
サーバメモリ300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリデバイスである。サーバメモリ300は、制御プログラム301と、データ記憶部302と、モデル記憶部303と、を備える。制御プログラム301は、サーバプロセッサ310により実行されるプログラムである。データ記憶部302は、空気調和装置2の運転データ等が記憶される。モデル記憶部303は、後述する冷媒量推定モデルMを記憶している。
【0026】
サーバプロセッサ310は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等により構成され、制御プログラム301を読みだして、各種制御を実行する装置である。換言すれば、サーバプロセッサ310は、ハードウェア及びソフトウェアの協働により処理を実行する。サーバプロセッサ310は、取得部311、データ処理部312、モデル生成部313、推定部314、および、推定有無判定部315を備える。取得部311は、サーバ通信部31により受信された空気調和装置2の運転データを取得する機能である。データ処理部312は、運転データを各種処理する機能である。モデル生成部313は、冷媒量推定モデルMを生成する機能である。推定部314は、空気調和装置2における冷媒量の不足の有無を推定する機能である。推定有無判定部315は、冷媒量不足の有無を推定するか否かを判定する機能である。
【0027】
[1―1―3.端末装置4の構成]
端末装置4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC、および、デスクトップ型のPCなどである。
【0028】
端末装置4は、端末通信部41、端末操作部42、端末表示部43、および、端末制御部44を備える。端末通信部41は、ネットワークNWと通信し、各種情報を送受信する機能である。端末操作部42は、各種操作をする機能であり、例えば、タッチパネル、キーボード、及びマウス等である。端末表示部43は、各種情報を表示する機能であり、例えば、LED、ディスプレイ等である。端末制御部44は、端末通信部41、端末操作部42、および、端末表示部43を制御する機能である。端末制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等である。
【0029】
[1―2.空気調和システムの動作]
図2を用いて、冷房運転と暖房運転を実行する場合の空気調和装置2の動作を説明する。
【0030】
圧縮機201から流出した高温高圧の冷媒は、四方弁202によって、点線矢印の方向に流れ、室外熱交換器203に供給される。室外熱交換器203は、高温高圧の冷媒の熱を外気へ放出して、冷媒を凝縮させる。すなわち、室外熱交換器203は、凝縮器として機能する。室外熱交換器203で凝縮された冷媒は、膨張弁204に供給される。膨張弁204は、冷媒を減圧する。膨張弁204で減圧された冷媒は、第1室内機210A、第2室内機210B、及び第3室内機210Cへ流入する。第1室内機210Aへ流入された冷媒は、室内膨張弁212Aで減圧された後、室内熱交換器211Aへ供給され、冷媒と室内の空気とを熱交換させ、冷媒を気化させる。すなわち、室内熱交換器211Aは、蒸発器として機能する。そして、気化された冷媒は、四方弁202によって、圧縮機201に供給される。第2室内機210Bと第3室内機210Cの動作も、第1室内機210Aと同様である。
【0031】
次に、空気調和装置2を暖房運転として実行する場合の動作を説明する。
【0032】
圧縮機201から流出した高温高圧の冷媒は、四方弁202によって、実線矢印の方向に流れ、第1室内機210A、第2室内機210B、及び第3室内機210Cへ流入する。第1室内機210Aへ流入された冷媒は、室内熱交換器211Aに供給され、冷媒と室内の空気とを熱交換させ、冷媒を凝縮させる。すなわち、室内熱交換器211Aは、凝縮器として機能する。室内熱交換器211で凝縮された冷媒は、室内膨張弁212Aに供給され、冷媒を減圧する。室内膨張弁212Aで減圧された冷媒は、膨張弁204でさらに減圧された後、室外熱交換器203に供給される。室外熱交換器203は、低圧の冷媒と外気とを熱交換させ、外気からの吸熱によって冷媒を気化する。すなわち、室外熱交換器203は、蒸発器として機能する。気化された冷媒は、四方弁202によって、圧縮機201に供給される。第2室内機210Bと第3室内機210Cの動作も、第1室内機210Aと同様である。
【0033】
[1―3.冷媒量不足の有無の推定]
本発明における、空気調和装置2の冷媒量不足の有無を推定する考え方について説明する。
【0034】
まず、本開示における冷媒不足の有無の推定方法の概略を説明する。第1に、冷媒量推定モデルMを作成し、冷媒量不足の有無を判別する閾値を決定する。第2に、診断対象である空気調和装置2の運転により得られた冷媒量指標値を、冷媒量推定モデルMに適用し、冷媒量の不足の有無を推定する。
【0035】
冷媒量の不足の有無の判定は、「冷媒量に関する情報の推定」の一例に対応する。
【0036】
ここで、冷媒量指標値は、冷媒量の推定に用いる指標値である。本実施の形態では、冷媒量指標値として過熱度を用いた例を説明する。過熱度には、吸込過熱度と吐出過熱度がある。吸込過熱度は、低圧飽和温度と、吸込温度センサT2により検出される圧縮機吸込冷媒温度と、の差により算出される。吐出過熱度は、高圧飽和温度と、吐出温度センサT3により検出される圧縮機の吐出冷媒温度と、の差により算出される。ここで、空気調和装置2が冷媒運転の場合、低圧飽和温度は、室内熱交温度センサT4A、室内熱交温度センサT4B、及び室内熱交温度センサT4Cにより検出される室内熱交換器211内の冷媒温度である。また、空気調和装置2が冷媒運転の場合、高圧飽和温度は、室外熱交温度センサT1により検出される室外熱交換器203内の冷媒温度である。また、空気調和装置2が暖房運転の場合、低圧飽和温度は、室外熱交温度センサT1により検出される室外熱交換器203内の冷媒温度である。また、空気調和装置2が暖房運転の場合、高圧飽和温度は、室内熱交温度センサT4A、室内熱交温度センサT4B、及び室内熱交温度センサT4Cにより検出される室内熱交換器211A、室内熱交換器211B、及び室内熱交換器211C内の冷媒温度である。過熱度は、「冷媒量指標値」の一例に対応する。
【0037】
以下、本開示における冷媒不足の有無を推定する際の各工程について説明する。
【0038】
[1―3―1.冷媒量の不足の有無を判別する閾値の決定]
モデル生成部313は、冷媒量の不足の有無を判別する閾値を決定する冷媒量推定モデルを生成する。以下、冷媒量推定モデルMの生成方法について説明する。
【0039】
まず、冷媒量推定モデルMの教師データを収集するため、冷媒量が正常値の状態と、冷媒量が異常値の状態と、のそれぞれの状態において、空気調和装置を長期間運転させ、運転により得られた大量の過熱度データを収集する。ここで、冷媒量が正常時の状態とは、冷媒配管内における冷媒充填率が所定の閾値以上の状態であり、冷媒量が異常時の状態とは、冷媒配管内における冷媒充填率が所定の閾値未満の状態である。例えば、所定の閾値を70%とした場合、冷媒量が正常時の状態とは、冷媒配管内における冷媒充填率が70%以上の状態であり、冷媒量が異常値の状態とは、冷媒配管内における冷媒充填率が70%未満の状態である。本発明はこれに限らず、例えば、所定の閾値を60%にしても良いし、所定の閾値を80%にしても良い。
【0040】
教師データは、空気調和装置の冷媒量を調整可能な実験室環境などによる運転データを用いることが好ましい。また、冷媒量が正常値か異常値かを特定できる状態であれば、現場に設置された空気調和装置の実運転データを教師データとして用いても良い。
【0041】
また、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度データを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、教師データとしての過熱度データを収集することが好ましい。
【0042】
本実施の形態では、冷媒量が正常値における教師データとして、N個の過熱度データXpos(Xpos0、Xpos1、・・・、XposN-1)を収集する。また、冷媒量が異常値における教師データとしてM個の過熱度データXneg(Xneg0、Xneg1、・・・、XnegM-1)を収集する。
【0043】
収集された過熱度Xnegと過熱度Xposをもとに、診断対象である空気調和装置の冷媒量が正常値であるか、異常値であるかを判別する閾値を算出する。
【0044】
モデル生成部313は、室内機が冷房運転を実行している場合における、過熱度データXposと過熱度データXnegを収集して第1閾値TH1を算出する。また、モデル生成部313は、室内機が暖房運転を実行している場合における、過熱度データXposと過熱度データXnegを収集して、第2閾値TH2を算出する。
【0045】
即ち、診断対象である空気調和装置2が冷房運転を実行している場合は、当該運転により得られた過熱度データと、第1閾値TH1と、を比較し、冷媒量の不足の有無を推定する。また、診断対象である空気調和装置2が暖房運転を実行している場合は、当該運転により得られた過熱度データと、第2閾値TH2と、を比較し、冷媒量の不足の有無を推定する。
【0046】
モデル記憶部303は、第1閾値TH1と第2閾値TH2を記憶する。
【0047】
[1―3―2.室内機の運転データの統合]
図3(a)は、本実施の形態における空気調和装置から取得する運転データの一例を示す図である。また、図3(b)は、本実施の形態における空気調和装置の統合処理の一例を示す図である。
【0048】
データ記憶部302は、第1室内機210Aの室内機データDI1と、第2室内機210Bの室内機データDI2と、室内機201Cの室内機データDI3とを統合して、仮想的な1台の室内機の室内機データとして生成された統合室内機データDIVを記憶する。統合室内機データDIVは、データ処理部312によって生成され、データ処理部312によって、データ記憶部302に記憶される。
【0049】
また、データ記憶部302は、統合室内機データDIVと室外機データDOとを結合して生成された結合データDNを記憶する。結合データDNは、データ処理部312によって生成され、データ処理部312によって、データ記憶部302に記憶される。
【0050】
また、データ処理部312は、3台の室内機201の各々が冷房運転を実行している場合、又は、3台の室内機201の各々が暖房運転を実行している場合には、統合室内機データDIVを生成する。すなわち、データ処理部312は、3台の室内機201の室内機データDIを統合して、仮想的な1台の室内機の運転データである統合室内機データDIVを生成する。
【0051】
なお、モデル生成部313は、複数の室内機を有する種々の空気調和システムが冷房運転を実行した場における統合室内機データDIVと室外機データDOを事前に多数収集し、上記[1―3―1]の方法により、第1閾値TH1を決定する。また、モデル生成部313は、複数の室内機を有する種々の空気調和システムが暖房運転を実行した場合の、統合室内機データDIVと室外機データDOを事前に多数収集し、上記[1―3―1]の方法により、第1閾値TH2を決定する。
【0052】
また、データ処理部312は、3台の室内機201のうち、2台の室内機201の各々が冷房運転を実行し、且つ、他の1台が運転停止中または送風運転中の場合に、統合室内機データDIVを生成する。すなわち、データ処理部312は、冷房運転を実行している2台の室内機201の室内機データDIを統合して、仮想的な1台の室内機の運転データである統合室内機データDIVを生成する。
【0053】
また、データ処理部312は、3台の室内機201のうち、2台の室内機201の各々が暖房運転を実行し、且つ、他の1台が運転停止中または送風運転中の場合に、統合室内機データDIVを生成する。すなわち、データ処理部312は、暖房運転を実行している2台の室内機201の室内機データDIを統合して、仮想的な1台の室内機の運転データである統合室内機データDIVを生成する。
【0054】
なお、以下の説明では、便宜上、3台の室内機201の各々が冷房運転を実行している場合、又は、3台の室内機201の各々が暖房運転を実行している場合について説明する。
【0055】
3つの室内機データDIの統合の方法は、例えば、平均化である。すなわち、データ処理部312は、室内機データDI1、室内機データDI2、及び室内機データDI3の各々に含まれる同一の検出日時のセンサSの検出値を平均化することによって統合室内機データDIVを生成する。
【0056】
例えば、2023年3月1日の9時00分00秒に検出された室内機データDI1、室内機データDI2、及び室内機データDI3に対応する統合室内機データDIVの生成方法について説明する。室内機データDI1は、室内熱交温度センサT4Aの検出値T1を含み、室内機データDI2は、室内熱交温度センサT4Bの検出値T2を含み、室内機データDI3は、室内熱交温度センサT4Cの検出値T3を含む。データ処理部312は、統合室内機データDIVにおけるセンサSの検出値TVを、次の式(1)で求める。
【0057】
TV=(T1+T2+T3)/3 (1)
本実施の形態では、データ処理部312は、検出値T1、検出値T2、及び検出値T3の平均値を算出することによって統合室内機データDIVの検出値TVを生成するが、本開示はこれに限定されない。
【0058】
例えば、データ処理部312は、検出値T1、検出値T2、及び検出値T3の最大値、及び最小値の少なくとも一方を算出することによって統合室内機データDIVの検出値TVを生成してもよい。また、例えば、データ処理部312は、検出値T1、検出値T2、及び検出値T3の分散を算出することによって統合室内機データDIVの検出値TVを生成してもよい。また、データ処理部312は、検出値T1、検出値T2、及び検出値T3の最大変化量、及び最小変化量の少なくとも一方を算出することによって統合室内機データDIVの検出値TVを生成してもよい。最大変化量は、前回の検出値からの変化量のうち、最大のものである。最小変化量は、前回の検出値からの変化量のうち、最小のものである。
【0059】
また、例えば、データ処理部312は、検出値T1、検出値T2、及び検出値T3の中でもっとも多く存在する値、すなわち最頻値を、統合室内機データDIVの検出値TVとして生成してもよい。
【0060】
また、データ処理部312は、統合室内機データDIVと室外機データDOを結合して結合データDNを生成する。データ処理部312は、例えば、統合室内機データDIVに含まれるデータと、室外機データDOに含まれるデータとを、同一の日時に検出されたデータ毎にまとめることによって、結合データDNを生成する。
【0061】
推定部314は、統合室内機データDIVと、室外機データDOとを用いて、冷媒量不足の有無を推定する。推定部314は、例えば、結合データDNを用いて、冷媒量不足の有無を推定する。
【0062】
[1―3―3.冷媒量推定処理の実行可否判定]
図4は、本実施の形態における、冷媒量推定処理を実行しない運転パターンの一例を示す図である。
【0063】
図4において、サーバ装置3の取得部311は、空気調和装置2から、時刻t1~時刻t2の第1期間P1における運転データを取得する。第1期間P1は、冷媒量の不足推定に用いる運転データを収集する時間である。例えば、時刻t1は午前5時で、時刻t2は、午前0時である。この場合、第1期間P1は、19時間である。尚、上記時刻t1、時刻t2、及び、第1期間P1は、一例であり、本発明はこれに限らない。例えば、第1期間P1は、12時間や2日間などでも良い。
【0064】
図4は、便宜上、3台の室内機210の内、第1室内機210Aと第2室内機210Bの運転パターンを示している。
【0065】
図4(a)は、各室内機で冷暖混在運転であった時間帯が存在する場合の模式図である。冷暖混在運転とは、3台の室内機201のうち、同時刻において、少なくとも1台の室内機201が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機201が暖房運転を実行している状態である。図4(a)において、第1室内機210Aは、時刻t1~時刻t3の間は運転を停止し、時刻t3~時刻t4の間は暖房運転を実行し、時刻t4~時刻t2の間は運転を停止している。また、第2室内機210Bは、時刻t1~時刻t2の間は冷房運転を実行している。この場合、当該空気調和装置2は、時刻t3~時刻t4の間、冷暖混在運転となっている。推定有無判定部315は、第1期間P1の中で、冷暖混在運転の時間帯が存在すると判定した場合、当該第1期間Pの室内機201の運転データに基づく冷媒量の不足判定を実行しない。冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じると、[1-3―1]により決定された第1閾値TH1および第2閾値TH2のいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難なためである。
【0066】
図4(b)は、第1期間P1において、冷房運転を実行する室内機と、暖房運転を実行する室内機が存在することを示す模式図である。図4(b)において、第1室内機210Aは、時刻t1~時刻t5の間、冷房運転を実行している。第1室内機210Aは、時刻t5~時刻t2の間、運転を停止している。また、第2室内機210Bは、時刻t1~時刻t6の間、運転を停止しており、時刻t6~時刻t2の間、暖房運転を実行している。この場合、サーバプロセッサ310は、第1期間P1の中で、冷房運転を実行する室内機と、暖房運転を実行する室内機が存在すると判定する。推定有無判定部315は、第1期間P1の中で、冷房運転を実行する室内機と、暖房運転を実行する室内機が存在すると判定した場合、当該第1期間P1の運転データに基づく冷媒量の不足判定を実行しない。冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じると、[1―3―1]により決定された第1閾値TH1および第2閾値TH2のいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難なためである。
【0067】
図4(c)は、第1期間P1において、冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在することを示す模式図である。図4(c)において、第1室内機210Aは、時刻t1~時刻t7の間、及び、時刻t8~時刻t2の間で、冷房運転を実行している。また、第1室内機210Aは、時刻t7~時刻t8の間で、暖房運転を実行している。推定有無判定部315は、第1期間P1において、冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在すると判定する場合、当該第1期間P1の運転データに基づいて、冷媒量の不足判定を実行しない。冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じると、[1―3―1]により決定された第1閾値TH1および第2閾値TH2のいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難なためである。
【0068】
また、データ処理部312は、冷房運転または暖房運転の連続運転時間が、第2期間P2よりも短い場合、当該運転データを除外しても良い。第2期間P2は、例えば、10分である。冷房運転または暖房運転が一時的である場合、第1期間P1における当該運転の影響が小さいため、当該運転データを除外することが可能となる。これにより、冷媒量不足の判定が頻繁に実行されないことを抑制できる。
【0069】
また、データ処理部312は、室内機210が除霜運転の場合、当該運転データを除外する。除霜運転は、冬場の暖房運転時に、室外熱交換器203を凝縮器として機能する運転である。除霜運転時の冷媒の流れは、冷房運転時の冷媒の流れと同様である。一方、除霜運転の運転データを、冷房運転のデータとして判定すると、図4(c)のように、第1期間P1において、冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在することになり、第1期間P1の運転データを用いた冷媒量推定を行うことができなくなる。そこで、除霜運転の運転データを除外することで、暖房運転時において、冷媒量不足の判定が頻繁に実行されないことを抑制できる。
【0070】
また、第1期間P1の中で、複数の室内機210の内、冷房運転を行っている室内機210が存在し、暖房運転を行っている室内機210が存在しない時間帯が、第3期間P3よりも長い場合、当該時間帯の運転データを対象にして、第1閾値TH1を用いて冷媒量の不足の有無を推定しても良い。また、第1期間P1の中で、複数の室内機210の内、暖房運転を行っている室内機210が存在し、冷房運転を行っている室内機210が存在しない時間帯が、第3期間P3よりも長い場合、当該時間帯の空気調和装置2の運転データを対象にして、第2閾値TH2を用いて冷媒量の不足の有無を判定しても良い。これにより、仮に、第1期間P1の中で、冷暖混在運転の時間帯が存在した場合でも、冷房運転のみを行っている時間帯、または、暖房運転のみを行っている時間帯が十分あれば、当該時間帯での運転データを用いて、冷媒量の推定の有無を判定することができる。ここで、第3期間P3は、冷媒量の推定を行うためのデータを収集する上で必要な時間である。例えば、第3期間P3は、1時間である。
[1―4.冷媒量不足の有無の判定制御]
[1―4―1.冷媒量推定モデルの作成]
図5は、実施の形態1における、冷媒量推定モデルを生成する処理を示すフローチャートである。
【0071】
まず、ステップS501において、サーバ装置3は、実験室環境等において、冷媒量が不足していない状態での空気調和装置の運転データを大量に収集する。
【0072】
次に、ステップS502において、データ処理部312により、受信した運転データに基づき、過熱度Xposを算出し、データ記憶部302に記憶させる。
【0073】
ステップS501とステップS502により、冷媒量が不足していない状態での教師データである過熱度Xposを大量に収集できる。ここで、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度Xposを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、教師データとしての過熱度Xposを収集することが好ましい。
【0074】
ここで、冷媒量が不足していない状態とは、例えば、冷媒配管内における冷媒充填率が70%以上の状態である。
【0075】
まず、ステップS503において、サーバ装置3は、実験室環境等において、冷媒量が不足している状態での空気調和装置の運転データを大量に収集する。
【0076】
次に、ステップS504において、データ処理部312により、受信した運転データに基づき、過熱度Xnegを算出し、データ記憶部302に記憶させる。
【0077】
ステップS503とステップS504により、冷媒量が不足している状態での教師データである過熱度Xnegを大量に収集できる。ここで、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度Xnegを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、教師データとしての過熱度Xnegを収集することが好ましい。
【0078】
ここで、冷媒量が不足している状態とは、例えば、冷媒配管内における冷媒充填率が70%未満の状態である。
【0079】
次に、ステップS505において、モデル生成部313は、ステップS502により収集した冷房運転における過熱度Xposと、ステップS504により収集した冷房運転における過熱度Xnegに基づき、第1閾値TH1を決定する。第1閾値TH1は、冷房運転における冷媒量の不足の有無を判別する閾値である。また、モデル生成部313は、ステップS502により収集した暖房運転における過熱度Xposと、ステップS504により収集した暖房運転における過熱度Xnegに基づき、第2閾値TH2を決定する。第2閾値TH2は、暖房運転における冷媒量の不足の有無を判別する閾値である。
【0080】
次に、ステップS506において、データ処理部312は、第1閾値TH1と第2閾値TH2をモデル記憶部303に記憶させる。
【0081】
[1―4―2.冷媒量の推定]
図6は、実施の形態1における、冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャートである。
【0082】
まず、ステップS601において、サーバ装置3の取得部311は、空気調和装置2から運転データを取得し、データ記憶部302に記憶する。運転データの取得頻度は、例えば、10秒間毎でもよいし、1分間毎でもよい。
【0083】
次に、ステップS602において、データ処理部312は、クレンジング処理を実行する。クレンジング処理とは、冷媒量の不足の有無を推定する際に使用する運転データとして、不適切な運転データを削除する処理である。例えば、データ処理部312は、室内機210の運転が停止している場合や、送風運転をしている場合など、冷媒回路に冷媒が循環されていない運転データを削除しても良い。また、データ処理部312は、空気調和装置2の運転データの変動が大きい不安定状態の場合、当該運転データを削除しても良い。また、データ処理部312は、冷房運転または暖房運転の連続運転時間が第2期間P2よりも短い場合、当該運転データを削除しても良い。また、データ処理部312は、室内機210が除霜運転を実行している場合、当該運転データを削除しても良い。
【0084】
次に、ステップS603において、データ処理部312は、ステップS602で除外されなかった運転データに基づき、本実施の形態における冷媒量指標値である過熱度を算出し、データ記憶部302に記憶する。
【0085】
次に、ステップS604において、データ処理部312は、室内機の運転データを統合する。具体的には、室内機データDI1、室内機データDI2、及び室内機データDI3から、仮想的な1台の室内機の運転データである統合室内機データDIVを生成する。また、データ処理部312は、統合室内機データDIVと室外機データDOとを結合して、結合データDNを生成する。
【0086】
次に、ステップS605において、データ処理部312は、第1期間P1が経過しているか否かを判定する。ここで、第1期間P1は、冷媒量の不足推定に用いる運転データを収集する時間である。第1期間P1は、例えば、12時間でもよいし、一日でも良いし、2日間でもよい。第1期間P1が経過していないと判定された場合(ステップS605:No)、ステップS601へ戻る。第1期間P1が経過していないと判定された場合(ステップS605:Yes)、ステップS606へ進む。
【0087】
次に、ステップS606において、推定有無判定部315は、第1期間P1において、冷暖混在運転の時間帯が存在するか否かを判定する。第1期間P1において、冷暖混在運転の時間帯が存在する場合とは、例えば、図4(a)のケースである。推定有無判定部315は、第1期間P1において、冷暖混在運転の時間帯が存在する場合(ステップS606:Yes)、第1期間P1の運転データに基づく冷媒量推定を行なわず、ステップS609へ進む。第1期間P1において、冷暖混在運転の時間帯が存在する場合(ステップS606:No)、ステップS607へ進む。
【0088】
次に、ステップS607において、推定有無判定部315は、第1期間P1内で、冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在するか否かを判定する。第1期間P1内で冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在する場合とは、例えば、図4(b)や図4(c)のケースである。推定有無判定部315は、第1期間P1内で冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在する場合(ステップS607:Yes)、第1期間P1の運転データに基づく冷媒量推定を行なわず、ステップS609へ進む。第1期間P1内で冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在する場合(ステップS607:No)、ステップS608へ進む。
【0089】
次に、ステップS608において、冷媒量の不足の有無を推定する。より詳細には、空気調和装置2が冷房運転を実行していた場合、S603で算出した過熱度と、ステップS505で決定した第1閾値TH1を比較することにより、冷媒量の不足の有無を推定する。また、空気調和装置2が暖房運転を実行していた場合、ステップS603で算出した過熱度と、ステップS505で決定した第2閾値TH2を比較することにより、冷媒量の不足の有無を推定する。
【0090】
次に、ステップS609において、空気調和装置2を強制的に運転させる強制運転モードを実行する。強制運転モードとは、冷媒量の不足の有無を判定するために必要な時間(例えば、1時間)、空気調和装置2を強制的に運転させるモードである。
【0091】
次に、ステップS610において、ステップS609の強制運転により得られたデータに基づいて、空気調和装置2における冷媒量の不足の有無を推定する。
【0092】
ステップS608またはステップS610で、冷媒量が不足していると判定された場合(ステップS611:Yes)、ステップS612へ進み、端末装置4の端末表示部43にその旨を報知し、終了する。ステップS608またはステップS610で、冷媒量が不足していないと判定された場合(ステップS611:No)、ステップS612を実行せずに終了する。
【0093】
[1―5.効果等]
以上、説明したように、空気調和システム1は、空気調和装置2と、サーバ装置3を備える。サーバ装置3は、第1期間P1における運転データを取得する取得部311と、取得した運転データに基づき、空気調和装置2の冷媒量の不足の有無を推定する推定部314を備える。サーバ装置3は、第1期間P1の内、少なくとも1台の室内機210が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機210が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、当該第1期間P1の運転データに基づき、冷媒量の不足の有無を判定しない推定有無判定部315をさらに備える。
【0094】
冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じると、冷房運転の推論モデルと暖房運転の推論モデルのいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難である。そのため、冷暖混在運転を実行する時間帯が存在する場合、第1期間P1の運転データに基づき冷媒不足有無の判定を行わないことにより、冷媒不足の有無が誤判定されることを抑制できる。
【0095】
また、サーバ装置3は、第1期間P1において、少なくとも1台の室内機210が冷房運転を実行し、他の少なくとも1台の室内機210が暖房運転を実行する冷暖混在運転を実行している時間帯が存在する場合、空気調和装置2に強制運転モードを実行させ、強制運転モードの運転により得られた運転データに基づき、空気調和装置2の冷媒量の不足の有無を推定する。
【0096】
これによれば、冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じった場合でも、適正に冷媒量の不足の有無を判定できる。
【0097】
また、サーバ装置3は、取得部311により取得した運転データの内、冷房運転または暖房運転の連続運転時間が第2期間P2よりも短い運転データがある場合、当該運転データを除外して、推定有無判定部315および推定部314を実行する。
【0098】
これによれば、冷房運転または暖房運転が一時的である場合、第1期間P1における当該運転の影響が小さいため、当該運転データを除外することが可能となる。これにより、冷媒量不足の判定が頻繁に実行されないことを抑制できる。
【0099】
また、サーバ装置3は、取得部311により取得した運転データの内、除霜運転の運転データがある場合、当該運転データを除外して、推定有無判定部315および推定部314を実行する。
【0100】
一般に、除霜運転は、冬場の暖房運転時に、室外熱交換器203を凝縮器として機能する運転である。除霜運転時の冷媒の流れは、冷房運転時の冷媒の流れと同様である。一方、除霜運転の運転データを、冷房運転のデータとして判定すると、第1期間P1において、冷房運転と暖房運転を実行している室内機が存在することになり、第1期間P1の運転データを用いた冷媒量推定を行うことができなくなる。そこで、除霜運転の運転データを除外することで、暖房運転時において、冷媒量不足の判定が頻繁に実行されないことを抑制できる。
【0101】
また、サーバ装置3は、取得部311により複数の室内機210の各々の運転データを取得し、各々の運転データを統合して、仮想的な1台の室内機の運転データである統合室内機データDIVを生成し、統合室内機データDIVを用いて、冷媒量の不足の有無を推定する。
【0102】
これによれば、複数の室内機が各々運転している場合でも、各運転データを統合することにより、冷媒量の不足の有無を判定できる。
【0103】
また、空気調和システム1は、複数の室内機210と室外機200を有する空気調和装置2と、サーバ装置3を備える。サーバ装置3は、空気調和装置2から、第1期間P1における運転データを取得する取得部311と、取得した運転データに基づき、空気調和装置2の冷媒量に関する情報を推定する推定部314と、を備える。サーバ装置3は、第1期間P1において、冷房運転を実行する室内機210と、暖房運転を実行する室内機210が存在する場合、当該第1期間P1の運転データに基づき、冷媒量の不足の有無を判定しない推定有無判定部315をさらに備える。
【0104】
冷房運転を実行する室内機210と、暖房運転を実行する室内機210が存在する場合、冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じり、冷房運転の推論モデルと暖房運転の推論モデルのいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難となる。その際、第1期間P1の運転データに基づき冷媒不足有無の判定を行わないことにより、冷媒不足の有無が誤判定されることを抑制できる。
【0105】
また、空気調和システム1は、複数の室内機210と室外機200を有する空気調和装置2と、サーバ装置3を備える。サーバ装置3は、空気調和装置2から、第1期間P1における運転データを取得する取得部311と、取得した運転データに基づき、空気調和装置2の冷媒量に関する情報を推定する推定部314と、を備える。サーバ装置3は、第1期間P1において、冷房運転と暖房運転が実行されている場合、当該第1期間P1の運転データに基づき、冷媒量の不足の有無を推定しない推定有無判定部315をさらに備える。
【0106】
第1期間P1において、冷房運転と暖房運転が実行されている場合、冷房運転のデータと暖房運転のデータが入り混じり、冷房運転の推論モデルと暖房運転の推論モデルのいずれを適用しても、適切に冷媒量を推定することが困難となる。その際、第1期間P1の運転データに基づき冷媒不足有無の判定を行わないことにより、冷媒不足の有無が誤判定されることを抑制できる。
【0107】
[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0108】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
本実施の形態では、空気調和装置2における冷媒量の不足の有無を判定する例について説明したが、本開示はこれに限らない。例えば、空気調和装置2における冷媒量(例:冷媒量70%)を推定しても良い。
【0109】
本実施の形態では、冷媒量指標値として過熱度を用いる例について説明したが、本開示はこれに限らない。例えば、冷媒量指標値として過冷却度を用いても良いし、膨張弁の開度を用いて良い。要するに、空気調和装置の運転により得られた値であり、かつ、冷媒量の推定に活かせる指標であれば良い。
【0110】
本実施の形態では、空気調和装置2の運転により得られた過熱度データと、第1閾値TH1や第2閾値TH2と、を比較することにより、冷媒量の不足の有無を推定する例を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、診断対象の空気調和装置2の運転により得られた過熱度を適宜補正した上で、第1閾値TH1や第2閾値TH2と比較しても良い。これにより、より適正に冷媒量の不足の有無を推定できる。
【0111】
また、データ処理部312は、室内機210が除湿運転の運転データを、冷房運転の運転データと判定しても良い。除湿運転は、冷房運転と同様に、室内熱交換器211が蒸発器として機能する運転であるため、冷房運転の運転データとして冷媒量の推定を行うことで、冷媒量の推定に用いるデータをさらに確保することができ、冷媒量の推定精度を向上させることができる。
【0112】
本実施の形態では、「管理装置」がサーバ装置3である場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。「管理装置」は、例えば、ビル等の集中管理装置でも良い。
【0113】
また、例えば、図5図6に示す動作のステップ単位は、処理の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0114】
また、制御プログラムを他のサーバ装置等に記憶させておき、他のサーバ装置から制御プログラムをダウンロードすることで空調管理システムの冷媒量推定方法を実現することもできる。
(付記)
本発明により開示される他の技術を記載する。
(技術1)複数の室内機と室外機を有する空気調和装置と、前記空気調和装置と通信可能な管理装置と、を備える空気調和システムであって、前記管理装置は、前記空気調和装置から、第1期間における運転データを取得する取得部と、前記取得した運転データに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部と、を備え、前記管理装置は、前記取得部により取得した前記第1期間の運転データの内、冷房運転を行っている前記室内機が存在し、暖房運転を行っていない前記室内機が存在しない時間帯が第3期間以上ある場合、冷房運転の冷房量推定モデルを適用し、冷媒量の不足の有無を判定する。
(技術2)複数の室内機と室外機を有する空気調和装置と、前記空気調和装置と通信可能な管理装置と、を備える空気調和システムであって、前記管理装置は、前記空気調和装置から、第1期間における運転データを取得する取得部と、前記取得した運転データに基づき、前記空気調和装置の冷媒量に関する情報を推定する推定部と、を備える。前記管理装置は、前記取得部により取得した前記第1期間の運転データの内、暖房運転を行っている前記室内機が存在し、冷房運転を行っていない前記室内機が存在しない時間帯が第3期間以上ある場合、暖房運転の冷房量推定モデルを適用し、冷媒量の不足の有無を判定する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、本開示に係る空気調和システムは、複数の室内機を有する空気調和システムにおいて、冷媒量不足の有無を推定する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 空気調和システム
2 空気調和装置
200 室外機
210A 第1室内機
210B 第2室内機
210C 第3室内機
3 サーバ装置(管理装置)
311 取得部
312 データ処理部
313 モデル生成部
314 推定部
4 端末装置
DI、DI1、DI2、DI3 室内機データ
DIV 統合室内機データ
DN 結合データ
DO 室外機データ
P1 第1期間
P2 第2期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6