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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158706
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フィルタの形状保持構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20241031BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60H3/06 611B
B01D46/52 B
B60H3/06 631
B01D46/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074116
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ジェークディン ケビン
【テーマコード(参考)】
3L211
4D058
【Fターム(参考)】
3L211BA13
3L211DA75
4D058JA13
4D058JB41
4D058KA08
4D058KC04
4D058KC42
4D058KC81
4D058UA11
(57)【要約】
【課題】伸縮可能なプリーツ形状のフィルタにおいて、展開状態で使用される際に正しい形状を保持可能なフィルタの形状保持構造を提供する。
【解決手段】乗物10に設けられた送風装置20の空気流路を形成するダクト30内に配置され、前記ダクト30内を流れる空気流をろ過可能なフィルタ50の形状保持構造1であって、前記フィルタ50はプリーツ状とされ、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折畳状態との間で伸縮可能とされており、前記フィルタ50が展開された際に複数の各プリーツ51の間に挿入され、前記フィルタ50が折り畳まれる際に前記プリーツ51の間から退避する複数のプリーツ支持部71が設けられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設けられた送風装置の空気流路を形成するダクト内に配置され、前記ダクト内を流れる空気流をろ過可能なフィルタの形状保持構造であって、
前記フィルタはプリーツ状とされ、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折畳状態との間で伸縮可能とされており、
前記フィルタが展開された際に複数の各プリーツの間に挿入され、前記フィルタが折り畳まれる際に前記プリーツの間から退避する複数のプリーツ支持部が設けられているフィルタの形状保持構造。
【請求項2】
前記プリーツ支持部は前記フィルタを空気流路の下流側から支持可能とされている請求項1に記載のフィルタの形状保持構造。
【請求項3】
複数の前記プリーツ支持部はそれぞれ個別に移動可能とされており、前記フィルタが伸縮する際に前記フィルタの伸縮方向における一端側から順に移動する構成とされている請求項1または請求項2に記載のフィルタの形状保持構造。
【請求項4】
前記プリーツ支持部は付勢部材により前記フィルタに向けて付勢されている請求項1または請求項2に記載のフィルタの形状保持構造。
【請求項5】
前記フィルタは、その伸縮方向の一端側が前記ダクト側に固定されるとともに、他端側が、前記フィルタの伸縮方向に沿って移動可能な可動部材に固定されており、
前記可動部材は、その移動に伴って前記プリーツ支持部を前記プリーツの間から退避方向に移動させる案内部を有している請求項1または請求項2に記載のフィルタの形状保持構造。
【請求項6】
前記プリーツ支持部は、前記展開状態の前記フィルタに沿う支持面を有し、前記案内部は、前記支持面に沿う面状とされ、
前記可動部材の移動に伴って前記案内部が前記支持面を押圧することにより、前記プリーツ支持部が前記プリーツの間から退避方向に移動可能とされている請求項5に記載のフィルタの形状保持構造。
【請求項7】
前記可動部材は、前記折畳状態の前記フィルタのうち前記退避方向側に配される前記プリーツを収容可能な収容凹部を有し、前記フィルタは前記収容凹部から前記プリーツがひとつずつ順に送り出される形で展開される請求項5に記載のフィルタの形状保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、フィルタの形状保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物室内に空気流を発生させる装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の空気流発生装置は、車両の天井部に配置された送風装置と、車両の床部に配置され、送風装置から吹き出された空気を吸引する排気装置とを備えている。このうち送風装置は、ハウジング、空気流入部、送風機、フィルタ、吹出部等を有しており、車室内から取り込まれて送風機から送風された空気は、フィルタによりろ過され、清浄化されることが記載されている。
【0003】
また、空気清浄機用のフィルタとして、プリーツ加工した濾材を枠体に対して粘着テープで固定したものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-120977号公報
【特許文献2】特開2012-76015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗物に設けられた送風装置を、例えば乗車直後の乗物室内温度が高い場合等、空気清浄機能を使用せずにより強い風力が得られるサーキュレータとして使用したい場合がある。また、サーキュレータとして使用する場合には、強い風力を得るために、フィルタを折り畳んで空気抵抗を小さくすることが考えられる。
【0006】
しかし、伸縮可能なプリーツ形状のフィルタを使用する場合、展開状態におけるフィルタを枠体等に固定することができないため、正しい形状を保持することが容易でなく、空気流の圧力によってプリーツの幅が不均一になったり、撓みが生じたりすることが考えられる。このようにフィルタが正しい形状を保持できないと、空気清浄機として使用する際にその機能が低下する虞がある。
【0007】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、伸縮可能なプリーツ形状のフィルタにおいて、展開状態で使用される際に正しい形状を保持可能なフィルタの形状保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された技術は、乗物に設けられた送風装置の空気流路を形成するダクト内に配置され、前記ダクト内を流れる空気流をろ過可能なフィルタの形状保持構造であって、前記フィルタはプリーツ状とされ、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折畳状態との間で伸縮可能とされており、前記フィルタが展開された際に複数の各プリーツの間に挿入され、前記フィルタが折り畳まれる際に前記プリーツの間から退避する複数のプリーツ支持部が設けられている。
【0009】
上記構成によれば、フィルタが展開状態とされた際に、プリーツ支持部によってプリーツ間のピッチを等間隔に保つことができる。つまり、空気流の圧力によってプリーツの幅が不均一になったり、撓みが生じることを抑制することができる。また、フィルタが折り畳まれる際にプリーツ支持部はプリーツの間から退避するから、折り畳みを阻害することがない。
【0010】
前記プリーツ支持部は前記フィルタを空気流路の下流側から支持可能とされていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、プリーツ支持部を空気流によって撓みがより生じ易い下流側に設けることで、展開状態のフィルタをさらに正規の形状に保持し易くなる。
【0012】
複数の前記プリーツ支持部はそれぞれ個別に移動可能とされており、前記フィルタが伸縮する際に前記フィルタの伸縮方向における一端側から順に移動する構成とされていてもよい。
【0013】
前記プリーツ支持部は付勢部材により前記フィルタに向けて付勢されていてもよい。上記構成によれば、付勢部材の弾性力を利用してプリーツ支持部を退避位置から挿入位置に戻すことができる。
【0014】
前記フィルタは、その伸縮方向の一端側が前記ダクト側に固定されるとともに、他端側が、前記フィルタの伸縮方向に沿って移動可能な可動部材に固定されており、前記可動部材は、その移動に伴って前記プリーツ支持部を前記プリーツの間から退避方向に移動させる案内部を有していてもよい。
【0015】
上記構成によれば、可動部材の移動を利用してプリーツ支持部を退避方向に移動させることができるから、構成を簡素化することができる。
【0016】
前記プリーツ支持部は、前記展開状態の前記フィルタに沿う支持面を有し、前記案内部は、前記支持面に沿う面状とされ、前記可動部材の移動に伴って前記案内部が前記支持面を押圧することにより、前記プリーツ支持部が前記プリーツの間から退避方向に移動可能とされていてもよい。
【0017】
前記可動部材は、前記折畳状態の前記フィルタのうち前記退避方向側に配される前記プリーツを収容可能な収容凹部を有し、前記フィルタは前記収容凹部から前記プリーツがひとつずつ順に送り出される形で展開されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、フィルタを展開させる際に、プリーツ支持部を個々のプリーツの間に確実に挿入し易くなる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示される技術によれば、伸縮可能なプリーツ形状のフィルタにおいて、展開状態で使用される際に正しい形状を保持可能なフィルタの形状保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1のフィルタの形状保持構造を有する送風装置を備える車両の天井を車室内から視た斜視図
図2】送風装置による空気の流れを示す模式図
図3】送風装置を備えるルーフトリムの平面図
図4】送風装置の縦断面図(図3のI-I断面図)
図5図4の一部拡大縦断面図
図6】フィルタを展開状態としたダクトの一部分解斜視図
図7】フィルタを折畳状態としたダクトの一部分解斜視図
図8】フィルタを展開状態としたダクトの一部分解平面図
図9】フィルタを折り畳む過程を示すダクトの一部分解平面図
図10】フィルタを折り畳む過程を示すダクトの一部分解平面図
図11】フィルタを折り畳む過程を示すダクトの一部分解平面図
図12】フィルタを折畳状態としたダクトの一部分解平面図
図13】フィルタを展開する過程を示すダクトの一部分解平面図
図14図13の一部拡大分解平面図
図15】実施形態2の、フィルタを展開状態としプリーツ支持部を退避位置としたダクトの一部分解平面図
図16】実施形態3の、フィルタを展開状態としたダクトの一部分解平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本明細書に開示のフィルタの形状保持構造1を、車両10の天井裏に設けた送風装置20に適用した実施形態1を図1から図14によって説明する。以下の説明においては、図2から図5における左側を前方または上流とし、右側を後方または下流とする。また、図3における上側を右、下側を左とし、上下方向を車両幅方向とする。さらに、図4および図5における上側を上方とし、下側を下方とする。
【0022】
本実施形態の送風装置20は、車両10の室内天井を構成する乗物用内装材であるルーフトリム12と車体を構成するボディパネル11との間に設置されている。送風装置20は、図1および図2に示すように、車室前方側の空気を吸入口16から吸い込んで、その空気を後方側に形成された送風口13から放出するものである。吸入口16は、ルーフトリム12に車室内側から取り付けられたカバー15に形成され、送風口13は、ルーフトリム12におけるカバー15の後方側に形成されている。カバー15は、車両後方から前方に向けて下方に傾斜するように配置されており、吸入口16はその前方部分において前方に向けて開口している(図4参照)。
【0023】
送風装置20は、図4に示すように、吸入口16から空気を吸い込むための送風ファン21と、送風ファン21が吸い込んだ空気を後方に送るダクト30と、ダクト30内に設けられ、送風ファン21から送り出された空気流をろ過するためのフィルタ50とを備えている。送風ファン21およびフィルタ50は、ルーフトリム12に設けられたルーフ開口14に臨む位置に配置されている。ルーフ開口14は、車室内側から上述したカバー15により覆われている。
【0024】
送風ファン21は全体として扁平な略円柱型の本体部22を備えており、当該本体部22は、底面が上下方向を向くように設置されている。送風ファン21は、下方から吸い込んだ空気を後方に向けて送風する構成とされており、後方に向けて扁平な角筒状に突出する排出口23を備えている。
【0025】
送風ファン21の後方には、排出口23から排出された空気流を送風口13まで流通させるためのダクト30が設けられている。ダクト30は、図4に示すように、ルーフトリム12に設けられた上述したルーフ開口14に臨む部分に配置される第1ダクト部31と、第1ダクト部31の後方において第1ダクト部31と連なって配置され、上述したルーフトリム12の上面において送風口13まで延びる第2ダクト部41と、を備えて構成されている。
【0026】
このうち第1ダクト部31は、例えば図4に示すように、ルーフ開口14をボディパネル11側(車室外側)から塞ぐようにルーフトリム12に対して取り付けられる底壁32と、底壁32の上方において底壁32と対向して配置される上壁33と、上壁33および底壁32を連結する2つの側壁34と、備えた筒型とされている。第1ダクト部31は、図3に示すように、平面視において上流側から下流側に向けてやや左側に曲がりつつ左側に拡径する湾曲拡径部39を有する。
【0027】
一方、第2ダクト部41は、ルーフ開口14の後方においてルーフトリム12の上面に沿う形で配されている(図4参照)。第2ダクト部41は、断面略U字型の長尺なダクト形成部材42がルーフトリム12の上面に沿う形で固定されることで、形成されている。上述したルーフトリム12の送風口13は、第2ダクト部41の後端付近に形成されている。
【0028】
フィルタ50は、上述したように送風ファン21から送り出された空気流をろ過するものであって、第1ダクト部31の湾曲拡径部39の下流側に設置されている(図3参照)。フィルタ50は、例えば、多孔質状や不織布状のポリプロピレン(PP)により構成されている。フィルタ50は表面を帯電したものとし、ろ過される空気中の異物を静電気力によって効率よく捕捉可能な静電フィルタとしてもよい。
【0029】
フィルタ50は、前後方向に互い違いに折れ曲がる縦型にプリーツ加工されている。このような構成により、フィルタ50は、第1ダクト部31内において空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態(図6および図8参照)と、空気流路を開放する形で折り畳まれる折畳状態(図7および図12参照参照)との間で伸縮可能とされている。フィルタ50は、展開状態において、その外周が第1ダクト部31の内面に当接可能な寸法の直方体状とされる。
【0030】
フィルタ50の左側端部は、第1ダクト部31の左側壁34Lに設けられた係止部36に係止されている。係止部36は、上下方向に延びるとともに上流側に向けて開口するスリット状とされており、フィルタ50の左側の端部は、この係止部36内に上流側から挿入されることで係止されている。
【0031】
一方、フィルタ50の右側の端部は、可動部材60に固定されている。可動部材60は板状をなす可動壁61を備え、その板面をダクト30の側壁34に対向させた姿勢で、図示しない制御機構あるいは手動の機構により左側壁34Lに近づく方向、および左側壁34Lから離れる方向に変位可能とされている。言い換えると、ダクト30に対して左右方向(車両幅方向)に変位可能とされている。フィルタ50の右側の端部はこの可動壁61に固定されている。
【0032】
図6および図8に示すように、可動壁61(可動部材60)が第1ダクト部31内において最も右側に配置された状態(フィルタ50が展開された状態)において、フィルタ50は空気流路を横切る形で配される。このようにフィルタ50が展開された状態の送風装置20は、空気清浄モードとされる。
【0033】
一方、図7および図12に示すように、可動壁61が第1ダクト部31内において最も左側に配置された状態(フィルタ50が折り畳まれた状態)では、空気流路が開放された状態となり、空気の圧力損失が減少する。このようにフィルタ50が折り畳まれた状態の送風装置20は、サーキュレータモードとされる。
【0034】
このように、フィルタ50は、その右側端部が可動壁61の移動に伴って左右方向に変位することにより、ダクト30内において車両幅方向に伸縮されるようになっている。
【0035】
ところで、本実施形態のフィルタ50は、上述したように伸縮可能とするため、従来のように展開状態においてプリーツ51のピッチが均等となるように枠体等に固定することができない。また本実施形態のダクト30は、上述したように湾曲しつつ拡径する湾曲拡径部39を備えているため、送風ファン21から送り出された空気流は、ダクト30の幅方向において強度分布を有する。このため、フィルタ50の展開状態において、空気流の強度分布によって、プリーツ51の幅が部分的に不均一になる場合がある。また、風圧によって下流側に向けてフィルタ50に撓みが生じる場合がある。
【0036】
そこで本実施形態では、展開状態においてプリーツ51のピッチを均等な正規の状態に保つとともに、フィルタ50の撓みを抑制するべく、ダクト30内に形状保持装置70を設ける構成とした。
【0037】
本実施形態の形状保持装置70は、展開状態のフィルタ50の下流側に設けられており、フィルタ50の伸縮方向(車両幅方向)において隣り合って配される複数の各プリーツ51の間にそれぞれ配置される複数のプリーツ支持部71を備えている。
【0038】
各プリーツ支持部71は厚板状とされ、その板面を上下方向(各プリーツ51の延び方向)に向けた状態で、展開状態のフィルタ50の正規の一のプリーツ形状に沿う平面視略二等辺三角形状をなしている(図8参照)。つまり、展開状態のフィルタ50のプリーツ51(折り目)が構成する角度と同角度の頂点を有する平面視略二等辺三角形状をなしている。各プリーツ支持部71の二等辺を構成する二つの端面(フィルタ側の面、上流側の面)は、フィルタ50(プリーツ51)を下流側から支持可能な支持面72とされている(図8参照)。
【0039】
これら複数のプリーツ支持部71は、フィルタ50の上端部および下端部において、それぞれ横並びに設けられている。つまり、上下方向に二段設けられている(図5参照)。なお、図6および図7においては、便宜上、上段の形状保持装置70の図示を省略している。
【0040】
各プリーツ支持部71の平面視二等辺三角形状の底辺を構成する下流側端面73からは、下流側に向けて支持軸75が延びている。支持軸75は、その下流側の端部が扁平な箱型の収容ケース76に挿入されており、収容ケース76内に設けられた図示しない移動機構により、空気流路に沿う方向(図8の上下方向)に沿って移動可能とされている。つまり、各プリーツ支持部71が各プリーツ51の間に挿抜可能とされている。プリーツ支持部71は、後述するように、フィルタ50が展開される際に各プリーツ51の間に挿入された挿入位置とされ、フィルタ50が折り畳まれる際に各プリーツ51の間から退避する退避位置に移動可能な構成とされている。
【0041】
収容ケース76から延び出した支持軸75の周囲には圧縮バネ(付勢部材の一例)77が外嵌されている。圧縮バネ77は、プリーツ支持部71がフィルタ50のプリーツ51間に挿抜されるのに伴って、プリーツ支持部71と収容ケース76との間で伸縮するようになっている。圧縮バネ77は、プリーツ支持部71が挿入位置とされた状態で自然状態とされ、プリーツ支持部71がプリーツ51間から退避するのに伴って圧縮される寸法に設定されている。つまりプリーツ支持部71は、当該プリーツ支持部71が退避方向に移動した際に、圧縮バネ77によりフィルタ50に向けて付勢されるようになっている。
【0042】
なお、これら複数のプリーツ支持部71は、それぞれ個別に移動可能とされている。
【0043】
一方、上述した可動部材60の可動壁61の下流側の端部には、当該可動壁61の板面から立ち上がるように左右方向に張り出すとともに下流側に向けて先細りとされた、略三角柱状の案内部62が一体に設けられている。詳細には、案内部62は、平面視において可動壁61から左右方向に張り出す上流側端面63と、上流側端面63の左側端部から下流側に向けて傾斜状に配された折り畳み時案内面(案内部の一例)64と、上流側端面63の右側端部から下流側に向けて傾斜状に配された展開時案内面(案内部の一例)65と、を有する略三角柱状とされている。
【0044】
これらの案内面64,65は、プリーツ支持部71の支持面72に沿う方向に延在している。詳細には、折り畳み時案内面64は、一のプリーツ支持部71の2つの支持面72のうち可動部材60側(右側)に配置される支持面72Rと平行に配されるように延在し、展開時案内面65は、2つの支持面72のうちフィルタ50の固定側(左側)に配置される支持面72Lと平行に配されるように延在している。
【0045】
この案内部62は、車両前後方向における上流側端面63の位置が、フィルタ50のうち下流側に配置されるプリーツ51B(折り目)の位置と同じになるように設定されている。また案内部62は、下流側に配される頂部66が、挿入位置におけるプリーツ支持部71の下流側端面73より下流側に位置するように設定されている(図8参照)。
【0046】
さらに、案内部62の上流側端面63の左側の端縁部には、図14に示すように、上流側に向けて突出する突条部67が上下方向の全体にわたって設けられている。この突条部67と、上流側端面63と、可動壁61とで囲まれた上下方向に延びる溝状の部分は、折り畳まれた状態のフィルタ50の下流側のプリーツ51Bを収容可能な収容凹部68とされている。
【0047】
次に、本実施形態の形状保持装置70の動作について説明する。空気清浄モードとされた展開状態のフィルタ50においては、図8に示すように、複数のプリーツ支持部71はフィルタ50の下流側において各プリーツ51の間に配置されており、複数の各プリーツ51(フィルタ50)を下流側から支持可能とされている。
【0048】
この時、支持軸75は最も上流側に配置された状態とされ、支持軸75に外嵌された圧縮バネ77は自然状態とされている。またこの時、可動部材60は最も右側に配置された状態とされており、ダクト30の右側壁34Rに設けられた上下方向に延びる2本の支持リブ37により右側から支持されている。また、プリーツ支持部71の下流側端面73は案内部62の上流側端面63よりも下流側に配置されており、プリーツ支持部71の頂部74は案内部62の上流側端面63よりも上流側に配置されている。
【0049】
この状態からサーキュレータモードとするべくフィルタ50を折り畳む際、可動壁61が右端から左側に移動するのに伴って、可動部材60の案内部62の折り畳み時案内面64が、最も右側に配されているプリーツ支持部71Aの右側の支持面72Rに当接し、支持面72Rを押圧する。これにより、プリーツ支持部71Aが下流側に向けて移動する(図9参照)。つまり、プリーツ51の間から退避する。そして、案内部62の下流側の頂部66がプリーツ支持部71Aの上流側の頂部74を乗り越えると、プリーツ支持部71Aは、案内部62の移動に伴って圧縮バネ77の付勢力より展開時案内面65に沿って徐々にもとの位置(上流側)に押し戻される(図10および図11参照)。
【0050】
一方、案内部62は右から2番目のプリーツ支持部71Bに当接し、同様に折り畳み時案内面64が当該プリーツ支持部71Bの右側の支持面72Rを押圧することにより、プリーツ支持部71Bを下流側に向けて移動させる。この動作が順に繰り返されることにより、最終的にフィルタ50全体が左側壁34L側に向けて折り畳まれた折畳状態とされる(図12参照)。フィルタ50の折畳状態において、全てのプリーツ支持部71は、挿入位置に押し戻された状態とされている。
【0051】
このように、複数の各プリーツ支持部71はそれぞれ個別に移動可能とされており、フィルタ50が伸縮する際(可動部材60が移動する際)にフィルタ50の伸縮方向における一端側から順に退避位置に移動するとともに、圧縮バネ77の弾性復帰力により挿入位置に押し戻される構成とされている。
【0052】
また、このように可動部材60(可動壁61)の移動により折り畳まれた個々の下流側のプリーツ51B(フィルタ50の下流側の端部)は、それぞれ案内部62に設けられた突条部67を乗り越え、収容凹部68内に収容される(図12および図14参照)。
【0053】
一方、折畳状態のフィルタ50を展開する際は、可動部材60(可動壁61)が左端から右側に移動するのに伴って、可動部材60の案内部62の展開時案内面65が、最も左側に配されているプリーツ支持部71Zの左側の支持面72Lに当接し、支持面72Lを押圧する。これにより、プリーツ支持部71Zが下流側に向けて移動(退避)する。そして、案内部62の下流側の頂部66がプリーツ支持部71Zの上流側の頂部74を乗り越えると、プリーツ支持部71Zは、案内部62の移動に伴って圧縮バネ77の付勢力より折り畳み時案内面64に沿って徐々にもとの位置(上流側)に押し戻される(図13参照)。
【0054】
この時、図14に示すように、収容凹部68に収容されている複数のプリーツ51Bのうち、最も左側に配置されているプリーツ51BZが左側に引っ張られ、突条部67を乗り越えて展開する。上述したもとの位置に押し戻されつつあるプリーツ支持部71Zは、この展開した一のプリーツ51BZと、次に展開されるプリーツ51Bとの間に挿入される。このように、折畳状態のフィルタ50(プリーツ51B)は、収容凹部68内から1つずつ順に展開されるようになっているから、プリーツ支持部71を展開されたプリーツ51B間に確実に挿入することができる。
【0055】
なお案内部62は、左側から2番目のプリーツ支持部71Yに当接し、同様に展開時案内面65が当該プリーツ支持部71の支持面72Lを押圧することにより、再びプリーツ支持部71Yを下流側に向けて移動させる。
【0056】
このような動作が順に繰り返されることにより、最終的にフィルタ50全体が展開状態とされるとともに、複数のプリーツ支持部71が展開されたプリーツ51間に挿入された挿入状態とされる(図8参照)。
【0057】
本実施形態の送風装置20は上述した通りであって、次に、作用効果について説明する。送風装置20の空気流路を形成するダクト30内に空気流をろ過可能なフィルタ50が設けられ、フィルタ50はプリーツ状とされ、空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、空気流路を開放する形で折り畳まれる折畳状態との間で伸縮可能とされており、フィルタ50が展開された際に複数の各プリーツ51の間に挿入され、フィルタ50が折り畳まれる際にプリーツ51の間から退避する複数のプリーツ支持部71を備える形状保持装置70が設けられている。
【0058】
上記構成によれば、フィルタ50が展開状態とされた際に、プリーツ支持部71によってプリーツ51間のピッチを等間隔に保つことができる。つまり、空気流の圧力によってプリーツ51の幅が不均一になったり、撓みが生じることを抑制することができる。また、フィルタ50が折り畳まれる際にプリーツ支持部71はプリーツ51の間から退避するから、折り畳みを阻害することがない。
【0059】
プリーツ支持部71はフィルタ50を空気流路の下流側から支持可能とされている。このような構成によれば、プリーツ支持部71を空気流によって撓みがより生じ易い下流側に設けることで、展開状態のフィルタ50をさらに正規の形状に保持し易くなる。
【0060】
複数のプリーツ支持部71はそれぞれ個別に移動可能とされており、フィルタ50が伸縮する際にフィルタ50の伸縮方向における一端側から順に移動する構成とされている。
【0061】
また、プリーツ支持部71は圧縮バネ77によりフィルタ50に向けて付勢されている。このような構成によれば、圧縮バネ77の弾性力を利用してプリーツ支持部71を退避位置から挿入位置に戻すことができる。
【0062】
フィルタ50は、その伸縮方向の一端側がダクト30の係止部36に固定されるとともに、他端側が、フィルタ50の伸縮方向に沿って移動可能な可動部材60に固定されており、可動部材60は、その移動に伴ってプリーツ支持部71をプリーツ51の間から退避方向に移動させる案内部62を有している。
【0063】
上記構成によれば、可動部材60の移動を利用してプリーツ支持部71を退避方向に移動させることができるから、形状保持装置70の構成を簡素化することができる。
【0064】
プリーツ支持部71は、展開状態のフィルタ50に沿う支持面72を有し、案内部62は、支持面72に沿う案内面64を有し、可動部材60の移動に伴って案内面64が支持面72を押圧することにより、プリーツ支持部71がプリーツ51の間から退避方向に移動可能とされている。
【0065】
可動部材60は、折畳状態のフィルタ50のうち退避方向側に配される下流側の端部(プリーツ51B)を収容可能な収容凹部68を有し、フィルタ50は収容凹部68からプリーツ51Bがひとつずつ順に送り出される形で展開される。
【0066】
上記構成によれば、フィルタ50を展開させる際に、プリーツ支持部71を個々のプリーツ51Bの間に確実に挿入し易くなる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、フィルタ50が展開状態とされた際に、プリーツ51間のピッチを等間隔に保つとともに、撓みを抑制することができる。つまり、空気流の圧力によってプリーツ51の幅が不均一になったり、撓みが生じることを抑制することができる。
【0068】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図15によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には同一符号を付すこととし、重複する説明を省略する。
【0069】
本実施形態のフィルタの形状保持構造2は、収容ケース76内に、退避位置とされた支持軸75を退避位置に保持するロック機構を備えている。上記実施形態1と同様に、フィルタ50の折り畳み時、可動部材60の案内部62により退避位置に移動した複数のプリーツ支持部71は、支持軸75が退避位置にロックされることにより、退避位置に横並びの状態で保持される。
【0070】
折畳状態のフィルタ50を展開する際には、複数のプリーツ支持部71を退避位置に横並びの状態で保持したまま、可動部材60を右側壁34Rに移動させる(図15参照)。その後、支持軸75のロックを解除すると、圧縮バネ77の弾性復帰力により、複数のプリーツ支持部71が挿入位置に一括に移動する。つまり、展開状態のフィルタ50のプリーツ51間に複数のプリーツ支持部71が一括に挿入される。
【0071】
このような本実施形態のフィルタの形状保持構造2を備える送風装置によっても、フィルタ50が展開状態とされた際に、プリーツ51間のピッチを等間隔に保つとともに、撓みを抑制することができる。
【0072】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図16によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には同一符号を付すこととし、重複する説明を省略する。
【0073】
本実施形態のフィルタの形状保持構造3は、複数のプリーツ支持部171が一体に連結されているところが上記実施形態と相違している。プリーツ支持部171は、矩形の板状の連結板部178から上流側に向けて連続した複数の山形に突出した形状とされている。連結板部178の下流側部分は、収容ケース76内に収容されている。
【0074】
フィルタ50を折り畳む際には、まず、挿入位置に配置されたプリーツ支持部171(連結板部178)を、収容ケース76内に設けられた図示しない移動機構により下流側(退避位置)に移動させる。その後、可動壁161を左側壁34L側に移動させ、フィルタ50を折畳状態とする。
【0075】
一方、折畳状態のフィルタ50を展開する際には、プリーツ支持部71を退避位置に保持したまま、可動壁161を右側壁34Rに移動させる。その後、連結板部178を図示しない移動機構により上流側に移動させて、プリーツ支持部171を挿入位置に一括に移動させる。つまり、展開状態のフィルタ50のプリーツ51間に複数のプリーツ支持部171を一括に挿入する。
【0076】
このような本実施形態のフィルタの形状保持構造3によれば、より簡易な構成でプリーツ51間のピッチを等間隔に保つとともに、撓みを抑制することができる。
【0077】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0078】
(1)上記実施形態では、プリーツ支持部71(形状保持装置70)をフィルタ50の上端部および下端部の2段設ける形態を示したが、プリーツ支持部71を設置する位置や数は上記実施形態に限るものでなく、上下方向の中央部に設けたり、上端部のみ、下端部のみとしたり、3段以上設ける形態等、位置や数は適宜変更可能である。
【0079】
(2)プリーツ支持部71、171はフィルタ50の下流側に限らず、上流側に設けたり、上流側および下流側の双方に設ける形態としてもよい。
【0080】
(3)上記実施形態では、縦型のプリーツ状とされたフィルタ50に対してプリーツ支持部71、171を下流側から挿抜させる形態を示したが、プリーツ支持部は、上下方向から挿抜させる形態とすることもできる。
【0081】
(4)上記実施形態では、フィルタ50に縦型のプリーツ加工が施され、フィルタ50が車両幅方向に伸縮する形態を示したが、フィルタに横型のプリーツ加工をし、フィルタを上下方向に伸縮させる形態とすることもできる。
【0082】
(5)フィルタ50を伸縮させる機構は上記実施形態に限るものでない。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3:形状保持構造、10:車両(乗物)、20:送風装置、21:送風ファン、30:ダクト、31:第1ダクト部(ダクト)、50:フィルタ、51:プリーツ、60:可動部材、61、161:可動壁、62:案内部、64:折り畳み時案内面(案内部)、65:展開時案内面(案内部)、68:収容凹部、70:形状保持装置、71、171:プリーツ支持部、72:支持面、75:支持軸、77:圧縮バネ(付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16