(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158715
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体装置、及び、半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241031BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241031BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241031BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20241031BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20241031BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 626C
H01L29/78 618B
H01L29/78 617N
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 J
H01L27/088 B
H01L27/088 331E
H10K50/00
H10K59/00
H10K59/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074130
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】井口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 正佳
【テーマコード(参考)】
3K107
5F048
5F110
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】占有面積の小さい半導体装置を提供する。
【解決手段】トランジスタ、第1の絶縁層、第2の絶縁層、及び材料層を有し、トランジスタのソース電極及びドレイン電極は、第1の絶縁層の上面に接して設けられ、第2の絶縁層は、ソース電極、ドレイン電極、及び第1の絶縁層上に設けられ、第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、ソース電極及びドレイン電極と重なる領域に凹部を有し、ソース電極及びドレイン電極は、凹部内にて、露出する領域を有し、トランジスタの半導体層は、凹部内において、第2の絶縁層の側面、ソース電極の側面、及びドレイン電極の側面に接する領域を有し、材料層は、凹部の底面に設けられ、トランジスタのゲート絶縁層は、半導体層の側面及び材料層の上面に接して設けられ、トランジスタのゲート電極は、凹部と重なる領域を有するように、ゲート絶縁層上に設けられ、半導体層と材料層とは、同じ材料を有し、互いに電気的に絶縁している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、材料層と、を有し、
前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極は、前記第1の絶縁層の上面に接して設けられ、
前記第2の絶縁層は、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び、前記第1の絶縁層上に設けられ、平面視にて、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と重なる領域に開口を有し、
前記第1の絶縁層は、平面視にて、前記開口と重なる領域に凹部を有し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、平面視にて前記凹部と重なる領域において、露出する領域を有し、
前記凹部の側壁は、平面視において、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と重なる領域においては、前記ソース電極の端部及び前記ドレイン電極の端部よりも外側に位置し、平面視において、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と重ならない領域においては、前記開口の側壁よりも外側に位置し、
前記トランジスタの半導体層は、前記開口内における前記第2の絶縁層の側面、前記ソース電極の側面、及び、前記ドレイン電極の側面に接する領域を有し、
前記材料層は、前記凹部の底面に設けられ、
前記トランジスタのゲート絶縁層は、前記半導体層及び前記材料層に接して設けられ、
前記トランジスタのゲート電極は、平面視にて、前記凹部と重なる領域を有するように、前記ゲート絶縁層上に設けられ、
前記半導体層と、前記材料層と、は同じ材料を有し、互いに分離して設けられる、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記半導体層は、金属酸化物を有する、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第2の絶縁層は、第3の絶縁層と、前記第3の絶縁層上の第4の絶縁層と、前記第4の絶縁層上の第5の絶縁層と、を有し、
前記第3の絶縁層及び前記第5の絶縁層は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、又は酸化アルミニウムのいずれか一つ又は複数であり、
前記第4の絶縁層は、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンのいずれか一つ又は複数である、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記ソース電極の側面及び前記ドレイン電極の側面は、前記開口内における前記第2の絶縁層の側面よりも突出している、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記ソース電極の側面及び前記ドレイン電極の側面は、前記開口内における前記第2の絶縁層の側面と概略一致している、
半導体装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2において、
前記第2の絶縁層の前記開口内における側面が、前記第1の絶縁層の上面に対して、垂直又は概略垂直である、
半導体装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記第2の絶縁層の前記開口内における側面が、前記第1の絶縁層の上面に対して、テーパ形状を有する、
半導体装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2において、
前記第2の絶縁層は、第3の絶縁層と、前記第3の絶縁層上の第4の絶縁層と、前記第4の絶縁層上の第5の絶縁層と、前記第5の絶縁層上の第6の絶縁層と、前記第6の絶縁層上の第7の絶縁層と、前記第7の絶縁層上の第8の絶縁層と、を有し、
前記第3の絶縁層、前記第5の絶縁層、前記第6の絶縁層、及び前記第8の絶縁層は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、又は酸化アルミニウムのいずれか一つ又は複数であり、
前記第4の絶縁層及び前記第7の絶縁層は、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンのいずれか一つ又は複数であり、
前記第5の絶縁層と、前記第6の絶縁層と、の間に、導電層を有する、
半導体装置。
【請求項9】
第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層上に、第1の導電層及び第2の導電層を形成し、
前記第1の絶縁層上、前記第1の導電層上、及び、前記第2の導電層上に、第2の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層を加工して、平面視にて、前記第1の導電層及び前記第2の導電層と重なる領域を有するように、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層に凹部を形成し、
前記凹部を覆うように、前記第1の絶縁層上及び前記第2の絶縁層上に、金属酸化物膜を形成し、
前記凹部を埋め込むように、前記金属酸化物膜上に、フォトレジストを塗布し、
前記フォトレジストに対して、光を照射し、
前記フォトレジストの前記光が照射された部分を除去して、レジストマスクを形成し、
前記金属酸化物膜の露出した部分を除去して、前記凹部内において、前記第2の絶縁層の側面、前記第1の導電層の側面、及び、前記第2の導電層の側面に接する半導体層を形成し、
前記凹部内に残存した前記レジストマスクを除去し、
前記凹部を覆うように、前記半導体層上に第3の絶縁層を形成し、
平面視にて、前記凹部と重なる領域を有するように、前記第3の絶縁層上に、第3の導電層を形成する、
半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及び、その作製方法に関する。本発明の一態様は、トランジスタ、及び、その作製方法に関する。本発明の一態様は、半導体装置を有する表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野として、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらを有する電子機器、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、パッケージにチップを収納した電子部品は、半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置、及び電子機器は、それ自体が半導体装置であり、かつ、それぞれが半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
トランジスタを有する半導体装置は、電子機器に広く適用されている。また、近年、表示装置の用途が多様化しており、例えば、携帯情報端末、テレビジョン装置(テレビジョン受信機ともいう。)、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、及びPID(Public Information Display)などに表示装置が用いられている。表示装置として、例えば、有機EL(Electro Luminescence)素子、又は発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を有する表示装置、液晶素子を有する表示装置、電気泳動方式により表示を行う電子ペーパーが挙げられる。
【0005】
表示装置において、トランジスタの占有面積を小さくすることで、画素サイズを縮小することができ、精細度を高めることができる。また、トランジスタの占有面積を小さくすることで、開口率を高めることができる。そのため、微細なトランジスタが求められている。
【0006】
高精細な表示装置が要求される機器として、例えば、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)、代替現実(SR:Substitutional Reality)、及び、複合現実(MR:Mixed Reality)向けの機器が、盛んに開発されている。
【0007】
特許文献1には、有機EL素子を用いた、高精細な表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、微細なサイズのトランジスタを提供することを課題の一とする。又は、チャネル長が長いトランジスタを提供することを課題の一とする。又は、チャネル長が長いトランジスタ、及び、チャネル長が短いトランジスタを提供することを課題の一とする。又は、電気特性が良好なトランジスタを提供することを課題の一とする。又は、占有面積が小さい半導体装置を提供することを課題の一とする。又は、消費電力が低い半導体装置又は表示装置を提供することを課題の一とする。又は、信頼性が高いトランジスタ、半導体装置、又は表示装置を提供することを課題の一とする。又は、高精細化が容易な表示装置を提供することを課題の一とする。又は、歩留まりの高いトランジスタ又は半導体装置の作製方法を提供することを課題の一とする。又は、生産性が高い半導体装置又は表示装置の作製方法を提供することを課題の一とする。又は、新規なトランジスタ、半導体装置、表示装置、又は、これらの作製方法を提供することを課題の一とする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、トランジスタと、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、材料層と、を有し、トランジスタのソース電極及びドレイン電極は、第1の絶縁層の上面に接して設けられ、第2の絶縁層は、ソース電極、ドレイン電極、及び、第1の絶縁層上に設けられ、平面視にて、ソース電極及びドレイン電極と重なる領域に開口を有し、第1の絶縁層は、平面視にて、開口と重なる領域に凹部を有し、ソース電極及びドレイン電極は、平面視にて凹部と重なる領域において、露出する領域を有し、凹部の側壁は、平面視において、ソース電極及びドレイン電極と重なる領域においては、ソース電極の端部及びドレイン電極の端部よりも外側に位置し、平面視において、ソース電極及びドレイン電極と重ならない領域においては、開口の側壁よりも外側に位置し、トランジスタの半導体層は、開口内における第2の絶縁層の側面、ソース電極の側面、及び、ドレイン電極の側面に接する領域を有し、材料層は、凹部の底面に設けられ、トランジスタのゲート絶縁層は、半導体層及び材料層に接して設けられ、トランジスタのゲート電極は、平面視にて、凹部と重なる領域を有するように、ゲート絶縁層上に設けられ、半導体層と、材料層と、は同じ材料を有し、互いに分離して設けられる半導体装置である。
【0012】
また上記において、半導体層は、金属酸化物を有していることが好ましい。
【0013】
また上記において、第2の絶縁層は、第3の絶縁層と、第3の絶縁層上の第4の絶縁層と、第4の絶縁層上の第5の絶縁層と、を有し、第3の絶縁層及び第5の絶縁層は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、又は酸化アルミニウムのいずれか一つ又は複数であり、第4の絶縁層は、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンのいずれか一つ又は複数であることが好ましい。
【0014】
また上記において、ソース電極の側面及びドレイン電極の側面は、開口内における第2の絶縁層の側面よりも突出していることが好ましい。
【0015】
また上記において、ソース電極の側面及びドレイン電極の側面は、開口内における第2の絶縁層の側面と概略一致していることが好ましい。
【0016】
また上記において、第2の絶縁層の凹部内における側面が、第1の絶縁層の上面に対して、垂直又は概略垂直であることが好ましい。
【0017】
また上記において、第2の絶縁層の開口内における側面が、第1の絶縁層の上面に対して、テーパ形状を有していることが好ましい。
【0018】
また上記において、第2の絶縁層は、第3の絶縁層と、第3の絶縁層上の第4の絶縁層と、第4の絶縁層上の第5の絶縁層と、第5の絶縁層上の第6の絶縁層と、第6の絶縁層上の第7の絶縁層と、第7の絶縁層上の第8の絶縁層と、を有し、第3の絶縁層、第5の絶縁層、第6の絶縁層、及び第8の絶縁層は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、又は酸化アルミニウムのいずれか一つ又は複数であり、第4の絶縁層及び第7の絶縁層は、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンのいずれか一つ又は複数であり、第5の絶縁層と、第6の絶縁層と、の間に、導電層を有していることが好ましい。
【0019】
また、本発明の一態様は、第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に、第1の導電層及び第2の導電層を形成し、第1の絶縁層上、第1の導電層上、及び、第2の導電層上に、第2の絶縁層を形成し、第1の絶縁層及び第2の絶縁層を加工して、平面視にて、第1の導電層及び第2の導電層と重なる領域を有するように、第1の絶縁層及び第2の絶縁層に凹部を形成し、凹部を覆うように、第1の絶縁層上及び第2の絶縁層上に、金属酸化物膜を形成し、凹部を埋め込むように、金属酸化物膜上に、フォトレジストを塗布し、フォトレジストに対して、光を照射し、フォトレジストの光が照射された部分を除去して、レジストマスクを形成し、金属酸化物膜の露出した部分を除去して、凹部内において、第2の絶縁層の側面、第1の導電層の側面、及び、第2の導電層の側面に接する半導体層を形成し、凹部内に残存したレジストマスクを除去し、凹部を覆うように、半導体層上に第3の絶縁層を形成し、平面視にて、凹部と重なる領域を有するように、第3の絶縁層上に、第3の導電層を形成する半導体装置の作製方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様により、微細なサイズのトランジスタを提供することができる。又は、チャネル長が長いトランジスタを提供することができる。又は、チャネル長が長いトランジスタ、及び、チャネル長が短いトランジスタを提供することができる。又は、電気特性が良好なトランジスタを提供することができる。又は、占有面積が小さい半導体装置を提供することができる。又は、消費電力が低い半導体装置又は表示装置を提供することができる。又は、信頼性が高いトランジスタ、半導体装置、又は表示装置を提供することができる。又は、高精細化が容易な表示装置を提供することができる。又は、歩留まりの高いトランジスタ又は半導体装置の作製方法を提供することができる。又は、生産性が高い半導体装置又は表示装置の作製方法を提供することができる。又は、新規なトランジスタ、半導体装置、表示装置、又は、これらの作製方法を提供することができる。
【0021】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(A)は、トランジスタの斜視概略図である。
図1(B)は、トランジスタの平面概略図である。
【
図2】
図2(A)及び
図2(B)は、トランジスタの断面図である。
【
図3】
図3(A)乃至
図3(C)は、トランジスタの平面概略図である。
【
図4】
図4(A)及び
図4(B)は、トランジスタの平面概略図である。
【
図5】
図5(A)は、トランジスタの平面概略図である。
図5(B)は、トランジスタの断面図である。
【
図6】
図6(A)乃至
図6(C)は、トランジスタの平面概略図である。
【
図7】
図7(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。
図7(B)及び
図7(C)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。
図8(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。
図9(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図22】
図22(A)は、表示装置の一例を示す斜視図である。
図22(B)は、表示装置の一例を示すブロック図である。
【
図23】
図23(A)は、ラッチ回路の回路図である。
図23(B)は、インバータ回路の回路図である。
【
図25】
図25は、表示装置の構成例を示す断面模式図である。
【
図39】
図39(A)は、副表示部を説明する図である。
図39(B1)乃至
図39(B7)は、画素の構成例を説明する図である。
【
図42】
図42(A)は、本実施例に係る光学顕微鏡写真である。
図42(B)及び
図42(C)は、本実施例に係る断面STEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチングパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0025】
本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。また、図面等において、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記している場合、本明細書等において区別する必要が無いときには、識別用の符号を記載しない場合がある。
【0026】
図面において示す各構成の、位置、大きさ、及び範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、及び範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、及び範囲などに限定されない。
【0027】
本明細書等において、「第1」、「第2」という序数詞は、便宜上用いるものであり、構成要素の数、又は、構成要素の順序(例えば、工程順、又は積層順)を限定するものではない。また、本明細書のある箇所において構成要素に付す序数詞と、本明細書の他の箇所、又は特許請求の範囲において、当該構成要素に付す序数詞と、が一致しない場合がある。
【0028】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0029】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流又は電圧を増幅する機能、及び、導通又は非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書等におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)及び薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0030】
「ソース」と「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合、又は、回路動作において電流の方向が変化する場合などには、入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」と「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。なお、トランジスタのソース及びドレインの呼称については、ソース端子及びドレイン端子、又は、ソース電極及びドレイン電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0031】
「ゲート」と「バックゲート」は、入れ替えることができる。このため、本明細書等においては、「ゲート」と「バックゲート」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。なお、トランジスタのゲート及びバックゲートの呼称については、ゲート電極及びバックゲート電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0032】
本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極又は配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、コイル、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0033】
本明細書等において、「電気的に絶縁」とは、2つの測定対象間を流れる電流の大きさが、1×10-24A以下であることをいう。
【0034】
本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう。)にあるときのソース-ドレイン間のリーク電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0035】
本明細書等において「上面形状が概略一致」とは、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、又は、一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重なり合わず、上層が下層の内側に位置すること、又は、上層が下層の外側に位置することもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という場合がある。また、上面形状が一致又は概略一致している場合、端部が揃っている、又は、概略揃っているということもできる。
【0036】
本明細書等において、テーパ形状とは、構造の側面の少なくとも一部が、基板面又は被形成面に対して傾斜して設けられている形状のことを指す。例えば、傾斜した側面と基板面又は被形成面とがなす角(テーパ角ともいう。)が、90度未満である領域を有する形状のことを指す。なお、構造の側面、基板面、及び被形成面は、必ずしも完全に平坦である必要はなく、微小な曲率を有する略平面状、又は、微細な凹凸を有する略平面状であってもよい。
【0037】
本明細書等において、メタルマスク又はFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク又はFMMを用いずに作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。なお、MML構造のデバイスは、メタルマスクを用いることなく製造することができるため、メタルマスクの合わせ精度に起因する精細度の上限を超えることができる。また、MML構造のデバイスは、メタルマスクの製造に係る設備、及び、メタルマスクの洗浄工程を不要にすることができる。また、MML構造のデバイスは、製造コストを低く抑えることが可能となるため、大量生産に適している。
【0038】
本明細書等では、発光波長が異なる発光デバイス(発光素子ともいう。)で発光層を作り分ける構造を、SBS(Side By Side)構造と呼ぶ場合がある。SBS構造は、発光デバイスごとに材料及び構成を最適化することができるため、材料及び構成の選択の自由度が高まり、輝度の向上、及び、信頼性の向上を図ることが容易となる。
【0039】
本明細書等において、正孔又は電子を、「キャリア」といって示す場合がある。具体的には、正孔注入層又は電子注入層を「キャリア注入層」といい、正孔輸送層又は電子輸送層を「キャリア輸送層」といい、正孔ブロック層又は電子ブロック層を「キャリアブロック層」という場合がある。なお、上述のキャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層は、それぞれ、断面形状又は特性などによって明確に区別できない場合がある。また、1つの層が、キャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層のうち、2つ又は3つの機能を兼ねる場合がある。
【0040】
本明細書等において、発光デバイスは、一対の電極間にEL層を有する。EL層は、少なくとも発光層を有する。ここで、EL層が有する層(機能層ともいう。)として、発光層、キャリア注入層(正孔注入層及び電子注入層)、キャリア輸送層(正孔輸送層及び電子輸送層)、及びキャリアブロック層(正孔ブロック層及び電子ブロック層)などが挙げられる。本明細書等において、受光素子(受光デバイスともいう。)は、一対の電極間に少なくとも光電変換層として機能する活性層を有する。本明細書等では、一対の電極の一方を画素電極と記し、他方を共通電極と記すことがある。
【0041】
本明細書等において、犠牲層(マスク層と呼称してもよい。)とは、少なくとも、発光層(より具体的には、EL層を構成する層のうち、島状に加工される層)の上方に位置し、製造工程中において、当該発光層を保護する機能を有する。
【0042】
本明細書等において、島状とは、同一工程で形成された同一材料を用いた2以上の層が、物理的に分離されている状態であることを示す。
【0043】
本明細書等において、「高さが概略一致」とは、断面視において、基準となる面(例えば、基板表面などの平坦な面)からの高さが概略等しい構成を示す。また、本明細書等において「概略一致」には、完全に一致している場合と、概略一致している場合のいずれも含むものとする。
【0044】
本明細書等において、段切れとは、層、膜、又は電極が、被形成面の形状(例えば、段差など)に起因して分断される現象を示す。
【0045】
本明細書等において、垂直とは、2つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、概略垂直とは、2つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0046】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の構成例について説明する。
【0047】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタと、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、材料層と、を有する。トランジスタは、第1の絶縁層上に設けられる。トランジスタが有するソース電極及びドレイン電極は、第1の絶縁層の上面に接して設けられる。第2の絶縁層は、トランジスタのソース電極上及びドレイン電極上、並びに、第1の絶縁層上に設けられる。
【0048】
第2の絶縁層は、トランジスタと重なる領域に開口を有する。当該開口内において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の少なくとも一部が露出する。また、第1の絶縁層は、当該開口と重なる領域に凹部を有する。当該凹部内において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の少なくとも一部(より具体的には、下面の一部)が露出する。
【0049】
第2の絶縁層が有する開口の側面に接して、トランジスタの半導体層が設けられる。当該半導体層は、開口内において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極と接する領域を有する。
【0050】
また、第1の絶縁層が有する凹部の底面上には、材料層が設けられる。当該材料層は、トランジスタの半導体層と同じ材料からなる層である。したがって、トランジスタが有する半導体層のことを「第1の半導体層」と呼称し、材料層のことを「第2の半導体層」と呼称してもよい。なお、半導体層と、材料層と、は互いに分離して設けられる。すなわち、半導体層と、材料層と、は電気的に絶縁している。半導体層(第1の半導体層)は、トランジスタの一部に該当する層であるが、材料層(第2の半導体層)は、トランジスタの一部に該当しない層である。
【0051】
したがって、本発明の一態様の半導体装置では、第2の絶縁層が有する開口内に接する半導体層のうち、ソース電極とドレイン電極の間に位置する領域が、トランジスタのチャネル形成領域として機能し得る。また、この場合、当該領域に沿ったソース電極-ドレイン電極間の距離がトランジスタのチャネル長に相当し、当該領域の深さ(高さ)がトランジスタのチャネル幅に相当する。したがって、第2の絶縁層の膜厚を調整することによって、トランジスタのチャネル幅の大きさが変わることになるため、トランジスタのオン電流の大きさを調整することができる。
【0052】
例えば、第2の絶縁層の膜厚が薄いほど、トランジスタのチャネル幅が小さくなり、トランジスタのチャネル長の大きさに対するチャネル幅の大きさの比を小さくすることができる。これにより、トランジスタのオン電流を小さくすることができる。逆に、第2の絶縁層の膜厚が厚いほど、トランジスタのチャネル幅の大きさが大きくなるため、トランジスタのチャネル長の大きさに対するチャネル幅の大きさの比を大きくすることができる。これにより、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0053】
上述のように、本発明の一態様の半導体装置では、平面視にて、第1の絶縁層が有する凹部内、及び、第2の絶縁層が有する開口内において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一部が露出する構成を有する。したがって、半導体層となる膜を当該開口内、及び、当該凹部内に成膜する際に、露出したソース電極及びドレイン電極の端部において、半導体層となる膜が段切れを起こす。その結果、当該開口の側面に接する半導体層と、当該凹部の底面に接する材料層と、を同時かつ自己整合的に形成することができる。そのため、半導体層となる膜の成膜を行った後に、別途、当該膜を半導体層に加工する処理が不要となり、半導体装置作製における全体の工程数を削減することができる。
【0054】
また、基板面内で複数の半導体装置を作製する場合、半導体装置ごとに、第2の絶縁層が有する開口の側面と基板面とのなす角にばらつきが生じる場合がある。例えば、基板面内のある半導体装置においては、当該角が概略90度であるのに対し、別の半導体装置においては、当該角がテーパ角である場合がある。このような場合、第2の絶縁層が有する開口の側面に接する半導体層を形成する処理(例えば、半導体層となる膜を成膜した後に行う異方性エッチング処理等)後に、半導体装置によっては、うまく半導体層を形成できない不具合を誘発する恐れがある。一方、本発明の一態様の半導体装置が有する構成であれば、半導体装置間で当該角にばらつきがあったとしても、各半導体装置の半導体層を精度良く形成することができる。したがって、歩留まりの高い半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0055】
第2の絶縁層が有する開口内、及び、第1の絶縁層が有する凹部内において、トランジスタの半導体層の側面、及び、材料層の上面に接して、トランジスタのゲート絶縁層が設けられる。
【0056】
当該ゲート絶縁層の上面に接して、平面視にて、第2の絶縁層が有する開口と重なる領域を有するように、トランジスタのゲート電極が設けられる。当該ゲート電極は、開口内において、ゲート絶縁層を介して、半導体層と対向する領域を有するように設けられる。
【0057】
以下では、本発明の一態様の半導体装置の構成例(主に、半導体装置が有するトランジスタの構成例)について、図面を用いて説明する。
【0058】
<構成例1>
図1(A)に、本発明の一態様の半導体装置が有するトランジスタ20の斜視概略図を示す。
図1(B)に、トランジスタ20の平面概略図(上面概略図ともいう。)を示す。
図1(A)中に示す一点鎖線A-Bにおける断面概略図を、
図2(A)に示す。
図1(A)中に示す一点鎖線C-Dにおける断面概略図を、
図2(B)に示す。なお、
図1(A)及び
図1(B)では、一部の構成要素(導電層23、絶縁層22、材料層21mなど)を省略している。また、
図1(A)では、絶縁層32を透過させて、導電層24a及び導電層24bを表示している。
【0059】
トランジスタ20は、絶縁層31上に設けられる。トランジスタ20は、半導体層21、絶縁層22、導電層23、導電層24a、及び導電層24bを有する。
【0060】
トランジスタ20において、半導体層21は、チャネル形成領域を有する半導体層として機能する。絶縁層22は、ゲート絶縁層(第1のゲート絶縁層)として機能する。導電層23は、ゲート電極(第1のゲート電極)として機能する。導電層24aは、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能する。導電層24bは、ソース電極又はドレイン電極の他方として機能する。
【0061】
絶縁層31上には、導電層24a及び導電層24bが、それぞれ設けられる。さらに、絶縁層31上には、絶縁層32が設けられる。絶縁層31及び絶縁層32には、平面視にて、導電層24a及び導電層24bの少なくとも一部と重なる領域を有するように、凹部30が設けられる。言い換えると、導電層24aの一部、及び、導電層24bの一部が、凹部30の側壁(凹部30の側面、又は、凹部30における絶縁層32の側面を指す場合もある。)から突出するように設けられる。凹部30は、絶縁層32を貫通し、絶縁層31の膜中に底面を有する。すなわち、凹部30の底面は、導電層24a及び導電層24bの下面よりも下側(基板面側)に位置する。絶縁層32に形成された開口と、当該開口と重なる位置に形成された絶縁層31上の凹部と、を合わせて、凹部30ということもできる。
【0062】
半導体層21は、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、凹部30の周(凹部30の側面ということもできる。)に沿って、設けられている。ここで、平面視において導電層24a及び導電層24bと重なる領域においては、
図2(A)に示すように、半導体層21は、凹部30内における絶縁層32の側面、凹部30内における導電層24aの上面及び側面、並びに、凹部30内における導電層24bの上面及び側面と接する領域を有する。また、平面視において導電層24a及び導電層24bと重ならない領域においては、
図2(B)に示すように、半導体層21は、凹部30内における絶縁層32の側面と接する領域を有する。
【0063】
凹部30の底面上には、材料層21mが設けられる。材料層21mは、半導体層21と同じ材料からなる層である。本発明の一態様の半導体装置では、
図2(A)に示すように、凹部30内において、導電層24aの端部、及び、導電層24bの端部が、突出している。すなわち、絶縁層32に形成された開口の側壁、及び、絶縁層31に形成された凹部の側壁よりも、導電層24aの端部、及び、導電層24bの端部の方が、凹部30の内側に位置した構成を有する。したがって、半導体層21及び材料層21mとなる膜を凹部30内に成膜する際、当該膜が、導電層24a及び導電層24bの露出した端部で段切れを起こす。その結果、凹部30内における絶縁層32の側面、並びに、凹部30内における導電層24a及び導電層24bの上面及び側面に接する半導体層21と、凹部30の底面に接する材料層21mと、がそれぞれ分離して形成される。
【0064】
また、
図2(B)に示すように、凹部30内において、導電層24a及び導電層24bと重ならない領域においては、絶縁層32に形成された開口の側壁よりも、絶縁層31に形成された凹部の側壁の方が、外側に位置した構成を有する。したがって、当該領域において、半導体層21及び材料層21mとなる膜を凹部30内に成膜する際には、当該膜が、絶縁層32に形成された開口の下端部で段切れを起こす。その結果、凹部30内における絶縁層32の側面に接する半導体層21と、凹部30の底面に接する材料層21mと、がそれぞれ分離して形成される。
【0065】
すなわち、本発明の一態様では、一度の成膜工程を行うだけで、2つの島状の層(半導体層21及び材料層21m)を、自己整合的に同時形成することができる。
【0066】
絶縁層22は、凹部30内において、半導体層21及び材料層21mの上面に接して設けられる。また、凹部30は、YZ面における断面(
図2(A))においては、導電層24a又は導電層24bと、絶縁層22と、で塞がれ、XZ面における断面(
図2(B))においては、絶縁層22で塞がれた、空洞27を有する。
【0067】
なお、本発明の一態様の半導体装置の構成は、この限りではない。本発明の一態様の半導体装置は、凹部30が空洞27を有さない構成であってもよい。すなわち、YZ面における断面においては、絶縁層22の下面が、凹部30内における絶縁層31の上面と、凹部30内における導電層24a及び導電層24bの下面と、に接し、XZ面における断面においては、凹部30内における絶縁層31の上面と、凹部30内における絶縁層32の下面と、に接する構成であってもよい。
【0068】
また、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、絶縁層22は、凹部30内において、段切れした半導体層21と材料層21mとの間を埋めるように設けられている。これにより、半導体層21と、材料層21mと、が電気的に導通することを防ぎ、ソース電極-ドレイン電極間において、材料層21mが電流パスとなることを抑制することができるため、好ましい。なお、半導体層21と、材料層21mと、の間の電気的な絶縁状態を維持することができるのであれば、上記の限りではない。例えば、絶縁層22が、凹部30内で段切れし、半導体層21を覆う部分と、材料層21mを覆う部分と、に分断された領域を有していてもよい。
【0069】
導電層23は、平面視にて、凹部30と重なる領域を有するように、絶縁層22上に設けられる。また、導電層23は、凹部30内において、絶縁層22を介して、半導体層21と対向する領域を有するように設けられる。
【0070】
なお、
図2(A)及び
図2(B)では、導電層23が、凹部30内において、絶縁層22の上面を完全に覆う構成を有しているが、この限りではない。例えば、導電層23が、凹部30内で段切れし、半導体層21を覆う部分と、材料層21mを覆う部分と、に分断された領域を有していてもよい。
【0071】
また、半導体層21と、材料層21mと、の間の電気的な絶縁状態を維持することができるのであれば、絶縁層22と導電層23の双方が、凹部30内で段切れし、それぞれ、半導体層21を覆う部分と、材料層21mを覆う部分と、に分断された領域を有していてもよい。
【0072】
また、凹部30内において、絶縁層22が段切れしている場合、当該段切れ箇所にて、半導体層21と、導電層23と、が互いに接触してしまう恐れがある。この場合、トランジスタ20は、正常なトランジスタ動作を行うことができなくなってしまう。したがって、絶縁層22が段切れしている場合であっても、半導体層21と導電層23とは、少なくとも、互いに接触しない状態(好ましくは、電気的に絶縁された状態)を維持していることが求められる。
【0073】
ここで、トランジスタ20におけるチャネル長は、凹部30の側壁に設けられた半導体層21の周長方向における、導電層24aと、導電層24bと、の距離に相当する。ここで、
図1(B)に示すように、凹部30の側壁全体にわたって、環状の半導体層21が設けられているため、半導体層21における導電層24aと導電層24bとをつなぐ経路が2つ存在し、そのうち一方の長さをチャネル長L1、他方の長さをチャネル長L2とすることができる。導電層24aと、導電層24bと、を平面視における凹部30の中心に対して、対称に配置することで、チャネル長L1と、チャネル長L2と、を等しくすることができる。例えば、
図1(B)に示すように、凹部30の上面形状を略円形状(角の丸い正方形状ということもできる。)とし、その両端に導電層24a及び導電層24bを設けることで、チャネル長L1と、チャネル長L2と、を比較的容易に等しくすることができる。
【0074】
一方、トランジスタ20におけるチャネル幅(チャネル幅として機能し得る領域の幅)Wは、平面視において導電層24a及び導電層24bと重なる領域においては、凹部30の深さ方向に沿った半導体層21の幅(長さ)に相当する。また、
図1(B)に示すように、チャネル長L1とチャネル長L2が等しい又は概略等しい場合、両方の経路がチャネル形成領域として機能するため、トランジスタ20の実質的なチャネル幅が、チャネル幅Wの2倍になる場合がある。
【0075】
チャネル幅Wは、絶縁層32の厚さ(及び、導電層24a及び導電層24bの厚さ)によって制御することができるため、極めてチャネル幅の短いトランジスタを実現することができる。例えば、量産用の露光装置では実現できなかった、極めて小さいチャネル幅のトランジスタを実現することができる。また、最先端のLSI技術で用いられる極めて高額な露光装置を用いることなく、チャネル幅が10nm未満のトランジスタを実現することもできる。
【0076】
このような構成とすることで、トランジスタのチャネル幅Wを、絶縁層32の厚さによって精密に制御することができるため、チャネル幅Wのばらつきを極めて小さくすることができる。さらに、チャネル幅Wが極めて小さいトランジスタを実現することができる。
【0077】
ここで、トランジスタの特性を示す指標として、チャネル長Lに対するチャネル幅Wの比(W/L比)を用いる場合がある。プレーナ型のトランジスタでは、チャネル長及びチャネル幅の最小値は露光装置の露光限界に依存するため、W/L比を小さくしたい場合には、Lを大きくする必要があり、トランジスタの占有面積が増大する問題があった。しかしながら本発明の一態様のトランジスタは、チャネル幅Wを露光装置の露光限界よりも小さくすることができるため、トランジスタの占有面積を増大させることなく、W/L比の極めて小さいトランジスタを実現することができる。
【0078】
ここでは、凹部30の上面形状(輪郭形状、平面形状、平面視における形状ともいう。)を角の丸い正方形形状としたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図3(A)に示すように、凹部30の上面形状を円形状にしてもよいし、
図3(B)に示すように、凹部30の上面形状を角の丸い長方形形状にしてもよい。
図3(B)に示すように、長方形状にすることで、チャネル長Lを伸長することができる。このとき、導電層24aと、導電層24bと、を平面視における凹部30の中心に対して、対称に配置することが好ましい。これに対して、
図1(B)又は
図3(A)に示すように、凹部30の上面形状を円形又は略円形とすることで、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。また、凹部30の形状が単純であることから、その形状ばらつきを小さくすることができ、トランジスタの電気特性のばらつきを抑制することができる。
【0079】
凹部30の上面形状は、上記に限られず、様々な形状とすることができる。例えば、楕円形、四角形などとすることができる。また、正三角形、正方形、正五角形をはじめとした正多角形、正多角形以外の多角形としてもよい。また、星形多角形などの、少なくとも1つの内角が180度を超える多角形である、凹多角形とすると、チャネル長Lを大きくすることができる。その他、楕円形、角の丸い多角形、直線と曲線とを組み合わせた閉曲線などとすることができる。例えば、凹部30の上面形状が複雑であるほど、チャネル長Lを大きくすることができる。
【0080】
また、上記においては、凹部30の側壁全体にわたって、環状の半導体層21を設ける構成について示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図3(C)に示すように、凹部30の側壁に沿って形成された半導体層21が、一部が除去された形状であってよい。例えば、
図3(B)では、半導体層21の上面形状が、閉じた曲線状を有しているのに対して、
図3(C)では、半導体層21の上面形状が、開いた曲線状を有している。
図3(C)に示すように、半導体層21の端部近傍に、導電層24aと導電層24bをそれぞれ設ける構造にすることで、半導体層21全体を1つのチャネル形成領域にすることができる。よって、
図3(C)に示す半導体層21におけるチャネル形成領域のチャネル長を、
図3(B)に示す半導体層21における2つのチャネル形成領域が有するそれぞれのチャネル用よりも、長くすることができる。
【0081】
また、
図4(A)は、導電層24aと、導電層24bと、が隣り合って設けられる例を示している。このような構成とすることで、凹部30の側壁の大部分に半導体層21を設けることができる。よって、トランジスタのチャネル長Lを凹部30の周長に近づけることができ、チャネル長Lの長いトランジスタを実現することができる。例えば、凹部30の周長のうち、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上をチャネル長Lとすることが望ましい。
【0082】
また、上記においては、1つの凹部30に、1つのトランジスタを配置する構成について示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図4(B)に示すように、1つの凹部30に、2つのトランジスタを配置する構成にしてもよい。ここでは、凹部30の側壁に沿って、半導体層21aと、半導体層21bと、が接することなく設けられている。これにより、半導体層21aを有するトランジスタ20aと、半導体層21bを有するトランジスタ20bとが、1つの凹部30を共有するように設けられている。トランジスタ20aと、トランジスタ20bと、はチャネル幅Wが等しいトランジスタとなる。なお、トランジスタ20aと、トランジスタ20bと、はチャネル長Lが異なっていてもよい。なお、ここでは、1つの凹部30に2つのトランジスタを設ける例を示したが、3つ以上のトランジスタを設けてもよい。
【0083】
<構成例2>
構成例1とは異なる構成例を、
図5(A)及び
図5(B)に示す。
図5(A)は、トランジスタ20Aの平面概略図である。
図5(B)は、
図5(A)に示す一点鎖線A-Bにおける断面概略図である。なお、
図5(A)では、一部の構成要素(導電層23、絶縁層22、材料層21mなど)を省略している。
【0084】
図5(A)に示すように、トランジスタ20Aは、凹部30が延伸部と屈曲部を有する上面形状である点で、構成例1に示すトランジスタ20と主に相違している。ここで、延伸部と屈曲部を組み合わせて形成された凹部30の上面形状を、蛇行形状、迂曲形状、曲折形状、又はミアンダ形状と呼ぶことができる。
【0085】
図5(A)に示すように、凹部30は、延伸部26a、延伸部26b、延伸部26c、屈曲部28a、及び屈曲部28bを有する。凹部30の上面形状は、延伸部26aと延伸部26bが、屈曲部28aを介して接続され、延伸部26bと延伸部26cが、屈曲部28bを介して接続された形状とみなすことができる。
【0086】
図5(A)及び
図5(B)に示すように、半導体層21は、凹部30における絶縁層32の側面に沿って設けられている。さらに、半導体層21は、導電層24aと接する領域、及び、導電層24bと接する領域を有する。また、凹部30内において、半導体層21は、絶縁層22を介して、導電層23と対向して設けられている。
【0087】
図5(A)等では、半導体層21が、延伸部26aにおいて導電層24aに接し、延伸部26cにおいて導電層24bに接する例を示している。なお、半導体層21が、屈曲部において導電層24a又は導電層24bと接する構成としてもよい。例えば、半導体層21が、屈曲部28aにおいて導電層24aに接し、屈曲部28bにおいて導電層24bに接する構成としてもよい。
【0088】
2個の延伸部を1個の屈曲部で接続することで、凹部30に折り返し構造を形成することができる。このような折り返し形状を1個又は複数個形成することにより、凹部30の周長を、導電層24aと導電層24bとの間の距離より、はるかに大きくすることができる。よって、トランジスタの占有面積を増大させることなく、チャネル長Lを大きくすることができる。チャネル長Lを大きくすることにより、飽和性の高いトランジスタとすることができる。また、チャネル長Lに対するチャネル幅Wの比(W/L比)の極めて小さいトランジスタを実現することができる。
【0089】
なお、本明細書等において、トランジスタのドレイン電流(Id)-ドレイン電圧(Vd)特性における、飽和領域の電流の変化が小さいことを、「飽和性が高い」と表現する場合がある。
【0090】
凹部30の側壁の一部に半導体層21が設けられない構成例を、
図6(A)に示す。
図6(A)は、当該構成例の平面概略図である。
【0091】
図6(A)では、導電層24aと、導電層24bと、が隣り合って設けられ、さらに、導電層24aと導電層24bの間において、凹部30の側壁に半導体層21が設けられない構成例を示している。このような構成とすることで、トランジスタのチャネル長Lを凹部30の周長に近づけることができ、チャネル長Lを長くすることができる。
【0092】
図6(A)等では、凹部30が、延伸部26a、延伸部26b、延伸部26c、屈曲部28a、及び屈曲部28bを有する構成について示したが、本発明はこれに限られるものではない。凹部30は、複数の延伸部と、少なくとも一の屈曲部を有していればよい。ここで、屈曲部の個数は、延伸部より1個少ないことが好ましい。例えば、
図6(B)に示すように、凹部30が、2個の延伸部と、1個の屈曲部を有する構成にしてもよい。また、例えば、凹部30が、4個以上の延伸部と、3個以上の屈曲部を有する構成にしてもよい。なお、
図6(C)に示すように、凹部30の上面形状をロール状としてもよい。
【0093】
図6(A)等では、半導体層21が、延伸部26aにおいて、導電層24a及び導電層24bに接する例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。半導体層21が、屈曲部において、導電層24a及び導電層24bと接する構成としてもよい。又は、半導体層21が、屈曲部において、導電層24a及び導電層24bの一方と接し、延伸部において、導電層24a及び導電層24bの他方と接する構成としてもよい。
【0094】
なお、ここで示した半導体層21の構成は、他の構成例にも適用することができる。
【0095】
なお、
図5(A)等では、凹部30の屈曲部の角を丸まった形状で示したが、本発明の一態様はこれに限られるものではなく、屈曲部の角を角張った形状にしてもよい。この場合、凹部30の上面形状を、ジグザグ形状と呼ぶこともできる。
【0096】
なお、ここで示した凹部30の構成は、他の構成例にも適用することができる。
【0097】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0098】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置のより詳細な構成について、
図7(A)乃至
図12(B)を用いて説明する。
【0099】
なお、トランジスタ20を有する半導体装置に関して前述した内容については、後述する半導体装置に対しても適用できるものとする。また、後述する半導体装置で説明する内容については、前述のトランジスタ20を有する半導体装置にも適用できるものとする。
【0100】
図7(A)に、本発明の一態様の半導体装置10の平面図(上面図ともいう。)を示す。
図7(A)に示す一点鎖線A1-A2における断面図を、
図7(B)に示す。また、
図7(A)に示す一点鎖線B1-B2における断面図を、
図7(C)に示す。ここで、一点鎖線B1-B2は、一点鎖線A1-A2に対して直交している。なお、
図7(A)では、半導体装置10の構成要素の一部(絶縁層等)を省略している。半導体装置の平面図については、以降の図面においても
図7(A)と同様に、構成要素の一部を省略する。
【0101】
半導体装置10は、トランジスタ100と、トランジスタ200と、絶縁層110と、絶縁層102と、を有する。なお、絶縁層102の下部に、下地膜となる絶縁層、又は、基板を設けてもよい。
【0102】
トランジスタ100と、トランジスタ200と、は異なる構造を有する。また、トランジスタ100及びトランジスタ200は、一部の工程を共通にして形成することができる。なお、半導体装置10を表示装置に適用する場合、画素の選択トランジスタにトランジスタ100を用い、駆動トランジスタにトランジスタ200を用いると好適である。より具体的には、駆動トランジスタは飽和性が高いことが好ましいため、チャネル長が長いトランジスタ200を好適に用いることができる。このように、本発明の一態様の半導体装置においては、同一基板上で、チャネル長の異なるトランジスタを、絶縁層の厚さ、及び、パターン形成により、自由に設計することができるといった優れた効果を奏する。
【0103】
トランジスタ200の構成について、説明する。ここでは、トランジスタ200に、前述のトランジスタ20の構成を適用した例を示している。
【0104】
トランジスタ200は、導電層204と、導電層212aと、導電層212bと、絶縁層106と、半導体層208と、を有する。トランジスタ200において、導電層204は、ゲート電極として機能し、絶縁層106の一部は、ゲート絶縁層として機能する。導電層212aは、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能し、導電層212bは、ソース電極又はドレイン電極の他方として機能する。トランジスタ200を構成する各層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。導電層204、導電層212a、導電層212b、絶縁層106、及び半導体層208は、それぞれ、前述の導電層23、導電層24a、導電層24b、絶縁層22、及び半導体層21に係る記載を参照することができる。
【0105】
絶縁層110及び絶縁層102は、凹部145を有する。絶縁層110、絶縁層102、及び凹部145は、それぞれ、前述の絶縁層32、絶縁層31、凹部30に係る記載を参照することができる。
【0106】
導電層212a及び導電層212bは、絶縁層102上に設けられる。ここで、凹部145は、平面視にて、導電層212a及び導電層212bの一部と重なるように絶縁層110に設けられた開口(開口145a)と、当該開口と重なる領域に設けられた絶縁層102の凹部(凹部145b)と、を合わせたものともいえる。したがって、導電層212aの側端部近傍、及び、導電層212bの側端部近傍は、凹部145の側壁(凹部145の側面、又は、凹部145における絶縁層110の側面を指す場合もある。)から突出している、ということもできる。
【0107】
導電層212aと導電層212bには、同じ材料を用いることができる。また、導電層212aと導電層212bは、同じ工程で形成することができる。例えば、導電層212a及び導電層212bとなる膜を形成し、当該膜を加工することにより、導電層212a及び導電層212bを形成することができる。
【0108】
図7(A)及び
図7(B)に示すように、平面視にて、導電層212a及び導電層212bと重なる領域においては、半導体層208は、凹部145内における絶縁層110の側面、導電層212aの上面の一部及び側面、並びに、導電層212bの上面の一部及び側面に接して設けられる。また、
図7(A)及び
図7(C)に示すように、平面視にて、導電層212a及び導電層212bと重ならない領域においては、半導体層208は、凹部145内における絶縁層110の側面に接して設けられる。
【0109】
図7(B)及び
図7(C)に示すように、凹部145の底面上には、材料層208mが設けられる。材料層208mは、前述の材料層21mに係る記載を参照することができる。材料層208mは、半導体層208と同じ材料からなる層である。半導体層208と材料層208mは、半導体層208及び材料層208mとなる膜を凹部145内に成膜する際、当該膜が、導電層212a及び導電層212bの露出した端部で段切れを起こすことによって、それぞれ分離して同時形成されたものである。
【0110】
このように、本発明の一態様では、半導体層となる膜の成膜を行うだけで、自己整合的に半導体層を形成することができる。そのため、半導体装置作製における全体の工程数を削減することができる。
【0111】
半導体層208の導電層212aと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、半導体層208の導電層212bと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。半導体層208において、ソース領域とドレイン領域との間に、チャネル形成領域が設けられる。
【0112】
絶縁層106は、凹部145を覆うように設けられる。ここで、凹部145内部に設けられる半導体層208及び材料層208mも絶縁層106に覆われる。絶縁層106は、半導体層208、材料層208m、導電層212a、導電層212b、及び絶縁層110上に設けられる。絶縁層106は、凹部145内における半導体層208の側面、凹部145内における材料層208mの上面、凹部145内における導電層212aの上面及び側面、凹部145内における導電層212bの上面及び側面、並びに、凹部145内における絶縁層110の側面と接する領域を有する。絶縁層106は、凹部145内における半導体層208の側面、凹部145内における材料層208mの上面、凹部145内における導電層212aの上面及び側面、凹部145内における導電層212bの上面及び側面、並びに、凹部145内における絶縁層110の側面の形状に沿った形状を有する。また、絶縁層106の少なくとも一部は、半導体層208と導電層204の間に設けられる。つまり、絶縁層106は、ゲート絶縁層として機能する。
【0113】
凹部145は、基板面に垂直な方向における断面視において、導電層212a又は導電層212bと、絶縁層106と、で塞がれた空洞227を有する。なお、凹部145は、空洞227を有さない構成であってもよい。空洞227は、前述の空洞27に係る記載を参照することができる。
【0114】
導電層204は、凹部145に重畳して、絶縁層106上に設けられ、絶縁層106の上面と接する領域を有する。導電層204は、絶縁層106を介して、半導体層208と対向する領域を有する。導電層204は、絶縁層106の上面の形状に沿った形状を有する。
【0115】
トランジスタ200では、半導体層208のうち、導電層212aと導電層212bの間に位置する領域の側面が、ソース-ドレイン間の電流経路(半導体層208のチャネル形成領域)となる。したがって、トランジスタ200では、基板面に対して、垂直方向又は概略垂直方向(縦方向又は概略縦方向)な面内が、ソース-ドレイン間の電流経路となり得る。また、同時に、トランジスタ200では、基板面に対して、平行方向又は概略平行方向(横方向又は概略横方向)にソース-ドレイン間電流が流れるということもできる。このように、トランジスタ200は、縦方向と、横方向と、の双方が、ソース-ドレイン間の電流経路として寄与する構成であるため、VLFET(Vertical Lateral Field Effect Transistor)ということができる。
【0116】
次に、トランジスタ100の構成について、説明する。
【0117】
トランジスタ100は、導電層104と、絶縁層106と、半導体層108と、導電層112aと、導電層112bと、を有する。トランジスタ100において、導電層104は、ゲート電極として機能し、絶縁層106の一部は、ゲート絶縁層として機能する。導電層112aは、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能し、導電層112bは、ソース電極又はドレイン電極の他方として機能する。トランジスタ100を構成する各層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0118】
絶縁層102上に、導電層112aが設けられ、導電層112a上に、絶縁層110が設けられる。絶縁層110は、導電層112aの上面及び側面を覆うように設けられる。絶縁層110は、導電層112aと重なる領域に、導電層112aに達する開口141を有する。開口141において、導電層112aが露出するともいえる。導電層112aには、導電層212a及び導電層212bと同じ材料を用いることができる。また、導電層112aは、導電層212a及び導電層212bと同じ工程で形成することができる。例えば、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bとなる膜を形成し、当該膜を加工することにより、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bを形成することができる。
【0119】
導電層112bは、導電層112aと重なる領域に、絶縁層110に埋め込まれるように設けられる。導電層112bの上面の高さは、絶縁層110の上面の高さと概略一致している。また、導電層112bは、導電層112aと重なる領域に開口143を有する。開口143は、開口141と重なる領域に設けられる。
【0120】
半導体層108は、開口141及び開口143を覆うように設けられる。半導体層108には、半導体層208と同じ材料を用いることができる。また、半導体層108は、半導体層208と同じ工程で形成することができる。例えば、半導体層108及び半導体層208となる膜を形成し、当該膜を加工することにより、半導体層108及び半導体層208を形成することができる。
【0121】
半導体層108は、導電層112bの側面、絶縁層110の側面、並びに、導電層112aの上面と接する領域を有する。半導体層108は、開口141及び開口143を介して、導電層112aと電気的に接続される。半導体層108は、導電層112bの側面、絶縁層110の側面、並びに、導電層112aの上面の形状に沿った形状を有する。
【0122】
半導体層108の導電層112aと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、導電層112bと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。半導体層108において、ソース領域と、ドレイン領域と、の間にチャネル形成領域が設けられる。
【0123】
絶縁層106は、開口141及び開口143を覆うように設けられる。絶縁層106は、半導体層108、導電層112b、及び絶縁層110上に設けられる。絶縁層106は、半導体層108の側面、導電層112bの上面及び側面、並びに、絶縁層110の上面と接する領域を有する。絶縁層106は、半導体層108の側面、導電層112bの上面及び側面、並びに、絶縁層110の上面の形状に沿った形状を有する。
【0124】
導電層104は、絶縁層106上に設けられ、絶縁層106の上面と接する領域を有する。導電層104は、絶縁層106を介して、半導体層108と重なる領域を有する。導電層104は、絶縁層106の上面の形状に沿った形状を有する。導電層104には、導電層204と同じ材料を用いることができる。また、導電層104は、導電層204と同じ工程で形成することができる。例えば、導電層104及び導電層204となる膜を形成し、当該膜を加工することにより、導電層104及び導電層204を形成することができる。
【0125】
トランジスタ100は、半導体層108よりも上方にゲート電極を有する、いわゆるトップゲート型のトランジスタである。さらに、半導体層108の下面(開口141の側壁及び底面、並びに、開口143の側壁と対向する側の面)がソース電極及びドレイン電極として機能する導電層112a及び導電層112bと接することから、TGBC(Top Gate Bottom Contact)型のトランジスタということができる。また、トランジスタ100は、基板面に対して、ソース電極とドレイン電極とが異なる高さに位置し、基板面に対して、垂直方向又は概略垂直方向にドレイン電流が流れる。トランジスタ100において、縦方向又は概略縦方向にドレイン電流が流れるということもできる。そのため、トランジスタ100は、縦チャネル型トランジスタ、又はVFET(Vertical Field Effect Transistor)ということができる。
【0126】
トランジスタ100は、導電層112aと導電層112bの間に設けられる絶縁層110の厚さでチャネル長を制御することができる。したがって、トランジスタの作製に用いる露光装置の限界解像度よりも小さなチャネル長を有するトランジスタを精度良く作製することができる。また、複数のトランジスタ100間の特性ばらつきを低減することもできる。よって、トランジスタ100を含む半導体装置の動作が安定し、信頼性を高めることができる。また、複数のトランジスタ100間の特性ばらつきが減ると、回路設計の自由度が高くなり、トランジスタ100を含む半導体装置の動作電圧を低くすることができる。そのため、当該半導体装置の消費電力を低くすることができる。
【0127】
また、トランジスタ100は、ソース電極、チャネル形成領域を有する層、及びドレイン電極を、重ねて設けることができるため、チャネル形成領域を有する層を平面状に配置した、いわゆるプレーナ型トランジスタと比較して、占有面積を大幅に縮小することができる。
【0128】
導電層112a、導電層112b、及び導電層104は、それぞれ、配線として機能することができ、トランジスタ100はこれらの配線が重なる領域に設けることができる。つまり、トランジスタ100及び配線を有する回路において、トランジスタ100及び配線の占有面積を縮小することができる。したがって、回路の占有面積を縮小することができ、半導体装置の小型化を図ることができる。
【0129】
トランジスタ100のソース電極及びドレイン電極として機能する導電層112a及び導電層112bは、異なる面上に設けられる。具体的には、導電層112aは、絶縁層102上に設けられ、導電層112bは、絶縁層110上に設けられ、絶縁層110は、導電層112aと導電層112bに挟持される。一方、トランジスタ200のソース電極及びドレイン電極として機能する導電層212a及び導電層212bは、同じ面上に設けられる。具体的には、導電層212a及び導電層212bは、絶縁層102上に設けられる。トランジスタ100のソース電極又はドレイン電極の一方は、トランジスタ200のソース電極及びドレイン電極と同じ面上に設けられ、トランジスタ100のソース電極又はドレイン電極の他方は、トランジスタ200のソース電極及びドレイン電極と異なる面上に設けられるともいえる。
【0130】
このように、本発明の一態様の半導体装置は、VLFET(例えば、前述のトランジスタ20、及びトランジスタ200等)だけでなく、VLFETと、VLFETとは異なる構造のトランジスタ(例えば、トランジスタ100等のVFET等)と、を組み合わせた構成を有することができる。これにより、それぞれのトランジスタの特長を活かした高い性能の半導体装置を実現することができる。
【0131】
例えば、大きいオン電流が求められるトランジスタには、トランジスタ100等のチャネル長の短いVFETを適用し、高い飽和性が求められるトランジスタには、トランジスタ200等のチャネル長の長いVLFETを適用することで、高い性能の半導体装置10を実現することができる。なお、後述するように、トランジスタ100と、トランジスタ200と、は一部の工程を共通にして、同じ基板上に形成することができる。そのため、半導体装置10のように、異なる構造のトランジスタ(VLFET及びVFET)を有する構成であっても、VLFETのみを有する構成の半導体装置と比べて、作製に要する工程数が大幅に増加することはない。
【0132】
なお、本発明の一態様の半導体装置は上記に限られず、前述のトランジスタ20を有する半導体装置のように、VLFETのみで構成されていてもよい。例えば、半導体装置10が、トランジスタ100(VFET)を含まず、複数のトランジスタ200(VLFET)のみを含む構成である場合、トランジスタ200ごとに凹部145の上面形状を異ならせることで、オン電流の大きさの異なる複数のトランジスタ200を有する半導体装置10を実現することができる。凹部145の上面形状の具体例については、先の実施の形態で説明した、トランジスタ20における凹部30の上面形状に係る記載を参照することができる。
【0133】
例えば、本発明の一態様の半導体装置を、表示装置の画素回路に適用する場合、画素回路の占有面積を縮小することができ、高精細の表示装置とすることができる。また、例えば、本発明の一態様の半導体装置を、表示装置の駆動回路(例えば、ゲート線駆動回路及びソース線駆動回路の一方又は双方)に適用する場合、駆動回路の占有面積を縮小することができ、狭額縁の表示装置とすることができる。
【0134】
トランジスタ100及びトランジスタ200を覆うように、絶縁層195が設けられる。絶縁層195は、トランジスタ100及びトランジスタ200の保護層として機能する。
【0135】
次に、トランジスタ100及びトランジスタ200の詳細な構成について、説明する。
【0136】
半導体層108及び半導体層208は、それぞれ、半導体特性を示す金属酸化物(酸化物半導体ともいう。)を有することが好ましい。
【0137】
半導体層108及び半導体層208に用いる金属酸化物のバンドギャップは、それぞれ、2.0eV以上が好ましく、2.5eV以上がより好ましい。
【0138】
酸化物半導体を用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと記す。)は、非晶質シリコンを用いたトランジスタと比較して、電界効果移動度が極めて高い。また、OSトランジスタは、オフ電流が著しく小さく、当該トランジスタと直列に接続された容量に蓄積した電荷を長期間にわたって保持することが可能である。また、OSトランジスタを適用することで、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0139】
なお、半導体層108及び半導体層208に用いる半導体材料の結晶性は、特に限定されず、非晶質半導体、単結晶半導体、又は単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、又は、一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体又は結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
【0140】
また、半導体層108及び半導体層208に用いる半導体材料は、特に限定されない。例えば、単体元素よりなる半導体、又は、化合物半導体を用いることができる。単体元素よりなる半導体として、例えば、シリコン、及びゲルマニウムが挙げられる。化合物半導体として、例えば、ヒ化ガリウム、及びシリコンゲルマニウムが挙げられる。その他、化合物半導体として、例えば、有機半導体、窒化物半導体、及び酸化物半導体(OS:Oxide Semiconductor)が挙げられる。なお、これらの半導体材料に、ドーパントとして不純物が含まれてもよい。
【0141】
例えば、半導体層108及び半導体層208には、それぞれ、シリコンを用いることもできる。シリコンとして、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、及び非晶質シリコンが挙げられる。多結晶シリコンとして、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly Silicon)が挙げられる。チャネル形成領域に非晶質シリコンを用いたトランジスタは、大型のガラス基板上に形成することができ、低コストで作製することができる。チャネル形成領域に多結晶シリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が高く、高速動作が可能である。また、チャネル形成領域に微結晶シリコンを用いたトランジスタは、非晶質シリコンを用いたトランジスタより電界効果移動度が高く、高速動作が可能である。
【0142】
絶縁層110は、1層以上の無機絶縁膜を有することが好ましい。無機絶縁膜に用いることができる材料として、例えば、酸化物、窒化物、酸化窒化物、及び窒化酸化物が挙げられる。酸化物として、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化セリウム、ガリウム亜鉛酸化物、及びハフニウムアルミネートが挙げられる。窒化物として、例えば、窒化シリコン、及び窒化アルミニウムが挙げられる。酸化窒化物として、例えば、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、酸化窒化ガリウム、酸化窒化イットリウム、及び酸化窒化ハフニウムが挙げられる。窒化酸化物として、例えば、窒化酸化シリコン、及び窒化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0143】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指す。窒化酸化物とは、その組成として酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0144】
トランジスタ200において、半導体層208の絶縁層110と接する領域は、チャネル形成領域として機能する。トランジスタ100において、半導体層108の絶縁層110と接する領域は、チャネル形成領域として機能する。半導体層108及び半導体層208に金属酸化物を用いる場合、半導体層108と絶縁層110との界面特性、及び、半導体層208と絶縁層110との界面特性を向上させるため、絶縁層110の半導体層108と接する領域の少なくとも一部、及び、絶縁層110の半導体層208と接する領域の少なくとも一部は、酸素を有することが好ましい。具体的には、絶縁層110における半導体層108のチャネル形成領域と接する領域、及び、絶縁層110における半導体層208のチャネル形成領域と接する領域は、酸素を有することが好ましい。絶縁層110における半導体層108のチャネル形成領域と接する領域、及び、絶縁層110における半導体層208のチャネル形成領域と接する領域に、酸化物及び酸化窒化物の一以上を好適に用いることができる。
【0145】
絶縁層110は、積層構造を有することが好ましい。
図7(B)等では、絶縁層110が、絶縁層110aと、絶縁層110a上の絶縁層110bと、絶縁層110b上の絶縁層110cと、を有する例を示している。
【0146】
図7(A)及び
図7(B)に示すトランジスタ200の拡大図を、
図8(A)及び
図8(B)に示す。また、
図7(A)及び
図7(B)に示すトランジスタ100の拡大図を、
図9(A)及び
図9(B)に示す。
【0147】
絶縁層110bは、酸素を有することが好ましく、前述の酸化物及び酸化窒化物のいずれか一つ又は複数を用いることが好ましい。具体的には、絶縁層110bには、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンの一方又は双方を好適に用いることができる。これにより、少なくとも半導体層208の絶縁層110bと接する領域、及び、半導体層108の絶縁層110bと接する領域は、それぞれ、チャネル形成領域として機能することができる。
【0148】
絶縁層110bには、加熱により酸素を放出する膜を用いるとより好ましい。トランジスタ200及びトランジスタ100の作製工程中にかかる熱により、絶縁層110bが酸素を放出することで、半導体層208及び半導体層108に酸素を供給することができる。絶縁層110bから、半導体層208及び半導体層108、特にチャネル形成領域に酸素を供給することで、チャネル形成領域中の酸素欠損(VO)が修復され、チャネル形成領域中の酸素欠損(VO)を低減することができる。したがって、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタ200及びトランジスタ100とすることができる。
【0149】
例えば、酸素を含む雰囲気における加熱処理、又は、酸素を含む雰囲気におけるプラズマ処理を行うことで、絶縁層110bに酸素を供給することができる。また、絶縁層110bの上面に、スパッタリング法により、酸素を含む雰囲気で酸化物膜を形成することで酸素を供給してもよい。その後、当該酸化物膜を除去してもよい。なお、後述する実施の形態3では、金属酸化物層137を形成することで、絶縁層110bに酸素を供給する例を示す。
【0150】
絶縁層110bは、スパッタリング法又はプラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法などの成膜方法で形成することが好ましい。特に、スパッタリング法を用い、成膜ガスに水素ガスを用いない方法で形成することで、水素の含有量の極めて少ない膜とすることができる。そのため、チャネル形成領域に水素が供給されることを抑制し、トランジスタ200及びトランジスタ100の電気特性の安定化を図ることができる。
【0151】
絶縁層110bにおいて、物質が拡散しやすいことが好ましい。絶縁層110bにおける物質の拡散係数が大きいことが好ましいともいえる。特に、絶縁層110bは、酸素が拡散しやすいことが好ましい。つまり、絶縁層110bにおける酸素の拡散係数が大きいことが好ましい。絶縁層110bに含まれる酸素は、絶縁層110b中を拡散し、絶縁層110bと半導体層108の界面を介して、半導体層108に供給されるとともに、絶縁層110bと半導体層208の界面を介して、半導体層208に供給される。
【0152】
ここで、半導体層108及び半導体層208に導電率の高い材料を用いることで、オン電流の大きいトランジスタ100及びトランジスタ200とすることができる。しかしながら、導電率の高い材料を用いると、トランジスタのチャネル形成領域に酸素欠損(VO)が形成されやすく、チャネル形成領域の酸素欠損(VO)が多くなると、トランジスタのしきい値電圧がシフトし、ゲート電圧が0V時に流れるドレイン電流(以下、カットオフ電流とも記す。)が大きくなってしまう場合がある。例えば、nチャネル型トランジスタでは、しきい値電圧がマイナス側にシフトすることで、カットオフ電流が大きくなってしまう場合がある。絶縁層110bを設けることにより、少なくとも半導体層108の絶縁層110bと接する領域、及び、半導体層208の絶縁層110bと接する領域、つまりトランジスタ100及びトランジスタ200のチャネル形成領域に酸素が供給され、チャネル形成領域の酸素欠損(VO)を低減することができる。これにより、しきい値電圧がシフトすることが抑制され、小さいカットオフ電流と、大きいオン電流と、を両立したトランジスタとすることができる。したがって、低い消費電力と、高い性能と、を両立した半導体装置とすることができる。
【0153】
トランジスタ100において、半導体層108の導電層112aと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、半導体層108の導電層112bと接する領域は、ソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。ソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、電気抵抗が低い領域である。ソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、キャリア濃度が高い領域、酸素欠陥密度が高い領域、ともいえる。
【0154】
絶縁層110aは、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bを覆うように、絶縁層102上に設けられる。絶縁層110aは、導電層112aの上面及び側面、導電層212aの上面及び側面、導電層212bの上面及び側面、並びに、絶縁層102の上面と接する領域を有する。絶縁層110bは、絶縁層110a上に設けられる。絶縁層110cは、導電層112bの下面(絶縁層102側の面)、及び、導電層112bの開口143とは反対側の側面を覆うように、絶縁層110b上に設けられる。導電層112bの上面の高さと、絶縁層110cの上面の高さと、は概略一致している。絶縁層110a及び絶縁層110cは、それぞれ、自身から放出される不純物(例えば、水素及び水)の量が少なく、かつ不純物が透過しにくいことが好ましい。これにより、絶縁層110a及び絶縁層110cに含まれる不純物が、チャネル形成領域に拡散することを抑制することができる。したがって、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタ100及びトランジスタ200を実現することができる。
【0155】
絶縁層110a及び絶縁層110cには、それぞれ、酸素が透過しにくい膜を用いることが好ましい。これにより、絶縁層110bに含まれる酸素が、絶縁層110aを介して、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bに拡散することを抑制することができる。同様に、絶縁層110bに含まれる酸素が、絶縁層110cを介して、導電層112bに拡散することを抑制することができる。これにより、導電層112a、導電層212a、及び導電層212b、及び導電層112bの電気抵抗が高くなることを抑制することができる。それとともに、絶縁層110bに含まれる酸素が絶縁層110a側及び絶縁層110c側に拡散することが抑制されるため、絶縁層110bから、トランジスタ100及びトランジスタ200のチャネル形成領域へ供給される酸素の量が増え、チャネル形成領域の酸素欠損(VO)、及び、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VOHと呼ぶ場合がある。)を低減することができる。
【0156】
絶縁層110a及び絶縁層110cのそれぞれに酸素が拡散しにくい膜を用いることより、絶縁層110bから、トランジスタ100及びトランジスタ200のチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。なお、絶縁層110a及び絶縁層110cの一方又は双方を設けない構成としてもよい。
【0157】
絶縁層110a及び絶縁層110cは、それぞれ、窒素を有することが好ましく、前述の窒化物及び窒化酸化物のいずれか一つ又は複数を用いることが好ましい。絶縁層110a及び絶縁層110cは、それぞれ、例えば、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを好適に用いることができる。又は、絶縁層110a及び絶縁層110cの一方又は双方に酸化物及び酸化窒化物のいずれか一つ又は複数を用いてもよい。絶縁層110a及び絶縁層110cには、それぞれ、例えば、酸化アルミニウムを好適に用いることができる。なお、絶縁層110aには、絶縁層110cと同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0158】
なお、本明細書等において、異なる材料とは、構成元素の一部又は全てが異なる材料、又は構成元素が同じで組成が異なる材料をいう。
【0159】
絶縁層110aの厚さT110aは、例えば、3nm以上1μm未満、5nm以上500nm以下、10nm以上400nm以下、20nm以上300nm以下、50nm以上200nm以下、又は70nm以上150nm以下、又は70nm以上120nm以下とすることができる。厚さT110aは、
図8(B)に示すように、トランジスタ200の断面視における絶縁層110aの被形成面(ここでは、導電層212aの上面、又は、導電層212bの上面)と、絶縁層110bの下面と、の最短距離とすることができる。また、
図9(B)に示すように、トランジスタ100の断面視における絶縁層110aの被形成面(ここでは、導電層112aの上面)と、絶縁層110bの下面と、の最短距離とすることができる。
【0160】
絶縁層110aの厚さT110aが厚いと、絶縁層110aから放出される不純物の量が多くなり、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域に拡散する不純物の量が多くなってしまう場合がある。一方、厚さT110aが薄いと、絶縁層110bに含まれる酸素が絶縁層110aを介して、導電層212a側、導電層212b側、及び導電層112a側に拡散し、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域に供給される酸素の量が減ってしまう場合がある。厚さT110aを前述の範囲とすることにより、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域の酸素欠損(VO)及びVOHを低減することができる。また、絶縁層110bに含まれる酸素によって、導電層212a、導電層212b、又は導電層112aが酸化され、導電層212a、導電層212b、又は導電層112aの電気抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0161】
絶縁層110cの厚さT110cは、例えば、3nm以上1μm以下、5nm以上500nm以下、10nm以上300nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下、20nm以上120nm以下、又は20nm以上100nm以下とすることができる。厚さT110cは、
図8(B)に示すように、トランジスタ200の断面視における絶縁層110cの被形成面(ここでは、絶縁層110bの上面)と、絶縁層106の下面と、の最短距離とすることができる。また、
図9(B)に示すように、トランジスタ100の断面視における絶縁層110cの被形成面(ここでは、絶縁層110bの上面)と、絶縁層106の下面と、の最短距離とすることができる。
【0162】
絶縁層110cの厚さT110cが厚いと、絶縁層110cから放出される不純物の量が多くなり、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域に拡散する不純物の量が多くなってしまう場合がある。一方、厚さT110cが薄いと、絶縁層110bに含まれる酸素が絶縁層110cを介して、絶縁層106側及び導電層112b側に拡散し、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域に供給される酸素の量が減ってしまう場合がある。厚さT110cを前述の範囲とすることにより、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域の酸素欠損(VO)及びVOHを低減することができる。また、絶縁層110bに含まれる酸素によって、導電層112bが酸化され、導電層112bの電気抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0163】
トランジスタ100において、半導体層108の絶縁層110aと接する領域、及び、半導体層108の絶縁層110cと接する領域の少なくとも1つは、チャネル形成領域と比較して、電気抵抗が低い領域(以下、低抵抗領域とも記す。)であってもよい。当該領域は、チャネル形成領域と比較して、キャリア濃度が高い領域、酸素欠陥密度が高い領域ともいえる。絶縁層110aに不純物(例えば、水又は水素)を放出する材料を用いることで、絶縁層110aと接する領域を低抵抗領域とすることができる。半導体層108は、導電層112aと接する領域(ソース領域又はドレイン領域の一方)と、チャネル形成領域と、の間に、低抵抗領域を有する構成とすることができる。同様に、絶縁層110cに不純物を放出する材料を用いることで、絶縁層110cと接する領域を低抵抗領域とすることができる。半導体層108は、導電層112bと接する領域(ソース領域又はドレイン領域の他方)と、チャネル形成領域と、の間に、低抵抗領域を有する構成とすることができる。低抵抗領域は、ドレイン電界を緩和するためのバッファ領域として機能することができる。なお、これらの低抵抗領域が、ソース領域又はドレイン領域として機能してもよい。
【0164】
ドレイン領域と、チャネル形成領域と、の間に低抵抗領域を設けることにより、ドレイン領域近傍に高い電界が生じにくくなり、ホットキャリアの発生を抑制し、トランジスタの劣化を抑制することができる。例えば、導電層112aがドレイン電極として機能し、導電層112bがソース電極として機能する場合、半導体層108の絶縁層110aと接する領域を低抵抗領域とすることにより、ドレイン領域近傍に高い電界が生じにくくなり、ホットキャリアの発生を抑制し、トランジスタの劣化を抑制することができる。導電層112aがソース電極として機能し、導電層112bがドレイン電極として機能する場合、半導体層108の絶縁層110cと接する領域を低抵抗領域とすることにより、ドレイン領域近傍に高い電界が生じにくくなり、ホットキャリアの発生を抑制し、トランジスタの劣化を抑制することができる。
【0165】
同様に、トランジスタ200において、半導体層208の絶縁層110aと接する領域は、チャネル形成領域と比較して、低抵抗領域であってもよい。当該領域は、チャネル形成領域と比較して、キャリア濃度が高い領域、酸素欠陥密度が高い領域ともいえる。絶縁層110aに不純物(例えば、水又は水素)を放出する材料を用いることで、絶縁層110aと接する領域を低抵抗領域とすることができる。半導体層208は、導電層212aと接する領域(ソース領域又はドレイン領域の一方)と、チャネル形成領域と、の間に、低抵抗領域を有する構成とすることができる。また、半導体層208は、導電層212bと接する領域(ソース領域又はドレイン領域の他方)と、チャネル形成領域と、の間に、低抵抗領域を有する構成とすることができる。低抵抗領域は、ドレイン電界を緩和するためのバッファ領域として機能することができる。なお、低抵抗領域が、ソース領域又はドレイン領域として機能してもよい。
【0166】
前述したように、絶縁層110a及び絶縁層110cから放出される不純物の量が多過ぎると、トランジスタ200及びトランジスタ100のチャネル形成領域に不純物が拡散してしまう恐れがある。したがって、絶縁層110a及び絶縁層110cに不純物を放出する材料を用いる場合であっても、放出される不純物の量は少ないことが好ましい。
【0167】
なお、絶縁層110は、少なくとも、絶縁層110bを有することが好ましい。例えば、絶縁層110a及び絶縁層110cの一方及び双方を有さない構成としてもよい。また、絶縁層110を2層、又は4層以上の積層構造としてもよく、単層構造としてもよい。
【0168】
凹部145、開口141、及び開口143の上面形状に限定はなく、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形(長方形、菱形、正方形を含む。)、五角形などの多角形、又は、これら多角形の角が丸い形状とすることができる。なお、多角形は、凹多角形(少なくとも、1つの内角が180度を超える多角形)及び凸多角形(全ての内角が180度以下である多角形)のどちらであってもよい。
図7(A)等に示すように、開口141及び開口143の上面形状は、それぞれ、円形であることが好ましい。開口の上面形状を円形とすることにより、開口を形成する際の加工精度を高めることができ、微細なサイズの開口を形成することができる。なお、本明細書等において、円形とは真円に限定されない。
【0169】
また、
図7(A)等では、凹部145の上面形状を、円形状としているが、本発明はこれに限られるものではなく、上述の通り、様々な形状をとることができる。
【0170】
本明細書等において、凹部145の上面形状とは、絶縁層110の凹部145側の上面端部の形状を指す。開口141の上面形状とは、絶縁層110の開口141側の上面端部の形状を指す。また、開口143の上面形状とは、導電層112bの開口143側の下面端部の形状を指す。
【0171】
図7(A)等に示すように、開口141の上面形状と、開口143の上面形状と、は互いに一致又は概略一致させることができる。このとき、
図7(B)等に示すように、導電層112bの開口143側の下面端部は、絶縁層110の開口141側の上面端部と一致又は概略一致することが好ましい。導電層112bの下面とは、絶縁層102側の面を指す。絶縁層110の上面とは、導電層112bの下面側の面を指す。この場合、開口141と、開口143と、を合わせて、1つの開口とみることもできる。
【0172】
なお、開口141の上面形状と、開口143の上面形状と、は互いに一致しなくてもよい。また、開口141と開口143の上面形状が円形であるとき、開口141と開口143は同心円状であってもよく、同心円状でなくてもよい。
【0173】
トランジスタ100のチャネル長及びチャネル幅について、
図9(A)及び
図9(B)を用いて説明する。
【0174】
図9(B)では、トランジスタ100のチャネル長L100を破線の両矢印で示している。トランジスタ100のチャネル長L100は、断面視における絶縁層110bの開口141側の側面の長さに相当する。つまり、チャネル長L100は、絶縁層110bの厚さT110b、及び、絶縁層110bの開口141側の側面と絶縁層110bの被形成面(ここでは、絶縁層110aの上面)とのなす角の角度θ110で決まる。したがって、チャネル長L100を露光装置の限界解像度よりも小さな値とすることができ、微細なサイズのトランジスタを実現することができる。具体的には、従来のフラットパネルディスプレイの量産用の露光装置(例えば、最小線幅2μm又は1.5μm程度)では実現できなかった、極めて小さいチャネル長のトランジスタを実現することができる。また、最先端のLSI技術で用いられる極めて高額な露光装置を用いることなく、チャネル長が10nm未満のトランジスタを実現することもできる。
【0175】
チャネル長L100は、例えば、5nm以上3μm未満、7nm以上2.5μm以下、10nm以上2μm以下、10nm以上1.5μm以下、10nm以上1.2μm以下、10nm以上1μm以下、10nm以上500nm以下、10nm以上300nm以下、10nm以上200nm以下、10nm以上100nm以下、10nm以上50nm以下、10nm以上30nm以下、又は10nm以上20nm以下とすることができる。例えば、チャネル長L100を、100nm以上1μm以下とすることもできる。
【0176】
チャネル長L100を小さくすることにより、トランジスタ100のオン電流を大きくすることができる。トランジスタ100を用いることにより、高速動作が可能な回路を作製することができる。さらには、回路の占有面積を縮小することが可能となる。したがって、半導体装置の小型化を図ることができる。例えば、本発明の一態様の半導体装置を大型の表示装置、又は、高精細な表示装置に適用する際、配線数が増加した場合においても、各配線における信号遅延を低減することができ、表示ムラを抑制することができる。また、回路の占有面積を縮小することができるため、表示装置の額縁を狭くすることができる。
【0177】
絶縁層110bの厚さT110b及び角度θ110を調整することにより、チャネル長L100を制御することができる。なお、
図9(B)では、絶縁層110bの厚さT110bを一点鎖線の両矢印で示している。
【0178】
絶縁層110bの厚さT110bは、例えば、5nm以上3μm未満、7nm以上2.5μm以下、10nm以上2μm以下、10nm以上1.5μm以下、10nm以上1.2μm以下、10nm以上1μm以下、10nm以上500nm以下、10nm以上300nm以下、10nm以上200nm以下、10nm以上100nm以下、10nm以上50nm以下、10nm以上30nm以下、又は10nm以上20nm以下とすることができる。
【0179】
なお、
図9(B)などでは、絶縁層110の開口141側の側面が垂直形状である例を示しているが、
図12(A)に示すトランジスタ100Aのように、絶縁層110の開口141側の側面をテーパ形状にすることもできる。絶縁層110の開口141側の側面をテーパ形状にする場合、角度θ110は、90度以下であることが好ましい。角度θ110を小さくすることにより、絶縁層110上に形成される層(例えば、半導体層108)の被覆性を高めることができる。また、角度θ110が小さいほど、チャネル長L100を大きくすることができ、角度θ110が大きいほど、チャネル長L100を小さくすることができる。
【0180】
角度θ110は、例えば、30度以上90度以下、35度以上85度以下、40度以上80度以下、45度以上80度以下、50度以上80度以下、55度以上80度以下、60度以上80度以下、65度以上80度以下、又は70度以上80度以下とすることができる。
【0181】
なお、
図9(B)等では、断面視において、絶縁層110の開口141側の側面の形状が直線である構成を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。断面視において、絶縁層110の開口141側の側面の形状は曲線であってもよく、また、側面の形状が、直線である領域と、曲線である領域と、の双方を有していてもよい。
【0182】
ここで、導電層112bは、開口141の内部に設けないことが好ましい。具体的には、導電層112bは、絶縁層110の開口141側の側面と接する領域を有さないことが好ましい。導電層112bを開口141の内側にも設ける場合、トランジスタ100のチャネル長L100が絶縁層110bの側面の長さより短くなり、チャネル長L100の制御が困難になってしまう場合がある。したがって、開口143の上面形状が開口141の上面形状と一致、又は、平面視において、開口143が開口141を包含することが好ましい。
【0183】
図9(A)及び
図9(B)では、開口141の幅D141を二点鎖線の両矢印で示している。
図9(A)では、開口141の上面形状が円形である例を示す。このとき、幅D141は当該円の直径に相当し、トランジスタ100のチャネル幅W100は、当該円の円周の長さとなる。すなわち、チャネル幅W100は、π×D141となる。このように、開口141の上面形状が円形であると、他の形状に比べて、チャネル幅W100の小さいトランジスタを実現することができる。
【0184】
開口141の幅D141は、深さ方向で変化する場合がある。開口141の幅D141として、例えば、断面視における絶縁層110b(又は絶縁層110)の最も高い位置の径、最も低い位置の径、及び、これらの中間点の位置の径の3つの平均値を用いることができる。又は、開口141の径として、例えば、断面視における絶縁層110b(又は絶縁層110)の最も高い位置の径、最も低い位置の径、又は、これらの中間点の位置の径の、いずれかの径を用いてもよい。
【0185】
フォトリソグラフィ法を用いて開口141を形成する場合、開口141の幅D141は、露光装置の限界解像度以上となる。幅D141は、例えば、200nm以上5μm未満、300nm以上4.5μm以下、400nm以上4μm以下、500nm以上3.5μm以下、500nm以上3μm以下、500nm以上2.5μm以下、500nm以上2μm以下、500nm以上1.5μm以下、又は500nm以上1μm以下とすることができる。
【0186】
なお、トランジスタ100のチャネル長L100を小さくする場合、絶縁層110a及び絶縁層110cは、それぞれ、自身から放出される水素の量がより少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層110a及び絶縁層110cに少量でも水素を放出する材料を用いる場合は、これらの厚さが薄いことが好ましい。例えば、チャネル長L100を100nm以下とする場合、絶縁層110aの厚さT110a及び絶縁層110cの厚さT110cは、それぞれ、1nm以上50nm以下、3nm以上40nm以下、5nm以上30nm以下、5nm以上20nm以下、5nm以上15nm以下、又は5nm以上10nm以下が好ましい。これにより、チャネル形成領域に拡散する不純物の量を少なくすることができ、チャネル長L100が短い場合においても、良好な電気特性を示し、かつ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0187】
なお、ここでは、半導体層108の絶縁層110bと接する領域がチャネル形成領域として機能する構成を例に挙げて説明したが、本発明の一態様はこれに限られない。半導体層108の絶縁層110aと接する領域も、チャネル形成領域として機能してもよい。同様に、絶縁層110cと接する領域も、チャネル形成領域として機能してもよい。
【0188】
図7(B)等では、トランジスタ100において、半導体層108、絶縁層106、及び導電層104が、開口141及び開口143を覆う例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。絶縁層110と、導電層112aと、によって段差が形成され、当該段差に沿って半導体層108、絶縁層106、及び導電層104が設けられる構成としてもよい。
【0189】
また、
図9(B)等では、トランジスタ100が、ゲート電極を1つだけ有する構成を示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図12(B)に示すトランジスタ100Bのように、バックゲート電極(第2のゲート電極ということもできる。)を有する構成であってもよい。
【0190】
トランジスタ100Bは、導電層112a上に導電層116を有する点、及び、絶縁層110が6層構造である点で、トランジスタ100と主に異なる。
【0191】
絶縁層110は、導電層112a上の絶縁層110aと、絶縁層110a上の絶縁層110b1と、絶縁層110b1上の絶縁層110d1と、絶縁層110d1及び導電層116上の絶縁層110d2と、絶縁層110d2上の絶縁層110b2と、絶縁層110b2上の絶縁層110cと、を有する。
【0192】
導電層116は、トランジスタ100Bのバックゲート電極として機能する。導電層116は、絶縁層110b1上に位置することが好ましい。導電層112a、導電層112bと、導電層116と、は絶縁層110d2、絶縁層110b2、絶縁層110cによって互いに電気的に絶縁されている。導電層116には開口が設けられていることが好ましく、当該開口の内側に、開口141が設けられることが好ましい。絶縁層110の一部は、トランジスタ100Bのバックゲート絶縁層として機能する。
【0193】
よって、トランジスタ100Bにおいても、半導体層108には、絶縁層106を介して導電層104と対向する領域と、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)を介して導電層116と対向する領域と、が存在する。言い換えると、半導体層108の少なくとも一部は、開口141内において、導電層104と導電層116とに挟まれている。開口141内において、半導体層108の少なくとも一部と、導電層104と、の間には、絶縁層106が設けられている。また、半導体層108の少なくとも一部と、導電層116と、の間には、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)が設けられている。
【0194】
なお、導電層116は、導電層112a又は導電層112bと電気的に接続されていてもよい。例えば、絶縁層110a、絶縁層110b1、絶縁層110d1に設けられた開口を介して、導電層112aと、導電層116と、が接していてもよい。
【0195】
導電層116は、単層構造でもよく、2層以上の積層構造であってもよい。導電層116には、導電層112a、導電層112b、及び導電層104に用いることができる材料を適用することができる。
【0196】
絶縁層110d2は、導電層116の上面及び側面を覆う。絶縁層110d2は、導電層116の開口の一部を覆うように設けられる。絶縁層110d2は、当該開口を介して、絶縁層110d1と接することが好ましい。
【0197】
絶縁層110d1及び絶縁層110d2には、絶縁層110a、絶縁層110cと同様の構成を適用することが好ましい。具体的には、絶縁層110d1及び絶縁層110d2には、酸素が拡散しにくい膜を用いることが好ましい。また、絶縁層110d1及び絶縁層110d2には、水素が拡散しにくい膜を用いることが好ましい。このような絶縁層110d1及び絶縁層110d2を設けることで、導電層116が酸化するのを抑制することができる。また、導電層116中に含まれる水素が、半導体層108に拡散することを抑制することができる。
【0198】
なお、
図12(B)では、絶縁層110d1の厚さが場所によらず均一である例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、絶縁層110d1は、導電層116と重なる領域と、重ならない領域とで、厚さが異なる場合がある。例えば、導電層116となる膜の加工時に、絶縁層110d1の導電層116と重ならない領域は、一部が除去され、厚さが薄くなることがある。
【0199】
絶縁層110b2は、絶縁層110d2を介して、導電層116の上面及び側面を覆うことが好ましい。絶縁層110b2は、絶縁層110d2を介して、導電層116の開口の一部を覆うように設けられることが好ましい。
【0200】
絶縁層110b1及び絶縁層110b2には、それぞれ、絶縁層110bに適用可能な構成と同様の構成を適用することができる。具体的には、絶縁層110b1及び絶縁層110b2には、それぞれ、酸素を含む層を用いることが好ましく、絶縁層110a、絶縁層110c、絶縁層110d1、絶縁層110d2の少なくとも1つと比べて、酸素の含有量が多い領域を有することが好ましい。
【0201】
このような構成とすることで、絶縁層110の構成を、導電層116の上下で対称にすることができる。また、半導体層108に対して、絶縁層110b1、絶縁層110b2の2つの絶縁層から酸素を供給することができるため、トランジスタの特性向上を図ることができる。
【0202】
ただし、本発明は上記に限られるものではなく、例えば、絶縁層110b1を設けない構成にすることもできる。また、絶縁層110d1及び絶縁層110d2を設けない構成にすることもできる。
【0203】
トランジスタ100Bにおいて、半導体層108には、絶縁層106を介して導電層104と対向する領域と、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)を介して導電層116と対向する領域と、が存在する。言い換えると、半導体層108の少なくとも一部は、開口141内において、導電層104と導電層116とに挟まれている。開口141内において、半導体層108の少なくとも一部と、導電層104と、の間には、絶縁層106が設けられている。また、半導体層108の少なくとも一部と、導電層116と、の間には、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)が設けられている。ここで、絶縁層110の一部は、トランジスタ100Bのバックゲート絶縁層(第2のゲート絶縁層ということもできる。)として機能する。
【0204】
トランジスタ100Bは、バックゲート電極を有するため、半導体層108のバックゲート側(バックチャネルともいう。)の電位を固定することができる。したがって、トランジスタ100BのId-Vd特性における飽和性をより高めることができる。
【0205】
また、トランジスタ100Bは、バックゲート電極を有するため、半導体層108のバックチャネルの電位を固定することができ、しきい値電圧がシフトすることを抑制することができる。これにより、ノーマリーオフ特性のトランジスタを実現することができる。
【0206】
トランジスタ100Bは、導電層116、絶縁層110、半導体層108、絶縁層106、及び導電層104が、間に他の層を含まず、一方向にこの順で重なっている領域を有する。当該領域を広くすることで、ゲート電極(第1のゲート電極)からの電界と、バックゲート電極(第2のゲート電極)からの電界と、を半導体層108に対して、より効果的に印加することができる。
【0207】
なお、断面視において、絶縁層110の開口の左右で、導電層116と、半導体層108と、の間の最短距離(すなわち、バックゲート絶縁層の厚さ)が異なる場合がある。
【0208】
次に、トランジスタ200のチャネル長及びチャネル幅について、
図8(A)及び
図8(B)を用いて説明する。
【0209】
図8(A)では、トランジスタ200のチャネル長L200a及びチャネル長L200bを、実線の両矢印で示している。チャネル長L200a及びチャネル長L200bは、凹部145の側壁に設けられた半導体層208の周長方向に沿った、導電層212aと導電層212bの距離に相当する。
図8(A)に示すように、凹部145の側壁全体にわたって、環状の半導体層208が設けられているため、半導体層208における導電層212aと、導電層212bと、をつなぐ経路が2つ存在し、そのうち一方の長さをチャネル長L200a、他方の長さをチャネル長L200bとすることができる。チャネル長L200aとチャネル長L200bは、等しい又は概略等しいことが好ましい。この場合、導電層212aと導電層212bを、凹部145に対して、対称に配置することが好ましい。例えば、
図8(A)に示すように、円形の凹部145の両端に導電層212aと導電層212bを設けることで、チャネル長L200aとチャネル長L200bを等しくすることができる。このように、トランジスタ200のチャネル長L200a及びチャネル長L200bは、凹部145の上面形状及び大きさによって制御することができる。よって、チャネル長L200a及びチャネル長L200bは、チャネル長L100より大きくすることができる。
【0210】
また、
図8(B)では、トランジスタ200のチャネル幅W200を、破線の両矢印で示している。チャネル幅W200は、断面視における絶縁層110bの凹部145側の側面の長さに相当する。つまり、チャネル幅W200は、絶縁層110bの厚さT110b、及び、絶縁層110bの凹部145側の側面と絶縁層110bの被形成面(ここでは、絶縁層110aの上面)とのなす角の角度θ110で決まる。また、
図8(A)に示すように、チャネル長L200aとチャネル長L200bが等しい又は概略等しい場合には、両方の経路がチャネル形成領域として機能するため、トランジスタ200の実質的なチャネル幅が、チャネル幅W200の2倍になる場合がある。
【0211】
トランジスタ200のチャネル幅W200は、絶縁層110の厚さ(特に、絶縁層110bの厚さ)によって制御することができる。ここで、トランジスタ200と、トランジスタ100と、で絶縁層110は共通であるため、トランジスタ200のチャネル幅W200をフォトリソグラフィの露光限界以下の非常に微細な構造にすることができる。チャネル幅W200は、例えば、5nm以上3μm未満、7nm以上2.5μm以下、10nm以上2μm以下、10nm以上1.5μm以下、10nm以上1.2μm以下、10nm以上1μm以下、10nm以上500nm以下、10nm以上300nm以下、10nm以上200nm以下、10nm以上100nm以下、10nm以上50nm以下、10nm以上30nm以下、又は10nm以上20nm以下とすることができる。
【0212】
以上のように、トランジスタ200では、チャネル長L200a及びチャネル長L200bを大きくし、チャネル幅W200を小さくすることができる。これにより、トランジスタ200を、飽和性の高いトランジスタにすることができる。
【0213】
前述したように、トランジスタ100のチャネル長L100は、露光装置の限界解像度よりも小さな値とすることができる。一方、絶縁層110bの膜厚によって、チャネル長L100が規定されるため、同一面上に同一工程で複数のトランジスタ100を形成する場合、全てのトランジスタ100のチャネル長が同じになる。これに対して、トランジスタ200は、チャネル長L200a及びチャネル長L200bを、凹部145の上面形状及び大きさによって制御することができる。さらに、トランジスタ200は、トランジスタ100と一部の工程を共通にして形成することができる。よって、チャネル長が短いトランジスタ100と、よりチャネル長が長いトランジスタ200とを、生産性良く、同一面上に形成することができる。例えば、大きいオン電流が求められるトランジスタにトランジスタ100を適用し、高い飽和性が求められるトランジスタにトランジスタ200を適用することにより、それぞれのトランジスタの利点を生かした高い性能の半導体装置10を実現することができる。例えば、表示装置に半導体装置10を用いる場合、トランジスタ100を、スイッチとして機能する選択トランジスタに適用し、トランジスタ200を、発光素子に流れる電流を制御するための駆動トランジスタに適用することができる。
【0214】
上述のように、トランジスタ100とトランジスタ200を一部の工程を共通にして形成することができる。具体的には、半導体層108及び半導体層208は、同じ工程で形成することができる。絶縁層106の一部は、トランジスタ100のゲート絶縁層として機能し、絶縁層106の他の一部は、トランジスタ200のゲート絶縁層として機能する。導電層104及び導電層204は、同じ工程で形成することができる。導電層112a、導電層212a、及び導電層212bは、同じ工程で形成することができる。したがって、半導体装置10の生産性を高め、製造コストを低くすることができる。
【0215】
また、
図8(B)等において、半導体層208の上端部の高さ、及び、絶縁層110bの上面の高さは、一致又は概略一致する構成について示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図10(A)に示すトランジスタ200Aのように、半導体層208の上端部の高さが、絶縁層110bの上面の高さより低くなる構成にしてもよい。この場合、絶縁層106が、絶縁層110bの側面の一部に接する。
【0216】
また、
図8(B)等において、導電層212a及び導電層212bの凹部145側の側端部が、絶縁層110の側面よりも突出する構成について示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図10(B)に示すトランジスタ200Bのように、導電層212a及び導電層212bの凹部145側の側面が、絶縁層110の側面と、概略一致する構成であってもよい。当該構成の場合、半導体層208は、凹部145内における絶縁層110の側面と、凹部145内における導電層212aの側面と、凹部145内における導電層212bの側面と、に接する。例えば、凹部145の形成と、導電層212a及び導電層212bの形成と、を一括で行う作製方法を用いた場合に、トランジスタ200Bのような構成が実現する場合がある。この場合、導電層212a及び導電層212bの形成と、凹部145の形成と、を別々に行う場合に比べて、全体の工程数を削減することができるため、好ましい。
【0217】
また、トランジスタ200を、トランジスタ100と並行して形成する場合、絶縁層110bの凹部145内の側面と、絶縁層110bの被形成面(ここでは、絶縁層110aの上面)と、のなす角も、トランジスタ100と同様に、角度θ110に一致又は概略一致する場合がある。なお、
図8(B)などでは、絶縁層110の凹部145内の側面が、絶縁層110の被形成面に対して垂直形状又は概略垂直形状である例を示しているが、
図11(A)に示すトランジスタ200Cのように、絶縁層110の凹部145内の側面をテーパ形状にすることもできる。絶縁層110の凹部145内の側面が、絶縁層110の被形成面に対して垂直形状又は概略垂直形状である場合、トランジスタの微細化を図ることができるため好ましい。一方、絶縁層110の凹部145内の側面がテーパ形状を有する場合、凹部145上に成膜する膜の被覆性を高めることができるため好ましい。
【0218】
また、
図8(B)等では、トランジスタ200が、ゲート電極を1つだけ有する構成を示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図11(B)に示すトランジスタ200Dのように、バックゲート電極を有する構成であってもよい。
【0219】
トランジスタ200Dは、導電層212a及び導電層212b上に導電層216を有する点、及び、絶縁層110が6層構造である点で、トランジスタ200と主に異なる。
【0220】
ここで、導電層216は、上記導電層116と対応しており、導電層116の記載を参照することができる。つまり、導電層216は、トランジスタ200Dのバックゲート電極として機能する。また、絶縁層110は、
図12(B)に示す絶縁層110と同様の構成である。つまり、絶縁層110の一部は、トランジスタ200Dのバックゲート絶縁層として機能する。
【0221】
よって、トランジスタ200Dにおいても、半導体層208には、絶縁層106を介して導電層204と対向する領域と、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)を介して導電層116と対向する領域と、が存在する。言い換えると、半導体層208の少なくとも一部は、凹部145内において、導電層204と導電層216とに挟まれている。凹部145内において、半導体層208の少なくとも一部と、導電層204と、の間には、絶縁層106が設けられている。また、半導体層208の少なくとも一部と、導電層216と、の間には、絶縁層110の一部(特に、絶縁層110b2及び絶縁層110d2)が設けられている。
【0222】
トランジスタ200Dは、バックゲート電極を有するため、半導体層208のバックゲート側の電位を固定することができる。したがって、トランジスタ200DのId-Vd特性における飽和性をより高めることができる。
【0223】
また、トランジスタ200Dは、バックゲート電極を有するため、半導体層208のバックチャネルの電位を固定することができ、しきい値電圧がシフトすることを抑制することができる。これにより、ノーマリーオフ特性のトランジスタを実現することができる。
【0224】
以下では、本発明の一態様の半導体装置10に用いることができる材料について、詳細に説明する。
【0225】
[半導体層108、半導体層208]
半導体層108及び半導体層208に用いることができる金属酸化物について、具体的に説明する。金属酸化物として、例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、及び亜鉛酸化物が挙げられる。金属酸化物は、少なくとも、インジウム又は亜鉛を含むことが好ましい。また、金属酸化物は、インジウムと、元素Mと、亜鉛と、の中から選ばれる二又は三を有することが好ましい。なお、元素Mは、酸素との結合エネルギーが高い金属元素又は半金属元素であり、例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い金属元素又は半金属元素である。元素Mとして、具体的には、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンなどが挙げられる。金属酸化物が有する元素Mは、上記元素のいずれか一種又は複数種であることが好ましく、アルミニウム、ガリウム、スズ、及びイットリウムから選ばれた一種又は複数種であることがより好ましく、ガリウム及びスズの一種又は複数種がさらに好ましい。なお、本明細書等において、金属元素と半金属元素をまとめて「金属元素」と呼ぶことがあり、本明細書等に記載の「金属元素」には半金属元素が含まれることがある。
【0226】
半導体層108及び半導体層208には、それぞれ、例えば、インジウム酸化物(In酸化物)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物、ITOとも記す。)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムガリウム酸化物(In-Ga酸化物)、インジウムタングステン酸化物(In-W酸化物、IWOとも記す。)、インジウムガリウムアルミニウム酸化物(In-Ga-Al酸化物)、インジウムガリウムスズ酸化物(In-Ga-Sn酸化物)、ガリウム亜鉛酸化物(Ga-Zn酸化物、GZOとも記す。)、アルミニウム亜鉛酸化物(Al-Zn酸化物、AZOとも記す。)、インジウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Al-Zn酸化物、IAZOとも記す。)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物、ITZO(登録商標)とも記す。)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも記す。)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物、IGZTOとも記す。)、インジウムガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Ga-Al-Zn酸化物、IGAZO、IGZAO、又はIAGZOとも記す。)などを用いることができる。又は、シリコンを含むインジウムスズ酸化物(ITSOとも記す。)、ガリウムスズ酸化物(Ga-Sn酸化物)、アルミニウムスズ酸化物(Al-Sn酸化物)などを用いることができる。なお、インジウム酸化物などに代表されるZnを含まない材料は、Siプロセスとの親和性が高いため好適である。一方で、Znを含む材料は、結晶性を高めることができるため好適である。
【0227】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。また、オン電流が大きいトランジスタを実現することができる。
【0228】
なお、金属酸化物は、インジウムに代えて、又は、インジウムに加えて、周期の数が大きい金属元素の一種又は複数種を有してもよい。金属元素の軌道の重なりが大きいほど、金属酸化物におけるキャリア伝導は大きくなる傾向がある。よって、周期の数が大きい金属元素を有することで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。周期の数が大きい金属元素として、第5周期に属する金属元素、及び、第6周期に属する金属元素などが挙げられる。当該金属元素として、具体的には、イットリウム、ジルコニウム、銀、カドミウム、スズ、アンチモン、バリウム、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムなどが挙げられる。なお、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムは、軽希土類元素と呼ばれる。
【0229】
金属酸化物は、非金属元素の一種又は複数種を有してもよい。金属酸化物が非金属元素を有することで、キャリア濃度の増加、又は、バンドギャップの縮小などが生じ、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。非金属元素として、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素、及び水素などが挙げられる。
【0230】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する亜鉛の原子数の割合を高くすることにより、結晶性の高い金属酸化物となり、金属酸化物中の不純物の拡散を抑制することができる。したがって、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0231】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する元素Mの原子数の割合を高くすることにより、金属酸化物に酸素欠損(VO)が形成されることを抑制することができる。したがって、酸素欠損(VO)に起因するキャリア生成が抑制され、オフ電流が小さいトランジスタとすることができる。また、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0232】
半導体層108及び半導体層208に適用する金属酸化物の組成により、トランジスタの電気特性及び信頼性が異なる。したがって、トランジスタに求められる電気特性及び信頼性に応じて、金属酸化物の組成を異ならせることにより、優れた電気特性と高い信頼性を両立した半導体装置とすることができる。
【0233】
金属酸化物がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比は、Mの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=10:1:1、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=5:2:5、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=20:1:10、In:M:Zn=40:1:10、及び、これらの近傍の組成が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。金属酸化物中のインジウムの原子数比を大きくすることで、トランジスタのオン電流又は電界効果移動度などを高めることができる。
【0234】
In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比未満であってもよい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:3、In:M:Zn=1:3:4、及び、これらの近傍の組成が挙げられる。金属酸化物中のMの原子数の割合を大きくすることで、酸素欠損(VO)の生成を抑制することができる。
【0235】
なお、元素Mとして複数の金属元素を有する場合は、当該金属元素の原子数の割合の合計を、元素Mの原子数の割合とすることができる。
【0236】
本明細書等において、含有される全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を、インジウムの含有率と記す場合がある。他の金属元素においても同様である。
【0237】
半導体層108及び半導体層208にインジウムの含有率が高い材料を用いることで、トランジスタのオン電流又は電界効果移動度などを高めることができる。さらに、元素Mを有することで、酸素欠損(VO)の生成を抑制することができる。元素Mの含有率(含有される全ての金属元素の原子数の和に対する元素Mの原子数の割合)は、0.1%以上3%以下が好ましく、さらには0.1%以上2%以下が好ましい。これにより、電気特性が良好なトランジスタとすることができる。例えば、In:M:Zn=40:1:10、及び、その近傍の金属酸化物を用いることが好ましい。元素Mは、上記元素のいずれか一種又は複数種であることが好ましく、アルミニウム、ガリウム、スズ、及びイットリウムから選ばれた一種又は複数種であることがより好ましい。具体的には、In:Sn:Zn=40:1:10、及びその近傍の金属酸化物を好適に用いることができる。又は、In:Al:Zn=40:1:10、及び、その近傍の金属酸化物を好適に用いることができる。
【0238】
ここで、半導体層108及び半導体層208に多結晶構造の金属酸化物を用いると、結晶粒界が再結合中心となり、キャリアが捕獲されることにより、トランジスタのオン電流が小さくなってしまう場合がある。多結晶構造になりやすい組成の金属酸化物を用いる場合、結晶化を阻害する元素を含むことが好ましい。例えば、ITOと比較して、ITSOは多結晶構造になりづらいため、半導体層108及び半導体層208に好適に用いることができる。ITSOを用いる場合、シリコンの含有率(含有される全ての金属元素の原子数の和に対するシリコンの原子数の割合)は、1%以上20%以下が好ましく、さらには3%以上20%以下が好ましく、さらには3%以上15%以下が好ましく、さらには5%以上15%以下が好ましい。具体的には、In:Sn:Si=45:5:4、In:Sn:Si=95:5:8、及び、これらの近傍の金属酸化物を好適に用いることができる。
【0239】
半導体層108及び半導体層208の組成の分析には、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectrometry)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)、又は誘導結合高周波プラズマ発光分光法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いることができる。又は、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。なお、含有率が低い元素は、分析精度の影響により、実際の含有率と分析によって得られた含有率が異なる場合がある。例えば、元素Mの含有率が低い場合、分析によって得られた元素Mの含有率が、実際の含有率より低くなる場合がある。
【0240】
金属酸化物の形成には、スパッタリング法を好適に用いることができる。なお、金属酸化物をスパッタリング法で形成する場合、形成後の金属酸化物の組成はスパッタリングターゲットの組成と異なる場合がある。特に、亜鉛は、形成後の金属酸化物における含有率が、スパッタリングターゲットと比較して50%程度にまで減少する場合がある。
【0241】
半導体層108及び半導体層208は、それぞれ、2以上の金属酸化物層を有する積層構造としてもよい。半導体層108及び半導体層208のそれぞれが有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに同じ又は概略同じであってもよい。組成が同じ金属酸化物層の積層構造とすることで、例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて形成することができるため、製造コストを削減することができる。
【0242】
半導体層108及び半導体層208のそれぞれが有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに異なってもよい。例えば、In:M:Zn=1:3:4[原子数比]若しくはその近傍の組成の第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられるIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]若しくはその近傍の組成の第2の金属酸化物層と、の積層構造を好適に用いることができる。また、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、又はスズを用いることが特に好ましい。第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層における元素Mは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層は、互いに組成が異なるIGZO層であってもよい。
【0243】
例えば、In:Zn=4:1[原子数比]若しくはその近傍の組成の第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられるIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]若しくはその近傍の組成の第2の金属酸化物層と、の積層構造を好適に用いることができる。
【0244】
例えば、インジウム酸化物、インジウムガリウム酸化物、及びIGZOの中から選ばれるいずれか一と、IAZO、IAGZO、及びITZO(登録商標)の中から選ばれるいずれか一と、の積層構造を用いてもよい。
【0245】
なお、第1の金属酸化物を有する第1の金属酸化物層と、第2の金属酸化物を有する第2の金属酸化物層と、の積層構造とし、第1の金属酸化物の組成と、第2の金属酸化物の組成と、が同じ又は概略同じである場合、第1の金属酸化物層と、第2の金属酸化物層よ、の境界(界面)を明確に確認できない場合がある。
【0246】
半導体層108及び半導体層208には、結晶性を有する金属酸化物を用いることが好ましい。結晶性を有する金属酸化物の構造として、例えば、CAAC(C-Axis Aligned Crystal)構造、多結晶構造、及び微結晶(nc:nano-crystal)構造が挙げられる。結晶性を有する金属酸化物を用いることにより、半導体層108中及び半導体層208中の欠陥準位密度を低減することができ、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0247】
半導体層108及び半導体層208には、それぞれ、CAAC-OS又は又はnc-OSを用いることが好ましい。
【0248】
CAAC-OSは、複数の層状結晶を有する。当該結晶のc軸は、被形成面の法線方向に配向している。半導体層108及び半導体層208は、それぞれ、被形成面に対して平行又は概略平行な層状結晶を有することが好ましい。例えば、半導体層108は、開口143内の導電層112bの側面と接する領域において、当該側面に対して平行又は概略平行な層状結晶を有することが好ましい。特に、半導体層108は、開口141において、被形成面である絶縁層110の側面に対して平行又は概略平行な層状結晶を有することが好ましい。このような構成とすることにより、トランジスタ100のチャネル長方向に対して、半導体層108の層状結晶が概略平行に形成されるため、オン電流の大きいトランジスタとすることができる。同様に、半導体層208は、被形成面(ここでは、絶縁層110の側面、導電層212aの側面及び上面、並びに、導電層212bの側面及び上面)に対して平行又は概略平行な層状結晶を有することが好ましい。特に、半導体層208は、導電層204と重なる領域において、被形成面である絶縁層110の側面に対して平行又は概略平行な層状結晶を有することが好ましい。
【0249】
チャネル形成領域に結晶性が高い金属酸化物を用いることで、チャネル形成領域中の欠陥準位密度を低減することができる。一方、結晶性の低い金属酸化物を用いることで、大きな電流を流すことができるトランジスタを実現することができる。
【0250】
金属酸化物をスパッタリング法により形成する場合、形成時の基板温度が高いほど、結晶性の高い金属酸化物を形成することができる。形成時の基板温度は、例えば、形成時に基板が置かれるステージの温度により調整することができる。また、形成に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(以下、酸素流量比ともいう。)、又は、処理室内の酸素分圧が高いほど、結晶性の高い金属酸化物を形成することができる。
【0251】
半導体層108及び半導体層208の結晶性は、例えば、X線回折(XRD:XRay Diffraction)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、又は電子線回折(ED:Electron Diffraction)により解析することができる。又は、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。
【0252】
半導体層108及び半導体層208に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域のVOHをできる限り低減し、高純度真性、又は、実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された金属酸化物を得るには、金属酸化物中の水、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損(VO)を修復することが重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。なお、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損(VO)を修復することを、加酸素化処理と記す場合がある。
【0253】
半導体層108及び半導体層208に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域のキャリア濃度の下限値について限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0254】
OSトランジスタは、放射線照射による電気特性の変動が小さい、つまり放射線に対する耐性が高いため、放射線が入射し得る環境においても好適に用いることができる。OSトランジスタは、放射線に対する信頼性が高いともいえる。例えば、X線のフラットパネルディテクタの画素回路に、OSトランジスタを好適に用いることができる。また、OSトランジスタは、宇宙空間で使用する半導体装置に好適に用いることができる。放射線として、電磁放射線(例えば、X線及びガンマ線)及び粒子放射線(例えば、アルファ線、ベータ線、陽子線、及び中性子線)が挙げられる。
【0255】
半導体層108及び半導体層208は、それぞれ、半導体として機能する層状物質を有してもよい。層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合又はイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス結合のような、共有結合又はイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流が大きいトランジスタを提供することができる。
【0256】
上記層状物質として、例えば、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などが挙げられる。カルコゲン化物は、カルコゲン(第16族に属する元素)を含む化合物である。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。トランジスタのチャネル形成領域として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0257】
[導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、導電層212b]
導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bは、それぞれ、単層構造でもよく、2層以上の積層構造であってもよい。導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bに用いることができる材料として、それぞれ、例えば、クロム、銅、アルミニウム、金、銀、亜鉛、タンタル、チタン、タングステン、マンガン、ニッケル、鉄、コバルト、モリブデン、及びニオブの一又は複数、並びに前述した金属の一又は複数を成分とする合金が挙げられる。導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bには、それぞれ、銅、銀、金、及びアルミニウムのうち一又は複数を含む、低抵抗な導電材料を好適に用いることができる。特に、銅又はアルミニウムは量産性に優れるため好ましい。
【0258】
導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bには、それぞれ、導電性を有する金属酸化物(酸化物導電体)を用いることができる。酸化物導電体(OC:Oxide Conductor)として、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、In-Sn酸化物(ITO)、In-Zn酸化物、In-W酸化物、In-W-Zn酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Sn酸化物、In-Sn-Si酸化物(シリコンを含むITO、ITSOともいう。)、ガリウムを添加した酸化亜鉛、及びIn-Ga-Zn酸化物が挙げられる。特に、インジウムを含む導電性酸化物は、導電性が高いため好ましい。
【0259】
半導体特性を有する金属酸化物に酸素欠損を形成し、当該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり、導電体化する。導電体化された金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。
【0260】
導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bは、それぞれ、前述の酸化物導電体(金属酸化物)を含む導電膜と、金属又は合金を含む導電膜と、の積層構造としてもよい。金属又は合金を含む導電膜を用いることで、配線抵抗を小さくすることができる。
【0261】
導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bには、それぞれ、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、又はTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用いることで、ウェットエッチング法により加工することができるため、製造コストを削減することができる。
【0262】
なお、導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層204、導電層212a、及び導電層212bには、互いに同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。例えば、同一の工程で形成することができる、導電層112a、導電層212a及び導電層212bには、互いに同じ材料を用いることが好ましい。また、同一の工程で形成することができる、導電層104及び導電層204には、互いに同じ材料を用いることが好ましい。
【0263】
導電層112a及び導電層112bは、半導体層108と接する領域を有する。導電層212a及び導電層212bは、半導体層208と接する領域を有する。半導体層108として金属酸化物を用いる場合、導電層112a及び導電層112bに酸化されやすい金属(例えば、アルミニウム)を用いると、導電層112aと半導体層108との間、及び、導電層112bと半導体層108との間に絶縁性の酸化物(例えば、酸化アルミニウム)が形成され、これらの導通を妨げる恐れがある。同様に、半導体層208として金属酸化物を用いる場合、導電層212a及び導電層212bに酸化されやすい金属を用いると、導電層212aと半導体層208との間、及び、導電層212bと半導体層208との間に絶縁性の酸化物が形成され、これらの導通を妨げる恐れがある。そのため、導電層112a、導電層112b、導電層212a、及び導電層212bには、酸化されにくい導電材料、酸化されても電気抵抗が低く保たれる導電材料、又は酸化物導電材料を用いることが好ましい。
【0264】
導電層112a、導電層112b、導電層112a、及び導電層112bには、それぞれ、例えば、チタン、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、ルテニウム、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物を用いることが好ましい。これらは、酸化されにくい導電材料、又は、酸化されても電気抵抗が低く保たれる材料であるため、好ましい。
【0265】
導電層112a、導電層112b、導電層212a、及び導電層212bには、それぞれ、前述の酸化物導電体を用いることができる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、In-Zn酸化物、In-W酸化物、In-W-Zn酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Sn酸化物、シリコンを含むIn-Sn酸化物、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。
【0266】
導電層112a、導電層112b、導電層212a、及び導電層212bには、それぞれ、窒化物導電体を用いてもよい。窒化物導電体として、例えば、窒化タンタル、及び窒化チタンが挙げられる。
【0267】
導電層112a、導電層112b、導電層104、導電層212a、導電層212b、及び導電層204は、それぞれ、積層構造を有してもよい。このとき、少なくとも半導体層108又は半導体層208と接する領域には、酸化されにくい導電材料、酸化されても電気抵抗が低く保たれる導電材料、又は酸化物導電材料を用いることが好ましい。また、半導体層108又は半導体層208と接しない領域には、電気抵抗率の低い材料を用いることが好ましい。これにより、導電層の電気抵抗を低くすることができる。例えば、半導体層108又は半導体層208と接する領域にITSOを、半導体層108又は半導体層208と接しない領域に銅又はタングステンを好適に用いることができる。特に、半導体層108又は半導体層208と接し、かつ絶縁層102上の平坦部に形成される、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bは、銅の層の上にITSO層を設けた積層構造にすることが好ましい。導電層112a、導電層212a、及び導電層212bは、配線として、比較的容易に引き回すことができる。したがって、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bを上記の積層構造にすることで、低抵抗な銅の層が酸化されることを低減し、電気抵抗の低い良好な配線として機能させることができる。
【0268】
[絶縁層106]
絶縁層106は、単層構造でもよく、2層以上の積層構造であってもよい。絶縁層106は、1層以上の無機絶縁層膜を有することが好ましい。無機絶縁膜に用いることができる材料として、例えば、酸化物、窒化物、酸化窒化物、及び窒化酸化物が挙げられる。絶縁層106には、絶縁層110に用いることができる材料を用いることができる。
【0269】
絶縁層106は、半導体層108及び半導体層208と接する領域を有する。半導体層108及び半導体層208に金属酸化物を用いる場合、絶縁層106を構成する膜のうち、少なくとも半導体層108及び半導体層208と接する膜には、前述の酸化物及び酸化窒化物のいずれかを用いることが好ましい。また、絶縁層106には、加熱により酸素を放出する膜を用いるとより好ましい。
【0270】
具体的には、絶縁層106が単層構造の場合、絶縁層106には、酸化物又は酸化窒化物を用いることが好ましい。具体的には、絶縁層106には、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンを好適に用いることができる。
【0271】
絶縁層106を積層構造とする場合、半導体層108及び半導体層208と接する側の絶縁膜は酸化物又は酸化窒化物を有し、導電層104及び導電層204と接する側の絶縁膜は窒化物又は窒化酸化物を有することが好ましい。当該酸化物又は酸化窒化物として、例えば、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンを好適に用いることができる。当該窒化物又は窒化酸化物として、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを好適に用いることができる。
【0272】
窒化シリコン及び窒化酸化シリコンは、自身から放出される不純物(例えば、水及び水素)の量が少なく、酸素及び水素が透過しにくい特徴を有するため、絶縁層106として好適に用いることができる。不純物が絶縁層106から半導体層108及び半導体層208に拡散することが抑制されることで、トランジスタの電気特性を良好とし、かつ、信頼性を高めることができる。このように、絶縁層106は、酸素、水、及び水素の少なくとも一に対するバリア膜として機能することが好ましい。
【0273】
なお、本明細書等において、バリア膜とは、バリア性を有する膜のことを指す。例えば、バリア性を有する絶縁層を、バリア絶縁層ということができる。本明細書等において、バリア性とは、対応する物質の拡散を抑制する機能(透過性が低いともいう。)、及び、対応する物質を、捕獲、又は固着する(ゲッタリングともいう。)機能の一方又は双方を指すものとする。
【0274】
なお、微細なトランジスタにおいて、ゲート絶縁層の厚さが薄くなると、リーク電流が大きくなってしまう場合がある。ゲート絶縁層に、比誘電率の高い材料(high-k材料ともいう。)を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。絶縁層106に用いることができるhigh-k材料として、例えば、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化物、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化窒化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化窒化物、並びに、シリコン及びハフニウムを有する窒化物が挙げられる。
【0275】
[絶縁層195]
トランジスタ100及びトランジスタ200の保護層として機能する絶縁層195には、不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。絶縁層195を設けることにより、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。不純物として、例えば、水及び水素が挙げられる。
【0276】
絶縁層195は、無機材料を有する絶縁層、又は、有機材料を有する絶縁層とすることができる。絶縁層195には、例えば、酸化物、酸化窒化物、窒化酸化物、又は窒化物の無機材料を好適に用いることができる。より具体的には、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、及びハフニウムアルミネートの一又は複数を用いることができる。有機材料として、例えば、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂の一又は複数を用いることができる。有機材料として、感光性の材料を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を、2以上積層して用いてもよい。絶縁層195は、無機材料を有する絶縁層と、有機材料を有する絶縁層と、の積層構造としてもよい。
【0277】
[絶縁層102]
トランジスタ100及びトランジスタ200の下地膜として機能する絶縁層102には、不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。絶縁層102を設けることにより、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。不純物として、例えば、水及び水素が挙げられる。
【0278】
絶縁層102は、単層構造でもよく、2層以上の積層構造であってもよい。絶縁層102は、1層以上の無機絶縁層膜を有することが好ましい。無機絶縁膜に用いることができる材料として、例えば、酸化物、窒化物、酸化窒化物、及び窒化酸化物が挙げられる。絶縁層102には、絶縁層110に用いることができる材料を用いることができる。例えば、絶縁層102として、窒化シリコンと、窒化シリコン上の酸化窒化シリコンと、酸化窒化シリコン上の窒化シリコンの、3層積層構造としてもよい。
【0279】
なお、絶縁層102は、少なくとも、後の熱処理に耐え得る程度の耐熱性を有する基板上に設けることが好ましい。例えば、当該基板として、シリコン、又は炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板が挙げられる。また、当該基板には、半導体素子が設けられていてもよい。なお、半導体基板及び絶縁性基板の形状は、円形であってもよく、角形であってもよい。
【0280】
また、当該基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100等を形成してもよい。又は、当該基板と、トランジスタ100等と、の間に剥離層を設けてもよい。剥離層を設けることにより、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、当該基板より分離し、他の基板に転載することができる。その際、トランジスタ100等を耐熱性の劣る基板、又は可撓性基板にも転載することができる。
【0281】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0282】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について、
図13(A)乃至
図21(C)を用いて説明する。なお、各要素の材料及び形成方法について、先に実施の形態2で説明した部分と同様の部分については、説明を省略することがある。
【0283】
なお、
図13(A)乃至
図16(C)では、半導体装置10のうち、トランジスタ200(VLFET)に限定した作製方法例を説明し、
図17(A)乃至
図21(C)では、トランジスタ200(VLFET)とトランジスタ100(VFET)の双方を同時に形成する場合の作製方法例について説明する。
【0284】
初めに、半導体装置10が有するトランジスタ200の作製方法例について説明する。
【0285】
図13(A)乃至
図16(C)には、
図7(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図と、一点鎖線B1-B2間の断面図と、を並べて示す。
【0286】
半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いて形成することができる。CVD法には、PECVD法及び熱CVD法などがある。また、熱CVD法の1つに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0287】
半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成することができる。
【0288】
半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いることができる。又は、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0289】
フォトリソグラフィ法として、代表的には、以下の2つの方法がある。1つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう1つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0290】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又は、これらを混合させた光を用いることができる。その他、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-Violet)光又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線、又は電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0291】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、及びサンドブラスト法の一又は複数を用いることができる。
【0292】
まず、絶縁層102を、上述の、後の熱処理に耐え得る程度の耐熱性を有する基板(図示しない。)上に形成する。絶縁層102の形成には、スパッタリング法又はPECVD法を好適に用いることができる。
【0293】
続いて、絶縁層102上に、導電層212a及び導電層212bとなる膜を形成し、当該膜を加工して、導電層212a及び導電層212bを形成する(
図13(A))。当該膜の形成には、スパッタリング法を好適に用いることができる。また、導電層212a及び導電層212bの形成には、例えば、ウェットエッチング法を好適に用いることができる。
【0294】
例えば、導電層212a及び導電層212bとして、ITSOを用いることができる。また、例えば、導電層212a及び導電層212bとして、導電性の高い銅の層と、銅の層上のITSOの層と、を有する積層膜を用いてもよい。本実施の形態に示す半導体装置では、絶縁層102上の平坦部に導電層212a及び導電層212bが配置されるので、銅などの導電性の高い導電膜を用いても、導電層212a及び導電層212bを比較的容易に引き回すことができる。よって、導電層212a及び導電層212bを、電気抵抗の低い配線として機能させることができる。
【0295】
続いて、絶縁層102、導電層212a、及び導電層212b上に、絶縁層110a、及び絶縁層110bを、この順で形成する(
図13(B))。トランジスタ200のチャネル幅W200は、絶縁層110bの膜厚に依存する。よって、トランジスタ200に求める電気特性に合わせて、絶縁層110bの膜厚を設定すればよい。
【0296】
絶縁層110a及び絶縁層110bの形成には、スパッタリング法又はPECVD法を好適に用いることができる。絶縁層110aを形成した後、絶縁層110aの表面を大気に曝すことなく、真空中で連続して絶縁層110bを形成することが好ましい。絶縁層110a及び絶縁層110bを連続して形成することで、絶縁層110aの表面に、大気由来の不純物が付着することを抑制することができる。当該不純物として、例えば、水及び有機物が挙げられる。
【0297】
絶縁層110a及び絶縁層110bの形成時の基板温度は、それぞれ、180℃以上450℃以下が好ましく、さらには200℃以上450℃以下が好ましく、さらには250℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上400℃以下が好ましく、さらには350℃以上400℃以下が好ましい。絶縁層110a及び絶縁層110bの形成時の基板温度を前述の範囲とすることで、自身からの不純物(例えば、水及び水素)の放出を少なくすることができ、当該不純物が半導体層208に拡散することを抑制することができる。したがって、良好な電気特性を示し、かつ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0298】
なお、絶縁層110a及び絶縁層110bは、半導体層208より先に形成されるため、絶縁層110a及び絶縁層110bの形成時に加わる熱によって、半導体層208から酸素が脱離することを懸念する必要はない。
【0299】
絶縁層110bを形成した後、絶縁層110bに酸素を供給してもよい。酸素の供給方法として、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、又はプラズマ処理を用いることができる。プラズマ処理として、酸素ガスを高周波電力によってプラズマ化させる装置を好適に用いることができる。ガスを高周波電力によってプラズマ化させる装置として、例えば、PECVD装置、プラズマエッチング装置、及びプラズマアッシング装置が挙げられる。プラズマ処理は、酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。例えば、酸素、一酸化二窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素、及び二酸化炭素の一以上を含む雰囲気で、プラズマ処理を行うことが好ましい。
【0300】
なお、絶縁層110bの表面を大気に曝すことなく、真空中で連続して当該プラズマ処理を行ってもよい。例えば、絶縁層110bの形成にPECVD装置を用いる場合、当該PECVD装置で当該プラズマ処理を行うことが好ましい。これにより、生産性を高めることができる。具体的には、PECVD装置で絶縁層110bを形成した後に、真空中で連続してN2Oプラズマ処理を行うことができる。
【0301】
また、絶縁層110b上に、金属酸化物層137を形成することが好ましい(
図13(C))。金属酸化物層137を形成することで、絶縁層110bに酸素を供給することができる。
【0302】
金属酸化物層137の導電性は問わない。金属酸化物層137として、絶縁膜、半導体膜、及び導電膜の少なくとも一種を用いることができる。金属酸化物層137として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物、又は、シリコンを含有したインジウムスズ酸化物を用いることができる。
【0303】
金属酸化物層137として、半導体層208と同一の元素を一以上含む酸化物材料を用いることが好ましい。特に、半導体層208に適用可能な金属酸化物材料を用いることが好ましい。
【0304】
金属酸化物層137の形成時に、成膜装置の処理室内に導入する成膜ガスの酸素流量比、又は、処理室内の酸素分圧が高いほど、絶縁層110b中に供給される酸素の量を増やすことができる。酸素流量比又は酸素分圧は、例えば、50%以上100%以下、好ましくは65%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下とする。特に、酸素流量比を100%とし、酸素分圧を100%にできるだけ近づけることが好ましい。
【0305】
このように、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法により金属酸化物層137を形成することにより、金属酸化物層137の形成時に、絶縁層110bへ酸素を供給するとともに、絶縁層110bから酸素が脱離することを防ぐことができる。その結果、絶縁層110bに多くの酸素を閉じ込めることができる。そして、後の加熱処理によって、半導体層208に多くの酸素を供給することができる。その結果、半導体層208中の酸素欠損及びVOHを低減することができ、良好な電気特性を示し、かつ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0306】
金属酸化物層137を形成した後、加熱処理を行ってもよい。金属酸化物層137を形成した後に加熱処理を行うことで、金属酸化物層137から絶縁層110bに効果的に酸素を供給することができる。
【0307】
加熱処理の温度は、150℃以上基板の歪み点未満、200℃以上450℃以下、230℃以上400℃以下、250℃以上350℃以下、又は、250℃以上300℃以下が好ましい。加熱処理は、貴ガス、窒素又は酸素の一以上を含む雰囲気で行うことができる。窒素を含む雰囲気、又は酸素を含む雰囲気として、乾燥空気(CDA:Clean Dry Air)を用いてもよい。なお、当該雰囲気における水素、水などの含有量が極力少ないことが好ましい。当該雰囲気として、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下の高純度ガスを用いることが好ましい。水素、水などの含有量が極力少ない雰囲気を用いることで、絶縁層110a及び絶縁層110bに水素、水などが取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。加熱処理は、オーブン、急速加熱(RTA:Rapid Thermal Annealing)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮することができる。
【0308】
金属酸化物層137を形成した後、又は、前述の加熱処理の後に、さらに、金属酸化物層137を介して、絶縁層110bに酸素を供給してもよい。酸素の供給方法として、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、又はプラズマ処理を用いることができる。プラズマ処理については、前述の記載を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
【0309】
続いて、金属酸化物層137を除去する。金属酸化物層137の除去方法に特に限定は無いが、ウェットエッチング法を好適に用いることができる。ウェットエッチング法を用いることで、金属酸化物層137の除去の際に、絶縁層110bがエッチングされることを抑制することができる。これにより、絶縁層110bの厚さが薄くなることを抑制することができ、絶縁層110bの厚さを均一にすることができる。
【0310】
金属酸化物層137を除去した後に、さらに絶縁層110bに酸素を供給してもよい。酸素の供給方法については、前述の記載を参照することができる。例えば、絶縁層110b上に膜を形成し、当該膜を介して、絶縁層110bに酸素を供給してもよい(図示しない。)。当該処理として、酸素を含む雰囲気におけるプラズマ処理を用いることができる。当該膜には、導電膜又は半導体膜を用いることが好ましい。当該膜には、金属酸化物膜、金属膜、又は合金膜を用いることができる。当該膜として金属酸化物を用い、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法等により形成すると、当該膜の形成時においても、絶縁層110bに酸素を供給することができるため好ましい。
【0311】
当該膜の厚さは、薄いことが好ましい。具体的には、当該膜の厚さは、1nm以上20nm以下、2nm以上15nm以下、又は、3nm以上10nm以下が好ましい。代表的には5nm程度とすることができる。
【0312】
当該膜の形成時の基板温度は、350℃以下が好ましく、さらには340℃以下が好ましく、さらには330℃以下が好ましく、さらには300℃以下が好ましい。これにより、絶縁層110bに供給される酸素の量を多くすることができる。
【0313】
当該膜を設けることにより、酸素を供給する際に、一対の電極間にバイアス電圧が印加されると、イオン化した酸素をひきつけやすくなる。したがって、絶縁層110bに供給される酸素の量を多くすることができる。
【0314】
酸素を供給する処理装置として、ドライエッチング装置、アッシング装置、又はPECVD装置を好適に用いることができる。特に、アッシング装置を用いることが好ましい。処理装置が有する一対の電極間にバイアス電圧を印加する場合、そのバイアス電圧を、例えば、10V以上1kV以下とすればよい。又は、バイアスの電力密度を、例えば、1W/cm2以上5W/cm2以下とすればよい。
【0315】
続いて、当該膜を除去する。当該膜の除去には、ウェットエッチング法を好適に用いることができる。
【0316】
絶縁層110bに対して酸素を供給する処理は、前述の方法に限定されない。例えば、絶縁層110bに対して、イオンドーピング法、イオン注入法、又はプラズマ処理により、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、又は酸素分子イオンを供給する。また、絶縁層110b上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、当該膜を介して絶縁層110bに酸素を供給してもよい。当該膜は、酸素を供給した後に除去することが好ましい。上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、スズ、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、及びタングステンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いることができる。
【0317】
なお、絶縁層110bの形成後に、絶縁層110bの上面を、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化する処理を行ってもよい。これにより、導電層212a及び導電層212bに起因して形成された絶縁層110b上面の凹凸を解消することができるため、絶縁層110c上に形成される層の被覆性を高めることができる。当該平坦化処理は、上述の、絶縁層110bに酸素を供給する処理の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0318】
続いて、絶縁層110b上に、絶縁層110cを形成する(
図14(A))。絶縁層110cの形成は、絶縁層110a及び絶縁層110bの形成に係る記載を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
【0319】
続いて、絶縁層110c上に、レジストマスク158を形成する。レジストマスク158は、トランジスタ200と重ならない領域上に形成される。
【0320】
続いて、レジストマスク158を介して、絶縁層110(絶縁層110c、絶縁層110b、及び絶縁層110a)及び絶縁層102を加工し、絶縁層110及び絶縁層102に、凹部145を形成する(
図14(B))。凹部145は、平面視にて、導電層212a及び導電層212bと重なる領域を有するように設けられる。凹部145の形成には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方又は双方を好適に用いることができる。凹部145の形成には、例えば、ドライエッチング法を好適に用いることができる。なお、凹部145の形成は、絶縁層110及び絶縁層102に対して一括で行ってもよいし、絶縁層110と、絶縁層102とで、それぞれ加工条件を変えて行ってもよい。
【0321】
続いて、レジストマスク158を除去する。
【0322】
続いて、凹部145を覆うように、絶縁層110上及び絶縁層102上に、半導体層208となる金属酸化物膜208fを形成する。金属酸化物膜208fは、絶縁層110の上面及び側面、導電層212aの上面及び側面、並びに、導電層212bの上面及び側面に接して設けられる。本発明の一態様の半導体装置10は、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、凹部145内において、導電層212aの端部、及び、導電層212bの端部が、突出している。すなわち、絶縁層110に形成された開口145aの側壁、及び、絶縁層102に形成された凹部145bの側壁よりも、導電層212aの端部、及び、導電層212bの端部の方が、凹部145の内側に位置した構成を有する。したがって、A1-A2間の断面においては、金属酸化物膜208fは、凹部145内でそれぞれ露出する導電層212aの端部、及び、導電層212bの端部で段切れを起こし、当該段切れした部分が、材料層208mとして、凹部145の底面に形成される。また、本発明の一態様の半導体装置10は、
図7(C)に示すように、凹部145内において、導電層212a及び導電層212bと重ならない領域においては、絶縁層110に形成された開口145aの側壁よりも、絶縁層102に形成された凹部145bの側壁の方が、外側に位置した構成を有する。したがって、B1-B2間の断面においては、金属酸化物膜208fは、絶縁層110に形成された開口145aの下端部で段切れを起こし、当該段切れした部分が、材料層208mとして、凹部145の底面に形成される(
図14(C))。
【0323】
このように、本発明の一態様では、金属酸化物膜208fの成膜を行うだけで、凹部145の側壁(絶縁層110の側面、導電層212aの側面、及び、導電層212bの側面)のみに、自己整合的に半導体層208を形成することができる。したがって、金属酸化物膜208fを形成した後に、別途、金属酸化物膜208fの凹部145内の側壁における領域と、凹部145内の底面における領域と、を分離させるための処理を不要とすることができ、半導体装置作製における全体の工程数を削減することができる。
【0324】
金属酸化物膜208fは、金属酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが好ましい。スパッタリングターゲットから放出された粒子を被処理物に堆積させることで成膜するスパッタリング法は、成膜しようとする膜の被覆性が、被処理物の形状の影響を受けやすい。したがって、金属酸化物膜208fの形成にスパッタリング法を用いることにより、金属酸化物膜208fが、凹部145内でそれぞれ露出する導電層212aの端部、及び、導電層212bの端部で段切れを起こしやすいため、好ましい。
【0325】
金属酸化物膜208fは、可能な限り欠陥の少ない緻密な膜とすることが好ましい。また、金属酸化物膜208fは、可能な限り水素元素を含む不純物が低減され、高純度の膜であることが好ましい。特に、金属酸化物膜208fとして、結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0326】
金属酸化物膜208fを形成する際に、酸素ガスを用いることが好ましい。酸素ガスを用いることで、絶縁層110中に好適に酸素を供給することができる。例えば、絶縁層110bに酸化物又は酸化窒化物を用いる場合、絶縁層110b中に好適に酸素を供給することができる。
【0327】
絶縁層110bに酸素を供給することにより、後の工程で半導体層208のチャネル形成領域に酸素が供給され、チャネル形成領域中の酸素欠損及びVOHを低減することができる。
【0328】
金属酸化物膜208fを形成する際に、酸素ガスと、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)と、を混合させてもよい。なお、金属酸化物膜を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(酸素流量比)、又は、処理室内の酸素分圧が高いほど、金属酸化物膜の結晶性を高めることができ、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。一方、酸素流量比又は酸素分圧が低いほど、結晶性が低く、電気伝導性の高い金属酸化物膜とすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。
【0329】
ここで、酸素流量比又は酸素分圧が高いと、金属酸化物膜が多結晶構造となる場合がある。多結晶構造の金属酸化物膜の場合、結晶粒界が再結合中心となり、キャリアが捕獲されることにより、トランジスタのオン電流が小さくなってしまう場合がある。したがって、金属酸化物膜208fが多結晶構造とならないよう、酸素流量比又は酸素分圧を調整することが好ましい。金属酸化物膜の組成によって多結晶構造へのなりやすさが異なるため、金属酸化物膜208fの組成に応じて、酸素流量比又は酸素分圧を調整すればよい。
【0330】
金属酸化物膜を形成する際の基板温度が高いほど、結晶性が高く、緻密な金属酸化物膜とすることができる。一方、基板温度が低いほど、結晶性が低く、電気伝導性の高い金属酸化物膜とすることができる。
【0331】
金属酸化物膜208fの形成時の基板温度は、室温以上250℃以下が好ましく、室温以上200℃以下がより好ましく、室温以上140℃以下がさらに好ましい。例えば、基板温度を、室温以上140℃以下とすると、生産性が高くなり好ましい。また、基板温度を室温とする、又は、基板を加熱しない状態で、金属酸化物膜208fを形成することにより、結晶性を低くすることができる。
【0332】
基板温度が高いと、金属酸化物膜が多結晶構造となる場合がある。金属酸化物膜208fが多結晶構造とならないよう、基板温度を調整することが好ましい。金属酸化物膜208fに適用する組成に応じて、基板温度を調整すればよい。
【0333】
得られる膜の組成を制御する方法として、原料ガスの種類、原料ガスの流量比、原料ガスを流す時間、及び、原料ガスを流す順番の一又は複数を調整することが挙げられる。これらを調整することにより、金属酸化物膜208fの組成を制御することができる。また、これらを調整することで、組成が連続して変化する膜を形成することもできる。金属酸化物膜208fの組成が連続して変化する構成としてもよい。
【0334】
金属酸化物膜208fを成膜する前に、絶縁層110の表面に吸着した水、水素、及び有機物等を脱離させるための処理、及び、絶縁層110中に酸素を供給する処理のうち、少なくとも一方を行うことが好ましい。例えば、減圧雰囲気にて、70℃以上200℃以下の温度で加熱処理を行うことができる。又は、酸素を含む雰囲気におけるプラズマ処理を行ってもよい。又は、一酸化二窒素(N2O)などの酸化性気体を含む雰囲気におけるプラズマ処理により、絶縁層110に酸素を供給してもよい。一酸化二窒素ガスを含むプラズマ処理を行うと、絶縁層110の表面の有機物を好適に除去しつつ、酸素を供給することができる。このような処理の後、絶縁層110の表面を大気に暴露することなく、連続して金属酸化物膜208fを成膜することが好ましい。
【0335】
なお、半導体層208を積層構造とする場合には、先に形成する金属酸化物膜を成膜した後に、その表面を大気に曝すことなく、連続して、次の金属酸化物膜を成膜することが好ましい。
【0336】
金属酸化物膜208fを形成した後に、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理を行うことで、絶縁層110から金属酸化物膜208fに効果的に酸素を供給することができる。加熱処理の温度は、200℃以上450℃以下が好ましい。加熱処理は、貴ガス、窒素又は酸素の一以上を含む雰囲気で行うことができる。窒素を含む雰囲気、又は酸素を含む雰囲気として、乾燥空気を用いてもよい。加熱処理は、オーブン、RTA装置等を用いることができる。
【0337】
続いて、凹部145を埋め込むように、金属酸化物膜208f上及び材料層208m上に、ポジ型のフォトレジスト159fを塗布する。
【0338】
続いて、フォトレジスト159f全面に対して、光149(例えば、可視光線又は紫外線)を照射する(
図15(A))。
【0339】
続いて、フォトレジスト159fの光149が照射された部分(感光した部分)を除去し、レジストマスク159を形成する(
図15(B))。レジストマスク159は、フォトレジスト159fに光149を照射した際、フォトレジスト159fのうちの、光149が届かなかった領域(感光しなかった領域)に相当する、と別言することができる。
【0340】
ここで、金属酸化物膜208fのうち、凹部145内における絶縁層110と接する領域は、後にトランジスタ200のチャネル形成領域として機能し得る領域である。したがって、レジストマスク159は、少なくとも、凹部145の側壁(特に、絶縁層110の側面)と接する領域を有するように設けられることが好ましい。これにより、金属酸化物膜208fの一部(具体的には、基板面に対して、レジストマスク159の上面よりも高くに位置する部分)が露出する。
【0341】
なお、
図15(B)では、レジストマスク159の全部が、凹部145内に位置し、レジストマスク159の上面の高さが、金属酸化物膜208fの上面の高さよりも低い例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、レジストマスク159の一部が、凹部145の外側にはみ出し、レジストマスク159の上面の高さが、金属酸化物膜208fの上面の高さよりも高い構成を有していてもよい。この場合、レジストマスク159は、凹部145を埋め込む領域だけでなく、金属酸化物膜208fの上面を覆う領域を有する。
【0342】
続いて、金属酸化物膜208fの露出した部分を除去し、凹部145の側壁(絶縁層110の側面、導電層212aの側面、及び、導電層212bの側面)に接する半導体層208を形成する処理を行う(
図15(C))。半導体層208の形成には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方又は双方を好適に用いることができる。半導体層208は、平面視において、導電層212a及び導電層212bと重なる領域においては、凹部145内の絶縁層110の側面、凹部145内の導電層212aの上面及び側面、並びに、凹部145内の導電層212bの上面及び側面に接する。また、平面視において、導電層212a及び導電層212bと重ならない領域においては、凹部145内の絶縁層110の側面に接する。当該処理により、絶縁層110の上面が露出する。
【0343】
続いて、凹部145内に残存したレジストマスク159を除去する(
図16(A))。
【0344】
続いて、半導体層208、材料層208m、導電層212a、導電層212b、及び絶縁層110を覆って、絶縁層106を形成する(
図16(B))。絶縁層106の形成には、例えば、PECVD法、ALD法、又はスパッタリング法を好適に用いることができる。
【0345】
半導体層208に金属酸化物を用いる場合、絶縁層106は、酸素が拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106が酸素の拡散を抑制する機能を有することにより、半導体層208に含まれる酸素が、絶縁層106より上側に拡散することが抑制され、半導体層208に酸素欠損(VO)が増加することを抑制することができる。その結果、良好な電気特性を示し、かつ、信頼性の高いトランジスタ200を実現することができる。
【0346】
ゲート絶縁層として機能する絶縁層106の形成時の温度を高くすることにより、欠陥の少ない絶縁層とすることができる。しかしながら、絶縁層106の形成時の温度が高いと、半導体層208から酸素が脱離し、半導体層208中の酸素欠損(VO)及びVOHが増加してしまう場合がある。絶縁層106の形成時の基板温度は、180℃以上450℃以下が好ましく、さらには200℃以上450℃以下が好ましく、さらには250℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上400℃以下が好ましい。絶縁層106の形成時の基板温度を前述の範囲とすることで、絶縁層106の欠陥を少なくするとともに、半導体層208から酸素が脱離することを抑制することができる。したがって、良好な電気特性を示し、かつ、信頼性の高いトランジスタ200を実現することができる。
【0347】
絶縁層106を形成する前に、半導体層208の表面に対して、プラズマ処理を行ってもよい。当該プラズマ処理により、半導体層208の表面に吸着する水などの不純物を低減することができる。そのため、半導体層208と、絶縁層106と、の界面における不純物を低減することができ、信頼性の高いトランジスタ200を実現することができる。特に、半導体層208の形成から、絶縁層106の形成までの間に、半導体層208の表面が大気に曝される場合に好適である。プラズマ処理は、例えば、酸素、オゾン、窒素、一酸化二窒素、アルゴンなどの雰囲気で行うことができる。また、プラズマ処理と、絶縁層106の成膜と、は大気に曝すことなく、連続して行われることが好ましい。
【0348】
なお、
図16(B)では、絶縁層106の形成によって、凹部145内に、絶縁層106と、材料層208mと、絶縁層102と、で囲まれた空洞227が形成される例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、絶縁層106が、凹部145内において、導電層212a及び導電層212bの下面(絶縁層102側の面)、及び、絶縁層102の上面に接して設けられ、空洞227を有さない構成であってもよい。
【0349】
続いて、絶縁層106上に、導電層204となる膜を形成し、当該膜を加工することにより、導電層204を形成する(
図16(C))。ここで、導電層204の少なくとも一部は、凹部145において、絶縁層106を介して、半導体層208と対向するように形成される。当該膜の形成には、例えば、スパッタリング法、熱CVD法(MOCVD法を含む。)、又はALD法を好適に用いることができる。
【0350】
続いて、導電層204及び絶縁層106を覆って、絶縁層195を形成する(
図7(B))。絶縁層195の形成には、PECVD法を好適に用いることができる。
【0351】
絶縁層195の形成後、加熱処理を行ってもよい。なお、当該加熱処理は、行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば、成膜工程など)がある場合には、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0352】
以上の工程により、本発明の一態様の半導体装置10が有するトランジスタ200を作製することができる(
図8(A)及び
図8(B))。
【0353】
次に、半導体装置10において、トランジスタ200とトランジスタ100の双方を同時に形成する場合の作製方法例について説明する。なお、先の説明内容と重複する部分については、説明を省略する場合がある。
【0354】
図17(A)乃至
図21(C)には、
図7(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図を示す。
【0355】
まず、絶縁層102を、上述の、後の熱処理に耐え得る程度の耐熱性を有する基板(図示しない。)上に形成する。絶縁層102の形成方法については、
図13(A)で説明した内容を参照することができる。
【0356】
続いて、絶縁層102上に、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bとなる膜を形成し、当該膜を加工して、導電層112a、導電層212a、及び導電層212bを形成する(
図17(A))。当該膜の形成方法等については、
図13(A)で説明した内容を参照することができる。
【0357】
続いて、絶縁層102、導電層112a、導電層212a、及び導電層212b上に、絶縁層110a、及び絶縁層110bを、この順で形成する。トランジスタ200のチャネル幅W200、及び、トランジスタ100のチャネル長L100は、絶縁層110bの膜厚に依存する。よって、トランジスタ200及びトランジスタ100に求める電気特性に合わせて、絶縁層110bの膜厚を設定すればよい。絶縁層110a及び絶縁層110bの形成方法等については、
図13(B)で説明した内容を参照することができる。
【0358】
絶縁層110bを形成した後、絶縁層110bに酸素を供給してもよい。酸素の供給方法については、
図13(B)で説明した内容を参照することができる。
【0359】
また、絶縁層110bの表面を大気に曝すことなく、真空中で連続して当該プラズマ処理を行ってもよい。
【0360】
続いて、絶縁層110bの上面に対して、CMP法を用いて、平坦化する処理を行うことが好ましい(
図17(B))。これにより、後に、トランジスタ100のソース電極又はドレイン電極の他方となる導電層112bを、精度良く、絶縁層110内に埋め込むように形成することができる。
【0361】
続いて、絶縁層110b上に、金属酸化物層137を形成することが好ましい(
図17(C))。金属酸化物層137を形成することで、絶縁層110bに酸素を供給することができる。金属酸化物層137に用いることができる材料、及び、金属酸化物層137の形成方法等については、
図13(C)で説明した内容を参照することができる。
【0362】
続いて、金属酸化物層137を除去する。金属酸化物層137の除去方法については、
図13(C)で説明した内容を参照することができる。
【0363】
金属酸化物層137を除去した後に、さらに絶縁層110bに酸素を供給してもよい。酸素の供給方法については、
図13(C)で説明した内容を参照することができる。
【0364】
なお、絶縁層110bの上面を平坦化する処理は、前述の金属酸化物層137による絶縁層110bへの酸素供給処理の後に行ってもよい。
【0365】
続いて、絶縁層110b上に、レジストマスク156を形成する。レジストマスク156は、トランジスタ100と重ならない領域上に形成される。
【0366】
続いて、レジストマスク156を介して、絶縁層110bを加工し、絶縁層110bに凹部142を形成する(
図18(A))。凹部142は、導電層112aと重なる領域に形成される。凹部142の形成には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方又は双方を好適に用いることができる。
【0367】
続いて、レジストマスク156を除去する。
【0368】
続いて、絶縁層110b上に、絶縁層110cを形成する(
図18(B))。絶縁層110cの形成方法等については、
図14(A)で説明した内容を参照することができる。
【0369】
続いて、絶縁層110c上に、導電層212bとなる導電膜112fを形成する(
図18(C))。導電膜112fの形成には、例えば、スパッタリング法を好適に用いることができる。
【0370】
続いて、導電膜112fに対して、CMP法を用いて、絶縁層110cの上面が露出するまで平坦化する処理を行い、凹部142の内部に、導電層112sを形成する(
図19(A))。当該処理により、導電層112sの上面の高さと、導電層112sと重ならない領域における絶縁層110の上面の高さと、が概略等しくなる。
【0371】
続いて、導電層112s及び絶縁層110上に、レジストマスク158を形成する。レジストマスク158は、トランジスタ200及びトランジスタ100と重ならない領域上に形成される。
【0372】
続いて、レジストマスク158を介して、導電層112s及び絶縁層110(絶縁層110c、絶縁層110b、及び絶縁層110a)及び絶縁層102を加工する。当該加工により、トランジスタ200と重なる領域には、絶縁層110及び絶縁層102に、凹部145が形成される。また、トランジスタ100と重なる領域には、導電層112sに開口143が、絶縁層110に開口141が、それぞれ形成される。また、当該加工により、導電層112sは、開口143を有する導電層112bとなる(
図19(B))。凹部145は、平面視にて、導電層212a及び導電層212bと重なる領域を有するように設けられる。また、開口141内において、導電層112aが露出する。凹部145、開口143、及び開口141の形成には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方又は双方を好適に用いることができる。なお、凹部145、開口143、及び開口141の形成は、一括で行ってもよいし、それぞれ加工条件を変えて行ってもよい。例えば、開口143の形成と、開口141の形成とで、それぞれ加工条件を変えて行ってもよい。また、例えば、初めに開口143の形成を行った後、加工条件を変えて、開口141及び凹部145の形成を一括で行ってもよい。
【0373】
続いて、レジストマスク158を除去する。
【0374】
続いて、導電層112a、導電層112b、絶縁層110上、及び絶縁層102上に、半導体層208及び半導体層108となる金属酸化物膜208fを形成する。金属酸化物膜208fは、導電層112aの上面、導電層112bの上面及び側面、絶縁層110の上面及び側面、導電層212aの上面及び側面、並びに、導電層212bの上面及び側面に接して設けられる。また、このとき、金属酸化物膜208fは、凹部145内でそれぞれ露出する導電層212aの端部、及び、導電層212bの端部で段切れを起こし、当該段切れした部分が、材料層208mとして、凹部145の底面に形成される(
図19(C))。
【0375】
このように、本発明の一態様では、金属酸化物膜208fの成膜を行うだけで、凹部145の側壁(絶縁層110の側面、導電層212aの側面、及び、導電層212bの側面)のみに、自己整合的に半導体層208を形成することができる。したがって、金属酸化物膜208fを形成した後に、別途、金属酸化物膜208fの凹部145内の側壁における領域と、凹部145内の底面における領域と、を分離させるための処理を不要とすることができる。また、これと同時に、開口143及び開口141の内壁及び底面に、後に半導体層108となる金属酸化物膜を形成することができる。したがって、トランジスタ200と、トランジスタ100と、を同時に形成することができるため、半導体装置作製における全体の工程数を削減することができる。
【0376】
なお、金属酸化物膜208fの形成方法等については、
図14(C)で説明した内容を参照することができる。
【0377】
金属酸化物膜208fを成膜する前に、絶縁層110の表面に吸着した水、水素、及び有機物等を脱離させるための処理、及び、絶縁層110中に酸素を供給する処理のうち、少なくとも一方を行うことが好ましい。当該処理の詳細については、
図14(C)で説明した内容を参照することができる。
【0378】
なお、半導体層208及び半導体層108を積層構造とする場合には、先に形成する金属酸化物膜を成膜した後に、その表面を大気に曝すことなく、連続して、次の金属酸化物膜を成膜することが好ましい。
【0379】
金属酸化物膜208fを形成した後に、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理を行うことで、絶縁層110から金属酸化物膜208fに効果的に酸素を供給することができる。当該加熱処理の詳細については、
図14(C)で説明した内容を参照することができる。
【0380】
続いて、凹部145、開口143、及び開口141を埋め込むように、金属酸化物膜208f上及び材料層208m上に、ポジ型のフォトレジスト159fを塗布する。
【0381】
続いて、フォトレジスト159f全面に対して、光149(例えば、可視光線又は紫外線)を照射する(
図20(A))。
【0382】
続いて、フォトレジスト159fの光149が照射された部分(感光した部分)を除去し、レジストマスク159を形成する(
図20(B))。レジストマスク159は、フォトレジスト159fに光149を照射した際、フォトレジスト159fのうちの、光149が届かなかった領域(感光しなかった領域)に相当する、と別言することができる。
【0383】
ここで、金属酸化物膜208fのうち、凹部145内における絶縁層110と接する領域は、後にトランジスタ200のチャネル形成領域として機能し得る領域である。また、金属酸化物膜208fのうち、開口141内における絶縁層110と接する領域は、後にトランジスタ100のチャネル形成領域として機能し得る領域であり、開口143内における導電層112bと接する領域は、後にトランジスタ100のソース領域又はドレイン領域の他方となる領域である。したがって、レジストマスク159は、少なくとも、凹部145の側壁(特に、絶縁層110の側面)、及び、開口143の側壁(導電層112bの側面)と接する領域を有するように設けられることが好ましい。これにより、金属酸化物膜208fの一部(具体的には、基板面に対して、レジストマスク159の上面よりも高くに位置する部分)が露出する。
【0384】
なお、
図20(B)では、レジストマスク159の全部が、凹部145内、並びに、開口143及び開口141内に位置し、レジストマスク159の上面の高さが、金属酸化物膜208fの上面の高さよりも低い例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、レジストマスク159の一部が、凹部145、並びに、開口143及び開口141の外側にはみ出し、レジストマスク159の上面の高さが、金属酸化物膜208fの上面の高さよりも高い構成を有していてもよい。この場合、レジストマスク159は、凹部145、並びに、開口143及び開口141を埋め込む領域だけでなく、金属酸化物膜208fの上面を覆う領域を有する。
【0385】
また、レジストマスク159の形成に用いるフォトレジスト(フォトレジスト159f)は、ポジ型のものに限られず、ネガ型のものを用いてもよい。ネガ型のフォトレジストを用いる場合には、当該フォトレジストを絶縁層110c上に塗布した後、凹部145、並びに、開口143及び開口141と重ならない領域に、光149を照射する。その後、フォトレジストの露光されなかった領域(感光しなかった領域)を除去することで、凹部145、並びに、開口143及び開口141と重なる領域に、レジストマスク159を形成することができる。
【0386】
続いて、金属酸化物膜208fの露出した部分を除去し、凹部145の側壁(絶縁層110の側面、導電層212aの側面、及び、導電層212bの側面)に接する半導体層208と、開口143の側壁(導電層112bの側面)、並びに、開口141の側壁(絶縁層110の側面)及び底面(導電層112aの上面)に接する半導体層108と、を形成する処理を行う(
図20(C))。半導体層208及び半導体層108の形成には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方又は双方を好適に用いることができる。半導体層208は、平面視において、導電層212a及び導電層212bと重なる領域においては、凹部145内の絶縁層110の側面、凹部145内の導電層212aの上面及び側面、並びに、凹部145内の導電層212bの上面及び側面に接する。また、平面視において、導電層212a及び導電層212bと重ならない領域においては、凹部145内の絶縁層110の側面に接する。また、半導体層108は、開口143内の導電層112bの側面、開口141内の絶縁層110の側面、及び、開口141内の導電層112aの上面に接する。当該処理により、導電層112bの上面、及び、絶縁層110の上面が露出する。
【0387】
続いて、凹部145内、開口143内、及び開口141内に残存したレジストマスク159を除去する(
図21(A))。
【0388】
続いて、半導体層108、導電層112b、半導体層208、材料層208m、導電層212a、導電層212b、及び絶縁層110を覆って、絶縁層106を形成する(
図21(B))。絶縁層106の形成方法等については、
図16(B)で説明した内容を参照することができる。
【0389】
絶縁層106を形成する前に、半導体層208及び半導体層108の表面に対して、プラズマ処理を行ってもよい。当該プラズマ処理により、半導体層208及び半導体層108の表面に吸着する水などの不純物を低減することができる。そのため、半導体層208と、絶縁層106と、の界面における不純物、及び、半導体層108と、絶縁層106と、の界面における不純物を低減することができ、信頼性の高いトランジスタ200及びトランジスタ100を実現することができる。特に、半導体層208及び半導体層108の形成から、絶縁層106の形成までの間に、半導体層208及び半導体層108の表面が大気に曝される場合に好適である。プラズマ処理の詳細については、
図16(B)で説明した内容を参照することができる。
【0390】
なお、
図21(B)では、絶縁層106の形成によって、凹部145内に、絶縁層106と、材料層208mと、絶縁層102と、で囲まれた空洞227が形成される例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、絶縁層106が、凹部145内において、導電層212a及び導電層212bの下面(絶縁層102側の面)、及び、絶縁層102の上面に接して設けられ、空洞227を有さない構成であってもよい。
【0391】
続いて、絶縁層106上に、導電層204となる膜を形成し、当該膜を加工することにより、導電層204及び導電層104を形成する(
図21(C))。ここで、導電層204の少なくとも一部は、凹部145において、絶縁層106を介して、半導体層208と対向するように形成される。また、導電層104の少なくとも一部は、開口143及び開口141において、絶縁層106を介して、半導体層108と対向するように形成される。当該膜の形成方法等については、
図16(C)で説明した内容を参照することができる。
【0392】
続いて、導電層204、導電層104、及び絶縁層106を覆って、絶縁層195を形成する(
図7(B))。絶縁層195の形成方法等については、前述の記載を参照することができる。
【0393】
以上の工程により、本発明の一態様の半導体装置10が有するトランジスタ100とトランジスタ200の双方を、同時に作製することができる(
図7(A)乃至
図7(C))。
【0394】
本発明の一態様の作製方法により、チャネル長が短いトランジスタ100と、よりチャネル長が長いトランジスタ200と、を生産性良く、同一面上に形成することができる。例えば、大きいオン電流が求められるトランジスタにトランジスタ100を適用し、高い飽和性が求められるトランジスタにトランジスタ200を適用することにより、それぞれのトランジスタの利点を生かした高い性能の半導体装置10を実現することができる。
【0395】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0396】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について、
図22(A)乃至
図25を用いて説明する。
【0397】
本実施の形態の表示装置は、解像度の高い表示装置又は大型の表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型若しくはノート型のコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0398】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型などの情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などのVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器などの頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0399】
本発明の一態様の半導体装置は、表示装置、又は、当該表示装置を有するモジュールに用いることができる。当該表示装置を有するモジュールとして、当該表示装置にフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit、以下、FPCと記す。)若しくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられたモジュール、COG(Chip On Glass)方式若しくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装されたモジュール等が挙げられる。
【0400】
本実施の形態の表示装置はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。例えば、表示装置には、指などの被検知体の近接又は接触を検知することができる様々な検知素子(センサ素子ともいえる。)を適用することができる。
【0401】
センサの方式として、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、及び、感圧方式が挙げられる。
【0402】
静電容量方式として、例えば、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式がある。また、投影型静電容量方式として、例えば、自己容量方式、相互容量方式がある。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0403】
タッチパネルとして、例えば、アウトセル型、オンセル型、及び、インセル型が挙げられる。なお、インセル型のタッチパネルは、表示素子(表示デバイスともいう。)を支持する基板と対向基板のうち一方又は双方に、検知素子を構成する電極が設けられた構成をいう。
【0404】
<構成例1>
図22(A)に、表示装置50Aの斜視図を示す。
【0405】
表示装置50Aは、基板152と基板151とが貼り合わされた構成を有する。
図22(A)では、基板152を破線で示している。
【0406】
表示装置50Aは、表示部162、接続部140、回路部164、導電層165等を有する。
図22(A)では、表示装置50AにIC173及びFPC172が実装されている例を示している。そのため、
図22(A)に示す構成は、表示装置50Aと、ICと、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。
【0407】
接続部140は、表示部162の外側に設けられる。接続部140は、表示部162の一辺又は複数の辺に沿って設けることができる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
図22(A)では、表示部の四辺を囲むように接続部140が設けられている例を示す。接続部140では、表示素子の共通電極と、導電層と、が電気的に接続されており、共通電極に電位を供給することができる。
【0408】
回路部164は、例えば、走査線駆動回路(ゲートドライバともいう。)を有する。また、回路部164は、走査線駆動回路及び信号線駆動回路(ソースドライバともいう。)の双方を有していてもよい。
【0409】
導電層165は、表示部162及び回路部164に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC172を介して、外部から導電層165に入力される、又は、IC173から導電層165に入力される。
【0410】
図22(A)では、COG方式又はCOF方式等により、基板151にIC173が設けられている例を示す。IC173には、例えば、走査線駆動回路及び信号線駆動回路のうち、一方又は双方を有するICを適用することができる。なお、表示装置50A及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0411】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示装置50Aの表示部162及び回路部164の一方又は双方に適用することができる。
【0412】
例えば、本発明の一態様の半導体装置を表示装置の画素回路に適用する場合、画素回路の占有面積を縮小することができ、高精細の表示装置とすることができる。また、例えば、本発明の一態様の半導体装置を表示装置の駆動回路(例えば、ゲート線駆動回路及びソース線駆動回路の一方又は双方)に適用する場合、駆動回路の占有面積を縮小することができ、狭額縁の表示装置とすることができる。また、本発明の一態様の半導体装置は、電気特性が良好であるため、表示装置に用いることで表示装置の信頼性を高めることができる。
【0413】
表示部162は、表示装置50Aにおける画像を表示する領域であり、周期的に配列された複数の画素210を有する。
図22(A)には、1つの画素210の拡大図を示している。
【0414】
本実施の形態の表示装置における画素の配列に特に限定はなく、様々な方法を適用することができる。画素の配列として、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、及びペンタイル配列が挙げられる。
【0415】
図22(A)に示す画素210は、赤色の光を呈する画素230R、緑色の光を呈する画素230G、及び、青色の光を呈する画素230Bを有する。画素230R、画素230G、及び画素230Bで1つの画素210を構成することで、フルカラー表示を実現することができる。画素230R、画素230G、及び画素230Bは、それぞれ、副画素として機能する。また、
図22(A)に示す表示装置50Aでは、副画素として機能する画素230をストライプ配列で配置する例を示している。1つの画素210を構成する副画素の数は3つに限られず、4つ以上としてもよい。例えば、R、G、B、白色(W)の光を呈する4つの副画素を有してもよい。又は、R、G、B、Yの4色の光を呈する4つの副画素を有してもよい。
【0416】
画素230R、画素230G、及び画素230Bは、それぞれ、表示素子と、当該表示素子の駆動を制御する回路と、を有する。
【0417】
表示素子として、様々な素子を用いることができ、例えば、液晶素子(液晶デバイスともいう。)及び発光デバイスが挙げられる。その他、シャッター方式又は光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、又は電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。また、光源と、量子ドット材料による色変換技術と、を用いたQLED(Quantum-dot LED)を用いてもよい。
【0418】
液晶素子を用いた表示装置として、例えば、透過型の液晶表示装置、反射型の液晶表示装置、及び、半透過型の液晶表示装置が挙げられる。
【0419】
液晶素子を用いた表示装置に用いることができるモードとして、例えば、垂直配向(VA:Vertical Alignment)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、TN(Twisted Nematic)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、及び、ゲストホストモードが挙げられる。VAモードとして、例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、及び、ASV(Advanced Super View)モードが挙げられる。
【0420】
液晶素子に用いることができる液晶材料として、例えば、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、強誘電性液晶、及び反強誘電性液晶が挙げられる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相、ブルー相などを示す。また、液晶材料として、ポジ型の液晶、及び、ネガ型の液晶のどちらを用いてもよく、適用するモード又は設計に応じて選択することができる。
【0421】
発光デバイスとして、例えば、LED、OLED(Organic LED)、半導体レーザなどの、自発光型の発光デバイスが挙げられる。LEDとして、例えば、ミニLED、マイクロLEDなどを用いることができる。
【0422】
発光デバイスが有する発光物質として、例えば、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)材料)、及び無機化合物(量子ドット材料等)が挙げられる。
【0423】
発光デバイスの発光色は、赤外、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、黄、又は白などとすることができる。また、発光デバイスにマイクロキャビティ構造を付与することにより、色純度を高めることができる。
【0424】
発光デバイスが有する一対の電極のうち、一方の電極は陽極として機能し、他方の電極は陰極として機能する。
【0425】
なお、本発明の一態様の表示装置は、発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)、発光デバイスが形成されている基板側に光を射出する下面射出型(ボトムエミッション型)、両面に光を射出する両面射出型(デュアルエミッション型)のいずれであってもよい。
【0426】
本実施の形態では、主に、表示素子として発光デバイスを用いる場合を例に挙げて説明する。
【0427】
図22(B)は、表示装置50Aを説明するブロック図である。表示装置50Aは、表示部162、及び回路部164を有する。表示部162は、周期的に配列された複数の画素230(画素230[1,1]乃至画素230[m,n]。m及びnは、それぞれ、独立に2以上の整数)を有する。回路部164は、第1駆動回路部231及び第2駆動回路部232を有する。
【0428】
第1駆動回路部231に含まれる回路は、例えば、走査線駆動回路として機能する。第2駆動回路部232に含まれる回路は、例えば、信号線駆動回路として機能する。なお、表示部162を挟んで第1駆動回路部231と向き合う位置に、何らかの回路を設けてもよい。表示部162を挟んで第2駆動回路部232と向き合う位置に、何らかの回路を設けてもよい。
【0429】
回路部164には、シフトレジスタ回路、レベルシフタ回路、インバータ回路、ラッチ回路、アナログスイッチ回路、デマルチプレクサ回路、及び論理回路の様々な回路を用いることができる。回路部164には、トランジスタ及び容量素子等を用いることができる。回路部164が有するトランジスタを、画素230に含まれるトランジスタと同じ工程で形成してもよい。
【0430】
表示装置50Aは、各々が略平行に配設され、かつ、第1駆動回路部231に含まれる回路によって電位が制御される配線236と、各々が略平行に配設され、かつ、第2駆動回路部232に含まれる回路によって電位が制御される配線238と、を有する。なお、
図22(B)では、画素230に配線236と配線238が接続している例を示している。ただし、配線236と配線238は一例であり、画素230と接続する配線は、配線236と配線238に限らない。
【0431】
本発明の一態様である半導体装置は、サブミクロンサイズのチャネル長を有し、オン電流が大きいVFETと、チャネル長が長く、飽和性が高いVLFETと、を一部の工程を共通にして形成することができる。これらのトランジスタのチャネル形成領域には、酸化物半導体(OS)を好適に用いることができ、オフ電流が小さいトランジスタとすることができる。本発明の一態様である半導体装置は、表示部162及び回路部164の一方又は双方に好適に用いることができる。また、本発明の一態様である半導体装置を表示部162及び回路部164の双方に用いる、つまり表示装置が有するトランジスタの全てをOSトランジスタとすることもできる。このように表示装置が有するトランジスタの全てをOSトランジスタとすることで、製造コストを低く抑えることができるといった効果を奏する。
【0432】
<構成例2>
回路部164に用いることができる回路として、ラッチ回路を例に挙げて構成例を説明する。
【0433】
図23(A)は、ラッチ回路LATの構成例を示す回路図である。
図23(A)に示すラッチ回路LATは、トランジスタTr31と、トランジスタTr33と、トランジスタTr35と、トランジスタTr36と、容量素子C31と、インバータ回路INVと、を有する。
図23(A)において、トランジスタTr33のソース又はドレインの一方と、トランジスタTr35のゲートと、容量素子C31の一方の電極と、が電気的に接続されるノードをノードNとする。
【0434】
図23(A)に示すラッチ回路LATにおいて、端子SMPに高電位の信号を入力すると、トランジスタTr33がオン状態となる。これにより、ノードNの電位が、端子ROUTの電位に対応する電位となり、端子ROUTからラッチ回路LATに入力される信号に対応するデータが、ラッチ回路LATに書き込まれる。ラッチ回路LATにデータを書き込んだ後、端子SMPの電位を低電位とすると、トランジスタTr33がオフ状態となる。これにより、ノードNの電位が保持され、ラッチ回路LATに書き込まれたデータが保持される。具体的には、例えば、ノードNの電位が低電位である場合は、ラッチ回路LATに値が“0”のデータが保持されているとし、ノードNの電位が高電位である場合は、ラッチ回路LATに値が“1”のデータが保持されているとすることができる。
【0435】
トランジスタTr33には、オフ電流が小さいトランジスタを用いることが好ましい。トランジスタTr33には、OSトランジスタを好適に用いることができる。これにより、ラッチ回路LATは、データを長期間保持することができる。よって、ラッチ回路LATへのデータの再書き込みの頻度を低くすることができる。
【0436】
本明細書等において、端子SP2から入力される信号が端子LINに出力されるようなデータをラッチ回路LATに書き込むことを、単に「ラッチ回路LATにデータを書き込む。」という場合がある。つまり、例えば値が“1”のデータをラッチ回路LATに書き込むことを、単に「ラッチ回路LATにデータを書き込む。」という場合がある。
【0437】
ラッチ回路LATに、本発明の一態様に係る半導体装置を好適に用いることができる。例えば、トランジスタTr31、トランジスタTr33、トランジスタTr35、及びトランジスタTr36の一又は複数に、
図7(B)等に示すトランジスタ100又はトランジスタ200を適用することができる。
【0438】
インバータ回路INVの構成例を、
図23(B)に示す。インバータ回路INVは、トランジスタTr41と、トランジスタTr43と、トランジスタTr45と、トランジスタTr47と、容量素子C41と、を有する。
【0439】
ラッチ回路LATを
図23(A)に示す構成とし、インバータ回路INVを
図23(B)に示す構成とすることにより、ラッチ回路LATが有するトランジスタを、全て同一の極性のトランジスタとすることができ、例えば、nチャネル型トランジスタとすることができる。これにより、例えばトランジスタTr33の他、トランジスタTr31、トランジスタTr35、トランジスタTr36、トランジスタTr41、トランジスタTr43、トランジスタTr45、及びトランジスタTr47を、OSトランジスタとすることができる。よって、ラッチ回路LATが有するトランジスタを全て同じ工程で作製することができる。
【0440】
インバータ回路INVに、本発明の一態様に係る半導体装置を好適に用いることができる。例えば、トランジスタTr41、トランジスタTr43、トランジスタTr45、及びトランジスタTr47の一又は複数に、
図7(B)等に示すトランジスタ100又はトランジスタ200を適用することができる。
【0441】
高い飽和性を求められるトランジスタに、トランジスタ20及びトランジスタ200の一種又は複数種を好適に用いることができる。さらに、トランジスタ100を用いることにより、占有面積を縮小することができ、狭額縁の表示装置とすることができる。また、大きいオン電流が求められるトランジスタに、トランジスタ100を好適に用いることができる。これにより、高い性能の表示装置とすることができる。
【0442】
<構成例3>
画素230の構成例を、
図24(A)に示す。画素230は、画素回路51及び発光デバイス61を有する。
【0443】
図24(A)に示す画素回路51は、トランジスタ52A、トランジスタ52B、及び容量素子53を有する2Tr1C型の画素回路である。なお、本発明の一態様の表示装置に適用することができる画素回路は、特に限定されない。
【0444】
発光デバイス61のアノードは、トランジスタ52Bのソース又はドレインの一方、及び、容量素子53の一方の電極と電気的に接続される。トランジスタ52Bのソース又はドレインの他方は、配線ANOと電気的に接続される。トランジスタ52Bのゲートは、トランジスタ52Aのソース又はドレインの一方、及び、容量素子53の他方の電極と電気的に接続される。トランジスタ52Aのソース又はドレインの他方は、配線GLと電気的に接続される。トランジスタ52Aのゲートは、配線GLと電気的に接続される。発光デバイス61のカソードは、配線VCOMと電気的に接続される。
【0445】
配線GLは配線236に相当し、配線SLは配線238に相当する。配線VCOMは、発光デバイス61に電流を供給するための電位を与える配線である。トランジスタ52Aは、配線GLの電位に基づいて、配線SLとトランジスタ52Bのゲート間の導通状態又は非導通状態を制御する機能を有する。例えば、配線ANOにはVDDが供給され、配線VCOMにはVSSが供給される。
【0446】
トランジスタ52Bは、発光デバイス61に流れる電流量を制御する機能を有する。容量素子53は、トランジスタ52Bのゲート電位を保持する機能を有する。発光デバイス61が射出する光の強度は、トランジスタ52Bのゲートに供給される画像信号に応じて制御される。
【0447】
画素回路51に含まれるトランジスタの一部又は全部に、バックゲートを設けてもよい。
図24(A)に示す画素回路51は、トランジスタ52Bがバックゲートを有し、当該バックゲートが、トランジスタ52Bのソース又はドレインの一方と電気的に接続される構成を示している。なお、トランジスタ52Bのバックゲートが、トランジスタ52Bのゲートと電気的に接続される構成としてもよい。
【0448】
画素回路51に、前述の半導体装置を好適に用いることができる。画素230の選択状態を制御するための選択トランジスタとして機能するトランジスタ52Aと比較して、発光デバイス61に流れる電流を制御する駆動トランジスタとして機能するトランジスタ52Bは、飽和性が高いことが好ましい。トランジスタ52Bに、チャネル長の長いトランジスタ20及びトランジスタ200の一種を適用することで、信頼性の高い表示装置とすることができる。また、トランジスタ52Aに、トランジスタ100を適用することで、画素回路51Aの占有面積を縮小することができ、高精細の表示装置とすることができる。
【0449】
なお、トランジスタ52Bにも、トランジスタ100を適用してもよい。トランジスタ52Bに、チャネル長の短いトランジスタを適用することにより、輝度の高い表示装置とすることができる。また、画素回路51の占有面積を縮小することができ、高精細の表示装置とすることができる。
【0450】
図24(A)に示す画素230と異なる構成例を、
図24(B)に示す。画素230は、画素回路51A及び発光デバイス61を有する。
【0451】
図24(B)に示す画素回路51Aは、トランジスタ52Cを有する点で、
図24(A)に示す画素回路51と主に異なる。画素回路51Aは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52C、及び容量素子53を有する3Tr1C型の画素回路である。
【0452】
トランジスタ52Cのソース又はドレインの一方は、トランジスタ52Bのソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ52Cのソース又はドレインの他方は、配線V0と電気的に接続される。例えば、配線V0には、基準電位が供給される。トランジスタ52Cのゲートは、配線GLと電気的に接続される。
【0453】
トランジスタ52Cは、配線GLの電位に基づいて、トランジスタ52Bのソース電極又はドレイン電極の一方と配線V0間の導通状態又は非導通状態を制御する機能を有する。トランジスタ52Cを介して与えられる配線V0の基準電位によって、トランジスタ52Bのゲート-ソース間電圧のばらつきを抑制することができる。
【0454】
配線V0を用いて、画素パラメータの設定に用いることのできる電流値を取得することができる。具体的には、配線V0は、トランジスタ52Bに流れる電流、又は、発光デバイス61に流れる電流を、外部に出力するためのモニタ線として機能させることができる。配線V0に出力された電流は、ソースフォロア回路により電圧に変換され、外部に出力することができる。又は、ADコンバータによりデジタル信号に変換され、外部に出力することができる。
【0455】
画素回路51Aに、前述の半導体装置を好適に用いることができる。トランジスタ52Bに、チャネル長の長いトランジスタ20及びトランジスタ200の一種を適用することで、信頼性の高い表示装置とすることができる。また、トランジスタ52A及びトランジスタ52Cに、トランジスタ100を適用することで、画素回路51Aの占有面積を縮小することができ、高精細の表示装置とすることができる。なお、トランジスタ52Bにも、トランジスタ100を適用してもよい。
【0456】
画素回路51の構成例を、
図24(C)に示す。
図24(C)は、画素回路51の断面図である。
図24(C)は、トランジスタ52A、トランジスタ52B、及び発光デバイス61が有する画素電極を抜粋して示している。なお、トランジスタ52Aとトランジスタ52Bの電気的な接続を省略している。
【0457】
トランジスタ52Aは、導電層104と、絶縁層106と、半導体層108と、導電層112aと、導電層112bと、を有する。トランジスタ52Bは、絶縁層106と、半導体層208と、導電層204と、導電層212aと、導電層212bと、を有する。トランジスタ52A及びトランジスタ52Bについては、前述の記載を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
【0458】
トランジスタ52A及びトランジスタ52Bは、絶縁層102上に設けられる。トランジスタ52A、トランジスタ52B、及び容量素子53を覆うように絶縁層195が設けられ、絶縁層195を覆うように絶縁層233が設けられ、絶縁層233を覆うように絶縁層235が設けられる。絶縁層235上に、発光デバイス61を設けることができる。
図24(C)には、発光デバイス61の一方の電極として機能する画素電極111を示している。絶縁層195、絶縁層233、絶縁層110a、絶縁層110b、及び絶縁層110cは、導電層212bに達する第1の開口を有し、第1の開口を覆うように導電層234が設けられる。導電層234は、第1の開口を介して、導電層212bと電気的に接続される。絶縁層235は、導電層234に達する第2の開口を有し、第2の開口を覆うように画素電極111が設けられる。画素電極111は、第2の開口を介して、導電層234と電気的に接続される。絶縁層195は、前述の記載を参照することができるため、詳細な説明は省略する。絶縁層233及び絶縁層235は、トランジスタ52A、トランジスタ52B、及びトランジスタ52Cに起因する凹凸を小さくし、発光デバイス61の被形成面をより平坦にする機能を有する。なお、本明細書等において、絶縁層233及び絶縁層235を、それぞれ、平坦化層と記す場合がある。
【0459】
絶縁層233及び絶縁層235には、それぞれ、有機絶縁膜を用いることが好適である。有機絶縁膜に用いることができる材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及び、これら樹脂の前駆体等が挙げられる。絶縁層235を、有機絶縁膜と、無機絶縁膜と、の積層構造にしてもよい。絶縁層235を、有機絶縁膜と、当該有機絶縁膜上の無機絶縁膜と、の積層構造にすることが好ましい。これにより、無機絶縁膜は、発光デバイス61を形成する際のエッチング保護層として機能することができる。具体的には、画素電極111の形成時に絶縁層235の一部がエッチングされ、絶縁層235に凹部が形成されることを抑制することができる。又は、絶縁層235には、画素電極111の形成時に、凹部が設けられてもよい。同様に、絶縁層233を、有機絶縁膜と、無機絶縁膜と、の積層構造にしてもよい。
【0460】
<構成例4>
前述と異なる構成例を、
図25に示す。表示装置50Bは、基板310上に画素回路、駆動回路などが設けられた構成となっている。表示装置50Bは、素子層71、素子層73、素子層75、及び配線層77を有する。配線層77は、配線が設けられる層である。
【0461】
素子層71は、基板310を有し、基板310上には、トランジスタ300が形成されている。また、トランジスタ300の上方には、配線層77が設けられており、配線層77には、トランジスタ300、トランジスタMTCK、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを電気的に接続する配線が設けられている。また、配線層77の上方には、素子層73及び素子層75が設けられており、素子層73は、トランジスタMTCKなどを有する。素子層75は、発光デバイス130(
図25では、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B)などを有する。
【0462】
トランジスタ300は、素子層71に含まれるトランジスタとすることができる。また、トランジスタMTCKは、素子層73に含まれるトランジスタとすることができる。また、発光デバイス130は、素子層75に含まれる発光デバイスとすることができる。
【0463】
基板310には、例えば、半導体基板(例えば、シリコン又はゲルマニウムを材料とした単結晶基板)を用いることができる。また、基板310には、半導体基板以外として、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムを用いることができる。なお、本実施の形態では、基板310は、シリコンを材料として有する半導体基板として説明する。そのため、素子層71に含まれるトランジスタは、Siトランジスタとすることができる。
【0464】
トランジスタ300は、素子分離層312と、導電層316と、絶縁層315と、絶縁層317と、基板310の一部からなる半導体領域313と、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a及び低抵抗領域314bと、を有する。このため、トランジスタ300は、Siトランジスタとなっている。なお、
図25では、トランジスタ300のソース又はドレインの一方が、後述する導電層328を介して、後述する導電層330、導電層356、及び導電層514に電気的に接続されている構成を示しているが、本発明の一態様の表示装置の電気的な接続構成は、これに限定されない。本発明の一態様の表示装置は、例えば、トランジスタ300のゲートが、導電層328を介して、導電層514に電気的に接続されている構成としてもよい。
【0465】
トランジスタ300は、例えば、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が、ゲート絶縁層として機能する絶縁層315を介して、導電層316に覆う構成にすることによって、Fin型にすることができる。トランジスタ300をFin型にすることにより、実効上のチャネル幅が増大することができ、トランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。また、トランジスタ300は、Fin型でなくプレーナ型としてもよい。
【0466】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。又はトランジスタ300を複数設け、pチャネル型、及びnチャネル型の双方を用いてもよい。
【0467】
半導体領域313のチャネルが形成される領域と、その近傍の領域と、ソース領域又はドレイン領域となる低抵抗領域314a及び低抵抗領域314bと、には、シリコン系半導体を含むことが好ましく、具体的には、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、上述した各領域は、例えば、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、又は窒化ガリウムを用いて形成されてもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又は、トランジスタ300は、例えば、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムを用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0468】
ゲート電極として機能する導電層316には、ヒ素、又はリンといったn型の導電性を付与する元素、若しくは、ホウ又はアルミニウムといったp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料を用いることができる。又は、導電層316には、例えば、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料といった導電性材料を用いることができる。
【0469】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタン及び窒化タンタルの一方又は双方の材料を用いることが好ましい。さらに、導電性と埋め込み性を両立するために導電体に、タングステン及びアルミニウムの一方又は双方の金属材料を積層として用いることが好ましく、特に、タングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0470】
素子分離層312は、基板310上に形成されている複数のトランジスタ同士を分離するために設けられている。素子分離層は、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、STI(Shallow Trench Isolation)法、又はメサ分離法を用いて形成することができる。
【0471】
図25に示すトランジスタ300上には、絶縁層320及び絶縁層322が、基板310側から順に積層して設けられている。
【0472】
絶縁層320及び絶縁層322として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムから選ばれた一以上を用いればよい。
【0473】
絶縁層322は、絶縁層320及び絶縁層322に覆われているトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁層322の上面は、平坦性を高めるためにCMP法を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0474】
絶縁層320及び絶縁層322には、絶縁層322より上方に設けられているトランジスタMTCKなどと接続する導電層328が埋め込まれている。なお、導電層328は、プラグ又は配線としての機能を有する。このため、導電層328には、導電層MPGに適用することができる材料を用いることができる。
【0475】
表示装置50Bでは、トランジスタ300上に配線層77が設けられている。配線層77は、例えば、絶縁層324と、絶縁層326と、導電層330と、絶縁層350と、絶縁層352と、絶縁層354と、導電層356と、を有する。
【0476】
絶縁層322上及び導電層328上には、絶縁層324と、絶縁層326と、が順に積層して設けられている。また、導電層328に重なる領域において、絶縁層324と、絶縁層326と、には、開口が形成されている。また、当該開口には、導電層330が埋め込まれている。
【0477】
絶縁層326上、及び導電層330上には、絶縁層350と、絶縁層352と、絶縁層354と、が順に積層して設けられている。また、導電層330に重なる領域において、絶縁層350と、絶縁層352と、絶縁層354と、には、開口が形成されている。また、当該開口には、導電層356が埋め込まれている。
【0478】
導電層330及び導電層356は、トランジスタ300と接続するプラグ又は配線としての機能を有する。なお、導電層330及び導電層356は、前述した導電層328又は導電層596と同様の材料を用いて設けることができる。
【0479】
なお、例えば、絶縁層324及び絶縁層350は、絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁物を用いることが好ましい。また、絶縁層326、絶縁層352、及び絶縁層354には、絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁物を用いることが好ましい。また、絶縁層326、絶縁層352、及び絶縁層354は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。また、導電層356は、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。
【0480】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体として、例えば、窒化タンタルを用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁層350と接する構造であることが好ましい。
【0481】
絶縁層354及び導電層356の上方には、絶縁層512が設けられている。また、絶縁層512上には、絶縁層IS1が設けられている。また、絶縁層IS1及び絶縁層512には、プラグ又は配線として機能する導電層514が埋め込まれている。これにより、トランジスタMTCKのソース又はドレインの一方とトランジスタ300のソース又はドレインの一方とが電気的に接続される。なお、導電層514には、例えば、導電層MPGに適用することができる材料を用いることができる。
【0482】
絶縁層IS1上及び導電層514上には、トランジスタMTCKが設けられている。トランジスタMTCKの上方には、絶縁層IS3が形成されている。また、絶縁層IS3の下に絶縁層IS2が形成されている。また、絶縁層IS3上には、絶縁層574及び絶縁層581が、この順に積層して設けられている。また、絶縁層GI1、絶縁層IS2、絶縁層IS3、絶縁層574、及び絶縁層581には、プラグ又は配線として機能する導電層MPGが埋め込まれている。なお、トランジスタMTCKの周辺の絶縁層、導電層、及び半導体層については、実施の形態2を参照することができる。
【0483】
絶縁層574は、水及び水素(例えば、水素原子及び水素分子の一方又は双方)といった不純物の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。つまり、絶縁層574は、当該不純物がトランジスタMTCKに混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁層574は、酸素(例えば、酸素原子及び酸素分子の一方又は双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層574は、絶縁層IS2及び絶縁層IS3より酸素透過性が低いことが好ましい。
【0484】
そのため、絶縁層574は、水及び水素といった不純物の拡散を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁層574は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、N2O、NO、及びNO2)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子及び酸素分子の一方又は双方)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0485】
水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁物として、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、及びタンタルから選ばれた一以上を含む絶縁物を、単層で、又は、積層で用いればよい。具体的には、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁物として、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、及び酸化タンタルといった金属酸化物が挙げられる。また、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁物として、例えば、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)が挙げられる。また、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁物として、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコン、及び窒化シリコンといった金属窒化物が挙げられる。
【0486】
特に、絶縁層574には、酸化アルミニウム又は窒化シリコンを用いることが好ましい。これにより、水及び水素といった不純物が、絶縁層574の上方からトランジスタMTCKに拡散することを抑制することができる。又は、絶縁層IS3等に含まれる酸素が、絶縁層574の上方に拡散することを抑制することができる。
【0487】
絶縁層581は、層間膜として機能する膜であって、絶縁層574よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁層581の比誘電率は、4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また、例えば、絶縁層581の比誘電率は、絶縁層574の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層581を誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0488】
絶縁層581は、膜中の水及び水素といった不純物の濃度が低減されていることが好ましい。この場合、絶縁層581には、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、又は窒化シリコンを用いることができる。また、絶縁層581には、例えば、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素と窒素を添加した酸化シリコン、又は、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、及び、空孔を有する酸化シリコンといった材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。また、絶縁層581には、樹脂を用いることができる。また、絶縁層581に適用することができる材料は、上述した材料を適宜組み合わせたものとしてもよい。
【0489】
絶縁層574上及び絶縁層581上には、絶縁層592、及び絶縁層594がこの順に積層して設けられている。
【0490】
絶縁層592には、基板310、トランジスタMTCKから、絶縁層592より上方の領域(例えば、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bなどが設けられている領域)に、水、及び水素といった不純物が拡散しないようなバリア性を有する絶縁膜(バリア性絶縁膜と呼称する。)を用いることが好ましい。したがって、絶縁層592は、水素原子、水素分子、及び水分子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、状況によっては、絶縁層592は、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、N2O、NO、及びNO2)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子及び酸素分子の一方又は双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0491】
水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。
【0492】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)を用いて分析することができる。例えば、絶縁層324の水素の脱離量は、TDSにおいて、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁層324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0493】
絶縁層594は、絶縁層581と同様に、誘電率が低い層間膜とすることが好ましい。このため、絶縁層594には、絶縁層581に適用することができる材料を用いることができる。
【0494】
なお、絶縁層594は、絶縁層592よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁層594の比誘電率は、4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また、例えば、絶縁層594の比誘電率は、絶縁層592の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層594を誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0495】
絶縁層GI1、絶縁層IS2、絶縁層IS3、絶縁層574、及び絶縁層581には、プラグ又は配線として機能する導電層MPGが埋め込まれ、絶縁層592及び絶縁層594には、プラグ又は配線として機能する導電層596が埋め込まれている。特に、導電層MPG及び導電層596は、絶縁層594より上方に設けられている発光デバイスなどと電気的に接続されている。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグと、が一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、及び、導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0496】
各プラグ及び配線(例えば、導電層MPG及び導電層596)の材料として、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、及び金属酸化物材料から選ばれた一以上の導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン又はモリブデンといった高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウム又は銅といった低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで、配線抵抗を低くすることができる。
【0497】
絶縁層594上及び導電層596上には、絶縁層598及び絶縁層599が順に形成されている。
【0498】
絶縁層598は、絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁物を用いることが好ましい。また、絶縁層599には、絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁物を用いることが好ましい。また、絶縁層599は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。
【0499】
絶縁層599上には、発光デバイス130及び接続部140が形成されている。
【0500】
接続部140は、カソードコンタクト部と呼ばれる場合があり、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bのそれぞれのカソード電極に電気的に接続されている。
図25では、接続部140は、後述する導電層182a乃至導電層182cから選ばれた一以上の導電層と、後述する導電層126a乃至導電層126cの少なくとも一の導電層と、後述する導電層129a乃至導電層129cから選ばれた一以上の導電層と、後述する共通層114と、後述する共通電極115と、を有する。
【0501】
なお、接続部140は、平面視において表示部の四辺を囲むように設けられてもよく、又は、表示部内(例えば、隣り合う発光デバイス130同士の間)に設けられてもよい(図示しない。)。
【0502】
発光デバイス130Rは、導電層182aと、導電層182a上の導電層126aと、導電層126a上の導電層129aと、を有する。導電層182a、導電層126a、及び導電層129aの全てを画素電極と呼ぶこともでき、一部を画素電極と呼ぶこともできる。また、発光デバイス130Gは、導電層182bと、導電層182b上の導電層126bと、導電層126b上の導電層129bと、を有する。発光デバイス130Rと同様に、導電層182b、導電層126b、及び導電層129bの全てを画素電極と呼ぶこともでき、一部を画素電極と呼ぶこともできる。また、発光デバイス130Bは、導電層182cと、導電層182c上の導電層126cと、導電層126c上の導電層129cと、を有する。発光デバイス130R及び発光デバイス130Gと同様に、導電層182c、導電層126c、及び導電層129cの全てを画素電極と呼ぶこともでき、一部を画素電極と呼ぶこともできる。
【0503】
導電層182a乃至導電層182c、及び、導電層126a乃至導電層126cには、例えば、反射電極として機能する導電層を用いることができる。反射電極として機能する導電層には、可視光に対して反射率の高い導電層として、例えば、銀、アルミニウム、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金膜(Ag-Pd-Cu(APC)膜)を適用することができる。また、導電層182a乃至導電層182c、及び、導電層126a乃至導電層126cには、一対のチタンで挟まれたアルミニウムの積層膜(Ti、Al、Tiの順の積層膜)、又は、一対のインジウムスズ酸化物で挟まれた銀の積層膜(ITO、Ag、ITOの順の積層膜)を用いることができる。
【0504】
例えば、導電層182a乃至導電層182cに、反射電極として機能する導電層を用いて、導電層126a乃至導電層126cに、透光性が高い材料を用いてもよい。透光性が高い材料として、例えば、銀とマグネシウムの合金、及びインジウムスズ酸化物(ITOと呼ばれる場合がある。)、が挙げられる。
【0505】
導電層129a乃至導電層129cには、例えば、透明電極として機能する導電層を用いることができる。透明電極として機能する導電層は、例えば、上述した透光性が高い導電層とすることができる。
【0506】
後に詳述する発光デバイス130に、マイクロキャビティ構造(微小共振器構造)を設けてもよい。マイクロキャビティ構造とは、発光層の下面と下部電極の上面との距離を、当該発光層が発光する光の色の波長に応じた厚さにする構造を指す。この場合、上部電極(共通電極)である導電層129a乃至導電層129cに、透光性及び光反射性を有する導電材料を用い、下部電極(画素電極)である導電層182a乃至導電層182c、及び、導電層126a乃至導電層126cに、光反射性を有する導電材料を用いること好ましい。
【0507】
マイクロキャビティ構造とは、下部電極と発光層の光学的距離を(2n-1)λ/4(ただし、nは1以上の整数、λは増幅したい発光の波長)に調節した構造を指す。これにより、下部電極によって反射されて戻ってきた光(反射光)は、発光層から上部電極に直接入射する光(入射光)と大きな干渉を起こす。そのため、波長λのそれぞれの反射光と入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。一方で、反射光と入射光とが波長λ以外である場合、位相が合わなくなるため、共振せずに減衰する。
【0508】
導電層182aは、絶縁層599に設けられた開口を介して、絶縁層594に埋め込まれている導電層596と接続されている。また、導電層182aの端部よりも外側に導電層126aの端部が位置している。導電層126aの端部と導電層129aの端部は、揃っている、又は、概略揃っている。
【0509】
発光デバイス130Gにおける導電層182b、導電層126b、及び導電層129b、並びに、発光デバイス130Bにおける導電層182c、導電層126c、及び導電層129cについては、それぞれ、発光デバイス130Rにおける導電層182a、導電層126a、及び導電層129aと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0510】
導電層182a、導電層182b、及び導電層182cには、絶縁層599に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。また、当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0511】
層128は、導電層182a乃至導電層182cの凹部を平坦化する機能を有する。導電層182a上乃至導電層182c上、及び層128上には、導電層182a乃至導電層182cと電気的に接続される導電層126a乃至導電層126cが設けられている。したがって、導電層182a乃至導電層182cの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0512】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましい。
【0513】
層128には、有機材料を有する絶縁層を好適に用いることができる。例えば、層128には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、又は、これら樹脂の前駆体を適用することができる。また、層128として、感光性の樹脂を用いることができる。感光性の樹脂として、ポジ型の材料、又は、ネガ型の材料が挙げられる。
【0514】
感光性の樹脂を用いることにより、露光及び現像の工程のみで層128を作製することができ、ドライエッチングあるいはウェットエッチングによる導電層182a、導電層182b、及び導電層182cの表面への影響を低減することができる。また、ネガ型の感光性樹脂を用いて層128を形成することにより、絶縁層599の開口の形成に用いるフォトマスク(露光マスク)と同一のフォトマスクを用いて、層128を形成できる場合がある。
【0515】
発光デバイス130Rは、第1の層113aと、第1の層113a上の共通層114と、共通層114上の共通電極115と、を有する。また、発光デバイス130Gは、第2の層113bと、第2の層113b上の共通層114と、共通層114上の共通電極115と、を有する。また、発光デバイス130Bは、第3の層113cと、第3の層113c上の共通層114と、共通層114上の共通電極115と、を有する。
【0516】
なお、第1の層113aは、導電層126aの上面及び側面と、導電層129aの上面及び側面と、を覆うように形成されている。同様に、第2の層113bは、導電層126bの上面及び側面と、導電層129bの上面及び側面と、を覆うように形成されている。また、同様に、第3の層113cは、導電層126cの上面及び側面と、導電層129cの上面及び側面と、を覆うように形成されている。したがって、導電層126a、導電層126b、及び導電層126cが設けられている領域全体を、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bの発光領域として用いることができるため、画素の開口率を高めることができる。
【0517】
発光デバイス130Rにおいて、第1の層113aと共通層114を、まとめてEL層と呼ぶことができる。また、同様に、発光デバイス130Gにおいて、第2の層113bと共通層114を、まとめてEL層と呼ぶこともできる。また、同様に、発光デバイス130Bにおいて、第3の層113cと共通層114を、まとめてEL層と呼ぶことができる。
【0518】
本実施の形態の発光デバイスの構成に、特に限定はなく、シングル構造であってもタンデム構造であってもよい。
【0519】
第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cは、フォトリソグラフィ法により島状に加工されている。そのため、第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cは、それぞれその端部において、上面と側面とのなす角が90度に近い形状となる。一方、例えば、FMMを用いて形成された有機膜は、その厚さが端部に近いほど徐々に薄くなる傾向があり、例えば、1μm以上10μm以下の範囲にわたって、上面がスロープ状に形成されるため、上面と側面の区別が困難な形状となる。
【0520】
第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cは、上面と側面の区別が明瞭となる。これにより、隣接する第1の層113aと第2の層113bにおいて、第1の層113aの側面の一と、第2の層113bの側面の一は、互いに対向して配置される。これは、第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cのうち、いずれの組み合わせにおいても同様である。
【0521】
第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cは、少なくとも発光層を有する。例えば、第1の層113aが、赤色の光を発する発光層を有し、第2の層113bが緑色の光を発する発光層を有し、第3の層113cが、青色の光を発する発光層を有する構成であると好ましい。また、それぞれの発光層は、上記以外の色として、シアン、マゼンタ、黄、又は白を適用することができる。
【0522】
第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cは、発光層と、発光層上のキャリア輸送層(電子輸送層又は正孔輸送層)と、を有することが好ましい。第1の層113a、第2の層113b、及び第3の層113cの表面は、表示装置の作製工程中に露出する場合があるため、キャリア輸送層を発光層上に設けることで、発光層が最表面に露出することを抑制し、発光層が受けるダメージを低減することができる。これにより、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0523】
共通層114は、例えば、電子注入層又は正孔注入層を有する。又は、共通層114は、電子輸送層と電子注入層とを積層して有していてもよく、正孔輸送層と正孔注入層とを積層して有していてもよい。共通層114は、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bで共有されている。
【0524】
共通電極115は、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bで共有されている。また、
図25に示すように、複数の発光デバイスが共通して有する共通電極115は、接続部140に含まれている導電層に電気的に接続される。
【0525】
絶縁層125は、水及び酸素の一方又は双方に対するバリア絶縁層としての機能を有することが好ましい。また、絶縁層125は、水及び酸素の一方又は双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁層125は、水及び酸素の一方又は双方を捕獲、又は固着する(ゲッタリングともいう。)機能を有することが好ましい。絶縁層125が、バリア絶縁層としての機能、又は、ゲッタリング機能を有することで、外部から各発光デバイスに拡散し得る不純物(代表的には、水及び酸素の一方又は双方)の侵入を抑制することが可能な構成となる。当該構成とすることで、信頼性の高い発光デバイス、さらには、信頼性の高い表示パネルを提供することができる。
【0526】
絶縁層125は、不純物濃度が低いことが好ましい。これにより、絶縁層125からEL層に不純物が混入し、EL層が劣化することを抑制することができる。また、絶縁層125において、不純物濃度を低くすることで、水及び酸素の一方又は双方に対するバリア性を高めることができる。例えば、絶縁層125は、水素濃度及び炭素濃度の一方、好ましくは双方が十分に低いことが望ましい。
【0527】
絶縁層127として、有機材料を有する絶縁層を好適に用いることができる。有機材料として、感光性の有機樹脂を用いることが好ましく、例えば、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いればよい。また、絶縁層127の材料の粘度は、1cP以上1500cP以下とすればよく、1cP以上12cP以下とすることが好ましい。絶縁層127の材料の粘度を上記の範囲にすることで、後述するテーパ形状を有する絶縁層127を、比較的容易に形成することができる。なお、本明細書などにおいて、アクリル樹脂とは、ポリメタクリル酸エステル又はメタクリル樹脂だけを指すものではなく、広義のアクリル系ポリマー全体を指す場合がある。
【0528】
なお、絶縁層127は、後述するように側面にテーパ形状を有していればよく、絶縁層127に用いることができる有機材料は、上記に限られるものではない。例えば、絶縁層127には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、又は、これら樹脂の前駆体を適用することができる場合がある。また、絶縁層127として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、又はアルコール可溶性のポリアミド樹脂といった有機材料を適用することができる場合がある。また、絶縁層127には、例えば、感光性の樹脂として、フォトレジストを用いることができる場合がある。なお、感光性の樹脂として、ポジ型の材料、又は、ネガ型の材料が挙げられる。
【0529】
絶縁層127には可視光を吸収する材料を用いてもよい。絶縁層127が発光デバイスからの発光を吸収することで、発光デバイスから、絶縁層127を介して、隣接する発光デバイスに光が漏れること(迷光)を抑制することができる。これにより、表示パネルの表示品位を高めることができる。また、表示パネルに偏光板を用いなくても、表示品位を高めることができるため、表示パネルの軽量化及び薄型化を図ることができる。
【0530】
可視光を吸収する材料として、黒色などの顔料を含む材料、染料を含む材料、光吸収性を有する樹脂材料(例えば、ポリイミド)、及び、カラーフィルタに用いることのできる樹脂材料(カラーフィルタ材料)が挙げられる。特に、2色又は3色以上のカラーフィルタ材料を積層又は混合した樹脂材料を用いると、可視光の遮蔽効果を高めることができるため好ましい。特に、3色以上のカラーフィルタ材料を混合させることで、黒色又は黒色近傍の樹脂層とすることが可能となる。
【0531】
絶縁層127は、例えば、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコートといった湿式の成膜方法を用いて形成することができる。特に、スピンコートにより、絶縁層127となる有機絶縁膜を形成することが好ましい。
【0532】
絶縁層127は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で形成する。絶縁層127を形成する際の基板温度は、代表的には、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0533】
以下では、発光デバイス130Rと発光デバイス130Gの間の絶縁層127の構造を例に挙げて、絶縁層127などの構造について説明を行う。なお、発光デバイス130Gと発光デバイス130Bの間の絶縁層127、及び、発光デバイス130Bと発光デバイス130Rの間の絶縁層127などについても同様のことがいえる。また、以下では、第2の層113b上の絶縁層127の端部を例に挙げて説明する場合があるが、第1の層113a上の絶縁層127の端部、及び、第3の層113c上の絶縁層127の端部についても同様のことがいえる。
【0534】
絶縁層127は、表示装置の断面視において、側面にテーパ角θ1のテーパ形状を有することが好ましい。テーパ角θ1は、絶縁層127の側面と基板面のなす角である。ただし、基板面に限らず、絶縁層125の平坦部の上面、又は、第2の層113bの平坦部の上面と、絶縁層127の側面と、がなす角としてもよい。また、絶縁層127の側面をテーパ形状にすることにより、絶縁層125の側面、及び、マスク層118aの側面もテーパ形状となる場合がある。
【0535】
絶縁層127のテーパ角θ1は、90度未満であり、60度以下が好ましく、45度以下がより好ましい。絶縁層127の側面端部をこのような順テーパ形状にすることで、絶縁層127の側面端部上に設けられる、共通層114及び共通電極115に、段切れ、又は、局所的な薄膜化などを生じさせることなく、被覆性良く成膜することができる。これにより、共通層114及び共通電極115の面内均一性を向上させることができるため、表示装置の表示品位を向上させることができる。
【0536】
表示装置の断面視において、絶縁層127の上面は、凸曲面形状を有することが好ましい。絶縁層127の上面の凸曲面形状は、中心に向かってなだらかに膨らんだ形状であることが好ましい。また、絶縁層127上面の中心部の突曲面部が、側面端部のテーパ部に連続的に接続される形状であることが好ましい。絶縁層127をこのような形状にすることで、絶縁層127上全体で、共通層114及び共通電極115を被覆性良く成膜することができる。
【0537】
絶縁層127は、2つのEL層の間の領域(例えば、第1の層113aと、第2の層113bと、の間の領域)に形成される。このとき、絶縁層127の一部が、一方のEL層(例えば、第1の層113a)の側面端部と、もう一方のEL層(例えば、第2の層113b)の側面端部に挟まれる位置に配置されることになる。
【0538】
絶縁層127の一方の端部が、画素電極として機能する導電層126aと重なり、絶縁層127の他方の端部が、画素電極として機能する導電層126bと重なることが好ましい。このような構造にすることで、絶縁層127の端部を、第1の層113a(第2の層113b)の概略平坦な領域の上に形成することができる。よって、絶縁層127のテーパ形状を、上記の通り加工することが比較的容易になる。
【0539】
以上のように、絶縁層127などを設けることにより、第1の層113aの概略平坦な領域から第2の層113bの概略平坦な領域まで、共通層114及び共通電極115に段切れ箇所、及び、局所的に膜厚が薄い箇所が形成されるのを防ぐことができる。よって、各発光デバイス間において、共通層114及び共通電極115に、段切れ箇所に起因する接続不良、及び、局所的に膜厚が薄い箇所に起因する電気抵抗の上昇が発生するのを抑制することができる。
【0540】
本実施の形態の表示装置は、発光デバイス間の距離を狭くすることができる。具体的には、発光デバイス間の距離、EL層間の距離、又は画素電極間の距離を、10μm未満、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、70nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、又は10nm以下とすることができる。別言すると、本実施の形態の表示装置は、隣接する2つの島状のEL層の間隔が1μm以下の領域を有し、好ましくは、0.5μm(500nm)以下の領域を有し、さらに好ましくは、100nm以下の領域を有する。このように、各発光デバイス間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率と、を有する表示装置を提供することができる。
【0541】
発光デバイス130上には、保護層131が設けられている。保護層131は、発光デバイス130を保護するパッシベーション膜として機能する膜である。発光デバイスを覆う保護層131を設けることで、発光デバイスに水及び酸素といった不純物が入り込むことを抑制し、発光デバイス130の信頼性を高めることができる。保護層131には、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、又は窒化酸化シリコンを用いることができる。
【0542】
保護層131と、基板119と、は接着層107を介して接着されている。発光デバイスの封止には、固体封止構造又は中空封止構造などを適用することができる。
図25では、基板310と基板119との間の空間が、接着層107で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴンなど)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層107は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層107とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0543】
接着層107には、紫外線硬化型の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、又は、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤といった各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シートを用いてもよい。
【0544】
表示装置50Bは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板119側に射出される。そのため、基板119には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、基板119には、基板310に適用することができる基板のうち、可視光に対する透過性が高い基板を選択すればよい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極115)は可視光を透過する材料を含む。
【0545】
なお、本発明の一態様の表示装置は、トップエミッション型ではなく、発光デバイスが発する光が基板310側に射出されるボトムエミッション型としてもよい。なお、この場合、基板310には、可視光に対する透過性が高い基板を選択すればよい。
【0546】
上記で説明した各々の構成例の一を表示装置に適用することによって、高い解像度、かつ、高い精細度を有する表示装置を実現することができる場合がある。具体的には、例えば、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)の解像度の表示装置を実現することができる場合がある。また、具体的には、例えば、100ppi以上、300ppi以上、500ppi以上、1000ppi以上、2000ppi以上、3000ppi以上、5000ppi以上、又は6000ppi以上の精細度の表示装置を実現することができる場合がある。
【0547】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す、同一の、又は他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。例えば、本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、その本実施の形態で示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。また、例えば、本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0548】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0549】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る電子装置及び表示装置などについて説明する。本発明の一態様は、例えば、VR又はAR用途の装着型の電子装置に好適に用いることができる。
【0550】
<電子装置の構成例>
図26(A)に、装着型の電子装置の一例としてメガネ型の電子装置150の斜視図を示す。
図26(A)に示す電子装置150では、一対の表示装置90(表示装置90_L及び表示装置90_R)、動き検出部101、視線検出部84、演算部103、及び通信部85を筐体105内に備える様子を示している。
【0551】
図26(B)は、
図26(A)の電子装置150のブロック図である。電子装置150は、
図26(A)と同様に、表示装置90_L、表示装置90_R、動き検出部101、視線検出部84、演算部103、及び通信部85を有し、バス配線BWを介して、相互に各種信号を送受信する。表示装置90_L、表示装置90_Rは、それぞれ、複数の画素230、駆動回路65、及び機能回路40を有する。1つの画素230は、1つの発光デバイス61と1つの画素回路51を含む。よって、表示装置90_L、表示装置90_Rは、それぞれ、複数の発光デバイス61及び複数の画素回路51を含む。
【0552】
動き検出部101は、筐体105の動き、すなわち、電子装置150を装着したユーザの頭部の動きを検出する機能を有する。動き検出部101には、例えば、MEMS技術を用いたモーションセンサを用いることができる。モーションセンサとして、3軸モーションセンサ、あるいは6軸モーションセンサなど用いることができる。動き検出部101で検出される筐体105の動きに関する情報は、第1情報、あるいは動き情報などという場合がある。
【0553】
視線検出部84は、ユーザの視線に関する情報を取得する機能を有する。具体的には、ユーザの視線を検出する機能を有する。ユーザの視線は、例えば、瞳孔角膜反射(Pupil Center Corneal Reflection)法、又は明/暗瞳孔(Bright/Dark Pupil Effect)法などの視線計測(アイトラッキング)法で取得すればよい。又は、レーザ又は超音波などを用いた視線計測方法で取得してもよい。
【0554】
演算部103は、視線検出部84における視線の検出結果を用いて、ユーザの注視点を算出する機能を有する。すなわち、ユーザが表示装置90_L及び表示装置90_Rに表示される画像のどのオブジェクトを注視しているかを知ることがきる。また、ユーザが画面以外の部位を注視しているか否かを知ることができる。なお、視線検出部84が得たユーザの視線に関する情報(視線の検出結果)を、第2情報、あるいは視線情報などという場合がある。
【0555】
演算部103は、筐体105の動きに応じた描画処理(画像データの演算処理)を行う機能を有する。演算部103において筐体105の動きに応じた描画処理は、第1情報、及び、通信部85を介して外部より入力される画像データを用いて行われる。当該画像データとして、例えば、360度全方位の画像データを用いることができる。360度全方位の画像データは、例えば、全天球カメラ(全方位カメラ、360度カメラ)で撮影した画像データであってもよく、あるいはコンピュータグラフィックスなどによって生成される画像データであってもよい。演算部103は、第1情報に応じて360度全方位の画像データを、表示装置90_L及び表示装置90_Rに表示可能な画像データに変換する機能を有する。
【0556】
演算部103は、第2情報を用いて、表示装置90_L及び表示装置90_Rそれぞれの表示部に設定する複数の領域の大きさ及び形状を決定する機能を有する。具体的には、演算部103は、第2情報に応じて表示部上の注視点を算出し、当該注視点を基準にして、表示部に後述する第1領域S1乃至第3領域S3等を設定する。
【0557】
演算部103として、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)の他、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などの他のマイクロプロセッサを単独で、又は、組み合わせて用いることができる。また、これらマイクロプロセッサをFPGA(Field Programmable Gate Array)又はFPAA(Field Programmable Analog Array)といったPLD(Programmable Logic Device)によって実現した構成としてもよい。
【0558】
演算部103は、プロセッサにより種々のプログラムからの命令を解釈し実行することで、各種のデータ処理及びプログラム制御を行う。プロセッサにより実行し得るプログラムは、プロセッサが有するメモリ領域に格納されていてもよいし、別途設けられる記憶部に格納されていてもよい。記憶部として、例えば、フラッシュメモリ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)などの不揮発性の記憶素子が適用された記憶装置、又はDRAM(Dynamic RAM)及びSRAM(Static RAM)などの揮発性の記憶素子が適用された記憶装置等を用いてもよい。
【0559】
通信部85は、画像データ等の各種データを取得するために無線又は有線によって外部機器と通信を行う機能を有する。通信部85は、例えば、高周波回路(RF回路)を設け、RF信号の送受信を行えばよい。高周波回路は、各国法制により定められた周波数帯域の電磁信号と電気信号とを相互に変換し、当該電磁信号を用いて無線で他の通信機器との間で通信を行うための回路である。無線通信を行う場合、通信プロトコル又は通信技術として、LTE(Long Term Evolution)、GSM(Global System for Mobile Communication:登録商標)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)、CDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access:登録商標)などの通信規格、又はWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等のIEEEにより通信規格化された仕様を用いることができる。また、国際電気通信連合(ITU)が定める第3世代移動通信システム(3G)、第4世代移動通信システム(4G)、又は第5世代移動通信システム(5G)などを用いることもできる。
【0560】
通信部85において、LAN(Local Area Network)接続用端子、デジタル放送の受信用端子、ACアダプタを接続する端子等の外部ポートを有していてもよい。
【0561】
表示装置90_L、表示装置90_Rは、それぞれ、複数の発光デバイス61、複数の画素回路51、駆動回路65、及び機能回路40を有する。画素回路51は、発光デバイス61の発光を制御する機能を有する。駆動回路65は、画素回路51を制御する機能を有する。
【0562】
演算部103で決定された表示装置の表示部における複数の領域の情報は、領域ごとに解像度を異ならせる駆動などに用いられる。機能回路40は、注視点に近い領域で、解像度の高い表示を行うよう駆動回路65の制御を行い、注視点より遠い領域で解像度の低い表示を行うように駆動回路65の制御を行う機能を有する。
【0563】
例えば、画像データの書き換えを1画素おき、又は、複数画素おきに行うことで、解像度の低い表示を実現することができる。画像データの書き換えを行う画素を減らすことで、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0564】
電子装置150にセンサ97を設けてもよい。センサ97は、ユーザの視覚、聴覚、触覚、味覚、及び嗅覚、のいずれか一又は複数の情報を取得する機能を有すればよい。より具体的には、センサ97は、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、磁気、温度、音声、時間、電場、電流、電圧、電力、放射線、湿度、傾度、振動、におい、及び赤外線、のいずれか一又は複数の情報を検知する機能、又は測定する機能を有すればよい。電子装置150は、一又は複数のセンサ97を備えてもよい。
【0565】
センサ97を用いて、周囲の温度、湿度、照度、臭気などを計測してもよい。また、センサ97を用いて、例えば、指紋、掌紋、虹彩、網膜、脈形状(静脈形状、動脈形状を含む。)、又は、顔などを用いた個人認証のための情報を取得してもよい。また、センサ97を用いて、ユーザの瞬き回数、瞼の挙動、瞳孔の大きさ、体温、脈拍、又は血液中の酸素飽和度などを計測し、ユーザの疲労度及び健康状態などを検出してもよい。電子装置150は、ユーザの疲労度及び健康状態などを検知して、表示装置90に警告などを表示してもよい。
【0566】
ユーザの視線及び瞼の動きを検出して、電子装置150の動作を制御してもよい。ユーザは、電子装置150に触れて操作する必要がないため、両手に何も持たない状態(両手がフリーの状態)で、入力操作などを実現することができる。
【0567】
図27(A)は、電子装置150を示す斜視図である。
図27(A)において電子装置150の筐体105は、一対の表示装置90_L、表示装置90_R及び演算部103の他、一例として、装着部86、緩衝部材87、一対のレンズ88等を有する。一対の表示装置90_L、表示装置90_Rは、筐体105の内部の、レンズ88を通して視認することができる位置にそれぞれ設けられている。
【0568】
図27(A)に示す筐体105には、入力端子98と、出力端子89と、が設けられている。入力端子98には、映像出力機器等からの画像信号(画像データ)、又は、筐体105内に設けられるバッテリ(図示しない。)を充電するための電力等を供給するケーブルを接続することができる。出力端子89は、例えば、音声出力端子として機能し、イヤフォン、ヘッドフォン等を接続することができる。
【0569】
筐体105は、レンズ88及び表示装置90_L、表示装置90_Rが、ユーザの目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。また、レンズ88と表示装置90_L、表示装置90_Rとの距離を変えることで、ピントを調整する機構を有していることが好ましい。
【0570】
緩衝部材87は、ユーザの顔(額、頬など)に接触する部分である。緩衝部材87がユーザの顔と密着することにより、外光の侵入(光漏れ)を防ぐことができ、より没入感を高めることができる。緩衝部材87は、ユーザが電子装置150を装着した際にユーザの顔に密着するよう、緩衝部材87には柔らかい素材を用いることが好ましい。このような素材を用いると、肌触りが良いことに加え、寒い季節などに装着した際に、ユーザに冷たさを感じさせないため好ましい。緩衝部材87又は装着部86などの、ユーザの肌に触れる部材は、取り外し可能な構成とすると、クリーニング又は交換が容易となるため好ましい。
【0571】
本発明の一態様の電子装置は、さらに、イヤフォン99Aを有していてもよい。イヤフォン99Aは、通信部(図示しない。)を有し、無線通信機能を有する。イヤフォン99Aは、無線通信機能により、音声データを出力することができる。なおイヤフォン99Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。
【0572】
イヤフォン99Aは、
図27(B)に示すイヤフォン99Bのように、装着部86に直接接続又は有線接続されている構成とすることができる。また、イヤフォン99B及び装着部86は、マグネットを有していてもよい。これにより、イヤフォン99Bを装着部86に磁力によって固定することができ、収納が容易となり好ましい。
【0573】
<表示装置の構成例>
図26(A)、
図26(B)に示す表示装置90_L、表示装置90_Rに適用可能な表示装置90Aの構成について、
図28(A)、
図28(B)、及び
図29を参照して説明する。
【0574】
図28(A)は、
図26(A)、
図26(B)に示す表示装置90_L、表示装置90_Rに適用可能な表示装置90Aの斜視図である。
【0575】
表示装置90Aは、基板91、基板92を有する。表示装置90Aは、基板91と基板92との間に設けられる表示部93を有する。表示部93は、複数の画素230を有する。画素230は、画素回路51及び発光デバイス61を有する。表示部93は、表示装置90Aにおける画像を表示する領域である。
【0576】
画素230を1920×1080画素のマトリクス状に配置すると、いわゆるフルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、又は「2K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示部93を実現することができる。また、例えば、画素230を3840×2160画素のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、又は「4K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示部93を実現することができる。また、例えば、画素230を7680×4320画素のマトリクス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、又は「8K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示部93を実現することができる。画素230を増やすことで、16Kさらには32Kの解像度で表示可能な表示部93を実現することも可能である。
【0577】
表示部93の画素密度(精細度)は、1000ppi以上10000ppi以下が好ましい。例えば、2000ppi以上6000ppi以下であってもよいし、3000ppi以上5000ppi以下であってもよい。
【0578】
なお、表示部93の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。表示部93は、例えば、1:1(正方形)、4:3、16:9、16:10など様々な画面比率に対応することができる。
【0579】
なお、本明細書等において、素子という用語を「デバイス」と言い換えることができる場合がある。例えば、表示素子、発光デバイス、及び液晶素子は、それぞれ、例えば、表示デバイス、発光デバイス、及び液晶デバイスと言い換えることができる。
【0580】
表示装置90Aは、端子部94を介して、外部より各種信号及び電源電位が入力され、表示部93に設けられた表示素子を用いて、画像表示を行うことができる。表示素子として、様々な素子を用いることができる。代表的には、有機EL素子及びLED素子などの光を射出する機能を有する発光デバイス、液晶素子、又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子などを適用することができる。
【0581】
基板91と基板92との間には、複数の層が設けられ、各層には回路動作を行うためのトランジスタ、又は光を射出する表示素子が設けられる。複数の層においては、表示素子の動作を制御する機能を有する画素回路、画素回路を制御する機能を有する駆動回路、駆動回路を制御する機能を有する機能回路等が設けられる。
【0582】
図28(B)に、基板91と基板92との間に設けられる各層の構成を模式的に示した斜視図を示している。
【0583】
基板91上には、層62が設けられる。層62は、駆動回路65、機能回路40、及び入出力回路80を有する。層62は、チャネル形成領域64にシリコンを有するトランジスタ63(Siトランジスタともいう。)を有する。基板91には、例えば、シリコン基板を用いることができる。シリコン基板は、ガラス基板と比較して熱伝導性が高いため好ましい。駆動回路65、機能回路40、及び入出力回路80を同じ層に設けることで、駆動回路65、機能回路40、及び入出力回路80を電気的に接続する配線を短くすることができる。よって、機能回路40が駆動回路65を制御するための制御信号の充放電時間が短くなり、消費電力を低減することができる。また、入出力回路80が、機能回路40及び駆動回路65に信号を供給する時のための充放電時間が短くなり、消費電力を低減することができる。
【0584】
トランジスタ63は、例えば、チャネル形成領域に単結晶シリコンを有するトランジスタ(「c-Siトランジスタ」ともいう。)とすることができる。特に、層62に設けられるトランジスタとして、チャネル形成領域に単結晶シリコンを有するトランジスタを用いると、当該トランジスタのオン電流を大きくすることができる。よって、層62が有する回路を高速に駆動させることができるため、好ましい。またSiトランジスタは、チャネル長が3nm以上10nm以下といった微細加工で形成することができるため、CPU、GPUなどのアクセラレータ、アプリケーションプロセッサなどが表示部と一体に設けられた表示装置90Aとすることができる。
【0585】
層62に、チャネル形成領域に多結晶シリコンを有するトランジスタ(「Poly-Siトランジスタ)ともいう。)を設けてもよい。多結晶シリコンとして、LTPSを用いてもよい。なお、チャネル形成領域にLTPSを有するトランジスタを「LTPSトランジスタ」ともいう。また、必要に応じて層62にOSトランジスタを設けてもよい。
【0586】
駆動回路65として、シフトレジスタ、レベルシフタ、インバータ、ラッチ、アナログスイッチ、及び論理回路等の様々な回路を用いることができる。駆動回路65は、例えば、ゲートドライバ回路、ソースドライバ回路等を有する。この他に、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等を有していてもよい。ゲートドライバ回路、ソースドライバ回路、及びその他の回路を、表示部93に重ねて配置することが可能となるため、これら回路と、表示部93とを並べて配置する場合と比較して、表示装置90Aの表示部93の外周に存在する非表示領域(額縁ともいう。)の幅を極めて狭くすることができ、表示装置90Aの小型化を実現することができる。
【0587】
機能回路40は、例えば、表示装置90Aにおける各回路の制御、及び、各回路を制御するための信号を生成するためのアプリケーションプロセッサの機能を有する。また、機能回路40は、CPU、GPUなどのアクセラレータなどの画像データを補正するための回路を有していてもよい。また、機能回路40は、画像データ等を表示装置90Aの外部から受信するためのインターフェースとしての機能を有するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)回路、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)回路、及びD/A(Digital to Analog)変換回路等を有していてもよい。また、機能回路40は、画像データを圧縮・伸長するための回路、及び電源回路等を有していてもよい。
【0588】
層62上には、層83が設けられる。層83は、複数の画素回路51を含む画素回路群55を有する。層83にOSトランジスタを設けてもよい。画素回路51は、OSトランジスタを含んで構成してもよい。なお層83は、層62上に積層して設けることができる。
【0589】
層83に、Siトランジスタを設けてもよい。例えば、画素回路51をチャネル形成領域に単結晶シリコン又は多結晶シリコンを有するトランジスタを含んで構成してもよい。多結晶シリコンとして、LTPSを用いてもよい。例えば、別の基板に層83を形成し、層62と貼り合わせることも可能である。
【0590】
例えば、画素回路51を異なる半導体材料を用いた複数種類のトランジスタで構成してもよい。画素回路51が、異なる半導体材料を用いた複数種類のトランジスタで構成される場合、トランジスタの種類ごとに異なる層にトランジスタを設けてもよい。例えば、画素回路51が、Siトランジスタと、OSトランジスタで構成される場合、SiトランジスタとOSトランジスタを重ねて設けてもよい。トランジスタを重ねて設けることで、画素回路51の占有面積が低減される。よって、表示装置90Aの精細度を高めることができる。なお、LTPSトランジスタと、OSトランジスタと、を組み合わせる構成を、LTPOと呼称する場合がある。
【0591】
OSトランジスタであるトランジスタ52として、チャネル形成領域54にインジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物を有するトランジスタを用いることが好ましい。このようなOSトランジスタは、オフ電流が非常に低いという特性を有する。よって、特に、画素回路に設けられるトランジスタとしてOSトランジスタを用いると、画素回路に書き込まれたアナログデータを長期間保持することができるため好ましい。
【0592】
層83上には、層81が設けられる。層81上には、基板92が設けられる。基板92は、透光性を有する基板あるいは透光性を有する材料でなる層であることが好ましい。層81には、複数の発光デバイス61が設けられる。なお層81は、層83上に積層して設ける構成とすることができる。発光デバイス61として、例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう。)などを用いることができる。ただし、発光デバイス61は、これに限定されず、例えば、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。なお、「有機EL素子」と「無機EL素子」をまとめて「EL素子」と呼ぶ場合がある。発光デバイス61は、量子ドットなどの無機化合物を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0593】
図28(B)に示すように、本発明の一態様の表示装置90Aは、発光デバイス61と、画素回路51と、駆動回路65及び機能回路40と、を積層した構成とすることができるため、画素の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。例えば、画素の開口率は、40%以上100%未満、好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは60%以上95%以下とすることができる。また、画素回路51を極めて高密度に配置することが可能で、画素の精細度を極めて高くすることができる。例えば、表示装置90Aの表示部93(画素回路51及び発光デバイス61が積層されて設けられる領域)では、2000ppi以上、好ましくは3000ppi以上、より好ましくは5000ppi以上、さらに好ましくは6000ppi以上であって、20000ppi以下、又は30000ppi以下の精細度で、画素を配置することが可能となる。
【0594】
このような表示装置90Aは、極めて高精細であることから、ヘッドマウントディスプレイなどのVR向け機器、又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズ等の光学部材を通して表示装置90Aの表示部を視認する構成の場合であっても、表示装置90Aは極めて高精細な表示部を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。
【0595】
なお、表示装置90Aを装着型のVR又はAR用の表示装置として用いる場合、表示部93の対角サイズは、0.1インチ以上5.0インチ以下、好ましくは0.5インチ以上2.0インチ以下、さらに好ましくは、1インチ以上1.7インチ以下とすることができる。例えば、表示部93の対角サイズを1.5インチ、又は1.5インチ近傍にしてもよい。表示部93の対角サイズを2.0インチ以下とすることで、露光装置(代表的には、スキャナー装置)の1回の露光処理で処理することが可能となるため、製造プロセスの生産性を向上させることができる。
【0596】
本発明の一態様に係る表示装置90Aは、装着型の電子装置以外にも適用することができる。この場合、表示部93の対角サイズは2.0インチを越えてもかまわない。表示部93の対角サイズに応じて、画素回路51に用いるトランジスタの構成を適宜選択してもよい。例えば、画素回路51に単結晶Siトランジスタを用いる場合、表示部93の対角のサイズは0.1インチ以上3インチ以下が好ましい。また、画素回路51にLTPSトランジスタを用いる場合、表示部93の対角のサイズは0.1インチ以上30インチ以下が好ましく、1インチ以上30インチ以下がより好ましい。また、画素回路51にLTPO(LTPSトランジスタと、OSトランジスタとを、組み合わせる構成)を用いる場合、表示部93の対角のサイズは0.1インチ以上50インチ以下が好ましく1インチ以上50インチ以下がより好ましい。また、画素回路51にOSトランジスタを用いる場合、表示部93の対角のサイズは0.1インチ以上200インチ以下が好ましく、50インチ以上100インチ以下がより好ましい。
【0597】
画素回路51などに単結晶Siトランジスタを用いた表示装置は、単結晶Si基板の大きさより、大型化が非常に困難である。また、画素回路51などにLTPSトランジスタを用いた表示装置は、製造工程にてレーザ結晶化装置を用いるため、大型化(代表的には、対角のサイズにて30インチを超える画面サイズ)への対応が難しい。一方でOSトランジスタは、製造工程にてレーザ結晶化装置などを用いる制約がない、又は比較的低温のプロセス温度(代表的には450℃以下)で製造することが可能なため、比較的大面積(代表的には、対角のサイズにて50インチ以上100インチ以下)の表示装置まで対応することが可能である。また、LTPOについては、LTPSトランジスタを用いる場合と、OSトランジスタを用いる場合との間の領域の表示部の対角サイズ(代表的には、1インチ以上50インチ以下)に適用することが可能となる。
【0598】
駆動回路65及び機能回路40の具体的な構成例について、
図29を参照して説明する。
図29は、表示装置90Aの構成を示すブロック図であり、画素回路51、駆動回路65、及び機能回路40を接続する複数の配線、及び、表示装置90A内のバス配線等を示している。
【0599】
図29に示す表示装置90Aにおいて、層83には、複数の画素回路51がマトリクス状に配置されている。
【0600】
図29に示す表示装置90Aにおいて、層62には、駆動回路65、機能回路40、及び入出力回路80が配置されている。駆動回路65は、一例として、ソースドライバ回路66、デジタルアナログ変換回路(DAC:Digital Analog Converter)67、ゲートドライバ回路33、レベルシフタ34、増幅回路35、検査回路36、映像生成回路37、及び映像分配回路38を有する。機能回路40は、一例として、記憶装置41、GPU42、EL補正回路43、タイミングコントローラ44、CPU45、センサコントローラ46、電源回路47、温度センサ48、及び輝度補正回路49を有する。機能回路40は、アプリケーションプロセッサの機能を有する。なお、人工知能の演算を行うGPUを、AIアクセラレータという場合がある。
【0601】
入出力回路80は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)などの伝送方式に対応し、入出力回路80は、端子部94を介して入力される制御信号及び画像データなどを、駆動回路65及び機能回路40に振り分ける機能を有する。また、入出力回路80は、表示装置90Aの情報を、端子部94を介して外部に出力する機能を有する。
【0602】
図29の表示装置90Aでは、駆動回路65に含まれる回路、機能回路40に含まれる回路、及び入出力回路80のそれぞれが、バス配線BSLと電気的に接続する構成を例示している。
【0603】
ソースドライバ回路66は、一例として、画素230が有する画素回路51に対して、画像データを送信する機能を有する。そのため、ソースドライバ回路66は、配線SLを介して、画素回路51に電気的に接続されている。なおソースドライバ回路66は、複数設けてもよい。
【0604】
デジタルアナログ変換回路67は、一例として、後述するGPU、補正回路などによってデジタル処理された画像データをアナログデータに変換する機能を有する。アナログデータに変換された画像データは、オペアンプなどの増幅回路35により増幅され、ソースドライバ回路66を介して、画素回路51に送信される。なお、ソースドライバ回路66、デジタルアナログ変換回路67、画素回路51の順に、画像データが送信される構成としてもよい。また、デジタルアナログ変換回路67及び増幅回路35は、ソースドライバ回路66に含まれていてもよい。
【0605】
ゲートドライバ回路33は、一例として、画素回路51において、画像データの送信先となる画素回路を選択する機能を有する。そのため、ゲートドライバ回路33は、配線GLを介して、画素回路51に電気的に接続されている。なおゲートドライバ回路33は、ソースドライバ回路66と対応して、複数設けてもよい。
【0606】
レベルシフタ34は、一例として、ソースドライバ回路66、デジタルアナログ変換回路67、ゲートドライバ回路33などに対して入力される信号を、適切なレベルに変換する機能を有する。
【0607】
記憶装置41は、一例として、画素回路51に表示させる画像データを保存する機能を有する。なお、記憶装置41は、画像データをデジタルデータ又はアナログデータとして保存する構成とすることができる。
【0608】
記憶装置41に画像データを保存する場合、記憶装置41は、不揮発性メモリとすることが好ましい。この場合、記憶装置41には、例えば、NAND型メモリなどを適用することができる。
【0609】
記憶装置41にGPU42、EL補正回路43、CPU45などで生じる一時データを保存する場合、記憶装置41は揮発性メモリとすることが好ましい。この場合、記憶装置41には、例えば、SRAM、DRAMなどを適用することができる。
【0610】
GPU42は、一例として、記憶装置41から読み出された画像データを、画素回路51に出力するための処理を行う機能を有する。特に、GPU42は、並列にパイプライン処理を行う構成となっているため、画素回路51に出力する画像データを高速に処理することができる。また、GPU42は、エンコードされた画像を復元するためのデコーダとしての機能も有することができる。
【0611】
機能回路40には、表示装置90Aの表示品位を高めることができる回路が複数含まれていてもよい。当該回路として、例えば、表示される画像の色ムラを検出して、当該色ムラを補正して最適な画像にする補正回路(調色、調光)を設けてもよい。例えば、表示素子に有機ELが用いられた発光デバイスが適用されている場合、機能回路40に、当該発光デバイスの特性に応じて画像データを補正するEL補正回路を設けてもよい。機能回路40には、一例として、EL補正回路43を含めている。
【0612】
上記で説明した画像補正には、人工知能を用いてもよい。例えば、画素回路に流れる電流(又は画素回路に印加される電圧)をモニタリングして取得し、表示された画像をイメージセンサなどで取得し、電流(又は電圧)と画像を人工知能の演算(例えば、人工ニューラルネットワークなど)の入力データとして扱い、その出力結果で当該画像の補正の有無を判断させてもよい。
【0613】
人工知能の演算は、画像補正だけでなく、画像データの解像度を高めるアップコンバート処理にも適用することができる。一例として、
図29のGPU42は、各種補正の演算(色ムラ補正42a、アップコンバート42bなど)を行うためのブロックを図示している。
【0614】
画像データのアップコンバート処理を行うためのアルゴリズムとして、Nearest neighbor法、Bilinear法、Bicubic法、RAISR(Rapid and Accurate Image Super-Resolution)法、ANR(Anchored Neighborhood Regression)法、A+法、SRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network)法などから選択して行うことができる。
【0615】
アップコンバート処理は、注視点に応じて決定される領域ごとに、アップコンバート処理に用いるアルゴリズムを変える構成としてもよい。例えば、注視点及び注視点近傍の領域のアップコンバート処理を、処理速度が遅いが高精度なアルゴリズムで行い、当該領域以外の領域のアップコンバート処理を、処理速度は速いが低精度なアルゴリズムで行えばよい。当該構成とすることで、アップコンバート処理に必要な時間を短縮することができる。また、アップコンバート処理に必要な消費電力を低減することができる。
【0616】
アップコンバート処理に限らず、画像データの解像度を下げるダウンコンバート処理を行ってもよい。画像データの解像度が表示部93の解像度よりも大きい場合、画像データの一部が表示部93に表示されない場合がある。このような場合、ダウンコンバート処理を行うことで、当該画像データ全体を表示部93に表示することができる。
【0617】
タイミングコントローラ44は、一例として、画像を表示させる駆動周波数(フレーム周波数、フレームレート、又はリフレッシュレートなど)を制御する機能を有する。例えば、表示装置90Aで静止画を表示させる場合、タイミングコントローラ44によって駆動周波数を下げることで、表示装置90Aの消費電力を低減することができる。
【0618】
CPU45は、一例として、オペレーティングシステムの実行、データの制御、各種演算、及び、プログラムの実行など、汎用の処理を行う機能を有する。CPU45は、例えば、記憶装置41における画像データの書き込み動作又は読み出し動作、画像データの補正動作、後述するセンサへの動作、などの命令を行う役割を有する。また、例えば、CPU45は、機能回路40に含まれる回路の少なくとも一に制御信号を送信する機能を有してもよい。
【0619】
センサコントローラ46は、一例として、センサを制御する機能を有する。また、
図29では、当該センサに電気的に接続するための配線として、配線SNCLを図示している。
【0620】
当該センサは、例えば、表示部に備えることができるタッチセンサとすることができる。又は、当該センサは、例えば、照度センサとすることができる。
【0621】
電源回路47は、一例として、画素回路51、駆動回路65、及び機能回路40に含まれている回路などに対して供給する電圧を生成する機能を有する。なお、電源回路47は、電圧を供給する回路を選択する機能を有してもよい。例えば、電源回路47は、静止画を表示させている期間では、CPU45、GPU42などに対しての電圧供給を停止することによって、表示装置90A全体の消費電力を低減することができる。
【0622】
以上説明したように本発明の一態様に係る表示装置は、表示素子と、画素回路と、駆動回路及び機能回路40と、を積層した構成とすることができる。周辺回路である駆動回路及び機能回路を画素回路と重ねて配置することができ、額縁の幅を極めて狭くすることができるため、小型化が図られた表示装置とすることができる。また、本発明の一態様の表示装置は、各回路を積層した構成とすることにより、各回路間を接続する配線を短くすることができるため、軽量化が図られた表示装置とすることができる。また、本発明の一態様に係る表示装置は、画素の精細度が高められた表示部とすることができるため、表示品位に優れた表示装置とすることができる。
【0623】
<表示モジュールの構成例>
続いて、表示装置90Aを含む表示モジュールの構成例について説明する。
【0624】
図30(A)乃至
図30(C)は、表示モジュール500の斜視図である。表示モジュール500は、表示装置90Aの端子部94にFPC504を備えた構造を有する。FPC504は絶縁物でできたフィルムに配線を備えた構造を有する。また、FPC504は、可撓性を有する。FPC504は、外部から表示装置90Aにビデオ信号、制御信号、及び電源電位などを供給するための配線として機能する。また、FPC504上に、ICが実装されていてもよい。
【0625】
図30(B)に示す表示モジュール500は、プリント配線板501上に表示装置90Aを備える構成を有する。プリント配線板501は、絶縁物でできた基板の内部又は表面、若しくは、内部と表面に配線を備えた構造を有する。
【0626】
図30(B)に示す表示モジュール500では、表示装置90Aの端子部94と、プリント配線板501の端子部502が、ワイヤ503を介して、電気的に接続している。ワイヤ503は、ワイヤボンディングで形成することができる。また、ワイヤボンディングとして、ボールボンディング又はウェッジボンディングを用いることができる。
【0627】
ワイヤ503の形成後、樹脂材料などでワイヤ503を覆ってもよい。なお、表示装置90Aとプリント配線板501の電気的な接続は、ワイヤボンディング以外の方法で行ってもよい。例えば、表示装置90Aとプリント配線板501の電気的な接続を、異方性導電接着剤又はバンプなどで実現してもよい。
【0628】
図30(B)に示す表示モジュール500は、プリント配線板501の端子部502がFPC504と電気的に接続している。例えば、表示装置90Aの端子部94が備える電極のピッチと、FPC504が備える電極のピッチが異なる場合は、プリント配線板501を介して、端子部94とFPC504を電気的に接続してもよい。具体的には、プリント配線板501に形成された配線を用いて、端子部94が備える複数の電極の間隔(ピッチ)を、端子部502が備える複数の電極の間隔に変換することができる。すなわち、端子部94が備える電極のピッチとFPC504が備える電極のピッチが異なる場合においても、両者の電極の電気的な接続を実現することができる。
【0629】
プリント配線板501には、抵抗素子、容量素子、半導体素子などの様々な素子を設けることができる。
【0630】
図30(C)に示す表示モジュール500のように、端子部502をプリント配線板501の下面(表示装置90Aが設けられていない側の面)に設けられた接続部505と電気的に接続してもよい。例えば、接続部505をソケット形式の接続部にすることで、表示モジュール500と他の機器との脱着を容易に行える。
【0631】
<画素回路の構成例>
図31(A)及び
図31(B)では、画素回路51の構成例、及び、画素回路51に接続される発光デバイス61について示す。
図31(A)は、各素子の接続を示す図、
図31(B)は、駆動回路を備える層62、画素回路が有する複数のトランジスタを備える層83、発光デバイスを備える層81の上下関係を模式的に示す図である。
【0632】
図31(A)及び
図31(B)に一例として示す画素回路51は、トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52C、及び容量素子53を備える。トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52Cは、OSトランジスタで構成することができる。トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52Cの各OSトランジスタは、バックゲート電極を備えていることが好ましく、この場合、バックゲート電極にゲート電極と同じ信号を与える構成、バックゲート電極にゲート電極と異なる信号を与える構成とすることができる。
【0633】
トランジスタ52Bは、トランジスタ52Aと電気的に接続されるゲート電極と、発光デバイス61と電気的に接続される第1の電極と、配線ANOと電気的に接続される第2の電極と、を備える。配線ANOは、発光デバイス61に電流を供給するための電位を与えるための配線である。
【0634】
トランジスタ52Aは、トランジスタ52Bのゲート電極と電気的に接続される第1の端子と、ソース線として機能する配線SLと電気的に接続される第2の端子と、ゲート線として機能する配線GL1の電位に基づいて、導通状態又は非導通状態を制御する機能を有するゲート電極と、を備える。
【0635】
トランジスタ52Cは、配線V0と電気的に接続される第1の端子と、発光デバイス61と電気的に接続される第2の端子と、ゲート線として機能する配線GL2の電位に基づいて、導通状態又は非導通状態を制御する機能を有するゲート電極と、を備える。配線V0は、基準電位を与えるための配線、及び、画素回路51を流れる電流を駆動回路65又は機能回路40に出力するための配線である。
【0636】
容量素子53は、トランジスタ52Bのゲート電極と電気的に接続される導電膜と、トランジスタ52Bの第2の電極と電気的に接続される導電膜と、を備える。
【0637】
発光デバイス61は、トランジスタ52Bの第1の電極に電気的に接続される第1の電極と、配線VCOMに電気的に接続される第2の電極と、を備える。配線VCOMは、発光デバイス61に電流を供給するための電位を与えるための配線である。
【0638】
これにより、トランジスタ52Bのゲート電極に与えられる画像信号に応じて、発光デバイス61が射出する光の強度を制御することができる。またトランジスタ52Cを介して与えられる配線V0の基準電位によって、トランジスタ52Bのゲート-ソース間電圧のばらつきを抑制することができる。
【0639】
配線V0から、画素パラメータの設定に用いることのできる電流値を出力することができる。より具体的には、配線V0は、トランジスタ52Bに流れる電流、又は、発光デバイス61に流れる電流を、外部に出力するためのモニター線として機能させることができる。配線V0に出力された電流は、ソースフォロア回路などにより電圧に変換され、外部に出力される。又は、A-Dコンバータなどによりデジタル信号に変換され、機能回路40等に出力することができる。
【0640】
本発明の一態様で説明する発光デバイスは、有機EL素子(OLEDともいう。)などの自発光型の表示素子をいう。なお画素回路に電気的に接続される発光デバイスは、LED、マイクロLED、QLED、半導体レーザ等の、自発光型の発光デバイスとすることが可能である。
【0641】
図31(B)に一例として示す構成では、画素回路51と、駆動回路65と、を電気的に接続する配線を短くすることができるため、当該配線の配線抵抗を小さくすることができる。よって、データの書き込みを高速に行うことができるため、表示装置90Aを高速に駆動させることができる。これにより、表示装置90Aが有する画素回路51を多くしても、十分なフレーム期間を確保することができるため、表示装置90Aの画素密度を高めることができる。また、表示装置90Aの画素密度を高めることにより、表示装置90Aにより表示される画像の精細度を高めることができる。例えば、表示装置90Aの画素密度を、1000ppi以上とすることができ、又は5000ppi以上とすることができ、又は7000ppi以上とすることができる。よって、表示装置90Aは、例えば、AR又はVR用の表示装置とすることができ、HMD等、表示部とユーザの距離が近い電子装置に好適に適用することができる。
【0642】
なお、
図31(A)及び
図31(B)では、計3つのトランジスタを有する画素回路51を一例として示したが、本発明の一態様はこれに限らない。以下では、画素回路51に適用可能な画素回路の構成例及び駆動方法例について説明する。
【0643】
図32(A)に示す画素回路51Aは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、及び容量素子53を図示している。また、
図32(A)では、画素回路51Aに接続される発光デバイス61を図示している。また、画素回路51Aには、配線SL、配線GL、配線ANO、及び配線VCOMが電気的に接続されている。画素回路51Aは、
図31(A)に示す画素回路51からトランジスタ52Cを除き、かつ、配線GL1及び配線GL2を配線GLに置き換えた構成を有している。
【0644】
トランジスタ52Aは、ゲートが配線GLと、ソース又はドレインの一方が配線SLと、他方がトランジスタ52Bのゲート、及び、容量C1の一方の電極と、それぞれ電気的に接続されている。トランジスタ52Bは、ソース又はドレインの一方が配線ANOと、他方が発光デバイス61のアノードと、それぞれ電気的に接続されている。容量C1は、他方の電極が発光デバイス61のアノードと電気的に接続されている。発光デバイス61は、カソードが配線VCOMと電気的に接続されている。
【0645】
図32(B)に示す画素回路51Bは、画素回路51Aに、トランジスタ52Cを追加した構成である。また画素回路51Bには、配線V0が電気的に接続されている。
【0646】
図32(C)に示す画素回路51Cは、上記画素回路51Aのトランジスタ52A及びトランジスタ52Bに、一対のゲートが電気的に接続されたトランジスタを適用した場合の例である。また、
図32(D)に示す画素回路51Dは、画素回路51Bに当該トランジスタを適用した場合の例である。これにより、トランジスタが流すことのできる電流を増大させることができる。なお、ここでは全てのトランジスタに、一対のゲートが電気的に接続されたトランジスタを適用したが、これに限られない。また、一対のゲートを有し、かつ、これらが異なる配線と電気的に接続されるトランジスタを適用してもよい。例えば、ゲートの一方とソースとが電気的に接続されたトランジスタを用いることで、信頼性を高めることができる。
【0647】
図33(A)に示す画素回路51Eは、上記51Bに、トランジスタ52Dを追加した構成である。また、画素回路51Eには、ゲート線として機能する配線GL1、配線GL2、及び配線GL3が電気的に接続されている。なお、本実施の形態などにおいて、配線GL1、配線GL2、及び配線GL3を、まとめて配線GLと呼ぶ場合がある。よって、配線GLは1本に限らず、複数本の場合がある。
【0648】
トランジスタ52Dは、ゲートが配線GL3と、ソース又はドレインの一方がトランジスタ52Bのゲートと、他方が配線V0と、それぞれ電気的に接続されている。また、トランジスタ52Aのゲートが配線GL1と、トランジスタ52Cのゲートが配線GL2と、それぞれ電気的に接続されている。
【0649】
トランジスタ52Cとトランジスタ52Dを同時に導通状態とさせることで、トランジスタ52Bのソースとゲートが同電位となり、トランジスタ52Bを非導通状態とすることができる。これにより、発光デバイス61に流れる電流を強制的に遮断することができる。このような画素回路は、表示期間と消灯期間を交互に設ける表示方法を用いる場合に適している。
【0650】
図33(B)に示す画素回路51Fは、上記画素回路51Eに容量素子53Aを追加した場合の例である。容量素子53Aは、保持容量として機能する。
【0651】
図33(C)に示す画素回路51G、及び、
図33(D)に示す画素回路51Hは、それぞれ、上記画素回路51E又は画素回路51Fに、一対のゲートを有するトランジスタを適用した場合の例である。トランジスタ52A、トランジスタ52C、トランジスタ52Dには、一対のゲートが電気的に接続されたトランジスタが適用され、トランジスタ52Bには、一方のゲートがソースと電気的に接続されたトランジスタが適用されている。
【0652】
<変形例1>
図34(A)及び
図34(B)に表示装置90Aの変形例である表示装置90Bの斜視図を示す。
図34(B)は、表示装置90Bが有する各層の構成を説明するための斜視図である。説明の繰り返しを減らすため、主に表示装置90Aと異なる点について説明する。
【0653】
表示装置90Bは、複数の画素回路51を含む画素回路群55と駆動回路65が重ねて設けられている。表示装置90Bにおいて、画素回路群55は複数の区画59に分けられ、駆動回路65は複数の区画39に分けられる。複数の区画39は、それぞれがソースドライバ回路66とゲートドライバ回路33を有する。
【0654】
図35(A)に、表示装置90Bが有する画素回路群55の構成例を示す。
図35(B)に、表示装置90Bが有する駆動回路65の構成例を示す。区画59及び区画39は、それぞれm行n列(m及びnは、それぞれ1以上の整数。)のマトリクス状に配置されている。本明細書等において、1行1列目の区画59を区画59[1,1]と示し、m行n列目の区画59を区画59[m,n]と示す。同様に、1行1列目の区画39を区画39[1,1]と示し、m行n列目の区画39を区画39[m,n]と示す。
図35(A)及び
図35(B)は、mが4で、nが8の場合を示している。すなわち、画素回路群55と駆動回路65が、それぞれ32分割されている。
【0655】
複数の区画59のそれぞれは、複数の画素回路51、複数の配線SL、及び、複数の配線GLを有する。複数の区画59のそれぞれにおいて、複数の画素回路51の一は、複数の配線SLの少なくとも一、及び、複数の配線GLの少なくとも一と、電気的に接続される。
【0656】
区画59の一と区画39の一は、重ねて設けられる(
図35(C)参照)。例えば、区画59[i,j](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数。)と区画39[i,j]は重ねて設けられる。区画39[i,j]が有するソースドライバ回路66[i,j]は、区画59[i,j]が有する配線SLと電気的に接続する。区画39[i,j]が有するゲートドライバ回路33[i,j]は、区画59[i,j]が有する配線GLと電気的に接続する。ソースドライバ回路66[i,j]及びゲートドライバ回路33[i,j]は、区画59[i,j]が有する複数の画素回路51を制御する機能を有する。
【0657】
区画59[i,j]と区画39[i,j]を重ねて設けることで、区画59[i,j]が有する画素回路51と、区画39[i,j]が有するソースドライバ回路66及びゲートドライバ回路33との接続距離(配線長)を極めて短くすることができる。その結果、配線抵抗及び寄生容量が減るため、充放電にかかる時間が少なくなり、高速駆動を実現することができる。また、消費電力を低減することができる。また、小型化及び軽量化を実現することができる。
【0658】
表示装置90Bは、区画39ごとにソースドライバ回路66及びゲートドライバ回路33を有する構成である。よって、区画39に対応する区画59ごとに表示部93を分割し、画像の書き換えを行うことができる。例えば、表示部93のうち、画像に変化が生じた区画のみ画像データを書き換え、変化のない区画は画像データを保持することが可能となり、消費電力の低減を実現することができる。
【0659】
本実施の形態などでは、区画59ごとに分割された表示部93の1つを副表示部95と呼ぶ。よって、副表示部95は、区画39ごとに分割された表示部93の1つでもある。表示部93は、複数の副表示部95を有する。また、表示部93は、複数の副表示部95で構成されているともいえる。
図34(A)乃至
図35(D)を用いて説明した表示装置90Bでは、表示部93が32個の副表示部95に分割される場合を示している(
図34(A)参照)。副表示部95は、
図31等に示した画素230を複数含む。具体的には、1つの副表示部95は、複数の画素回路51を含む区画59の1つと、複数の発光デバイス61と、を含む。また、1つの区画39は、1つの副表示部95に含まれる複数の画素230を制御する機能を有する。
【0660】
表示装置90Bは、機能回路40が有するタイミングコントローラ44によって、画像表示時の駆動周波数を副表示部95ごとに任意に設定することができる。機能回路40は、複数の区画39及び複数の区画59それぞれの動作を制御する機能を有する。すなわち、機能回路40は、マトリクス状に配置された複数の副表示部95それぞれの駆動周波数及び動作タイミングを制御する機能を有する。また、機能回路40は、副表示部間の同期調整を行う機能を有する。
【0661】
区画39ごとにタイミングコントローラ441及び入出力回路442を設けてもよい(
図35(D)参照)。入出力回路442として、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)インターフェースなどを用いることができる。
図35(C)及び
図35(D)では、区画39[i,j]が有するタイミングコントローラ441を、タイミングコントローラ441[i,j]と示している。また、区画39[i,j]が有すると入出力回路442をと入出力回路442[i,j]と示している。
【0662】
例えば、機能回路40は、入出力回路442[i,j]に、ゲートドライバ回路33[i,j]の走査方向及び駆動周波数の設定信号、並びに、解像度を低くする際の画像データ間引き画素数(画像データの書き換え時に、書き換えを行わない画素の数)などの動作パラメータを供給する。ソースドライバ回路66[i,j]及びゲートドライバ回路33[i,j]は、当該動作パラメータに従って動作する。
【0663】
副表示部95が後述する受光素子を有する場合、入出力回路442は、受光素子で光電変換された情報を機能回路40に出力する。
【0664】
本発明の一態様にかかる電子装置における表示装置90Bは、画素回路51と駆動回路65を積層し、ユーザの視線の動きに応じて副表示部95ごとの駆動周波数を異ならせることで、低消費電力化を図ることができる。
【0665】
図36(A)に、4行8列の副表示部95を有する表示部93を示す。また
図36(A)では、注視点Gを中心にする第1領域S1乃至第3領域S3を示している。演算部103は、複数の副表示部95のそれぞれを、第1領域S1又は第2領域S2と重なる第1区域29Aと、第3領域S3と重なる第2区域29Bのいずれかに振り分ける。すなわち、演算部103は、複数の区画39のそれぞれを、第1区域29A又は第2区域29Bに振り分ける。この場合、第1領域S1及び第2領域S2と重なる第1区域29Aは、注視点Gと重なる領域を含む。また、第2区域29Bは第1区域29Aの外側に位置する副表示部95を含む。(
図36(B)参照)。
【0666】
複数の区画39それぞれが有する駆動回路(ソースドライバ回路66及びゲートドライバ回路33)の動作は機能回路40により制御される。例えば、第2区域29Bは、前述した安定注視野、誘導視野、及び補助視野が含まれる第3領域S3と重なる区域であり、ユーザの識別力が低い区域である。よって、画像表示時において、単位時間当たりの画像データの書き換え回数(以下、「画像書き換え回数」ともいう。)を、第1区域29Aより第2区域29Bを少なくしても、ユーザが感じる実質的な表示品位(以下、「実質的な表示品位」ともいう。)の低下は少ない。すなわち、第2区域29Bに含まれる副表示部95の駆動周波数(「第2駆動周波数」ともいう。)を第1区域29Aに含まれる副表示部95の駆動周波数(「第1駆動周波数」ともいう。)よりも低くしても、実質的な表示品位の低下は少ない。
【0667】
駆動周波数を低くすると、表示装置の消費電力を低減することができる。その一方で、駆動周波数を低くすると、表示品位も低下する。特に、動画表示時の表示品位が低下する。本発明の一態様によれば、第2駆動周波数を第1駆動周波数よりも低くすることで、ユーザの視認性が低い区域の消費電力を低減しつつ、実質的な表示品位の低下を抑制することができる。本発明の一態様によれば、表示品位の維持と消費電力の低減を両立することができる。
【0668】
第1駆動周波数は、30Hz以上500Hz以下、好ましくは60Hz以上500Hz以下とすればよい。第2駆動周波数は第1駆動周波数以下が好ましく、第1駆動周波数の1/2以下がより好ましく、第1駆動周波数の1/5以下がより好ましい。
【0669】
第3領域S3に重なる副表示部95のうち、第2区域29Bの外側に第3区域29Cに設定し(
図36(C)参照)、第3区域29Cに含まれる副表示部95の駆動周波数(「第3駆動周波数」ともいう。)を第2区域29Bよりも低くしてもよい。第3駆動周波数は第2駆動周波数以下が好ましく、第2駆動周波数の1/2以下がより好ましく、第2駆動周波数の1/5以下がより好ましい。画像書き換え回数を著しく少なくすることで、消費電力をさらに低減することができる。また、必要に応じて、画像データの書き換えを停止してもよい。画像データの書き換えを停止することで、消費電力をさらに低減することができる。
【0670】
このような駆動方法を行う場合、画素回路51を構成するトランジスタにオフ電流が極めて少ないトランジスタを用いると好適である。例えば、画素回路51を構成するトランジスタにOSトランジスタと好適である。OSトランジスタはオフ電流が著しく低いため、画素回路51に供給された画像データを長期間保持することができる。特に、トランジスタ52AにOSトランジスタを用いると好適である。
【0671】
表示部93に表示する映像シーンが変わる場合など、直前の画像よりも明るさ、コントラスト、又は色調などが大きく異なる画像が表示される場合がある。このような場合、第1区域29Aと、第1区域29Aよりも駆動周波数が低い区域の間で、画像が切り換わるタイミングにずれが生じるため、両区間の間で明るさ、コントラスト、又は色調などが大きく異なり、実質的な表示品位が損なわれる恐れがある。このように映像シーンが変わる場合などでは、一旦、第1区域29A以外の区域も第1区域29Aと同じ駆動周波数で画像の書き換えを行い、その後に第1区域29A以外の区域の駆動周波数を低下させればよい。
【0672】
注視点Gの変動量が一定量を越えたと判断した場合、第1区域29A以外の区域も第1区域29Aと同じ駆動周波数で画像の書き換えを行い、変動量が一定量以内であると判断した場合に、第1区域29A以外の区域の駆動周波数を低下させてもよい。また、注視点Gの変動量が少ないと判断した場合、第1区域29A以外の区域の駆動周波数をさらに低下させてもよい。
【0673】
表示装置90Bが、画像データを一時的に保持する記憶装置であるフレームメモリを有さない場合、若しくは、表示部93全体に対して1つのフレームメモリを有する場合、第2駆動周波数及び第3駆動周波数は、どちらも第1駆動周波数の整数分の1にする必要がある。
【0674】
複数の副表示部95それぞれに対応するフレームメモリを設けることで、第2駆動周波数及び第3駆動周波数を第1駆動周波数の整数分の1に限らず、任意の値に設定することができる。第2駆動周波数及び第3駆動周波数を任意の値に設定することによって、駆動周波数の設定自由度を高めることができる。よって、実質的な表示品位の低下を低減することができる。
【0675】
なお、表示部93に設定する区域は、第1区域29A、第2区域29B、及び第3区域29Cの3つに限定されない。表示部93に4以上の区域を設定してもよい。表示部93に複数の区域を設定し、段階的に駆動周波数を低くすることで、実質的な表示品位の低下をより少なくすることができる。
【0676】
第1区域29Aに表示する画像に対して、前述したアップコンバート処理を行ってもよい。第1区域29Aにアップコンバート処理された画像を表示することで、表示品位を高めることができる。また、第1区域29A以外の区域に表示する画像に対して、前述したアップコンバート処理を行ってもよい。第1区域29A以外の区域にアップコンバート処理された画像を表示することで、第1区域29A以外の区域の駆動周波数を低下させた場合の実質的な表示品位の低下をより少なくすることができる。
【0677】
なお、第1区域29Aに表示する画像のアップコンバート処理を高精度なアルゴリズムで行い、第1区域29A以外の区域に表示する画像のアップコンバート処理を低精度なアルゴリズムで行ってもよい。このような場合においても、第1区域29A以外の区域の駆動周波数を低下させた場合の実質的な表示品位の低下をより少なくすることができる。
【0678】
画像データの解像度が表示部93の解像度よりも大きい場合、若しくは、高速書き換えと消費電力の低減を優先させたい場合など、目的などに応じて、第1区域29A以外の区域に表示する画像に、ダウンコンバート処理を行ってもよい。例えば、第1区域29A以外の区域に表示する画像の書き換えを数行おき、数列おき、又は数画素おきに行うことにより、高速書き換えと消費電力の低減を実現することができる。
【0679】
注視点を含む第1区域29Aに表示する画像の解像度よりも、第1区域29A以外の区域に表示する画像の解像度を小さくすることで、映像信号生成(レンダリング)時の負荷が軽減される。このような処理を、「フォービエイテッド・レンダリング(Foveated Rendering)」ともいう。第1区域29A以外の区域の駆動周波数の低減とフォービエイテッド・レンダリングを組み合わせて行うことで、表示品位の低下を抑えながら、さらなる消費電力の低減を実現することができる。
【0680】
副表示部95ごとに行う画像データの書き換えを、全ての副表示部95で同時に行うことで、高速書き換えを実現することができる。すなわち、区画39ごとに行う画像データの書き換えを、全ての区画39で同時に行うことで、高速書き換えを実現することができる。
【0681】
一般に、ソースドライバ回路は、線順次駆動の場合、ゲートドライバ回路が1行分の画素を選択している間に、1行分の全ての画素に、同時に画像データを書き込む。例えば、表示部93が副表示部95に分割されておらず、解像度が4000×2000画素である場合、ゲートドライバ回路が1行分の画素を選択している間に、ソースドライバ回路は4000個の画素に画像データを書き込む必要がある。フレーム周波数が120Hzの場合、1フレームの時間は約8.3msecである。よって、ゲートドライバは2000行を約8.3msecで選択する必要があり、ゲート線1行が選択される時間、つまり、1画素当たりの画像データの書き込み時間は約4.17μsecとなる。すなわち、表示部の解像度が高くなるほど、また、フレーム周波数が高くなるほど、十分な画像データの書き換え時間の確保が難しくなる。
【0682】
本実施の形態で例示した表示装置90Bは、表示部93が行方向に4分割されている。よって、1つの副表示部95において、1画素当たりの画像データの書き込み時間を、表示部93が分割されていない場合より4倍長くすることができる。本発明の一態様によれば、フレーム周波数を240Hz、さらには360Hzにした場合でも画像データの書き換え時間の確保が容易になるため、表示品位の高い表示装置を実現することができる。
【0683】
本実施の形態で例示した表示装置90Bは、表示部93が行方向に4分割されているため、ソースドライバ回路と画素回路を電気的に接続する配線SLの長さが4分の1になる。このため、配線SLの抵抗値及び寄生容量がそれぞれ4分の1になり、画像データの書き込み(書き換え)に必要な時間を短くすることができる。
【0684】
加えて、本実施の形態で例示した表示装置90Bは、表示部93が列方向に8分割されているため、ゲートドライバ回路と画素回路を電気的に接続する配線GLの長さが8分の1になる。このため、配線GLの抵抗値及び寄生容量がそれぞれ8分の1になり、信号の劣化及び遅延が改善し、画像データの書き換え時間の確保が容易になる。
【0685】
本発明の一態様に係る表示装置90Bによれば、十分な画像データの書き込み時間の確保が容易であるため、表示画像の高速書き換えを実現することができる。よって、表示品位の高い表示装置を実現することができる。特に、動画表示に優れた表示装置を実現することができる。
【0686】
ここで、本発明の一態様に係る表示装置90のシンクライアント(thin client)への適用について説明しておく。近年、サーバ側で主要な演算処理を実行し、クライアント側では限られた処理のみを行うシンクライアントが注目されている。シンクライアントの実行方式として、ネットワークブート方式、サーバベース方式、ブレードPC方式、及びデスクトップ仮想化(VDI)方式などが提唱されている。
【0687】
いずれの方式においても、シンクライアントでは、サーバからクライアントへ大量のデータが送信されるため、データ送信時の消費電力が大きくなる。クライアントとして本発明の一態様に係る表示装置90を含む電子装置を用いることで、データ送信時の省電力化を実現することができる。
【0688】
なお、本発明の一態様に係る表示装置90Bでは、表示部93を32の副表示部95に分割する場合を例示した。ただし、本発明の一態様に係る表示装置90Bは、32分割に限らず、16分割、64分割、又は128分割などにしてもよい。表示部93の分割数を増やすと、ユーザが感じる実質的な表示品位の低下をより少なくすることができる。
【0689】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、又は図面等と適宜組み合わせることができる。
【0690】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0691】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について、
図37(A)乃至
図38(G)を用いて説明する。
【0692】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有する。本発明の一態様の表示装置は、高精細化及び高解像度化が容易である。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0693】
本発明の一態様の半導体装置は、電子機器の表示部以外に適用することもできる。例えば、電子機器の制御部等に、本発明の一態様の半導体装置を用いることで、低消費電力化が可能となり好ましい。
【0694】
電子機器として、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型若しくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0695】
特に、本発明の一態様の表示装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器として、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイなどのVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器など、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0696】
本発明の一態様の表示装置は、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度を有していることが好ましい。特に4K、8K、又はそれ以上の解像度とすることが好ましい。また、本発明の一態様の表示装置における画素密度(精細度)は、100ppi以上が好ましく、300ppi以上が好ましく、500ppi以上がより好ましく、1000ppi以上がより好ましく、2000ppi以上がより好ましく、3000ppi以上がより好ましく、5000ppi以上がより好ましく、7000ppi以上がさらに好ましい。このように高い解像度及び高い精細度の一方又は双方を有する表示装置を用いることで、臨場感及び奥行き感などをより高めることが可能となる。また、本発明の一態様の表示装置の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。例えば、表示装置は、1:1(正方形)、4:3、16:9、16:10など様々な画面比率に対応することができる。
【0697】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を検知、検出、又は測定する機能を含むもの)を有してもよい。
【0698】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す機能等を有することができる。
【0699】
図37(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0700】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0701】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0702】
図37(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0703】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、バッテリ6518等が配置されている。
【0704】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない。)により固定されている。
【0705】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0706】
表示パネル6511には、本発明の一態様の可撓性を有する表示装置を適用することができる。そのため、極めて軽量な電子機器を実現することができる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、表示部6502の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現することができる。
【0707】
図37(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0708】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0709】
図37(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。又は、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有してもよい。リモコン操作機7111が備える操作キー又はタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0710】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間など)の情報通信を行うことも可能である。
【0711】
図37(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0712】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0713】
図37(E)及び
図37(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0714】
図37(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ又は操作スイッチを含む。)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0715】
図37(F)は、円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0716】
図37(E)及び
図37(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0717】
表示部7000が広いほど、一度に提供することができる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0718】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像又は動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報若しくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0719】
図37(E)及び
図37(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311又は情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0720】
デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数の使用者が同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0721】
図38(A)乃至
図38(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む。)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を検知、検出、又は測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0722】
図38(A)乃至
図38(G)において、表示部9001に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0723】
図38(A)乃至
図38(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有してもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画又は動画を撮影し、記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有してもよい。
【0724】
図38(A)乃至
図38(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0725】
図38(A)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字及び画像情報をその複数の面に表示することができる。
図38(A)では、3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例として、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メール又はSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度などがある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050などを表示してもよい。
【0726】
図38(B)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054が、それぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、携帯情報端末9102の上方から観察することができる位置に表示された情報9053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば、電話を受けるか否かを判断することができる。
【0727】
図38(C)は、タブレット端末9103を示す斜視図である。タブレット端末9103は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9103は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0728】
図38(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えば、スマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001は、その表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば、無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0729】
図38(E)乃至
図38(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、
図38(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、
図38(G)は折り畳んだ状態、
図38(F)は
図38(E)と
図38(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0730】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【0731】
(実施の形態7)
本実施の形態では、p行q列(p及びqは、それぞれ2以上の整数)のマトリクス状に配置された複数の画素230を有する副表示部95の構成例について説明する。
図39(A)は、副表示部95を説明するブロック図である。副表示部95は、区画39に設けられているソースドライバ回路66及びゲートドライバ回路33と、電気的に接続される。
【0732】
図39(A)では、p行1列目の画素230を画素230[p,1]と示し、1行q列目の画素230を画素230[1,q]と示し、p行q列目の画素230を画素230[p,q]と示している。
【0733】
ゲートドライバ回路33に含まれる回路は、例えば、走査線駆動回路として機能する。ソースドライバ回路66に含まれる回路は、例えば、信号線駆動回路として機能する。
【0734】
例えば、画素230を構成するトランジスタにOSトランジスタを用い、駆動回路を構成するトランジスタにSiトランジスタを用いてもよい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、消費電力を低減することができる。また、SiトランジスタはOSトランジスタよりも動作速度が速いため、駆動回路に用いると好適である。また、表示装置によっては、画素230を構成するトランジスタと駆動回路を構成するトランジスタの双方にOSトランジスタを用いてもよい。また、表示装置によっては、画素230を構成するトランジスタと駆動回路を構成するトランジスタの双方にSiトランジスタを用いてもよい。又は、表示装置によっては、画素230を構成するトランジスタにSiトランジスタを用い、駆動回路を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いてもよい。
【0735】
画素230を構成するトランジスタに、SiトランジスタとOSトランジスタの双方を用いてもよい。また、駆動回路を構成するトランジスタに、SiトランジスタとOSトランジスタの双方を用いてもよい。
【0736】
図39(A)では、各々が略平行に配設され、かつ、ゲートドライバ回路33によって電位が制御されるp本の配線GLと、各々が略平行に配設され、かつ、ソースドライバ回路66によって電位が制御されるq本の配線SLと、を示している。例えば、r行目(rは任意の数を示し、本実施の形態などでは1以上p以下の整数である。)に配置されている画素230は、r行目の配線GLを介してゲートドライバ回路33と電気的に接続される。また、s列目(sは任意の数を示し、本実施の形態などでは1以上q以下の整数である。)に配置されている画素230は、s列目の配線SLを介してソースドライバ回路66と電気的に接続される。
図39(A)では、r行s列目の画素230を画素230[r,s]と示している。
【0737】
なお、1つの行に含まれる画素230と電気的に接続する配線GLは1本とは限らない。また、1つの列に含まれる画素230と電気的に接続する配線SLは1本とは限らない。また、配線GLと配線SLは一例であり、画素230と接続する配線は、配線GLと配線SLに限らない。
【0738】
赤色光を制御する画素230、緑色光を制御する画素230、及び青色光を制御する画素230をストライプ状に配置し、これらをまとめて1つの画素240として機能させ、それぞれの画素230の発光量(発光輝度)を制御することで、フルカラー表示を実現することができる。言い換えると、当該3つの画素230は、それぞれが副画素として機能する。すなわち、3つの副画素は、それぞれが赤色光、緑色光、又は青色光の、発光量などを制御する(
図39(B1)参照)。なお、3つの副画素それぞれが制御する光の色は、赤(R)、緑(G)、青(B)の組み合わせに限らず、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)であってもよい(
図39(B2)参照)。
【0739】
画素240を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆる2K解像度でフルカラー表示可能な表示部93を実現することができる。また、例えば、画素240を3840×2160のマトリクス状に配置すると、いわゆる4K解像度でフルカラー表示可能な表示部93を実現することができる。また、例えば、画素240を7680×4320のマトリクス状に配置すると、いわゆる8K解像度でフルカラー表示可能な表示部93を実現することができる。画素240を増やすことで、16Kさらには32Kの解像度でフルカラー表示可能な表示部93を実現することも可能である。
【0740】
1つの画素240を構成する3つの画素230の配置は、デルタ配置でもよい(
図39(B3)参照)。具体的には、1つの画素240を構成する3つの画素230それぞれの中心点を結ぶ線が、三角形になるように配置してもよい。なお、画素230の配置は、ストライプ配置及びデルタ配置に限らない。画素230の配置を、ジグザグ配置、Sストライプ配置、ベイヤー配置、又はペンタイル配置にしてもよい。
【0741】
3つの副画素(画素230)それぞれの面積は同じでなくてもよい。発光色によって発光効率及び信頼性などが異なる場合、発光色ごとに副画素の面積を変えてもよい(
図39(B4)参照)。
【0742】
4つの副画素をまとめて1つの画素として機能させてもよい。例えば、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ制御する3つの副画素に、白色光を制御する副画素を加えてもよい(
図39(B5)参照)。白色光を制御する副画素を加えることで、表示領域の輝度を高めることができる。また、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ制御する3つの副画素に、黄色光を制御する副画素を加えてもよい(
図39(B6)参照)。また、シアン色光、マゼンタ色光、黄色光をそれぞれ制御する3つの副画素に、白色光を制御する副画素を加えてもよい(
図39(B7)参照)。
【0743】
1つの画素として機能させる副画素の数を増やし、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、及び黄などの光を制御する副画素を適宜組み合わせて用いることにより、中間調の再現性を高めることができる。よって、表示品位を高めることができる。
【0744】
本発明の一態様の表示装置は、さまざまな規格の色域を再現することができる。例えば、テレビ放送で使われるPAL(Phase Alternating Line)規格及びNTSC(National Television System Committee)規格、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、プリンタなどの電子装置に用いる表示装置で広く使われているsRGB(standard RGB)規格及びAdobe RGB規格、HDTV(High Definition Television、ハイビジョンともいう)で使われるITU-R BT.709(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector Broadcasting Service(Television) 709)規格、デジタルシネマ映写で使われるDCI-P3(Digital Cinema Initiatives P3)規格、UHDTV(Ultra High Definition Television、スーパーハイビジョンともいう。)で使われるITU-R BT.2020(REC.2020(Recommendation 2020))規格などの色域を再現することができる。
【0745】
1つの画素240に受光素子を含む画素237を設けてもよい。
図40(A)に示す画素240は、緑色の光を呈する画素230(G)、青色の光を呈する画素230(B)、赤色の光を呈する画素230(R)、及び、受光素子を有する画素237(S)がストライプ状に配置されている。なお、本明細書などでは、画素237を「撮像画素」ともいう。
【0746】
画素237が有する受光素子は、可視光を検出する素子であることが好ましく、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの光のうち、一つ又は複数を検出する素子が好ましい。また、画素237が有する受光素子は、赤外光を検出する素子であってもよい。
【0747】
図40(A)に示す画素240には、ストライプ配置が適用されている。なお、受光素子を有する画素237で特定の色の光を検出する場合は、当該色の光を呈する画素230を画素237の隣に配置することで検出精度を高めることができ、好ましい。
【0748】
図40(B)に示す画素240には、3つの画素230と1つの画素237がマトリクス配置されている。
図40(B)では、赤の光を呈する画素230が受光素子を有する画素237と行方向に隣接し、青の光を呈する画素230と緑の光を呈する画素230が行方向に隣接する例を示すが、これに限定されない。
【0749】
図40(C)に示す画素240には、Sストライプ配置に画素237を追加した構成を有する。
図40(C)の画素240は、1つの縦長の画素230と、2つの横長の画素230と、1つの横長の画素237と、を有する。なお、縦長の画素230は、R、G、Sのいずれかであってもよく、横長の副画素の並び順にも限定はない。
【0750】
図40(D)では、画素240aと画素240bが交互に配置されている例を示す。画素240aは、青の光を呈する画素230、緑の光を呈する画素230、及び、受光素子を有する画素237を有する。また、画素240bは、赤の光を呈する画素230、緑の光を呈する画素230、及び、受光素子を有する画素237を有する。画素240aと画素240bを併せて1つの画素240として機能する。
図40(D)では、画素240aと画素240bの双方が、緑の光を呈する画素230と画素237を有しているが、これに限定されない。画素237を、画素240aと画素240bの双方が有することで、撮像画素の精細度を高めることができる。
【0751】
図40(E)に示すレイアウトとすることで、各副画素の開口率を高めることができ好ましい。また、
図40(F)では、画素230及び画素237の上面形状が、六角形である例を示している。
【0752】
図40(F)に示す画素240は、横1列に画素230が配置され、その下に画素237が配置されている例である。
【0753】
図40(G)に示す画素240は、横1列に画素230、及び、画素230Xが配置され、その下に画素237が配置されている例である。
【0754】
画素230Xには、例えば、赤外光(IR)を呈する画素230を適用することができる。すなわち、画素230Xは、赤外光(IR)を発する発光デバイス61を有する。この場合、画素237は、赤外光を検出する受光素子を有することが好ましい。例えば、可視光を発する画素230で画像を表示しながら、副画素Xが発する赤外光の反射光を画素237で検出することができる。
【0755】
1つの画素240に、複数の画素237を設けてもよい。この場合、複数の画素237で検出する光の波長域は同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、複数の画素237の一部が可視光を検出し、他の一部が赤外光を検出してもよい。
【0756】
画素237は、全ての画素240に設けなくてもよい。一定の画素数ごとに、画素237を含む画素240を設けてもよい。
【0757】
画素237を用いて、若しくは、画素237と前述したセンサ97を用いて、例えば、指紋、掌紋、虹彩、網膜、脈形状(静脈形状、動脈形状を含む。)、又は顔などを用いた個人認証のための情報を検出することができる。また、画素237を用いて、若しくは、画素237とセンサ97を用いて、ユーザの瞬き回数、瞼の挙動、瞳孔の大きさ、体温、脈拍、血液中の酸素飽和度などを計測し、ユーザの疲労度及び健康状態などを検出することができる。
【0758】
ユーザの視線の動き、まばたきの回数、及び、まばたきのリズムなどを用いて、電子装置の操作を実現することができる。具体的には、画素237を用いて、若しくは、画素237とセンサ97を用いて、ユーザの視線の動き、まばたきの回数、及び、まばたきのリズムなどの情報を検出し、これらの情報の一若しくは複数の組み合わせを電子装置の操作信号として用いればよい。例えば、まばたきをマウスのクリック動作に置き換えることも可能である。視線の動き、及び、まばたきを検出することにより、ユーザは手に何も持たない状態で電子装置の入力操作を行える。よって、電子装置の操作性を高めることができる。
【0759】
例えば、実施の形態5に記載のメガネ型の電子装置150の表示装置90に複数の撮像画素(画素237)を設けることで、当該複数の撮像画素を視線検出部84として用いることができる。よって、電子装置の構成部品の数を減らすことができる。よって、電子装置の軽量化、生産性向上、及びコストダウンなどを実現することができる。
【0760】
<発光デバイスの構成例>
本発明の一態様に係る表示装置に用いることができる発光デバイス61について説明する。
【0761】
図41(A)に示すように、発光デバイス61は、一対の電極(導電層171、導電層177)の間に、EL層175を備える。EL層175は、層4420、発光層4411、層4430などの複数の層で構成することができる。層4420は、例えば、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、及び、電子輸送性の高い物質を含む層(電子輸送層)などを備えることができる。発光層4411は、例えば、発光性の化合物を備える。層4430は、例えば、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、及び、正孔輸送性の高い物質を含む層(正孔輸送層)を備えることができる。
【0762】
一対の電極間に設けられた層4420、発光層4411、及び層4430を備える構成は、単一の発光ユニットとして機能することができ、本明細書などでは、
図41(A)の構成をシングル構造と呼ぶ。
【0763】
図41(B)は、
図41(A)に示す発光デバイス61が備えるEL層175の変形例である。具体的には、
図41(B)に示す発光デバイス61は、導電層171上の層4430-1と、層4430-1上の層4430-2と、層4430-2上の発光層4411と、発光層4411上の層4420-1と、層4420-1上の層4420-2と、層4420-2上の導電層177と、を備える。例えば、導電層171を陽極とし、導電層177を陰極とした場合、層4430-1が正孔注入層として機能し、層4430-2が正孔輸送層として機能し、層4420-1が電子輸送層として機能し、層4420-2が電子注入層として機能する。又は、導電層171を陰極とし、導電層177を陽極とした場合、層4430-1が電子注入層として機能し、層4430-2が電子輸送層として機能し、層4420-1が正孔輸送層として機能し、層4420-2が正孔注入層として機能する。このような層構造とすることで、発光層4411に効率よくキャリアを注入し、発光層4411内におけるキャリアの再結合の効率を高めることが可能となる。
【0764】
なお、
図41(C)に示すように層4420と層4430との間に複数の発光層(発光層4411、発光層4412、発光層4413)が設けられる構成も、シングル構造の一例である。
【0765】
図41(D)に示すように、複数の発光ユニット(EL層175a、EL層175b)が、中間層(電荷発生層)4440を介して直列に接続された構成を、本明細書などではタンデム構造又はスタック構造と呼ぶ。なお、タンデム構造とすることで、高輝度発光が可能な発光デバイスを実現することができる。
【0766】
発光デバイス61を
図41(D)に示すタンデム構造にする場合、EL層175aとEL層175bそれぞれの発光色を同じにしてもよい。例えば、EL層175a及びEL層175bの発光色を、どちらも緑色にしてもよい。
【0767】
なお、赤色光(R)を発する発光デバイス61、緑色光(G)を発する発光デバイス61、及び、青色光(B)を発する発光デバイス61を、それぞれ副画素として用いて、これら3つの副画素で1つの画素を構成することで、フルカラー表示を実現することができる。表示部93がR、G、Bの3種類の副画素を含む場合、それぞれの発光デバイスをタンデム構造としてもよい。具体的には、Rの副画素のEL層175a及びEL層175bは、それぞれ、赤色発光が可能な材料を有し、Gの副画素のEL層175a及びEL層175bは、それぞれ、緑色発光が可能な材料を有し、Bの副画素のEL層175a及びEL層175bは、それぞれ、青色発光が可能な材料を備える。言い換えると、発光層4411と発光層4412の材料が同じでもよい。EL層175aとEL層175bの発光色を同じにすることで、単位発光輝度あたりの電流密度を低減することができる。よって、発光デバイス61の信頼性を高めることができる。
【0768】
発光デバイスの発光色は、EL層175を構成する材料によって、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、黄、又は白などとすることができる。また、発光デバイスにマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度をさらに高めることができる。
【0769】
発光層には、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、O(橙)などの発光を示す発光物質を2種類以上含んでもよい。白色の光を発する発光デバイスは、発光層に2種類以上の発光物質を含む構成とすることが好ましい。白色発光を得るには、2種類以上の発光物質の各々の発光が混合することにより白色色となるような発光物質を選択すればよい。例えば、第1の発光層の発光色と第2の発光層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることができる。また、発光層を3つ以上備える発光デバイスの場合も同様である。
【0770】
発光層には、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、O(橙)等の発光を示す発光物質を2種類以上含むことが好ましい。又は、発光物質を2種類以上有し、それぞれの発光物質の発光は、R、G、Bのうち2以上の色のスペクトル成分を含むことが好ましい。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。
【0771】
発光物質として、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(TADF材料)などが挙げられる。発光物質として、有機化合物だけでなく、無機化合物(量子ドット材料など)を用いることができる。
【0772】
本実施の形態、及び、対応する図面等は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、又は、実施例と適宜組み合わせて実施することができる。また、本実施の形態に示す複数の構成、及び、対応する図面等は、互いに適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0773】
本実施例では、本発明の一態様に係る作製方法を用いてトランジスタを作製し、断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像の観察を行った。
【0774】
本実施例では、
図13(A)乃至
図16(C)に示す方法を用いて、
図8(A)及び
図8(B)に示すトランジスタ200を有する試料を作製した。
【0775】
まず、ガラス基板を用意し、当該ガラス基板上に、膜厚200nmの窒化シリコン膜をPECVD法により形成し、絶縁層102を得た。
【0776】
次に、絶縁層102上に、膜厚100nmのITSO膜をスパッタリング法により形成し、これを加工して、導電層212a及び導電層212bを得た。
【0777】
次に、導電層212a及び導電層212bを覆って、膜厚5nmの酸化アルミニウム膜をスパッタリング法により形成し、絶縁層110aを得た。
【0778】
次に、絶縁層110a上に、膜厚500nmの酸化窒化シリコン膜をPECVD法により形成し、絶縁層110bを得た。
【0779】
さらに、絶縁層110bの成膜後に、大気に曝すことなく、プラズマ処理を行った。当該プラズマ処理にはN2Oガスを用い、基板温度を350℃として、240秒の処理を行った。
【0780】
次に、絶縁層110bに酸素を供給する処理を行った。
【0781】
絶縁層110bに酸素を供給するにあたっては、まず、酸素雰囲気100%の環境下で、室温にて、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によって、膜厚20nmの金属酸化物層137を、絶縁層110b上に形成した。
【0782】
続いて、加熱処理を行った。当該加熱処理は、乾燥空気雰囲気で行い、処理温度を250度、処理時間を1時間として行った。
【0783】
続いて、金属酸化物層137の除去を行った。
【0784】
以上の一連の処理により、絶縁層110bに酸素を供給する処理を行った。
【0785】
次に、絶縁層110b上に、膜厚5nmの酸化アルミニウム膜をスパッタリング法により形成し、絶縁層110cを得た。
【0786】
次に、絶縁層102及び絶縁層110(絶縁層110a乃至絶縁層110c)をドライエッチング法により加工して、平面視にて、導電層212a及び導電層212bと重なる領域を有するように、絶縁層102及び絶縁層110に、凹部145を形成した。
【0787】
次に、凹部145を覆うように、絶縁層110上に、膜厚20nmの金属酸化物膜208fを形成した。金属酸化物膜208fは、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成した。なお、当該形成時の基板温度は室温とし、成膜ガスには酸素ガス及びアルゴンガスの今後ガスを用い、酸素流量比は10%とした。
【0788】
次に、凹部145を覆うように、金属酸化物膜208f上に、厚さ2.5μmのポジ型のフォトレジスト159fを塗布し、フォトレジスト159fの全面に対して、光149(紫外線)照射を行った。
【0789】
次に、フォトレジスト159fの光149が照射された部分(感光した部分)を除去し、レジストマスク159を形成した。
【0790】
次に、金属酸化物膜208fの露出した部分(レジストマスク159に覆われていない部分)を、混酸アルミ液を用いたウェットエッチング法により除去し、凹部145の側壁(絶縁層110の側面、導電層212aの側面、及び、導電層212bの側面)に接する半導体層208を形成した。なお、混酸アルミ液は、硝酸5%未満、酢酸10%未満、リン酸80%未満を含む、水溶液である。
【0791】
次に、凹部145内に残存したレジストマスク159を除去した。
【0792】
次に、プラズマ処理を行った。プラズマ処理は、N2Oガスを用い、基板温度を350℃として、20秒の処理を行った。
【0793】
続いて、前述のプラズマ処理後、大気に曝すことなく連続して、凹部145を覆うように、半導体層208上及び絶縁層110上に、膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜をPECVD法により形成し、絶縁層106を得た。
【0794】
次に、絶縁層106上に、膜厚50nmのチタン膜と、膜厚200nmのアルミニウム膜と、膜厚50nmのチタン膜と、の積層膜をスパッタリング法により形成し、当該積層膜を、平面視にて、凹部145と重なる領域を有するように加工して、導電層204を得た。
【0795】
以上により、トランジスタ200を作製した。
【0796】
次に、作製したトランジスタ200を覆って、膜厚300nmの窒化酸化シリコン膜をPECVD法により形成、絶縁層195を得た。
【0797】
次に、乾燥空気雰囲気で、300℃、1時間の加熱処理を行った。
【0798】
次に、絶縁層195を覆って、膜厚1.5μmのポリイミド樹脂を形成した。
【0799】
続いて、窒素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0800】
以上のようにして、トランジスタ200を有する試料を作製した。
【0801】
上記試料において、断面STEM像を撮影した結果について、
図42(B)及び
図42(C)、
図43(A)及び
図43(B)に示す。ここで、
図42(A)は、上記試料の光学顕微鏡写真であり、
図42(B)は、
図42(A)の破線A-A´に対応する断面STEM像であり、
図42(C)は、
図42(A)の破線B-B´に対応する断面STEM像である。また、
図43(A)は、
図42(B)の拡大写真であり、
図43(B)は、
図42(C)の拡大写真である。なお、上記試料は、日立ハイテク社製走査透過電子顕微鏡(STEM)(型番:HD-2300)を用いて、加速電圧200kVで撮影した。
【0802】
図43(A)及び
図43(B)に示すように、凹部145内において、絶縁層110の側面、並びに、導電層212aの上面及び側面に接して、半導体層208が形成されていることを確認することができた。また、凹部145の底面上には、半導体層208と分離して、材料層208mが形成されていることを確認することができた。また、半導体層208及び材料層208mを覆って、絶縁層106が設けられ、絶縁層106上に、導電層204が設けられていることを確認することもできた。
【0803】
以上のように、本実施例において、絶縁層102及び絶縁層110に、狙い通り、凹部145が形成されていることを確認することができた。また、凹部145の側壁には半導体層208が、凹部145の底面には材料層208mが、それぞれ分離して形成されていることを確認することができた。
【0804】
以上により、本発明の一態様の作製方法により、トランジスタ200を作製できていることを確認した。
【0805】
本実施例は、実施の形態と適宜組み合わせることができる。