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特開2024-158734遠隔制御システム、移動体、制御装置および遠隔制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158734
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】遠隔制御システム、移動体、制御装置および遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241031BHJP
   B62D 65/18 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
G08G1/09 V
B62D65/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074214
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】安山 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【テーマコード(参考)】
3D114
5H181
【Fターム(参考)】
3D114AA03
3D114AA11
3D114CA01
3D114DA01
3D114JA01
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB08
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制する。
【解決手段】遠隔制御システムは、遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部と、動作状態が有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と動作状態が有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を送信するための第1通信部とを備える移動体と、動作状態の有効状態への切り替えの適否を判定する制御装置であって、少なくとも一方の情報を受信するための第2通信部と、第2通信部により少なくとも一方の情報が受信され、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に動作状態の有効状態への切り替えを許可する判定部とを備える制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御システムであって、
遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部と、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を送信するための第1通信部とを備える移動体と、
前記少なくとも一方の情報を受信するための第2通信部と、前記第2通信部により前記少なくとも一方の情報が受信され、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する判定部とを備える制御装置と、
を備える、遠隔制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記判定部は、前記第2通信部により前記第1情報が受信され、かつ、前記許可条件を満たしていると判定した場合に、前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可することを示す許可通知を前記移動体に送信し、
前記指令受付部は、前記第1通信部から前記第1情報が送信されてから予め定められた期間内に前記許可通知を受信しなかった場合には、前記動作状態の前記有効状態への切り替えを制限する、遠隔制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記判定部は、前記第2通信部により前記第2情報が受信され、かつ、前記許可条件を満たしていないと判定した場合には、前記動作状態の前記無効状態への切り替えを実行させるための無効化指令を前記移動体に送信する、遠隔制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔制御システムであって、
前記判定部は、前記無効化指令を前記移動体に送信した後、前記動作状態が前記無効状態に切り替えられなかったと判定した場合には、前記移動体の移動を制限するための停止指令を前記移動体に送信する、遠隔制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の遠隔制御システムであって、
異常が発生したことを報知する報知部をさらに備え、
前記判定部は、前記無効化指令を前記移動体に送信した後、前記動作状態が前記無効状態に切り替えられなかったと判定した場合には、異常が発生したことを前記報知部に報知させる、遠隔制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記許可条件には、前記移動体が停止中であることが含まれる、遠隔制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記許可条件には、予め定められた装置により前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれる、遠隔制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記許可条件には、予め定められた場所において前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれる、遠隔制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の遠隔制御システムであって、
前記許可条件には、予め定められた人物により前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれる、遠隔制御システム。
【請求項10】
遠隔制御可能な移動体であって、
外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部と、
前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を送信するための通信部と、
を備える、移動体。
【請求項11】
制御装置であって、
遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部を備える移動体から、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を受信するための通信部と、
前記通信部により前記少なくとも一方の情報が受信され、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する判定部と、
を備える、制御装置。
【請求項12】
遠隔制御方法であって、
遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部を備える移動体から、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を受信し、
前記少なくとも一方の情報を受信し、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する、
遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔制御システム、移動体、制御装置および遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の製造工程において、遠隔制御により車両を走行させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの利便性を高めるために、移動体の遠隔制御の有効と無効とが切り替え可能であることが好ましい。しかしながら、遠隔制御の無効から有効への切り替えが無条件で可能であると、不適切な状況下で遠隔制御が行われる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、遠隔制御システムが提供される。この遠隔制御システムは、遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部と、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を送信するための第1通信部とを備える移動体と、前記動作状態の前記有効状態への切り替えの適否を判定する制御装置であって、前記少なくとも一方の情報を受信するための第2通信部と、前記第2通信部により前記少なくとも一方の情報が受信され、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する判定部とを備える制御装置と、を備える。
この形態の遠隔制御システムによれば、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(2)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記判定部は、前記第2通信部により前記第1情報が受信され、かつ、前記許可条件を満たしていると判定した場合に、前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可することを示す許可通知を前記移動体に送信し、前記指令受付部は、前記第1通信部から前記第1情報が送信されてから予め定められた期間内に前記許可通知を受信しなかった場合には、前記動作状態の前記有効状態への切り替えを制限してもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、許可条件を満たしていない場合に、指令受付部の動作状態が無効状態から有効状態に切り替えられることを制限することができるため、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(3)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記判定部は、前記第2通信部により前記第2情報が受信され、かつ、前記許可条件を満たしていないと判定した場合には、前記動作状態の前記無効状態への切り替えを実行させるための無効化指令を前記移動体に送信してもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、許可条件を満たしていない場合に、指令受付部の動作状態を有効状態から無効状態に戻すことができるため、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(4)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記判定部は、前記無効化指令を前記移動体に送信した後、前記動作状態が前記無効状態に切り替えられなかったと判定した場合には、前記移動体の移動を制限するための停止指令を前記移動体に送信してもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、指令受付部の動作状態が有効状態から無効状態に戻らなかった場合に、移動体の移動を制限することができるため、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(5)上記形態の遠隔制御システムは、異常が発生したことを報知する報知部をさらに備え、前記判定部は、前記無効化指令を前記移動体に送信した後、前記動作状態が前記無効状態に切り替えられなかったと判定した場合には、異常が発生したことを前記報知部に報知させてもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、指令受付部の動作状態が有効状態から無効状態に戻らなかった場合に、異常が発生したことを報知することができる。
(6)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記許可条件には、前記移動体が停止中であることが含まれてもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、移動体の遠隔制御が有効化される際の安全性を高めることができる。
(7)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記許可条件には、予め定められた装置により前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれてもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、許可されていない装置により指令受付部の動作状態が有効状態に切り替えられた後、移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(8)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記許可条件には、予め定められた場所において前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれてもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、許可されていない場所において指令受付部の動作状態が有効状態に切り替えられた後、移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(9)上記形態の遠隔制御システムにおいて、前記許可条件には、予め定められた人物により前記動作状態の前記有効状態への切り替えが実施されることが含まれてもよい。
この形態の遠隔制御システムによれば、許可されていない人物により指令受付部の動作状態が有効状態に切り替えられた後、移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(10)本開示の第2の形態によれば、遠隔制御可能な移動体が提供される。この移動体は、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部と、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を送信するための通信部と、を備える。
この形態の移動体によれば、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(11)本開示の第3の形態によれば、制御装置が提供される。この制御装置は、遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部を備える移動体から、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を受信するための通信部と、前記通信部により前記少なくとも一方の情報が受信され、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する判定部と、を備える。
この形態の制御装置によれば、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
(12)本開示の第4の形態によれば、遠隔制御方法が提供される。この遠隔制御方法は、遠隔制御可能な移動体であって、外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける有効状態と前記遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで動作状態が切り替えられる指令受付部を備える移動体から、前記動作状態が前記有効状態に切り替えられる可能性があることを示す第1情報と前記動作状態が前記有効状態に切り替えられたことを示す第2情報との少なくとも一方の情報を受信し、前記少なくとも一方の情報を受信し、かつ、予め定められた許可条件を満たしていると判定した場合に前記動作状態の前記有効状態への切り替えを許可する。
この形態の遠隔制御方法によれば、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
本開示は、遠隔制御システム、移動体、制御装置、および、遠隔制御方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、コンピュータプログラム、および、コンピュータプログラムが記録された記録媒体などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】遠隔制御システムの構成を示す説明図。
図2】車両の構成を示す説明図。
図3】ジオフェンス領域を示す説明図。
図4】車両が遠隔制御により走行する様子を示す説明図。
図5】有効化後処理の内容を示すフローチャート。
図6】有効化後判定処理の内容を示すフローチャート。
図7】車両の遠隔制御が有効から無効に戻される様子を示す説明図。
図8】有効化前処理の内容を示すフローチャート。
図9】有効化前判定処理の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における遠隔制御システム10の構成を示す説明図である。図2は、第1実施形態における車両100の構成を示す説明図である。遠隔制御システム10は、移動体を遠隔制御するために用いられる。本実施形態では、移動体は、車両100である。より具体的には、移動体は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。なお、移動体は、電気自動車に限られず、例えば、ガソリン自動車や、ハイブリッド自動車や、燃料電池自動車でもよい。移動体は、車両100に限られず、例えば、電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)でもよい。
【0009】
図1に示すように、本実施形態では、遠隔制御システム10は、遠隔制御可能な車両100と、車両100を遠隔制御するための遠隔制御装置200と、管理装置300とを備えている。なお、遠隔制御装置200のことを単に制御装置と呼ぶことがある。
【0010】
図2に示すように、車両100は、車両100の各部を制御するための車両制御装置110と、車両制御装置110の制御下で駆動するアクチュエータ群120と、無線通信により遠隔制御装置200と通信するための通信装置130と、車両100の遠隔制御の有効と無効とを切り替えるための切替装置TLが接続されるコネクタ140と、車両100の位置情報を取得するためのGSNN(Global Navigation Satellite System)受信機150と、車両100の室内を撮影するための車内カメラ160とを備えている。本実施形態では、アクチュエータ群120には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。コネクタ140は、車両100の室内に配置されている。車内カメラ160は、作業員WKによりコネクタ140に切替装置TLが接続される様子を撮影することができる。なお、通信装置130のことを第1通信部と呼ぶことがある。
【0011】
車両制御装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、入出力インタフェース113と、内部バス114とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ111、メモリ112、および、入出力インタフェース113は、内部バス114を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース113には、アクチュエータ群120、通信装置130、コネクタ140、GSNN受信機150、および、車内カメラ160が接続されている。メモリ112には、コンピュータプログラムPG1が記憶されている。
【0012】
プロセッサ111は、コンピュータプログラムPG1を実行することにより、車両制御部115、指令受付部116、および、情報取得部117として機能する。車両制御部115は、アクチュエータ群120を制御する。指令受付部116は、車両100の外部から供給される遠隔制御指令を受け付ける。遠隔制御指令は、アクチュエータ群120を駆動させるための制御指令である。本実施形態では、遠隔制御指令には、例えば、車両100の加速度の目標値や操舵角の目標値が示されている。遠隔制御指令には、車両100の目標ルートが示されていてもよい。この場合、車両制御部115が目標ルートから車両100の加速度の目標値や操舵角の目標値を決定してもよい。指令受付部116により受け付けられた遠隔制御指令は、車両制御部115に供給される。車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗している場合に、運転者の操作に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗しているか否かにかかわらず、指令受付部116により受け付けられた遠隔制御指令に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることもできる。
【0013】
指令受付部116は、遠隔制御指令を受け付ける有効状態と、遠隔制御指令を受け付けない無効状態とのうちで、自身の動作状態を切り替えることができる。以下の説明では、指令受付部116の動作状態を無効状態から有効状態に切り替えることを、遠隔制御を有効化すると呼び、指令受付部116の動作状態を有効状態から無効状態に切り替えることを、遠隔制御を無効化すると呼ぶ。指令受付部116は、遠隔制御を無効化するための指令である無効化指令を取得した場合に遠隔制御を無効化し、遠隔制御を無効化するための指令である有効化指令を取得した場合に遠隔制御を有効化する。本実施形態では、無効化指令は、通信装置130を介して遠隔制御装置200から供給される。有効化指令は、コネクタ140を介して切替装置TLから供給される。
【0014】
情報取得部117は、車両100の遠隔制御が有効化されることの適否の判定に用いられる情報を取得し、取得した情報を遠隔制御装置200に送信する。本実施形態では、情報取得部117は、車両100のスタートスイッチがオンであるかオフであるかを示す情報、コネクタ140に接続されている切替装置TLの識別情報、GSNN受信機150から得られる車両100の現在地を示す位置情報、および、車内カメラ160から得られる画像を取得する。スタートスイッチは、ガソリン車におけるイグニッションスイッチに相当する。スタートスイッチがオフである場合には、車両100は自走できない。
【0015】
図1に示すように、遠隔制御装置200は、プロセッサ201と、メモリ202と、入出力インタフェース203と、内部バス204とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ201、メモリ202、および、入出力インタフェース203は、内部バス204を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース203には、無線通信により車両100および管理装置300と通信するための通信装置205が接続されている。通信装置205は、無線通信により車両100と通信し、有線通信により管理装置300と通信してもよい。メモリ202には、コンピュータプログラムPG2、および、データベースDBが記憶されている。なお、通信装置205のことを第2通信部と呼ぶことがある。
【0016】
プロセッサ201は、コンピュータプログラムPG2を実行することにより、遠隔制御部210、および、判定部220として機能する。遠隔制御部210は、車両100を遠隔制御するための遠隔制御指令を生成し、遠隔制御指令を車両100に供給する。判定部220は、車両100の遠隔制御を有効化することの適否を判定する。
【0017】
データベースDBには、車両100の遠隔制御の有効化に用いられることを許可されている装置の識別情報、車両100の遠隔制御を有効化することを許可されている人物の識別情報、および、車両100の遠隔制御を有効化することを許可されているジオフェンス領域の範囲を示す情報が登録されている。遠隔制御の有効化に用いられることを許可されている装置には、例えば、車両100の製造メーカにより製造された切替装置TLが含まれている。遠隔制御を有効化することを許可されている人物には、例えば、車両100の製造メーカの従業員、および、車両100の販売店の従業員が含まれている。ジオフェンス領域とは、仮想的な柵であるジオフェンスで囲まれている領域のことである。ジオフェンス領域は、特定の施設あるいは特定の地域が含まれるように設けられる。
【0018】
管理装置300は、遠隔制御システム10を管理するための装置である。管理装置300は、例えば、デスクトップ型のパーソナルコンピュータである。管理装置300は、タブレット端末であってもよい。管理装置300は、遠隔制御システム10の管理者により操作される。管理装置300は、有線通信あるいは無線通信により遠隔制御装置200と通信するための通信装置(不図示)と、遠隔制御システム10において異常が発生したことを管理者に報知するための報知部310とを備えている。本実施形態では、報知部310は、ディスプレイであり、例えば、テキストメッセージにより異常を報知する。なお、報知部310は、音により異常を報知するスピーカ、あるいは、光により異常を報知するランプであってもよい。
【0019】
図3は、ジオフェンス領域RGを示す説明図である。図3には、3つのジオフェンス領域RG1~RG3が図示されている。ジオフェンス領域RG1は、車両100を製造する工場KJが含まれるように設けられており、ジオフェンス領域RG2は、車両100を販売する販売店DRが含まれるように設けられており、ジオフェンス領域RG3は、車両100が船積みされる港PTが含まれるように設けられている。以下の説明では、各ジオフェンス領域RG1~RG3を特に区別せずに説明する場合には、単にジオフェンス領域RGと呼ぶ。
【0020】
図4は、車両100が遠隔制御により走行する様子を示す説明図である。図4には、2台の車両100A,100Bが工場KJ内を走行する様子が図示されている。以下の説明において、各車両100A,100Bを特に区別せずに説明する場合には、単に車両100と呼ぶ。本実施形態では、工場KJは、車両100の組立作業が実施される第1場所PL1と、車両100の検査が実施される第2場所PL2とを備えている。第1場所PL1および第2場所PL2は、車両100が走行可能な走行路SRによって接続されている。第1場所PL1において組み立てられた車両100は、第2場所PL2において検査を受ける。第2場所PL2における検査に合格した車両100は、工場KJから出荷される。
【0021】
第1場所PL1での組立作業が終了した時点で、車両100は、遠隔制御により移動可能な状態となっている。車両100が遠隔制御により移動可能な状態とは、車両100が車両制御装置110と駆動装置と操舵装置と制動装置と通信装置130とを備えており、遠隔制御により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮可能な状態のことを意味する。したがって、車両100が遠隔制御により移動する時点では、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が車両100に取り付けられていなくてもよいし、バンパーやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が車両100に取り付けられていなくてもよいし、車両100がボディシェルを備えていなくてもよい。この場合、車両100が工場KJから出荷されるまでにボディシェル等の残りの部品が車両100に取り付けられてもよいし、工場KJから出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に取り付けられてもよい。
【0022】
各場所PL1,PL2は、同じ建物内に設けられてもよいし、同じ敷地内の異なる建物内に設けられてもよい。各場所PL1,PL2は、屋内ではなく、屋外に設けられてもよい。各場所PL1,PL2は、複数の敷地に分散して設けられてもよい。例えば、各場所PL1,PL2は、公道あるいは私道を挟んで隣接する第1工場と第2工場とに分散して設けられてもよい。この場合、第1工場と第2工場とを合わせて工場KJと呼び、走行路SRには公道の一部あるいは私道の一部が含まれてもよい。
【0023】
遠隔制御部210が遠隔制御により車両100を走行させる方法について、第1場所PL1から第2場所PL2まで車両100を走行させる場合を例にして説明する。遠隔制御部210は、車両100が走行路SRを通って目的地まで走行するための目標ルートを決定する。工場KJには、走行路SRを撮影する複数のカメラCMが設置されており、遠隔制御部210は、各カメラCMにより撮影された映像を解析することにより、リアルタイムで、目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きを取得することができる。遠隔制御部210は、車両100を目標ルートに沿って走行させるための遠隔制御指令を生成し、遠隔制御指令を車両100に送信する。車両100に搭載されている車両制御装置110は、受信した遠隔制御指令に従ってアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させる。したがって、遠隔制御システム10により、クレーンやコンベアなどの搬送装置を用いずに、車両100を第1場所PL1から第2場所PL2まで遠隔制御により移動させることができる。本実施形態では、遠隔制御部210は、複数の車両100A,100Bを同時並列的に遠隔制御により走行させることができる。
【0024】
本実施形態では、車両100が第2場所PL2に移動した後、車両100の遠隔制御は無効化される。その後、車両100の遠隔制御を有効化することができる。例えば、工場KJから販売店DRに搬送された車両100の遠隔制御を有効化する場合、販売店DRの作業員が車両100を運転しなくても、遠隔制御により車両100を移動させることが可能になる。あるいは、工場KJから港PTに搬送された車両100の遠隔制御を有効化する場合、港PTの作業員が車両100を運転しなくても、遠隔制御により車両100を船積みすることが可能になる。
【0025】
図5は、車両100において実行される有効化後処理の内容を示すフローチャートである。図6は、遠隔制御装置200において実行される有効化後判定処理の内容を示すフローチャートである。図5および図6を用いて、車両100の遠隔制御が有効化された場合に、遠隔制御システム10において実行される方法について説明する。なお、遠隔制御システム10において実行される方法のことを遠隔制御方法と呼ぶことがある。
【0026】
図5に示す有効化後処理は、車両100の車両制御装置110により繰り返し実行される。有効化後処理が開始されると、ステップS110にて、指令受付部116は、車両100の遠隔制御が有効化されたか否かを判定する。ステップS110において車両100の遠隔制御が有効化されたと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS110後の処理をスキップして、有効化後処理を終了する。ステップS110において車両100の遠隔制御が有効化されたと判定された場合には、指令受付部116は、ステップS120にて、通信装置130を介して有効化通知を遠隔制御装置200に送信する。有効化通知は、遠隔制御が有効化されたことを示す通知である。なお、有効化通知のことを第2情報と呼ぶことがある。
【0027】
ステップS130にて、指令受付部116は、遠隔制御装置200から無効化指令を受信したか否かを判定する。ステップS130において遠隔制御装置200から無効化指令を受信したと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS140にて、有効化通知を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS140において有効化通知を送信してから所定時間が経過したと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS130に戻り、再び、遠隔制御装置200から無効化指令を受信したか否かを判定する。ステップS140において有効化通知を送信してから所定時間が経過したと判定された場合には、指令受付部116は、有効化後処理を終了する。
【0028】
ステップS130において遠隔制御装置200から無効化指令を受信したと判定された場合には、指令受付部116は、ステップS150にて、車両100の遠隔制御の無効化を実行する。ステップS160にて、指令受付部116は、車両100の遠隔制御の無効化が成功したか否かを判定する。ステップS160において車両100の遠隔制御の無効化が成功したと判定された場合には、指令受付部116は、ステップS170にて、無効化成功通知を遠隔制御装置200に送信する。無効化成功通知は、無効化が成功したことを示す通知である。その後、車両制御装置110は、有効化後処理を終了する。
【0029】
ステップS160において車両100の遠隔制御の無効化が成功したと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS180にて、無効化失敗通知を遠隔制御装置200に送信する。無効化失敗通知は、無効化が失敗したことを示す通知である。ステップS190にて、車両制御部115は、車両100のスタートスイッチをオフにすることにより、車両100を停止させる。本実施形態では、車両制御部115は、通信装置130を介して遠隔制御装置200から受信した停止指令に従って、車両100のスタートスイッチをオフにする。その後、車両制御装置110は、有効化後処理を終了する。
【0030】
図6に示す有効化後判定処理は、遠隔制御装置200により繰り返し実行される。有効化後判定処理が開始されると、ステップS210にて、判定部220は、通信装置205を介して車両100から有効化通知を受信したか否かを判定する。ステップS210において車両100から有効化通知を受信したと判定されなかった場合には、判定部220は、ステップS210後の処理をスキップして、有効化後判定処理を終了する。
【0031】
ステップS210において車両100から有効化通知を受信したと判定された場合には、判定部220は、ステップS220にて、所定の許可条件を満たしているか否かを判定する。本実施形態では、判定部220は、下記の条件A~Dの少なくとも1つを満たしている場合に、許可条件を満たしていると判定する。
・条件A:車両100のスタートスイッチがオフの状態で遠隔制御の有効化が実施されたこと。
・条件B:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されている切替装置TLにより実施されたこと。
・条件C:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されている作業員WKにより実施されたこと。
・条件D:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されているジオフェンス領域RG内で実施されたこと。
なお、許可条件は、許可条件は、条件A~Dのいずれか1つを満たしていることであってもよいし、条件A~Dの2つ以上を満たしていることであってもよいし、条件A~Dの3つ以上を満たしていることであってもよいし、条件A~Dの全てを満たしていることであってもよい。
【0032】
条件Aに関して、本実施形態では、判定部220は、有効化通知とともに、有効化が実施された時点でのスタートスイッチのオンオフを示す情報を車両100から取得する。条件Aが許可条件に含まれる場合、車両100の遠隔制御が有効化される際の安全性を高めることができる。
【0033】
条件Bに関して、本実施形態では、切替装置TLは、コネクタ140を介して、有効化指令とともに切替装置TLの識別情報を車両100に送信する。判定部220は、有効化通知とともに、切替装置TLの識別情報を車両100から取得する。判定部220は、有効化に用いられた切替装置TLがデータベースDBに登録されているか否かを判定する。条件Bが許可条件に含まれる場合、許可されていない切替装置TLにより車両100の遠隔制御が有効化されることを抑制できる。
【0034】
条件Cに関して、本実施形態では、車内カメラ160により切替装置TLをコネクタ140に接続する作業員WKの顔が撮影される。判定部220は、有効化通知とともに、車内カメラ160により撮影された作業員WKの画像を取得する。判定部220は、画像を用いた顔認証により、画像に写っている作業員WKがデータベースDBに登録されている人物であるか否かを判定する。条件Cが許可条件に含まれる場合、許可されていない人物により車両100の遠隔制御が有効化されることを抑制できる。
【0035】
条件Dに関して、本実施形態では、判定部220は、有効化通知とともに、GSNN受信機150から得られる車両100の位置情報を取得する。判定部220は、車両100の位置情報がデータベースDBに登録されているジオフェンス領域RG内に位置しているか否かを判定する。条件Dが許可条件に含まれる場合、許可されていない場所で車両100の遠隔制御が有効化されることを抑制できる。
【0036】
ステップS220において許可条件を満たしていると判定された場合には、判定部220は、ステップS220後の処理をスキップして、有効化後判定処理を終了する。つまり、判定部220は、ステップS220において許可条件を満たしていると判定された場合には、何もせずに、有効化後判定処理を終了する。判定部220は、ステップS220において許可条件を満たしていると判定された場合に、遠隔制御の有効化を許可することを示す通知を車両100に送信してもよい。
【0037】
ステップS220において許可条件を満たしていると判定されなかった場合には、判定部220は、ステップS230にて、車両100に無効化指令を送信する。ステップS240にて、判定部220は、車両100から無効化成功通知を受信したか否かを判定する。ステップS240において車両100から無効化成功通知を受信したと判定された場合、判定部220は、ステップS240後の処理をスキップして、有効化後判定処理を終了する。
【0038】
ステップS240において車両100から無効化成功通知を受信したと判定されなかった場合、判定部220は、ステップS250にて、無効化指令を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS250において所定時間が経過したと判定されなかった場合、判定部220は、ステップS240に戻り、無効化成功通知を受信したか否かを判定する。ステップS250において所定時間が経過したと判定された場合判定部220は、ステップS260にて、車両100にスタートスイッチをオフにさせる指令である停止指令を送信する。ステップS270にて、判定部220は、車両100の遠隔制御の無効化に失敗したことを示す通知を管理装置300に送信する。管理装置300は、報知部310を介して、車両100の遠隔制御の無効化に失敗したこと管理者に報知する。その後、判定部220は、有効化後判定処理を終了する。
【0039】
図7は、車両100の遠隔制御が有効から無効に戻される様子を示す説明図である。図7には、2台の車両100A,100Bが示されている。図7に示す例では、遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されている切替装置TLを用いて実施されたこと(条件B)が許可条件である。図7に示す切替装置TL1は、データベースDBに登録されている切替装置TLであるが、切替装置TL2は、データベースDBに登録されていない切替装置TLである。作業員WK1が切替装置TL1を用いて車両100Aの遠隔制御を有効化した場合、車両100Aから遠隔制御装置200に有効化通知TEとともに、切替装置TL1の識別情報が送信される。切替装置TL1の識別情報はデータベースDBに登録されている、換言すれば、車両100Aの遠隔制御の有効化は許可条件を満たしているため、遠隔制御装置200から車両100Aに無効化指令は送信されない。これに対して、作業員WK2が切替装置TL2を用いて車両100Bの遠隔制御を有効化した場合、車両100Bから遠隔制御装置200に有効化通知TEとともに、切替装置TL2の識別情報が送信される。切替装置TL2の識別情報はデータベースDBに登録されていない、換言すれば、車両100Bの遠隔制御の有効化は許可条件を満たしていないため、遠隔制御装置200から車両100Bに無効化指令SDが送信されて、車両100Bの遠隔制御は有効から無効に戻される。通信エラーなどにより車両100Bの遠隔制御が有効から無効に戻らなかった場合には、遠隔制御装置200から管理装置300に通知が送信される。遠隔制御装置200から通知を受信した管理装置300は、報知部310を作動させることにより、異常が発生したことを管理者に報知する。したがって、管理者は、車両100Bの遠隔制御が有効から無効に戻らなかったことを把握することができる。
【0040】
以上で説明した本実施形態における遠隔制御システム10によれば、車両100の遠隔制御が有効化された場合には、車両100から遠隔制御装置200に有効化通知が送信され、遠隔制御装置200の判定部220は、有効化通知が受信され、かつ、許可条件を満たすと判定した場合には、車両100の遠隔制御が有効化を許可する。判定部220は、有効化通知が受信され、かつ、許可条件を満たしていないと判定した場合には、車両100に無効化指令を送信する。したがって、不適切な状況下で車両100の遠隔制御が行われることを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、判定部220は、無効化指令を送信しても車両100の遠隔制御が無効化されなかった場合には、パワースイッチをオフにさせる停止指令を車両100に送信する。したがって、不適切な状況下で車両100の遠隔制御が行われることを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、判定部220は、無効化指令を送信しても車両100の遠隔制御が無効化されなかった場合には、管理装置300に通知を送信して、報知部310による報知を実行させる。したがって、不適切な状況下で車両100の遠隔制御が行われることを抑制できる。
【0043】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態の遠隔制御システム10bにおいて実行される有効化前処理の内容を示すフローチャートである。図9は、遠隔制御システム10bにおいて実行される有効化前判定処理の内容を示すフローチャートである。第2実施形態の遠隔制御システム10bでは、車両100の遠隔制御の有効化に先立って、図8に示す有効化前処理および図9に示す有効化前判定処理が実行されることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り第1実施形態と同じである。
【0044】
図8に示す有効化前処理は、車両100の遠隔制御が無効である間、車両100の車両制御装置110により繰り返し実行される。有効化前処理が開始されると、ステップS310にて、指令受付部116は、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があるか否かを判定する。本実施形態では、指令受付部116は、予め定められた操作を検出した場合に、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定する。本実施形態では、指令受付部116は、切替装置TLがコネクタ140に接続された場合に、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定する。なお、コネクタ140にカバーが設けられている形態では、指令受付部116は、コネクタ140のカバーが取り外された場合に、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定してもよい。指令受付部116は、作業員WKが遠隔制御を有効化する操作を実施しようとしていることを車内カメラ160により検出した場合に、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定してもよい。
【0045】
ステップS310において車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS310後の処理をスキップして、有効化前処理を終了する。ステップS310において車両100の遠隔制御が有効化される可能性があると判定された場合には、指令受付部116は、ステップS320にて、車両100の遠隔制御が有効化される可能性があることを示す事前通知を遠隔制御装置200に送信する。なお、事前通知のことを第1情報と呼ぶことがある。
【0046】
ステップS330にて、遠隔制御装置200から許可通知を受信したか否かを判定する。許可通知は、遠隔制御の有効化を許可することを示す通知である。ステップS330において遠隔制御装置200から許可通知を受信したと判定された場合には、指令受付部116は、有効化前処理を終了する。ステップS330において遠隔制御装置200から許可通知を受信したと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS340にて、事前通知を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS340において事前通知を送信してから所定時間が経過したと判定されなかった場合には、指令受付部116は、ステップS330に戻り、遠隔制御装置200から許可通知を受信したか否かを判定する。ステップS340において事前通知を送信してから所定時間が経過したと判定された場合には、指令受付部116は、車両100の遠隔制御の有効化を制限する。例えば、指令受付部116は、所定期間、有効化指令の受け付けを拒否することにより、車両100の遠隔制御の有効化を制限する。その後、指令受付部116は、有効化前処理を終了する。
【0047】
図9に示す有効化前判定処理は、車両100の遠隔制御が無効状態である間、遠隔制御装置200により繰り返し実行される。有効化前判定処理が開始されると、ステップS410にて、判定部220は、車両100から事前通知を受信したか否かを判定する。ステップS410において車両100から事前通知を受信したと判定されなかった場合には、判定部220は、ステップS410後の処理をスキップして、有効化前判定処理を終了する。
【0048】
ステップS410において車両100から事前通知を受信したと判定された場合には、判定部220は、ステップS420にて、許可条件を満たすか否かを判定する。本実施形態では、判定部220は、下記の条件E~Hの少なくとも1つを満たしている場合に、許可条件を満たしていると判定する。
・条件E:車両100のスタートスイッチがオフの状態であること。
・条件F:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されている切替装置TLにより実施されること。
・条件G:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されている作業員WKにより実施されること。
・条件H:遠隔制御の有効化がデータベースDBに登録されているジオフェンス領域RG内で実施されること。
なお、許可条件は、許可条件は、条件E~Hのいずれか1つを満たしていることであってもよいし、条件E~Hの2つ以上を満たしていることであってもよいし、条件E~Hの3つ以上を満たしていることであってもよいし、条件E~Hの全てを満たしていることであってもよい。
【0049】
ステップS420において許可条件を満たすと判定されなかった場合には、判定部220は、有効化前判定処理を終了する。ステップS420において許可条件を満たすと判定された場合には、判定部220は、ステップS430にて、車両100に許可通知を送信する。その後、判定部220は、有効化前判定処理を終了する。
【0050】
以上で説明した本実施形態における遠隔制御システム10bによれば、指令受付部116は、事前通知を送信してから許可通知が受信されないまま所定時間が経過したと判定された場合には、車両100の遠隔制御の有効化を制限する。したがって、第1実施形態に比べて、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることをより確実に抑制できる。
【0051】
C.他の実施形態:
(C1)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、車両100は、切替装置TLが接続されるコネクタ140を備えている。これに対して、車両100は、コネクタ140を備えていなくてもよい。この場合、切替装置TLから無線通信により有効化指令が供給されてもよい。
【0052】
(C2)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、車両100は、GSNN受信機150を備えている。これに対して、上述した条件D,Hが許可条件に含まれない場合には、車両100は、GSNN受信機150を備えていなくてもよい。
【0053】
(C3)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、車両100は、車内カメラ160を備えている。これに対して、上述した条件C,Gが許可条件に含まれない場合には、車両100は、車内カメラ160を備えていなくてもよい。有効化操作を実施している人物が有効化操作を許可されている、例えば、車両100の製造メーカの社員、あるいは、車両100の販売店DRの社員が判定してもよい。
【0054】
(C4)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、判定部220は、遠隔制御装置200上に設けられている。これに対して、判定部220は、遠隔制御装置200とは別個のコンピュータ上に設けられてもよい。この場合、判定部220が設けられているコンピュータのことを制御装置と呼ぶことがある。
【0055】
(C5)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、車両制御部115は、有効化後処理のステップS190において、通信装置130を介して遠隔制御装置200から受信した停止指令に従って、車両100のスタートスイッチをオフにする。これに対して、車両制御部115は、有効化後処理のステップS190において、停止指令を受信しなくても車両100のスタートスイッチをオフにするようにプログラムされていてもよい。
【0056】
(C6)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、遠隔制御部210は、工場KJに設置されたカメラCMを用いて目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きを取得している。これに対して、遠隔制御部210は、工場KJに設置されたLiDARを用いて目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きを取得してもよい。あるいは、遠隔制御部210は、車両100に搭載されているGSNN受信機150を用いて目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きを取得してもよい。遠隔制御部210は、自動で遠隔制御指令を生成するのではなく、車両100の外部にいるオペレータの操作に従って遠隔制御指令を生成してもよい。例えば、車両100の位置および向きを表示するディスプレイ、車両100を操作するためのステアリング、アクセルペダル、および、ブレーキペダルを備える運転装置をオペレータが操作し、遠隔制御部210は、運転装置に加えられた操作に応じて遠隔制御指令を生成してもよい。
【0057】
(C7)上述した各実施形態では、第1場所PL1は、車両100の組立作業が実施される場所である。これに対して、第1場所PL1は、例えば、第1場所PL1は、車両100のヘッドランプの光軸を調整する作業や、車両100のホイールアライメントを調整する作業が実施される場所であってもよし、車両100の検査が実施される場所であってもよい。
【0058】
(C8)上述した各実施形態では、第2場所PL2は、車両100の検査が実施される場所である。これに対して、第2場所PL2は、例えば、車両100のヘッドランプの光軸を調整する作業や、車両100のホイールアライメントを調整する作業が実施される場所であってもよし、出荷前の車両100を保管するための場所であってもよい。
【0059】
(C9)上述した第2実施形態の遠隔制御システム10bでは、有効化前処理および有効化前判定処理が実行され、その後、有効化後処理および有効化後判定処理が実行される。これに対して、遠隔制御システム10bにおいて、有効化前処理および有効化前判定処理が実行され、その後、有効化後処理および有効化後判定処理が実行されなくてもよい。この場合であっても、有効化前処理および有効化前判定処理により、不適切な状況下で移動体の遠隔制御が行われることを抑制できる。
【0060】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10,10b…遠隔制御システム、100…車両(移動体)、110…車両制御装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…入出力インタフェース、114…内部バス、115…車両制御部、116…指令受付部、117…情報取得部、120…アクチュエータ群、130…通信装置、140…コネクタ、150…GSNN受信機、160…車内カメラ、200…遠隔制御装置、201…プロセッサ、202…メモリ、203…入出力インタフェース、204…内部バス、205…通信装置、210…遠隔制御部、220…判定部、300…管理装置、310…報知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9