(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158737
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】短絡判定回路
(51)【国際特許分類】
H02H 3/38 20060101AFI20241031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20241031BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
H02H3/38 A
H02J7/00 S
H02H7/18
G01R31/52
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074224
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 弘真
【テーマコード(参考)】
2G014
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AA04
2G014AA16
2G014AB02
2G014AB24
2G014AB61
5G053AA02
5G053BA01
5G053BA04
5G053CA01
5G053EC03
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA17
(57)【要約】
【課題】短絡を適正に判定することができる短絡判定回路を提供する。
【解決手段】短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、短絡判定部63とを備える。電流検出部61は、電力回路Pに流れる電流を検出する。電圧検出部62は、電力回路Pに印加される電圧を検出する。短絡判定部63は、電流検出部61により検出された電流の検出値と電圧検出部62により検出された電圧の検出値との差に基づいて電力回路Pにおける短絡を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電力回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、
前記電流検出部により検出された前記電流の検出値と前記電圧検出部により検出された前記電圧の検出値との差に基づいて前記電力回路における短絡を判定する短絡判定部と、
を備えることを特徴とする短絡判定回路。
【請求項2】
前記電力回路は、第1電気機器と第2電気機器との間に渡って設けられ、
前記第1電気機器は、電力を供給可能なメインバッテリであり、
前記第2電気機器は、前記メインバッテリに遮断回路を介して接続され、電力を供給可能なサブバッテリであり、
前記電流検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に流れる電流を検出し、
前記電圧検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を検出し、
前記短絡判定部は、前記電流検出部により検出された電流の検出値と前記電圧検出部により検出された電圧の検出値との差が予め定められた閾値以上である場合に短絡と判定し、前記遮断回路を遮断する請求項1に記載の短絡判定回路。
【請求項3】
前記電流検出部は、電流を増幅する電流増幅回路及びシャント抵抗器を含み、
前記電圧検出部は、電圧を変換する電圧変換回路を含み、
前記短絡判定部は、差電圧を増幅する差動増幅回路を含み、
前記シャント抵抗器は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に設けられ、
前記電流増幅回路は、前記シャント抵抗器に印加される電圧を増幅した電圧値を前記電流の前記検出値として前記差動増幅回路に出力し、
前記電圧変換回路は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を変換した電圧値を前記電圧の前記検出値として前記差動増幅回路に出力し、
前記差動増幅回路は、前記電流増幅回路により出力される前記電圧値と前記電圧変換回路により出力される前記電圧値との差を増幅した差電圧値が前記閾値以上である場合、前記遮断回路に遮断信号を出力して当該遮断回路を遮断する請求項2に記載の短絡判定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡判定回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、双方向に流れる電流を高速で遮断することができる電源装置が記載されている。この電源装置は、電源の電力を変換し負荷に出力する電力変換器と、電源と電力変換器との間に接続された開閉器と、電源から開閉器を介して電力変換器に流れる電流経路に接続された第1整流回路及び第2整流回路と、第1整流回路及び第2整流回路の少なくともいずれか一方の整流回路に対して並列に接続されたスイッチング回路とを備え、第1整流回路及び第2整流回路は、順方向のみ電流を導通させる回路であり、互いの順方向を逆向きにして電流経路に直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の電源装置は、緊急時にスイッチング回路をオフすることで第1整流回路及び第2整流回路により双方向の電流を高速に遮断するが、この緊急時として例えば短絡が考えられる。そして、電源装置は、この短絡を迅速かつ精度よく判定することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、短絡を適正に判定することができる短絡判定回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る短絡判定回路は、電力回路に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電力回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部により検出された前記電流の検出値と前記電圧検出部により検出された前記電圧の検出値との差に基づいて前記電力回路における短絡を判定する短絡判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る短絡判定回路は、差電圧値に基づいて短絡を判定するので、電流及び電圧に生じるノイズをキャンセルすることができ、これによりノイズを除去するフィルタ回路を設けなくても、短絡を精度よく判定することができる。また、短絡判定回路は、差電圧値に基づいて短絡を判定するので、例えば電圧の時間変化に対する傾きに基づいて電圧異常を判定する場合と比較して、短絡発生時から短絡を判定するまでの時間を短くすることができる。この結果、短絡判定回路は、短絡を適正に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電流と電圧との差を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る遮断回路の状態遷移を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る短絡判定回路の動作例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る短絡判定回路の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係る電源装置1について説明する。電源装置1は、車両に搭載され、車両の負荷部に電力を供給するものであり、例えば、電力回路Pにおける短絡や地絡(漏電)等の電気的な接続異常を判定して電力供給路を遮断するものである。電源装置1は、
図1に示すように、電力回路Pと、第1電気機器としてのメインバッテリ10と、第2電気機器としてのサブバッテリ20と、遮断回路30と、ゲートドライバ40と、ゲートドライバ制御部50と、短絡判定回路60とを備える。電力回路Pは、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に渡って設けられる。
【0011】
メインバッテリ10は、電力を充電及び供給可能な蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池である。メインバッテリ10は、車両に搭載された負荷部に電力を供給する。また、メインバッテリ10は、遮断回路30を介してサブバッテリ20に接続され、サブバッテリ20を充電する。
【0012】
サブバッテリ20は、電力を充電及び供給可能な蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池である。サブバッテリ20は、車両に搭載された負荷部に電力を供給する。また、サブバッテリ20は、遮断回路30を介してメインバッテリ10に接続され、メインバッテリ10から供給された電力を充電する。
【0013】
遮断回路30は、電流を遮断するものであり、例えば、back to back回路である。遮断回路30は、1対のFET31a,31bと、1対のFET31c,31dと、1対のFET31e,31fと、抵抗器R1~R6とを含んで構成される。これらのFET31a~31fは、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。3組の1対のFETは、それぞれが並列に接続されている。
【0014】
具体的には、1対のFET31a,31bは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31aのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31aのゲート端子が抵抗器R1を介してゲートドライバ40に接続され、他方のFET31bのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31bのゲート端子が抵抗器R2を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31a,31bは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0015】
1対のFET31c,31dは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31cのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31cのゲート端子が抵抗器R3を介してゲートドライバ40に接続されている。また、他方のFET31dのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31dのゲート端子が抵抗器R4を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31c,31dは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0016】
1対のFET31e,31fは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31eのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31eのゲート端子が抵抗器R5を介してゲートドライバ40に接続されている。また、他方のFET31fのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31fのゲート端子が抵抗器R6を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31e,31fは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0017】
ゲートドライバ40は、遮断回路30を制御するものである。ゲートドライバ40は、遮断回路30のFET31a~31fのゲート端子に接続され、当該ゲート端子に電圧を印加することでFET31a~31fをONし、当該ゲート端子への電圧の印加を停止することでFET31a~31fをOFFする。
【0018】
ゲートドライバ制御部50は、短絡判定回路60からの指令に基づいてゲートドライバ40を制御するものである。ゲートドライバ制御部50は、トランジスタ51を含んで構成される。トランジスタ51は、例えば、npn型のバイポーラトランジスタであり、コレクタ端子がゲートドライバ40とFET31a~31fのゲート端子との間に接続され、エミッタ端子がグランドに接続され、ベース端子が短絡判定回路60に接続されている。トランジスタ51は、短絡判定回路60により電圧が印加されてONした場合、コレクタ端子からエミッタ端子にコレクタ電流(ゲートドライバ40から出力される電流)が流れ、これによりゲートドライバ40による各ゲート端子への電圧の印加が停止される。従って、トランジスタ51は、FET31a~31fをOFFすることができる。一方で、トランジスタ51は、短絡判定回路60により電圧が印加されずOFFした場合、コレクタ端子からエミッタ端子にコレクタ電流が流れず、これによりゲートドライバ40による各ゲート端子への電圧の印加が継続される。従って、トランジスタ51は、FET31a~31fのONを維持することができる。
【0019】
短絡判定回路60は、短絡や地絡等の電気的な接続異常を判定するものである。短絡判定回路60は、例えば、メインバッテリ10が地絡したと判定した場合、遮断回路30を遮断する。短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、短絡判定部63とを備える。
【0020】
電流検出部61は、電流を検出するものであり、この例では、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出する。電流検出部61は、シャント抵抗器R7と、電流増幅回路611と、抵抗器R8~R11とを含んで構成される。
【0021】
シャント抵抗器R7は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に設けられ、一端がメインバッテリ10に接続され、他端がサブバッテリ20に接続される。
【0022】
電流増幅回路611は、電流を増幅するものである。電流増幅回路611は、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子とを有する。非反転入力端子(+)は、抵抗器R8を介してサブバッテリ20とシャント抵抗器R7との間に接続されている。反転入力端子(-)は、抵抗器R10を介してシャント抵抗器R7とメインバッテリ10との間に接続され、かつ、抵抗器R11を介して出力端子に接続されている。出力端子は、短絡判定部63に接続されている。抵抗器R9は、一端が抵抗器R8と非反転入力端子(+)との間に接続され、他端がグランドに接続されている。抵抗器R9は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を分圧している。電流増幅回路611の増幅率は、抵抗器R10の抵抗と抵抗器R11の抵抗との比率に基づいて定まる。電流増幅回路611は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を増幅した電圧値(検出値)を短絡判定部63に出力する。
【0023】
電圧検出部62は、電圧を検出するものであり、この例では、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する。電圧検出部62は、電圧変換回路621と、抵抗器R12とを含んで構成される。
【0024】
電圧変換回路621は、電圧を変換するものである。電圧変換回路621は、例えば、電圧フォロワ回路を構成し、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子とを有する。非反転入力端子(+)は、抵抗器R12を介してメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に接続されている。非反転入力端子(+)は、例えば、シャント抵抗器R7とサブバッテリ20との間に接続されている。反転入力端子(-)は、出力端子に接続されている。出力端子は、短絡判定部63に接続されている。電圧変換回路621は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電源電圧の電圧値(検出値)を短絡判定部63に出力する。なお、電圧フォロア回路は、後段の短絡判定部63の構成によっては、不要になる場合もある。
【0025】
短絡判定部63は、短絡や地絡等の電気的な接続異常を判定するものである。短絡判定部63は、電流検出部61により検出された電流の検出値(電圧値)と、電圧検出部62により検出された電圧の検出値(電圧値)との差に基づいて電力回路Pにおける短絡を判定する。短絡判定部63は、例えば、電流検出部61により検出された電流の検出値と、電圧検出部62により検出された電圧の検出値との差が、予め定められた閾値Th(
図4参照)以上である場合に短絡と判定し(短絡を検出し)、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断する。一方で、短絡判定部63は、電流検出部61により検出された電流の検出値と、電圧検出部62により検出された電圧の検出値との差が、閾値Th未満である場合に短絡と判定せず(短絡を検出せず)、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断しない。短絡判定部63は、差動増幅回路631と、抵抗器R13~R17とを含んで構成される。
【0026】
差動増幅回路631は、差電圧を増幅するものである。差動増幅回路631は、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子とを有する。非反転入力端子(+)は、抵抗器R13を介して電流増幅回路611の出力端子に接続されている。反転入力端子(-)は、抵抗器R15を介して電圧変換回路621の出力端子に接続され、かつ、抵抗器R16を介して当該差動増幅回路631の出力端子に接続されている。差動増幅回路631の出力端子は、抵抗器R17を介してゲートドライバ制御部50に接続されている。抵抗器R14は、一端が抵抗器R13と非反転入力端子(+)との間に接続され、他端がグランドに接続されている。抵抗器R14は、電流増幅回路611の出力端子から出力される電圧を分圧している。差動増幅回路631の増幅率は、抵抗器R15の抵抗と抵抗器R16の抵抗との比率に基づいて定まる。
【0027】
差動増幅回路631は、電流増幅回路611により出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621により出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th以上である場合、すなわち地絡等を検出した場合、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30に遮断信号を出力して当該遮断回路30を遮断する。差動増幅回路631は、例えば、遮断信号として出力端子からゲートドライバ制御部50のトランジスタ51のベース端子に所定の電圧(閾値Th以上の差電圧)を印加してトランジスタ51をONし、遮断回路30を遮断する。一方で、差動増幅回路631は、電流増幅回路611により出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621により出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th未満である場合、すなわち地絡等を検出していない場合、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30に遮断信号を出力せず、遮断回路30を遮断しない。差動増幅回路631は、例えば、出力端子からゲートドライバ制御部50のトランジスタ51のベース端子に所定の電圧(閾値Th以上の差電圧)を印加しないことでトランジスタ51をOFFし、遮断回路30の通電状態を維持する。なお、上記差電圧値は、電流増幅回路611から出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621から出力される電圧の電圧値との差を増幅した電圧値であり、例えば、
図2に示すように、電流及び電圧が変化しても、電流の電圧値と電圧の電圧値との相対的な差電圧値は変化しない。
【0028】
次に、上述のように構成された電源装置1の状態遷移について説明する。電源装置1は、例えば、
図3に示すように、パワーがオンされると、遮断回路30を遮断状態に遷移させる。そして、電源装置1は、パワーがオンされた際に、短絡判定回路60により地絡等の異常を検出せず、かつ、電源装置1を起動させるウェイクアップ条件が成立する場合、遮断回路30を通電状態に遷移させる。電源装置1は、遮断回路30を通電状態に遷移後に、短絡判定回路60により地絡等の異常を検出し、かつ、電源装置1を待機させるスリープ条件が成立する場合、遮断回路30を遮断状態に遷移させる。このように、電源装置1は、パワーオンから状態が遷移する。
【0029】
次に、電源装置1の動作例について説明する。この例では、電源装置1は、正常状態ではメインバッテリ10からサブバッテリ20に電流が流れる場合を想定する。電源装置1は、例えば、
図4に示すように、メインバッテリ10に地絡が発生した場合(時刻t1)、電圧変換回路621で検出される電圧の電圧値が減少する(時刻t1)。その後、電流が逆流してサブバッテリ20からメインバッテリ10に流れる(時刻t2)。このとき、電流増幅回路611は、サブバッテリ20からメインバッテリ10に流れる電流を検出し、検出した電流の電圧値を短絡判定部63の差動増幅回路631に出力する(時刻t2)。差動増幅回路631は、電流増幅回路611から出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621から出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th以上である場合(時刻t3)、短絡(地絡)と判定して遮断信号(閾値Th以上の差電圧)を出力し、ゲートドライバ制御部50のトランジスタ51をONして遮断回路30を遮断する(時刻t3)。ゲートドライバ制御部50は、ラッチ回路(図示省略)を有しており、差動増幅回路631から遮断信号が出力された場合、予め定められた時間が経過するまでラッチ回路によりトランジスタ51のONを継続し、遮断回路30の遮断状態を維持する(時限制御:時刻t3~時刻t5)。なお、時刻t4において、電流増幅回路611から出力される電流の電圧値がゼロとなり、電流の逆流が停止している。ゲートドライバ制御部50は、遮断回路30の遮断後、予め定められた時間が経過した場合、遮断回路30の遮断を解除して遮断回路30を通電状態とする(時刻t5)。通電状態とした後、時刻t6において、電圧変換回路621で検出される電圧の電圧値が通電状態の電圧に回復している。
【0030】
その後、差動増幅回路631は、再び、メインバッテリ10に地絡が発生した際に、電流が逆流してサブバッテリ20からメインバッテリ10に流れた場合(時刻t7)、電流増幅回路611から出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621から出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th以上であるか否かを判定する。差動増幅回路631は、当該差電圧値が閾値Th未満である場合、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断しない(時刻t7)。また、電流増幅回路611は、メインバッテリ10からサブバッテリ20に過電流が流れた場合、マスク回路(図示省略)によりマスクすることによって過電流が流れたことを検出しない(時刻t8)。これにより、差動増幅回路631は、差電圧値が閾値Th未満となるので、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断しない(時刻t8)。なお、マスク回路は、メインバッテリ10からサブバッテリ20に電流が流れた場合、電流検出部61により検出される電流を無効にする(マスクする)回路である。
【0031】
次に、フローチャートを参照して短絡判定回路60の動作例について説明する。短絡判定回路60は、
図5に示すように、電流検出部61によりメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出し、電圧検出部62によりメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する(ステップS1)。短絡判定部65は、電流検出部61により検出された電流の電圧値と、電圧検出部62により検出された電圧の出値との差が閾値Th以上である場合(ステップS2;Yes)、短絡と判定し、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断する(ステップS3)。一方で、短絡判定部65は、電流検出部61により検出された電流の電圧値と、電圧検出部62により検出された電圧の出値との差が閾値Th未満である場合(ステップS2;No)、短絡と判定せず、ゲートドライバ制御部50を介して遮断回路30を遮断しない。
【0032】
以上のように、実施形態に係る短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、短絡判定部63とを備える。電流検出部61は、電力回路Pに流れる電流を検出する。電圧検出部62は、電力回路Pに印加される電圧を検出する。短絡判定部63は、電流検出部61により検出された電流の検出値と電圧検出部62により検出された電圧の検出値との差に基づいて電力回路Pにおける短絡を判定する。
【0033】
この構成により、短絡判定回路60は、上記差電圧値に基づいて短絡を判定するので、電流及び電圧に生じるノイズをキャンセルすることができ、これによりノイズを除去するフィルタ回路を設けなくても、短絡を精度よく判定することができる。また、短絡判定回路60は、上記差電圧値に基づいて短絡を判定するので、例えば電圧の時間変化に対する傾きに基づいて電圧異常を判定する場合と比較して、短絡発生時から短絡を判定するまでの時間を短くすることができる。この結果、短絡判定回路60は、短絡を適正に判定することができる。
【0034】
短絡判定回路60において、電力回路Pは、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に渡って設けられる。サブバッテリ20は、メインバッテリ10に遮断回路30を介して接続されている。電流検出部61は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出する。電圧検出部62は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する。短絡判定部63は、電流検出部61により検出された電流の検出値と電圧検出部62により検出された電圧の検出値との差が予め定められた閾値Th以上である場合に短絡と判定し、遮断回路30を遮断する。この構成により、短絡判定回路60は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間における短絡等を適正に判定して遮断処理を実行することができる。
【0035】
短絡判定回路60において、電流検出部61は、電流を増幅する電流増幅回路611及びシャント抵抗器R7を含む。電圧検出部62は、電圧を増幅する電圧変換回路621を含む。短絡判定部63は、差電圧を増幅する差動増幅回路631を含む。シャント抵抗器R7は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に設けられる。電流増幅回路611は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を増幅した電圧値を電流の検出値として差動増幅回路631に出力する。電圧変換回路621は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を変換した電圧値を電圧の検出値として差動増幅回路631に出力する。差動増幅回路631は、電流増幅回路611により出力される電流の電圧値と電圧変換回路621により出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th以上である場合、遮断回路30に遮断信号を出力して当該遮断回路30を遮断する。この構成により、短絡判定回路60は、電流増幅回路611等のアナログ回路を用いて、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間における短絡等を適正に判定することができる。
【0036】
なお、上記説明では、短絡判定回路60は、電流増幅回路611等のアナログ回路を用いる例について説明したが、これに限定されず、例えば、デジタル回路を用いて構成してもよい。
【0037】
第1電気機器がメインバッテリ10であり、第2電気機器がサブバッテリ20である例について説明したが、これに限定されず、第1電気機器及び第2電気機器はその他の電気機器であってもよい。
【0038】
電流検出部61は、シャント抵抗器R7及び電流増幅回路611により電流値を検出する例について説明したが、これに限定されず、例えば、電流によって発生する磁界に基づいて電流値を検出してもよい。
【0039】
短絡判定部63は、電流増幅回路611により出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621により出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値が閾値Th以上の場合、当該閾値Th以上の差電圧を印加することにより、ゲートドライバ制御部50のトランジスタ51をONして遮断回路30を遮断する例について説明したが、これに限定されない。例えば、短絡判定部63は、電流増幅回路611により出力される電流の電圧値と、電圧変換回路621により出力される電圧の電圧値との差を増幅した差電圧値と閾値Thとを比較し、当該差電圧値が閾値Th以上である場合に短絡と判定し、トランジスタ51をONする遮断信号をゲートドライバ制御部50に出力し、遮断回路30を遮断してもよい。
【0040】
図1に示す電源装置1は、メインバッテリ10側に生じる地絡(
図4における通電電流:サブバッテリ→メインバッテリ)を検出する為の回路となっているが、これに限定されない。電源装置1は、例えば、電流検出部61の電流増幅回路(OPアンプ)611の極性を逆にすれば、サブバッテリ20側の地絡検出も可能となる。このように、電源装置1は、電流の検出方向にはとらわれない。また、電源装置1は、メインバッテリ10側の地絡を検出する例を示しており、
図4における電流検出(通電電流:メインバッテリ→サブバッテリ)は検出対象外としている。
【0041】
電圧変換回路621は、電圧フォロワ回路を構成する例について説明したが、これに限定されない。電圧変換回路621は、例えば、電流増幅回路611及び差動増幅回路631の電圧調整制御を行うことで、電圧を増幅する電圧増幅回路や、抵抗による分圧回路であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 メインバッテリ(第1電気機器)
20 サブバッテリ(第2電気機器)
30 遮断回路
60 短絡判定回路
61 電流検出部
62 電圧検出部
63 短絡判定部
611 電流増幅回路
621 電圧変換回路
631 差動増幅回路
Th 閾値
R7 シャント抵抗器
P 電力回路