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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158741
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D47/34 BRH
B65D47/34 BRL
B65D47/34 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074232
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA02
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HB03
3E084HC03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】リサイクル性にも優れるうえ、従来と同じような使用感で内容液を吐出することが可能なポンプ式吐出器を提案する。
【解決手段】ポンプ式吐出器100は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップ10と、キャップ10により口部に保持されステム7aが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口12aを有するとともにステム7aに連結するヘッドと、を備え、キャップ10とヘッドとの間に、ヘッドをキャップ10に向けて移動させた際に押し縮められる合成樹脂製の弾性体13を備え、弾性体13は、環状をなしキャップに接触する基端部13aと、ステム7aの軸線Oに沿って且つ軸線Oを周回する向きに螺旋状に延在し、根元部13cが基端部13aに一体に連結して先端部13dがヘッドに接触する弾性部13bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器であって、
前記キャップと前記ヘッドとの間に、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際に押し縮められる合成樹脂製の弾性体を備え、
前記弾性体は、環状をなし前記キャップに接触する基端部と、前記ステムの軸線に沿って且つ該軸線を周回する向きに螺旋状に延在し、根元部が該基端部に一体に連結して先端部が前記ヘッドに接触する弾性部と、を備えるポンプ式吐出器。
【請求項2】
前記弾性部は、前記軸線に沿う向きでの断面形状が、該軸線に沿う縦方向長さに対して該軸線に直交する横方向長さが長い矩形状である、請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項3】
前記弾性部は、前記先端部から前記根元部に向かうにつれて前記縦方向長さが長くなる拡大部分を有する、請求項2に記載のポンプ式吐出器。
【請求項4】
前記弾性部は、前記根元部の近傍に、前記拡大部分から前記根元部に向かうにつれて前記縦方向長さが短くなる縮小部分を有する、請求項3に記載のポンプ式吐出器。
【請求項5】
前記弾性部は、前記軸線に対向する配置で一対設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載のポンプ式吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式吐出器として、容器の口部に装着されるキャップと、キャップにより口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、ステムに連結するヘッドとを備え、ヘッドをキャップに向けて移動させることによって容器内の内容液をヘッドの吐出口から吐出させるものが既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなポンプ式吐出器の内部には、特許文献1に示されているように、キャップに向けて移動させたヘッドを初期位置に復帰させるためにコイルスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-31950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのようなポンプ式吐出器は、大部分の部材は合成樹脂製であるものの、コイルスプリングは金属製である。このため使用後に廃棄するにあたって、このままの状態では樹脂品としてリサイクルすることができない。また一般にこの種のポンプ式吐出器では、通常の使用時において部材が外れてしまうことを避けるべく、例えば嵌合等によって部材同士は強固に固定されている。従って、ポンプ式吐出器を分解してコイルスプリングと他の部材とに分別するにも手間を要することとなる。
なお、本発明者がコイルスプリングの如き形状(一端側が円環状になっていて、そこから螺旋状に延在し、他端側が円環状になる形状)になる合成樹脂製の弾性体を用いて検討したところ、ヘッドが初期位置に復帰するために必要となる弾性力が得られるように設定すると、ヘッドを押圧する際には金属製のコイルスプリングを用いる場合よりも大きな力が必要であった。このように単に素材を変更するだけでは、従来に比して使用感の低下を招いていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、リサイクル性にも優れるうえ、従来と同じような使用感で内容液を吐出することが可能なポンプ式吐出器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器であって、
前記キャップと前記ヘッドとの間に、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際に押し縮められる合成樹脂製の弾性体を備え、
前記弾性体は、環状をなし前記キャップに接触する基端部と、前記ステムの軸線に沿って且つ該軸線を周回する向きに螺旋状に延在し、根元部が該基端部に一体に連結して先端部が前記ヘッドに接触する弾性部と、を備えるポンプ式吐出器である。
【0008】
前記弾性部は、前記軸線に沿う向きでの断面形状が、該軸線に沿う縦方向長さに対して該軸線に直交する横方向長さが長い矩形状であることが好ましい。
【0009】
前記弾性部は、前記先端部から前記根元部に向かうにつれて前記縦方向長さが長くなる拡大部分を有することが好ましい。
【0010】
前記弾性部は、前記根元部の近傍に、前記拡大部分から前記根元部に向かうにつれて前記縦方向長さが短くなる縮小部分を有することが好ましい。
【0011】
前記弾性部は、前記軸線に対向する配置で一対設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明者が検討を重ねたところ、キャップとヘッドとの間に合成樹脂製の弾性体を設け、この弾性体を、環状をなしキャップに接触する基端部と、ステムの軸線に沿って且つ軸線を周回する向きに螺旋状に延在し、根元部が基端部に一体に連結して先端部がヘッドに接触する弾性部とを備える構成にすることにより、金属製のコイルスプリングを用いていた従来のポンプ式吐出器と同じような使用感が得られることが見出された。また弾性体は合成樹脂製であるため、金属製のコイルスプリングを用いていた従来のポンプ式吐出器のように廃棄にあたってこれを分別する必要がないうえ、ポンプ式吐出器を構成する他の部材とともに樹脂品として再利用することができ、リサイクル性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態を側面視で示した断面図である。
図2A図1に示した弾性体の斜視図である。
図2B図2Aに示した弾性体における図2Aの矢印Aに沿う矢視図である。
図2C図2Aに示した弾性体における図2Aの矢印Bに沿う矢視図である。
図2D図2Aに示した弾性体の平面図である。
図2E図2Cに示したC-Cに沿う断面図である。
図2F図2Cに示したD-Dに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態であるポンプ式吐出器100について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した軸線O(後述するステム7aの中心軸線)に沿う向きであって、パイプ4が位置する側が「下」であり、ヘッド本体11が位置する側が「上」である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0015】
本実施形態のポンプ式吐出器100は、ボトル状をなす不図示の容器の口部に装着して使用される。ポンプ式吐出器100で吐出させる内容液は、例えば化粧料(一例として乳液や化粧水)、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等である。
【0016】
ポンプ式吐出器100は、シリンダー1、弁部材2、パイプ4、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、ホルダー8、パッキン9、キャップ10、ヘッド本体11、ノズル12、弾性体13で構成されている。ここでシリンダー1、弁部材2、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、及びホルダー8は、本明細書等における「ポンプ」を構成する部材であり、ヘッド本体11、及びノズル12は、本明細書等における「ヘッド」を構成する部材である。また上記の部材のうち、弁部材2、ピストン6、パッキン9は、弾性を有する軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン(LDPE、HDPE、発泡PE))により形成されていて、その他の部材は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリアセタール(POM)・ポリケトン(POK)樹脂等)で形成されている。なお本実施形態の弾性体13は、ポリプロピレン(PP)で形成されている。そしてポンプ式吐出器100を構成する各部材は、基本的に軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0017】
シリンダー1は、円板状をなしていて中央部が上方に突出する底壁部1aと、底壁部1aの外縁部から起立する円筒状の筒壁部1bと、筒壁部1bの上部から径方向外側に向けて延在するフランジ壁1cを備えている。底壁部1aにおける中央部の突出する部位には、貫通孔(吸込口1d)が設けられている。また底壁部1aの下面には、吸込口1dを取り囲んで下方に向けて延在し、パイプ4を保持する筒状の保持筒1eが設けられている。そして筒壁部1bには、貫通孔(通気口1f)が設けられている。
【0018】
弁部材2は、シリンダー1の内側に位置する基部2aと、吸込口1dを覆って底壁部1aの上面に着座する弁体部2bと、基部2aと弁体部2bとを連結する弾性変形可能な連結片2cとを備えている。弁部材2は逆止弁として機能するものであって、シリンダー1内が減圧状態になると、吸込口1dを閉鎖していた弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dを開放させることができる。
【0019】
基部2aは、本実施形態では有蓋筒状であって上部中央に棒状部を有していて、更に吸込口1dを通過した内容液が通過する不図示の開口を備えている。基部2aは、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるものであり、これにより弁部材2は、シリンダー1内で保持される。
【0020】
パイプ4は、中空状をなすものであって、上端部は保持筒1eに挿入されてこれに嵌合保持されている。
【0021】
内部部材5は、シリンダー1の内部に配置され、シリンダー1に対して上下動する部材である。内部部材5は、円筒状をなしていて下端部が閉鎖された連結筒5aを備えている。連結筒5aは、これを径方向に貫通する上部連通口5bを備えている。連結筒5aの下部は、径方向外側に向けて突出している。また内部部材5は、連結筒5aの下端部につながる下部筒部5cを備えている。連結筒5aと下部筒部5cがつながる部位には、周方向に間隔をあけて設けられる貫通孔(下部連通口5d)が設けられている。
【0022】
ピストン6は、連結筒5aに挿通されて下部筒部5cの上方に配置される。本実施形態のピストン6は、円環状の基部6aを備えている。基部6aの外縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する外側摺動片6bが設けられている。外側摺動片6bは、筒壁部1bの内周面に対して摺動可能に液密に当接するものである。そして基部6aの内縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する内側摺動片6cが設けられている。内側摺動片6cは、その下端部は連結筒5aの下部に対して摺動可能に液密に当接し、その上部は筒状部材7における後述する拡径部7bの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。
【0023】
筒状部材7は、全体的に筒状をなす部材である。筒状部材7は、円筒状をなすステム7aと、ステム7aの下端部に連結するとともにステム7aよりも大径になる拡径部7bを備えている。ステム7aに連結筒5aが挿入されると両者は嵌合されるため、内部部材5と筒状部材7は、シリンダー1に対して一体的に移動する。
【0024】
ホルダー8は、ステム7aの径方向外側に位置する部位と拡径部7bの径方向外側に位置する部位を持ち、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるホルダー基部8aを備えている。ホルダー基部8aの上端部には、径方向外側に向けて延在するフランジ8bが設けられている。ホルダー8によって、内部部材5、ピストン6、筒状部材7のシリンダー1からの抜け出しを防止している。
【0025】
パッキン9は、円環板状をなすものであって、シリンダー1の筒壁部1bに挿通されてこれに嵌合保持されている。ポンプ式吐出器100を不図示の容器に取り付けた際、パッキン9は容器の口部とフランジ壁1cに挟持される。これにより、例えば容器を倒した際に内容液が口部から溢れる等の不具合が防止される。
【0026】
キャップ10は、円板状をなしていて中央部に貫通孔を備える天壁10aを備えている。天壁10aの上面における中央部は水平方向に延在していて、外縁部は下方に向けて傾斜している。天壁10aの下面には、下方に向けて延在する円筒状の内側周壁10bが設けられている。内側周壁10bの内周面における上部は、径方向内側に向けて膨出してフランジ壁1cを嵌合保持することが可能であって、これによりシリンダー1は、キャップ10に保持される。また内側周壁10bの内周面には、容器の口部に設けた雄ねじ部に螺合する雌ねじ部10cが設けられていて、雄ねじ部と雌ねじ部10cとを螺合させることにより、キャップ10を容器に装着することができる。また内側周壁10bの下面には、内側周壁10bの径方向外側に位置して内側周壁10bを全周に亘って取り囲む外側周壁10dが設けられている。
【0027】
またキャップ10は、天壁10aの上面から上方に向けて延在する円筒状のキャップ周壁10eを備えている。
【0028】
ヘッド本体11は、円筒状をなし、ステム7aの内側に挿入してこれに嵌合保持される筒状部11aを備えている。筒状部11aの上部には、内部に筒状部11aに通じる通路を有する頂部11bが設けられていて、頂部11bには、この通路に通じる取付け凹部11cが設けられている。また頂部11bの内側には、下方に向けて突出する支持突起11dが設けられている。本実施形態の支持突起11dは、軸線Oに対向するように一対設けられている。更に頂部11bの下面には、支持突起11dの径方向外側に位置する円筒状のヘッド周壁11eが設けられている。
【0029】
ノズル12は、全体的に円筒状をなしていて、先端部が縮径するように形作られている。ノズル12は、取付け凹部11cに挿入されてヘッド本体11に嵌合保持される。またノズル12の先端部には、不図示の容器からの内容液が吐出される吐出口12aが設けられている。
【0030】
弾性体13は、図1に示すようにキャップ10とヘッド本体11との間に配置されるものであって、図2A図2Fに示す形状になるように形作られている。弾性体13は、環状(本実施形態では円環状)になる基端部13aを備えている。図1に示すようにキャップ10とヘッド本体11との間に弾性体13を配置した際、基端部13aは、キャップ周壁10eの内側においてステム7aを中央の孔から挿通させて且つ天壁10aの上面に接触した状態でキャップ10に支持される。
【0031】
また弾性体13は、軸線Oに沿って且つ軸線Oを周回する向きに螺旋状に延在し、軸線Oに沿う向きに押し縮められるように弾性変形可能な弾性部13bを備えている。本実施形態において弾性部13bは、軸線Oに対向するように一対設けられている。
【0032】
本実施形態の弾性部13bは、概ね下端部、上端部、中間部で構成されている。弾性部13bの下端部(根元部13c)は、基端部13aに一体に連結している。そして弾性部13bの上端部(先端部13d)には、図2Bに示すように水平方向に延在する外側先端部13eと、外側先端部13eの径方向内側に位置していて外側先端部13eよりも上方に突出するように螺旋状に延在する内側先端部13fが設けられている。図1に示すようにキャップ10とヘッド本体11との間に弾性体13を配置した際、弾性部13bは、ヘッド周壁11eの内側において外側先端部13eが支持突起11dの下面に接触し、内側先端部13fが支持突起11dの径方向内側に位置して支持突起11dの内面に接触する。
【0033】
本実施形態の弾性部13bにおける中間部は、図2E図2Fに示すように、軸線Oに沿う向きでの断面形状が、軸線Oに沿う縦方向長さに対して軸線Oに直交する横方向長さが長い矩形状になるように形作られている。すなわち、図2Eに示した弾性部13bの先端部13dの近傍における軸線Oに沿う向きでの断面形状は、縦方向長さY1<横方向長さXの関係を満たす矩形状であり、図2Fに示した弾性部13bの中間部における軸線Oに沿う向きでの断面形状は、縦方向長さY2<横方向長さXの関係を満たす矩形状である。すなわち弾性部13bにおける軸線Oに沿う向きでの断面形状は、先端部13dから根元部13cの全域に亘って横長の矩形状である。
【0034】
また弾性部13bにおける中間部は、その上側に位置する部分(以下、拡大部分13hと称する)と、拡大部分13hの下側であって根元部13cの近傍に位置する部分(以下、縮小部分13gと称する)で構成されている。拡大部分13hでは、上側から下側に向かうにつれて縦方向長さが長くなっている。すなわち図2Eに示した弾性部13bの先端部13dの近傍における縦方向長さY1に対し、それよりも下側に位置するところでは図2Fに示すように縦方向長さY2が長くなっていて、拡大部分13hは、縦方向長さY1<縦方向長さY2の関係を満たすように形作られている。
【0035】
そして縮小部分13gでは、上側から下側に向かうにつれて縦方向長さが短くなっている。本実施形態の縮小部分13gは、拡大部分13hと根元部13cの間に、軸線Oを中心に角度約60°の範囲に設けられている。なお弾性部13bにおける縮小部分13gを除いた部分が拡大部分13hであって、本実施形態においては拡大部分13hが弾性部13bの大部分を占めている。
【0036】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器100は、図1に示す状態において弾性部13bは若干押し縮められた状態にあり、ヘッド本体11は上昇した状態(ヘッド本体11はキャップ10から後退した状態)にある。
【0037】
そしてヘッド本体11を上方から押圧してヘッド本体11を下降させる(ヘッド本体11をキャップ10に向けて前進させる)と、ステム7aがヘッド本体11とともに押し下げられる(軸線Oに沿ってステム7aがキャップ10に向けて移動する)。またステム7aが押し下げられるに伴い、連結筒5aも下降するため、連結筒5aの下部と内側摺動片6cの下端部との液密な当接が解除される。そしてヘッド本体11を更に押し下げていくと、筒状部材7及び内部部材5とともにピストン6も下降して、シリンダー1の内部が加圧される。このためシリンダー1内の内容液は、下部連通口5dと上部連通口5bを通過し、連結筒5a、ステム7a、筒状部11a、及び頂部11bの内部に設けた通路を通過し、ノズル12の内側を通って吐出口12aから外界に吐出される。なお、ヘッド本体11を押圧してピストン6が通気口1fよりも下降すると、不図示の容器は、通気口1fを介して外界と連通する。これにより容器に収容した内容液が減っても容器内は負圧化されず、容器がつぶれるように変形する不具合が防止される。またヘッド本体11を下降させると、弾性部13bは押し縮められるように弾性変形する。
【0038】
その後、ヘッド本体11への押圧を解除すると、弾性変形していた弾性部13bの復元力がヘッド本体11に作用し、ヘッド本体11は上昇し始める。これに伴い、連結筒5aの下部に対して内側摺動片6cの下端部が再び液密に当接しつつ、ピストン6が内部部材5とともに上昇するため、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dが開放されて、パイプ4を通して容器内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態の弾性体13で得られる効果について説明する。上述したように従来の金属製コイルスプリングの如き、一端側が円環状になっていて、そこから螺旋状に延在し、他端側が円環状になる形状になる合成樹脂製の弾性体を用いて検討したところ、ヘッドが初期位置に復帰するために必要となる弾性力が得られるように設定すると、ヘッドを押圧する際には金属製のコイルスプリングを用いる場合よりも大きな力が必要であった。一方、本実施形態の弾性体13のような、環状をなしキャップ10に接触する基端部13aと、軸線Oに沿って且つ軸線Oを周回する向きに螺旋状に延在し、根元部13cが基端部13aに一体に連結して先端部13dがヘッド本体11に接触する弾性部13bを備えるものにおいては、金属製のコイルスプリングを用いていた従来のポンプ式吐出器と同じような使用感が得られることが確認できた。特に本実施形態の弾性体13は、根元部13cの近傍に、図2Cに示すように上側から下側に向かうにつれて縦方向長さが短くなっていく縮小部分13gを有していて、弾性部13bにおいて根元部13cが最も薄くなっている。また弾性体13は、上側から下側に向かうにつれて縦方向長さが長くなる拡大部分13hを有している。このためヘッド本体11を押圧していくと、概ね弾性部13bは、まず根元部13cを起点として折れ曲がるように弾性変形し、続いて拡大部分13hにおける上側が弾性変形し始め、更に下側に向かって徐々に弾性変形するように挙動する。弾性部13bをこのように弾性変形させることにより、ヘッド本体11を押圧し始めたときに使用者が感じる重さを低減させることができ、またその重さが徐々に増えていくことから良好な使用感を呈することができる。
【0040】
なお、3Dモデルを用いた構造解析等によって弾性部13bについて更に詳細に検討を行ったところ、軸線Oに沿う向きでの断面形状が、軸線Oに沿う縦方向長さに対して軸線Oに直交する横方向長さが短い矩形状(すなわち縦長の矩形状)になる場合は、下方に向けて力を加えた際、先端部13dが径方向外側に移動する(先端部13dが軸線Oから離れるように移動する)如き挙動を示し、押圧力が弾性部13b全体に加わりにくく、それ故、押圧力に見合う復元力が得られ難い現象が認められた。一方、本実施形態の弾性部13bのように、軸線Oに沿う向きでの断面形状が、軸線Oに沿う縦方向長さに対して軸線Oに直交する横方向長さが長い矩形状(すなわち横長の矩形状)になる場合は、下方に向けて力を加えた際に先端部13dは下方に向けて移動していて、押圧力が弾性部13b全体に加わりやすいことが認められた。特に本実施形態においては、内側先端部13fが支持突起11dの径方向内側に位置しているため、ヘッド本体11が軸線Oに対して傾くように斜めに押し下げられる場合でも、先端部13dが径方向外側に移動することを防止することができる。
【0041】
また、上述した軸線Oに沿う向きでの断面形状における縦方向長さを、先端部13dから根元部13cに至るまで均等にすると、下方に向けて力を加えた際、弾性部13bの全体でこの力に抗するような挙動を示し、弾性部13bが弾性変形し難くなることが認められた。一方、本実施形態の弾性部13bのように、軸線Oに沿う向きでの断面形状における縦方向長さが先端部13dから根元部13cに向かうにつれて長くなる拡大部分13hを備える場合は、このような弾性部13bの全体でこの力に抗するような挙動は認められず、弾性部13bを良好に弾性変形させることができる。
【0042】
なお、ヘッド本体11に対する押圧状態(加える力の大きさや向き、速さ等)は、使用者の使い方や使用する状況等によってばらつくことが考えられる。本実施形態の弾性部13bは、上述したように根元部13cで最も薄くなっているため、上記の如きばらつきが生じても、毎回根元部13cを起点として弾性部13bを弾性変形させることができるため、安定した使用感を得ることができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0044】
例えば上述したポンプは一例であって、他の形式のポンプを採用した場合も本発明に含まれる。また弾性体13の基端部13aは、図示した円環状になるものに限られず、平面視で多角形になる環状(例えば四角形の環状)であってもよい。また弾性部13bは、本実施形態のように2個に限られず、1個でもよいし3個以上でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1:シリンダー
1a:底壁部
1b:筒壁部
1c:フランジ壁
1d:吸込口
1e:保持筒
1f:通気口
2:弁部材
2a:基部
2b:弁体部
2c:連結片
4:パイプ
5:内部部材
5a:連結筒
5b:上部連通口
5c:下部筒部
5d:下部連通口
6:ピストン
6a:基部
6b:外側摺動片
6c:内側摺動片
7:筒状部材
7a:ステム
7b:拡径部
8:ホルダー
8a:ホルダー基部
8b:フランジ
9:パッキン
10:キャップ
10a:天壁
10b:内側周壁
10c:雌ねじ部
10d:外側周壁
10e:キャップ周壁
11:ヘッド本体
11a:筒状部
11b:頂部
11c:取付け凹部
11d:支持突起
11e:ヘッド周壁
12:ノズル
12a:吐出口
13:弾性体
13a:基端部
13b:弾性部
13c:根元部
13d:先端部
13e:外側先端部
13f:内側先端部
13g:縮小部分
13h:拡大部分
100:ポンプ式吐出器
O:軸線
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F