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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158744
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/32 20060101AFI20241031BHJP
   B61C 9/46 20060101ALI20241031BHJP
   B61C 9/44 20060101ALI20241031BHJP
   B61F 5/30 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B61F5/32 Z
B61C9/46
B61C9/44
B61F5/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074237
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】林 利和
(72)【発明者】
【氏名】谷本 光史
(72)【発明者】
【氏名】矢延 雪秀
(72)【発明者】
【氏名】中窪 真史
(57)【要約】
【課題】モータが継手を介して車軸に直接接続される構造の台車におけるばね下重量の増大を抑制しつつ、継手部に要求される変位許容量を小さくする。
【解決手段】台車フレームと、軸ばねを介して台車フレームを支持する非回転部を含む、車軸と、車軸が挿通された中空形状のモータと、モータを保持し、上方向に相対移動可能な状態で台車フレームに支持されたモータブラケットと、を含む、駆動部と、モータと車軸とを、動力伝達可能に連結する継手部と、非回転部に設けられ、台車フレームが車軸に対して所定量以上変位した場合に駆動部と当接して、駆動部の車軸に対する変位を規制するガイド部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車フレームと、
軸ばねを介して前記台車フレームを支持する非回転部を含む、車軸と、
前記車軸が挿通された中空形状のモータと、前記モータを保持し、上方向に相対移動可能な状態で前記台車フレームに支持されたモータブラケットと、を含む、駆動部と、
前記モータと前記車軸とを、動力伝達可能に連結する継手部と、
前記非回転部に設けられ、前記台車フレームが前記車軸に対して所定量以上変位した場合に前記駆動部と当接して、前記駆動部の前記車軸に対する変位を規制するガイド部と、を備える、
台車。
【請求項2】
前記駆動部と前記ガイド部とが当接した状態で、前記駆動部を前記ガイド部に向けて付勢する第1付勢部材をさらに備える、
請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記台車フレームと前記モータブラケットとの間に設けられ、前記モータブラケットを前記台車フレームの支持面から離れる上方向に付勢する第2付勢部材をさらに備える、
請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記所定量は、前記継手部の上下方向の変位許容量よりも小さい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の台車。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記台車フレームの前記車軸に対する変位が前記所定量未満の場合に、前記駆動部と非接触となる位置に設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車において、車軸を挿通した中空構造のモータが、継手を介して車軸を直接駆動する技術(いわゆるダイレクトドライブ方式)が知られている。このような技術を適用した台車は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、主電動機(モータ)の中空のシャフトと、その中空のシャフト内を貫通し両端部に車輪が装着された車軸と、中空のシャフトと車軸とを接続する継手装置とを備えた台車が開示されている。主電動機は、継手装置を介して、車軸によって支持されている。継手装置は、中空のシャフトの中心軸線と車軸の中心軸線とに生じる位置ずれを調整可能な弾性継手により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-59616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、継手を介して車軸に接続されるモータの重量が車軸によって支持される構造の台車は、ばね下重量(軸ばねよりも下側の重量)が大きくなるという課題がある。そのため、モータを軸ばねよりも上側の台車フレームに取り付けることが考えられる。モータの荷重が軸ばねよりも上側の台車フレームに支持されれば、その分、ばね下荷重が小さくなる。
【0006】
しかし、モータを台車フレームに取り付ける場合などでは、台車フレームの車軸に対する相対変位によって、モータが車軸に対して相対変位することになり、相対変位を継手部によって吸収する必要が生じる。そのため、継手部に要求される変位許容量(許容される相対変位の大きさ)が過大となる。したがって、ダイレクトドライブ方式を採用した場合でも、ばね下重量の増大を抑制しつつ、継手部に要求される変位許容量を小さくすることが望まれている。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、モータが継手を介して車軸に直接接続される構造の台車におけるばね下重量の増大を抑制しつつ、継手部に要求される変位許容量を小さくすることが可能な台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の台車は、台車フレームと、軸ばねを介して前記台車フレームを支持する非回転部を含む、車軸と、前記車軸が挿通された中空形状のモータと、前記モータを保持し、上方向に相対移動可能な状態で前記台車フレームに支持されたモータブラケットと、を含む、駆動部と、前記モータと前記車軸とを、動力伝達可能に連結する継手部と、前記非回転部に設けられ、前記台車フレームが前記車軸に対して所定量以上変位した場合に前記駆動部と当接して、前記駆動部の前記車軸に対する変位を規制するガイド部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の台車によれば、モータが継手を介して車軸に直接接続される構造の台車におけるばね下重量の増大を抑制しつつ、継手部に要求される変位許容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の台車を表す模式的な正面図である。
図2図2は、図1の台車フレームが変位した状態を示した説明図である。
図3図3は、ガイド部の上端部付近の構造例を示した模式図である。
図4図4は、車軸の非回転部へのガイド部の第1取付例を示す説明図である。
図5図5は、車軸の非回転部へのガイド部の第2取付例を示す説明図である。
図6図6は、第2実施形態の台車におけるモータブラケットおよび台車フレームの構成を説明するための模式図である。
図7図7は、図6の台車フレームが変位した状態を示した説明図である。
図8図8は、第3実施形態の台車における台車フレームの構成を説明するための模式図である。
図9図9は、図8の台車フレームが変位した状態を示した説明図である。
図10図10は、第1変形例による台車を示した模式図である。
図11図11は、第2変形例による台車を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の台車を表す模式的な正面図、図2は、台車フレームが変位した状態を示した説明図である。なお、以下の説明にて、鉛直方向を台車10の上下方向とし、台車10の走行方向を前後方向とし、水平面内で走行方向と直交する方向を台車10の幅方向として説明する。
【0013】
第1実施形態の台車10は、例えば鉄道車両用の台車(走行装置)である。台車10は、鉄道の線路を構成する一対のレールRA上を走行する。台車10は、鉄道車両の車体100(二点鎖線部参照)の下部に配置され、車体100を下方から支持する。車体100の内部には、乗員が乗降するためのスペースが設けられている。
【0014】
<台車の構成>
台車10は、台車フレーム20と、車軸30と、駆動部40と、継手部50と、ガイド部60と、を備える。
【0015】
台車フレーム20は、台車10の各構成部材が組付けられる枠体である。台車フレーム20は、例えば、一対の側梁21と、一対の側梁21をつなぐ横梁22とを含む。一対の側梁21は、前後方向に沿って延びるとともに、幅方向に間隔を隔てて配置されている。横梁22は、幅方向に延びて、両端が一対の側梁21のそれぞれに接続している。台車フレーム20は、主として水平方向に延びるように形成されている。台車フレーム20は、枕ばね等の車体支持部23を上面側に有し、車体支持部23を介して車体100を支持する。
【0016】
車軸30は、台車フレーム20の下方に配置され、幅方向に延びる回転軸部材である。車軸30の両端には、それぞれ車輪31が設けられている。台車10は、車軸30の回転に伴い各車輪31がレールRA上を回転することによって、走行する。
【0017】
車軸30は、台車フレーム20を下方から支持している。具体的には、車軸30は、軸ばね33を介して台車フレーム20を支持する非回転部32を含む。非回転部32は、車軸30を回転支持するベアリングを収容したベアリングハウジングである。非回転部32は、車軸30の両端部付近に1つずつ、一対設けられていて、車軸30が挿通されている。各非回転部32の上部に軸ばね33が設けられ、軸ばね33上に台車フレーム20が支持されている。なお、図示しないが、車軸30は、台車フレーム20の前後方向に少なくとも1つずつ設けられている。
【0018】
軸ばね33は、上下方向に弾性変形可能な弾性部材であり、例えば圧縮コイルばねである。軸ばね33は、台車フレーム20と車軸30との上下方向の相対振動を緩和する。乗員の乗降によって車体100の重量が変化すると、荷重に応じて軸ばね33が弾性変形する。これにより、台車フレーム20は車軸30に対して上下に変位する。また、台車10の走行中、レールRAの起伏に追従して車輪31および車軸30が上下に変位し、変位に応じて軸ばね33が弾性変形する。
【0019】
駆動部40は、モータ41と、モータブラケット42とを含む。図1では、便宜的に、モータ41の内部構造を断面で示している。
【0020】
モータ41は、台車フレーム20の下方であって、車軸30の両端間の位置に設けられている。モータ41は、中空形状を有し、中空部に車軸30が挿通されている。モータ41は、いわゆるダイレクトドライブ方式のモータであり、減速機を介さずに、継手部50を介して車軸30を直接駆動する。
【0021】
モータ41は、ステータ41aと、ロータ41bと、軸受41cとを有する。ステータ41aは、中心軸線が車軸30の軸線に沿う円筒状に形成されている。ロータ41bは、ステータ41aの径方向内側に設けられている。ロータ41bは、ステータ41aと同様に、中心軸線が車軸30の軸線に沿う円筒状に形成されている。ロータ41bは、軸受41cにより中心軸線周りに回転自在に設けられている。ロータ41bは、軸方向端部において継手部50に接続されている。モータ41は、電力供給に応じて、ロータ41bを中心軸線周りに回転させる。
【0022】
モータブラケット42は、モータ41を保持する保持部材であり、モータ41の外周面(上面)に接続されている。モータブラケット42は、上方向に相対移動可能な状態で台車フレーム20に支持されている。モータブラケット42は、水平方向に延びる支持板部43と、支持板部43の下面から下向きに延びてモータ41に連結された連結部44とを含む。支持板部43は、台車フレーム20の支持面SF上に載置されている。図1の例では、支持面SFは、台車フレーム20の上面(側梁21の上面)である。すなわち、モータブラケット42は、支持板部43の幅方向両端部において、台車フレーム20(側梁21)により下方から支持されている。連結部44は、台車フレーム20の一対の側梁21の間の空間を通過して、モータ41に連結されている。モータブラケット42(支持板部43)は、上方向に移動可能であり、台車フレーム20の上面上から離れることができる。
【0023】
このように、第1実施形態では、モータ41は、モータブラケット42を介して、台車フレーム20に吊り下げられた状態で支持されている。モータブラケット42が台車フレーム20の上面から離れずに接触している状態では、モータ41は、車軸30に対して、台車フレーム20と一体的に上下方向に相対変位する。
【0024】
継手部50は、モータ41と車軸30とを、動力伝達可能に連結している。継手部50は、幅方向において、モータ41と、一方(図1の右側)の非回転部32との間に配置されている。継手部50は、円環形状の車軸側部材51と、カップリング52とを含む。車軸側部材51は、内周側に車軸30が挿通された状態で車軸30に固定されている。車軸側部材51の外周部は、ロータ41bの端面と中心軸線方向(台車10の幅方向)に対向し、カップリング52を介してロータ41bと接続されている。これにより、継手部50は、ロータ41bの回転を車軸30に伝達する。
【0025】
カップリング52は、弾性変形可能に形成されている。継手部50は、カップリング52を弾性変形させることにより、車軸30に対する駆動部40(モータ41)の相対変位を吸収することができる。つまり、継手部50は、モータ41の中心軸線位置が車軸30の中心軸線位置から変位した状態でも、動力伝達が可能である。第1実施形態では、車軸30に対する駆動部40(モータ41)の相対変位が、継手部50の変位許容量を超えないように、ガイド部60が設けられている。なお、継手部50の変位許容量とは、上下方向における、モータ41の中心軸線位置と車軸30の中心軸線位置とのずれの大きさの許容値を意味する。
【0026】
ガイド部60は、車軸30の非回転部32に設けられている。ガイド部60は、台車フレーム20が車軸30に対して所定量PA以上変位した場合に駆動部40と当接して、駆動部40の車軸30に対する変位を規制する。
【0027】
ガイド部60は、非回転部32の各々に設けられている。各ガイド部60の構成は同一である。ガイド部60は、各非回転部32のうち、台車10の幅方向中央側(モータ41側)の側面に設けられている。ガイド部60は、非回転部32から上向きに延びる、柱状または板状部材である。ガイド部60は、台車フレーム20の一対の側梁21の内側を通って、モータブラケット42(支持板部43)の下面近傍の所定位置まで延びている。つまり、ガイド部60は、ガイド部60の上端部61と、モータブラケット42(支持板部43)との間の上下方向の間隔が、所定量PAとなるように設けられている。
【0028】
これにより、ガイド部60は、例えば乗員の搭乗により、台車フレーム20が車軸30に対して所定量PAを超えて下方に変位する場合に、台車フレーム20上のモータブラケット42(支持板部43)の下面と当接して、モータブラケット42の下方変位を規制(阻止)する。その結果、台車フレーム20が所定量PAを超えて下方に変位した状態では、図2に示すように、ガイド部60がモータブラケット42を含む駆動部40の全体を下方から支持し、モータブラケット42の支持板部43は台車フレーム20の支持面SFから間隔CLだけ離れる。このため、ガイド部60は、台車フレーム20の変位量に関わらず、駆動部40(モータブラケット42およびモータ41)の車軸30に対する上下方向の相対変位を、図1の所定量PA以内に制限する。
【0029】
なお、所定量PAは、継手部50の上下方向の変位許容量よりも小さい。このため、台車フレーム20と車軸30との相対変位に伴ってモータ41が上下に変位する場合でも、車軸30の中心軸線に対するモータ41の中心軸線の変位量は、継手部50の変位許容量未満の所定量PAに制限される。
【0030】
所定量PAは、ゼロでもよい。この場合、ガイド部60の上端部61は、図1に示す基準状態の台車フレーム20の支持面SF(上面)とほぼ同じ高さ位置に配置される。この場合、ガイド部60の上端部61は、変位していないモータブラケット42と接触した状態で設けられうる。ここで、台車フレーム20の基準状態とは、例えば、台車10が鉄道車両に組付けられて、乗員以外の車体100の重量が台車フレーム20に作用する状態(乗員が搭乗していない状態)とする。台車フレーム20の変位量は、この基準状態からの変位量とし、基準状態ではゼロである。
【0031】
第1実施形態では、所定量PAは非ゼロである。ガイド部60は、台車フレーム20の車軸30に対する変位が所定量PA未満の場合に、駆動部40(モータブラケット42の支持板部43)と非接触となる位置に設けられている。つまり、ガイド部60の上端部61とモータブラケット42との間に所定量PAの隙間(図1参照)が設けられる。
【0032】
このような構成により、図1に示した基準状態では、駆動部40(モータブラケット42およびモータ41)の重量が、台車フレーム20、軸ばね33を介して車軸30に作用する。つまり、駆動部40の重量が、軸ばね33よりも下側の重量である「ばね下重量」から除外されるため、例えば駆動部40を車軸30によって直接支持する場合と比べて、ばね下重量が低減される。
【0033】
なお、図2に示したようにガイド部60がモータブラケット42(駆動部40)を支持する状態では、駆動部40の重量が、ガイド部60を介して(軸ばね33を介さずに)車軸30によって支持されるので、駆動部40の重量がばね下重量に含まれることになる。
【0034】
<ガイド部の詳細構造>
図3は、ガイド部60の上端部61付近の構造例を示した模式図である。
【0035】
図3に示すように、ガイド部60は、任意方向に傾斜自在に設けられた当接部材62を有していてもよい。具体的には、ガイド部60には、球面状(半球面状)の摺動部63が設けられてもよい。当接部材62は、摺動部63に嵌合する球面座(球面状凹部)64を有する。当接部材62は、球面座64と摺動部63との摺動によって、任意方向に傾斜する。これにより、モータブラケット42(支持板部43)がガイド部60に対して傾斜して当接する場合でも、モータブラケット42の傾斜に合わせて当接部材62が傾斜して面接触できるので、安定した接触状態が確保できる。
【0036】
また、図3の構造例のように、台車フレーム20は、ガイド部60と台車フレーム20との相対変位を案内する案内部材24を有していてもよい。案内部材24は、例えば、台車フレーム20の側梁21に固定されている。案内部材24は、上下方向に向いた筒状形状を有し、内側にガイド部60が摺動可能に挿通されている。案内部材24は、台車フレーム20とガイド部60(車軸30)との相対的な上下変位を許容しつつ、ガイド部60が水平方向に位置ずれまたは傾斜しないように支持する。
【0037】
この他、非回転部32、台車フレーム20およびモータブラケット42には、ガイド部60をサポートするブッシュ、案内溝などを設けてもよい。
【0038】
図4は、車軸30の非回転部32へのガイド部60の第1取付例を示す説明図である。図5は、車軸30の非回転部32へのガイド部60の第2取付例を示す説明図である。
【0039】
図4の例では、1つの非回転部32に対して、1つのガイド部60が取り付けられている。ガイド部60は、非回転部32のハウジング32aの軸方向側面に、下端部が固定されている。非回転部32は、ガイド部60を、車軸30の直上位置(車軸30の中心軸線を通る鉛直線上)で支持する。
【0040】
図5は、1つの非回転部32に対して、複数(2つ)のガイド部60が取り付けられる例を示している。図5の例では、非回転部32は、ハウジング32aから前方および後方にそれぞれ突出した一対の取付部32bおよび32cを有する。そして、取付部32bおよび32cは、それぞれ1つのガイド部60の下端部を支持している。
【0041】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の台車10Aにおけるモータブラケット42Aおよび台車フレーム20Aの構成を説明するための模式図である。図7は、図6の台車フレーム20Aが変位した状態を示した説明図である。なお、第2実施形態において、モータブラケット42Aおよび台車フレーム20Aの構造以外は、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
第2実施形態に係る台車10Aは、駆動部40とガイド部60とが当接した状態で、駆動部40をガイド部60に向けて付勢する第1付勢部材70をさらに備える。
【0043】
第1付勢部材70は、図6では圧縮コイルばねである。第1付勢部材70は、ゴムやクッションなどの弾性体でもよい。第1付勢部材70は、固定用ボルト71の頭部とモータブラケット42Aの上面との間に、圧縮状態で設けられている。図6では、第1付勢部材70は、幅方向における台車フレーム20Aの両側(つまり、両方の側梁21)にそれぞれ設けられている。
【0044】
固定用ボルト71は、第1付勢部材70の内側に挿通されている。固定用ボルト71は、モータブラケット42Aに形成された貫通孔45を通過して、台車フレーム20Aの支持面SFに形成されたねじ穴25に係合することにより、台車フレーム20Aに固定されている。貫通孔45は、支持板部43を上下方向に貫通している。貫通孔45の内径は、固定用ボルト71の軸部の外径よりも大きく、固定用ボルト71の頭部の外形より小さい。そのため、モータブラケット42Aは、台車フレーム20Aの上面である支持面SFと、固定用ボルト71の頭部との間で、上下方向に変位可能である。なお、貫通孔45の内周面と固定用ボルト71の軸部の外周面との間には、摺動性および耐摩耗性が高いブッシュなどを設けてもよい。
【0045】
第1付勢部材70は、駆動部40(モータブラケット42A)を台車フレーム20Aの支持面SFに向けて下方向に付勢している。第1付勢部材70は、モータブラケット42Aに対して、台車フレーム20Aの支持面SFに向かう下方向の付勢力F1を作用させる。第1付勢部材70は、台車10Aの走行中の振動に対して、付勢力F1によってモータブラケット42Aが台車フレーム20Aの支持面SFから離れることを抑制する。第1付勢部材70とモータブラケット42Aとの間にスペーサを設けて、第1付勢部材70の圧縮量を大きくしてもよい。
【0046】
ここで、図7に示すように、台車フレーム20Aが車軸30(図1参照)に対して、所定量PA以上、下向きに変位したと仮定する。モータブラケット42Aがガイド部60と当接することにより、駆動部40(モータブラケット42Aおよびモータ41)の変位が規制される。第1付勢部材70は、駆動部40がガイド部60により支持(規制)された状態で、駆動部40をガイド部60に向けて下方向に付勢する。
【0047】
すなわち、台車フレーム20Aが下方向へ変位したとき、ガイド部60によって、モータブラケット42Aと台車フレーム20Aの支持面SFとの間に間隔CLが形成される。第1付勢部材70は、この間隔CLに応じて圧縮され、圧縮量に応じた付勢力F2で、モータブラケット42Aをガイド部60に対して付勢する。第1付勢部材70は、台車10Aの走行中に車輪31から伝わる振動によってガイド部60が上下に振動する場合でも、付勢力F2によってモータブラケット42Aがガイド部60から離れることを抑制する。これにより、第1付勢部材70は、モータ41が車軸30に対して振動することを抑制する。
【0048】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の台車10Bにおける台車フレーム20Bの構成を説明するための模式図である。図9は、図8の台車フレーム20Bが変位した状態を示した説明図である。なお、第3実施形態において、台車フレーム20Bの構造以外は、上記第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、上述した第2実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
第3実施形態に係る台車10Bは、第2付勢部材80をさらに備える。第2付勢部材80は、台車フレーム20Bとモータブラケット42Aとの間に設けられ、モータブラケット42Aを台車フレーム20Bの支持面SFから離れる上方向に付勢する。
【0050】
第2付勢部材80は、図8では圧縮コイルばねである。第2付勢部材80は、ゴムやクッションなどの弾性体でもよい。第2付勢部材80は、モータブラケット42Aの下面と台車フレーム20Bの上面との間に、圧縮状態で設けられている。図8では、第2付勢部材80は、幅方向における台車フレーム20Bの両側(両方の側梁21)にそれぞれ設けられている。
【0051】
具体的には、台車フレーム20Bの上面(支持面SF)には、第2付勢部材80を収容する凹部26が形成されている。第2付勢部材80は、凹部26内に配置され、内側に固定用ボルト71の軸部が挿通されている。固定用ボルト71を固定するためのねじ穴25は、凹部26の底面に形成されている。
【0052】
これにより、第2付勢部材80は、モータブラケット42Aに対して、台車フレーム20Bの支持面SFから離れる上方向の付勢力F3を作用させる。図8に示す基準状態で、第2付勢部材80の付勢力F3は、第1付勢部材70の付勢力F1よりも小さい。付勢力F1とF3との差分に相当する大きさの下向きの付勢力によってモータブラケット42Aが支持面SFに押圧されるので、台車フレーム20Bが上下に振動する場合でも、モータブラケット42Aが支持面SFから離れることが抑制される。
【0053】
図9に示すように、台車フレーム20Bが車軸30に対して下向きに変位し、ガイド部60と当接したモータブラケット42Aと台車フレーム20Bの支持面SFとの間に間隔CLが形成されたと仮定する。
【0054】
第3実施形態では、第2付勢部材80は、モータブラケット42Aが台車フレーム20Bの支持面SFから離れてガイド部60上に支持された状態でも、依然として、モータブラケット42Aを上方向に付勢する。言い換えると、基準状態(図8参照)において第2付勢部材80が予め圧縮された予圧縮量が、モータブラケット42Aとガイド部60とが当接するための所定量PAよりも、大きい。第2付勢部材80の付勢力F4は、台車フレーム20Bがモータブラケット42Aを支持する支持力として働く。
【0055】
このため、第2付勢部材80は、モータブラケット42Aからガイド部60に作用する荷重を、付勢力F4の分だけ軽減する。上記の通り、ガイド部60に作用する重量は、軸ばね33よりも下側の「ばね下重量」に含まれる。一方、第2付勢部材80の付勢力F4は、台車フレーム20B、軸ばね33を介して車軸30の非回転部32によって支持されるため、「ばね下重量」には含まれない。そのため、第3実施形態では、ガイド部60によってモータブラケット42A(駆動部40)の重量を支持する場合でも、付勢力F4の分だけばね下重量が低減される。
【0056】
[実施形態の作用効果]
第1の態様に係る台車は、台車フレーム20と、軸ばね33を介して台車フレーム20を支持する非回転部32を含む、車軸30と、車軸30が挿通された中空形状のモータ41と、モータ41を保持し、上方向に相対移動可能な状態で台車フレーム20に支持されたモータブラケット42と、を含む、駆動部40と、モータ41と車軸30とを、動力伝達可能に連結する継手部50と、非回転部32に設けられ、台車フレーム20が車軸30に対して所定量PA以上変位した場合に駆動部40と当接して、駆動部40の車軸30に対する変位を規制するガイド部60と、を備える。
【0057】
第1の態様に係る台車は、上方向に相対移動可能な状態で駆動部40を台車フレーム20に支持させることにより、駆動部40の重量が軸ばね33よりも上側の台車フレーム20に作用するので、駆動部40を車軸30によって直接支持する場合と比べて、ばね下重量を低減できる。そして、台車フレーム20が所定量PA以上変位した場合には、ガイド部60が駆動部40と当接して駆動部40(すなわち、モータ41)の変位を規制するので、モータ41の変位を所定量PAの範囲内に抑制できる。これらにより、モータ41が継手部50を介して車軸30に直接接続される構造の台車10におけるばね下重量の増大を抑制しつつ、継手部50に要求される変位許容量を小さくすることができる。その結果、継手部50の要求設計仕様が緩和されるので、継手部50の設計の自由度を高めることができる。また、継手部50が吸収すべき相対変位量が制限されるので、継手部50に作用する応力振幅が小さくなり、その結果、継手部50の長寿命化を図ることができる。
【0058】
第2の態様に係る台車は、駆動部40とガイド部60とが当接した状態で、駆動部40をガイド部60に向けて付勢する第1付勢部材70をさらに備える。これにより、台車フレーム20Aが所定量PA以上変位して、ガイド部60が駆動部40と当接した状態で、第1付勢部材70により駆動部40がガイド部60に対して押圧される。そのため、台車10Aの走行中に車輪31から伝わる振動によってガイド部60が上下に振動する場合でも、付勢力によって駆動部40がガイド部60から離れることが抑制されるので、モータ41が車軸30に対して振動することを抑制することができる。
【0059】
第3の態様に係る台車は、台車フレーム20Bとモータブラケット42との間に設けられ、モータブラケット42を台車フレーム20Bの支持面SFから離れる上方向に付勢する第2付勢部材80をさらに備える。これにより、台車フレーム20Bが所定量PA以上変位して、ガイド部60が駆動部40と当接した状態で、駆動部40の重量を第2付勢部材80の付勢力F4の分だけ台車フレーム20B側(軸ばね33よりも上側)に分担させることができるので、ばね下重量を低減することができる。
【0060】
第4の態様に係る台車では、所定量PAは、継手部50の上下方向の変位許容量よりも小さい。これにより、モータ41の車軸30に対する相対変位を、継手部50が許容できる範囲内に収めることができる。言い換えると、モータ41の車軸30に対する相対変位を所定量PA以内に制限することによって、継手部50が許容しなければならない変位量を小さくできるので、継手部50の要求設計仕様を緩和でき、継手部50の長寿命化を図ることができる。
【0061】
第5の態様に係る台車では、ガイド部60は、台車フレーム20の車軸30に対する変位が所定量PA未満の場合に、駆動部40と非接触となる位置に設けられている。これにより、台車フレーム20の変位が所定量PA未満の場合には、駆動部40の重量がガイド部60を介して車軸30に直接加わることがないので、ばね下重量を効果的に低減できる。
【0062】
なお、本明細書では、モータブラケット42が図2等で示したように平行に相対変位するものとして説明したが、モータブラケット42が片側だけ相対変位する場合(すなわち、車軸30に対して、台車フレーム20が傾く場合)でも、当該片側の変位量をガイド部60によって制限できるので、上記と同じ効果を得ることができる。
【0063】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、ガイド部60が、駆動部40のうち、モータブラケット42(支持板部43)の下面と当接して、駆動部40の変位を規制する例を示したが、ガイド部60は、駆動部40のどの部位と当接してもよい。図10は、第1変形例による台車10Cを示した模式図である。図10の例では、ガイド部60が、モータブラケット42の連結部44に設けた当接片46と当接することにより、駆動部40の車軸30に対する変位を規制する。この例では、ガイド部60は、車軸30の非回転部32から上方に延びた後、上端部で幅方向内側に屈曲したL字状のブラケットにより構成されている。そして、当接片46は、連結部44の幅方向外側の側面から、ガイド部60の上方位置まで、幅方向外側に向けて突出する。これにより、台車フレーム20の下方変位に伴って駆動部40が下方変位すると、ガイド部60が当接片46と当接して駆動部40の変位を規制するとともに駆動部40を支持する。この他、ガイド部60は、例えばモータ41のハウジングの一部、またはハウジングに設けた当接片と当接してもよい。
【0064】
また、ガイド部60は、車軸30の非回転部32と別体で設けられていなくてもよい。つまり、ガイド部60は、非回転部32(ベアリングハウジング)に一体形成された突起などでもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、モータブラケット42(支持板部43)が、台車フレーム20の上面上に載置される例(台車フレーム20の上面が支持面SFである例)を示したが、モータブラケット42は台車フレーム20の上面以外の部位に載置されてもよい。図10の例では、モータブラケット42は、台車フレーム20の側梁21の内側側面に設けられたL字状の支持ブラケット27に支持されている。支持ブラケット27の先端部の上面が、支持面SFである。この他、モータブラケット42は、ブラケット等により、台車フレーム20(側梁21)よりも下側位置で支持されていてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、幅方向において、車軸30の一対の車輪31の内側に、非回転部32、軸ばね33およびガイド部60が配置される例を示したが、これらの各部が一対の車輪31の外側に配置されてもよい。図11は、一対の車輪31の外側に、非回転部32、軸ばね33およびガイド部60が配置された第2変形例による台車10Dを示した模式図である。
【0067】
また、上述した実施形態では、継手部50が弾性変形可能なカップリング52を有するたわみ継手である例を示したが、継手部50の構造は特に限定されず、たわみ継手以外の継手であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、10A、10B、10C、10D 台車
20、20A、20B 台車フレーム
30 車軸
32 非回転部
40 駆動部
41 モータ
42、42A モータブラケット
50 継手部
60 ガイド部
70 第1付勢部材
80 第2付勢部材
PA 所定量
SF 支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11