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  • 特開-車両評価方法 図1
  • 特開-車両評価方法 図2
  • 特開-車両評価方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158745
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074240
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋篠 亮太
(72)【発明者】
【氏名】味間 弘喜
(57)【要約】
【課題】車両を評価するモデルの精度を維持しつつ予測及び計算時間の削減を図ること、及び、簡易な方法によってモデルを作成すること。
【解決手段】車両評価方法は、車両を評価するための時系列学習データを取得するステップと、時系列学習データに基づいてLTIモデルを作成するステップと、時系列学習データとLTIモデルから出力される予測データとに基づいてLSTMモデルを作成するステップと、LTIモデルとLSTMモデルとを組み合わせることで、時系列学習データから出力データを得るためのROMを作成するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を評価するための時系列学習データを取得するステップと、
前記時系列学習データに基づいてLTIモデルを作成するステップと、
前記時系列学習データと前記LTIモデルから出力される予測データとに基づいてLSTMモデルを作成するステップと、
前記LTIモデルと前記LSTMモデルとを組み合わせることで、前記時系列学習データから出力データを得るためのROMを作成するステップと、
を含む車両評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両モデルのシミュレーションの精度を維持しつつその計算量を削減する方法が記載されている。具体的には、複数のユニットモデルによって構成された車両モデルから、テストしたい車両性能に応じて、縮退の対象となるユニットモデル及び計算項目を選択して縮退させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-042280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、複数の車両モデルから、テストした車両性能に応じて縮退対象を選択するためには、専門的な知識や経験が必要となる。そのため、モデルの活用までに時間を要する。また、モデルの予測精度を向上させるためには、複数種類の入力データ及び複数の出力データを学習データとして用いる必要があり、また、中間特性のデータが必要となる。そのため、学習データの収集のための測定や計算が増えるので、モデルの作成に要する時間が増大する。
【0005】
本開示の目的は、車両を評価するモデルの精度を維持しつつ予測及び計算時間の削減を図ること、及び、簡易な方法によってモデルを作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様は、車両を評価するための時系列学習データを取得するステップと、前記時系列学習データに基づいてLTIモデルを作成するステップと、前記時系列学習データと前記LTIモデルから出力される予測データとに基づいてLSTMモデルを作成するステップと、前記LTIモデルと前記LSTMモデルとを組み合わせることで、前記時系列学習データから出力データを得るためのROMを作成するステップと、を含む車両評価方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両を評価するモデルの精度を維持しつつ予測及び計算時間の削減を図ることができ、また、簡易な方法によってモデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るROMシステムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るROMシステムを作成する処理の流れを示すフローチャートである。
図3】実施形態に係るROMシステムを用いた処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1には、実施形態に係るROM(Reduced Order Model)システム10が示されている。ROMシステム10は、LTI(Linear Time Invariant System)モデル12と、LSTM(Long Short Term Memory)モデル14と、を含む。
【0010】
LTIモデル12は、制御分野技術であるLTIシステムを用いて作成されるモデルである。例えば、時系列学習データから伝達関数G(s)を推定することで、LTIモデル12が作成される。
【0011】
LSTMモデル14は、ディープラーニングの手法であるLSTMシステムを用いて作成されるモデルであり、ニューラルネットワーク(例えば、RNN(Recurrent Neural Network))に用いられるモデルである。例えば、時系列学習データとLTIモデルから出力される予測データとを用いて学習することで、LSTMモデル14が生成される。
【0012】
ROMシステム10においては、入力データが、LTIモデル12とLSTMモデル14とに入力され、LTIモデル12から出力されたデータが、LSTMモデル14に入力される。LSTMモデル14によって出力データが得られる。
【0013】
ROMシステム10を作成するために、コンピュータやサーバ等の処理装置が用いられる。例えば、処理装置は、プロセッサと記憶装置とを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processing)、そのたのプログラマブル論理デバイス又は電子回路等を含む。記憶装置は、ハードディスクドライブ又は各種のメモリ等を含む。
【0014】
以下、図2を参照して、ROMシステム10を作成する処理について説明する。図2は、その処理の流れを示すフローチャートを示す。図2に示されている各処理は、例えば、処理装置のプロセッサによって実行される。その処理の実行のために記憶装置が用いられてもよい。
【0015】
まず、時系列の学習データXが準備される(S01)。例えば、学習データXは、エンジントルク変動を表す時系列データである。
【0016】
次に、プロセッサは、振動解析用1Dモデルを用いることで、時系列の学習データXから時系列の学習データYを作成する。(S02)。例えば、学習データYは、車両前後G(車両の前後方向のG(加速度))を表す時系列データである。
【0017】
次に、プロセッサは、LTIシステムを用いて学習を行い、時系列の学習データX,Yに基づいてLTIモデル12を作成する(S03)。例えば、プロセッサは、時系列の学習データX,Yに基づいて、入力データである学習データXから出力データである学習データYを作成する伝達関数G(s)を推定し、LTIモデル12を作成する。
【0018】
次に、プロセッサは、時系列の学習データXをLTIモデル12に入力し、LTIモデル12から時系列の予測データY LTIを作成する(S04)。予測データY LTIは、推定された車両前後Gを表す時系列のデータである。
【0019】
次に、プロセッサは、LSTMシステムを用いて学習を行い、時系列のデータX,Y LTIに基づいてLSTMモデル14を作成する(S05)。プロセッサは、LTIモデル12とLSTMモデル14とを組み合わせることでROMシステム10を作成する。
【0020】
LSTMシステムを用いることで、専門的な知識や経験がなくてもモデルの縮退が可能となる。また、LSTMモデル14の作成の前処理として、LTIシステムを用いてLTIモデル12を作成することで、モデルの精度を維持することができる。また、入力データと出力データがそれぞれ1種類のデータで済むため、簡易的なROMシステム10を作成することができる。複数種類の学習データを要しないため、モデルの作成に要する時間を削減することができる。また、簡易な方法によってROMシステム10を作成することができる。
【0021】
以下、図3を参照して、ROMシステム10を用いた処理について説明する。図3は、その処理の流れを示すフローチャートを示す。例えば、ROMシステム10が、コンピュータやサーバ等の処理装置に組み込まれて、ROMシステム10による処理が実行される。ここでは一例として、エンジンベンチによって排気浄化性能とNV(Noise Vibration)性能とを評価するものとする。
【0022】
まず、エンジンベンチを用いて排気浄化性能を評価するときに、エンジントルクの変動を時系列で表すデータXtestを計測する(S10)。
【0023】
時系列のデータXtestがROMシステム10に入力され、ROMシステム10は、時系列のデータXtestから時系列の出力データYpredを予測する(S11)。出力データYpredは、車両前後Gを時系列で表す予測データである。
【0024】
時系列の出力データYpredがNV性能の評価に用いられ、エンジンベンチで実測されたデータを用いて排気浄化性能が評価される(S12)。例えば、NV性能と排気浄化性能とが同時にリアルタイムで評価される。
【0025】
例えば、排気浄化性能を評価するための触媒床温のデータと、NV性能を評価するための出力データYpred(車両前後Gのデータ)とが、エンジンベンチのディスプレイに並べて表示される。具体的には、エンジンベンチによって触媒床温が実測され、触媒床温のデータがディスプレイに表示される。また、エンジン筒内圧センサによって各気筒内圧が計測され、燃焼解析装置によってエンジントルク変動が計算される。この計算によって時系列のデータXtestが生成される。時系列のデータXtestはROMシステム10に入力され、これにより、車両前後Gを時系列で表す出力データYpredが出力され、出力データYpredがディスプレイに表示される。こうすることで、NV性能と排気浄化性能とを同時にリアルタイムで評価することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、車両を評価するモデルの精度を維持しつつ、予測及び計算時間を削減することができる。また、簡易な方法によってモデルを作成することができるので、実際の開発現場において、モデル開発や車両運動性能解析の経験が少ない適合評価担当者であってもモデルを作成することができ、そのモデルを用いて車両を評価することができる。また、従来においては、人が縮退対象を選択していたため、人毎にモデルの信頼性や精度等がばらつくことがあった。本実施形態によれば、人が縮退対象を選択する必要がないため、人毎にモデルの信頼性や精度等がばらつくことはない。
【符号の説明】
【0027】
10 ROM、12 LTIモデル、14 LSTMモデル。
図1
図2
図3