IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

<>
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図1
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図2
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図3
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図4
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図5
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図6
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図7
  • 特開-モータ装置およびその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158757
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】モータ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20241031BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20241031BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02K5/00 A
H02K11/215
H02K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074261
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 周平
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC03
5H605CC04
5H605CC06
5H605CC10
5H605EC05
5H605GG06
5H611BB01
5H611BB07
5H611PP07
5H611QQ01
5H611RR02
5H611UA04
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP28
5H615SS20
(57)【要約】
【課題】組み立て工程を簡素化すると共に、モータ特性のばらつきを低減することが可能な構造を備えたモータ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ケース20は、ケース20をブラケット40に固定する固定雄ねじFSがそれぞれ挿通される合計3つの第1挿通孔H1と、ブラケット40を電動ブレーキ装置に固定する固定ボルトがそれぞれ挿通される合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cと、を備え、ブラケット40は、固定雄ねじFSがそれぞれねじ止めされる合計3つの雌ねじ部材48aと、固定ボルトがそれぞれ挿通される合計3つのカラー47a,47b,47cの挿通孔HLと、を有し、合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cおよび合計3つのカラー47a,47b,47cの挿通孔HLは、互いに軸心C1上に配置され、ケース20をブラケット40に対して位置決めする丸孔を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回転されるロータと、
を有するモータ装置であって、
前記ステータが内部の規定位置に固定されるケースと、
前記ケースの開口部を閉塞し、駆動対象物に固定されるブラケットと、
前記ブラケットの規定位置に固定され、前記ロータの回転を検知する磁気センサを備える基板と、
前記ロータと共に回転され、前記磁気センサと対向するセンサマグネットと、
を有し、
前記ケースは、
前記ケースを前記ブラケットに固定する第1雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の第1ねじ孔と、
前記ブラケットを前記駆動対象物に固定する第2雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の第2ねじ孔と、
を備え、
前記ブラケットは、
前記第1雄ねじ部材がそれぞれねじ止めされる複数の雌ねじ部材と、
前記第2雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の挿通孔と、
を有し、
複数の前記第2ねじ孔および複数の前記挿通孔は、互いに同軸上に配置され、前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めする丸孔をそれぞれ含む、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記ロータの回転中心に固定される回転軸と、
前記ケースに装着される第1軸受と、
前記ブラケットに装着される第2軸受と、
を備え、
前記回転軸の軸方向両側が、前記第1軸受および前記第2軸受により回転自在に支持されている、
モータ装置。
【請求項3】
複数の前記第1ねじ孔および複数の前記第2ねじ孔は、前記第1雄ねじ部材および前記第2雄ねじ部材が内部で移動可能な長孔をそれぞれ含む、
請求項1または請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記第1ねじ孔および前記第2ねじ孔がそれぞれ3つずつ設けられ、これらの前記第1ねじ孔および前記第2ねじ孔が、前記ロータを中心に前記ケースの周方向に交互に並んでいる、
請求項1または請求項2に記載のモータ装置。
【請求項5】
ステータと、
前記ステータに対して回転されるロータと、
を有するモータ装置の製造方法であって、
前記モータ装置は、
前記ステータが内部の規定位置に固定されるケースと、
前記ケースの開口部を閉塞し、駆動対象物に固定されるブラケットと、
前記ブラケットの規定位置に固定され、前記ロータの回転を検知する磁気センサを備える基板と、
前記ロータと共に回転され、前記磁気センサと対向するセンサマグネットと、
を有し、
前記ケースの前記開口部を前記ブラケットに突き合わせ、前記ケースに設けられるケース側丸孔と、前記ブラケットに設けられるブラケット側丸孔とを、前記ロータの軸方向において互いに連通させる突き合わせ工程と、
前記ケース側丸孔および前記ブラケット側丸孔に位置決め治具を差し込み、前記ケース側丸孔および前記ブラケット側丸孔を互いに同軸上に配置し、前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めする位置決め工程と、
前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めした状態で、前記ケースに設けられる長孔に固定雄ねじを挿通し、当該固定雄ねじを前記ブラケットに設けられる固定雌ねじにねじ止めするねじ止め工程と、
を備えている、
モータ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータと、前記ステータに対して回転されるロータと、を有するモータ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内部にステータが固定されたステータケースと、レゾルバステータが固定され、かつステータケースの開口に固定されるフランジと、を備えたモータが記載されている。また、ステータケースには長孔が設けられ、フランジには螺子孔が設けられている。そして、長孔に螺子を挿通すると共に、当該螺子を螺子孔にねじ止めすることで、ステータケースの開口にフランジが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5141681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、螺子を螺子孔にねじ止めする際に、フランジとステータケースとを相対回転させ、レゾルバ信号と誘起電圧との関係を確認しながらフランジとステータケースとの位置調整を行っていた。そして、フランジとステータケースとの位置調整を行った後に、両者を固定していた。このように、フランジとステータケースとを固定する前に、両者の位置調整を行う必要があり、その分モータの組み立て工程が煩雑化するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、組み立て工程を簡素化すると共に、モータ特性のばらつきを低減することが可能な構造を備えたモータ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、ステータと、前記ステータに対して回転されるロータと、を有するモータ装置であって、前記ステータが内部の規定位置に固定されるケースと、前記ケースの開口部を閉塞し、駆動対象物に固定されるブラケットと、前記ブラケットの規定位置に固定され、前記ロータの回転を検知する磁気センサを備える基板と、前記ロータと共に回転され、前記磁気センサと対向するセンサマグネットと、を有し、前記ケースは、前記ケースを前記ブラケットに固定する第1雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の第1ねじ孔と、前記ブラケットを前記駆動対象物に固定する第2雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の第2ねじ孔と、を備え、前記ブラケットは、前記第1雄ねじ部材がそれぞれねじ止めされる複数の雌ねじ部材と、前記第2雄ねじ部材がそれぞれ挿通される複数の挿通孔と、を有し、複数の前記第2ねじ孔および複数の前記挿通孔は、互いに同軸上に配置され、前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めする丸孔をそれぞれ含む。
【0007】
本発明の他の態様では、ステータと、前記ステータに対して回転されるロータと、を有するモータ装置の製造方法であって、前記モータ装置は、前記ステータが内部の規定位置に固定されるケースと、前記ケースの開口部を閉塞し、駆動対象物に固定されるブラケットと、前記ブラケットの規定位置に固定され、前記ロータの回転を検知する磁気センサを備える基板と、前記ロータと共に回転され、前記磁気センサと対向するセンサマグネットと、を有し、前記ケースの前記開口部を前記ブラケットに突き合わせ、前記ケースに設けられるケース側丸孔と、前記ブラケットに設けられるブラケット側丸孔とを、前記ロータの軸方向において互いに連通させる突き合わせ工程と、前記ケース側丸孔および前記ブラケット側丸孔に位置決め治具を差し込み、前記ケース側丸孔および前記ブラケット側丸孔を互いに同軸上に配置し、前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めする位置決め工程と、前記ケースを前記ブラケットに対して位置決めした状態で、前記ケースに設けられる長孔に固定雄ねじを挿通し、当該固定雄ねじを前記ブラケットに設けられる固定雌ねじにねじ止めするねじ止め工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組み立て工程を簡素化すると共に、モータ特性のばらつきを低減することが可能な構造を備えたモータ装置およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】モータ装置をブラケット側から見た斜視図である。
図2】モータ装置をケース側から見た斜視図である。
図3】モータ装置の内部構造を示す断面図である。
図4】ケースの内側を回転軸の軸方向から見た図である。
図5】ステータおよびバスバーユニットを示す斜視図である。
図6】ブラケットのセンサ基板側を回転軸の軸方向から見た図である。
図7】モータ装置の組み立て手順を説明する分解斜視図である。
図8】モータ装置の2箇所の位置決め部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
<モータ装置>
図1はモータ装置をブラケット側から見た斜視図を、図2はモータ装置をケース側から見た斜視図を、図3はモータ装置の内部構造を示す断面図を、図4はケースの内側を回転軸の軸方向から見た図を、図5はステータおよびバスバーユニットを示す斜視図を、図6はブラケットのセンサ基板側を回転軸の軸方向から見た図をそれぞれ示している。
【0012】
図1ないし図3に示されるモータ装置10は、例えば、自動車等の車両に搭載される電動ブレーキ装置EB(図3参照)の駆動源に用いられるものである。なお、図3においては、電動ブレーキ装置EBを二点鎖線(想像線)で示しており、かつ簡略化している。ここで、電動ブレーキ装置EBは、本発明における駆動対象物に相当する。
【0013】
モータ装置10は、ブラシレスモータであり、金属製のケース20を備えている。ケース20は、金属板を深絞り加工等することで有底筒状に形成されている。ケース20は、円筒部21を備えており、円筒部21の軸方向一側(図3の上側)には開口部22が設けられ、円筒部21の軸方向他側(図3の下側)には底壁部23が設けられている。
【0014】
そして、ケース20の開口部22は、モータ装置10を電動ブレーキ装置EBに固定するためのブラケット40により閉塞されている。その一方で、ケース20の底壁部23の内側でかつ中央部には、第1軸受BR1が装着される軸受装着筒部23aが設けられている。軸受装着筒部23aは、ケース20を成形する際に、金属板を折り返して起立させることで円筒状に形成されている。なお、ケース20に装着される第1軸受BR1は、回転軸32の軸受支持部32dを回転自在に支持している。
【0015】
<ステータ>
図3および図4に示されるように、ケース20の内部には、ステータ(固定子)24が収容されている。具体的には、ステータ24は、ケース20の円筒部21の径方向内側に圧入等により固定されている。
【0016】
図3および図5に示されるように、ステータ24は、略筒状に形成されたステータコア25を備えており、当該ステータコア25は、複数の薄い鋼板(強磁性体)を積層して形成されている。ステータコア25は、環状のコア本体25aと、当該コア本体25aに設けられ、径方向内側に突出された複数のティース25bと、を備えている。
【0017】
また、ステータ24は、複数のティース25bにそれぞれ装着される樹脂製のインシュレータ26を有している。そして、それぞれのインシュレータ26には、U相,V相,W相からなるコイル27が、所定の巻き数で巻装されている。つまり、それぞれのティース25bには、絶縁体であるインシュレータ26を介して、三相のコイル27がそれぞれ巻装されている。
【0018】
そして、三相のコイル27は、ステータ24の周方向に対して、U相,V相,W相,U相,V相,W相,…と交互に並んで配置されている。このように、ステータ24は、三相のコイル27を備えている。
【0019】
<バスバーユニット>
また、図3ないし図5に示されるように、ロータ31の軸方向におけるステータ24の一方側(図3の上側)には、環状のバスバーユニット28が設けられている。バスバーユニット28は、三相のコイル27の同相を電気的に接続する複数の導電部材29を備えている。これらの導電部材29は、環状の保持部材30により保持されている。保持部材30は、プラスチック等の絶縁体からなり、それぞれの導電部材29が短絡することを防止する。
【0020】
複数の導電部材29の一端側は、環状の保持部材30の外周部からその径方向外側に放射状に突出されている。そして、導電部材29の保持部材30から突出された一端側の部分には、三相のコイル27の端部がスポット溶接等により電気的に接続されている。これに対し、複数の導電部材29の他端側は、U相,V相,W相の三相にそれぞれ纏められて、ブラケット40に設けられた3つの電源ターミナルPT(図6参照)の一端部に、それぞれ電気的に接続される。
【0021】
ここで、3つの電源ターミナルPTは、U相,V相,W相に対応しており、これらの電源ターミナルPTの他端部は、車両側のコネクタ部材(図示せず)が接続されるコネクタ接続部CN(図2図3および図6参照)の内側に露出されている。
【0022】
<ロータ>
図3に示されるように、モータ装置10は、ステータ24に対して回転されるロータ(回転子)31を備えている。ロータ31は、回転軸32およびロータ本体33を有している。回転軸32は、丸綱棒を切削加工等することで段差付きの棒状に形成されている。具体的には、回転軸32は、大径部32aと、当該大径部32aよりも小径となった中径部32bと、当該中径部32bよりも小径となった小径部32cと、を備えている。なお、回転軸32は、センサ基板50に設けられた貫通孔52を貫通し、ブラケット40をその軸方向に横切るようにして配置されている。
【0023】
大径部32aの外周部には、ロータ本体33を形成するロータコア34が圧入等により固定されている。すなわち、回転軸32は、ロータ31の回転中心に固定され、かつロータコア34の回転に伴い回転される。なお、大径部32aの軸方向他側(図3の下側)には、軸受支持部32dが設けられ、当該軸受支持部32dは、第1軸受BR1により回転自在に支持されている。
【0024】
また、中径部32bの外周部には、センサマグネットユニットSMUが固定されている。センサマグネットユニットSMUは、ホルダ部材38およびセンサマグネットSMを備えている。ホルダ部材38は、回転軸32の中径部32bに圧入により固定され、かつ環状のセンサマグネットSMを保持している。そして、センサマグネットSMは、ロータ31(回転軸32)の回転を検知するために用いられるもので、ロータ31と共に回転される。
【0025】
さらに、小径部32cは、第2軸受BR2により回転自在に支持されている。このように、回転軸32の軸方向両側は、第1軸受BR1および第2軸受BR2により回転自在に支持されている。なお、第1軸受BR1および第2軸受BR2は、何れもボールベアリング(詳細図示せず)となっている。
【0026】
また、小径部32cの軸方向一側(図3の上側)には、モータ装置10の出力部を形成するピニオンギヤ部32eが一体に設けられている。具体的には、図3に示されるように、ピニオンギヤ部32eは、電動ブレーキ装置EBのピストン(図示せず)を進退させる送りねじ軸SHに対し、動力伝達可能に接続されている。
【0027】
さらに、大径部32aの外周部に固定されたロータ本体33は、複数の薄い鋼板(強磁性体)を積層することで略筒状に形成されたロータコア34と、当該ロータコア34の径方向外側に装着された筒状のマグネット35と、を備えている。そして、マグネット35の径方向外側は、ステンレス板等からなる筒状のマグネットカバー36によって覆われている。
【0028】
マグネットカバー36は、当該マグネットカバー36の軸方向一側(図3の上側)を径方向内側にかしめることで、マグネット35の外周部に固定される。これにより、マグネット35の回転中心とロータコア34の回転中心とが精度良く一致して、ロータ31の回転ムラが抑えられる。また、ロータ本体33とステータ24との間のエアギャップAGを狭くすることができ、小型で高出力(高効率)なモータ装置10を実現できる。
【0029】
なお、マグネットカバー36のかしめ力が、マグネット35に伝わることを抑制するために、マグネットカバー36の軸方向一側には、プラスチック等の樹脂材料からなるマグネット保護部材37が設けられている。
【0030】
このように、モータ装置10は、ロータコア34の表面にマグネット35を装着した表面磁石型(Surface Permanent Magnet:SPM型)となっている。ただし、モータ装置10としては、上述のようなSPM型に限らず、ロータコアの内部にマグネットを埋め込んだ埋込磁石型(Interior Permanent Magnet:IPM型)であっても構わない。
【0031】
<ブラケット>
図3に示されるように、ブラケット40は、モータ装置10を電動ブレーキ装置EBに固定する機能を有する。すなわち、ブラケット40は、電動ブレーキ装置EBに固定される。ブラケット40は、図3および図6に示されるように、溶融されたプラスチック等の樹脂材料を射出成形することで、略円板状に形成されている。
【0032】
ブラケット40は、略円板状に形成された仕切壁部41を備えている。仕切壁部41は、ケース20側(図3の下側)と電動ブレーキ装置EB側(図3の上側)とを仕切っており、仕切壁部41の中央部には、回転軸32の軸方向一側(図3の上側)が挿通される挿通筒部42が一体に設けられている。
【0033】
また、挿通筒部42の径方向内側には、鋼板をプレス加工等することで、略カップ状に形成されたベアリングホルダ43が設けられている。具体的には、ベアリングホルダ43の径方向外側が、挿通筒部42の径方向内側に固定されている。
【0034】
そして、ベアリングホルダ43には、回転軸32が挿通される挿通穴43aが設けられ、ベアリングホルダ43は、挿通筒部42と同軸となるように第2軸受BR2を保持している。すなわち、第2軸受BR2は、ベアリングホルダ43を介してブラケット40に装着されている。なお、第2軸受BR2の軸方向他側(図3の下側)には、当該第2軸受BR2のベアリングホルダ43からの脱落を防止する環状固定板44が設けられている。
【0035】
さらに、挿通筒部42の軸方向他側(図3の下側)には、センサ基板50が設けられている。具体的には、センサ基板50は、合計3つの基板固定ねじBS(図6参照)により、仕切壁部41のケース20側に固定されている。ここで、センサ基板50は、合計3つの位置決め突起45に接触して支持されている。これにより、センサ基板50は、ブラケット40に対して3点支持により精度良く位置決めされている。
【0036】
このように、ブラケット40には、回転軸32を支持する第2軸受BR2が装着されると共に、センサ基板50が精度良く位置決めされている。したがって、センサ基板50のホール素子51および回転軸32のセンサマグネットSMは、ロータ31の軸方向において互いに精度良く対向している。
【0037】
<センサ基板>
センサ基板50は、ブラケット40のケース20側(図3の下側)において、第2軸受BR2とセンサマグネットSMとの間に配置されている。そして、図6に示されるように、センサ基板50の実装面SFには、合計3つのホール素子51が設けられている。具体的には、これらのホール素子51は、センサ基板50の略中央に配置された貫通孔52の周囲に配置されている。
【0038】
ここで、合計3つのホール素子51は、ロータ31の軸方向においてセンサマグネットSMと対向している。そして、それぞれのホール素子51は、回転軸32の回転に伴い、センサマグネットSMの磁極の変化を検知する。つまり、ホール素子51は、センサマグネットSMを介してロータ31の回転を検知する。
【0039】
なお、センサ基板50は、本発明における基板に相当し、ホール素子51は、本発明における磁気センサに相当する。
【0040】
さらに、センサ基板50には、合計5つのセンサターミナルSTの一端部がそれぞれ電気的に接続される合計5つのスルーホールTHが設けられている。なお、合計5つのセンサターミナルSTの他端部は、車両側のコネクタ部材(図示せず)が接続されるコネクタ接続部CNの内側に露出されている(図2図3および図6参照)。
【0041】
<筒状壁部>
図1および図3に示されるように、挿通筒部42の径方向外側には、当該挿通筒部42よりも大径となった筒状壁部46が設けられている。具体的には、筒状壁部46は、仕切壁部41の径方向外側に一体に設けられている。
【0042】
筒状壁部46は、挿通筒部42に対して同軸となっており、回転軸32の軸方向に延びている。また、筒状壁部46には、その径方向外側に突出するようにして、合計3つの駆動対象物固定部47が一体に設けられている。これらの駆動対象物固定部47には、金属製の筒状のカラー47a,47b,47cが、それぞれ取り付けられている。また、駆動対象物固定部47には、ロータ31の軸方向において、ケース20のフランジ部60(図4参照)が対向するようになっている。
【0043】
このように、駆動対象物固定部47にカラー47a,47b,47cを設けることで、樹脂製の駆動対象物固定部47を損傷させずに、モータ装置10を電動ブレーキ装置EBに確りと固定することができる。
【0044】
ここで、カラー47a,47b,47cには、モータ装置10を電動ブレーキ装置EBに固定するための合計3つ(複数)の固定ボルトFB(図3の二点鎖線参照)がそれぞれ挿通され、かつ丸孔からなる挿通孔HLがそれぞれ設けられている。なお、固定ボルトFBは、本発明における第2雄ねじ部材に相当する。
【0045】
さらに、筒状壁部46の径方向外側には、コネクタ接続部CNが一体に設けられている。コネクタ接続部CNは、略直方体の箱形状に形成され、筒状壁部46の軸方向他側(図3の下側)から、車両側のコネクタ部材(図示せず)が接続可能となっている。
【0046】
また、筒状壁部46には、その径方向外側に突出するようにして、合計3つのケース固定部48が一体に設けられている。これらのケース固定部48は、ケース20が固定される部分であり、ケース固定部48には、ロータ31の軸方向において、ケース20のフランジ部60(図4参照)が対向するようになっている。
【0047】
さらに、それぞれのケース固定部48には、鋼材製でかつ筒状の雌ねじ部材48aが取り付けられている。そして、ケース固定部48に設けられる雌ねじ部材48aには、ケース20をブラケット40に固定するための固定雄ねじFSがそれぞれねじ止めされる。ここで、雌ねじ部材48aにねじ止めされる固定雄ねじFSは、本発明における第1雄ねじ部材に相当する。
【0048】
なお、図6に示されるように、3つずつ設けられる駆動対象物固定部47およびケース固定部48は、ロータ31(図3参照)を中心に、筒状壁部46(ブラケット40)の周方向に交互に並んでいる。
【0049】
<嵌合筒部>
さらに、ブラケット40の軸方向他側(ケース20側)で、かつブラケット40の径方向における挿通筒部42と筒状壁部46との間には、嵌合筒部49が一体に設けられている。
【0050】
嵌合筒部49は、ケース20の開口部22に嵌合される部分であり、その径方向外側には、ゴム等の弾性材料からなる環状シールSLが装着されている。環状シールSLは、ブラケット40とケース20との間を密封している。
【0051】
<ケースとブラケットとの接続構造>
図2および図6に示されるように、ブラケット40に3つずつ設けられた駆動対象物固定部47およびケース固定部48には、ロータ31(図3参照)の軸方向において、ケース20に設けられたフランジ部60が対向する。
【0052】
具体的には、図3および図4に示されるように、ケース20における円筒部21の軸方向一側、つまり開口部22側に、径方向外側に突出するようにしてフランジ部60が一体に設けられている。フランジ部60は、ブラケット40の軸方向他側(図3の下側)に、合計3つ(複数)の固定雄ねじFSにより固定される。つまり、固定雄ねじFSは、ケース20をブラケット40に固定するためのものである。なお、固定雄ねじFSは、先端側がプラス(+)のスクリュードライバー(図示せず)により締め付けられる。
【0053】
フランジ部60には、合計3つの固定雄ねじFSがそれぞれ挿通される合計3つ(複数)の第1挿通孔H1が設けられている。これらの第1挿通孔H1は、ロータ31の軸方向に貫通しており、本発明における第1ねじ孔に相当する。
【0054】
そして、それぞれの第1挿通孔H1は、何れも同じ大きさかつ同じ形状の長孔となっている。具体的には、それぞれの第1挿通孔H1は、ケース20の周方向に若干延びるようにして、略オーバル形状となっている。よって、固定雄ねじFSは、当該固定雄ねじFSを完全に締め付けていない状態(緩んだ状態)では、第1挿通孔H1の内部を移動可能となっている。言い換えれば、第1挿通孔H1を長孔とすることで、モータ装置10の接続部分を形成する部品(ケース20やブラケット40等)の寸法誤差を吸収可能としている。
【0055】
また、フランジ部60には、ブラケット40(モータ装置10)を電動ブレーキ装置EBに固定するための固定ボルトFB(図3参照)がそれぞれ挿通される合計3つ(複数)の第2挿通孔H2A,H2B,H2Cが設けられている。これらの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cは、ロータ31の軸方向に貫通しており、本発明における第2ねじ孔に相当する。
【0056】
そして、合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cのうちの1つの第2挿通孔H2Aは、当該第2挿通孔H2Aに対応して配置されたカラー47aの挿通孔HLと同様に丸孔となっており、第2挿通孔H2Aと、カラー47aの挿通孔HLとは、モータ装置10を組み立てた状態において互いに同軸上に配置されている。具体的には、第2挿通孔H2Aと、カラー47aの挿通孔HLとは、図3に示されるように、軸心C1上に配置される。
【0057】
これに対し、合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cのうちの丸孔の第2挿通孔H2Aを除いた他の第2挿通孔H2B,H2Cは、その内部において固定ボルトFBが移動可能な長孔となっている。第2挿通孔H2B,H2Cは、何れも同じ大きさでかつ同じ形状となっており、具体的には、ケース20の周方向に若干延びるようにして、略オーバル形状となっている。
【0058】
これによっても、モータ装置10を形成する部品(ケース20やブラケット40等)の寸法誤差を吸収可能としている。よって、電動ブレーキ装置EBに対してモータ装置10(ブラケット40)を取り付ける際に、固定ボルトFBを、第2挿通孔H2B,H2Cおよびこれらに対応したカラー47b,47cの挿通孔HLに、それぞれ容易に挿通可能となっている。
【0059】
なお、第2挿通孔H2Aおよび、これに対応したカラー47aの挿通孔HLには、モータ装置10の組み立て時において、丸棒からなる位置決め治具TL(図7参照)が差し込まれる。これにより、第2挿通孔H2Aと、カラー47aの挿通孔HLとが同軸上に配置される。
【0060】
ここで、丸棒からなる位置決め治具TLに変えて、例えば、固定ボルトFBを用いて第2挿通孔H2Aとカラー47aの挿通孔HLとを同軸上に配置することもできる。すなわち、第2挿通孔H2Aとカラー47aの挿通孔HLとを同軸上に配置できるのであれば、他の部材を用いても良い。
【0061】
このように、第2挿通孔H2Aおよび、これに対応したカラー47aの挿通孔HLは、ケース20をブラケット40に対して位置決めする機能を有する。よって、ケース20をブラケット40の正規の位置に精度良く位置決め可能となっている。つまり、合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cおよびカラー47a,47b,47cの合計3つの挿通孔HLは、互いに同軸上(軸心C1上)に配置され、ケース20をブラケット40に対して位置決めする丸孔をそれぞれ含んでいる。
【0062】
ここで、位置決め治具TLの外径は、第2挿通孔H2Aの内径および、これに対応したカラー47aの挿通孔HLの内径よりも若干小さくなっている。これにより、位置決め治具TLを、第2挿通孔H2Aおよび、これに対応したカラー47aの挿通孔HLに、容易に差し込めるようにしている。また、第2挿通孔H2Aの内部および、これに対応したカラー47aの挿通孔HLの内部において、位置決め治具TLががたつくことが抑えられている。
【0063】
このように、フランジ部60に設けられる第1挿通孔H1および第2挿通孔H2A,H2B,H2C(合計6つ)のうちの1つの第2挿通孔H2Aのみが「丸孔」となっており、その他の第1挿通孔H1および第2挿通孔H2B,H2C(合計5つ)が「長孔」となっている。つまり、合計3つの第1挿通孔H1および合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cは、固定雄ねじFSおよび固定ボルトFBが内部で移動可能な長孔をそれぞれ含んでいる。
【0064】
そして、図4に示されるように、第1挿通孔H1および第2挿通孔H2A,H2B,H2Cは、ブラケット40に設けられた駆動対象物固定部47およびケース固定部48(図6参照)と同様に、ロータ31(図3参照)を中心に、ケース20の周方向に交互に並んでいる。
【0065】
<組み立て手順について>
次に、以上のように形成されたモータ装置10の製造方法、特に、ステータアッシSA(図4参照)およびブラケットアッシBA(図6参照)の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0066】
図7はモータ装置の組み立て手順を説明する分解斜視図を、図8はモータ装置の2箇所の位置決め部を説明する図をそれぞれ示している。
【0067】
<ステータアッシおよびブラケットアッシの準備>
まず、別の製造工程を経て組み立てられたステータアッシSA(図4参照)およびブラケットアッシBA(図6参照)を、それぞれ準備する。
【0068】
ステータアッシSAは、自動組み立て装置等により製品毎にばらつくことなく、ケース20の内部の規定位置にステータ24が精度良く位置決め固定されたものである。
【0069】
具体的には、図4に示されるように、ケース20の軸心C2と第2挿通孔H2Aの軸心C1とを結んだ線分L1と、ケース20の軸心C2とステータコア25の外周部に設けられた所定の凹部RCの中央部(図4および図5参照)とを結んだ線分L2とが、互いに規定角度α°となるように、ステータ24がケース20の内部の規定位置に固定されている。
【0070】
また、ブラケットアッシBAにおいても、自動組み立て装置等により製品毎にばらつくことなく、ブラケット40の規定位置にセンサ基板50が精度良く位置決め固定されたものである。
【0071】
具体的には、図6に示されるように、ブラケット40の軸心C2とカラー47aの挿通孔HLの軸心C1とを結んだ線分L3と、ブラケット40の軸心C2とセンサ基板50の所定のホール素子51の中央部とを結んだ線分L4とが、互いに規定角度β°となるように、センサ基板50がブラケット40の規定位置に固定されている。
【0072】
これにより、ステータアッシSAの軸心C1および軸心C2(図4参照)と、ブラケットアッシBAの軸心C1および軸心C2(図6参照)とを、それぞれ同軸上に配置されるように互いに組み付けるだけで、ステータ24の周方向に対するホール素子51の位置を、設計通りに精度良く配置することが可能となる。
【0073】
すなわち、以下のようにステータアッシSAおよびブラケットアッシBAを組み立てることで、センサ信号の「ずれ」に起因したモータ特性のばらつきが抑えられたモータ装置10を、実現することが可能となる。
【0074】
<ロータ組み付け工程>
図7の矢印M1に示されるように、ロータ31をブラケットアッシBAに装着する。具体的には、ロータ31を形成する回転軸32の小径部32c(図3参照)を、ブラケット40のセンサ基板50側から、ブラケット40に装着された第2軸受BR2(図3参照)に差し込んで支持させる。
【0075】
これにより、ロータ31がブラケットアッシBAに組み付けられて、<ロータ組み付け工程>が完了する。
【0076】
<突き合わせ工程>
次に、図7の矢印M2に示されるように、ステータアッシSAをブラケットアッシBAに臨ませる。このとき、ケース20の開口部22(図3および図4参照)を、ブラケット40のセンサ基板50側に突き合わせるようにする。
【0077】
そして、図7の矢印M3に示されるように、ロータ31を、ケース20の内部に固定されたステータ24(図3および図4参照)の径方向内側に差し込み、かつ回転軸32の軸受支持部32dを、ケース20の軸受装着筒部23a(図3参照)に装着された第1軸受BR2に差し込む。これにより、ケース20の軸心およびブラケット40の軸心が、互いに軸心C2上(同軸上)に配置される。
【0078】
次いで、ケース20に設けられる第2挿通孔(ケース側丸孔)H2Aと、ブラケット40に設けられるカラー47aの挿通孔(ブラケット側丸孔)HLとを、ロータ31の軸方向において互いに連通させる。
【0079】
これにより、ステータアッシSAがブラケットアッシBAに突き当てられて、<突き合わせ工程>が完了する。
【0080】
<位置決め工程>
その後、図7の矢印M4に示されるように、丸棒からなる位置決め治具TLを、第2挿通孔H2Aおよびカラー47aの挿通孔HLに差し込む。これにより、第2挿通孔H2Aとカラー47aの挿通孔HLとの軸ずれが無くなり、第2挿通孔H2Aおよびカラー47aの挿通孔HLが、互いに軸心C1上(同軸上)に配置される。
【0081】
これにより、ステータアッシSAのケース20がブラケットアッシBAのブラケット40に対して正規の位置に位置決めされて、<位置決め工程>が完了する。なお、次の<ねじ止め工程>に備えて、位置決め治具TLを、第2挿通孔H2Aおよびカラー47aの挿通孔HLに差し込んだ状態としておく。
【0082】
<ねじ止め工程>
次に、位置決め治具TLを第2挿通孔H2Aおよびカラー47aの挿通孔HLに差し込んだ状態、つまりケース20をブラケット40に対して位置決めした状態で、ステータアッシSAをブラケットアッシBAにねじ止めを行う。
【0083】
具体的には、図7の矢印M5に示されるように、合計3つの固定雄ねじFSを、ケース20のフランジ部60に設けられた合計3つの第1挿通孔(長孔)H1に挿通し、かつスクリュードライバ(図示せず)を用いて、ブラケット40のケース固定部48に設けられた雌ねじ部材(固定雌ねじ)48aにねじ止めする。このとき、固定雄ねじFSは、長孔である第1挿通孔H1の内部を移動可能であるため、ケース20やブラケット40等に生じる寸法誤差を吸収する。
【0084】
これにより、ステータアッシSAおよびブラケットアッシBAが互いに組み立てられて<ねじ止め工程>が完了し、モータ装置10が完成する。
【0085】
なお、固定雄ねじFSのねじ止め作業の際には、図8に示されるように、ステータアッシSAの軸心C1および軸心C2(図4参照)と、ブラケットアッシBAの軸心C1および軸心C2(図6参照)とが、それぞれ同軸上(軸心C1上および軸心C2上)に配置されている。そのため、図8の破線矢印×に示されるように、軸心C2を中心として、ステータアッシSAおよびブラケットアッシBAが相対回転してずれることがない。すなわち、図8に示される軸心C1および軸心C2の2箇所は、それぞれケース20およびブラケット40の位置決め部となっている。
【0086】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、ケース20は、ケース20をブラケット40に固定する固定雄ねじFSがそれぞれ挿通される合計3つの第1挿通孔H1と、ブラケット40を電動ブレーキ装置EBに固定する固定ボルトFBがそれぞれ挿通される合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cと、を備え、ブラケット40は、固定雄ねじFSがそれぞれねじ止めされる合計3つの雌ねじ部材48aと、固定ボルトFBがそれぞれ挿通されるカラー47a,47b,47cの挿通孔HLと、を有し、合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cおよび合計3つのカラー47a,47b,47cの挿通孔HLは、互いに軸心C1上に配置され、ケース20をブラケット40に対して位置決めする丸孔をそれぞれ含む。
【0087】
これにより、モータ装置10の組み立て時において、丸棒からなる位置決め治具TL(図7参照)等を用いるだけで、第2挿通孔H2Aと、カラー47aの挿通孔HLとを同軸上に配置することができる。したがって、ケース20をブラケット40の正規の位置に、容易にかつ精度良く位置決めすることができる。よって、組み立て工程を簡素化すると共に、モータ特性のばらつきを低減することが可能な構造を備えたモータ装置10およびその製造方法を提供することが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、ロータ31の回転中心に固定される回転軸32と、ケース20に装着される第1軸受BR1と、ブラケット40に装着される第2軸受BR2と、を備え、回転軸32の軸方向両側が、第1軸受BR1および第2軸受BR2により回転自在に支持されている。
【0089】
これにより、ケース20の軸心C1および軸心C2と、ブラケット40の軸心C1および軸心C2とを、それぞれ互いに同軸上に配置することができ、これにより、さらに、ケース20をブラケット40の正規の位置に、容易にかつ精度良く位置決めすることが可能となる。
【0090】
さらに、本実施の形態によれば、合計3つの第1挿通孔H1および合計3つの第2挿通孔H2A,H2B,H2Cは、固定雄ねじFSおよび固定ボルトFBが内部で移動可能な長孔をそれぞれ含む。
【0091】
これにより、モータ装置10の接続部分を形成する部品(ケース20やブラケット40等)の寸法誤差を吸収することができ、モータ装置10を容易に組み立てることが可能となり、かつ不良品の発生を抑えることができる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、第1挿通孔H1および第2挿通孔H2A,H2B,H2Cがそれぞれ3つずつ設けられ、これらの第1挿通孔H1および第2挿通孔H2A,H2B,H2Cが、ロータ31を中心にケース20の周方向に交互に並んでいる。
【0093】
これにより、ケース20をブラケット40に対して3点支持により安定して固定することができ、かつブラケット40(モータ装置10)を電動ブレーキ装置EBに対して3点支持により安定して固定することが可能となる。
【0094】
さらに、本実施の形態によれば、モータ装置10を、<突き合わせ工程>,<位置決め工程>および<ねじ止め工程>を経て組み立てることができる。したがって、従前のようにステータアッシSAとブラケットアッシBAとの位置調整を行う必要がない。よって、モータ装置10を、より容易に組み立てることが可能となる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、モータ装置10の不良品の発生を抑えつつ、モータ装置10を容易に組み立てることができるため、製造エネルギーの省力化を図ることが可能となる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することが可能となる。
【0096】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の実施の形態では、モータ装置10が、自動車等の車両に搭載される電動ブレーキ装置EBの駆動源であるものを示したが、本発明はこれに限らず、その他の車載機器の駆動源等(電動パワーステアリングの駆動源等)にも適用することができる。
【0097】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0098】
10:モータ装置,20:ケース,21:円筒部,22:開口部,23:底壁部,23a:軸受装着筒部,24:ステータ,25:ステータコア,25a:コア本体,25b:ティース,26:インシュレータ,27:コイル,28:バスバーユニット,29:導電部材,30:保持部材,31:ロータ,32:回転軸,32a:大径部,32b:中径部,32c:小径部,32d:軸受支持部,32e:ピニオンギヤ部,33:ロータ本体,34:ロータコア,35:マグネット,36:マグネットカバー,37:マグネット保護部材,38:ホルダ部材,40:ブラケット,41:仕切壁部,42:挿通筒部,43:ベアリングホルダ,43a:挿通穴,44:環状固定板,45:位置決め突起,46:筒状壁部,47:駆動対象物固定部,47a,47b,47c:カラー,48:ケース固定部,48a:雌ねじ部材,49:嵌合筒部,50:センサ基板(基板),51:ホール素子(磁気センサ),52:貫通孔,60:フランジ部,AG:エアギャップ,BA:ブラケットアッシ,BR1:第1軸受,BR2:第2軸受,BS:基板固定ねじ,C1,C2:軸心,CN:コネクタ接続部,EB:電動ブレーキ装置(駆動対象物),FB:固定ボルト(第2雄ねじ部材),FS:固定雄ねじ(第1雄ねじ部材),H1:第1挿通孔(第1ねじ孔,長孔),H2A:第2挿通孔(第2ねじ孔,丸孔,ケース側丸孔),H2B,H2C:第2挿通孔(第2ねじ孔,長孔),HL:挿通孔(丸孔),カラー47aの挿通孔HL:ブラケット側丸孔,PT:電源ターミナル,RC:凹部,SA:ステータアッシ,SF:実装面,SH:送りねじ軸,SL:環状シール,SM:センサマグネット,SMU:センサマグネットユニット,ST:センサターミナル,TH:スルーホール,TL:位置決め治具,α°,β°:規定角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8