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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158797
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】駆動ユニット、産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/12 20060101AFI20241031BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20241031BHJP
   F16H 37/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16H37/12 Z
B25J9/06 D
F16H37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074326
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707CY36
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT17
3C707HT20
3C707HT30
3C707MT04
3C707MT13
3J062AA38
3J062AB06
3J062AB12
3J062AB22
3J062AC04
3J062BA11
3J062CA06
3J062CA08
3J062CD04
3J062CD12
3J062CD22
3J062CG17
3J062CG83
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第2軸モータのみによるボールスプラインナットとボールネジナットの同期回転を可能にすることで、モータの制御的な同期遅れによる駆動軸先端位置精度の悪化を抑制する。また、部品点数を削減し、駆動装置を小型化、軽量化する。
【解決手段】駆動装置は、ディファレンシャル300と、第1軸モータ410と、第2軸モータ420又は減速機付きモータとを含む。第1軸モータ410のモータ軸は、ディファレンシャル300の第1入力ギヤ310に直結され、第2軸モータ420のモータ軸又は減速機付きモータの減速後のモータ軸は、ディファレンシャル300の第2入力ギヤ320に直結される。ディファレンシャル300の第1軸出力部310の回転を、プーリを用いてボールネジナットに伝達し、第2軸モータ420の回転又は前記減速機付きモータの減速後の回転を、プーリを用いてボールスプラインナットに伝達する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットであって、
ボールネジナットとボールスプラインナットとを有する駆動軸と、
前記駆動軸を駆動する駆動装置と、を含み、
前記駆動装置は、
ディファレンシャルと、
第1軸モータと、
第2軸モータ又は減速機付きモータと、
第1伝達機構と、
第2伝達機構と、を含み、
前記ディファレンシャルは、第1入力ギヤ及び第2入力ギヤと第1軸出力部を有し、減速比が2の差動歯車装置であり、
前記第1軸モータのモータ軸は、
前記ディファレンシャルの前記第1入力ギヤに直結され、
前記第2軸モータのモータ軸又は前記減速機付きモータの減速後のモータ軸は、
前記ディファレンシャルの前記第2入力ギヤに直結され、
前記第1伝達機構は、
前記ディファレンシャルの第1軸出力部の回転を、プーリを用いて、前記ボールネジナットに伝達し、
前記第2伝達機構は、
前記第2軸モータの回転又は前記減速機付きモータの減速後の回転を、プーリを用いて、前記ボールスプラインナットに伝達し、
前記第1伝達機構のプーリ回転比は1対R/2、前記第2伝達機構のプーリ回転比は1対Rであり、
前記第2軸モータの回転数又は前記減速機付きモータの減速後の回転数をA[rpm]、前記第1軸モータの回転数をB[rpm]として、
前記第2軸モータ又は前記減速機付きモータの回転により、前記ボールスプラインナットと前記ボールネジナットは、A/R[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータの回転により、B/Rの回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ユニットであって、
前記第1軸モータ、前記第2軸モータ及び前記ディファレンシャルを、ユニットハウジングに固定し、ユニット化する、あるいは、
前記第1軸モータ、前記減速機付きモータ及び前記ディファレンシャルを、ユニットハウジングに固定し、ユニット化する、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルのバックラッシを調整する調整部を備え、
前記ディファレンシャルは、
前記第1入力ギヤである、第1サイドギヤと、
前記第2入力ギヤである、第2サイドギヤと、
前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤと噛み合う、ピニオンギヤと、を含み、
前記調整部は、
前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤの軸方向の位置を調整する第1調整部と、
前記ピニオンギヤの軸方向の位置を調整する第2調整部を有する、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動ユニットであって、
前記第1軸モータ及び前記第2軸モータは、前記ユニットハウジングに対してモータフランジを介してそれぞれ取り付けられ、或いは、
前記第1軸モータ及び前記減速機付きモータは、前記ユニットハウジングに対してモータフランジを介してそれぞれ取り付けられ、
前記第1調整部は、
前記ユニットハウジングと前記モータフランジとの間に介挿されたシム又は板状のバネである、駆動ユニット。
【請求項5】
請求項3に記載の駆動ユニットであって、
前記ピニオンギヤは、前記第1軸出力部の支持孔に対して、移動可能に取り付けられ、
前記第2調整部は、前記第1軸出力部の支持孔に対する前記ピニオンギヤの取り付け位置を、前記ピニオンギヤの外周に設けた皿バネにより調整する構造である、駆動ユニット。
【請求項6】
駆動軸をロボットの作業軸として使用する、請求項1又は請求項2に記載の駆動ユニットを備えた、産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールスプラインナットによる回転とボールネジナットによる直動が可能な駆動軸の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、産業用ロボットのアーム構造に関し、特に多関節型水平アームの最先端に設けられて、末端にロボットハンドやその他の作業具等様々のエンドエフェクタを装着して各種ロボット作業を遂行可能にする縦アーム軸を上下移動並びに回転作動させる駆動構造に関し、以下の技術を開示する。
【0003】
図14は、特許文献1における縦アーム軸の駆動構造を示す図である。
縦アーム軸12の外周面にはボールねじ溝34とボールスプライン溝36とがその全長に亘って重設されている。このボールねじ溝34と螺合するボールナット14と、ボールスプライン溝36と噛合するボールスプラインナット18とが縦アーム軸12に挿入されて、最先端アーム10内に夫々上方、下方に各軸受20を介して回転可能に支持されている。ボールナット14はその外周に歯付プーリ16を一体形成しており、ボールスプラインナット18には他の歯付プーリ16を固定している。これらの歯付プーリ14、16は夫々歯付ベルト30、32を介してサーボモータ22、26に連結された駆動側歯付プーリ24、28に連結されている。
【0004】
縦アーム軸12は、外周面に、ボールねじ溝34とボールスプライン溝36を有しており、ボールスプラインナット18による回転とボールナット14による直動が可能である。しかし、サーボモータ26を駆動させてボールスプラインナット18を回転し、縦アーム軸12が回転すると、縦アーム軸12にあるボールねじ溝34によって、縦アーム軸12がボールナット14に対して、上下してしまう。
特許文献1の場合、縦アーム軸12の回転と直動にそれぞれサーボモータ22、26を有する構造であり、縦アーム軸12を回転のみさせる場合には、ボールナット14とボールスプラインナット18の同期回転が必要で、2つのサーボモータ22、26を制御で同期回転させている。
【0005】
しかし、制御的な同期の遅れがある場合、ロボット作業軸先端の位置精度の悪化が起きる。極端な例では、縦アーム軸12を回転のみさせたいのに、制御的な同期遅れで、縦アーム軸12が微小に上下する可能性がある。また、縦アーム軸12を上下移動させる場合、2つのサーボモータ22、26を制御で同期回転し、そのうえで、サーボモータ22の回転速度を調整する。この場合、サーボモータ22は、常に駆動した状態になるから、負荷が掛り続ける。
【0006】
また、下記特許文献2には、スプライン付きボールねじ装置において、ディファレンシャルギヤユニット(図15に示す符号54)を用いて、ボールネジナットとボールスプラインナットをメカ的に同期させる構成が開示されている。図15において、符号20はボール螺子軸、符号21はボール螺子ナット、符号22はボールスプラインナットである。また、符号55は差動駆動用の電動モータ、符号56は主駆動用の電動モータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63-77675号公報
【特許文献2】特開2011-174603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2において、主駆動用の電動モータ56は、ディファレンシャルギヤユニット54に直結されておらず、電動モータ56の動力を、プーリ57a、57bやベルト57cを介して、回転駆動軸53及びディファレンシャルギヤユニット54に伝達する構造となっている。そのため、部品点数が多いなど、改良の余地がある。
【0009】
本願発明は、産業用ロボットの作業軸等に使用される駆動軸について、モータの制御的な同期遅れによる先端位置精度の悪化を抑制すること、駆動軸を駆動する駆動装置の電力消費を抑えること、を課題とする。また、部品点数を削減し、駆動装置を小型化、軽量化することを課題とする。この課題は、駆動軸を産業用ロボットの作業軸として使用する場合に限らず、駆動軸を他の用途に使用する場合も、同様である。
【0010】
尚、特許文献2において、駆動用の電動モータ56は、減速機を有していないことからトルクは小さいこと、ディファレンシャルギヤユニット54はバックラッシを減らす対策がとられていないこと等についても、改良が望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)駆動ユニットは、ボールネジナットとボールスプラインナットとを有する駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動装置と、を含む。前記駆動装置は、ディファレンシャルと、第1軸モータと、第2軸モータ又は減速機付きモータと、第1伝達機構と、第2伝達機構と、を含む。前記ディファレンシャルは、第1入力ギヤ及び第2入力ギヤと第1軸出力部を有し、減速比が2の差動歯車装置である。前記第1軸モータのモータ軸は、前記ディファレンシャルの前記第1入力ギヤに直結され、前記第2軸モータのモータ軸又は前記減速機付きモータの減速後のモータ軸は、前記ディファレンシャルの前記第2入力ギヤに直結される。前記第1伝達機構は、前記ディファレンシャルの第1軸出力部の回転を、プーリを用いて、前記ボールネジナットに伝達する。前記第2伝達機構は、前記第2軸モータの回転又は前記減速機付きモータの減速後の回転を、プーリを用いて、前記ボールスプラインナットに伝達する。前記第1伝達機構のプーリ回転比は1対R/2、前記第2伝達機構のプーリ回転比は1対Rである。前記第2軸モータの回転数又は前記減速機付きモータの減速後の回転数をA[rpm]、前記第1軸モータの回転数をB[rpm]として、前記第2軸モータ又は前記減速機付きモータの回転により、前記ボールスプラインナットと前記ボールネジナットは、A/R[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータの回転により、B/Rの回転が前記ボールネジナットに加わる。
【0012】
駆動ユニットの効果は以下の通りである。
第2軸モータのみによる、ボールスプラインナットとボールネジナットの同期回転が可能である。これにより、制御的な同期遅れがなく、回転動作中に、駆動軸が意図せず、軸方向に動くことを抑制できる。また、駆動軸の回転動作中、第1軸モータは駆動停止できるため、電力消費を抑えることが可能である。
【0013】
さらに、第1軸モータ、第2軸モータのモータ軸を、ディファレンシャルの第1入力ギヤ、第2入力ギヤに直結することで、動力を中継する部品(例えば、ベルトやプーリ)を削減することが出来、部品点数を少なくすることが出来る。また、動力を伝達する軸の長さも短くできる。この構成は、駆動装置を小型化、軽量化できる。駆動装置の小型化、軽量化により、小型ロボットへの搭載に好適な構成となる。第2軸モータを減速機付きモータで代用した場合も同様の効果がある。
【0014】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(2)前記第1軸モータ、前記第2軸モータ及び前記ディファレンシャルを、ユニットハウジングに固定し、ユニット化してもよい。或いは、前記第1軸モータ、前記減速機付きモータ及び前記ディファレンシャルを、ユニットハウジングに固定し、ユニット化してもよい。この構成であれば、産業用ロボットなどに対する駆動ユニットの組みつけを簡単かつ容易に行うことが出来る。
【0015】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(3)前記ディファレンシャルのバックラッシを調整する調整部を備えてもよい。前記ディファレンシャルは、前記第1入力ギヤである、第1サイドギヤと、前記第2入力ギヤである、第2サイドギヤと、前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤと噛み合う、ピニオンギヤと、を含んでもよい。前記調整部は、前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤの軸方向の位置を調整する第1調整部と、前記ピニオンギヤの軸方向の位置を調整する第2調整部を有してもよい。これらの構成によると、ディファレンシャルのバックラッシを抑えることが出来、駆動軸の先端位置精度の向上させることが出来る。
【0016】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(4)前記第1軸モータ及び前記第2軸モータは、前記ユニットハウジングに対してモータフランジを介してそれぞれ取り付けられてもよい。或いは、前記第1軸モータ及び前記減速付きモータは、前記ユニットハウジングに対してモータフランジを介してそれぞれ取り付けられてもよい。前記第1調整部は、前記ユニットハウジングと前記モータフランジとの間に介挿されたシム又は板状のバネでもよい。
【0017】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(5)前記ピニオンギヤは、前記第1軸出力部の支持孔に対して、移動可能に取り付けられていてもよい。前記第2調整部は、前記第1軸出力部の支持孔に対する前記ピニオンギヤの取り付け位置を、前記ピニオンギヤの外周に設けた皿バネにより調整する構造でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本明細書で開示される技術によれば、第2軸モータのみによるボールスプラインナットとボールネジナットの同期回転を可能にすることで、モータの制御的な同期遅れによる駆動軸先端位置精度の悪化を抑制することが出来る。また、第1軸モータの常時駆動を無くすることで、電力消費を抑えることが出来る。また。駆動装置の小型化が可能で、産業用ロボットへの搭載に好適な構成である。第2軸モータを減速機付きモータで代用した場合も同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】駆動ユニットの正面図
図2図1の拡大図
図3】第1伝達機構及びディファレンシャルの平面図
図4】第1伝達機構及びディファレンシャルの平面図
図5図1の拡大図
図6】駆動ユニットの他の形態を示す図
図7】動力の伝達経路を示す図
図8】動力の伝達経路を示す図
図9】動力の伝達経路を示す図
図10】産業用ロボットの正面図
図11】駆動装置の他の実施態様の正面図
図12図11の一部を拡大した図
図13】駆動装置の他の実施態様の正面図
図14】産業用ロボットの先端アーム部の従来構造を示す図
図15】スプライン付きボールネジ装置の従来構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
1.駆動ユニットSの説明
図1は駆動ユニットSの正面図(一部は断面で示す)である。駆動ユニットSは、駆動軸100と、駆動装置200Aを含む。尚、図1に示す符号150は、駆動ユニットSを支持する支持部材(ロボットに搭載する場合、アームを支持部材として使用する)である。支持部材150は、金属製であって、例えば、箱型の断面形状である。図1では、箱型をなす4壁面のうち、上面壁160、下面壁170のみ図示している。
【0021】
駆動軸100は、上下方向の直線軸である。駆動軸100には、ボールネジ溝101と、ボールスプライン溝102が形成されている。
【0022】
駆動軸100は、外周面に、ボールネジナット110と、ボールスプラインナット120を有している。この実施態様では、ボールネジナット110が上、ボールスプラインナット120が下に位置している。
【0023】
ボールネジナット110はボールネジ溝101に螺合し、ボールスプラインナット120はボールスプライン溝102とボールスプライン結合する。
【0024】
ボールネジナット110は、第1軸受け115を介して、支持部材150の上面壁160に回転可能に支持されている。ボールスプラインナット120は、第2軸受け125を介して、支持部材150の下面壁170に回転可能に支持されている。
【0025】
駆動軸100は、ボールネジナット110の回転により、上下に移動し、ボールスプラインナット120の回転により、軸回りに回転(軸線Mを中心とする回転)する。この明細書では、駆動軸100の上下移動を第1軸とよび、駆動軸100の軸回りの回転を第2軸と呼ぶ。
【0026】
駆動軸100が軸回りに回転すると、駆動軸100とボールネジナット110は相対回転するから、駆動軸100を回転のみさせる場合(上下方向には移動させない)、ボールネジナット110とボールスプラインナット120を同期回転させる必要がある。
【0027】
駆動装置200Aは、ボールネジナット110とボールスプラインナット120の同期回転に、ディファレンシャルを用いた、機械同期式の駆動装置である。
【0028】
駆動装置200Aは、ディファレンシャル300と、第1軸モータ410と、第2軸モータ420と、第1伝達機構500と、第2伝達機構600と、を含む。
【0029】
ディファレンシャル300は、図2に示すように、第1サイドギヤ310、第2サイドギヤ320、2つのピニオンギヤ330A、330B及び第1軸出力部350を含み、減速比が2の差動歯車装置である。減速比は、入力ギヤ(この例では、第1サイドギヤ310又は第2サイドギヤ320)の回転速度と出力軸(この例では、第1軸出力部350)の回転速度の比で表される。
【0030】
第1軸出力部350は、各ギヤを収容する略筒形状である。第1サイドギヤ310は、第1入力ギヤであり、第1軸モータ410のモータ軸411が直結している。第2サイドギヤ320は、第2入力ギヤであり、第2軸モータ420のモータ軸421が直結している。
【0031】
尚、この実施態様では、図2に示すように、第1軸モータ410、第2軸モータ420が同一直線L上に配置されており、2つのモータ軸411、421が同一直線L上で一致している。
【0032】
2つのサイドギヤ310、320と、2つのピニオンギヤ330A、330Bは、軸が直交しており、互いに噛み合っている。この実施態様では、2つのサイドギヤ310、320は上下方向を軸、2つのピニオンギヤ330A、330Bは、水平方向を軸としている。
【0033】
第1軸出力部350は、2つのピニオンギヤ330A、330Bに対応して、2つの支持孔353A、353Bを有している。2つの支持孔353A、353Bは、水平方向の穴であり、2つのピニオンギヤ330A、330Bの軸部335が位置している。
【0034】
各ピニオンギヤ330A、330Bは、各支持孔353A、353Bに対して、支持ベアリング355を介して回転可能に支持されている。
【0035】
第1軸モータ410を駆動し第1サイドギヤ310が回転すると、ピニオンギヤ330A、330Bに動力が伝達される。これにより、ピニオンギヤ330A、330Bは、自転しつつ、中心軸Lを中心として公転する結果、第1軸出力部350が中心軸Lを中心に回転する。
【0036】
同様に、第2軸モータ420を駆動し第2サイドギヤ320が回転すると、ピニオンギヤ330A、330Bに動力が伝達される。これにより、ピニオンギヤ330A、330Bは自転しつつ、中心軸Lを中心として公転する結果、第1軸出力部350が中心軸Lを中心に回転する。
【0037】
このように、第1軸モータ410、第2軸モータ420のうちいずれか、又は双方を駆動源として、ディファレンシャル300の第1軸出力部350を、中心軸Lを中心に回転させることが出来る。
【0038】
第1伝達機構500は、ディファレンシャル300の第1軸出力部350から駆動軸100のボールネジナット110に対して動力を伝達する。この実施態様では、図1に示すように、第1伝達機構500は、第1プーリ510、第2プーリ520、第1ベルト530及びテンショナ550から構成されている。
【0039】
第1プーリ510は、ディファレンシャル300の第1軸出力部350に固定され、第2プーリ520は、駆動軸100のボールネジナット110に固定されている。
【0040】
図3に示すように、第1ベルト530は、第1プーリ510、第2プーリ520を掛け渡し、テンショナ550は、第1ベルト530に張力を付与する。
【0041】
図3において、ディファレンシャル300は、2個のピニオンギヤ330A、330Bを使用した構造を示しているが、図4に示すように4個のピニオンギヤ330A~330Dを使用した構造にしてもよい。
【0042】
ディファレンシャル300の第1軸出力部350が中心線Lを中心に回転すると、第1プーリ510、第1ベルト530、第2プーリ520を介して動力が伝達し、駆動軸100のボールネジナット110を回転させることが出来る。
【0043】
第2伝達機構600は、第2軸モータ420のモータ軸421から、駆動軸100のボールスプラインナット120に対して動力を伝達する。この実施態様では、図1に示すように、第2伝達機構600は、第1プーリ610、第2プーリ620、第2ベルト630及びテンショナ650から構成されている。
【0044】
第1プーリ610は、第2軸モータ420のモータ軸421に固定され、第2プーリ620は、駆動軸100のボールスプラインナット120に固定されている。第2ベルト630は、第1プーリ610、第2プーリ620を掛け渡し、テンショナ650は、第2ベルト630に張力を付与する。
【0045】
第2軸モータ420のモータ軸421が回転すると、第1プーリ610、第2ベルト630、第2プーリ620を介して動力が伝達し、駆動軸100のボールスプラインナット120を回転させることが出来る。
【0046】
2.プーリを利用したディファレンシャルの内蔵構造
図5に示すように、支持部材150の上面壁160、下面壁170は、円形の開口161、171を有している。第1軸モータ410は、モータ軸411を下に向けつつ、上面壁160に固定され、第2軸モータ420は、モータ軸421を上に向けつつ、下面壁170に固定されている。
【0047】
第1プーリ510は、上下方向において、支持部材150の上面壁160と下面壁170の間に、位置している。第1プーリ510は、筒型であり、ディファレンシャル300を内部に収めている。
【0048】
第1プーリ510に、ディファレンシャル300を内蔵することで、駆動装置200Aを小型化することが出来る。
【0049】
尚、図6に示すように、ディファレンシャル300は、第1プーリ510の外部(上部)に、配置することも可能である。
【0050】
3.グリスの飛散防止に関する構造
図5に示すように、第1プーリ510は、底面壁511の中央に、軸孔512を有している。軸孔512には、第2軸モータ420のモータ軸421が貫通している。第2軸モータ420のモータ軸421には、第2伝達機構600の第1プーリ610が固定されている。
【0051】
第2伝達機構600の第1プーリ610の上端部は、第1伝達機構500の第1プーリ510の軸孔512の内側に位置している。
【0052】
第1伝達機構500の第1プーリ510の軸孔512と、第2伝達機構600の第1プーリ610の上端部の間には、第1ベアリングB1が配置されている。
【0053】
第1ベアリングB1の配置により、ディファレンシャル300の回転に伴い、ディファレンシャル300に塗布したグリスが、ディファレンシャル300を内蔵した第1プーリ510の軸孔512から漏れることを抑制できる。
【0054】
また、支持部材150の上面壁160の下面には、開口を囲むようにして、円形のフランジ165が設置されている。第1プーリ510の周壁513の上端部は、フランジ165の内側に位置している。
【0055】
円形のフランジ165と第1プーリ510の周壁513の上端部には、第2ベアリングB2が配置されている。第2ベアリングB2の配置により、ディファレンシャル300の回転に伴い、ディファレンシャル300に塗布したグリスが、ディファレンシャル300を内蔵した第1プーリ510の周壁513の上端部の隙間から漏れることを抑制できる。
【0056】
4.駆動ユニットSの動作説明
(A)第1軸移動(上下方向の移動)
駆動軸100を第1軸移動(上下移動)する場合、第1軸モータ410を回転駆動する。第1軸モータ410が回転駆動すると、ディファレンシャル300の第1サイドギヤ310⇒ピニオンギヤ330A、330B⇒第1軸出力部350⇒第1伝達機構500の第1プーリ510⇒第1ベルト530⇒第2プーリ520を経由して動力が伝わり、駆動軸100のボールネジナット110が回転する。ボールネジナット110の回転により、駆動軸100は第1軸移動(上下移動)する。
【0057】
(B)第2軸移動(軸回りの回転)
駆動軸100を第2軸移動(軸線Mを中心とする回転)する場合、第2軸モータ420を回転駆動する。第2軸モータ420が回転駆動すると、第2軸モータ420のモータ軸421⇒第2伝達機構600の第1プーリ610⇒第2ベルト630⇒第2プーリ620を経由して動力が伝わり、駆動軸100のボールスプラインナット120が回転する。ボールスプラインナット120の回転により、駆動軸100は、軸回りに回転する。
【0058】
そして、第2軸モータ420が回転駆動すると、ディファレンシャル300の第2サイドギヤ320⇒ピニオンギヤ330A、330B⇒第1軸出力部350⇒第1伝達機構500の第1プーリ510⇒第1ベルト530⇒第2プーリ520を経由して動力が伝わり、駆動軸100のボールネジナット110が回転する。
【0059】
第2軸モータ420により、ボールスプラインナット120を回転させることに加えて、ディファレンシャル300を介してボールネジナット110を同期回転させることで、駆動軸100を第1軸移動(上下方向に移動)させず、第2軸移動(軸方向の回転)のみさせることが出来る。
【0060】
また、同期回転中に、第1軸モータ410を回転駆動し、ディファレンシャル300を介してボールネジナット110の回転速度を同期速度から増減調整することにより、第2軸動作(回転)と独立して第1軸動作(直動)を行うことも出来る。
【0061】
5.ボールネジナット110とボールスプラインナット120の同期回転条件
図7を参照して以下説明する。
(1)ボールネジナット110の回転速度N1
回転速度N1に関する条件は以下の通りである。
第2軸モータ420の回転数はA[rpm]とする。
第1軸モータ410の回転数はB[rpm]とする。
ディファレンシャル300の減速比は2である。
第1伝達機構500のプーリ回転比は1対R/2である。
尚、プーリ回転比は、「第2プーリ520のプーリ回転数」対「第1プーリ510のプーリ回転数」である。Rは正の実数である。
【0062】
このとき、ボールネジナット110の回転速度N1は、(1式)の通りである。
N1=(A+B)/R・・・・(1式)
【0063】
(2)ボールスプラインナット120の回転速度N2
回転速度N2に関する条件は以下の通りである。
第2軸モータ420の回転数はA[rpm]とする。
第2伝達機構600のプーリ回転比は1対Rである。
尚、プーリ回転比は、「第2プーリ620のプーリ回転数」対「第1プーリ610のプーリ回転数」である。Rは正の実数である。
【0064】
このとき、ボールスプラインナット120の回転速度N2は、(2式)の通りである。
N2=A/R・・・・(2式)
【0065】
第2軸モータ420の回転数がA[rpm]、第1軸モータ410の回転数がB=0[rpm]の時、N1=N2=A/R[rpm]であり、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R[rpm]で同期回転する。
【0066】
<R=1の場合(図8の場合)>
第1伝達機構500のプーリ回転比は1対1/2、第2伝達機構600のプーリ回転比は、1対1である。
【0067】
この場合、第2軸モータ420をA[rpm]として、ボールネジナット110とボールスプラインナット120を、メカ的にA[rpm]で同期回転させることが出来る。更に、第1軸モータ410をB[rpm]で回転駆動させると、B[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、駆動軸100を第2軸動作(回転)とは、独立して第1軸動作(上下移動)させることが出来る。
【0068】
<R=2の場合(図9の場合)>
第1伝達機構500のプーリ回転比は1対1、第2伝達機構600のプーリ回転比は、1対2である。
【0069】
この場合、第2軸モータ420をA[rpm]として、ボールネジナット110とボールスプラインナット120を、メカ的にA/2[rpm]で同期回転させることが出来る。更に、第1軸モータ410をB[rpm]で回転駆動すると、B/2[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、駆動軸100を第2軸動作(回転)とは、独立して第1軸動作(上下移動)させることが出来る。
【0070】
R=2の場合(図9)、R=1の場合(図8)に比べて、第2軸モータ420の回転数を減速(つまり、トルクを大きくする)して駆動軸100に伝達するから、第2軸モータ420の負荷イナーシャを減らすことが出来る。尚、負荷イナーシャは、負荷の慣性を、モータの回転軸回りの慣性モーメントに変換した値である。
【0071】
しかし、その反面、第1軸モータ410によるボールネジナット110の回転速度及び駆動軸100の上下移動速度は遅くなる。
【0072】
6.駆動ユニットSの適用例
駆動ユニットSは、例えば、産業用ロボット1000に、使用することが出来る。図10は、産業用ロボット1000の正面図(一部は断面で示す)である。産業用ロボット1000は、一例として、スカラロボット(水平多関節ロボット)である。
【0073】
産業用ロボット1000は、フロアF上に設置される略円柱状のアーム支持台1110と、アーム支持台1110に連結されたアーム1200と、駆動ユニットSからなる。
【0074】
アーム1200は、第1アーム1210と第2アーム1220からなる。第1アーム1210は、アーム支持台1110に取り付けられ、第1回転軸L1を中心として回転する。第2アーム1220は、第1アーム1210に取り付けられ、第2回転軸L2を中心に回転する。
【0075】
駆動ユニットSは、既に説明した通りであり、駆動軸100と、駆動装置200Aとを備える。駆動軸100は、第2アーム1220の先端部分に取り付けられている。
【0076】
駆動軸100は、ロボットの作業軸として使用され、先端(下端)部分には、ロボットハンドやエンドエフェクタが装着可能である。産業用ロボット1000は、駆動軸100の駆動により、ロボットハンドやエンドエフェクタを直動、回転させ、所定の作業を行うことが出来る。
【0077】
6.効果
この実施態様によると、以下の効果を奏することが出来る。
(1)第2軸モータ420のみによる同期回転により、制御的な同期の遅れによる駆動軸100の先端の位置精度の悪化を抑えることが出来る。産業用ロボット1000に適用した場合、ロボット作業軸先端精度の悪化を抑えることが出来る。
【0078】
(2)第2軸モータ駆動時、第1軸モータ410を常に同期回転しなくてもよく、駆動停止(非回転)にすることも出来る。そのため、電力消費を抑えることが出来る。
【0079】
(3)第1軸モータ410のモータ軸411をディファレンシャル300の第1サイドギヤ310に直結し、第2軸モータ420のモータ軸421をディファレンシャル300の第2サイドギヤ320に直結している。モータ軸411、421をサイドギヤ310、320に直結することで、動力を中継する部品(例えば、ベルト、プーリ)を削減することが出来、部品点数を少なくすることが出来る。加えて、動力を伝達する軸の長さが、短くなるので、駆動装置200Aを小型化、軽量化することが出来る。特に、この実施態様では、第1プーリ510内に、ディファレンシャル300を収容することで、駆動装置200Aをコンパクト化することが出来る。加えて、ディファレンシャル300から垂れるグリスを、第1プーリ510内に閉じこめることが出来ので、ディファレンシャル300からのグリス垂れを抑制することが出来る。
【0080】
また、スカラロボットなどの産業用ロボットに対して、駆動ユニットSを搭載する場合、サイズや重量の制約があるから、装置を軽量化、小型化することが望ましい。この構成は、駆動装置20Aを小型化、軽量化できるため、産業用ロボット1000への搭載に好適な構成である。
【0081】
(4)また、プーリ回転比を守れば、第2軸モータ回転で、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、メカ的に同期回転を行い、第1軸モータ410、第2軸モータ420、ボールネジの仕様、目標性能に合わせて、Rを定めることで、用途に応じた性能を発揮することが出来る。
【0082】
軽負荷仕様の場合、例えば、R=1(図8)とし、第1伝達機構500の減速比を「1/2」にすることで、第1軸モータ410の回転を減速させずに、駆動軸100に伝えることが出来る。これにより、駆動軸100の第1軸移動速度(上下移動速度)を上げることが出来る。
【0083】
重負荷仕様の場合、例えば、R=2(図9)とし、第2伝達機構600の減速比を「2」にすることで、第2軸モータ420の回転を減速させて、駆動軸100に伝えることが出来る。これにより、第2軸モータ回りの負荷イナーシャを減らすことが出来る。負荷イナーシャは、第2軸モータ420を、減速機付きモータに変更する方法でも、減らすことが出来る。
【0084】
<実施形態2>
図11は、駆動装置200Bの正面図である。実施形態2の駆動装置200Bの基本的な構成は、実施形態1の駆動装置200Aと同じであり、同じ部品には、同一の符号を付して説明を省略する。以下、実施形態1と相違する部分について、説明する。
【0085】
実施形態2の駆動装置200Bは、第1軸モータ410、第2軸モータ420、プーリ510、ディファレンシャル300をユニットハウジング450に取り付け、こられの部品をユニット化している。
【0086】
具体的に説明すると、ユニットハウジング450は、一例として、上下方向に貫通する筒型であり、ディファレンシャル300、第1伝達機構500の第1プーリ510、第2伝達機能600の第1プーリ610を収容している。尚、ベルト530、630を引き出すため、対応する箇所は開口している。
【0087】
そして、ユニットハウジング450の底面部分には、第2軸モータ420がモータ軸421を上方に向けた状態で取り付けられ、ユニットハウジング450の上面部分には、第1軸モータ410がモータ軸411を下方に向けた状態で取り付けられている。
【0088】
この実施態様では、ユニットハウジング450の端面450A、450Bにモータフランジ415、425を突き合わせた状態で、ボルト締めにより(ボルトBT1)、第1軸モータ410、第2軸モータ420をユニットハウジング450にそれぞれ固定している。
【0089】
また、第1軸モータ410のモータフランジ415と、ユニットハウジング450の上端面450Aの間に、シム460を設けている。シム460は、本発明の「第1調整部」の一例である。
【0090】
シム460の挿入枚数を調整することにより、ユニットハウジング450に対する第1軸モータ410の上下方向の位置を調整できる。そのため、第1軸モータ410のモータ軸411に直結された第1サイドギヤ310の上下方向(サイドギヤの軸方向)の位置を調整することが出来る。
【0091】
同様に、第2軸モータ420のモータフランジ425と、ユニットハウジング450の下端面450Bの間に、シム470を設けている。シム470は、本発明の「第1調整部」の一例である。
【0092】
シム470の挿入枚数を調整することにより、ユニットハウジング450に対する第2軸モータ420の上下方向の位置を調整できる。これにより、第2軸モータ420のモータ軸421に直結された第2サイドギヤ320の上下方向(サイドギヤの軸方向)の位置を調整することが出来る。
【0093】
また、この実施態様では、図12に示すように、ピニオンギヤ330Bの軸部335の外周面に、皿バネ470が取り付けられており、第1軸出力部350に対するピニオンギヤ330Bの水平方向(ピニオンギヤの軸方向)の取り付け位置を、皿バネ470により調整することができる。皿バネ470は、本発明の「第2調整部」の一例である。
【0094】
具体的に説明すると、図12に示すように、ピニオンギヤ330Bの軸部335は、第1軸出力部350の支持孔353Bを貫通している。ピニオンギヤ330Bの軸部335の外周には、支持ベアリング355が取り付けられており、ピニオンギヤ330Bは、支持孔353Bに対して回転自在となっている。
【0095】
皿バネ470は、第1軸出力部350の支持孔353B内にあって、支持孔先端に設けられた突起351と、支持ベアリング355の間に位置している。
【0096】
また、第1軸出力部350の外周面には、調整プレート370が取り付けられている。調整プレート370は、ボルトBT2による締め込み量の調整により、第1軸出力部350に対する水平方向の位置を調整することが出来る。調整プレート370には、棒状の操作片371が設けられている。
【0097】
ボルトBT2により調整プレート370の水平方向の位置を調整すると、棒状の操作片371が、皿バネ470の反力に抗して支持ベアリング355を押し込み、皿バネ470が弾性変形する結果、ピニオンギヤ330Bは、支持孔353B内において、支持ベアリング355と一体的に水平方向に移動する。
【0098】
このように、皿バネ470の反力、弾性力を利用して、第1軸出力部350に対するピニオンギヤ330Bの水平方向(ピニオンギヤの軸方向)の位置を調整することが出来る。
【0099】
また、もう一方のピニオンギヤ330Aも同様の方法で、第1軸出力部350に対する水平方向(ピニオンギヤの軸方向)の位置調整することが出来る。
【0100】
図12に示す符号SWは、セットスクリューである。セットスクリューSWは、第1プーリ510の周壁に形成されたスクリュー孔に装着され、ボルトBT2の頭部を軸方向(図12の水平方向)から押して、ボルトBT2の位置を固定する機能を果たす。
【0101】
セットスクリューSWを利用してボルトBT2の位置を固定することで、ボルトBT2の緩みを抑え、位置調整後、ピニオンギヤ330Bの位置が動くことを抑制できる。
【0102】
尚、ユニットハウジング450には、ボルトBT2、セットスクリューSWの位置に対応して、開口部451、452が上下に設けられており、開口部451、452を通じて、ピニオンギヤ330Bの位置調整(つまり、ボルトBT2の締め込みと、セットスクリューSWの組み付け)を行うことが出来る。
【0103】
尚、上段側の開口部451は、ディファレンシャル300のグリスの漏れを防止する観点から、調整作業し終了後、塞ぐことが望ましい。
【0104】
実施形態2の駆動装置200Bは、駆動装置200Bをユニット化した後、ロボットアームに対して取り付ける前に、ディファレンシャル300のバックラッシ調整を行う。つまり、サイドギヤ310、320の位置調整とピニオンギヤ330A、330Bの位置調整を行う。
【0105】
その後、バックラッシ調整済みの駆動装置200Bは、産業用ロボットのアームなど、取り付け対象箇所に組み付けされる。
【0106】
実施形態2は、ディファレンシャル300のバックラッシを小さくできる点で効果的である。ディファレンシャル300のバックラッシを抑えることで、駆動軸100のがたつきを抑えることが可能となり、駆動軸100の先端位置精度が向上する。
【0107】
<実施形態3>
図13は、駆動装置200Cの正面図である。実施形態3の駆動装置200Cは、実施形態2の駆動装置200Bから以下の点を変更している。
【0108】
具体的に説明すると、駆動装置200Cは、駆動装置200Bに対して、シム460を皿バネ480に変更している。この構成は、ボルトBT3の締め込み量で、サイドギヤ310、320の位置調整が可能であるから、第1軸モータ410、第2軸モータ420を外さないで、バックラッシ調整を行うことが出来る。皿バネ470は、本発明の「第2調整部」の一例である。
【0109】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0110】
実施形態1~3では、駆動ユニットSを、産業用ロボット1000に、適用した例を示した。駆動ユニットSの用途は、産業用ロボット1000に限定されない。他の用途に使用することも無論可能である。
【0111】
実施形態1~3の第2軸モータ420は、減速機付きモータに、変更してもよい。減速機付きモータに変更した場合、減速後のモータ出力軸を、第2サイドギヤに直結する構造にすればよい。減速機付きモータに変更することで、モータの負荷イナーシャを下げることができる。
【符号の説明】
【0112】
100 駆動軸
110 ボールネジナット
120 ボールスプラインナット
200A~200C 駆動装置
300 ディファレンシャル
410 第1軸モータ
420 第2軸モータ
500 第1伝達機構
600 第2伝達機構
S 駆動ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15