(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158798
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】駆動ユニット、産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
F16H 37/12 20060101AFI20241031BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16H37/12 Z
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074327
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT17
3C707HT20
3C707HT25
3C707HT26
3J062AA38
3J062AB06
3J062AB12
3J062AB22
3J062AC04
3J062CA06
3J062CA08
3J062CD04
3J062CD12
3J062CD22
3J062CG17
3J062CG83
(57)【要約】 (修正有)
【課題】駆動軸の回転トルクを確保しつつ、軸方向の移動速度低下を抑制する。
【解決手段】駆動ユニットは、ボールネジナットとボールスプラインナットとを有する駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動装置と、を含み、前記駆動装置は、第1軸モータと、第2軸モータと、第2軸減速機構と、ディファレンシャルと、を含む。前記第2軸モータの回転を、前記第2軸減速機構を介して前記ボールスプラインナットに減速して伝達することに加え、前記ディファレンシャルを介して前記ボールネジナットに伝達することにより、前記第2軸モータにより前記ボールスプラインナットと前記ボールネジナットを機構的に同期回転させる構成である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットであって、
ボールネジナットとボールスプラインナットとを有する駆動軸と、
前記駆動軸を駆動する駆動装置と、を含み、
前記駆動装置は、
第1軸モータと、
第2軸モータと、
第2軸減速機構と、
ディファレンシャルと、を含み、
前記第2軸モータの回転を、前記第2軸減速機構を介して前記ボールスプラインナットに減速して伝達することに加え、前記ディファレンシャルを介して前記ボールネジナットに伝達することにより、前記第2軸モータにより前記ボールスプラインナットと前記ボールネジナットを機構的に同期回転させる構成であり、
前記ディファレンシャルは、
前記第1軸モータにより回転駆動される第1入力部と、
前記第2軸モータにより回転駆動される第2入力部と、
前記第1入力部及び前記第2入力部の回転に応答して前記ボールネジナットに対して回転出力を行う第1軸出力部と、を含み、
前記ディファレンシャルは、
前記第2入力部の入力回転数を第2減速比Pで除した回転数に対して、前記第1入力部の入力回転数を第1減速比Qで除した回転数を加えた回転数を前記1軸出力部より出力し、かつ、前記第2減速比Pと前記第1減速比Qは、|P|>Qである、駆動ユニット。
【請求項2】
前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記駆動軸上に配置された前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構と、を備え、
前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由しつつ、前記第2伝達機構により、前記中空減速機の入力部に入力される構成であり、
前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、
前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、
前記中空減速機の減速比をR3とし、
前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、
前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、
R1×P=±R2×R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3R6[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項3】
前記第2軸減速機構にベルト減速機構を用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、
前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記ボールスプラインナット間で回転を伝達する第2伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、
前記第2伝達機構は、多段プーリを利用して、回転入力を多段で減速する前記ベルト減速機構であり、
前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由し、前記第2伝達機構によって多段減速されつつ、前記ボールスプラインナットに入力される構成であり、
前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、
前記ベルト減速機構である前記第2伝達機構の合計プーリ回転比をR2とし、
前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、
前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、
R1×P=R2の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R2R6[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項4】
前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記駆動軸上に配置された前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、
前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由せず、前記第2伝達機構により、前記中空減速機の入力部に入力される構成であり、
前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、
前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、
前記中空減速機の減速比をR3とし、
前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、
前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、
R1R6P=±R2R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/R6P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項5】
前記第2軸減速機構にベルト減速機構を用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、
前記第2軸モータと前記ボールスプラインナット間で回転を伝達する第2伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、
前記第2伝達機構は、多段プーリを利用して、回転入力を多段で減速する前記ベルト減速機構であり、
前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの第2入力部を経由せず、前記第2伝達機構によって多段減速されつつ、第2軸のボールスプラインナットに直接入力される構成であり、
前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、
前記ベルト減速機構である前記第2伝達機構の合計プーリ回転比をR2とし、
前記第3伝達機構のプーリ回転比をR5とし、
前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、
R1R6P=R2の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R2[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/R6P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項6】
前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、
プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、を備え、
前記第1軸モータのモータ軸が前記ディファレンシャルの前記第1入力部に対して直結され、
前記第2軸モータのモータ軸が前記ディファレンシャルの前記第2入力部に対して直結された構成であり、
前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、
前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、
前記中空減速機の減速比をR3として、
R1×P=±R2×R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項7】
請求項2、請求項4及び請求項6のうちいずれか一項に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、
ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含む、波動歯車型であり、
前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、
前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、
前記第2サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、
前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、
前記第1サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用する、又は、
前記第1サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、
前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、
前記第2サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用する、駆動ユニット。
【請求項8】
請求項2、請求項4及び請求項6のうちいずれか一項に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、
太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア及び内歯車を含む、遊星歯車型であり、
前記内歯車を前記第1入力部として使用し、
前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、
前記遊星キャリアを前記第1軸出力部として使用する、又は、
前記遊星キャリアを前記第1入力部として使用し、
前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、
前記内歯車を前記第1軸出力部として使用する、駆動ユニット。
【請求項9】
請求項3又は請求項5の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、
ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含む、波動歯車型であり、
前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、
前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、
前記第2サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、
前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、
前記第1サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用する、駆動ユニット。
【請求項10】
請求項3又は請求項5に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、
太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア及び内歯車を含む、遊星歯車型であり、
前記内歯車を前記第1入力部として使用し、
前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、
前記遊星キャリアを前記第1軸出力部として使用する、駆動ユニット。
【請求項11】
前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた請求項1に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、中空タイプの波動歯車型であり、前記駆動軸の軸上において、前記中空減速機と軸方向に並んで配置されている、駆動ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の駆動ユニットであって、
第3伝達機構と、
第4伝達機構と、を備え、
前記第3伝達機構は、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記第2サーキュラスプライン間で回転を伝達し、
前記第4伝達機構は、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記中空減速機の入力部間で回転を伝達し、
前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含み、
前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、
前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、
前記第1サーキュラスプラインは、前記ボールネジナットに連結されており、
前記ウエーブジェネレータは、前記中空減速機の入力部に取り付けられた前記第4伝達機構のプーリに連結されており、
前記中空減速機の減速比をR3とし、
前記第1サーキュラスプラインを固定、前記ウエーブジェネレータを入力、前記第2サーキュラスプラインを出力とした場合の前記ディファレンシャルの減速比をR4とし、
前記第3伝達機構のプーリ回転比をR5とし、
前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、
R4+1=R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R3R6[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R3R5/R4)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項13】
請求項11に記載の駆動ユニットであって、
前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含み、
前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、
前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、
前記第1サーキュラスプラインは、前記ボールネジナットに連結されており、
前記第1軸モータは、
前記駆動軸の軸上に配置された中空モータであり、
前記第1軸モータのロータは、前記第2サーキュラスプラインに連結されており、
前記第2軸モータは、
前記駆動軸の軸上に配置された中空モータであり、
前記第2軸モータのロータは、前記中空減速機の入力部及び前記ウエーブジェネレータに直結されている、駆動ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の駆動ユニットであって、
前記中空減速機の減速比をR3とし、
前記第1サーキュラスプラインを固定、前記ウエーブジェネレータを入力、前記第2サーキュラスプラインを出力とした場合の前記ディファレンシャルの減速比をR4として、
R4+1=R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、
前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R3[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R3/R4)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、駆動ユニット。
【請求項15】
駆動軸をロボットの作業軸として使用する、請求項1又は請求項2に記載の駆動ユニットを備えた、産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールスプラインナットによる回転とボールネジナットによる直動が可能な駆動軸の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、産業用ロボットのアーム構造に関し、特に多関節型水平アームの最先端に設けられて、末端にロボットハンドやその他の作業具等様々のエンドエフェクタを装着して各種ロボット作業を遂行可能にする縦アーム軸を上下移動並びに回転作動させる駆動構造に関し、以下の技術を開示する。
【0003】
図57は、特許文献1における縦アーム軸の駆動構造を示す図である。
縦アーム軸12の外周面にはボールねじ溝34とボールスプライン溝36とがその全長に亘って重設されている。このボールねじ溝34と螺合するボールネジナット14と、ボールスプライン溝36と噛合するボールスプラインナット18とが縦アーム軸12に挿入されて、最先端アーム10内に夫々上方、下方に各軸受20を介して回転可能に支持されている。ボールネジナット14はその外周に歯付プーリを一体形成しており、ボールスプラインナット18には他の歯付プーリ16を固定している。これらの歯付プーリ14、16は夫々歯付ベルト30、32を介してサーボモータ22、26に連結された駆動側歯付プーリ24、28に連結されている。
【0004】
縦アーム軸12は、外周面に、ボールねじ溝34とボールスプライン溝36を有しており、ボールスプラインナット18による回転とボールネジナット14による直動が可能である。しかし、サーボモータ26を駆動させてボールスプラインナット18を回転し、縦アーム軸12が回転すると、縦アーム軸12にあるボールねじ溝34によって、縦アーム軸12がボールネジナット14に対して、上下してしまう。
特許文献1の場合、縦アーム軸12の回転と直動にそれぞれサーボモータ22、26を有する構造であり、縦アーム軸12を回転のみさせる場合には、ボールネジナット14とボールスプラインナット18の同期回転が必要で、2つのサーボモータ22、26を制御で同期回転させている。
【0005】
しかし、制御的な同期の遅れがある場合、ロボット作業軸先端の位置精度の悪化が起きる。極端な例では、縦アーム軸12を回転のみさせたいのに、制御的な同期遅れで、縦アーム軸12が微小に上下する可能性がある。また、縦アーム軸12を上下移動させる場合、2つのサーボモータ22、26を制御で同期回転し、そのうえで、サーボモータ22の回転数を調整する。この場合、サーボモータ22は、常に駆動した状態になるから、負荷が掛り続ける。
【0006】
また、下記特許文献2には、スプライン付きボールねじ装置において、ディファレンシャルギヤユニット(
図58に示す符号54)を用いて、ボールネジナットとボールスプラインナットをメカ的に同期させる構成が開示されている。
図58において、符号20はボール螺子軸、符号21はボール螺子ナット、符号22はボールスプラインナットである。また、符号55は差動駆動用の電動モータ、符号56は主駆動用の電動モータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63-77675号公報
【特許文献2】特開2011-174603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
駆動軸の回転トルクを大きくするには、電動モータ56の回転を減速機構により減速してボールスプラインナットに伝達する方法が考えられる。減速機構の一例として、ボールスプラインナットに直結される中空減速機やベルト減速機構が考えられる。しかし、特許文献2に記載のディファレンシャル54は、減速比Pと減速比Qが等しい(P=Q=2)。減速比Qは、電動モータ55により駆動されるディファレンシャルギヤ54aの入力回転に対するディファレンシャル出力部54cの減速比であり、減速比Pは、電動モータ56により駆動されるディファレンシャルギヤ54bの入力回転に対するディファレンシャル出力部54cの減速比である。
【0009】
従って、減速機構を設けた場合、ボールスプラインナットとボールネジナットの同期回転のため、ボールネジナットの回転が遅くなり、駆動軸の軸方向の移動速度が低下する問題があった。
【0010】
本願発明は、産業用ロボットの作業軸等に使用される駆動軸について、回転トルクを確保しつつ、軸方向の移動速度低下を抑制することを課題とする。この課題は、駆動軸を産業用ロボットの作業軸として使用する場合に限らず、駆動軸を他の用途に使用する場合も、同様である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)駆動ユニットは、ボールネジナットとボールスプラインナットとを有する駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動装置と、を含む。前記駆動装置は、第1軸モータと、第2軸モータと、減速機構と、ディファレンシャルと、を含み、前記第2軸モータの回転を、前記減速機構を介して前記ボールスプラインナットに減速して伝達することに加え、前記ディファレンシャルを介して前記ボールネジナットに伝達することにより、前記第2軸モータにより前記ボールスプラインナットと前記ボールネジナットを機構的に同期回転させる構成である。
【0012】
前記ディファレンシャルは、前記第1軸モータにより回転駆動される第1入力部と、前記第2軸モータにより回転駆動される第2入力部と、前記第1入力部及び前記第2入力部の回転に応答して前記ボールネジナットに対して回転出力を行う第1軸出力部と、を含む。
【0013】
前記ディファレンシャルは、前記第2入力部の入力回転数を第2減速比Pで除した回転数に対して、前記第1入力部の入力回転数を第1減速比Qで除した回転数を加えた回転数を前記1軸出力部より出力し、かつ、前記第2減速比Pと前記第1減速比Qは、|P|>Qである。||の記号は絶対値である。尚、ディファレンシャルが第2入力部に対する入力回転に対してこれを第1軸出力部に逆回転方向に出力する場合、Pは負の値をとる。
【0014】
駆動ユニットの効果は以下の通りである。
この構成では、第2軸モータの回転を、減速機構を介してボールスプラインナットに減速して伝達することにより、第2軸動作中(駆動軸の回転)の回転トルクを大きくできる。そのため、第2軸動作中(駆動軸の回転)の回転方向の剛性が向上し、大きなイナーシャを持つことが出来る。しかも、ディファレンシャルは、|P|>Qであるから、特許文献2の構成(P=Qのディファレンシャルを用いる場合)に比べて、ボールネジナットの回転数が落ちず、第1軸動作中(駆動軸の軸移動)の移動速度が低下することを抑制できる。
【0015】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(2)前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記駆動軸上に配置された前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構と、を備え、前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由しつつ、前記第2伝達機構により、前記中空減速機の入力部に入力される構成であり、前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、前記中空減速機の減速比をR3とし、前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、R1×P=±R2×R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3R6[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構成でもよい。
【0016】
ここで±は、ディファレンシャルが第2入力部に対する入力回転に対して、これを第1軸出力部に逆回転方向に出力する場合、Pは負の値をとるので、この場合は-をとることを表している。
【0017】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(3)前記第2軸減速機構にベルト減速機構を用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記ボールスプラインナット間で回転を伝達する第2伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、前記第2伝達機構は、多段プーリを利用して回転入力を多段で減速する前記ベルト減速機構であり、前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由し、前記第2伝達機構によって多段減速されつつ、前記ボールスプラインナットに入力される構成であり、前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、前記ベルト減速機構である前記第2伝達機構の合計プーリ回転比をR2とし、前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6とし、R1×P=R2の同期回転条件を満たし、前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R2R6[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる。
【0018】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(4)前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記駆動軸上に配置された前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの前記第2入力部を経由せず、前記第2伝達機構により、前記中空減速機の入力部に入力される構成であり、前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、前記中空減速機の減速比をR3とし、前記第3伝達機構のプーリ回転比R5とし、前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、R1R6P=±R2R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/R6P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構成でもよい。
【0019】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(5)前記第2軸減速機構にベルト減速機構を用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、前記第2軸モータと前記ボールスプラインナット間で回転を伝達する第2伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記ディファレンシャルの前記第1入力部間で回転を伝達する第3伝達機構と、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記ディファレンシャルの前記第2入力部間で回転を伝達する第4伝達機構とを備え、前記第2伝達機構は、多段プーリを利用して回転入力を多段で減速する前記ベルト減速機構であり、前記第2軸モータ出力が、前記ディファレンシャルの第2入力部を経由せず、前記第2伝達機構によって多段減速されつつ、第2軸のボールスプラインナットに直接入力される構成であり、前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、前記ベルト減速機構である前記第2伝達機構の合計プーリ回転比をR2とし、前記第3伝達機構のプーリ回転比をR5とし、前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6とし、R1R6P=R2の同期回転条件を満たし、前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R2[rpm]にて、同期回転し、
前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/R6P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構造でもよい。
【0020】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(6)前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第1軸出力部と前記ボールネジナット間で回転を伝達する第1伝達機構と、プーリとベルトにより、前記ディファレンシャルの前記第2入力部と前記中空減速機との間で回転を伝達する第2伝達機構と、を備え、前記第1軸モータのモータ軸が前記ディファレンシャルの前記第1入力部に対して直結され、前記第2軸モータのモータ軸が前記ディファレンシャルの前記第2入力部に対して直結された構成であり、前記第1伝達機構のプーリ回転比をR1とし、前記第2伝達機構のプーリ回転比をR2とし、前記中空減速機の減速比をR3として、R1×P=±R2×R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、±A/R2R3[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3Q/P)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構成でもよい。
【0021】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(7)(2)、(4)及び(6)のいずれか一項に記載の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含む、波動歯車型であり、前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、前記第2サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、前記第1サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用してもよい。又は、前記第1サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、前記第2サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用してもよい。
【0022】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(8)(2)、(4)及び(6)のいずれか一項に記載の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア及び内歯車を含む、遊星歯車型であり、前記内歯車を前記第1入力部として使用し、前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、前記遊星キャリアを前記第1軸出力部として使用してもよい。又は、前記遊星キャリアを前記第1入力部として使用し、前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、前記内歯車を前記第1軸出力部として使用してもよい。
【0023】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(9)(3)又は(5)の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含む、波動歯車型であり、前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、前記第2サーキュラスプラインを前記第1入力部として使用し、前記ウエーブジェネレータを前記第2入力部として使用し、記第1サーキュラスプラインを前記第1軸出力部として使用してもよい。
【0024】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(10)(3)又は(5)に記載の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア及び内歯車を含む、遊星歯車型であり、前記内歯車を前記第1入力部として使用し、前記太陽歯車を前記第2入力部として使用し、前記遊星キャリアを前記第1軸出力部として使用してもよい。
【0025】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(11)前記駆動軸の軸上にあって前記ボールスプラインナットに直結された中空減速機を、前記第2軸減速機構として用いた(1)に記載の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、中空タイプの波動歯車型であり、前記駆動軸の軸上において、前記中空減速機と軸方向に並んで配置された、構成でもよい。
【0026】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(12)(11)に記載の駆動ユニットであって、第3伝達機構と、第4伝達機構と、を備え、前記第3伝達機構は、プーリとベルトにより、前記第1軸モータと前記第2サーキュラスプライン間で回転を伝達し、前記第4伝達機構は、プーリとベルトにより、前記第2軸モータと前記中空減速機の入力部間で回転を伝達し、前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含み、前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、前記第1サーキュラスプラインは、前記ボールネジナットに連結されており、前記ウエーブジェネレータは、前記中空減速機の入力部に取り付けられた前記第4伝達機構のプーリに連結されており、前記中空減速機の減速比をR3とし、前記第1サーキュラスプラインを固定、前記ウエーブジェネレータを入力、前記第2サーキュラスプラインを出力とした場合のディファレンシャルの減速比をR4とし、前記第3伝達機構のプーリ回転比をR5とし、前記第4伝達機構のプーリ回転比をR6として、R4+1=R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R3R6[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、B/(R3R5/R4)[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構成でもよい。
【0027】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(13)(11)に記載の駆動ユニットであって、前記ディファレンシャルは、ウエーブジェネレータ、フレクスプライン、第1サーキュラスプライン及び第2サーキュラスプラインを含み、前記第1サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数より2枚多く、前記第2サーキュラスプラインの歯数は前記フレクスプラインの歯数と同数であり、前記第1サーキュラスプラインは、前記ボールネジナットに連結されており、前記第1軸モータは、前記駆動軸の軸上に配置された中空モータであり、前記第1軸モータのロータは、前記第2サーキュラスプラインに連結されており、前記第2軸モータは、前記駆動軸の軸上に配置された中空モータであり、前記第2軸モータのロータは、前記中空減速機の入力部及び前記ウエーブジェネレータに直結された、構成でもよい。
【0028】
駆動ユニットは、以下の実施態様でもよい。
(14)(13)に記載の駆動ユニットであって、前記中空減速機の減速比をR3とし、前記第1サーキュラスプラインを固定、前記ウエーブジェネレータを入力、前記第2サーキュラスプラインを出力とした場合のディファレンシャルの減速比をR4として、R4+1=R3の同期回転条件を満たし、
前記第1軸モータの回転数をB[rpm]、前記第2軸モータの回転数をA[rpm]として、前記第2軸モータの駆動により、前記ボールネジナットと前記ボールスプラインナットは、A/R3[rpm]にて、同期回転し、前記第1軸モータ310の駆動により、R4B/R3[rpm]の回転が前記ボールネジナットに加わる、構成でもよい。
【発明の効果】
【0029】
本明細書で開示される技術によれば、駆動軸の回転トルクを確保しつつ、軸方向の移動速度低下を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図10】波動歯車型ディファレンシャルの構造を示す図(S出力)
【
図11】波動歯車型ディファレンシャルの回転方向を示す図
【
図12】波動歯車型ディファレンシャルの構造を示す図(D出力)
【
図13】波動歯車型ディファレンシャルの回転方向を示す図
【
図14】遊星歯車型ディファレンシャルの構造を示す図(キャリア出力)
【
図15】遊星歯車型ディファレンシャルの回転方向を示す図
【
図16】遊星歯車型ディファレンシャルの構造を示す図(内歯車出力)
【
図17】遊星歯車型ディファレンシャルの回転方向を示す図
【
図21】中空減速機の回転方向を示す図中空減速機の回転方向を示す図
【
図22】駆動軸100及び駆動装置200Eの正面図
【
図24】駆動軸100及び駆動装置200Fの正面図
【
図26】駆動軸100及び駆動装置200Gの正面図
【
図28】駆動軸100及び駆動装置200Hの正面図
【
図30】駆動軸100及び駆動装置200I(キャリア出力)の正面図
【
図32】駆動軸100及び駆動装置200I(内歯出力)の正面図
【
図34】駆動軸100及び駆動装置200Jの正面図
【
図36】駆動軸100及び駆動装置200Kの正面図
【
図38】駆動軸100及び駆動装置200Lの正面図
【
図42】同期回転条件、回転数N1、N2等をまとめた図表
【
図43】同期回転条件、回転数N1、N2等をまとめた図表
【
図44】同期回転条件、回転数N1、N2等をまとめた図表
【
図45】同期回転条件、回転数N1、N2等をまとめた図表
【
図47】駆動軸100及び駆動装置200Mの正面図
【
図49】駆動軸100及び駆動装置200Nの正面図
【
図50】駆動軸100及び駆動装置200Pの正面図
【
図51】駆動軸100及び駆動装置200Qの正面図
【
図54】駆動軸100及び駆動装置200Rの正面図
【
図55】波動歯車型ディファレンシャルの他の実施態様を示す図
【
図56】遊星歯車型ディファレンシャルの他の実施態様を示す図
【
図57】産業用ロボットの先端アーム部の従来構造を示す図
【
図58】スプライン付きボールネジ装置の従来構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態1>
1.駆動ユニットSの説明
図1は駆動ユニットSの概念図である。駆動ユニットSは、駆動軸100と、駆動装置200を含む。尚、駆動装置200は、駆動装置200A~200Lの総称とする。
【0032】
<駆動軸>
駆動軸100は、上下方向の直線軸である。駆動軸100の外周面には、ボールネジ溝101と、ボールスプライン溝102が形成されている。
【0033】
駆動軸100は、外周面に、ボールネジナット110と、ボールスプラインナット120を有している。この実施態様では、ボールネジナット110が上、ボールスプラインナット120が下に位置している。
【0034】
ボールネジナット110はボールネジ溝101に螺合し、ボールスプラインナット120はボールスプライン溝102とボールスプライン結合する。
【0035】
ボールネジナット110は、第1軸受け115を介して、回転可能に支持されている。ボールスプラインナット120は、第2軸受け125を介して、回転可能に支持されている。
【0036】
駆動軸100は、ボールネジナット110の回転により、上下に移動(軸線Mに沿って直線移動)し、ボールスプラインナット120の回転により、軸回りに回転(軸線Mを中心とする回転)する。この明細書では、駆動軸100の上下移動を第1軸とよび、駆動軸100の軸回りの回転を第2軸と呼ぶ。
【0037】
駆動軸100が軸回りに回転すると、駆動軸100とボールネジナット110は相対回転するから、駆動軸100を回転のみさせる場合(上下方向には移動させない)、ボールネジナット110とボールスプラインナット120を同期回転させる必要がある。
【0038】
駆動装置200は、第1軸モータ310、第2軸モータ320、第2軸減速機構400及びディファレンシャル500を含む。
【0039】
第2軸減速機構400は、第2軸モータ320の回転を減速して、ボールスプラインナット120に伝達する。第2軸モータ320の回転を減速してボールスプラインナット120に伝達することで、第2軸の高トルク化が可能である。
【0040】
ディファレンシャル500は、2入力、1出力の変速機であり、第1入力部510、第2入力部520及び第1軸出力部550を含む。
【0041】
ディファレンシャル500は、ボールネジナット110とボールスプラインナット120を機構的に同期回転させるものであり、(1)の動作を行い、(2)の条件を十足する。
【0042】
(1)第2入力部520の入力回転数を第2減速比Pで除した回転数に対して、第1入力部510の入力回転数を第1減速比Qで除した回転数を加えた回転数を、第1軸出力部550より出力する。
【0043】
(2)第1減速比Qと第2減速比Pは、|P|>Qである。
第1減速比Qは第1入力部510の回転数と第1軸出力軸550の回転数の比であり、第2減速比Pは第2入力部520の回転数と第1軸出力軸550の回転数の比である。また、||は絶対値記号である。
【0044】
ディファレンシャル500は、|P|>Qであるから、第2軸減速機構400により第2軸の高トルク化を図りながらも、特許文献2の構成(P=Q=2のディファレンシャルを用いる場合)に比べて、ボールネジナット110の回転数が落ちず、第1軸動作中、駆動軸100の上下方向の移動速度が低下することを抑制できる。
【0045】
駆動装置200は、第2軸減速機構400と、第2軸モータ320の第2軸に対する動力伝達の違いにより、200A~200Dの4タイプがある。
【0046】
<駆動装置200Aの説明>
駆動装置200Aは、
図2に示すように、第1軸モータ310、第2軸モータ320、中空減速機410、ディファレンシャル500及び第1伝達機構X1から第4伝達機構X4を備える。
【0047】
尚、
図2に示す符号250は、駆動ユニットSを支持する支持部材(ロボットに搭載する場合、アームを支持部材として使用する)である。支持部材250は、金属製であって、例えば、箱型の断面形状である。
図2では、箱型をなす4壁面のうち、上面壁260、下面壁270のみ図示している。
【0048】
中空減速機410は、上下に貫通する軸孔を中心部に有する中空形状である。中空減速機410は、駆動軸100の軸上に配置され、ボールスプラインナット120に直結されている。中空減速機410は上面部分に入力部411を有している。中空減速機410は、入力部411に対する回転入力を減速して、ボールスプラインナット120に伝達する。
【0049】
ディファレンシャル500は、第1入力部510、第2入力部520、第1軸出力部550を備える。
【0050】
第1伝達機構X1は、プーリとベルトにより、ディファレンシャル500の第1軸出力部550とボールネジナット110間で回転を伝達する。第1伝達機構X1は、第1軸出力部550に連結されたプーリP11、ボールネジナット110に連結されたプーリP12及び両プーリ間に掛けられたベルトB1からなる。第1伝達機構X1のプーリ回転比を1(プーリP12の回転数)対R1(プーリP11の回転数)とする。
【0051】
第2伝達機構X2は、ディファレンシャル500の第2入力部520と中空減速機410の入力部411間で回転を伝達する。第2伝達機構X2は、第2入力部520に連結されたプーリP21、中空減速機410の入力部411に連結されたプーリP22及び両プーリ間に掛けられたベルトB2からなる。第2伝達機構X2のプーリ回転比を1(プーリP22の回転数)対R2(プーリP21の回転数)とする。
【0052】
第3伝達機構X3は、プーリとベルトにより、第1軸モータ310とディファレンシャル500の第1入力部510間で回転を伝達する。第3伝達機構X3は、第1軸モータ310のモータ軸311に連結されたプーリP31、ディファレンシャル500の第1入力部510に連結されたプーリP32及び両プーリ間に掛けられたベルトB3からなる。第3伝達機構X3のプーリ回転比を1(プーリP32の回転数)対R5(プーリP31の回転数)とする。
【0053】
第4伝達機構X4は、プーリとベルトにより、第2軸モータ320とディファレンシャルの第2入力部520間で回転を伝達する。第4伝達機構X4は、第2軸モータ320のモータ軸321に連結されたプーリP41、ディファレンシャル500の第2入力部520に連結されたプーリP42及び両プーリ間に掛けられたベルトB4からなる。プーリP42はプーリP21と一体の2段プーリである。第4伝達機構X4のプーリ回転比を1(プーリP42の回転数)対R6(プーリP41の回転数)とする。
【0054】
<同期回転条件、回転数の計算例>
図3は、駆動装置200Aの動力伝達経路を示す図である。
【0055】
図3に示すように、第2軸モータ320の回転数をAとして、ディファレンシャル500の第2入力部520に対して第2軸モータ320からA/R6[rpm]の入力があり、ディファレンシャル500は、第1軸出力部550より、A/R6P[rpm]の出力を行う。
【0056】
また、第1軸モータ310の回転数をBとして、ディファレンシャル500の第1入力部510に対して第1軸モータ310からB/R5[rpm]の入力があり、ディファレンシャル500は、第1軸出力部550より、(B/R5)/Q[rpm]の出力を行う。
【0057】
ボールネジナット110の回転数N1は、第2軸モータ320の回転に伴うディファレンシャル500の出力A/R6[rpm]、第1軸モータ310の回転に伴うディファレンシャル500の出力(B/R5)/Q[rpm]、及び第1伝達機構X1のプーリ回転比R1を用いて、以下の(1)式により、表すことが出来る。
【0058】
ボールスプラインナット120の回転数N2は、第2伝達機構X2のプーリ回転比R2、中空減速機減速比R3、第4伝達機構X4のプーリ回転比R6、及び第2軸モータ320の回転数Aを用いて、以下の(2)式により、表すことが出来る。
【0059】
N1=A/R1R6P+B/R1R5Q・・・(1)
N2=A/R2R3R6・・・・・・・・・・・・(2)
【0060】
N1の第1項は第2軸モータ320による回転分、第2項は第1軸モータ310による回転分である。第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120が同じ回転数になるには、A/R1R6P=A/R2R3R6であればよいから、(3)の同期回転条件が得られる。
【0061】
R1P=±R2R3・・・(3)
±の符号は以下の通りである。
プラスは、第2軸モータ320とこれに対応するディファレンシャル500の出力が同じ回転方向の場合である。マイナスは、第2軸モータ320とこれに対応するディファレンシャルの出力が逆の回転方向の場合である。
【0062】
(3)式の同期回転条件を、(1)式、(2)式に代入することで、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2が得られる。
【0063】
N1=±A/R2R3R6±B/(R2R3R5Q/P)・・・(4)
N2=±A/R2R3R6・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
【0064】
同期回転条件を満足することで、
図3に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、±A/(R2R3R6)[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0065】
また、第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/P)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を独立して行うことが出来る。
【0066】
尚、±B/(R2R3R5Q/P)は+記号の場合、P>0であり、-記号の場合、P<0であることから、常に、第1軸モータ310と同じ回転方向となる。
【0067】
<駆動装置200B>
駆動装置200Bは、
図4に示すように、第1軸モータ310、第2軸モータ320、ディファレンシャル500及び第1伝達機構X1から第4伝達機構X4を備える。
【0068】
駆動装置200Bは、第2軸減速機構400に中空減速機410を使用せず、ベルト減速機構(第2伝達機構X2)を用いた点が、駆動装置200Aに対して相違している。具体的に説明すると、第2伝達機構X2は、プーリP21、多段プーリP50、プーリP22及び第1ベルトB21、第2ベルトB22を備える。
【0069】
プーリP21はディファレンシャル500の第2入力部520に連結され、プーリP22はボールスプラインナット120に連結されている。多段プーリP50は、大径プーリP51と小径プーリP52からなる2段プーリである。
【0070】
プーリP21と大径プーリP51、小径プーリP52とプーリP22がそれぞれプーリ対となっている。そして、プーリP21と大径プーリP51間に第1ベルトB21が掛けられており、小径プーリP52とプーリP22間に第2ベルトB22が掛けられている。そして、P21-P51のプーリ対により1段目の減速を、P52-P22のプーリ対により2段目の減速を行う。
【0071】
このように第2伝達機構X2は、複数のプーリ対(P21-P51、P52-P22)を利用して、回転を多段で減速するベルト減速機構である。第2伝達機構X2のプーリ合計回転比を1(プーリP22の回転数)対R2(プーリP21の回転数)とする。プーリ合計回転比は、複数のプーリ対(P21-P51、P52-P22)の全体の回転比である。
【0072】
第2伝達機構X2を除く、それ以外の第1、第3、第4伝達機構X1、X3、X4の構成は、駆動装置200Aと同じである。
【0073】
駆動装置200Bは、中空減速機410を使用せず、R3=1である。そのため、(3)式に対して、R3=1を代入することにより、(6)式の同期回転条件が得られる。
【0074】
R1P=R2・・・(6)
【0075】
また、(4)式、(5)式に対して、R3=1をそれぞれ代入することにより、同期回転条件下における、ボールネジナット110の回転数N1とボールスプラインナット120の回転数N2が得られる。
【0076】
N1=A/R2R6+B/(R2R5Q/P)・・・(7)
N2=A/R2R6・・・・・・・・・・・・・・・(8)
【0077】
以上のことから、駆動装置200Bの場合、同期回転条件を満足することで、
図5に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0078】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/P)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を独立して行うことが出来る。
【0079】
<駆動装置200Cの場合>
駆動装置200Cは、
図6に示すように、第1軸モータ310、第2軸モータ320、中空減速機410、ディファレンシャル500及び第1伝達機構X1から第4伝達機構X4を備える。
【0080】
駆動装置200Cは、駆動装置200Aに対して第2伝達機構X2が異なっており、第2軸モータ320の回転が、ディファレンシャル500の第2入力部520を中継することなく、中空減速機410の入力部411に対して直接入力される構成となっている。
【0081】
具体的に説明すると、第2伝達機構X2は、プーリP21、プーリP22、ベルトB2から構成されている。プーリP21は第2軸モータ320のモータ軸に連結されている。プーリP21は、プーリP41と一体の2段プーリである。プーリP22は中空減速機410の入力部411に連結されている。ベルトB2は、2つのプーリP21、P22をかけ渡している。第2伝達機構X2のプーリ回転比を1(プーリP22の回転数)対R2(プーリP21の回転数)とする。
【0082】
駆動装置200Cの場合、ボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナットの回転数N2は、第1軸モータ310の回転数B、第2軸モータ320の回転数Aを用いて、(9)式、(10)式で表すことが出来、更に、同期回転条件は、(11)式で表すことが出来る。
【0083】
N1=A/R1R6P+B/R1R5Q・・・(9)
N2=A/R2R3・・・・・・・・・・・・(10)
【0084】
R1R6P=±R2R3・・・(11)
±の符号は以下の通りである。
プラスは、第2軸モータとこれに対応するディファレンシャルの出力が同じ回転方向の場合である。マイナスは、第2軸モータとこれに対応するディファレンシャルの出力が逆の回転方向の場合である。
【0085】
(11)式の同期回転条件を(9)式、(10)式に代入することで、同期回転条件下における、ボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2が得られる。
【0086】
N1=±A/R2R3±B/(R2R3R5Q/R6P)・・・(12)
N2=±A/R2R3・・・・・・・・・・・・・・・・(13)
【0087】
以上のことから、駆動装置200Cの場合、同期回転条件を満足することで、
図7に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、±A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0088】
また、第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3R5Q/R6P)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0089】
<駆動装置200Dの場合>
駆動装置200Dは、
図8に示すように、第1軸モータ310、第2軸モータ320、ディファレンシャル500及び第1伝達機構X1から第4伝達機構X4を備える。
【0090】
駆動装置200Dは、第2軸減速機構400に中空減速機を使用せず、ベルト減速機構(第2伝達機構X2)を用いた点が、駆動装置200Cに対して相違している。具体的に説明すると、第2伝達機構X2は、プーリP21、多段プーリP50、プーリP22及び第1ベルトB21、第2ベルトB22からなる。
【0091】
プーリP21は第2軸モータ320のモータ軸に連結されており、プーリP22はボールスプラインナット120に連結されている。多段プーリP50は、大径プーリP51と小径プーリP52からなる2段プーリである。
【0092】
プーリP21と大径プーリP51、小径プーリP52とプーリP22がそれぞれプーリ対となっている。そして、プーリP21と大径プーリP51間に第1ベルトB21が掛けられており、小径プーリP52とプーリP22間に第2ベルトB22が掛けられている。そして、P21-P51のプーリ対により1段目の減速を、P52-P22のプーリ対により2段目の減速を行う。
【0093】
このように第2伝達機構X2は、複数のプーリ対(P21-P51、P52-P22)を利用して、回転を多段で減速するベルト減速機構である。第2伝達機構X2のプーリ合計回転比を1(プーリP22の回転数)対R2(プーリP21の回転数)とする。プーリ合計回転比は、複数のプーリ対(P21-P51、P52-P22)の全体の回転比である。
【0094】
駆動装置200Dは、中空減速機410を使用せず、R3=1である。そのため、(11)式に対して、R3=1を代入することにより、(14)式の同期回転条件が得られる。
【0095】
R1R6P=R2・・・(14)
【0096】
また、(12)式、(13)式に、R3=1をそれぞれ代入することにより、同期回転条件下における、ボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2が得られる。
【0097】
N1=A/R2+B/(R2R5Q/R6P)・・・(15)
N2=A/R2・・・・・・・・・・・・・・・・(16)
【0098】
以上のことから、駆動装置200Dの場合、同期回転条件を満足することで、
図9に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0099】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Q/R6P)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を独立して行うことが出来る
【0100】
<ディファレンシャル500>
上記した(1)の動作を行い、(2)の条件を十足するディファレンシャル500として、例えば、
図10、
図12に示す波動歯車型のディファレンシャル600、
図14、
図16に示す遊星歯車型のディファレンシャル700がある。
【0101】
尚、ディファレンシャル600は、ディファレンシャル600A、600Bの総称であり、ディファレンシャル700は、ディファレンシャル700A、700Bの総称である。
【0102】
<波動歯車型>
波動歯車式のディファレンシャル600は、ウエーブジェネレータ610、フレクスプライン620、第1サーキュラスプライン630S及び第2サーキュラスプライン630Dからなる。ウエーブジェネレータ610は楕円状のカム611とボール軸受け613からなる。
【0103】
フレクスプライン620は可撓性を有する金属材料からなる。フレクスプライン620は外周面に外歯を有している。第1サーキャラスプライン630Sは、金属製であり、円環状である。第1サーキュラスプライン630Sは内周面に内歯を有している。第2サーキャラスプライン630Dも同様の構成である。2つのサーキュラスプライン630S、630Dは、ウエーブジェネレータ610の軸方向(
図10の上下方向)に並んで位置している。
【0104】
第1サーキュラスプライン630Sの歯数はフレクスプライン620の歯数より2つ歯数が多い。この歯数差により、ウエーブジェネレータ610の回転を減速して取り出すことが出来る。例えば、第1サーキュラスプライン630Sを固定した場合、ウエーブジェネレータ610が1回転すると、フレクスプライン620は歯数2枚分だけ回転する。
【0105】
第2サーキュラスプライン630Dの歯数はフレクスプライン620の歯数と同じ歯数であり、フレクスプライン620と同じ回転数であることから、ウエーブジェネレータ610の回転を減速して第2サーキュラスプライン630Dより取り出すことが出来る。また、例えば、第2サーキュラスプライン630Dを固定した場合には、第1サーキュラスプライン630Sより取り出すことが出来る。
【0106】
波動歯車型のディファレンシャル600は、第1サーキュラスプライン630Sを出力とするS出力と、第2サーキュラスプライン630Dを出力とするD出力での使用が可能である。
【0107】
図10に示す波動歯車型のディファレンシャル600AはS出力、
図12に示す波動歯車型のディファレンシャル600BはD出力である。
【0108】
<S出力(ディファレンシャル600A)>
(1)配置
ウエーブジェネレータ610を第2入力部520とする。
第2サーキュラスプライン630Dを第1入力部510とする。
第1サーキュラスプライン630Sを第1軸出力部550とする。
【0109】
(2)減速比
ディファレンシャル600Aの減速比P、Qは、R4を用いて以下のように表される。
R4は、第1サーキュラスプライン630Sを固定、ウエーブジェネレータ610を入力、第2サーキュラスプライン630Dを出力とした場合のディファレンシャル600Aの減速比である。
【0110】
P=R4+1である。
Q=(R4+1)/R4である。
R4≧30であることから、P≧31、Q≒1である。
尚、流通品には、R4=30、50、78、80、96、100等がある。
【0111】
S出力の場合、第1入力部の回転を考えないとき、
図11に示すように第2入力部(ウエーブジェネレータ610)の回転方向A1に対し、第1軸出力部(第1サーキュラスプライン630S)の回転方向A2は同じ方向になる。
【0112】
<D出力(ディファレンシャル600B)>
(1)配置
ウエーブジェネレータ610を第2入力部520とする。
第1サーキュラスプライン630Sを第1入力部510とする。
第2サーキュラスプライン630Dを第1軸出力部550とする。
【0113】
(2)減速比
ディファレンシャル600Bの減速比P、Qは、R4を用いて、以下のように表される。
P=-R4である。
Q=R4/(R4+1)である。
R4≧30であることから、|P|≧30、Q≒1である。
尚、流通品には、R4=30、50、78、80、96、100等がある。
【0114】
D出力の場合、第1入力部の回転を考えないとき、
図13に示すように、第2入力部(ウエーブジェネレータ610)の回転方向A1に対し、第1軸出力部(第2サーキュラスプライン630D)の回転方向A2は反対向になる。
【0115】
D出力の場合、回転方向の調整が可能な中空減速機410を組み合わせることで、第1軸(ボールネジナット110)の回転方向と第2軸(ボールスプラインナット120)の回転方向を一致させることが可能である。
【0116】
<遊星歯車型>
遊星歯車式のディファレンシャル700は、太陽歯車710、遊星歯車720、遊星キャリア730及び内歯車740を備える。
【0117】
遊星歯車型のディファレンシャル700は、キャリア出力と内歯車出力があり、
図14に示す波動歯車式のディファレンシャル700Aはキャリア出力、
図16に示す波動歯車式のディファレンシャル700Bは内歯車出力である。
【0118】
<キャリア出力(ディファレンシャル700A)>
(1)配置
太陽歯車710を第2入力部520とする。
内歯車740を第1入力部510とする。
遊星キャリア730を第1軸出力部550とする。
(2)減速比
ディファレンシャル700Aの減速比P、Qは、Zs、Zrを用いて、以下のように表される。Zsは太陽歯車の歯数、Zrは内歯車の歯数である。
P=(Zs+Zr)/Zsである。
Q=(Zs+Zr)/Zrである。
【0119】
減速比P、Qは、太陽歯車710の歯数Zs、内歯車740の歯数Zr、遊星歯車720の歯数Zbにより、以下の範囲をとることが出来る。
P>2、1<Q<2、P>Q
【0120】
キャリア出力の場合、第1入力部の回転を考えないとき、
図15に示すように、第2入力部(太陽歯車710)の回転A1に対し、第1軸出力部(遊星キャリア730)の回転A2は同方向になる。
【0121】
<内歯車出力(ディファレンシャル700B)>
(1)配置
太陽歯車710を第2入力部520とする。
遊星キャリア730を第1入力部510とする。
内歯車740を第1軸出力部550とする。
【0122】
(2)減速比
ディファレンシャル700Bの減速比P、Qは、Zs、Zrを用いて、以下のように表される。Zsは太陽歯車の歯数、Zrは内歯車の歯数である。
P=-Zr/Zsである。
Q=Zr/(Zs+Zr)である。
【0123】
減速比P、Qは、太陽歯車710の歯数Zs、内歯車740の歯数Zr、遊星歯車720の歯数Zbにより、以下の範囲をとることが出来る。
|P|>1、0.5<Q<1、|P|>Q
【0124】
内歯車出力の場合、第1入力部の回転を考えないとき、
図17に示すように、第2入力部(太陽歯車710)の回転方向A1に対し、第1軸出力部(内歯車740)の回転方向A2は反対向になる。
【0125】
内歯車出力の場合、回転方向の調整が可能な中空減速機410を組み合わせることで、第1軸(ボールネジナット110)の回転方向と第2軸(ボールスプラインナット120)の回転方向を一致させることが可能である。
【0126】
<中空減速機410>
図18、
図19に中空減速機410A、410Bの一例を示す。中空減速機410A、410Bは、中空形状であり、駆動軸100上に配置することが出来る。
【0127】
中空減速機410A、410Bは、波動歯車型であり、ウエーブジェネレータ421、フレクスプライン423、サーキュラスプライン425を含む。
【0128】
ウエーブジェネレータ421は、軸孔を中心部に有する筒形状(中空形状)であり、駆動軸100が上下方向に貫通している。中空減速機410AはA出力、中空減速機410Bは、B出力である。
【0129】
(1)A出力
ウエーブジェネレータ421を入力とし、プーリP22に連結する。
フレクスプライン423を支持部材427等に対して固定する。
サーキュラスプライン425を出力とし、ボールスプラインナット120に連結する。
【0130】
(2)B出力
ウエーブジェネレータ421を入力とし、プーリP22に連結する。
フレクスプライン423を出力とし、ボールスプラインナット120に連結する。
サーキュラスプライン425を支持部材427等に対して固定する。
【0131】
A出力の場合、
図20に示すように入力の回転方向S1に対して出力の回転方向S2は同方向になる。B出力の場合、
図21に示すように入力の回転方向S1に対して出力の回転方向S2は反対方向になる。
【0132】
波動歯車型のディファレンシャル600Bを使用する場合(D出力を使用する場合)、B出力の中空減速機410Bを組み合わせることで、第1軸と第2軸の回転方向を一致させることが出来る。
【0133】
遊星歯車型のディファレンシャル700Bを使用する場合(内歯車出力を使用する場合)、B出力の中空減速機410Bを組み合わせることで、第1軸と第2軸の回転方向を一致させることが出来る。
【0134】
図22に示す駆動装置200Eは、
図2に示す駆動装置200Aに対して、ディファレンシャル500を波動歯車型のディファレンシャル600に置き換えたものである。
【0135】
S出力のディファレンシャル600Aに置き換えた場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0136】
R1(R4+1)=R2R3・・・(17)
N1=A/R2R3R6+B/(R2R3R5/R4)・・・(18)
N2=A/R2R3R6
【0137】
S出力のディファレンシャル600Aに置き換えた場合、同期回転条件を満足することで、
図23に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0138】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5/R4)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0139】
D出力のディファレンシャル600Bに置き換えた場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0140】
R1R4=R2R3・・・(19)
N1=-A/R2R3R6+B/(R2R3R5/(R4+1))・・(20)
N2=-A/R2R3R6
【0141】
以上のことから、D出力のディファレンシャル600Bに置き換えた場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、-A/R2R3R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0142】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5/(R4+1))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0143】
図24に示す駆動装置200Fは、
図3に示す駆動装置200Bに対して、ディファレンシャル500を波動歯車型のディファレンシャル600に置き換えたものである。
【0144】
駆動装置200Fの場合、S出力のディファレンシャル600Aのみ置き換えが可能であり、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0145】
R1(R4+1)=R2・・・(21)
N1=A/R2R6+B/(R2R5/R4)・・・(22)
N2=A/R2R6
【0146】
以上のことから、駆動装置200Fの場合、同期回転条件を満足することで、
図25に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0147】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5/R4)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0148】
図26に示す駆動装置200Gは、
図4に示す駆動装置200Cに対して、ディファレンシャル500を波動歯車式のディファレンシャル600に置き換えている。
【0149】
駆動装置200Gの場合、S出力とD出力が可能であり、S出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0150】
R1R6(R4+1)=R2R3・・・(23)
N1=A/R2R3+B/(R2R3R5/R4R6)・・・(24)
N2=A/R2R3
【0151】
S出力の場合、同期回転条件を満足することで、
図27に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0152】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5/R4R6)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0153】
D出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0154】
R1R4R6=R2R3・・・(25)
N1=-A/R2R3+B/(R2R3R5/R6(R4+1))・・(26)
N2=-A/R2R3
【0155】
D出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、-A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0156】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5/R6(R4+1))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0157】
図28に示す駆動装置200Hは、
図5に示す駆動装置200Dに対して、ディファレンシャル500を波動歯車式のディファレンシャル600に置き換えている。
【0158】
駆動装置200Hの場合、S出力のみであり、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0159】
R1R6(R4+1)=R2・・・(27)
N1=A/R2+B/(R2R5/R4R6)・・・(28)
N2=A/R2
【0160】
駆動装置200Hの場合、同期回転条件を満足することで、
図29に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0161】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5/R4R6)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0162】
図30、
図32に示す駆動装置200Iは、
図2に示す駆動装置200Aに対して、ディファレンシャル500を遊星歯車型のディファレンシャル700に置き換えたものである。
【0163】
駆動装置200Iの場合、キャリア出力(
図30)と内歯車出力(
図32)が可能であり、キャリア出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0164】
R1(Zs+Zr)/Zs=R2R3・・・(29)
N1=A/R2R3R6+B/(R2R3R5Zs/Zr)・・・(30)
N2=A/R2R3R6
【0165】
以上のことから、キャリア出力の場合、同期回転条件を満足することで、
図31に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0166】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5Zs/Zr)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0167】
内歯車出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0168】
R1(Zs/Zr)=R2R3・・・(31)
N1=-A/R2R3R6+B/(R2R3R5Zr/(Zs+Zr))・・・(32)
N2=-A/R2R3R6
【0169】
内歯車出力の場合、同期回転条件を満足することで、
図33に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、―A/R2R3R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0170】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5Zs/(Zs+Zr))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0171】
図34に示す駆動装置200Jは、
図3に示す駆動装置200Bに対して、ディファレンシャル500を遊星歯車型のディファレンシャル700に置き換えたものである。
【0172】
駆動装置200Jの場合、キャリア出力のみ可能であり、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0173】
R1(Zs+Zr)/Zs=R2・・・(33)
N1=A/R2R6+B/(R2R5Zs/Zr)・・・(34)
N2=A/R2R6
【0174】
以上のことから、駆動装置200Jの場合、同期回転条件を満足することで、
図35に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0175】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Zs/Zr)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0176】
図36に示す駆動装置200Kは、
図4に示す駆動装置200Cに対して、ディファレンシャル500を遊星歯車型のディファレンシャル700に置き換えたものである。
【0177】
駆動装置200Kの場合、キャリア出力と内歯車出力が可能であり、キャリア出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0178】
R1R6(Zs+Zr)/Zs=R2R3・・・(35)
N1=A/R2R3+B/(R2R3R5Zs/R6Zr)・・・(36)
N2=A/R2R3
【0179】
以上のことから、キャリア出力の場合、同期回転条件を満足することで、
図37に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0180】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5Zs/R6Zr)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0181】
内歯車出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0182】
R1R6Zs/Zr=R2R3・・・(37)
N1=-A/R2R3+B/(R2R3R5Zs/R6(Zs+Zr))・・(38)
N2=-A/R2R3
【0183】
以上のことから、内歯車出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、-A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0184】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3R5Zs/R6(Zs+Zr))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0185】
図38に示す駆動装置200Lは、
図5に示す駆動装置200Dに対して、ディファレンシャル500を遊星歯車型のディファレンシャル700に置き換えたものである。
【0186】
駆動装置200Lの場合、キャリア出力のみ可能であり、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0187】
R1R6(Zs+Zr)/Zs=R2・・・(39)
N1=A/R2+B/(R2R5Zs/R6Zr)・・・(40)
N2=A/R2
【0188】
以上のことから、駆動装置200Lの場合、同期回転条件を満足することで、
図39に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0189】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R5Zs/R6Zr)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0190】
図40に示す駆動装置1200Aは、
図2に示す駆動装置200Aの比較例、
図41に示す駆動装置1200Cは、
図4に示す駆動装置200Cの比較例である。
【0191】
図40に示す駆動装置1200A、
図41に示す駆動装置1200Cは、
図2に示す駆動装置200A、
図4に示す駆動装置200Cに対して、それぞれディファレンシャル1500が異なっている。ディファレンシャル1500は、サイドギヤ1510-ピニオンギヤ1520型であり、P=Q=2である。
【0192】
図42、
図43(表1~表3)は、各構成1~5の駆動装置について、ディファレンシャルの減速比P、Q、各部のプーリ回転比R、同期回転条件、ボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2をまとめたものである。
【0193】
図42において、波動歯車型はS出力(同回転タイプ)、遊星歯車型はキャリア出力(同回転タイプ)であり、
図43において、波動歯車型はD出力(逆回転タイプ)、遊星歯車型は内歯車出力(逆回転タイプ)である。
【0194】
構成1~5と駆動装置200A~200Jの対応関係は、以下の通りである。
構成1:駆動装置200A~200Dに対応(
図2、
図4、
図6、
図8)
構成2:駆動装置200E、200Gに対応(
図22、
図26)
構成3:駆動装置200F、200Hに対応(
図24、
図28)
構成4:駆動装置200I、200Kに対応(
図30、
図36)
構成5:駆動装置200J、200Lに対応(
図34、
図38)
比較例:駆動装置1200A、1200Bに対応(
図40、
図41)
【0195】
同期回転条件、回転数N1、N2の計算に使用するX、Yは、第2軸へのモータ入力の仕様に応じた変数である。
【0196】
第2軸モータ出力がディファレンシャル500の第2入力部520を経由して第2軸(ボールスプラインナット120)に入力される場合、X=1、Y=R6である。
第2軸モータ出力が第2軸(ボールスプラインナット120)に直接入力される場合、X=R6、Y=1である。
【0197】
図44、
図45に波動歯車減速機型(S出力)、遊星歯車減速機型(キャリア出力)の場合の各数値例を示す。比較例(ディファンレンシャル-第2軸減速機直結)の場合、P=2である。これに対して、構成2(波動歯車減速機型-第2軸減速機直結)の場合、P=51であり、比較例に比べて、減速比Pは大きい。そして、第2軸(ボールスプラインナット)の回転数は、比較例がA/30に対して、構成2は、A/51であり、減速が大きいことから、高トルク化が可能である。
【0198】
また、比較例(ディファンレンシャル-第2軸減速機直結)の場合、Q=2である。これに対して、構成2(波動歯車減速機型-第2軸減速機直結)の場合、Q=1.02であり、比較例に比べて、減速比Qは小さい。そして、第1軸モータ駆動による第1軸(ボールネジナット)の回転数は、比較例がB/30に対して、構成2は、B/1.02であり、回転数の低下が抑えられている。そのため、第1軸の高速化に好適である。
【0199】
他の構成3、4、5についても、比較例と比べて、減速比Pは大きく、減速比Qは小さい。そのため、比較例と比べて、第2軸の高トルク化であり、かつ、第1軸を高速化することが出来る。尚、
図45の図表は、
図44の図表に対して、太枠で囲った部分、つまり、構成1の第1伝達機構のプーリ回転比、第1軸ボールネジナット回転数N1、第2軸ボールスプラインナット回転数N2が異なっている。
【0200】
6.駆動ユニットSの適用例
駆動ユニットSは、例えば、産業用ロボット1000に、使用することが出来る。
図46は、産業用ロボット1000の正面図(一部は断面で示す)である。産業用ロボット1000は、一例として、スカラロボット(水平多関節ロボット)である。
【0201】
産業用ロボット1000は、フロアF上に設置される略円柱状のアーム支持台1100と、アーム支持台1110に連結されたアーム1200と、駆動ユニットSからなる。
【0202】
アーム1200は、第1アーム1210と第2アーム1220からなる。第1アーム1210は、アーム支持台1110に取り付けられ、第1回転軸L1を中心として回転する。第2アーム1220は、第1アーム1210に取り付けられ、第2回転軸L2を中心に回転する。
【0203】
駆動ユニットSは、既に説明した通りであり、駆動軸100と駆動装置200(
図46の例では、200A)とを備える。駆動軸100は、第2アーム1220の先端部分に取り付けられている。
【0204】
駆動軸100は、ロボットの作業軸として使用され、先端(下端)部分には、ロボットハンドやエンドエフェクタが装着可能である。産業用ロボット1000は、駆動軸100の駆動により、ロボットハンドやエンドエフェクタを直動、回転させ、所定の作業を行うことが出来る。
【0205】
6.効果
この実施態様によると、産業用ロボットの作業軸等に使用される駆動軸100について、回転トルクを確保しつつ、軸方向の移動速度低下を抑制することが出来る。
【0206】
具体的には、減速比Pが大きく、減速比Qが1に近くもできる減速機型のディファレンシャル500、600、700を用いることによって、第2軸に減速比の大きい中空減速機410を直結、または、減速比の大きいベルト減速機構X2を配置しても、第1軸のボールネジナット110の回転を落ちないようにできる。
【0207】
更に、以下の効果についても、期待できる。
・第2軸に中空減速機410を直結、またはベルト減速するので、第2軸の回転方向の剛性を上げられ、大きなイナーシャを持てる。
・第2軸ベルト減速の場合、さらに第2アームの軽量化、低イナーシャ化できる。
・P、Q、Rを変えれば、第1軸、第2軸減速比の自由度が高い。P、Q、Rを変えれば、第1軸、第2軸を別個に高速化、高負荷に耐えられるようにできる。
【0208】
<実施形態2>
実施形態2について、
図47、
図48を参照して説明する。
実施形態2の駆動装置200Mは、実施形態1の駆動装置200Aに対して、第3伝達機構X3と第4伝達機構X4を省略し、第1軸モータ310のモータ軸をディファレンシャル500の第1入力部510に直結し、第2軸モータ320のモータ軸をディファレンシャル500の第2入力部520に直結した点が相違する。その以外の部分は、駆動装置200Aと同じであることから、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0209】
駆動装置200Mの場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0210】
R1P=±R2R3・・・・・・・・・・・・・・・・(41)
N1=±A/R2R3±B/(R2R3Q/P)・・・・(42)
N2=±A/R2R3
【0211】
同期回転条件を満足することで、
図48に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、±A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0212】
また、第1軸モータ310の駆動により、±B/(R2R3Q/P)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を独立して行うことが出来る。
【0213】
実施形態2の構成では、第3伝達機構X3と第4伝達機構X4を省略できるので、部品点数を削減できる。また、駆動ユニットSを小型化できる。
【0214】
<実施形態3>
実施形態3について、
図49を参照して説明する。
実施形態3の駆動装置200Nは、実施形態2の駆動装置200Mに対して、波動歯車型ディファレンシャル600に置き換えたものである。
【0215】
S出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0216】
R1(R4+1)=R2R3・・・・・・・・・・・・・・(43)
N1=A/R2R3+B/(R2R3/R4)・・・・・・(44)
N2=A/R2R3
【0217】
S出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0218】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3/R4)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0219】
D出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0220】
R1R4=R2R3・・・・・・・・・・・・・・・・・・(45)
N1=-A/R2R3+B/(R2R3/(R4+1))・・・・(46)
N2=-A/R2R3
【0221】
以上のことから、D出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、-A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0222】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3/(R4+1))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0223】
<実施形態4>
実施形態4について、
図50を参照して説明する。
実施形態4の駆動装置200Pは、実施形態2の駆動装置200Mに対して、遊星歯車型のディファレンシャル700に置き換えたものである。
【0224】
キャリア出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0225】
R1(Zs+Zr)/Zs=R2R3・・・・・・・・・・・・(47)
N1=A/R2R3+B/(R2R3Zs/Zr)・・・・・・(48)
N2=A/R2R3
【0226】
キャリア出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0227】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3Zs/Zr)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0228】
内歯車出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0229】
R1Zs/Zr=R2R3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(49)
N1=-A/R2R3+B/(R2R3Zs/(Zs+Zr))・・・・(50)
N2=-A/R2R3
【0230】
内歯車出力の場合、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、―A/R2R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0231】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R2R3Zs/(Zs+Zr))[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0232】
<実施形態5>
実施形態5について、
図51~53を参照して、説明する。
実施形態5の駆動装置200Qは、実施形態1の駆動装置200Eに対して、波動歯車型ディファレンシャル600を中空形状にして、駆動軸100上に配置したものである。
【0233】
駆動装置200Qは、第1軸モータ310、第2軸モータ320、中空減速機410、波動歯車型ディファレンシャル600、第3伝達機構X3及び第4伝達機構X4から構成されている。以下、S出力を例にとって、説明する。
【0234】
中空減速機410は、駆動軸100の軸上に配置され、ボールスプラインナット120に直結されている。中空減速機410は上面部分に入力部411を有している。中空減速機410は、入力部411に対する回転入力を減速して、ボールスプラインナット120に伝達する。
【0235】
第4伝達機構X4は、プーリP41、プーリP42、ベルトB4から構成されている。プーリP41は、第2軸モータ320のモータ軸に連結されている。プーリP42は、中空減速機410の入力部411に連結されている。ベルトB4は、2つのプーリP41、P42間に、掛け渡されている。第4伝達機構X4のプーリ回転比を1(プーリP42の回転数)対R6(プーリP41の回転数)とする。
【0236】
波動歯車型のディファレンシャル600は、上下に貫通する軸孔を中心部に有する中空形状であり、
図52に示すように、ウエーブジェネレータ610、フレクスプライン620、第1サーキュラスプライン630S及び第2サーキュラスプライン630Dからなる。
【0237】
ウエーブジェネレータ610は、
図52に示すように、中心部に軸孔を有しており、駆動軸100が上下に貫通している。ウエーブジェネレータ610は、中空減速機410の入力部411に連結されたプーリP42に対して連結されている。
【0238】
第1サーキュラスプライン630Sは、ボールスネジナット110に連結されている。
【0239】
第3伝達機構X3は、プーリP31、プーリP32、ベルトB3からなる。プーリP31は第1軸モータ310のモータ軸に連結されている。
【0240】
プーリP32は、ディファレンシャル600の第2サーキュラスプライン630Dに、連結又は一体に形成されている。ベルトB3は、2つのプーリP31、P32間に掛け渡されている。第3伝達機構X3のプーリ回転比を1(プーリP32の回転数)対R5(プーリP31の回転数)とする。
【0241】
S出力の場合、同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0242】
R4+1=R3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(51)
N1=A/R3R6+B/(R3R5/R4)・・・・・(52)
N2=A/R3R6
【0243】
駆動装置200Qは、同期回転条件を満足することで、
図53に示すように、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R3R6[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0244】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R3R5/R4)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0245】
尚、上記の例では、ディファレンシャル600をS出力としているが、D出力の場合、第1サーキュラスプライン630S、第2サーキュラスプライン630Dの配置を逆にすればよい。また、D出力の場合、B出力の中空減速機410Bを組み合わせることで、第1軸と第2軸の回転方向を一致させることが出来る。
【0246】
実施形態5の構成では、ディファレンシャル600を駆動軸100上に配置しているので、駆動装置200を小型化できる。また、第1伝達機構X2と第2伝達機構X2を省略できるので、部品点数を削減できる。
【0247】
また、プーリP42に対して、中空減速機410の入力部411とウエーブジェネレータ610の双方を連結しており、第2軸モータ320の駆動により、これらが同軸で同時に回転する。そのため、第1軸のボールネジナット110と第2軸のボールスプラインナット120の同期を正確に出来る。
【0248】
<実施形態6>
実施形態6について、
図54を参照して、説明する。
実施形態6の駆動装置200Rは、実施形態5の駆動装置200Eに対して、第1軸モータ810、第2軸モータ820を中空モータにして、駆動軸100上に配置したものである。
【0249】
駆動装置200Rは、第1軸モータ810、第2軸モータ820、中空減速機410、波動歯車型ディファレンシャル600から構成されている。
【0250】
中空減速機410は、駆動軸100の軸上に配置され、ボールスプラインナット120に連結されている。
【0251】
波動歯車型ディファレンシャル600は、中空であり、ウエーブジェネレータ610、フレクスプライン620、第1サーキュラスプライン630S及び第2サーキュラスプライン630Dを備える。第1サーキュラスプライン630Sは、ボールスネジナット110に連結されている。
【0252】
第1軸モータ810は、上下に貫通する軸孔を中心部に有する中空形状であり、モータ本体811とロータ813を備える。ロータ813は、
図54に示すように、中心部に軸孔を有する円筒形状であり、ウエーブジェネレータ610が上下に貫通している。ロータ813は、第2サーキュラスプライン630Dに連結されている。モータ本体811は支持部材817に固定されている。
【0253】
第2軸モータ820は、上下に貫通する軸孔を中心部に有する中空形状であり、モータ本体821とロータ823を備える。第2軸モータ820は、第1軸モータ810の下方に位置している。モータ本体821は支持部材817に固定されている。ロータ823は、
図54に示すように、中心部に軸孔を有する円筒形状であり、駆動軸100が上下に貫通している。ロータ823は、中空減速機410の入力部411及びウエーブジェネレータ610に連結されている。具体的には、下端部を中空減速機410の入力部411に対して連結し、上端部をウエーブジェネレータ610に対して連結している。
【0254】
同期回転条件、同期回転条件下におけるボールネジナット110の回転数N1、ボールスプラインナット120の回転数N2は、以下の通りである。
【0255】
R4+1=R3・・・・・・・・・・・・・・(53)
N1=A/R3+B/(R3/R4)・・・・・・(54)
N2=A/R3
【0256】
駆動装置200Rは、同期回転条件を満足することで、第2軸モータ320の駆動により、ボールネジナット110とボールスプラインナット120は、A/R3[rpm]にて、メカ的に同期回転する(第2軸)。
【0257】
また、第1軸モータ310の駆動により、B/(R3/R4)[rpm]の回転がボールネジナット110に加わり、第1軸動作を、独立して行うことが出来る。
【0258】
尚、上記の例では、ディファレンシャル600をS出力としているが、D出力の場合、第1サーキュラスプライン630S、第2サーキュラスプライン630Dの配置を逆にすればよい。また、D出力の場合、B出力の中空減速機410Bを組み合わせることで、第1軸と第2軸の回転方向を一致させることが出来る。
【0259】
実施形態6の構成では、ボールネジナット110、ボールスプラインナット120、中空減速機410、ディファレンシャル600、第1軸モータ810、第2軸モータ820が同軸に配置されているから、駆動装置200を小型化できる。
【0260】
また、ロータ821に対して中空減速機410とウエーブジェネレータ610の双方を連結しており、第2軸モータ820の駆動により、これらが同軸で同時に回転する。そのため、第1軸のボールネジナット110と第2軸のボールスプラインナット120の同期を正確に出来る。
【0261】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は、上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0262】
実施形態1では、駆動ユニットSを、産業用ロボット1000に、適用した例を示した。駆動ユニットSの用途は、産業用ロボット1000に限定されない。他の用途に使用することも無論可能である。
【0263】
実施形態1では、波動歯車型のディファレンシャル600をプーリPの内部に配置した例を示した。
図55に示すように、波動歯車型のディファレンシャル600をプーリPの上部に配置することも可能である。同様に、遊星歯車型のディファレンシャル700も、
図56に示すように、プーリPの上部に配置することも可能である。
【0264】
実施形態1では、第2軸減速機構の一例に、波動歯車型の中空減速機410を示した。中空減速機410は、駆動軸に取り付け可能な中空形状で、所定の減速比が得られるものであれば、波動歯車型に限定されない。波動歯車型以外の減速機を使用すること当然に可能である。
【符号の説明】
【0265】
100 駆動軸
110 ボールネジナット
120 ボールスプラインナット
200A~200Q 駆動装置
310 第1軸モータ
320 第2軸モータ
410 中空減速機(第2軸減速機構)
450 2段プーリ
500 ディファレンシャル
600 波動歯車型ディファレンシャル
700 遊星歯車型ディファレンシャル
S 駆動ユニット