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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158808
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241031BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241031BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20241031BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
G03G21/14
G03G21/00 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074352
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 隼也
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134HD17
2H134KA16
2H134KA29
2H134KA33
2H134KB20
2H134KG04
2H134KG07
2H134KH01
2H200FA18
2H200GA23
2H200GB12
2H200JA02
2H200JA29
2H200JB13
2H200JB22
2H200KA02
2H200KA12
2H200PA05
2H200PA21
2H200PA22
2H200PB16
2H200PB17
2H200PB27
2H200PB28
2H200PB35
2H270LA07
2H270LA14
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA70
2H270LA99
2H270LB01
2H270MA24
2H270MA28
2H270MA31
2H270MB05
2H270MB16
2H270MB18
2H270MB27
2H270MB43
2H270MC48
2H270MC51
2H270MD06
2H270MD29
2H270MH09
2H270MH12
2H270MH16
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】転写濃度のムラを防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、感光体ドラム11と、脂肪酸金属塩を含むトナーを用いて、感光体ドラム11上にトナー像を形成する画像形成部と、感光体ドラム11上のトナー像を、電源から転写バイアスが供給される転写部材によって用紙に転写する転写ローラ15と、感光体ドラム11と当接し、用紙への転写後に感光体ドラム11上に残ったトナーを掻き取る清掃部材を有する清掃部と、画像形成部がトナー像の形成を行う前の所定期間内に、画像形成部が行った画像形成動作に関する情報を前歴情報として記憶する記憶部82と、前歴情報に基づいて、電源から転写部材に供給する転写バイアスの条件を変更する転写バイアス変更制御を実施可能な制御部81とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
脂肪酸金属塩を含むトナーを用いて、前記像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、
前記像担持体上のトナー像を、電源から転写バイアスが供給される転写部材によって用紙に転写する転写部と、
前記像担持体と当接し、前記用紙への転写後に前記像担持体上に残ったトナーを掻きとる清掃部材を有する清掃部と、
前記画像形成部がトナー像の形成を行う前の所定期間内に、前記画像形成部が行った画像形成動作に関する情報を前歴情報として記憶する記憶部と、
前記前歴情報に基づいて、前記電源から前記転写部材に供給する前記転写バイアスの条件を変更する転写バイアス変更制御を実施可能な制御部とを備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記前歴情報は、単位時間ごとに区切られて記憶された複数の詳細前歴を有し、
前記詳細前歴は、前記単位時間ごとの画像形成動作に関する情報である詳細情報と、現在の時間に近い単位時間ほど補正量が多くなるように重みづけられた基本補正量とを含み、
前記転写バイアス変更制御では、前記詳細情報から求められた前記単位時間に対する画像形成動作が行われた比率情報によって対応する前記基本補正量を補正した比率補正量に基づいて、前記転写バイアス条件を変更すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記画像形成装置が設置された環境に関する情報を取得する情報取得部を備え、
前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、前記転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記画像形成部の駆動条件に関する情報を取得する情報取得部を備え、
前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、前記転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記像担持体は、駆動源からの回転力を受けて軸線を中心に回転する円筒部を有し、前記円筒部の外周面に前記トナー像が形成され、
前記清掃部材は、前記軸線の方向である軸線方向に延びた前記外周面との当接部を有する クリーニングブレードであり、
前記清掃部は、前記軸線方向のうち、一方側の端部に設けられたトナー排出口と、前記当接部で掻き取ったトナーを前記トナー排出口に搬送する前記軸線方向に延びた搬送部材と、を有し、
前記制御部は、前記当接部にトナーを供給するトナー供給制御を更に実行可能で、
前記トナー供給制御の実行時に、前記軸線方向において、前記トナー排出口が設けられた前記一方側よりも前記他方側が面積の大きな供給トナー像を形成すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記画像形成部に供給される脂肪酸金属塩を含むトナーは、外添剤もしくは内点剤として、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、またはパラフィン系ワックスを含むこと
を特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂肪酸金属塩を含むトナーを用いて像担持体上にトナー像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成を行う画像形成装置は、感光体ドラム上にトナー像を形成し、このトナー像を中間転写体や用紙に転写している。トナー像が形成される感光体ドラム(像担持体)では、転写工程において、感光体ドラム上に顕像化されたトナー像の全てが転写されることはなく、感光体ドラム上にトナーが残留することがあった。このようにして感光体ドラム上に残留したトナーは、次の画像形成の際に悪影響を及ぼし、画像の品質を低下させる要因となる。
【0003】
そこで、感光体ドラムの外周部には、残留したトナーを回収して感光体ドラムの表面をクリーニングするクリーニング装置が設けられており、クリーニング装置は、クリーニングブレード(清掃部材)を有している。従来、クリーニングブレードは、感光体ドラムの回転に抗する向きに取り付けられているが、感光体ドラムに当接しているので、感光体ドラムの表面を摩耗させ、画質を劣化させることがあった。これに対し、感光体ドラムの高寿命化とクリーニング性能の安定化を図った画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-170118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像形成装置は、像担持体と、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体上にトナー像を形成する現像装置と、像担持体の表面に先端稜線部を当接させて表面から付着物を除去するクリーニング装置とを備える。像担持体は、微粒子を含有した表面層を有する。クリーニング装置は、像担持体に当接する先端稜線部を含んだエッジ層と、他の層とからなる複数層構成の短冊形状のクリーニングブレードである。帯電装置は、直流電圧が印加された帯電部材である。現像装置で使用するトナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、および離型剤からなり、外添剤として少なくとも脂肪酸金属塩を含有するトナーである。
【0006】
ところで、脂肪酸金属塩を含有するトナーを用いて画像形成を繰り返した際、像担持体表面に落下した外添剤の分布ムラに起因して、転写濃度ムラが発生し、画像不良を引き起こすという課題があった。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、転写濃度のムラを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る画像形成装置は、像担持体と、脂肪酸金属塩を含むトナーを用いて、前記像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、前記像担持体上のトナー像を、電源から転写バイアスが供給される転写部材によって用紙に転写する転写部と、前記像担持体と当接し、前記用紙への転写後に前記像担持体上に残ったトナーを掻きとる清掃部材を有する清掃部と、前記画像形成部がトナー像の形成を行う前の所定期間内に、前記画像形成部が行った画像形成動作に関する情報を前歴情報として記憶する記憶部と、前記前歴情報に基づいて、前記電源から前記転写部材に供給する前記転写バイアスの条件を変更する転写バイアス変更制御を実施可能な制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本開示に係る画像形成装置は、前記前歴情報は、単位時間ごとに区切られて記憶された複数の詳細前歴を有し、前記詳細前歴は、前記単位時間ごとの画像形成動作に関する情報である詳細情報と、現在の時間に近い単位時間ほど補正量が多くなるように重みづけられた基本補正量とを含み、前記転写バイアス変更制御では、前記詳細情報から求められた前記単位時間に対する画像形成動作が行われた比率情報によって対応する前記基本補正量を補正した比率補正量に基づいて、前記転写バイアス条件を変更する構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る画像形成装置は、前記画像形成装置が設置された環境に関する情報を取得する情報取得部を備え、前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、前記転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断する構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る画像形成装置は、前記画像形成部の駆動条件に関する情報を取得する情報取得部を備え、前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、前記転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断する構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る画像形成装置は、前記像担持体は、駆動源からの回転力を受けて軸線を中心に回転する円筒部を有し、前記円筒部の外周面に前記トナー像が形成され、前記清掃部材は、前記軸線の方向である軸線方向に延びた前記外周面との当接部を有する クリーニングブレードであり、前記清掃部は、前記軸線方向のうち、一方側の端部に設けられたトナー排出口と、前記当接部で掻き取ったトナーを前記トナー排出口に搬送する前記軸線方向に延びた搬送部材と、を有し、前記制御部は、前記当接部にトナーを供給するトナー供給制御を更に実行可能で、前記トナー供給制御の実行時に、前記軸線方向において、前記トナー排出口が設けられた前記一方側よりも前記他方側が面積の大きな供給トナー像を形成する構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る画像形成装置では、前記画像形成部に供給される脂肪酸金属塩を含むトナーは、外添剤もしくは内点剤として、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、またはパラフィン系ワックスを含む構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、像担持体上に残った脂肪酸金属塩の分布に偏りが生じていても、像担持体への過電流を抑制することで、転写濃度のムラを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
図2】感光体ドラムと転写ローラとの間のニップ域で用紙が挟持された状態を示す模式断面図である。
図3】感光体ドラムの表面電位の推移を示す説明図である。
図4】画像形成装置の概略構成を示す概略構成図である。
図5】記憶部が記憶する前歴情報の一例である前歴テーブルを示す特性図表である。
図6】本開示の実施の形態に係る画像形成装置において、転写バイアス変更制御の処理フローを示すフロー図である。
図7】本開示の転写バイアス変更制御における温湿度テーブルを示す特性図表である。
図8】クリーニングブレードが感光体ドラムに当接した状態を示す斜視図である。
図9】クリーニング装置と供給用トナー像との位置関係を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0018】
画像形成装置1は、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して単色の画像を形成する。画像形成装置1には、感光体ドラム11(像担持体の一例)、露光装置12、現像装置13、クリーニング装置14(清掃部の一例)、転写ローラ15(転写部材の一例)が含まれる転写装置(転写部の一例)、帯電器16、図示しない感光体ドラム11の除電装置、定着部17、用紙搬送路S、用紙カセット22、排紙トレイ26、補助トレイ28、およびトナーボトル30が設けられている。ここで、露光装置12、現像装置13、帯電器16、感光体ドラム11の除電装置が、感光体ドラム11の表面にトナー像を形成する画像形成部に相当する。
【0019】
感光体ドラム11は、用紙搬送路Sに沿って配置され、図示しない駆動源からの回転力を受けて回転する。帯電器16は、感光体ドラム11の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置12は、感光体ドラム11の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置13は、感光体ドラム11の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム11の表面にトナー像を形成する。
【0020】
転写ローラ15は、感光体ドラム11との間にニップ域が形成されるように感光体ドラム11の表面と当接し、感光体ドラム11の回転力によって従動回転するように配置される。そして、転写ローラ15は、用紙搬送路Sを通じて搬送されて来た用紙をニップ域に挟み込んで搬送し、ニップ域を通過する用紙に、感光体ドラム11の表面のトナー像を転写する。クリーニング装置14は、感光体ドラム11に当接させたクリーニングブレード40(清掃部材の一例)によって、現像および画像転写の後に感光体ドラム11の表面に残った残留トナーを掻き取り、掻き取った残留トナーは図示しない収容器に排出される。つまり、クリーニング装置14は、感光体ドラム11表面と当接し、用紙への転写後に感光体ドラム11表面に残ったトナーを掻き取るクリーニングブレード40を有する。なお、クリーニングブレード40については、後で詳しく説明する。
【0021】
用紙カセット22は、画像形成に使用される用紙を蓄積するためのカセットであり、画像形成装置1の下部に設けられている。また、排紙トレイ26は、画像形成装置1の上部に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。補助トレイ28は、排紙トレイ26よりも上方に設けられ、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0022】
画像形成装置1では、用紙カセット22から供給された用紙が、用紙搬送路Sを介して、転写ローラ15や定着部17を経由させて排紙トレイ26または補助トレイ28に送られる。用紙搬送路Sは、画像形成装置1の一方の側壁寄り(図1では、右方)に設けられ、ピックアップローラ23、レジストローラ24、分岐ガイド27、排紙ローラ25、および補助排紙ローラ29が配置されている。
【0023】
ピックアップローラ23は、用紙カセット22の端部近傍に備えられ、用紙カセット22から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給する。レジストローラ24は、用紙カセット22から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム11上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで、用紙を転写ローラ15に搬送する。
【0024】
定着部17は、定着ローラ18および加熱ローラ20に定着ベルト21が巻き掛けられ、定着ベルト21を介して定着ローラ18に加圧ローラ19が押圧されるようになっている。定着部17では、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、用紙を定着ベルト21と加圧ローラ19との間に挟み込んで搬送し、未定着のトナー像を熱と圧力で用紙に定着させる。
【0025】
定着後の用紙は、分岐ガイド27を経由するように搬送される。用紙搬送路Sは、分岐ガイド27を起点にして、排紙ローラ25へ向かう下段排紙経路S1(排紙経路の一方)と、排紙ローラ25よりも上方の補助排紙ローラ29へ向かう上段排紙経路S2(排紙経路の他方)とに分岐している。排紙ローラ25を経由した用紙は、排紙トレイ26上に排出され、補助排紙ローラ29を経由した用紙は、補助トレイ28上に排出される。画像形成した用紙を、排紙トレイ26および補助トレイ28のうち、いずれに排出するかは、分岐ガイド27の動作によって制御することができる。
【0026】
トナーボトル30は、露光装置12の上方であって、定着部17の近傍(図1では、定着部17の左方)に設けられており、現像装置13へ供給するトナーを内部に貯蔵している。本実施の形態において、トナーボトル30には、トナーが貯蔵される。トナーには、ステアリン酸亜鉛またはラウリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩が内包または外添されて含まれている。このように、脂肪酸金属塩を含むトナーを用いることで、脂肪酸金属塩を塗布する専用の装置を設けなくても、像担持体の摩耗やフィルミングを抑制することができる。従って、画像形成部は、脂肪酸金属塩を含むトナーを用いて、感光体ドラム11表面にトナー像を形成すると言える。なお、トナーには、パラフィン系ワックスが添加されていても同様の効果を得ることができる。
【0027】
ところで、脂肪酸金属塩やパラフィン系ワックスを含むトナーを用いた際には、脂肪酸金属塩やパラフィン系ワックスがトナーから遊離し、感光体ドラム11の表面に付着することで、帯電性に影響を及ぼす。次に、脂肪酸金属塩を含むトナーが感光体ドラム11の帯電性に及ぼす影響について、図2を参照して説明する。
【0028】
図2は、感光体ドラムと転写ローラとの接触部であるニップ域で用紙が挟持された状態を、用紙の搬送方向に見た模式断面図である。
【0029】
最初に感光体ドラム11と転写ローラ15について、詳しく説明する。
【0030】
感光体ドラム11は、円筒状の基層11b(例えば、アルミ素管)、基層11bの外側に形成された電荷発生層11c(CGL)、および電荷発生層11cの外側に形成された電荷輸送層11d(CTL)を有する。電荷発生層11cおよび電荷輸送層11dは、光が照射されることで導体に変化する感光層である。
【0031】
基層11b、電荷発生層11cおよび電荷輸送層11dは、円筒部を形成し、中心に設けられた金属製の回転軸11aを中心に図示しない駆動源からの回転力を受けて回転する(図8中の矢印Rの方向に回転する。)。
【0032】
つまり、感光体ドラム11は、駆動源からの回転力を受けて回転軸11aの軸線を中心に回転する円筒部を有し、当該円筒部の外周面である感光層に後述する手順でトナー像が形成される。
【0033】
また、基層11bは図示しないが、回転軸11aに電気的に接続されており、回転軸11aを介して接地される。
【0034】
転写部が有する転写ローラ15は、金属製の芯金15aと芯金15aの外周面に形成された導電性の弾性層15bを有する。芯金15aは、回動可能に軸支されており、電源(転写電源)15cから所定の電流または電圧である転写バイアスが供給される。
【0035】
この転写バイアスの供給によって、転写ローラ15からニップ領域にある用紙Pを介して感光体ドラム11に電流が流れ、感光体ドラム11上のトナー像が静電気的に用紙P側に引き寄せられて転写される。
【0036】
以上のように、転写部は、感光体ドラム11表面のトナー像を、電源15から転写バイアスが供給される転写ローラ15によって用紙Pに転写する。
【0037】
ここで、画像形成を繰り返すと、トナーから徐々に脱落した脂肪酸金属塩が感光体ドラム11上に付着する。脂肪酸金属塩は、トナー粒径(例えば6μm)より遥かに小さく(例えば0.1μm以下)クリーニングブレード40の感光体ドラム11との当接部をすり抜けやすい。
【0038】
クリーニングブレード40をすり抜けた脂肪酸金属塩は、感光体ドラム11表面に付着するが、トナー像が形成される感光体ドラム11上の位置は常に変化するため、感光体ドラム11上には、意図せず脂肪酸金属塩が多く付着しているリッチ領域DRと、それほど付着していない領域が生じてしまう。このリッチ領域DRにおいて、次のような不具合が発生する。
【0039】
転写ローラ15に転写バイアスが供給されている状態において、つまり、転写ローラ15から用紙Pを介して感光体ドラム11に電流が流れる。この電流によって、感光体ドラム11上のトナー像が、用紙側に転写されるが、感光体ドラム11の表面、すなわち電荷輸送層11dの表面にリッチ領域DRがあると、リッチ領域DRに、より大きな電流Isが流れ込むため、感光層つまり電荷発生層11cと電荷輸送層11dの電気特性(絶縁性や露光時の導電性)が周囲の脂肪酸塩の付着量の少ない領域(リッチ領域DRより少ない電流Inが流れる領域)より劣化する疲労現象を一時的に引き起こす。この電気的な疲労について、次に説明する。
【0040】
図3は、感光体ドラムの表面電位の推移を示す説明図である。
【0041】
図3において、縦軸は、感光体ドラム11の表面電位を示し、横軸は、時間の経過を示している。図3では、感光体ドラム11の表面のうち、リッチ領域DRに対応する領域において、電子写真プロセス、つまり、帯電、露光、現像、転写、除電が繰り返された場合の表面電位の推移を示している。上述したように、画像形成の際、感光体ドラム11は、帯電器16によって、表面が所定の電位(設定電位V0)となるように帯電され、その後、露光、現像、転写、および除電の動作を経て、用紙への画像形成が完了する。そして、次の用紙へ画像形成する際、再度、帯電の動作が行われる。
【0042】
ところで、リッチ領域DRに対応する部分では、転写時に電流が多く流れ込むことで、脂肪酸金属塩の付着量の少ない領域より感光層の電気疲労を強く受ける。そのため、除電後に帯電器16で感光体ドラム11の表面を帯電させても、その表面電位は、設定電位V0よりも僅かに低くなる。ここで生じたズレは、画像形成を繰り返すたびに蓄積されていく。図3に示す一例では、2回目の帯電の際に生じたズレ(第1電位ズレd1)よりも、3回目の帯電の際に生じたズレ(第2電位ズレd2)の方が大きくなっている。電位のズレが小さいうちは、画質に余り影響を及ぼさないが、電位のズレが大きくなると、トナー像の濃度ムラ等を引き起こす。このような電気特性の変化は、正確に説明すると、転写時に電流が流れることで発生するが、感光体ドラム11の表面に不均一に脂肪酸金属塩が付着するため、特に付着量の多い領域で発生する電気特性の変化が画像不良を引き起こす原因となる。
【0043】
以上で説明した脂肪酸金属塩の付着による電気特性の変化(劣化)は、一時的なもので、時間が経過すると回復する傾向がある。つまり、連続して画像形成を行うと、電気特性の変化(疲労)が転写時の電流が流れる毎に累積されて大きくなるが、画像形成を行わず放置すると、放置する時間が進むに従って電気特性の変化量が少なくなり、最終的には電気特性が回復する。そこで、本実施の形態では、画像形成部がトナー像の形成を行う前の所定期間内に、画像形成部が行った画像形成動作に関する情報である前歴情報に基づいて、電源(転写電源)15cから転写ローラ15に供給する転写バイアスの条件を変更する転写バイアス変更制御を行うことで、画像の劣化を抑えるようにしている。
【0044】
図4は、画像形成装置の概略構成を示す概略構成図である。
【0045】
画像形成装置1は、さらに、制御部81、記憶部82、および情報取得部83を備えている。
【0046】
記憶部82は、画像形成部がトナー像の形成を行う前の所定期間内に、画像形成部が行った画像形成動作に関する情報を前歴情報として記憶する。具体的に、前歴情報では、画像形成における各種条件と、画像形成を実施した時間とが関連付けられている。画像形成における各種条件については、1回の画像形成にかかった時間から換算した感光体ドラム11の回転数を記憶してもよい。
【0047】
制御部81は、前歴情報に基づいて、画像形成において転写ローラ15に供給する転写バイアスの条件を変更する転写バイアス変更制御を実行可能である。なお、具体的な転写バイアス変更制御については、後述する図5と併せて説明する。
【0048】
情報取得部83は、画像形成装置1に関する各種情報を取得する。具体的に、情報取得部83は、上述した前歴情報や、画像形成装置1が設置された環境に関する環境情報や、画像形成部の駆動条件に関する駆動情報を併せて、補正情報として取得する。
【0049】
環境情報は、画像形成装置1が設置された環境での温度や湿度に対応する。駆動条件は、画像形成における感光体ドラム11の動作速度(回転速度)に対応する。これは、本実施の形態において、画像形成における処理速度は、感光体ドラム11の回転速度を基準として設定されているからである。
【0050】
図5は、記憶部が記憶する前歴情報の一例である前歴テーブルを示す特性図表である。
【0051】
図5に示す前歴テーブルTB1は、前述したように記憶部82に記憶されており、画像形成装置1がトナー像の形成を行う前の所定の期間内、例えば8時間(8Hr)という直近の期間内に画像形成装置1が行った画像形成動作に関する情報である前歴情報と、補正に必要な情報とが記憶されている。より詳しく説明すると、前歴テーブルTB1では、前歴情報は、直近8Hrを所定の単位時間ごと(例えば1時間毎)に区切られており、つまり時間域xごとの詳細前歴に分けられており、各詳細前歴に対して、それぞれ対応する過去の画像形成履歴Bx(詳細情報)と基本補正量Cxとが関連付けられて記憶されている。このように、前歴情報は、単位時間ごとに区切られて記憶された複数の詳細前歴を有する。
【0052】
ここで詳細前歴は、(画像形成処理を受け付けた)現在の時間に対して、何時間前に実施した画像形成に関する情報かを示している。つまり、時間域(x)が1hの欄では、直近1時間以内の画像形成に基づく情報に対応する。また、時間域(x)が2hの欄では、現在の時間より前であって、1時間以上2時間以内の画像形成に基づく情報に対応する。そして、各詳細前歴に記憶される過去の画像形成履歴(Bx)は、対応する時間域xにおいて感光体ドラム11が回転した累積回転数である。また、対応する時間域xに対して予め決められた基本補正量(Cx)が設定されている。
【0053】
ここで、基本補正量Cxは、現在の時間、つまり画像形成処理を受け付けた時点に近い単位時間ほど補正量が多くなるように重みづけられている。例えば、時間域(x)が1hの基本補正量は-8、時間域(x)が4hの基本補正量は-5.6、時間域(x)が8hの基本補正量は-2である。このように重みづける理由は、直近に画像形成動作が行われていればいるほど、前述した感光層の電気疲労の影響が大きくなるためである。
【0054】
以上のように、詳細前歴は、単位時間ごとの画像形成動作に関する情報である詳細情報と、現在の時間に近い単位時間ほど補正量が多くなるよう重みづけられた基本補正量を含む。
【0055】
制御部81は、転写バイアス変更制御において、前歴テーブルTB1を参照して転写電流値の補正量を算出する。具体的に、転写バイアス変更制御では、各時間域xごとに区切られた詳細前歴に記憶された感光体ドラム11の累積回転数(Bx)を記憶部82から読出し、図示しないが、各時間域xごとに予め決められた、その時間域xにおいて休止することなく連続して回転した場合の最大回転数(Ax)、(これは画像性装置1の感光体ドラム11の外径および回転速度がわかれば一意的に決定される)に対する比率を求め、これに基本補正量(Cx)を乗じて、各時間域xごとの補正量である比率補正量(hx)を算出する。本実施の形態では、時間域xに対する感光体ドラム11の累積回転数の比率に応じて比率補正量(Cx)を求めたが、時間域xに対する感光体ドラム11の回転時間の比率に応じて比率補正量(Cx)を求めてもよい。つまり、時間域xにおける補正量(hx)は、「hx=Bx/Ax×Cx」という計算式で表される。なお、この計算式での「x」は、前歴の項目の値によって適宜変更される値となっており、例えば、時間域xが1hの欄に対応する比率補正量(hx)はh(1)となり、時間域xが2hの欄に対応する比率補正量(hx)はh(2)となる。
【0056】
各時間域xごとの比率補正量(hx)を算出した後、これらを合算して、転写補正量(Hs)を算出する。つまり、転写補正量は、「Hs=h(1)+h(2)+h(3)+・・・」という計算式で表される。転写バイアス変更制御では、このようにして算出した転写補正量を用いて、転写動作時に転写電源15cから転写ローラ15に供給する転写バイアスである転写電流値(It)を補正している。具体的には、転写電流値(It)は、「It=+15μA(マイクロアンペア)+0.2843×Hs×μA」という計算式によって算出される。
【0057】
以上のように、転写バイアス変更制御では、詳細前歴の画像形成履歴Bx(詳細情報)から求められた単位時間に対する画像形成動作が行われた比率情報によって基本補正量を補正した比率補正量に基づいて、転写バイアス条件を変更する。
【0058】
転写補正量の具体的な例を、感光体ドラム11の外径が30mm、感光体ドラム11の回転速度が282.7mm/s、前歴情報が、時間域xが1hごとに区切られた詳細履歴に記憶されている本開示の画像形成装置1の場合で説明する。時間域xが1h毎に区切られているので、本開示の画像形成装置1での最大回転数(Ax)は、時間域xによらず10800回転で一定となる。これは次の式から求まる(回転速度282.7mm/秒×3600秒/(外径30mm×π)≒10800回転)。ここで、時間域xが1hにおける回転数(B1)が2700回転で、時間域xが8hの詳細履歴における回転数(B8)が5400回転だった場合、時間域xが1hにおける補正量(h1)は、(B1)/Ax×(-8)=2700/10800×(-8)=-2となり、時間域xが8hにおける補正量h(8)は、(B8)/Ax×(-2)=5400/10800×-2=-1となり、転写補正量(Hs)は、Hs=h1+h8=-2-1=-3となる。つまり、転写動作時に転写電源15cから転写ローラ15に供給する転写バイアスの条件である転写電流値(It)は、15μA+0.283×(―3)μA=15μA-0.85μA=14.15μAとなる。ここで15μAは、予め決められている基準転写電流(基準となる転写バイアスの条件の一例)である。
【0059】
以上のように、転写バイアス変更制御では、直近に行われた画像形成動作に関する情報である前歴情報に基づいて、画像形成時に転写ローラ15に供給する転写バイアスである転写電流を、基準転写電流値から下げる変更を行う。つまり、制御部5は、前歴情報に基づいて、電源15から転写ローラ15に供給する転写バイアスの条件を変更する。そうすると、感光体ドラム12の表面に脂肪酸金属塩の量が多いリッチ領域DRができ、脂肪酸金属塩の量が少ない領域との間に表面電位の差が出来ても、転写バイアスを基準転写電流値から下げることによって、表面電位のばらつきに起因する濃度ムラ(転写濃度ムラ)の発生を抑制することができる。
【0060】
また、前述したように、図5に示す前歴テーブルTB1の一例では、基本補正量(Cx)は、前歴情報において現在の時間に近い時間領域ほど値が大きく、時間を遡るにつれて、値が小さくなるように設定されている。つまり、補正量について、現在の時間に近い前歴の影響を大きくするように、重み付けが行われている。このように、画像形成を実施してから経過した時間を考慮して重み付けを行うことで、感光層が受けた電気的な疲労の影響度に応じて適切な補正量を算出することができ、感光体ドラム12の表面に付着した脂肪酸金属塩の量に場所的なムラがあって表面電位にばらつきが生じても、転写による濃度ムラをなくすことができる(あるいは目立たないレベルにすることができる)。つまり、感光層が受けた電気的な疲労度が大きいほど転写電流を低くすると、転写による濃度ムラを目立たないレベルにすることができる。そのため、基準転写電流値から下げる転写補正量Hsは、直近に行われた画像形成動作ほど補正量が大きくなるように単位時間毎に区切られた重みづけられて前歴情報に記憶された基本補正量(Cx)に基づいて算出される。これにより、さらに適正な補正量を算出することができる。なお、詳しくは後述するが、補正量には転写性に影響を与えないように上限が決められている。つまり、転写バイアス変更制御で変更される転写バイアスの範囲は、転写性に影響が出ないように決められている。
【0061】
図6は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置において、転写バイアス変更制御の処理フローを示すフロー図である。
【0062】
ステップS01では、情報取得部83によって、補正情報を取得する。ここで、補正情報を取得するタイミングは、画像形成の実施を指示されたときとすればよく、これに合わせて、前歴情報を含む各種情報を更新してもよい。
【0063】
ステップS02では、制御部81によって、転写補正量を算出する。ここで、制御部81は、上述した計算式に基づいて、転写補正量を算出すればよい。
【0064】
ステップS03では、制御部81によって、転写補正量が上限値を超えているかどうかを判断する。転写補正量については、予め上限値が設定されており、ステップS02で算出した転写補正量と上限値とを比較する。その結果、転写補正量が上限値を超えている場合(ステップS03:Yes)には、ステップS04へ進む。一方、転写補正量が上限値を超えていない場合(ステップS03:No)には、ステップS05へ進む。
【0065】
ステップS04では、制御部81によって、転写補正量を上限値に変更する。つまり、上限値より高い転写補正量を、上限値まで引き下げる。このように、転写補正量に関する上限値を設定することで、転写電流値が適切な値となるように、補正の程度を調整することができる。
【0066】
ステップS05では、制御部81によって、転写補正量を転写電流値に反映して、転写バイアス変更制御を終了する。画像形成装置では、転写バイアス変更制御が反映された転写電流値に基づいて、画像形成を実施する。本実施の形態では、上限値が-7に設定されており、転写補正量(Hs)の値が-7よりも大きくなると、言い換えると転写補正量(Hs)の絶対値が大きくなってもこれを超えないように転写補正量(Hs)が設定される。この上限値の値は、転写性、例えば転写効率などに影響がでない電流値となるように予め実験結果に基づいて決定されている。このように、感光体ドラム11上での脂肪酸金属塩の分布に偏りが生じていても、転写バイアス変更制御によって、転写濃度のムラを防止することができる。
【0067】
図5に示す前歴テーブルTB1の一例では、前歴を一律の単位時間(1時間)に区切っていたが、これに限定されず、単位時間を異ならせて区切ってもよい。例えば、直近の1、2時間以内については、30分や15分といった短い単位時間に区切り、それ以前については、1時間や2時間といった長い単位時間に区切ってもよい。このように、単位時間を異ならせて区切ることで、重視する区間での稼働状況を詳しく把握し、転写バイアス変更制御での補正の精度を高めることができる。単位時間を異ならせた場合には、単位時間当たりの補正量(hx)を算出する際、単位時間の長さに応じた補正量となるように、比率や基本補正量を調整すればよい。
【0068】
画像形成装置1では、感光体ドラム11の駆動状況によって、形成される画像の品質への影響が異なるので、駆動情報を参照して、転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断してもよい。具体的に、感光体ドラム11の動作速度が遅い場合に、表面電位のばらつきに起因する濃度ムラ(転写濃度ムラ)が発生しやすいので、感光体ドラム11の動作速度に対する閾値を設定し、閾値よりも現像装置13の動作速度が遅い場合に転写バイアス変更制御をしてもよい。具体的には、制御部81は、感光体ドラム11の動作速度(回転速度)が例えば120mm/s以下の場合に、転写バイアス変更制御を実施すると判断する。つまり、画像形成装置1は、画像形成部の駆動条件(感光体ドラム11の動作速度)に関する情報を取得する情報取得部83を備え、制御部81が、情報取得部83が取得した情報に基づいて、転写バイアス変更制御を実施するかどうか判断するように構成することで、表面電位のばらつきに起因する濃度ムラ(転写濃度ムラ)の発生を効果的に防止できる。
【0069】
図7は、転写バイアス変更制御における温湿度テーブルを示す特性図表である。
【0070】
画像形成装置1では、自身が設置された環境によって、形成される画像の品質への影響が異なるので、環境情報を参照して、転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断してもよい。具体的に、制御部81は、図7に示す温湿度テーブルTB2を参照して、転写バイアス変更制御を実施するかどうかを判断する。
【0071】
温湿度テーブルTB2は、転写バイアス変更制御を実施するかどうかについて、温度および湿度の条件を示している。図7に示す温湿度テーブルTB2の一例において、温度は、低温度帯(Lt)、中温度帯(Mt)、および高温度帯(Ht)の3つの範囲が設定されており、湿度は、低湿度帯(Lh)、中湿度帯(Mh)、および高湿度帯(Hh)の3つの範囲が設定されている。図7に示す温湿度テーブルTB2の一例では、高温度帯(Ht)かつ高湿度帯(Hh)である場合に、転写バイアス変更制御を実施するように設定されており、それ以外の場合には、転写バイアス変更制御を実施しないように設定されている。これは、高温高湿環境下において表面電位のばらつきに起因する濃度ムラ(転写濃度ムラ)が発生しやすいためである。そのため、制御部81は、環境情報における温度および湿度を参照して、温度および湿度がいずれの範囲に該当するかを確認し、温湿度テーブルTB2に基づいて、転写バイアス変更制御を実施するかどうかを決定する。
【0072】
図7では、温度および湿度について、それぞれ3つの範囲に区切った場合を示したが、これに限定されず、温度および湿度について、より多くの範囲に区切ってもよいし、転写バイアス変更制御を実施する温湿度条件を適宜変更してもよい。
【0073】
以上のように、画像形成装置1が設置された環境に関する情報を取得する情報取得部83を備え、情報取得部83が取得した情報に基づいて、転写バイアス変更制御を実施するかどうかを制御部81が判断するように構成することで、表面電位のばらつきに起因する濃度ムラ(転写濃度ムラ)の発生を効果的に防止できる。
【0074】
次に、感光体ドラム11とクリーニング装置14との関係について、図8および図9を参照して説明する。
【0075】
図8は、クリーニングブレードが感光体ドラムに当接した状態を示す斜視図である。
【0076】
図8は、画像形成装置1のうち、感光体ドラム11およびクリーニングブレード40を抜き出して示している。なお、図8では、感光体ドラム11について、回転軸11a等を省略し、模式的に示している。感光体ドラム11は、回転軸11aの軸線方向Wでの端部が筐体に軸支されており、前述したように図示しない駆動源によって回転軸11aの軸線を中心に軸回り(図8に示す回転方向R)に回転する。以下では説明のため、軸線方向Wのうち、一方へ向かう方向を第1軸線方向W1と呼び、他方へ向かう方向を第2軸線方向W2と呼ぶことがある。
【0077】
クリーニングブレード40は、弾性ブレード41、支持板42、およびビス43を有している。弾性ブレード41は、先端が感光体ドラム11の表面に回転軸11aの軸線の方向に接しており、後端部が支持板42に支持されている。つまり、クリーニングブレード40は、回転軸11aの軸線の方向である軸線方向に延びた感光体ドラム11の外周面との当接部(弾性ブレード41の先端)を有する。支持板42は、ビス43を介してクリーニング装置14の筐体に固定されている。軸線方向Wにおいて、弾性ブレード41は、感光体ドラム11(特に、電荷輸送層11d)と略同じ長さとされており、感光体ドラム11の端部を除く略全体に先端が当接している。つまり、弾性ブレード41の先端を当接させた状態で、感光体ドラム11を回転させると、感光体ドラム11の周面全体を弾性ブレード41でなぞることができる。
【0078】
弾性ブレード41は、感光体ドラム11の回転方向Rに抗する向きに取り付けられており、感光体ドラム11が回転すると、先端が回転方向Rに沿って引き込まれるように作用するが、自身の弾性によって先端の向きを保っている。しかしながら、画像形成を繰り返して、感光体ドラム11の表面状態が変化すると、弾性ブレード41と感光体ドラム11との摩擦に変化が生じ、感光体ドラム11に巻き込まれて、弾性ブレード41の先端が折れ曲がることがあった。このような問題を解決するために、画像形成装置1では、画像形成回数が所定回数(例えば、3000回)を超える毎に、感光体ドラム11の表面とクリーニングブレード11(弾性ブレード41)との当接部にトナーを潤滑剤として供給するために、感光体ドラム11上に供給用トナー像HTを形成し、供給用トナー像HTを当該当接部に送る。これにより、弾性ブレード41と感光体ドラム11と接触状況を良好な状態に保っている。
【0079】
次に、供給用トナー像HTの形状と、クリーニング装置14と供給用トナー像HTとの位置関係について、図9を参照して説明する。
【0080】
図9は、クリーニング装置と供給用トナー像との位置関係を示す模式説明図である。
【0081】
図9において、図面の左側には、クリーニング装置14と感光体ドラム11との位置関係を模式的に示しており、図面の右側には、展開した感光体ドラム11の外周面の一部を示している。
【0082】
クリーニング装置14は、内部に搬送スクリュー14aが収納され、第2軸線方向W2側の端部にトナー排出口14bが設けられた筐体を有する。クリーニング装置14では、クリーニングブレード40によって、感光体ドラム11の表面に残留したトナーを回収して筐体内に収容する。筐体内に収容されたクリーニングブレード40が掻き取ったトナーは、図示しない駆動源によって、搬送スクリュー14aを駆動させることで、第1軸線方向W1側の端部から第2軸線方向W2側の端部に向かって搬送され、トナー排出口14bを介して筐体外(の収容器)に排出される。上述したように、クリーニングブレード40は、軸線方向Wに沿って長く延びた先端が、感光体ドラム11に当接している。そして、クリーニング装置14では、軸線方向Wでの一方(第2軸線方向W2)にトナーを搬送しているので、クリーニングブレード40では、第1軸線方向W1側の端部近傍に掻き取ったトナーが滞留しやすくなり、滞留しやすい領域と対応する感光体ドラム11の表面に集中して脂肪酸金属塩が付着することがあった。
【0083】
より詳しく説明すると、弾性ブレード41の先端で掻き取られたトナーは、搬送スクリュー14aによって軸線方向Wの一方側である第1軸線方向W1に向かって搬送される。そのため、弾性ブレード41の先端に溜まるトナーは、第1軸線方向W1の下流側ほど、搬送スクリュー14aで搬送されてきたトナーで第1軸線方向W1に移動されるので、弾性ブレード41の先端でトナーと共に存在する脂肪酸金属塩も一緒に移動され弾性ブレード41をすり抜け難くなる。逆に、第1軸線方向W1の上流側になるほど、搬送スクリュー14aによって搬送されてくるトナーが少ないので、弾性ブレード41の先端にあるトナーは、第1軸線方向W1側に移動しにくく、その位置に留まる時間が長くなる、つまりより滞留しやすいのでトナーの周囲にある脂肪酸金属塩がトナーから落下し弾性ブレード41をすり抜けやすくなるということである。これを解消するために、現像装置13は、制御部81の指示に基づいて、感光体ドラム11上に形成する供給用トナー像HTの形状を軸線方向Wに変更している。
【0084】
供給用トナー像HTは、軸線方向Wにおいて、トナー排出口14bが設けられた第2軸線方向W2の端部側の方が、第1軸線方向W1の端部側よりも面積が大きくなっている。具体的に、補給用トナー像HTは、端部大面積部HT1、端部小面積部HT2、および全体当接部HT3で構成されている。
【0085】
端部大面積部HT1は、第1軸線方向W1での端部に配置されており、回転方向Rで長い長方形状とされている。以下では説明のため、端部大面積部HT1の大きさについて、回転方向Rでの長さを第1像長さTL1と呼び、軸線方向Wでの長さを第1像幅TW1と呼ぶことがある。
【0086】
端部小面積部HT2は、第2軸線方向W2での端部に配置されており、回転方向Rで長い長方形状とされている。以下では説明のため、端部小面積部HT2の大きさについて、回転方向Rでの長さを第2像長さTL2と呼び、軸線方向Wでの長さを第2像幅TW2と呼ぶことがある。
【0087】
端部大面積部HT1と端部小面積部HT2とを比較すると、第1像長さTL1は、第2像長さTL2より長く、第1像幅TW1は、第2像幅TW2より長くなっている。つまり、端部大面積部HT1は、端部小面積部HT2よりも面積が大きい。
【0088】
回転方向Rにおいて、上流側(図9では、右方)では、端部大面積部HT1と端部小面積部HT2とで端部の位置が一致している。また、端部大面積部HT1は、端部小面積部HT2よりも回転方向Rでの下流側(図9では、左方)に長く延びている。つまり、補給用トナー像HTを形成した状態で、感光体ドラム11を回転させた際、端部大面積部HT1の方が、端部小面積部HT2よりも先に、弾性ブレード41に掻き取られる。
【0089】
全体当接部HT3は、軸線方向Wで長い長方形状とされており、弾性ブレード41と略同じ長さとされている。端部大面積部HT1および端部小面積部HT2は、回転方向Rの上流側の端部が全体当接部HT3と繋がっている。つまり、弾性ブレード41は、軸線方向Wの端部において、端部大面積部HT1および端部小面積部HT2を掻き取った後、先端全体で全体当接部HT3を掻き取る。このように、脂肪酸金属塩が滞留しやすい第2軸線方向W2側の端部近傍において、トナー等の滑剤を多く供給することで、弾性ブレード41の先端に留まるトナーを搬送スクリュー14aで移動させやすくし、滞留したトナーと共にある脂肪酸金属塩のすり抜けを効率よく防止し、画質の高い画像を形成することができる。また、先端全体に行き渡るようにトナー等の滑剤を供給することで、弾性ブレード41と感光体ドラム11との接触状況を良好に保つことができる。
【0090】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム(像担持体の一例)
13 現像装置(画像形成部の一例)
14 クリーニング装置(清掃部の一例)
14a 搬送スクリュー
14b トナー排出口
15 転写ローラ(転写部材の一例)
17 定着部
40 クリーニングブレード
81 制御部
82 記憶部
83 情報取得部
R 回転方向
W 軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9