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  • 特開-積層体用包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158810
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】積層体用包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/02 20060101AFI20241031BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241031BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65D75/02
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074357
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 友紀子
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA12
3E067AB71
3E067AB75
3E067AC03
3E067AC14
3E067BA18A
3E067BB01A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA24
3E067DA04
3E067EA06
3E067EA37
3E067EE02
3E067FA01
3E086AA22
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD13
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG10
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100GB15
4F100JK16
4F100JK16A
4F100JK16B
4F100JL12
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ヒートシール加工を行うことが可能であり、操業性が良好で、かつ、積層体を安定して保持固定することができる包装材を用いた積層体用包装体を提供する。
【解決手段】シートを積層した積層体と、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する包装材と、を含む積層体用包装体であって、包装材は、塗工層同士の剥がし強度が750gf/25mm以上、坪量が40g/m以上60g/m以下であり、包装材における、塗工層同士の動摩擦係数が0.47以上0.54以下であることを特徴とする、積層体用包装体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積層した積層体と、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する包装材と、を含む積層体用包装体であって、
前記包装材は、前記塗工層同士の剥がし強度が750gf/25mm以上、坪量が40g/m以上60g/m以下であり、
前記包装材における、塗工層同士の動摩擦係数が0.47以上0.54以下であることを特徴とする、積層体用包装体。
【請求項2】
前記包装材における、塗工層同士の静摩擦係数が0.14以上であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体用包装体。
【請求項3】
前記包装材における、前記塗工層と前記紙層との動摩擦係数が0.23以上0.30以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体用包装体。
【請求項4】
前記包装材のカンチレバー剛度の値が50mm以上130mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体用包装体。
【請求項5】
前記包装材の前記紙層に用いられる原紙が洋紙であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの積層体を包装材で包装した積層体用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペーパータオルやハンドタオル、不織布ワイパー等、様々な用途に合わせた紙製品や不織布製品が販売されている。
【0003】
これらの製品は1枚1枚がシート状となっており、それらを巻き取った状態か、又は積層した状態で販売されている。しかし、積層した状態のままではシートがずれたり、上下のシートが脱落したりしてしまうおそれがあるため、紙やプラスチックフィルム等の包装材で包装された状態で販売されていることが多い。
【0004】
近年、環境中にごみとして流出したプラスチックが、半永久的に分解されず生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されることなどから、プラスチックごみが大きな問題として取り上げられている。対策としては、プラスチックをバイオマス由来材料、生分解性材料である紙に代替することが提案されている。
【0005】
一方で従来から、紙製の包装材料を食品等の包装材、袋、容器、箱、カップ、蓋材などに成形する場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂を押出しラミネート法等により包装材料に積層させ、ヒートシール適性を付与することが一般に行われている。
【0006】
しかし、これらの熱可塑性樹脂のラミネートでは10~30g/m程度の熱可塑性樹脂を使用しており、プラスチック量の削減が十分とは言えない。このことから現在、紙基材上に熱可塑性樹脂分散体を含む水又は溶剤分散液を塗工することで、積層される塗工層を薄膜・減量化した包装紙が提供されている。
【0007】
そのようなヒートシール紙の先行技術文献として、例えば、特許文献1には、紙基材の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂を含む塗工層を有し、塗工層が、アンチブロッキング剤として少なくとも顔料を含み、塗工層における顔料の配合量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、200質量部未満であり、塗工層に含まれる熱可塑性樹脂が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エチレンメタクリル酸共重合樹脂、エチレンメチルアクリレート共重合樹脂、ポリ乳酸樹脂の1種または2種以上である(ただし、紙基材が、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をYとしたとき、XおよびYの相乗平均が120J/m以上であり、Yに対するXの比(X/Y)が0.5以上2.0以下であり、XおよびYの相乗平均が2.0J/g以上であるものを除く)ことを特徴とするヒートシール紙が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、針葉樹未晒クラフトパルプを主成分とする紙基材と、上記紙基材の片面に積層されるヒートシール層とを備えており、上記紙基材における流れ方向の耐折強度が500回以上1,000回以下であり、幅方向の耐折強度が80回以上200回以下であり、ヒートシール層積層面の表面のベック平滑度が3秒以上230秒以下であり、上記ヒートシール層の主成分がアイオノマー樹脂であり、上記ヒートシール層の塗工量が1.5g/m以上10.0g/m以下であるヒートシール紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2023-010964号公報
【特許文献2】特開2022-024906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
紙製ワイパーや不織布製ワイパー等のシートの積層体を帯紙により保持固定した包装体の形態においても、連続的に包装するための自動化された包装設備の場合は、通常、押し出しラミネート紙が使用されることが一般的である。
【0011】
一方で、熱可塑性樹脂の使用量を抑え、リサイクル性を付与させるためには、樹脂体を塗工した包装材を使用することが望ましい。
【0012】
しかし、従来の包装材では、操業性が悪化したり、製造時、輸送時又はユーザーの使用時にシートの積層体にズレが発生したりすることがあった。
【0013】
そのため、使用後にリサイクルが可能で、操業性に優れ、シート積層体をしっかりと保持する包装材が望まれている。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヒートシール加工を行うことが可能であり、操業性が良好で、かつ、積層体を安定して保持固定することができる包装材を用いた積層体用包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は鋭意検討を行い、シートを積層した積層体と、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する包装材と、を含む積層体用包装体において、包装材の紙層と塗工層との剥がし強度及び坪量をそれぞれ所定の数値範囲内に調整し、かつ、包装材における、塗工層同士の動摩擦係数を所定の数値範囲内に調整することで、操業性が良好で、かつ、積層体を安定して保持固定することができる包装材を用いた積層体用包装体とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0016】
(1)本発明の第1の態様は、シートを積層した積層体と、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する包装材と、を含む積層体用包装体であって、前記包装材は、前記塗工層同士の剥がし強度が750gf/25mm以上、坪量が40g/m以上60g/m以下であり、前記包装材における、塗工層同士の動摩擦係数が0.47以上0.54以下であることを特徴とする、積層体用包装体である。
【0017】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の積層体用包装体であって、前記包装材における、塗工層同士の静摩擦係数が0.14以上であることを特徴とするものである。
【0018】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の積層体用包装体であって、前記包装材における、前記塗工層と前記紙層との動摩擦係数が0.23以上0.30以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の積層体用包装体であって、前記包装材のカンチレバー剛度の値が50mm以上130mm以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載の積層体用包装体であって、前記包装材の前記紙層に用いられる原紙が洋紙であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヒートシール加工を行うことが可能であり、操業性が良好で、かつ、積層体を安定して保持固定することができる包装材を用いた積層体用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る積層体用包装体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0024】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<積層体用包装体>
図1は、本実施形態に係る積層体用包装体1(以下、単に包装体1とも称する)の斜視図である。
本実施形態に係る積層体用包装体1は、シートを積層した積層体10と、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する包装材20と、を含むものである。
【0026】
<積層体>
本実施形態に係る積層体10は、シートを積層したものである。シートは紙製であっても不織布製であってもよく、また、1枚ずつそのまま積層されていても、1枚毎にV字折りやZ字折り等の折り加工をされた状態で積層されていてもよい。
【0027】
(シートの折り加工後における)積層体10の各方向の寸法は特に限定されないが、長手方向の寸法が180mm以上210mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法が150mm以上180mm以下であることが好ましく、厚さ方向の寸法が90mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0028】
<包装材>
本実施形態に係る包装材20は、シートを積層した積層体10を包装するものであり、紙層とヒートシール可能な塗工層とを有する。
なお、包装材20による積層体10の包装形態としては、図1に示すような帯状の形態として(帯紙として)ヒートシール部21を形成し、積層体10を包装することが好ましいが、それに限定されず、ピロー包装、キャラメル包装等の、一般的に紙製品や不織布製品を包装するときに用いられる包装形態であってもよい。
【0029】
本実施形態に係る包装材20の坪量は40g/m以上60g/m以下である。坪量が40g/m未満であると、包装材20が強度に劣り、後述するヒートシール加工を施す際に破れやすくなる。坪量が60g/mを超えると、包装材20が硬くなって積層体10を包装しにくくなる。
なお、包装材20の坪量は42g/m以上58g/m以下であることが好ましい。坪量はJIS P 8124に準拠して測定する。
【0030】
また、本実施形態に係る包装材20のカンチレバー剛度の値が50mm以上130mm以下であることが好ましい。カンチレバー剛度の値を上記の数値範囲内とすることで、包装材20の加工時における操業性が良好なものとなる。
なお、カンチレバー剛度の値は90mm以上120mm以下であることがより好ましい。カンチレバー剛度の値はJIS L 1096(2010)8.21 剛軟度 A法(45°カンチレバー法)に準じて測定する。
【0031】
<紙層>
本実施形態に係る包装材20に含まれる紙層(紙基材)に用いられる原紙は、特に限定されず、和紙でも洋紙でもよいが、中で洋紙であることが好ましい。洋紙としては、通常包装紙等に用いられる上質紙、塗工紙、クラフト紙、クレープ紙等を特に制限なく用いることができる。
紙層に用いられる原紙の坪量は特に限定されないが、30g/m以上57g/m以下であることが好ましい。坪量が30g/m未満であると包装材20が強度に劣り、後述するヒートシール加工を行う際に破れやすくなる。坪量が57g/mを超えると、包装材20が硬くなりすぎて、積層体10を包装しにくくなる。
【0032】
<塗工層>
塗工層は、熱可塑性樹脂を主体で有する。塗工層は、紙層の両面に設けることもできるが、少なくとも片面に有することが好ましい。
塗工層は、ヒートシール可能であり、すなわち、ヒートシール適性を有する。ヒートシール適正を有するとは、加熱、加圧することで接着対象に接着できる(ヒートシール部21を形成しうる)ことを意味する。ヒートシール適性を有することにより、包装用途において、包装形態への成形や形状の維持、密封性の確保などが容易となる。
【0033】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態で使用する熱可塑性樹脂は、製紙分野においてヒートシール層の形成に用いられているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ガラス転移温度が100℃以下であるものを用いることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、-20℃以上85℃以下であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の融点は、80℃以上120℃以下であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエステル樹脂(PET)、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)、エチレンメチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合樹脂(EAA)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、スチレンアクリル酸エステル共重合樹脂、ポリ乳酸樹脂等を用いることができる。また、熱可塑性樹脂は、1種あるいは2種類以上を混合して使用することができる。これらの中で、ヒートシール適性の高いエチレンアクリル酸共重合樹脂が好ましい。
なお、ブロッキング対策として、顔料又はワックス等のアンチブロッキング剤を含有しても構わない。
【0034】
(顔料)
本実施形態で使用する顔料は、特に制限されず、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料等を用いることができる。また、顔料は、1種あるいは2種類以上を混合して使用することができる。これらの中で、重質炭酸カルシウムが、ヒートシール適性を損なわずに、ブロッキング耐性に優れているため好ましい。
【0035】
(ワックス)
本実施形態で使用するワックスは、特に制限されず、アルカン化合物を主体とするパラフィン系ワックス、カルナバやラノリンなどの動植物由来の天然油脂系ワックス、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系ワックス、フッ素化合物を含有するフッ素含有系ワックスなどを用いることができる。ワックスは、1種あるいは2種類以上を混合して使用することができる。これらの中で、カルナバワックスが好ましい。
【0036】
塗工層の塗工方法は特に限定されるものではなく、公知の塗工装置および塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等が挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられる。本実施形態に係る包装材20は、シートを通して使用者の手肌と間接的に接触する用途に用いられる場合があるため、水系塗工であることが、安全性の点から好ましい。
塗工液の粘度、固形分濃度等は、用いる塗工装置、塗工系等に応じて、適宜調整することができる。
【0037】
塗工層の塗工量(乾燥重量)は、片面あたり3g/m以上20g/m以下であることが好ましい。塗工量が片面あたり3g/m未満では、ヒートシール適性が低下する。塗工量が片面あたり20g/mを超えるとヒートシール適性はほとんど向上せず、コストが増加する。
なお、塗工層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。塗工層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての塗工層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る包装材20は、塗工層と紙層とを含むものであればよく、目止め層、印刷層、遮光層、耐水層、耐油層、水蒸気バリア層、ガスバリア層等の他の層を含むことができるが、中でも塗工層と紙層の間に目止め層を備えることが好ましい。目止め層を備えることにより、塗工層におけるピンホール、筋ムラ等の塗工欠陥の発生を少なくすることができ、耐水性、耐油性を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る包装材20は、接着した塗工層の面同士の剥がし強度が750gf/25mm以上である。剥がし強度が750gf/25mm未満であると、ヒートシール加工したときの接着性に劣る。
なお、塗工層の面同士の剥がし強度は750gf/25mm以上1500gf/25mm以下であることが好ましい。剥がし強度は、まず富士インパルス「ポリシーラー210E形」を使用し、「5」の設定温度として、包装材20における塗工層の面同士を重ね合わせて約1.3秒シールする。その後、貼り合わせ部分を含み2mm幅で断裁して、テンシロンにて引張試験を行う。条件はチャック間距離20m、引張スピード100mm/minとして、最大点荷重にて測定したものを最終的な剥がし強度とする。
【0040】
さらに、包装材20における、塗工層同士の動摩擦係数が0.47以上0.54以下である。動摩擦係数が0.47未満であると、包装材20がヒートシール性(操業性)に劣る。動摩擦係数が0.54を超えると、包装材20がタイト性に劣り、積層体10を保持固定しにくくなる。
そして、包装材20における、塗工層同士の静摩擦係数が0.14以上であることが好ましい。静摩擦係数が0.14未満であると、包装材20がヒートシール性(操業性)に劣る。なお、包装材20における、塗工層同士の静摩擦係数は0.17以上であることがより好ましい。
【0041】
また、包装材20における、塗工層と紙層との動摩擦係数が0.23以上0.30以下であることが好ましい。動摩擦係数が0.23未満であると、包装材20がタイト性に劣り、積層体10を保持固定しにくくなる。動摩擦係数が0.30を超えると、塗工層が残りやすく、リサイクル性に劣る。なお、包装材20における、塗工層と紙層との動摩擦係数は0.26以上0.30以下であることがより好ましい。
上記の動摩擦係数及び静摩擦係数は、いずれもISO摩擦試験機(ISO15359対応)にて計測する。
【0042】
<積層体用包装体の製造方法>
本実施形態に係る積層体用包装体1の製造方法としては、特に制限はなく、公知の積層薄葉紙製品の製造方法により製造することができる。
そのような製造方法としては、例えば、(1)シートの製造、(2)裁断及び折り畳み、(3)積層、(4)包装材による包装、といった手順が挙げられるが、一部の手順が前後してもかまわない。
【実施例0043】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
表1に示す各条件において、実施例1~4及び比較例1~6のそれぞれの積層体用包装体を作製した後、以下の評価を行った。
なお、各実施例及び各比較例において、積層体のシートは、NBKP主体で製造された原紙4枚を、ピンエンボスで積層したもの(原紙の坪量23.4g/m)を用いた。シートは4つ折りとして、4枚重ねたものを積層体とした。また、包装材は帯状として両端部にヒートシール加工を施し、積層体を包装した。
【0045】
(ヒートシール加工性(操業性))
ヒートシール加工により自動的に包装体を形成する包装機での操業性を確認した。
◎:安定的にヒートシール加工をすることができ、操業性がよい
○:問題なくヒートシール加工をすることができ、操業性に支障がない
△:ヒートシール加工時に、紙が厚いことで熱伝導性悪く接着不良が発生することがあり操業性がやや劣る
×:ヒートシール加工時に、帯部分で断紙が発生することがあり、操業性に劣る
【0046】
(接着性)
測定した紙層と塗工層の剥がし強度を参考に、接着性を評価した。
○:接着性が良好であり、ヒートシール部が簡単に剥がれることはない
×:接着性が弱く、ヒートシール部が簡単に剥がれる
【0047】
(タイト性)
包装体の包装材を持ち、全体を左右に振った際の積層体の状態で評価した。
◎:シートが重なった積層体が十分に固定されており、ズレの発生はほぼない
○:シートが重なった積層体のズレが発生するが、通常の取り扱いでは問題のないレベル
△:シートが重なった積層体にやや大きいズレが発生する
×:シートが重なった積層体が簡単に大きくズレてしまう
【0048】
(リサイクル性)
TAPPI離解機にて、離解試験を実施し、ヒートシール層が問題なく溶解するか否か(ヒートシール層の残留の有無)を目視で確認した。ヒートシール層の残留がないものを「○」とし、残留があるものを「×」とした。
【0049】
(総合評価)
以上の各評価を総合して、5段階で以下のように評価した。なお、3点以上の包装体を合格ラインとした
5点:全ての評価結果が優れる包装体(評価項目中の◎が2個)
4点:概ね良好な評価である包装体(評価項目中の◎が1個)
3点:劣る点が特にない合格ラインの包装体(評価項目が○のみ)
2点:品質に劣る項目がある包装体(評価項目中に△がある)
1点:今回の課題解消には不適な項目がある包装体(評価項目中に×がある)
【0050】
表1に、実施例1~4及び比較例1~6の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0051】
以上より、本実施例によればヒートシール加工を行うことが可能であり、操業性が良好で、かつ、積層体を安定して保持固定することができる包装材を用いた積層体用包装体が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1 (積層体用)包装体
10 積層体
20 包装材
21 ヒートシール部
図1