(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158822
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074375
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 尚樹
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA18
5F131BA37
5F131BB03
5F131BB23
5F131CA09
5F131EA06
5F131EB33
5F131EB55
5F131GA14
5F131HA09
5F131HA12
5F131HA13
(57)【要約】
【課題】ノズルから吐出される処理液の電位をより高い精度で所定電位に近づけることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は基板保持部2とノズル3と供給管32と1つ以上の第1バルブ33と分岐管42と第2バルブ43と導電部材44とを備える。基板保持部2は基板Wを保持する。ノズル3は基板Wの主面に向かって第1処理液を吐出する。供給管32には、第1処理液がノズル3に向かって流れる。第1バルブ33は供給管32に介挿される。分岐管42は、ノズル3に最も近い第1バルブ33である最終バルブ33aとノズル3との間において供給管32に接続された上流端を有する。第2バルブ43は分岐管42に介挿される。導電部材44は、分岐管42のうちの第2バルブ43よりも下流側の少なくとも一部に設けられる。導電部材44には所定電位が印加される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に向かって第1処理液を吐出するノズルと、
前記ノズルに接続された下流端を有し、前記第1処理液が前記ノズルに向かって流れる供給管と、
前記供給管に介挿された1つ以上の第1バルブと、
前記ノズルに最も近い前記第1バルブである最終バルブと前記ノズルとの間において前記供給管に接続された上流端を有する分岐管と、
前記分岐管に介挿された第2バルブと、
前記分岐管のうちの前記第2バルブよりも下流側の少なくとも一部に設けられ、所定電位が印加される導電部材と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
ノズルに接続された下流端を有する供給管に介挿された1つ以上の第1バルブ、および、最も前記ノズルに近い前記第1バルブである最終バルブと前記ノズルとの間において前記供給管に接続された上流端を有し、所定電位が印加された導電部材を含む分岐管に対して、前記導電部材よりも上流側において前記分岐管に介挿された第2バルブを開いて、前記供給管を通じて前記ノズルおよび前記分岐管に第1処理液を流す電位印加工程を備える、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
基板を保持する保持工程と、
前記ノズルが待機位置に位置する状態で前記電位印加工程を行いつつ、前記ノズルから待機ポッドに向かって前記第1処理液を吐出させるプリディスペンス工程と、
前記プリディスペンス工程の後に、前記ノズルを処理位置に移動させた状態で、前記第1バルブを開いて、前記ノズルから前記基板の主面に向かって前記第1処理液を吐出させる第1液処理工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理方法であって、
前記プリディスペンス工程において、
前記第1バルブを閉じた時点から所定のサックバック時間が経過したときに前記第2バルブを閉じて、前記第1処理液の液面を、前記供給管のうちの前記ノズルの吐出口と前記分岐管の前記上流端との間に移動させ、
前記第1液処理工程において、
前記第1処理液の液面が、前記供給管のうちの前記ノズルの前記吐出口と前記分岐管の前記上流端との間に位置した状態で、前記ノズルを前記待機位置から前記処理位置に移動させる、基板処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理方法であって、
前記第1液処理工程において、前記ノズルが前記処理位置に位置する状態で、前記第1バルブを開いたと同時またはその後に前記第2バルブを開く、基板処理方法。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第1液処理工程の後に、前記第1バルブを開いて、絶縁性の第2処理液を、前記供給管を通じて、前記第1処理液および前記第2処理液で兼用される前記ノズルに供給し、前記ノズルから前記基板の前記主面に向かって前記第2処理液を吐出させる第2液処理工程を備え、
前記プリディスペンス工程、前記第1液処理工程および前記第2液処理工程を、基板ごとに行う、基板処理方法。
【請求項7】
請求項3から請求項5のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記プリディスペンス工程において、前記第1処理液の導電率が高いほど短い電位印加時間に亘って、前記第1バルブおよび前記第2バルブの両方を開く、基板処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理方法であって、
前記プリディスペンス工程において、前記供給管に介挿された流量調整バルブを制御して、前記第1処理液の導電率が高いほど前記第1処理液の流量を大きく調整する、基板処理方法。
【請求項9】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記ノズルが処理位置に位置する状態で前記電位印加工程を行いつつ、前記ノズルから基板の主面に向かって前記第1処理液を吐出させる第1液処理工程を備える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理液の電位を調整しつつ当該処理液を基板に供給する基板処理装置が開示されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、基板保持部と、ノズルと、供給管と、補助管とを含む。基板保持部は基板を水平姿勢で保持しつつ、基板を回転させる。ノズルには供給管の下流端が接続され、供給管の上流端は処理液供給源に接続される。供給管には第1バルブが設けられる。補助管の上流端は第1バルブよりも上流側において供給管に接続される。補助管には第2バルブが設けられる。補助管のうちの第2バルブよりも下流側の部分には、導電性の接液部が設けられ、当該接液部には所定電位(例えば接地電位)が印加される。
【0003】
このような基板処理装置において、第1バルブを閉じた状態で第2バルブが開くと、導電性の処理液が供給管の一部および補助管を流れる。このため、導電性の処理液が接液部に接触し、配管中の処理液の電位が所定電位に近づく。所定電位は基板の電位に近い電位(例えば接地電位)である。
【0004】
処理液の電位を所定電位に近づけた状態で、第1バルブが開くと、処理液がノズルから基板の主面に向かって吐出される。処理液の電位は所定電位に近いので、処理液と基板との間で大電流(例えば放電電流)が流れることを抑制することができる。もしも処理液と基板との間で放電等の大電流が流れると、基板のパターンが損傷するかおそれがある。上述の基板処理装置はそのような大電流の発生を抑制するので、大電流に起因した基板の歩留まりの低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補助管の上端が第1バルブよりも上流側において供給管に接続される構造では、補助管の上端とノズルとの間の配管長さは比較的に長くなる。配管中の処理液の電位は、接液部から遠ざかるほど、所定電位から離れるので、当該構造では、ノズルの吐出口から吐出される処理液の電位を十分に所定電位に近づけることができない可能性もある。
【0007】
そこで、本開示は、ノズルから吐出される処理液の電位をより高い精度で所定電位に近づけることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に向かって第1処理液を吐出するノズルと、前記ノズルに接続された下流端を有し、前記第1処理液が前記ノズルに向かって流れる供給管と、前記供給管に介挿された1つ以上の第1バルブと、前記ノズルに最も近い前記第1バルブである最終バルブと前記ノズルとの間において前記供給管に接続された上流端を有する分岐管と、前記分岐管に介挿された第2バルブと、前記分岐管のうちの前記第2バルブよりも下流側の少なくとも一部に設けられ、所定電位が印加される導電部材とを備える。
【0009】
第2の態様は、基板処理方法であって、ノズルに接続された下流端を有する供給管に介挿された1つ以上の第1バルブ、および、最も前記ノズルに近い前記第1バルブである最終バルブと前記ノズルとの間において前記供給管に接続された上流端を有し、所定電位が印加された導電部材を含む分岐管に対して、前記導電部材よりも上流側において前記分岐管に介挿された第2バルブを開いて、前記供給管を通じて前記ノズルおよび前記分岐管に第1処理液を流す電位印加工程を備える。
【0010】
第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、基板を保持する保持工程と、前記ノズルが待機位置に位置する状態で前記電位印加工程を行いつつ、前記ノズルから待機ポッドに向かって前記第1処理液を吐出させるプリディスペンス工程と、前記プリディスペンス工程の後に、前記ノズルを処理位置に移動させた状態で、前記第1バルブを開いて、前記ノズルから前記基板の主面に向かって前記第1処理液を吐出させる第1液処理工程とを備える。
【0011】
第4の態様は、第3の態様にかかる基板処理方法であって、前記プリディスペンス工程において、前記第1バルブを閉じた時点から所定のサックバック時間が経過したときに前記第2バルブを閉じて、前記第1処理液の液面を、前記供給管のうちの前記ノズルの吐出口と前記分岐管の前記上流端との間に移動させ、前記第1液処理工程において、前記第1処理液の液面が、前記供給管のうちの前記ノズルの前記吐出口と前記分岐管の前記上流端との間に位置した状態で、前記ノズルを前記待機位置から前記処理位置に移動させる。
【0012】
第5の態様は、第4の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1液処理工程において、前記ノズルが前記処理位置に位置する状態で、前記第1バルブを開いたと同時またはその後に前記第2バルブを開く。
【0013】
第6の態様は、第3から第5のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第1液処理工程の後に、前記第1バルブを開いて、絶縁性の第2処理液を、前記供給管を通じて、前記第1処理液および前記第2処理液で兼用される前記ノズルに供給し、前記ノズルから前記基板の前記主面に向かって前記第2処理液を吐出させる第2液処理工程を備え、前記プリディスペンス工程、前記第1液処理工程および前記第2液処理工程を、基板ごとに行う。
【0014】
第7の態様は、第3から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記プリディスペンス工程において、前記第1処理液の導電率が高いほど短い電位印加時間に亘って、前記第1バルブおよび前記第2バルブの両方を開く。
【0015】
第8の態様は、第7の態様にかかる基板処理方法であって、前記プリディスペンス工程において、前記供給管に介挿された流量調整バルブを制御して、前記第1処理液の導電率が高いほど前記第1処理液の流量を大きく調整する。
【0016】
第9の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記ノズルが処理位置に位置する状態で前記電位印加工程を行いつつ、前記ノズルから基板の主面に向かって前記第1処理液を吐出させる第1液処理工程を備える。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様によれば、第1バルブおよび第2バルブが開くと、第1処理液が供給管および分岐管に流れる。導電部材が設けられた分岐管を第1処理液が流れると、第1処理液の電位が、導電部材に印加された所定電位に近づく。具体的には、導電部材に近いほど、処理液の電位が所定電位に近づく。第1態様によれば、分岐管の上流端は最終バルブとノズルとの間において供給管に接続される。このため、導電部材とノズルとの間の配管長さを短くすることができ、その結果として、ノズルから吐出される第1処理液の電位をより高い精度で所定電位に近づけることができる。
【0018】
第2の態様によれば、分岐管の上流端が最終バルブとノズルとの間において供給管に接続される。このため、導電部材とノズルとの間の配管長さを短くすることができる。したがって、電位印加工程において、ノズルから吐出される第1処理液の電位をより高精度に所定電位に近づけることができる。
【0019】
第3の態様によれば、プリディスペンス工程において、第1処理液の電位をより高い精度で所定電位に近づけることができる。このため、第1液処理工程の初期から、所定電位に近い電位を有する第1処理液を基板の主面に供給することができる。
【0020】
第4の態様によれば、第1液処理工程の開始時において、第1処理液の液面はノズルの吐出口に近い。このため、第1液処理工程において、第1バルブを開いたときに、第1処理液は吐出口までの短い距離を移動して吐出口から吐出される。このため、当該移動に伴う第1処理液の摩擦帯電は小さい。したがって、第1液処理工程の初期においてノズルの吐出口から吐出される第1処理液の電位をより確実に所定電位に近づけることができる。
【0021】
第5の態様によれば、第1処理液を速やかに基板に供給することができつつ、第1液処理工程において、第1処理液の電位を継続的に所定電位に近づけることができる。
【0022】
第6の態様によれば、第2液処理工程によって、供給管には絶縁性の第2処理液が流れる。このため、第2液処理の終了後には、供給管には第1処理液ではなく第2処理液が存在する。第6の態様によれば、基板ごとにプリディスペンス工程が行われるので、次の基板の処理時のプリディスペンス工程によって、再び、供給管の内部に、所定電位に近い電位を有する第1処理液を存在させることができる。よって、次の第1液処理工程の初期から、所定電位に近い電位を有する第1処理液を当該基板に供給することができる。
【0023】
第7の態様によれば、第1処理液の導電率が高いときには、電位印加時間は短い。このため、高いスループットで第1処理液の電位を所定電位に近づけることができる。一方で、第1処理液の導電率が低いときには、電位印加時間は長い。このため、第1処理液の電位をより所定電位に近づけることができる。
【0024】
第8の態様によれば、第1処理液の導電率が高いときには、流量が大きい。このため、電位印加時間が短くても、吐出される第1処理液の総量を大きくすることができる。したがって、供給管の内部に古い処理液が残留しても、当該古い処理液を適切に吐出することができる。一方、第1処理液の導電率が低いときには、流量は小さい。このため、電位印加時間が長くても、吐出される第1処理液の総量の増加を抑制することができる。したがって、第1処理液の消費量の増加を抑制することができる。
【0025】
第9の態様によれば、第1液処理工程において、第1処理液の電位を継続的に所定電位に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】基板処理装置の構成を概略的に示す側断面図である。
【
図2】制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
【
図4】分岐管の断面形状の一例を概略的に示す図である。
【
図5】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一部の一例を概略的に示す縦断面図である。
【
図6】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】各ステップの一例を示すタイミングチャートである。
【
図8】各ステップにおける処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
【
図9】各ステップにおける処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
【
図10】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
【
図11】第2液処理工程における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0028】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0029】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0030】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0031】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0032】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、薄い平板形状を有する。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの膜厚は例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。
【0033】
図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部90とを含んでいる。処理ブロック120は、主として基板Wの処理を行う部分であり、インデクサブロック110は、主として、基板処理装置100の外部と処理ブロック120との間での基板Wの搬送を行う部分である。
【0034】
インデクサブロック110は、ロードポート111と、第1搬送部112とを含む。ロードポート111には、外部から搬入された基板収容器(以下、キャリアと呼ぶ)Cが載置される。キャリアCには、複数の基板Wが、例えば鉛直方向において互いに間隔を空けて並んだ状態で、収容される。
図1の例では、複数のロードポート111が配列される。
【0035】
第1搬送部112は搬送ロボットであって、各ロードポート111に載置されたキャリアCから未処理の基板Wを取り出すことができる。第1搬送部112はインデクサロボットとも呼ばれ得る。第1搬送部112は、キャリアCから取り出した未処理の基板Wを処理ブロック120に搬送する。処理ブロック120は該未処理の基板Wに処理を行うことができる。また、第1搬送部112は、処理済みの基板Wを処理ブロック120から受け取り、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送することができる。
【0036】
図1の例では、処理ブロック120は、複数の処理ユニット1と、第2搬送部122とを含んでいる。第2搬送部122は搬送ロボットであって、第1搬送部112と複数の処理ユニット1との間で基板Wを搬送することができる。
図1の例では、処理ブロック120は載置部123も含んでいる。載置部123は、例えば、複数の基板Wを鉛直方向に並べた状態で載置することができる棚である。第1搬送部112は未処理の基板Wを載置部123に載置する。第2搬送部122は載置部123から未処理の基板Wを取り出し、該基板Wを処理ユニット1に搬送する。処理ユニット1は基板Wを処理する。処理ユニット1の構成については後に述べる。第2搬送部122は処理済みの基板Wを処理ユニット1から取り出し、該基板Wを載置部123に搬送する。第1搬送部112は載置部123から該基板Wを取り出し、該基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送する。
【0037】
図1の例では、複数(例えば4つ)の処理ユニット1は平面視において第2搬送部122の周りを囲むように設けられている。この第2搬送部122はセンターロボットとも呼ばれ得る。平面視上の各位置において、複数の処理ユニット1が鉛直方向に積層されていてもよい。つまり、鉛直方向に積層された複数の処理ユニット1によって構成されるタワーTWの複数(図では4つ)が、第2搬送部122を囲むように設けられてもよい。
【0038】
制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する。具体的には、制御部90は第1搬送部112、第2搬送部122および処理ユニット1を制御する。
図2は、制御部90の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。
図2の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory))921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0039】
図2に示されるように、制御部90は記憶部94に電気的に接続されていてもよい。記憶部94は非一時的な記憶部であり、例えば、メモリまたはハードディスクであってもよい。
図2では、記憶部94にはデータD1が記憶されている。データD1については第3の実施の形態で述べる。
【0040】
<処理ユニット>
図3は、第1の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。なお、基板処理装置100に属する全ての処理ユニット1が、
図3に例示された構成を有している必要はない。少なくとも一つの処理ユニット1が、
図3に例示された構成を有していればよい。処理ユニット1は、基板保持部2と、ノズル3と、供給管32と、第1バルブ33と、分岐管42と、第2バルブ43と、導電部材44とを含んでいる。
【0041】
図3の例では、処理ユニット1にはチャンバ10も設けられている。チャンバ10は内部空間を有している。当該内部空間は、基板Wを処理する処理空間に相当する。チャンバ10には、開閉可能な搬出入口(不図示)が設けられる。第2搬送部122は搬出入口を通じて未処理の基板Wをチャンバ10内に搬入し、また、搬出入口を通じて処理済みの基板Wをチャンバ10から搬出する。
【0042】
基板保持部2はチャンバ10内に設けられている。基板保持部2は、基板Wを水平姿勢で保持しつつ、基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。回転軸線Q1は、基板Wの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0043】
図3の例では、基板保持部2は、スピンベース21と、チャックピン22と、回転駆動部23とを含んでいる。スピンベース21は板状の形状(例えば円板形状)を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。スピンベース21の上面には複数のチャックピン22が設けられている。複数のチャックピン22は、回転軸線Q1についての周方向に沿って等間隔に設けられる。複数のチャックピン22は、次に説明する保持位置と解除位置との間で変位可能に設けられている。保持位置とは、チャックピン22が基板Wの周縁に当接する位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの保持位置で停止することにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。
図3では、保持位置で停止したチャックピン22が示されている。解除位置とは、各チャックピン22が基板Wから離れた位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置で停止することにより、複数のチャックピン22による基板Wの保持が解除される。基板保持部2は、チャックピン22を変位させるピン駆動部(不図示)も含む。ピン駆動部は、例えば、モータまたはエアシリンダ等の駆動源を含み、制御部90によって制御される。
【0044】
回転駆動部23はシャフト231とモータ232とを含んでいる。シャフト231の上端はスピンベース21の下面に接続されており、シャフト231はスピンベース21の下面から回転軸線Q1に沿って延びている。モータ232は制御部90によって制御され、シャフト231を回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、スピンベース21、チャックピン22および基板Wが回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。
【0045】
なお、基板保持部2は必ずしもチャックピン22を有している必要はない。例えば、基板保持部2は、真空チャック、静電チャックおよびベルヌーイチャック等のチャック方式により、基板Wを保持してもよい。
【0046】
ノズル3はチャンバ10内に設けられており、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かって第1処理液を吐出する。
図3の例では、ノズル3は、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられており、基板Wの上面に向かって第1処理液を吐出する。ノズル3は、例えば、連続流の状態で第1処理液を吐出するノズルである。ノズル3は例えば筒状の形状を有し、その下端面に吐出口3aが形成されている。ノズル3は例えば絶縁性樹脂によって形成されてもよい。
【0047】
ノズル3には供給管32の下流端が接続されている。供給管32の上流端は第1処理液供給源に接続される。第1処理液供給源は、第1処理液を貯留するタンク(不図示)を有し、第1処理液を供給管32の上流端に供給する。供給管32には第1バルブ33が介挿される。第1バルブ33は、いわゆる開閉弁であり、供給管32の開閉を切り換える。第1バルブ33は制御部90によって制御される。第1バルブ33が開くと、第1処理液は処理液供給源からノズル3に向かって供給管32を流れる。
【0048】
図3の例では、供給管32には1つの第1バルブ33が介挿されているものの、複数の第1バルブ33が供給管32に介挿されていてもよい。例えば、第1処理液供給源のタンクに接続される上流端および下流端を有する循環配管が設けられ、該循環配管から分岐した複数の分岐供給管の下流端が、それぞれ、複数の処理ユニット1内のノズル3に接続されてもよい。この場合、循環配管に第1バルブ33が介挿され、各分岐供給管に個別に第1バルブ33が介挿され得る。供給管32は循環配管の一部および分岐供給管によって構成されるので、供給管32には2つの第1バルブ33が介挿され得る。以下では、供給管32に介挿された1つ以上の第1バルブ33のうち、ノズル3に最も近い第1バルブ33を、最終バルブ33aとも呼ぶ。
【0049】
図3の例では、供給管32には流量調整バルブ34が介挿される。流量調整バルブ34は、供給管32を流れる第1処理液の流量を調整する。流量調整バルブ34はマスフローコントローラであってもよい。流量調整バルブ34は制御部90によって制御される。
【0050】
供給管32のうち長手方向の少なくとも一部は、フッ素樹脂等の絶縁性樹脂によって形成されたフレキシブル配管である。例えば、供給管32のうちの最終バルブ33aとノズル3との間の部分がフレキシブル配管であってもよい。あるいは、分岐供給管の全体がフレキシブル配管であってもよい。分岐供給管の配管長さは例えば2m以上かつ5m以下である。供給管32のうちの最終バルブ33aとノズル3との間の部分の配管長さは、例えば1m以上かつ1.5m以下である。フッ素樹脂には例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が適用され得る。
【0051】
第1処理液が供給管32を流れると、供給管32の絶縁性の内壁と第1処理液との摩擦により、第1処理液が帯電し得る。ノズル3の内壁が絶縁性を有している場合には、ノズル3の内壁と第1処理液との摩擦によっても、第1処理液は帯電し得る。帯電した第1処理液が基板Wの主面に向かって吐出されると、第1処理液が基板Wの主面に着液する直前で、第1処理液と基板Wとの間で放電が生じたり、あるいは、第1処理液が基板Wの主面に着液した後に、第1処理液と基板Wとの間で大きな電流が流れたりし得る。このような放電または大電流によって、基板W(例えばパターン)が損傷し、基板Wの歩留まりが低下し得る。
【0052】
第1処理液はイオンを含んでおり、ある程度の導電性を有している。ここでいうある程度の導電性とは、次の2つの条件を満足する程度の導電性を意味する。第1に、第1処理液が供給管32の内壁およびノズル3の内壁の少なくともいずれか一方との摩擦によって帯電する。第2に、第1処理液が後述の導電部材44に接触することにより、導電部材44から離れた位置でも、第1処理液の電位が所定電位(例えば接地電位)に近づく。
【0053】
このような第1処理液の具体的な例として、希フッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、バッファードフッ酸、アンモニア水、炭酸水および界面活性剤水溶液が用いられる。アンモニア水とは、アンモニアが水に溶けた液体であり、炭酸水とは、二酸化炭素が水に溶けた液体であり、活性剤水溶液とは、活性剤が水に溶けた液体である。
【0054】
図3に示されるように、供給管32は最終バルブ33aよりも下流側の部分において分岐している。この供給管32から分岐した配管が分岐管42に相当する。つまり、分岐管42の上流端は最終バルブ33aとノズル3との間において供給管32に接続される。分岐管42には第2バルブ43が介挿される。第2バルブ43は、いわゆる開閉弁であり、分岐管42の開閉を切り換える。第2バルブ43は制御部90によって制御される。分岐管42の下流端は回収部45に接続される。回収部45は、分岐管42内の第1処理液を吸引する吸引部(不図示)を含み得る。吸引部は、第1処理液を分岐管42の上流端から下流端に向かって吸引する機構である。吸引部は、例えば、エジェクタであってもよく、ポンプであってもよい。あるいは、吸引部は、サイフォン効果を利用した配管構造であってもよい。第1処理液は分岐管42を通じて例えば回収部45の所定のタンク(不図示)に回収される。
【0055】
分岐管42の内部流路の断面積は、例えば、供給管32の内部流路の断面積よりも小さい。この場合、分岐管42を流れる第1処理液の流量は供給管32を流れる第1処理液の流量に比べて小さい。
【0056】
図3に示されるように、分岐管42のうちの第2バルブ43よりも下流側の部分には、導電部材44が設けられている。導電部材44は、例えば、第2バルブ43と回収部45との間の少なくとも一部に設けられる。導電部材44は、アモルファスカーボンおよびグラッシカーボン等のガラス状の導電性カーボンによって形成されてもよい。あるいは、導電部材44は、導電性PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)および導電性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の導電性樹脂により形成されてもよい。導電部材44は例えば分岐管42の内壁に設けられる。
図3の例では、導電部材44は分岐管42の内部において露出する。この場合、第1処理液は分岐管42を流れる際に導電部材44に接触する。
【0057】
図4は、分岐管42の断面形状の一例を概略的に示す図である。
図4の例では、分岐管42は円環状の断面形状を有している。
図4の例では、分岐管42は絶縁部材421および導電部材44によって構成される。絶縁部材421および導電部材44は分岐管42の周方向において交互に設けられる。
図4の例では、4つの絶縁部材421および4つの導電部材44が分岐管42の周方向において交互に設けられている。4つの絶縁部材421および4つの導電部材44は周方向で連続して、全体として等幅の円環形状を形成している。絶縁部材421および導電部材44は例えば一体に形成される。
【0058】
図4の例では、導電部材44は、内周部441と、外周部442と、連結部443とを含んでいる。内周部441は分岐管42の内壁側に位置しており、分岐管42の内壁の周方向の一部を形成する。外周部442は分岐管42の外壁側に位置しており、分岐管42の外壁の周方向の一部を形成する。連結部443は分岐管42の径方向に沿って延びて、内周部441および外周部442を接続する。
図4の例では、連結部443の周方向の幅は内周部441の幅および外周部442の幅の両方よりも狭い。
【0059】
導電部材44には、所定電位が印加される。例えば導電部材44は接地される。具体的な一例として、導電部材44の外周部442の外周面に導電部材46の一端が接続され、導電部材46の他端が接地される。導電部材46の材料は、導電部材44と同様に、導電性カーボンによって形成されてもよく、導電性樹脂によって形成されてもよい。
【0060】
図3を参照して、第1バルブ33および第2バルブ43が開くと、第1処理液は第1処理液供給源から供給管32を流れ、その一部がノズル3に供給されつつ、残りの一部が分岐管42に供給される。第1処理液の一部はノズル3の吐出口3aから吐出され、第1処理液の残りの一部は分岐管42を流れて導電部材44(具体的には内周部441)に接触する。
【0061】
第1処理液が導電部材44に接触すると、第1処理液に所定電位が印加される。第1処理液はある程度の導電性を有しており、また、分岐管42、供給管32およびノズル3の内部において連続している。このため、第1処理液が導電部材44に接触すると、分岐管42、供給管32およびノズル3内の第1処理液の電位は所定電位に近づく。つまり、導電部材44から離れた位置でも、第1処理液の電位が所定電位に近づく。これは、電荷が導電性の第1処理液を流れるからと考えられる。なお、ノズル3が連続流の状態で第1処理液を吐出する場合には、ノズル3から吐出された後の第1処理液の電位も所定電位に近づき得る。ただし、第1処理液の電位は導電部材44に近い位置ほど所定電位に近づく。逆に言えば、第1処理液の電位は導電部材44から遠い位置ほど所定電位から離れる。つまり、導電部材44から非常に遠い位置では、第1処理液の電位はほとんど所定電位に近づかない場合もある。第1処理液の電位が所定電位に近づく程度は導電部材44からの距離および第1処理液自体の導電率に依存する。
【0062】
本実施の形態では、分岐管42の上流端は最終バルブ33aよりもノズル3に近い位置で、供給管32に接続されている。このため、ノズル3と導電部材44との間の配管長さを短くすることができる。したがって、ノズル3の吐出口3aから吐出される第1処理液の電位をより高い精度で所定電位に近づけることができる。所定電位として基板Wの電位に近い電位を採用することにより、第1処理液が基板Wの主面に着液する直前において第1処理液と基板Wとの間で放電が生じる可能性を低減させることができる。さらに、基板Wの主面に着液した後の第1処理液と、基板Wとの間で大電流が流れる可能性も低減させることができる。
【0063】
また、ノズル3の吐出口3aから吐出される第1処理液自体は導電部材44に接触しない。このため、導電部材44に起因した第1処理液の汚染はほとんど生じない。したがって、導電部材44に起因した汚染がほとんどない清浄な第1処理液を基板Wに供給することができる。このため、導電部材44の材料選定時において、作業員は導電部材44による第1処理液の汚染を確認する必要がない。よって、材料選定が容易である。
【0064】
また、分岐管42は、第1処理液の吐出停止時にノズル3から第1処理液を吸引するためのサックバックラインとして機能することもできる。例えば、第1処理液の吐出停止の際に、第1バルブ33が閉じた時点から所定のサックバック時間に亘って第2バルブ43が開く。これにより、ノズル3から第1処理液が分岐管42に吸引され、ノズル3の内部での第1処理液の液面がノズル3の吐出口3aよりも上流側に移動する。したがって、吐出停止時に第1処理液が液滴状態でノズル3の吐出口3aから落下する可能性を低減させることができる。言い換えれば、液滴状態での第1処理液の落下(以下、ぼた落ちと呼ぶ)の発生を抑制することができる。
【0065】
図3の例では、処理ユニット1は、ノズル3を移動させるノズル移動駆動部37を含んでいる。ノズル移動駆動部37はノズル3を、次に説明する第1処理位置と第1待機位置との間で移動させる。第1処理位置とは、ノズル3が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かって第1処理液を吐出する位置であり、例えば、基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。
図3の例では、第1処理位置に位置するノズル3が示されている。
【0066】
第1待機位置とは、ノズル3が第1処理液を基板Wの主面に向かって吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。
図5は、第1の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一部の一例を概略的に示す縦断面図である。
図5の例では、第1待機位置で位置するノズル3が示されている。
図5の例では、待機ポッド6が設けられている。待機ポッド6はチャンバ10内において第1待機位置の直下に設けられている。待機ポッド6は、例えば鉛直上方に開口した形状を有する。ノズル3は第1待機位置に位置する状態で第1処理液を待機ポッド6に向かって吐出する。この第1処理液は待機ポッド6によって受け止められる。待機ポッド6の例えば底部には、排出管61の上流端が接続されている。待機ポッド6が受け止めた第1処理液は排出管61を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0067】
図3の例では、ノズル移動駆動部37は、アーム371と、支持柱372と、駆動源373とを含んでいる。支持柱372は、後述のガード7よりも径方向外側に設けられており、鉛直方向に沿って延びている。アーム371は水平方向に沿って延びており、その先端がノズル3に接続され、その基端が支持柱372に接続されている。駆動源373は制御部90によって制御され、支持柱372をその中心軸線Q2のまわりで所定の角度範囲で正逆方向に回転させる。駆動源373は例えばモータを含む。支持柱372が中心軸線Q2のまわりで所定の角度範囲で正逆方向に回転すると、ノズル3は、中心軸線Q2についての周方向に沿って往復移動する。支持柱372は、ノズル3の移動軌跡上に第1処理位置および第1待機位置が位置するように、設置される。なお、ノズル移動駆動部37は必ずしも
図3の態様に限らず、例えばリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。
【0068】
ノズル3が第1処理位置に位置する状態で、回転中の基板Wの主面に向かって第1処理液を吐出すると、第1処理液が基板Wの主面に着液する。第1処理液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁よりも外側に飛散する。このとき、第1処理液が基板Wの主面に作用することで、第1処理液の種類に応じた処理が基板Wに対して行われる。以下では一例として、第1処理液に希フッ酸等の薬液を適用する。
【0069】
図3の例では、処理ユニット1はノズル5も含んでいる。ノズル5はチャンバ10内に設けられており、絶縁性の第2処理液を吐出する。第2処理液は、例えば、イソプロピルアルコール等の有機溶剤および純水のいずれか一方である。第2処理液の導電率は第1処理液よりも低く、第2処理液はほとんど電流を通さない。
図3の例では、ノズル5は、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられている。ノズル5は、例えば、連続流の状態で第2処理液を吐出するノズルである。ノズル5は例えば筒状の形状を有しており、その下端面に吐出口5aが形成されている。
【0070】
図3の例では、ノズル5には供給管52の下流端が接続されている。供給管52の上流端は、第2処理液としてのリンス液(純水または有機溶剤)を供給する第2処理液供給源に接続される。第2処理液供給源は、第2処理液を貯留するタンク(不図示)を有し、第2処理液を供給管52の上流端に供給する。供給管52の少なくとも一部には、所定電位が印加された導電部材44が設けられてもよい。これにより、第2処理液が供給管52を流れて導電部材44に接触することで、導電部材44が設けられた位置で第2処理液に所定電位が印加される。第2処理液は、供給管52の経路上の導電部材44を横切って、ノズル5に到達するので、ノズル5から吐出される第2処理液の電位を所定電位に近づけることができる。なお、導電部材44の材料には、第2処理液を汚染しにくい、または、ほとんど汚染させない材料が適用され得る。
【0071】
供給管52にはバルブ53が介挿される。バルブ53は、いわゆる開閉弁であり、供給管52の開閉を切り換える。
図3の例では、供給管52には流量調整バルブ54が介挿される。流量調整バルブ54は、供給管52を流れる第2処理液の流量を調整する。流量調整バルブ54はマスフローコントローラであってもよい。バルブ53および流量調整バルブ54は制御部90によって制御される。
【0072】
図3の例では、処理ユニット1は、ノズル5を移動させるノズル移動駆動部57も含んでいる。ノズル移動駆動部57はノズル5を、次に説明する第2処理位置と第2待機位置との間で移動させる。第2処理位置とは、ノズル5が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かって第2処理液を吐出する位置であり、例えば、基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。第2待機位置とは、ノズル5が第2処理液を基板Wの主面に向かって吐出しない位置であり、例えば基板Wよりも径方向外側の位置である。
図3の例では、第2待機位置で位置するノズル5が示されている。ノズル移動駆動部57の具体的な一例はノズル移動駆動部37と同様である。
【0073】
ノズル5が第2処理位置に位置する状態で、回転中の基板Wの主面に向かって第2処理液(リンス液)を吐出すると、第2処理液が基板Wの主面に着液する。第2処理液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁よりも外側に飛散する。このとき、第2処理液が基板Wの主面上の第1処理液(薬液)を押し流すことができる。このため、基板W上の液体を第1処理液(薬液)から第2処理液(リンス液)に置換することができる。以下では、第1処理液および第2処理液を総称して単に処理液とも呼ぶ。
【0074】
図3の例では、処理ユニット1にはガード7およびガード昇降駆動部71が設けられている。ガード7は、回転軸線Q1を中心軸とした筒状の形状を有しており、基板保持部2を囲む。ガード7は、基板Wの周縁から飛散する処理液を受け止めることができる。ガード昇降駆動部71はガード7を、次に説明する上位置と下位置との間で昇降させる。上位置とは、ガード7の上端が、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方となる位置である。ガード7は、上位置に位置する状態で、基板Wの周縁から飛散した処理液を受け止めることができる。下位置は、上位置よりも低い位置であり、例えば、ガード7の上端がスピンベース21の上面よりも鉛直下方となる位置である。
【0075】
図3の例では、複数のガード7が設けられている。複数のガード7は同心状に配置される。複数のガード7は処理液の種類に応じて使い分けられてもよい。
図3の例では、各ガード7に対応したカップ75が設けられている。カップ75は、回転軸線Q1を囲む環状(例えば円環状)の凹部(溝)を有している。各カップ75は、対応するガード7の内周面を流下した処理液を受け止める。各カップ75の例えば底部には、排出管76の上流端が接続されている。各カップ75で受け止められた処理液は排出管76を通じて処理ユニット1の外部に排出される。
【0076】
<基板処理装置の動作例>
次に処理ユニット1の動作の一例について説明する。
図6は、処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS6の処理を処理ユニット1に実行させる。
図7は、ステップS2およびステップS3の一例を示すタイミングチャートである。
図8および
図9は、ステップS2およびステップS3における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。
【0077】
まず、第2搬送部122が基板Wを処理ユニット1に搬送する。ここでは一例として、搬入時点において、基板Wはほとんど帯電しておらず、基板Wの電位は接地電位に近い。また、基板Wは例えば乾燥状態にある。そして、基板保持部2が、第2搬送部122から受け取った基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的な一例として、基板保持部2は複数のチャックピン22をそれぞれの解除位置から保持位置に変位させる。これにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。基板保持部2は、基板Wに対する処理の終了まで基板Wを保持し続ける。
【0078】
次に、処理ユニット1は、ノズル3が第1待機位置に位置する状態で、ノズル3から第1処理液を吐出させる(ステップS2:プリディスペンス工程)。具体的には、制御部90はノズル3が第1待機位置に位置する状態で、第1バルブ33および第2バルブ43を開く(
図7も参照)。これにより、
図8(a)に示されるように、供給管32を通じてノズル3に第1処理液が供給されて、ノズル3から第1処理液が吐出されるとともに、供給管32から分岐した分岐管42にも第1処理液が流入する。
図8および
図9では、第1処理液が流れる方向を矢印で示している。また、
図8および
図9では、各配管内の第1処理液を模式的に斜線のハッチングで示している。第1処理液は供給管32、分岐管42およびノズル3内において連続するので、第1処理液が分岐管42の導電部材44に接触することにより、導電部材44から離れた位置でも第1処理液の電位が所定電位に近づく。
【0079】
第1バルブ33および第2バルブ43が開くタイミングは特に制限されないものの、例えば、制御部90は、第2バルブ43を開いたと同時またはその後に第1バルブ33を開く。言い換えれば、制御部90は、第2バルブ43の閉状態から開状態への切り替えと同時またはその後に、第1バルブ33を閉状態から開状態に切り替える。
図7の例では、制御部90は第2バルブ43を開いた後に第1バルブ33を開く。これによれば、第1バルブ33を開いた直後から第1処理液が分岐管42に流入する。このため、より速やかに第1処理液の電位を所定電位に近づけることができる。
【0080】
以上のように、第1バルブ33および第2バルブ43の両方を開いて、第1処理液をノズル3および分岐管42に流すことにより、第1処理液に所定電位を印加している。このため、
図7では、この工程が電位印加工程として示されている。
図7の例では、電位印加工程は、プリディスペンス工程において実行されている。
【0081】
制御部90は第1バルブ33を開いた時点から所定のプリディスペンス時間が経過したか否かを判断し、プリディスペンス時間が経過したときに、第1バルブ33を閉じる。プリディスペンス時間は、第1処理液の電位が十分に所定電位に近づくのに要する時間以上に設定され、例えば予め設定される。プリディスペンス時間は、例えば、数秒から数十秒程度に設定され得る。時間の測定は、例えば、制御部90に属する不図示のタイマ回路によって実行される。
【0082】
図7の例では、制御部90は第1バルブ33を閉じてから所定のサックバック時間が経過したときに第2バルブ43を閉じる。具体的には、制御部90は第1バルブ33を閉じた時点からサックバック時間が経過したか否かを判断し、サックバック時間が経過したときに、第2バルブ43を閉じる。これによれば、第1バルブ33を閉じた後にも第2バルブ43が開いているので、
図8(b)に示されるように、ノズル3内の第1処理液は分岐管42側に吸引される。このため、第1処理液の液面がノズル3の吐出口3aと分岐管42の上流端との間の位置に移動する。言い換えれば、サックバック時間は、第1処理液の液面がノズル3の吐出口3aと分岐管42の上流端との間の位置に移動するように設定される。具体的には、サックバック時間は例えば数秒程度(具体的には2秒から3秒程度)に設定される。第1処理液の液面がノズル3の吐出口3aから上流側に移動することにより、ぼた落ちの発生を抑制することができる。
【0083】
上述のプリディスペンス工程によって、所定電位に近い電位を有する第1処理液が供給管32のうちの分岐管42の上端よりも下流側の部分(以下、下流部分と呼ぶ)に存在することとなる。なお、プリディスペンス工程(ステップS2)は、保持工程(ステップS1)よりも前に実行されてもよく、保持工程と並行して実行されてもよい。
【0084】
次に、処理ユニット1は、第1処理液を基板Wの主面に供給するための処理を行う(ステップS3:第1液処理工程)。ここでは一例として、処理ユニット1は薬液処理を行う。具体的には、まずノズル移動駆動部37は、
図7および
図9(a)に示されるように、第1バルブ33および第2バルブ43を閉じた状態で、ノズル3を第1処理位置に移動させる。
図9(a)では、ノズル3の移動方向をブロック矢印で示している。第1バルブ33および第2バルブ43が閉じているので、ノズル3は、第1処理液が供給管32の下流部分に存在する状態で、第1処理位置に移動する。また、基板保持部2が基板Wの回転を開始させる。基板保持部2は基板Wに対する処理の終了まで基板Wの回転を継続してもよい。また、ガード昇降駆動部71が第1液処理用のガード7を上位置に移動させる。
【0085】
次に、制御部90は第1バルブ33を開く。第1バルブ33が開くと、ノズル3から回転中の基板Wの主面(ここでは上面)に向かって第1処理液(ここでは薬液)が吐出される。基板Wの主面に着液した第1処理液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。このとき、第1処理液が基板Wの主面に作用することにより、第1処理液の種類に応じた処理が基板Wに対して行われる。例えば処理ユニット1は、基板Wの主面上の不純物を洗浄除去する洗浄処理、あるいは、基板Wの所定膜をエッチングするエッチング処理を行う。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード7で受け止められ、排出管76を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0086】
本実施の形態では、第1液処理工程の前のプリディスペンス工程によって、第1処理液の電位を所定電位(例えば接地電位)に近づけることができる。特に本実施の形態では、分岐管42の上流端が最終バルブ33aとノズル3との間において供給管32に接続される。このため、導電部材44とノズル3との配管長さを短縮化することができる。したがって、ノズル3の吐出口3aの近傍の第1処理液の電位を、より所定電位に近づけることができる。
【0087】
しかも上述の例では、第1処理液が供給管32の下流部分に存在する状態で、ノズル3が第1処理位置に移動する。このため、ノズル3が第1処理位置に到達した時点で、所定電位に近い電位を有する第1処理液の液面はノズル3の吐出口3aに近い。
【0088】
比較のために、供給管32のうち下流部分が空である場合について説明する。この場合には、第1処理液の液面はノズル3の吐出口3aから遠くに位置する。したがって、第1液処理工程の初期において第1処理液はノズル3の吐出口3aまで比較的長い距離を移動する。つまり、第1バルブ33が閉状態から開状態に切り替わった直後において、第1処理液はノズル3の吐出口3aまでの長距離を移動した後に、吐出口3aから吐出される。最終バルブ33aからノズル3までの配管長さは例えば1m以上と長いので、当該移動による摩擦は比較的に大きい。このため、摩擦による帯電も大きくなる。つまり、プリディスペンス工程によって第1処理液の電位を所定電位に近づけても、第1液処理工程での吐出口3aまでの移動で生じる摩擦帯電により、吐出口3aから吐出される第1処理液の電位が所定電位から遠ざかるおそれがある。
【0089】
これに対して、上述の例では、ノズル3が第1処理位置に到達した時点において、第1処理液の液面はノズル3の吐出口3aに近い。このため、第1液処理工程で第1バルブ33が閉状態から開状態に切り替わった直後において、第1処理液の液面がノズル3の吐出口3aまで移動する際に生じる帯電は小さい。したがって、処理ユニット1は、より所定電位に近い電位を有する第1処理液を、第1液処理工程の初期から基板Wに供給することができ、第1処理液と基板Wとの間の放電および大電流をより確実に抑制することができる。
【0090】
また、
図7の例では、第1液処理工程においても制御部90は第1バルブ33とともに第2バルブ43を開く。つまり、第1液処理工程においても、第1バルブ33および第2バルブの両方を開く電位印加工程が実行される。この電位印加工程においては、
図9(b)に示されるように、ノズル3から基板Wの主面に向かって第1処理液が吐出されつつ、第1処理液が分岐管42を流れて導電部材44に接触する。なお、分岐管42を流れる第1処理液の流量は供給管32を流れる第1処理液の流量よりも十分に小さく、この流れはスローリークとも呼ばれる。このため、分岐管42に第1処理液が流れることによる第1処理液の使用量の増加を抑制することができる。
【0091】
この電位印加工程によって、第1液処理工程の初期のみならず、ノズル3から吐出される第1処理液の電位を所定電位に継続的に近づけることができる。したがって、第1液処理工程において、第1処理液と基板Wとの間に大電流が流れる可能性を低減させ続けることができる。なお、第2バルブ43は、第1バルブ33が開く期間の少なくとも一部において開いていればよい。第2バルブ43が当該期間の大部分(例えば9割以上)に亘って開いていれば、大電流をより長期間に亘って抑制することができる。
【0092】
また、
図7の例では、制御部90は第1液処理工程において、第1バルブ33を開くのと同時またはその後に第2バルブ43を開く。これにより、より速やかに第1処理液を基板Wに供給することができる。
【0093】
制御部90は、第1バルブ33を開いた時点から所定の薬液時間が経過したか否かを判断し、薬液時間が経過したときに、第1バルブ33を閉じる。薬液時間は、薬液による基板Wの処理が十分に行われる程度の時間に予め設定される。薬液時間は例えばプリディスペンス時間よりも長く設定され、例えば数十秒以上に設定される。
【0094】
制御部90は、第1バルブ33を閉じた時点から所定のサックバック時間の経過後に第2バルブ43を閉じてもよい(
図7参照)。これにより、第1処理液の吐出停止時のぼた落ちの発生を抑制することができる。ノズル移動駆動部37は、第1バルブ33および第2バルブ43を閉じた状態で、ノズル3を第1待機位置に移動させる。
【0095】
次に、処理ユニット1は、第2処理液を基板Wの主面に供給するための処理を行う(ステップS4:第2液処理工程)。具体的には、まずノズル移動駆動部57はノズル5を第2処理位置に移動させる。もしも、第2処理液(リンス液)用のガード7が第1処理液(薬液)用のガード7と異なる場合には、ガード昇降駆動部71は適宜にガード7を昇降させて、第2処理液用のガード7を上位置に位置させる。そして、制御部90はバルブ53を開く。バルブ53が開くと、ノズル5から基板Wの主面(ここでは上面)に向かって第2処理液が吐出される。基板Wの主面に着液した第2処理液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。これにより、基板Wの主面上の液体が第1処理液から第2処理液に置換される。第2処理液は、例えば、純水もしくはイソプロピルアルコールである。なお、処理ユニット1は純水を供給した後にイソプロピルアルコールを供給してもよい。
【0096】
制御部90は、バルブ53を開いた時点から所定のリンス時間が経過したときに、バルブ53を閉じる。リンス時間は、第1処理液から第2処理液の置換に要する時間以上に予め設定される。そして、ノズル移動駆動部57はノズル5を第2待機位置に移動させる。
【0097】
次に、処理ユニット1は乾燥処理を実行する(ステップS5)。具体的には、基板保持部2が基板Wの回転速度を増加させる(いわゆるスピンドライ)。基板Wが十分に乾燥すると、処理ユニット1は乾燥処理を終了する。具体的には、乾燥処理の開始から所定の乾燥時間が経過したときに、基板保持部2は基板Wの回転を停止させる。これにより、乾燥処理が実質的に終了し、基板Wに対する一連の処理が実質的に終了する。次に、ガード昇降駆動部71は全てのガード7を下位置に位置させる。
【0098】
次に基板保持部2が基板Wに対する保持を解除する(ステップS6:保持解除工程)。そして、第2搬送部122が基板Wを処理ユニット1から搬出する。
【0099】
以上のように、上述の基板処理方法では、第1液処理工程の前のプリディスペンス工程において、電位印加工程が実行される。このため、第1液処理工程の初期において、第1処理液と基板Wとの間の放電および大電流を抑制することができる。
【0100】
また、上述の例では、第1液処理工程においても電位印加工程が実行される。このため、第1処理液と基板Wとの間での大電流を第1液処理工程において継続的に抑制することができる。
【0101】
なお、上述の例では、処理ユニット1はプリディスペンス工程および第1液処理工程の両方において電位印加工程を実行しているものの、いずれか一方のみで実行してもよい。
【0102】
また、上述の例では、処理ユニット1は第1液処理工程の終了時にサックバック処理を行っている。サックバック処理では、供給管32のうち分岐管42の上流端よりも下流側の下流部分において第1処理液が存在する状態で第2バルブ43が開く。このため、供給管32の下流部分における第1処理液の電位を所定電位に近づけることができる。このため、第1液処理工程の終了時において、所定電位に近い電位を有する第1処理液が供給管32の下流部分に存在している。そして、ノズル移動駆動部37は、第1バルブ33および第2バルブ43を閉じた状態で、ノズル3を第1待機位置に移動させる。このため、次の基板Wに対する処理の際には、既に、所定電位に近い電位を有する第1処理液が供給管32の下流部分に存在している。したがって、次の基板Wに対する処理において、第1処理液の電位を調整するためのプリディスペンス工程は必ずしも必要はない。つまり、制御部90は第1液処理工程の終了時においてサックバック処理を行うときには、次の基板Wの処理時でのプリディスペンス工程を省略してもよい。
【0103】
<第2の実施の形態>
図10は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。第2の実施の形態にかかる処理ユニット1は、第2処理液を供給するための構成という点で、第1の実施の形態にかかる処理ユニット1と相違する。第2の実施の形態では、ノズル3は第1処理液および第2処理液に兼用される。
図10の例では、供給管32は、共通管32aと、第1処理液管32bと、第2処理液管32cとを含んでいる。共通管32aの下流端はノズル3に接続されており、共通管32aの上流端は第1処理液管32bの下流端および第2処理液管32cの下流端に共通に接続されている。第1処理液管32bの上流端は第1処理液供給源に接続され、第2処理液管32cの上流端は第2処理液供給源に接続される。第2処理液管32cの少なくとも一部には、所定電位が印加された導電部材44が設けられてもよい。
【0104】
共通管32aには最終バルブ33aが介挿され、第1処理液管32bには第1バルブ33(以下、第1バルブ33bと呼ぶ)が介挿され、第2処理液管32cには第1バルブ33(以下、第1バルブ33cと呼ぶ)が介挿されている。第1バルブ33bおよび最終バルブ33aが開くことにより、第1処理液が第1処理液管32bおよび共通管32aを通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから吐出される。第1バルブ33cおよび最終バルブ33aが開くことにより、第2処理液が第2処理液管32cおよび共通管32aを通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから吐出される。
【0105】
図10の例では、第1処理液管32bには流量調整バルブ34(以下、流量調整バルブ34bと呼ぶ)が介挿される。この流量調整バルブ34bは、第1処理液管32bを流れる第1処理液の流量を調整する。第2処理液管32cには流量調整バルブ34(以下、流量調整バルブ34cと呼ぶ)が介挿される。この流量調整バルブ34cは、第2処理液管32cを流れる第2処理液の流量を調整する。
【0106】
分岐管42の上流端は最終バルブ33aとノズル3との間において共通管32aに接続される。
【0107】
第2の実施の形態にかかる処理ユニット1の動作の一例は
図6に示される通りである。また、ステップS2(プリディスペンス工程)およびステップS3(第1液処理工程)におけるタイミングチャートも
図7に示される通りであり、ステップS2およびステップS3における処理ユニット1の様子の一例も
図8および
図9に示される通りである。ただし、電位印加工程では、制御部90は第1バルブ33bおよび最終バルブ33aの両方を開いて、第1処理液をノズル3の吐出口3aから吐出させる。
【0108】
ステップS4(第2液処理工程)の具体的な動作は第1の実施の形態にかかるステップS4と相違する。
図11は、ステップS4における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。制御部90はステップS4において第1バルブ33cおよび最終バルブ33aを開く。これにより、
図11(a)に示すように、絶縁性の第2処理液(リンス液)が第2処理液管32cおよび共通管32aを通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから基板Wの主面に向かって吐出される。このとき、制御部90は第2バルブ43を閉じている。
【0109】
制御部90は最終バルブ33aおよび第1バルブ33cを開いた時点から所定のリンス時間が経過したときに、最終バルブ33aおよび第1バルブ33cを閉じるとともに、第2バルブ43を所定時間に亘って開く。つまり、制御部90は最終バルブ33aおよび第1バルブ33cを閉じた時点から所定時間が経過したときに、第2バルブ43を閉じる。所定時間は、例えば予め第1液処理工程でのサックバック時間よりも長く設定される。
【0110】
所定時間において第1バルブ33が閉じ、第2バルブ43が開くことにより、第2処理液がノズル3から分岐管42に吸引される。これにより、吐出停止時のぼた落ちの発生を抑制することができる。
【0111】
この所定時間において、共通管32aのうち最終バルブ33aよりも下流側の部分の処理液が分岐管42に吸引される(
図11(b)参照)。つまり、所定時間は、共通管32aのうち最終バルブ33aよりも下流側の部分が実質的に空となる程度の時間に設定される。
【0112】
第2バルブ43を閉じた後に、第1バルブ33および第2バルブ43が閉じた状態で、ノズル移動駆動部37がノズル3を第1待機位置に移動させる。
【0113】
次に処理ユニット1は第1の実施の形態と同様に、ステップS5(乾燥工程)およびステップS6(保持解除工程)を実行する。
【0114】
以上のように、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、電位印加工程がステップS2(プリディスペンス工程)およびステップS3(第1液処理工程)において実行される。このため、第1液処理工程における放電および大電流の発生を抑制することができる。
【0115】
ただし、第2の実施の形態では、ステップS4(第2液処理工程)においてノズル3から第2処理液が吐出される。このため、第2液処理工程の終了時点において、第1処理液は共通管32aの内部にはほとんど存在していない。上述の例では、共通管32aのうちの最終バルブ33aよりも下流側の部分は実質的に空である。
【0116】
したがって、次の基板Wの処理の開始時にも、共通管32aには第1処理液がほとんど存在していない。そこで、第2の実施の形態では、処理ユニット1は、基板Wごとに、電位印加工程を含むプリディスペンス工程を行うとよい。つまり、処理ユニット1は、基板Wが搬入されるたびに、当該基板Wに対してプリディスペンス工程を行う。これにより、各基板Wに対する処理において、プリディスペンス工程の終了時には、所定電位に近い電位を有する第1処理液が共通管32aのうちノズル3の近い位置まで存在する。このため、各基板Wに対する第1液処理工程の初期において、ノズル3から吐出される第1処理液の電位をより確実に所定電位に近づけることができる。
【0117】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、プリディスペンス工程における電位印加工程の時間(以下、電位印加時間と呼ぶ)および第1処理液の流量について説明する。電位印加時間とは、プリディスペンス工程において、第1バルブ33および第2バルブ43の両方を開いて、ノズル3から第1処理液を吐出させつつ、分岐管42に第1処理液を流す積算時間である。第3の実施の形態では、電位印加時間および第1処理液の流量を第1処理液の導電率に基づいて設定する。以下では、まず、電位印加時間について説明する。
【0118】
<電位印加時間>
第1処理液の導電率が高いほど、電位印加工程において第1処理液の電位はより速やかに所定電位に近づくと考えられる。逆に言えば、導電率が低いほど、第1処理液の電位が所定電位に近づくのに要する時間は長くなると考えられる。
【0119】
そこで、処理ユニット1は第1処理液の導電率が高いほど、電位印加時間を短く設定してもよい。逆に言えば、処理ユニット1は第1処理液の導電率が低いほど、電位印加時間を長く設定してもよい。つまり、電位印加時間は、第1処理液の電位が十分に所定電位に近くなるという条件を満たす限りにおいて、導電率が高いほど、短く設定される。
【0120】
電位印加時間を示すデータD1は例えば記憶部94に記憶されてもよい。データD1は、第1処理液の導電率に応じた電位印加時間を示す。データD1は、例えば、基板Wに対する処理手順(処理内容および処理条件)を示すレシピデータであってもよい。処理内容は、例えば薬液処理およびリンス処理を含み、処理条件は例えば基板Wの回転速度、処理液の流量および処理時間を含む。制御部90は、不図示のユーザインターフェースに対するユーザの入力に応答して、データD1を生成してもよい。あるいは、制御部90は、不図示の通信インターフェースを通じて外部装置からデータD1を受信してもよい。
【0121】
制御部90はプリディスペンス工程において、データD1に基づいて第1バルブ33および第2バルブ43を制御する。つまり、制御部90は、第1処理液の導電率が高いほど短い電位印加時間に亘って、第1バルブ33および第2バルブ43の両方を開く。より具体的な制御の一例として、制御部90は第1バルブ33および第2バルブ43の両方を開いた時点から、データD1によって示される電位印加時間が経過したときに、第1バルブ33を閉じる。そして、制御部90は第1バルブ33を閉じた時点から所定のサックバック時間が経過したときに、第2バルブ43を閉じる。
【0122】
これによれば、第1処理液の導電率が高い場合には、プリディスペンス工程における電位印加時間が短くなる。このため、第1処理液の電位を適切に所定電位に近づけつつも、プリディスペンス工程の時間を短縮することができる。したがって、スループットを向上させることができる。一方、導電率が低い場合には、プリディスペンス工程における電位印加時間が長い。このため、プリディスペンス工程において、第1処理液の電位を適切に所定電位に近づけることができる。
【0123】
<第1処理液の流量>
基板Wの処理が終了してから次の基板Wの処理が開始するまでに、供給管32の内部に残留した第1処理液が古くなることがある。この場合、プリディスペンス工程によって、ノズル3は古い第1処理液を待機ポッド6に向かって吐出することができる。これにより、プリディスペンス工程の後の第1液処理工程において、処理ユニット1は基板Wにより清浄な第1処理液を供給することができる。
【0124】
導電率が高いほど電位印加時間を短く設定すれば、第1処理液の導電率が高い場合、プリディスペンス工程においてノズル3から吐出される第1処理液の総量は比較的に小さくなる。このため、古い第1処理液を十分に吐出できなくなるおそれがある。一方、第1処理液の導電率が低い場合、第1処理液の総量は比較的に大きくなる。このため、第1処理液の消費量の増加を招き得る。
【0125】
そこで、プリディスペンス工程における第1処理液の流量を第1処理液の導電率に基づいて設定することが考えられる。具体的には、第1処理液の導電率が高いほど、第1処理液の流量を大きく設定することが考えらえる。ただし、第1処理液の流量は、第1処理液と供給管32の内壁との摩擦帯電および第1処理液とノズル3の内壁との摩擦帯電に影響するので、以下では、流量による摩擦帯電への影響についても考察する。
【0126】
さて、第1処理液の流量が大きいほど、第1処理液と供給管32の内壁との摩擦帯電、および、第1処理液とノズル3の内壁との摩擦帯電が大きくなる、と考えられる。逆に言えば、流量が小さいほど、摩擦帯電は小さくなる、と考えられる。また、摩擦帯電は第1処理液の導電率が低いほど発生しやすいと考えられる。
【0127】
このため、第1処理液の導電率が高い場合には、第1処理液の流量を大きくしても、摩擦帯電の影響は比較的に小さい。つまり、導電率という観点では、摩擦帯電が生じにくいので、その分、第1処理液の流量を大きく設定することができる。このため、第1処理液の導電率が高いほど、第1処理液の流量を大きく設定しても、第1処理液の電位を十分に所定電位に近づけることができる。逆に言えば、第1処理液の導電率が低いほど、第1処理液の流量を小さく設定することができる。つまり、導電率という観点では、摩擦帯電が生じやすいので、流量を小さくして、摩擦帯電の発生を抑制する。
【0128】
以上のように、摩擦帯電という観点でも、導電率が高いほど、流量を大きく設定するとよい。逆に言えば、導電率が低いほど、流量を小さく設定するとよい。要するに、第1処理液の電位を十分に所定電位に近づけ、かつ、古い第1処理液を十分に排出するという条件を満たす限りにおいて、導電率が低いほど流量を小さく設定する。
【0129】
プリディスペンス工程における流量を示すデータはデータD1に含まれていてもよい。つまり、導電率に応じた流量を示すデータも記憶部94に記憶されてもよい。例えば制御部90は、不図示のユーザインターフェースに対するユーザの入力に応答して、流量を含むデータD1を生成してもよい。あるいは、制御部90は、不図示の通信インターフェースを通じて外部装置から、流量を含むデータD1を受信してもよい。
【0130】
制御部90はプリディスペンス工程において、データD1に基づいて流量調整バルブ34を制御して、第1処理液の導電率が高いほど第1処理液の流量を大きく調整する。これによれば、導電率が高い場合には、第1処理液の電位を所定電位に適切に近づけ、かつ、古い第1処理液を十分に待機ポッド6に向かって吐出しつつも、プリディスペンス工程の所要時間を短縮することができる。一方、導電率が低い場合には、第1処理液の電位を適切に所定電位に近づけつつ、かつ、古い第1処理液を十分に待機ポッド6に向かって吐出させることができる。したがって、処理ユニット1は、次の第1液処理工程の初期から、所定電位に近い電位を有し、かつ、清浄な第1処理液を基板Wに供給することができる。
【0131】
<別例>
上述の例では、導電部材44に印加する所定電位として接地電位を適用した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。基板Wの主面が帯電しているときには、所定電位として基板Wの主面の電位と同じ電位を適用してもよい。この場合、導電部材44は、可変の電圧を出力可能な電位出力部(例えばスイッチング電源)に接続される。所定電位は事前に設定されてもよいし、基板Wの主面の電位を測定する表面電位計をチャンバ10内に設け、制御部90が該表面電位計の測定結果に基づいて電位出力部を制御してもよい。
【0132】
また、上述の例では、導電部材44は内周部441、外周部442および連結部443を含んでいるものの、導電部材44は外周部442のみを有していてもよい。この場合、処理液が導電部材44を横切れば、導電部材44の電位に応じて絶縁部材421の内周面に電荷が集まるので、処理液の電位を所定電位に近づけることができる。もちろん、導電部材44が内周部441を含み、内周部441に所定電位が印加されることにより、処理液の電位をより所定電位に近づけることができる。
【0133】
以上のように、基板処理装置100および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において例示であって、基板処理装置100および基板処理方法がこれ限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記の各実施形態、および、上記の各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0134】
2 基板保持部
3 ノズル
32 供給管
33,33b 第1バルブ
33a 第1バルブ、最終バルブ
34,34b 流量調整バルブ
42 分岐管
43 第2バルブ
44 導電部材
W 基板