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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158825
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20241031BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20241031BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20241031BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20241031BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/04664
B60K11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074380
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河迫 恵莉加
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博之
【テーマコード(参考)】
3D038
5H127
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
5H127AB04
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB27
5H127CC07
5H127DB47
5H127DB90
5H127DC74
5H127DC76
5H127DC80
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックを早期に暖機しつつ、過冷却による燃料電池スタックの性能低下を抑制する。
【解決手段】制御部64は、燃料電池スタック30の温度が第1温度以下であることを条件に、スタック通過流量が第1流量となるようにポンプ32の駆動を制御しつつ所定条件を満たすよう燃料電池スタック30を発電させて燃料電池スタック30を暖機させる暖機処理を行い、暖機処理の終了後、スタック通過流量が第1流量よりも多い第2流量となるようにポンプ32の駆動を制御する第1処理を行い、第1処理の後にスタック通過流量を第2流量から減少させ、温度センサ63から検出された冷却水の温度が第1処理の実行から所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇したかを判定する第2処理を行い、第2処理が成立した場合に、スタック通過流量を徐々に増大させるようにポンプ32の駆動を制御する第3処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックを冷却するための冷却水を前記燃料電池スタックとの間で循環させる循環流路と、
前記循環流路と前記燃料電池スタックとの間で循環される前記冷却水の流量であるスタック通過流量を調整するポンプと、
前記循環流路を流れる前記冷却水の温度を検出する温度センサと、
前記ポンプの駆動を制御する制御部と、を備える燃料電池モジュールであって、
前記制御部は、
前記燃料電池スタックの温度が第1温度以下であることを条件に、前記スタック通過流量が第1流量となるように前記ポンプの駆動を制御しつつ所定条件を満たすよう前記燃料電池スタックを発電させて前記燃料電池スタックを暖機させる暖機処理を行い、
前記暖機処理の終了後、前記スタック通過流量が前記第1流量よりも多い第2流量となるように前記ポンプの駆動を制御する第1処理を行い、
前記第1処理の後に前記スタック通過流量を前記第2流量から減少させ、前記温度センサから検出された前記冷却水の温度が前記第1処理の実行から所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇したかを判定する第2処理を行い、
前記第2処理が成立した場合に、前記スタック通過流量を徐々に増大させるように前記ポンプの駆動を制御する第3処理を行うことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記循環流路は、前記燃料電池スタックに前記冷却水を供給する供給流路と、前記燃料電池スタックから前記冷却水が排出される排出流路と、を含み、
前記燃料電池モジュールは、
前記供給流路と前記排出流路とを繋ぐバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられるイオン交換器と、
前記循環流路と前記バイパス流路との間で循環される前記冷却水の流量であるバイパス流量と前記スタック通過流量とを調整する調整弁と、を備え、
前記制御部は、
前記暖機処理において、前記スタック通過流量よりも前記バイパス流量が多くなるように前記調整弁の駆動を制御し、
前記第1処理において、前記バイパス流量よりも前記スタック通過流量が多くなるように前記調整弁の駆動を制御し、
前記第2処理及び前記第3処理において、前記循環流路と前記燃料電池スタックとの間と、前記循環流路と前記バイパス流路との間と、の両方で前記冷却水が循環するように前記調整弁の駆動を制御する、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2処理において前記温度センサから検出された前記冷却水の温度が前記第1処理の実行から前記所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇していないと判定する場合に、前記第3処理を行わないとともに異常判定を行う、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、循環流路と、ポンプと、を備える。循環流路は、燃料電池スタックを冷却するための冷却水を燃料電池スタックとの間で循環させる。ポンプは、循環流路と燃料電池スタックとの間で循環される冷却水の流量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-139841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温下にて燃料電池スタックを発電させる際、燃料電池スタックを発電に適した温度にまで昇温させるために、燃料電池スタックを早期に暖機させることが望ましい。また、燃料電池スタックの暖機終了後には燃料電池スタックに冷却水を供給することによって燃料電池スタックを冷却することが行われる。この場合、燃料電池スタックへの冷却水の供給態様によっては、燃料電池スタックに過冷却が生じることによって燃料電池スタックの性能が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを冷却するための冷却水を前記燃料電池スタックとの間で循環させる循環流路と、前記循環流路と前記燃料電池スタックとの間で循環される前記冷却水の流量であるスタック通過流量を調整するポンプと、前記循環流路を流れる前記冷却水の温度を検出する温度センサと、前記ポンプの駆動を制御する制御部と、を備える燃料電池モジュールであって、前記制御部は、前記燃料電池スタックの温度が第1温度以下であることを条件に、前記スタック通過流量が第1流量となるように前記ポンプの駆動を制御しつつ所定条件を満たすよう前記燃料電池スタックを発電させて前記燃料電池スタックを暖機させる暖機処理を行い、前記暖機処理の終了後、前記スタック通過流量が前記第1流量よりも多い第2流量となるように前記ポンプの駆動を制御する第1処理を行い、前記第1処理の後に前記スタック通過流量を前記第2流量から減少させ、前記温度センサから検出された前記冷却水の温度が前記第1処理の実行から所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇したかを判定する第2処理を行い、前記第2処理が成立した場合に、前記スタック通過流量を徐々に増大させるように前記ポンプの駆動を制御する第3処理を行うことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、暖気処理にてスタック通過流量が比較的少ない流量である第1流量に調整されるため、燃料電池スタックに供給される冷却水の流量が少ない状況下で燃料電池スタックを暖機できる。そのため、スタック通過流量が比較的多い流量に調整されつつ燃料電池スタックの暖機を行う場合と比較して、燃料電池スタックを早期に暖機できる。また、冷却水の温度が第1処理の実行から所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇したことを条件に第3処理が行われるため、燃料電池モジュールが正常に機能している状況下で、燃料電池スタックを冷却するための第3処理を行える。第3処理において、スタック通過流量が徐々に増大されるため、過冷却による燃料電池スタックの性能低下を抑制できる。したがって、燃料電池スタックを早期に暖機しつつ、過冷却による燃料電池スタックの性能低下を抑制できる。
【0007】
燃料電池モジュールにおいて、前記循環流路は、前記燃料電池スタックに前記冷却水を供給する供給流路と、前記燃料電池スタックから前記冷却水が排出される排出流路と、を含み、前記燃料電池モジュールは、前記供給流路と前記排出流路とを繋ぐバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられるイオン交換器と、前記循環流路と前記バイパス流路との間で循環される前記冷却水の流量であるバイパス流量と前記スタック通過流量とを調整する調整弁と、を備え、前記制御部は、前記暖機処理において、前記スタック通過流量よりも前記バイパス流量が多くなるように前記調整弁の駆動を制御し、前記第1処理において、前記バイパス流量よりも前記スタック通過流量が多くなるように前記調整弁の駆動を制御し、前記第2処理及び前記第3処理において、前記循環流路と前記燃料電池スタックとの間と、前記循環流路と前記バイパス流路との間と、の両方で前記冷却水が循環するように前記調整弁の駆動を制御してもよい。
【0008】
上記構成によれば、暖気処理、第2処理、及び第3処理の実行時において、バイパス流路に冷却水を流入させることができる。これにより、バイパス流路に設けられたイオン交換器によって、バイパス流路を流れる冷却水から電荷を除去することができる。したがって、燃料電池スタックの暖機と冷却とを行う時間で、冷却水からの電荷の除去ができる。
【0009】
燃料電池モジュールにおいて、前記制御部は、前記第2処理において前記温度センサから検出された前記冷却水の温度が前記第1処理の実行から前記所定時間が経過するまでに第2温度以上上昇していないと判定する場合に、前記第3処理を行わないとともに異常判定を行ってもよい。
【0010】
上記構成によれば、燃料電池モジュールが正常に機能していないと推定できる場合に異常判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、燃料電池スタックを早期に暖機しつつ、過冷却による燃料電池スタックの性能低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料電池モジュールを示す模式図である。
図2】燃料電池モジュールを示す模式図である。
図3】燃料電池モジュールを示す模式図である。
図4】制御部によって行われる制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】調整弁、ポンプ回転数、冷却水の温度の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、燃料電池モジュールを具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
<燃料電池モジュールの全体構成>
図1に示すように、燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック30と、循環流路50と、ポンプ32と、温度センサ63と、制御部64と、を備える。さらに、燃料電池モジュール10は、バイパス流路53と、イオン交換器34と、調整弁62と、を備える。本実施形態における燃料電池モジュール10は、ファン29と、ラジエータ31と、インタークーラ33と、リザーブタンク35と、供給配管61と、を備える。なお、本実施形態における燃料電池モジュール10は、例えば、フォークリフトなどの産業車両に搭載されるものである。
【0014】
ファン29はラジエータ31と隣り合うように配置されている。ファン29は、回転することによってラジエータ31に向かう空気の流れを形成する。こうした空気の流れを受けて、ラジエータ31は冷却水を外気と熱交換させる。
【0015】
リザーブタンク35は、ラジエータ31に供給する冷却水を収容する。リザーブタンク35とラジエータ31とは供給配管61によって接続されている。
循環流路50は、燃料電池スタック30を冷却するための冷却水を燃料電池スタック30との間で循環させるものである。循環流路50は、供給流路51と排出流路52とを含む。燃料電池スタック30とラジエータ31とは、供給流路51及び排出流路52によって接続されている。供給流路51は、ラジエータ31で熱交換された冷却水が燃料電池スタック30に向けて流れる流路である。すなわち、供給流路51は、燃料電池スタック30に冷却水を供給するものである。排出流路52は、発熱した燃料電池スタック30との熱交換によって昇温した状態の冷却水が燃料電池スタック30からラジエータ31に向けて流れる流路である。すなわち、排出流路52は、燃料電池スタック30から冷却水が排出されるものである。供給流路51を流れる冷却水は、ラジエータ31にて外気との熱交換によって冷却された状態の冷却水である。なお、図面においては、循環流路50における冷却水の流れを黒塗りの矢印で示している。
【0016】
ポンプ32は、供給流路51に設けられている。ポンプ32は、供給流路51での冷却水の流れ方向におけるラジエータ31より下流かつ燃料電池スタック30より上流に設けられている。ポンプ32は、供給流路51及び排出流路52に冷却水を流すために、冷却水を圧送する。これにより、ポンプ32は、循環流路50と燃料電池スタック30との間で循環される冷却水の流量であるスタック通過流量Faを調整する。
【0017】
インタークーラ33は、供給流路51に設けられている。インタークーラ33は、供給流路51での冷却水の流れ方向において、ポンプ32より下流かつ燃料電池スタック30より上流に設けられている。インタークーラ33は、ラジエータ31で熱交換された後の冷却水を冷却する。インタークーラ33で冷却された冷却水は、燃料電池スタック30に流入する。
【0018】
バイパス流路53は、供給流路51における冷却水の流れ方向において、インタークーラ33より下流かつ燃料電池スタック30より上流となる位置に接続される。バイパス流路53は、排出流路52における冷却水の流れ方向において、燃料電池スタック30より下流かつラジエータ31より上流となる位置に接続される。したがって、バイパス流路53は、供給流路51と排出流路52とを繋ぐものである。
【0019】
イオン交換器34は、バイパス流路53に設けられている。イオン交換器34は、バイパス流路53を流れる冷却水から電荷を除去する。
調整弁62は、循環流路50とバイパス流路53との間で循環される冷却水の流量であるバイパス流量Fbとスタック通過流量Faとを調整する。本実施形態における調整弁62は、供給流路51におけるバイパス流路53の接続箇所に設けられている。調整弁62が駆動することによって、例えば、バイパス流路53と供給流路51との各々の流路面積が増減される。調整弁62は、例えばロータリーバルブである。ロータリーバルブは回転することによって、ロータリーバルブの回転位置に応じてバイパス流路53と供給流路51との各々の流路面積が増減される。
【0020】
温度センサ63は、循環流路50を流れる冷却水の温度Tを検出する。本実施形態における温度センサ63は、排出流路52における冷却水の流れ方向において、排出流路52へのバイパス流路53の接続箇所よりも上流かつ燃料電池スタック30より下流となる位置に設けられている。そのため、本実施形態における温度センサ63は、燃料電池スタック30から排出流路52に排出された後の冷却水の温度Tを検出する。燃料電池スタック30から排出流路52に排出された後の冷却水の温度は、燃料電池スタック30の温度と実質的に等しいといえる。
【0021】
制御部64は、CPUやGPU等の図示しないプロセッサと、RAM及びROM等からなる図示しない記憶部と、を備えている。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部64は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部64は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0022】
制御部64は、ポンプ32、調整弁62、及び温度センサ63と電気的に接続されている。制御部64は、ポンプ32の駆動を制御する。制御部64には、温度センサ63によって検出された冷却水の温度Tが入力される。
【0023】
燃料電池スタック30には、不図示のエアコンプレッサから不図示の空気流路を介して酸素を含む空気が供給される。燃料電池スタック30には、不図示の水素タンクから不図示の水素流路を介して水素ガスが供給される。水素流路には、例えば水素流路における水素ガスの流量を変更する流量変更弁が設けられている。
【0024】
制御部64は、エアコンプレッサの吐出量を制御することにより、燃料電池スタック30に供給される酸素の量を調整する。制御部64は、流量変更弁の開度を制御することにより、燃料電池スタック30に供給される水素ガスの量を調整する。こうして制御部64は、燃料電池スタック30に供給される酸素の量と水素ガスの量とを調整することによって、燃料電池スタック30における発電と発電停止とを切り替えるとともに、燃料電池スタック30の発電量を制御する。
【0025】
<冷却水の流れ>
ラジエータ31によって冷却された冷却水は、インタークーラ33によって冷却された後、燃料電池スタック30に流入する。燃料電池スタック30と冷却水との熱交換によって、燃料電池スタック30が冷却される。燃料電池スタック30との熱交換によって温められた冷却水は、ラジエータ31に流入する。ラジエータ31において、冷却水は、ファン29による空気の流れを受けて冷却される。
【0026】
バイパス流路53を冷却水が流れるとき、冷却水の電荷は、イオン交換器34によって除去される。イオン交換器34にて電荷の除去された冷却水は、バイパス流路53から排出流路52に流入する。
【0027】
<暖機処理>
図2に示すように、制御部64は、暖機処理を行う。暖機処理において、制御部64は、温度センサ63によって取得された、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であることを条件に、次の処理を行う。すなわち、制御部64は、スタック通過流量Faが第1流量F1となるようにポンプ32の駆動を制御しつつ所定条件を満たすよう燃料電池スタック30を発電させて燃料電池スタック30を暖機させる。
【0028】
本実施形態における制御部64は、暖機処理を一定時間Taだけ継続した後、暖機処理を終了させる。なお、一定時間Taは、所定条件として実験などによって予め設定された規定値である。一定時間Taは、例えば、燃料電池スタック30の単位時間当たりの発熱量と一定時間Taとの乗算値が、燃料電池スタック30の熱容量とオーバーヒートが生じる直前の燃料電池スタック30の温度との乗算値よりも小さくなるように設定される。こうした乗算値の関係が満たされる範囲内で、最も長くなる時間に一定時間Taは設定されてもよい。上記の「オーバーヒートが生じる直前の燃料電池スタック30の温度」は、暖機処理が開始される直前の燃料電池スタック30の温度に応じて補正されてもよい。この場合、制御部64は、この補正された温度に対応するように予め複数設定された上記の一定時間Taから1つを選択することで、暖機処理を継続させる時間を調整してもよい。
【0029】
暖機処理において、制御部64は、燃料電池スタック30に酸素及び水素ガスを供給させることにより、燃料電池スタック30を発電させる。
本実施形態における制御部64は、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが所定温度Tp以下であることをもって、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であると判断する。なお、第1温度T1は、燃料電池スタック30が第1温度T1以下である場合に燃料電池スタック30内で冷却水が凍結しているおそれがある温度である。第1温度T1は、例えば0(ゼロ)度である。所定温度Tpは、温度センサ63が設けられる循環流路50の位置にて流れる冷却水の温度が所定温度Tp以下である場合に、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であると推定できる値である。所定温度Tpは、第1温度T1と同じ温度であってもよいし、第1温度T1とは異なる温度であってもよい。
【0030】
本実施形態における制御部64は、暖気処理において、ポンプ32の回転数を低回転の第1回転数P1に制御する。さらに、制御部64は、暖機処理において、スタック通過流量Faよりもバイパス流量Fbが多くなるように調整弁62の駆動を制御する。詳細には、暖機処理において、制御部64は、調整弁62の駆動状態を第1状態V1に制御する。調整弁62が第1状態V1であるとき、供給流路51から燃料電池スタック30には冷却水が流入せず、且つ供給流路51を流れる冷却水の全てがバイパス流路53に流入する。これにより、暖機処理においては、スタック通過流量Faが0(ゼロ)となるため、スタック通過流量Faよりもバイパス流量Fbが多くなる。本実施形態における第1流量F1は0(ゼロ)である。第1流量F1は、後述する第2流量F2の10分の1程度の流量であってもよい。
【0031】
<暖機処理の実行中における冷却水の流れ>
暖機処理の実行中、冷却水は、ラジエータ31、供給流路51、バイパス流路53、及び排出流路52の順で流れた後、排出流路52からラジエータ31に流入する。こうして、暖機処理の実行中、冷却水は循環流路50とバイパス流路53との間で循環する。その一方で、暖機処理の実行中、冷却水は、供給流路51から燃料電池スタック30に流入しない。そのため、冷却水は、燃料電池スタック30から排出流路52に排出されない。したがって、暖機処理の実行中、冷却水は循環流路50と燃料電池スタック30との間で循環しない。循環流路50を流れる冷却水には、燃料電池スタック30での発電に伴う昇温が生じない。
【0032】
循環流路50と燃料電池スタック30との間で冷却水が循環しない状況下で、暖機処理においては燃料電池スタック30の発電が行われる。これにより、暖機処理の実行中には、燃料電池スタック30の発電に伴って、時間が経過するほど燃料電池スタック30が昇温する。
【0033】
<第1処理>
図3に示すように、制御部64は、暖気処理の終了後、第1処理を行う。第1処理において、制御部64は、スタック通過流量Faが第1流量F1よりも多い第2流量F2となるようにポンプ32の駆動を制御する。
【0034】
本実施形態における制御部64は、第1処理において、ポンプ32の回転数を高回転の第2回転数P2に制御する。さらに、制御部64は、第1処理において、バイパス流量Fbよりもスタック通過流量Faが多くなるように調整弁62の駆動を制御する。詳細には、第1処理において、制御部64は、調整弁62の駆動状態を第2状態V2に制御する。調整弁62が第2状態V2であるとき、供給流路51及び排出流路52のどちらからもバイパス流路53に冷却水が流入せず、且つ供給流路51を流れる冷却水の全てが燃料電池スタック30に流入する。これにより、第1処理においては、バイパス流量Fbが0(ゼロ)となるため、バイパス流量Fbよりもスタック通過流量Faが多くなる。本実施形態における第2流量F2は、循環流路50を流れる冷却水の全流量である。
【0035】
<第1処理の実行中における冷却水の流れ>
第1処理の実行中、冷却水は、ラジエータ31、供給流路51、燃料電池スタック30、及び排出流路52の順で流れた後、排出流路52からラジエータ31に流入する。こうして、第1処理の実行中、冷却水は循環流路50と燃料電池スタック30との間で循環する。その一方で、第1処理の実行中、冷却水は、供給流路51からバイパス流路53に流入しない。そのため、冷却水は、バイパス流路53から排出流路52に排出されない。したがって、第1処理の実行中、冷却水は循環流路50とバイパス流路53との間で循環しない。
【0036】
循環流路50と燃料電池スタック30との間で冷却水が循環することにより、第1処理においては、燃料電池スタック30での発電に伴って昇温した冷却水が燃料電池スタック30から循環流路50に流入する。スタック通過流量Faが第2流量F2に調整されることにより、燃料電池スタック30に供給される冷却水によって燃料電池スタック30は冷却される。
【0037】
<第2処理>
図1に示すように、制御部64は、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇したかを判定する第2処理を行う。第2処理において、制御部64は、はじめにスタック通過流量Faが第2流量F2よりも少なくなるようにポンプ32の駆動を制御する。これにより、第2処理において、制御部64は、第1処理の後にスタック通過流量Faを第2流量F2から減少させる。制御部64は、第1処理の後にスタック通過流量Faを第2流量F2から減少させ、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇したと判定すると、第2処理が成立したと判断する。
【0038】
第1処理において、スタック通過流量Faが第2流量F2とされるとともに、ポンプ32の回転数を第2回転数P2に制御されることにより、循環流路50を流れる冷却水は比較的早期に昇温する。そのため、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上昇温する。なお、所定時間Tb及び第2温度T2は、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇した場合に、燃料電池モジュール10が正常に機能していると判断できる値に設定される。ここで、スタック通過流量Faは、第1処理が始まり一旦第2流量F2となった後、第2処理において減少する。すなわち、排出流路52のうち温度センサ63が設けられる部分には、スタック通過流量Faが一旦第2流量F2とされてから減少する時までの流量だけ燃料電池スタック30の内部に存在していた冷却水が押し出されることになる。押し出された冷却水は、温度センサ63を温める。燃料電池スタック30に流入した冷却水は、燃料電池スタック30を冷却する。燃料電池モジュール10が正常に機能している場合には、例えば、循環流路50にて冷却水が凍結していない、ポンプ32及び調整弁62が正常に駆動している、温度センサ63が正常に検出している等が挙げられる。
【0039】
本実施形態における制御部64は、第2処理において、ポンプ32の回転数を中回転の第3回転数P3に制御する。さらに、制御部64は、第2処理において、循環流路50と燃料電池スタック30との間と、循環流路50とバイパス流路53との間と、の両方で冷却水が循環するように調整弁62の駆動を制御する。詳細には、第2処理において、制御部64は、調整弁62の駆動状態を第3状態V3に制御する。調整弁62が第3状態V3であるとき、排出流路52からバイパス流路53に冷却水が流入するとともに、且つ供給流路51から燃料電池スタック30に冷却水が流入する。これにより、第2処理においては、スタック通過流量Fa及びバイパス流量Fbのどちらともが0(ゼロ)ではない。これにより、スタック通過流量Faが第2流量F2よりも少なくなる。本実施形態の第2処理においては、スタック通過流量Fa及びバイパス流量Fbは、互いに同じ値に設定されている。第2処理においては、スタック通過流量Fa及びバイパス流量Fbは、互いに異なる値に設定されてもよい。
【0040】
<第2処理の実行中における冷却水の流れ>
第2処理の実行時、冷却水は、ラジエータ31、供給流路51、燃料電池スタック30、及び排出流路52の順で流れた後、排出流路52からラジエータ31に流入する。さらに、冷却水は、排出流路52からバイパス流路53を介して供給流路51に流入する。こうして、第2処理の実行中、冷却水は、循環流路50と燃料電池スタック30との間で循環するとともに、循環流路50とバイパス流路53との間で循環する。
【0041】
第2処理におけるスタック通過流量Faは、第1処理におけるスタック通過流量Faよりも少なく調整される。燃料電池スタック30に供給される冷却水の減少によって冷却水による燃料電池スタック30の冷却機能は一時的に低下するが、第2処理においても第1処理と同様に燃料電池スタック30に供給される冷却水によって燃料電池スタック30の冷却は継続される。
【0042】
<第3処理>
制御部64は、第2処理が成立した場合に、第3処理を行う。第3処理において、制御部64は、スタック通過流量Faを徐々に増大させるようにポンプ32の駆動を制御する。
【0043】
本実施形態における制御部64は、第3処理において、ポンプ32の回転数を中回転の第3回転数P3から徐々に増大させる。さらに、制御部64は、第3処理においても第2処理と同様に、循環流路50と燃料電池スタック30との間と、循環流路50とバイパス流路53との間と、の両方で冷却水が循環するように調整弁62の駆動を制御する。詳細には、第3処理において、制御部64は、調整弁62の駆動状態を第3状態V3に制御する。なお、ここで述べる「徐々に」とは、はじめは回転数の目標値を最終回転数よりも低く設定し、所定の時間をかけて最終回転数に到達するよう緩やかに増加させることである。
【0044】
<第3処理の実行中における冷却水の流れ>
第3処理の実行時、冷却水は、第2処理と同様の経路を通って流れる。第3処理におけるスタック通過流量Faは、第2処理において設定されたスタック通過流量Faから徐々に増大される。そのため、燃料電池スタック30に供給される冷却水の増大によって、冷却水による燃料電池スタック30の冷却機能は第3処理の実行中に徐々に向上する。
【0045】
<異常判定>
制御部64は、第2処理において温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇していないと判定する場合に、第3処理を行わないとともに異常判定を行う。
【0046】
制御部64は、異常判定を行う際に、不図示の報知手段によって燃料電池モジュール10が搭載された産業車両にて報知することを行ってもよい。この場合の報知手段とは、例えば、音声による報知、点灯による報知などが挙げられる。この報知手段による報知によって、産業車両の利用者に異常を報知できる。
【0047】
なお制御部64は、第1処理の実行が開始されたタイミングでの冷却水の温度Tを記憶するとともに、第1処理の実行開始から所定時間Tbが経過するまでに記憶された上記の冷却水の温度Tから第2温度T2以上上昇しないと判断すると、異常判定を行う。言い換えると、第1処理の実行開始から所定時間Tbが経過するまでに記憶された上記の冷却水の温度Tから第2温度T2以上上昇したと判断すると、制御部64は第3処理を実行する。
【0048】
所定時間Tb及び第2温度T2は、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇する場合に、燃料電池モジュール10が正常に機能していると判断できる値に設定される。すなわち、燃料電池モジュール10が正常に機能している場合、第1処理にてスタック通過流量Faが第2流量F2とされることによって、冷却水の温度Tが第2温度T2以上に上昇するまでに要する時間に基づいて所定時間Tbが設定されている。
【0049】
燃料電池モジュール10が正常に機能している場合、循環流路50と燃料電池スタック30との間で冷却水が循環することにより、第1処理において、燃料電池スタック30での発電に伴って昇温した冷却水が燃料電池スタック30から循環流路50に流入する。これにより、温度センサ63から検出され冷却水の温度Tは、第1処理の実行開始から比較的短時間で上昇する。その一方で、燃料電池モジュール10が正常に機能していない場合、燃料電池モジュール10が正常に機能している場合よりも、循環流路50と燃料電池スタック30との間で循環する冷却水の流量が低下する。これにより、第1処理において、燃料電池スタック30での発電に伴って昇温した冷却水が燃料電池スタック30から循環流路50に流入しにくい。温度センサ63から検出された冷却水の温度Tは、第1処理の実行開始時から上昇しにくい。これにより、制御部64は、第1処理の実行によって温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇しない場合、燃料電池モジュール10が正常に機能していないと推定できる。なお、燃料電池モジュール10が正常に機能していない場合には、例えば、循環流路50にて冷却水が凍結している、ポンプ32及び調整弁62が正常に駆動していない、温度センサ63が正常に検出していない等が挙げられる。
【0050】
<制御部による処理手順>
図4を参照して制御部64によって行われる処理の手順の一例について説明する。図4に示す処理は、例えば、燃料電池スタック30による発電が開始されたことを条件に行われる。
【0051】
図4に示すように、処理が開始されると、制御部64は冷却水の温度Tが第1温度T1以下か否かを判断する(ステップS110)。冷却水の温度Tが第1温度T1より高いと判断すると(ステップS110:NO)、暖気処理の実行が不要であるとして制御部64は処理を終了させる。冷却水の温度Tが第1温度T1以下であると判断すると(ステップS110:YES)、制御部64は暖気処理を行う(ステップS120)。
【0052】
つづいて、制御部64は第1処理を行う(ステップS130)。その後、制御部64は、第2処理を開始する(ステップ140)。第2処理において冷却水の温度Tが第2温度T2以上上昇したと判定すると(ステップ150:YES)、制御部64は第3処理を行う(ステップS160)。そして制御部64は処理を終了させる。
【0053】
冷却水の温度Tが第2温度T2以上上昇していないと判定する場合(ステップ150:NO)、制御部64は異常判定を行う(ステップS170)。そして、制御部64は処理を終了させる。
【0054】
[実施形態の作用]
次に本実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、制御部64は第1時間t1まで暖気処理を行う。図5では、暖気処理の開始時の冷却水の温度Tが第1温度T1である場合を例示している。暖気処理において、制御部64は、ポンプ32の回転数を第1回転数P1に制御するとともに調整弁62を第1状態V1に制御することによって、スタック通過流量Faを第1流量F1に調整する。暖気処理において、制御部64は、燃料電池スタック30を発電させて燃料電池スタック30を暖機させる。本実施形態では、スタック通過流量Faが0(ゼロ)に調整されるため、暖気処理が終了する第1時間t1まで、燃料電池スタック30の発電を受けて昇温した冷却水が循環流路50に流入しない。これにより、暖気処理が終了する第1時間t1まで、冷却水の温度Tが昇温していない。
【0055】
暖気処理が終了された後、第1時間t1において、制御部64は、スタック通過流量Faが第2流量F2となるようにポンプ32の駆動を制御する第1処理を行う。第1処理において、制御部64は、ポンプ32の回転数を第2回転数P2に制御するとともに調整弁62を第2状態V2に制御することによって、スタック通過流量Faを第2流量F2に調整する。本実施形態では、スタック通過流量Faが循環流路50を流れる冷却水の全流量に調整されるため、第1時間t1にて第1処理が行われると、燃料電池スタック30の発電を受けて昇温した冷却水が循環流路50に流入するようになる。これにより、第1時間t1にて第1処理が行われると、短時間で冷却水の温度Tが昇温する。燃料電池スタック30に冷却水が供給されることによって、冷却水との熱交換によって燃料電池スタック30が冷却される。
【0056】
第1時間t1から第2時間t2の間にかけて、制御部64は第2処理を開始する。図5では、第2時間t2に対する第1時間t1の差が所定時間Tb以下となっているとともに、第2時間t2での冷却水の温度Tと第1時間t1での冷却水の温度Tとの差が第2温度T2となっている場合を例示する。第2処理において、制御部64は、ポンプ32の回転数を第3回転数P3に制御するとともに調整弁62を第3状態V3に制御することによって、スタック通過流量Faを第2流量F2から減少させる。これにより、第2処理においては、燃料電池スタック30に供給される冷却水の減少によって冷却水による燃料電池スタック30の冷却機能が第1処理の実行時よりも低下する。
【0057】
第2処理における第2時間t2で、第2温度T2に到達したと判定した後、第3時間t3において、制御部64は第3処理を行う。制御部64は、第3処理において、ポンプ32の回転数を第3回転数P3から徐々に増大させるとともに調整弁62を第3状態V3に維持することによって、スタック通過流量Faを徐々に増大させる。これにより、第3処理においては、燃料電池スタック30に供給される冷却水が徐々に増大されることによって、冷却水による燃料電池スタック30の冷却機能が第2処理の実行時よりも徐々に向上する。
【0058】
[実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)制御部64は、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であることを条件に、暖機処理を行う。暖気処理において、制御部64は、スタック通過流量Faが第1流量F1となるようにポンプ32の駆動を制御しつつ所定条件を満たすよう燃料電池スタック30を発電させて燃料電池スタック30を暖機させる。こうして暖気処理にてスタック通過流量Faが比較的少ない流量である第1流量F1に調整されるため、燃料電池スタック30に供給される冷却水の流量が少ない状況下で燃料電池スタック30を暖機できる。そのため、スタック通過流量Faが比較的多い流量に調整されつつ燃料電池スタック30の暖機を行う場合と比較して、燃料電池スタック30を早期に暖機できる。制御部64は、暖機処理の終了後、スタック通過流量Faが第2流量F2となるようにポンプ32の駆動を制御する第1処理を行う。制御部64は、第1処理の後にスタック通過流量Faを第2流量F2から減少させ、温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇したかを判定する第2処理を行う。制御部64は、第2処理が成立した場合に、スタック通過流量Faを徐々に増大させるようにポンプ32の駆動を制御する第3処理を行う。こうして冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇したことを条件に、第3処理が行われる。そのため、燃料電池モジュール10が正常に機能している状況下で、燃料電池スタック30を冷却するための第3処理を行える。第3処理において、スタック通過流量Faが徐々に増大されるため、過冷却による燃料電池スタック30の性能低下を抑制できる。したがって、燃料電池スタック30を早期に暖機しつつ、過冷却による燃料電池スタック30の性能低下を抑制できる。
【0059】
(2)制御部64は、暖機処理において、スタック通過流量Faよりもバイパス流量Fbが多くなるように調整弁62の駆動を制御する。制御部64は、第2処理及び第3処理において、循環流路50と燃料電池スタック30との間と、循環流路50とバイパス流路53との間と、の両方で冷却水が循環するように調整弁62の駆動を制御する。そのため、暖気処理、第2処理、及び第3処理の実行時において、バイパス流路53に冷却水を流入させることができる。これにより、バイパス流路53に設けられたイオン交換器34によって、バイパス流路53を流れる冷却水から電荷を除去することができる。したがって、燃料電池スタック30の暖機と冷却とを行う時間で、冷却水からの電荷の除去ができる。
【0060】
(3)制御部64は、第2処理において温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇していないと判定する場合に、第3処理を行わないとともに異常判定を行う。したがって、燃料電池モジュール10が正常に機能していないと推定できる場合に異常判定を行うことができる。
【0061】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0062】
○ 制御部64は、第2処理において温度センサ63から検出された冷却水の温度Tが第1処理の実行から経過時間Tcが経過するまでに第2温度T2以上上昇していないと判定する場合に、第3処理を行わないとともに異常判定を行ってもよい。なお、経過時間Tcは所定時間Tbとは異なる時間である。
【0063】
○ 制御部64は、異常判定の実行を省略してもよい。この場合、例えば、制御部64は、第2処理において冷却水の温度Tが第1処理の実行から所定時間Tbが経過するまでに第2温度T2以上上昇していないと判定する場合に、第3処理を行わない状態で処理を終了させてもよい。
【0064】
○ 燃料電池モジュール10からバイパス流路53を省略してもよい。この場合、例えば循環流路50の途中にイオン交換器34を設けてもよい。また、この場合、例えば、暖気処理におけるスタック通過流量Faの第1流量F1への調整と、第1処理におけるスタック通過流量Faの第2流量F2への調整と、を制御部64によるポンプ32の駆動制御によって実現すればよい。第2処理におけるスタック通過流量Faの第2流量F2未満への調整と、第3処理におけるスタック通過流量Faの増大と、を制御部64によるポンプ32の駆動制御によって実現すればよい。
【0065】
○ 制御部64は、温度センサ63から検出された冷却水の温度T以外のパラメータに基づいて、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であるか否かを判断してもよい。例えば、燃料電池モジュール10は、外気温を検出する外気温センサを備えてもよい。制御部64は、外気温センサによって検出された外気温に基づいて、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であるか否かを判断してもよい。
【0066】
○ 制御部64は、暖機処理を一定時間Ta継続した後に暖気処理を終了するものに限らない。例えば、制御部64は、予め定められた発電量で、予め定められた時間だけ発電するようにしてもよい。発電量および時間は実験的に決めておく。なお、この場合、暖気処理の実行中に、燃料電池スタック30から排出流路52に冷却水が排出されるように、制御部64はポンプ32の駆動を制御する。
【0067】
○ 第1流量F1は、0(ゼロ)よりも多い値であってもよい。この場合、制御部64は、暖気処理において、燃料電池スタック30の温度が第1温度T1以下であることを条件に、スタック通過流量Faが0(ゼロ)よりも大きい第1流量F1となるようにポンプ32の駆動を制御する。
【0068】
○ 制御部64は、暖気処理において、ポンプ32の回転数を0(ゼロ)に制御してもよい。
○ 第2流量F2は、循環流路50を流れる冷却水の全流量よりも少ない値であってもよい。この場合、制御部64は、第1処理において、スタック通過流量Faが第1流量F1よりも多くかつ循環流路50を流れる冷却水の全流量よりも少ない値となるようにポンプ32の駆動を制御する。
【0069】
○ 温度センサ63の設置箇所は、排出流路52における冷却水の流れ方向において、排出流路52へのバイパス流路53の接続箇所よりも上流かつ燃料電池スタック30より下流となる位置に限らない。要するに、温度センサ63の設置箇所は、燃料電池スタック30から排出流路52に排出された後の冷却水の温度Tを検出可能である範囲内で変更可能である。
【0070】
○ 燃料電池モジュール10の搭載先は、産業車両に限らない。例えば燃料電池モジュール10の搭載先は、自動車や農業用車両、建設機械、定置型発電機などであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
F1…第1流量、F2…第2流量、Fa…スタック通過流量、Fb…バイパス流量、T…冷却水の温度、T1…第1温度、T2…第2温度、Tb…所定時間、10…燃料電池モジュール、30…燃料電池スタック、32…ポンプ、34…イオン交換器、50…循環流路、51…供給流路、52…排出流路、53…バイパス流路、62…調整弁、63…温度センサ、64…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5