(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158829
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】運賃収受システムおよびその車載装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/127 20060101AFI20241031BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241031BHJP
G06Q 20/34 20120101ALI20241031BHJP
【FI】
G08G1/127 B
G06Q50/30
G06Q20/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074387
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144544
【氏名又は名称】レシップホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 幸治
【テーマコード(参考)】
5H181
5L020
5L049
5L050
5L055
【Fターム(参考)】
5H181AA16
5H181BB04
5H181EE10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181MA22
5H181MA30
5H181MA48
5L020AA66
5L049CC41
5L050CC41
5L055AA66
(57)【要約】
【課題】通信障害が生じた場合においても運賃収受を行い得る運賃収受システムおよびその車載装置を提供する。
【解決手段】運賃収受システムは、車載装置、ICカードおよびサーバ装置を含む。サーバ装置は、車両外に設けられてインターネットに接続されており、バスの利用者を識別する識別情報と、これに関連付けられた運賃バリューと、利用者が当該システムの利用登録時にバスの事業者に提供した担保金の担保金情報と、を記憶する。ICカードは、利用者に所持されて識別情報および担保金情報を有する。車載装置は、利用運賃情報と、ICカードから読み出された識別情報と、を無線通信回線およびインターネットを介してサーバ装置に送信する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムであって、
前記車両外に設けられており前記利用者を識別する識別情報とこの識別情報に関連付けられた運賃バリューと前記利用者が当該システムの利用登録時に前記交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報とを記憶するサーバ装置と、
前記利用者に所持されて前記識別情報および前記担保金情報を有する情報担持媒体と、
前記利用運賃の情報または前記利用運賃の算出に要する情報(以下「利用運賃等情報」という)と前記情報担持媒体から読み出された前記識別情報とを無線通信回線を介して前記サーバ装置に送信する車載装置と、を含み、
前記車載装置は、前記サーバ装置に対して送信した、
(1) 前記識別情報および前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信された場合、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、
(2) 前記識別情報および/または前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合、前記利用者が所持する前記情報担持媒体から読み出された前記担保金情報に基づいて、(2a)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金以下であるときには、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、前記通信障害の解消後、前記サーバ装置に前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を送信し、(2b)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金を超えるときには、前記利用者に前記利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力し、
前記サーバ装置は、前記車載装置から、
(3) 前記識別情報および前記利用運賃等情報を受信した場合、前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューを前記運賃バリューから減算して収受し、
(4) 前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を受信した場合、(4a)前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューが前記運賃バリュー以下であるときには、前記運賃バリューから前記利用運賃に相当するバリューを減算し、(4b)前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューが前記運賃バリューを超えるときには、前記運賃バリューを超える超過分を前記担保金情報に基づく前記担保金の範囲内で負債バリューとして記憶するとともに前記運賃バリューをゼロまたは無価値に変更し、かつ、その後、前記識別情報に関連付けられた前記運賃バリューを用いた前記利用運賃の収受を停止する、ことを特徴とする運賃収受システム。
【請求項2】
前記(4b)において前記利用運賃の収受を停止する対象になった前記運賃バリューに対して前記超過分以上のバリューがチャージされた場合、前記サーバ装置は、当該運賃バリューを用いた前記利用運賃の収受を再開する、ことを特徴とする請求項1に記載の運賃収受システム。
【請求項3】
前記担保金情報は、前記情報担持媒体に代えて、または前記情報担持媒体に加えて、
前記車載装置に記憶されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の運賃収受システム。
【請求項4】
交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムに用いられる車載装置であって、
前記運賃収受システムは、前記車両外に設けられており前記利用者を識別する識別情報とこの識別情報に関連付けられた運賃バリューと前記利用者が当該システムの利用登録時に前記交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報とを記憶するサーバ装置と、前記利用者に所持されて前記識別情報および前記担保金情報を有する情報担持媒体と、を含み、
前記車載装置は、前記利用運賃の情報または前記利用運賃の算出に要する情報(以下「利用運賃等情報」という)と前記情報担持媒体から読み出された前記識別情報とを無線通信回線を介して前記サーバ装置に送信し、
(1) 前記識別情報および前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信された場合、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、
(2) 前記識別情報および/または前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合、前記情報担持媒体から読み出された前記担保金情報に基づいて、(2a)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金以下であるときには、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、前記通信障害の解消後、前記サーバ装置に前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を送信し、(2b)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金を超えるときには、前記利用者に前記利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力する、ことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
前記情報担持媒体に代えて、または前記情報担持媒体に加えて、
前記担保金情報を記憶している、ことを特徴とする請求項4に記載の車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムおよびその車載装置に関するものである。なお、交通機関の車両には、路線バス、路面電車、トロリーバス等の乗合バスや鉄道等のほかに、オンデマンド交通やオンデマンドタクシー等も含まれる。
【背景技術】
【0002】
交通系ICカードを利用した運賃計算や運賃決済方式(以下「運賃収受方式」という)として、例えば、下記特許文献1に開示される「運賃精算装置」に関する技術がある。この技術では、ICカードに対する読み出しや書き込みのほかに運賃計算や運賃精算等の情報処理を、交通機関の車両に搭載された運賃精算装置がすべて行う。
【0003】
車両に搭載された装置(以下「車載装置」という)で情報処理の大半を行う運賃収受方式は、下記、非特許文献1に記載されているようにCBT(Card Based Ticketing)方式と呼ばれている。CBT方式では、車載装置による情報処理の負担が大きい。そのため、処理速度の速いハードウェアが必要になることから設備のコスト高の一因になり得る。
【0004】
これに対して、非特許文献1で紹介されているABT(Account Based Ticketing)方式は、運賃計算や運賃精算等の情報処理をクラウドサーバで行う運賃収受方式である。そのため、ABT方式は車載装置による情報処理の負担が小さい。したがって、車載装置には処理速度の速さが要求され難くなることから設備の低廉化が可能になる。今後、交通機関の車両の運賃収受方式は、CBT方式からABT方式に移行が進むことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“本邦初!ABT方式の乗車券システムを商用化する”、[online]、bp-Affairs(運営会社 一般社団法人ビジネス&パブリック アフェアーズ)、HOME > bp-Aニュース、[令和5年4月24日検索]、インターネット [https://bp-affairs.com/news/2022/03/20220308-11448.html]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記、非特許文献1に紹介されている運賃収受のABT方式は、運賃計算や運賃精算等の情報処理をクラウドサーバで行うことから、インターネット等の情報通信ネットワークが安定して機能することが必要になる。例えば、駅構内に設けられる鉄道の自動改札機のように、一所に固定された装置の場合には有線通信回線を利用することにより比較的安定した情報通信が可能である。
【0008】
しかしながら、車両に搭載されて移動する車載装置においては、無線通信回線を利用せざるを得ないことから、通信が不安定になり易い。無線通信回線は、移動場所や通信環境の変動により電波伝播障害や外来ノイズに起因した通信途絶(通信障害)も発生し得る。そのため、停留所や運行経路の一部において無線通信が不安定な場所が存在する場合には車載装置はABT方式による運賃収受を行い難いケースが生じ得る。
【0009】
このような無線通信に特有の通信障害による運賃収受の問題は、無線通信回線の基地局を増設する等の無線通信インフラの増強によって解決し得るものの、それにはコストや時間を要することから解決が容易ではない。したがって、交通機関の車両に搭載される車載装置を含めた運賃収受システムにおいては、通信障害が生じた場合における運賃収受に課題が残されている。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行い得る運賃収受システムおよびその車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載された運賃収受システムは、交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムであって、前記車両外に設けられており前記利用者を識別する識別情報とこの識別情報に関連付けられた運賃バリューと前記利用者が当該システムの利用登録時に前記交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報とを記憶するサーバ装置と、前記利用者に所持されて前記識別情報および前記担保金情報を有する情報担持媒体と、前記利用運賃の情報または前記利用運賃の算出に要する情報(以下、請求項1~3において「利用運賃等情報」という)と前記情報担持媒体から読み出された前記識別情報とを無線通信回線を介して前記サーバ装置に送信する車載装置と、を含み、前記車載装置は、前記サーバ装置に対して送信した、(1) 前記識別情報および前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信された場合、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、(2) 前記識別情報および/または前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合、前記利用者が所持する前記情報担持媒体から読み出された前記担保金情報に基づいて、(2a)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金以下であるときには、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、前記通信障害の解消後、前記サーバ装置に前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を送信し、(2b)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金を超えるときには、前記利用者に前記利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力し、前記サーバ装置は、前記車載装置から、(3) 前記識別情報および前記利用運賃等情報を受信した場合、前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューを前記運賃バリューから減算して収受し、(4) 前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を受信した場合、(4a)前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューが前記運賃バリュー以下であるときには、前記運賃バリューから前記利用運賃に相当するバリューを減算し、(4b)前記利用運賃等情報に基づく前記利用運賃に相当するバリューが前記運賃バリューを超えるときには、前記運賃バリューを超える超過分を前記担保金情報に基づく前記担保金の範囲内で負債バリューとして記憶するとともに前記運賃バリューをゼロまたは無価値に変更し、かつ、その後、前記識別情報に関連付けられた前記運賃バリューを用いた前記利用運賃の収受を停止する、ことを技術的特徴とする。
【0012】
なお、上記の「前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃」には、「利用運賃の情報」が表す利用運賃と、「利用運賃の算出に要する情報」に基づいて算出される利用運賃と、の両方が含まれる。また、上記の「運賃バリュー」および「バリュー」は、当該車両の利用運賃を精算することが可能な価値のことである。さらに、上記の「負債バリュー」は、当該交通機関の事業者から利用者が借りている価値であり借り主である当該利用者が返済義務(債務)を負うものである。
【0013】
請求項1に記載の運賃収受システムの発明では、当該システムは、サーバ装置と情報担持媒体と車載装置を含む。サーバ装置は、車両外に設けられており、交通機関の車両の利用者を識別する識別情報と、この識別情報に関連付けられた運賃バリューと、利用者が当該システムの利用登録時に交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報と、を記憶する。情報担持媒体は、利用者に所持されて識別情報および担保金情報を有する。車載装置は、利用運賃等情報(利用運賃の情報または利用運賃の算出に要する情報)と、情報担持媒体から読み出された識別情報と、を無線通信回線を介してサーバ装置に送信する。車載装置は、サーバ装置に対して送信した、(1) 識別情報および利用運賃等情報がサーバ装置に受信された場合、利用者の乗車または降車を許容する情報を出力する(通信正常時)。そして、サーバ装置は、車載装置から、(3) 識別情報および利用運賃等情報を受信した場合、利用運賃等情報に基づく利用運賃に相当するバリューを運賃バリューから減算して収受する。
【0014】
これに対して、サーバ装置に送信した、(2) 識別情報および/または利用運賃等情報、即ち識別情報および利用運賃等情報の両方または一方がサーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合には、車載装置は、利用者が所持する情報担持媒体から読み出された担保金情報に基づいて次のいずれかを行う(通信障害時)。(2a)利用運賃等情報から得られる利用運賃が担保金以下であるときには、利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、通信障害の解消後、サーバ装置に通信障害の発生情報、識別情報および利用運賃等情報を送信する。また、(2b)利用運賃等情報から得られる利用運賃が担保金を超えるときには、利用者に利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力する。
【0015】
これにより、通信障害が発生して車載装置とサーバ装置が情報通信を行うことができない事態が生じても(上記(2))、交通機関の車両の利用者は、利用運賃が担保金以下である場合には、利用者の乗車や降車を許容する情報が出力されるので(上記(2a))、運賃前払い方式の場合には乗車することが可能になり、また運賃後払い方式の場合には降車することが可能になる。利用運賃が担保金を超えるときには、利用者に利用運賃の現金支払いを要求する情報が出力されるので(上記(2b))、当該利用者は利用運賃を現金で支払うことにより乗車したり降車したりすることが可能になる。
【0016】
そして、車載装置が上記(2a)を行い、サーバ装置が、(4) 通信障害の発生情報、識別情報および利用運賃等情報を受信した場合において、(4a)利用運賃等情報に基づく利用運賃に相当するバリューが運賃バリュー以下であるときには、運賃バリューから利用運賃に相当するバリューを減算する。また、(4b)利用運賃等情報に基づく利用運賃に相当するバリューが運賃バリューを超えるときには、運賃バリューを超える超過分を担保金情報に基づく担保金の範囲内で負債バリューとして記憶するとともに運賃バリューをゼロまたは無価値に変更し、かつ、その後、識別情報に関連付けられた運賃バリューを用いた利用運賃の収受を停止する。
【0017】
これにより、交通機関の事業者は、サーバ装置が通信障害の発生情報、識別情報および利用運賃等情報を車載装置から受信した場合においては(上記(4))、利用運賃に相当するバリューが運賃バリュー以下であるときには、運賃バリューから利用運賃に相当するバリューが減算されるので(上記(4a))、事後的に利用運賃を運賃バリューから回収することが可能になる。利用運賃に相当するバリューが運賃バリューを超えるときには、運賃バリューを超える超過分は担保金の範囲内で負債バリューとしてサーバ装置に記憶されるとともに運賃バリューはゼロまたは無価値に変更され(上記(4b))、その後、当該運賃バリューを用いた利用運賃の収受が停止される(上記(4b))。負債バリューは、運賃バリューを超える超過分であり担保金の範囲内で当該事業者が立て替える「立替えバリュー」でもある。そのため、当該超過分を担保金の範囲内で当該事業者は負債バリューの支払い債権を得ることが可能になり、利用者には当該超過分の返済義務を負わせることが可能になる。また利用者は、当該運賃バリューを用いた利用運賃の支払いができなくなるため、情報担持媒体を用いた当該交通機関の車両の利用ができなくなる。例えば、利用者が当該システムの登録時に事業者に提供した担保金から、当該システムの解約時に当該超過分を差し引いて返金することにより、当該超過分の返済義務(債務)を当該利用者に履行させることが可能になる。
【0018】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された運賃収受システムは、請求項1に記載の運賃収受システムにおいて、前記(4b)において前記利用運賃の収受を停止する対象になった前記運賃バリューに対して前記超過分以上のバリューがチャージされた場合、前記サーバ装置は、当該運賃バリューを用いた前記利用運賃の収受を再開する、ことを技術的特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の運賃収受システムの発明では、(4b)において利用運賃の収受を停止する対象になった運賃バリューに対して、利用者が超過分以上のバリューをチャージした場合には、サーバ装置は、記憶している負債バリュー(運賃バリューを超える超過分であり担保金の範囲内で立て替え分)を、チャージされた運賃バリューから減算することにより、当該超過分の返済義務(債務)を当該利用者に履行させることが可能になる。また、このような返済義務(債務)の履行により負債バリューの支払い債権が消滅することから、当該運賃バリューを用いた利用運賃の収受を再開することによって、当該利用者は、当該運賃バリューを用いた利用運賃の支払いが可能になる。これにより、情報担持媒体を用いた当該交通機関の車両の利用ができなくなった利用者は、超過分以上のバリューを運賃バリューにチャージすることによって、再び情報担持媒体を用いた当該車両の利用が可能になる。そのため、運賃バリューのチャージを促すことが可能になり、利用者による当該超過分の返済義務(債務)の履行を促進させることができる。
【0020】
さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載された運賃収受システムは、請求項1または2に記載の運賃収受システムにおいて、前記担保金情報は、前記情報担持媒体に代えて、または前記情報担持媒体に加えて、前記車載装置に記憶されている、ことを技術的特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の運賃収受システムの発明では、担保金情報は、情報担持媒体に代えて車載装置に記憶されていたり、情報担持媒体に加えて車載装置に記憶されていたりする。これにより、情報担持媒体に代えて担保金情報が車載装置に記憶されている場合には、情報担持媒体は担保金情報を担持する必要がないので、例えば、担持可能な情報が少ない一次元バーコードを用いて識別情報を表示させることが可能になる。また、担保金情報は車載装置に記憶されるので、担保金情報の改ざんを防止することも可能になる。また、情報担持媒体に加えて車載装置にも記憶されている場合には、これらの両方に担保金情報が記憶されて担保金情報の記憶を冗長構成にするので、いずれか一方の担保金情報が壊れた場合においても残りの他方の担保金情報を用いることが可能になる。
【0022】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項4に記載された車載装置は、交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムに用いられる車載装置であって、前記運賃収受システムは、前記車両外に設けられており前記利用者を識別する識別情報とこの識別情報に関連付けられた運賃バリューと前記利用者が当該システムの利用登録時に前記交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報とを記憶するサーバ装置と、前記利用者に所持されて前記識別情報および前記担保金情報を有する情報担持媒体と、を含み、前記車載装置は、前記利用運賃の情報または前記利用運賃の算出に要する情報(以下、請求項4,5において「利用運賃等情報」という)と前記情報担持媒体から読み出された前記識別情報とを無線通信回線を介して前記サーバ装置に送信し、(1) 前記識別情報および前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信された場合、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、(2) 前記識別情報および/または前記利用運賃等情報が前記サーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合、前記情報担持媒体から読み出された前記担保金情報に基づいて、(2a)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金以下であるときには、前記利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、前記通信障害の解消後、前記サーバ装置に前記通信障害の発生情報、前記識別情報および前記利用運賃等情報を送信し、(2b)前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃が前記担保金を超えるときには、前記利用者に前記利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力する、ことを技術的特徴とする。なお、「前記利用運賃等情報から得られる前記利用運賃」には、「利用運賃の情報」が表す利用運賃と、「利用運賃の算出に要する情報」に基づいて算出される利用運賃と、の両方が含まれる。また、「運賃バリュー」は、当該車両の利用運賃を精算することが可能な価値のことである。
【0023】
請求項4に記載の車載装置の発明では、当該装置は、交通機関の車両の利用者から利用運賃を収受する運賃収受システムに用いられる。当該運賃収受システムは、車両外に設けられており利用者を識別する識別情報とこの識別情報に関連付けられた運賃バリューと利用者が当該システムの利用登録時に交通機関の事業者に提供した担保金の担保金情報とを記憶するサーバ装置と、利用者に所持されて識別情報および担保金情報を有する情報担持媒体と、を含む。車載装置は、利用運賃の情報または利用運賃の算出に要する情報(以下、請求項4,5において「利用運賃等情報」という)と情報担持媒体から読み出された識別情報とを無線通信回線を介してサーバ装置に送信する。
【0024】
そして、車載装置は、(1) 識別情報および利用運賃等情報がサーバ装置に受信された場合、利用者の乗車または降車を許容する情報を出力する(通信正常時)。また、(2) 識別情報および/または利用運賃等情報、即ち識別情報および利用運賃等情報の両方または一方がサーバ装置に受信されない通信障害が発生した場合、情報担持媒体から読み出された担保金情報に基づいて次のいずれかを行う(通信障害時)。(2a)利用運賃等情報から得られる利用運賃が担保金以下であるときには、利用者の乗車または降車を許容する情報を出力し、かつ、通信障害の解消後、サーバ装置に通信障害の発生情報、識別情報および利用運賃等情報を送信する。また、(2b)利用運賃等情報から得られる利用運賃が担保金を超えるときには、利用者に利用運賃の現金支払いを要求する情報を出力する。
【0025】
これにより、通信障害が発生して車載装置とサーバ装置が情報通信を行うことができない事態が生じても(上記(2))、交通機関の車両の利用者は、利用運賃が担保金以下である場合には、利用者の乗車や降車を許容する情報を出力されるので(上記(2a))、運賃前払い方式の場合に乗車することが可能になり、また運賃後払い方式の場合には降車することが可能になる。そして、通信障害の解消後、車載装置からサーバ装置に対して、通信障害の発生情報、識別情報および利用運賃等情報が送信されるので、サーバ装置は、通信障害が発生した情報と、その通信障害により当該サーバ装置が受信することができなかった識別情報および利用運賃等情報とを、得ることが可能になる。例えば、交通機関の事業者は、これらの情報に基づいて、事後的に利用運賃を運賃バリューから回収したり、利用運賃が運賃バリューを超えるときにはその超過分を担保金の範囲内で当該事業者は負債バリューの支払い債権を得たり、することが可能になる。これに対して、利用運賃が担保金を超えるときには、利用者に利用運賃の現金支払いを要求する情報が出力されるので(上記(2b))、当該利用者は利用運賃を現金で支払うことにより乗車したり降車したりすることが可能になる。なお、「負債バリュー」は、当該交通機関の事業者から利用者が借りている価値であり借り主である当該利用者が返済義務(債務)を負うものである。
【0026】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された車載装置は、請求項4に記載の車載装置において、前記情報担持媒体に代えて、または前記情報担持媒体に加えて、前記担保金情報を記憶している、ことを技術的特徴とする。
【0027】
請求項5に記載の車載装置の発明では、担保金情報は、情報担持媒体に代えて車載装置に記憶されていたり、情報担持媒体に加えて車載装置に記憶されていたりする。これにより、情報担持媒体に代えて担保金情報が車載装置に記憶されている場合には、情報担持媒体は担保金情報を担持する必要がないので、例えば、担持可能な情報が少ない一次元バーコードを用いて識別情報を表示させることが可能になる。また、担保金情報は車載装置に記憶されるので、担保金情報の改ざんを防止することも可能になる。また、情報担持媒体に加えて車載装置にも記憶されている場合には、これらの両方に担保金情報が記憶されて担保金情報の記憶を冗長構成にするので、いずれか一方の担保金情報が壊れた場合においても残りの他方の担保金情報を用いることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の運賃収受システムでは、通信障害が発生して車載装置とサーバ装置が情報通信を行うことができない事態が生じても、交通機関の車両の利用者は、利用運賃が担保金以下である場合には、乗車や降車することが可能になる。利用運賃が担保金を超えるときには、当該利用者は利用運賃を現金で支払うことにより乗車や降車することが可能になる。また、交通機関の事業者は、利用運賃が運賃バリュー以下であるときには、事後的に利用運賃を運賃バリューから回収することが可能になる。したがって、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行うことができる。
【0029】
本発明の車載装置では、通信障害が発生して車載装置とサーバ装置が情報通信を行うことができない事態が生じても、交通機関の車両の利用者は、利用運賃が担保金以下である場合には、乗車や降車することが可能になる。サーバ装置は、通信障害が発生した情報と、その通信障害により当該サーバ装置が受信することができなかった識別情報および利用運賃等情報とを、得ることが可能になる。例えば、交通機関の事業者は、これらの情報に基づいて、事後的に利用運賃を運賃バリューから回収したり、利用運賃が運賃バリューを超えるときにはその超過分を担保金の範囲内で当該事業者は負債バリューの支払い債権を得たり、することが可能になる。これに対して、利用運賃が担保金を超えるときには、当該利用者は利用運賃を現金で支払うことにより乗車や降車することが可能になる。したがって、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運賃収受システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】本実施形態の運賃収受システムが運賃後払い方式の交通機関に適用される場合において、利用者が所持するICカード、車載装置(ホスト装置、乗車時端末、降車時端末)およびサーバ装置により実行される各処理の一連の流れを示すシーケンス図である。
【
図3】本実施形態の運賃収受システムを構成する車載装置のホスト装置により実行される運賃収受処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図3に表されている車載側乗車時処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図3に表されている車載側降車時処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態の運賃収受システムを構成する車載装置の乗車時端末(または降車時端末)により実行される乗車時読取り等処理(または降車時読取り等処理)の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態の運賃収受システムを構成するサーバ装置により実行される運賃決済処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図7に表されているサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートであり、
図8(A)はサーバ側乗車時処理の流れ、
図8(B)はサーバ側降車時処理の流れをそれぞれ示すものである。
【
図9】
図8(B)に表されているサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートであり、
図9(A)は現時点決済処理の流れ、
図9(B)は事後決済処理の流れをそれぞれ示すものである。
【
図10】車載装置のホスト装置により実行されるリカバリ処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態の運賃収受システムが運賃前払い方式の交通機関に適用される場合において、利用者が所持するICカード、車載装置(ホスト装置、乗車時端末、降車時端末)およびサーバ装置により実行される各処理の一連の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の運賃収受システムおよびその車載装置の実施形態について図を参照して説明する。
【0032】
本発明の運賃収受システムの一実施形態は、
図1に示すように、路線バス(以下「バス」という)90を利用する乗客(以下「利用者」という)から利用運賃を収受する運賃収受システム5であり、利用者が情報担持媒体としてICカード50を所持していることを前提とするものである。利用者のICカード50には、後述する識別情報IDや担保金情報CMが保持(担持)されている。
【0033】
本実施形態のバス90は、ワンマン運行方式であり、停留所BSで利用者が後方の乗車口91から乗車した後、前方の降車口93から降車する際に利用運賃を支払う「後乗り前降り後払い方式」を採用している。「後乗り前降り後払い方式」は、運賃後払い方式の一態様であり、典型的には、距離に応じて金額が増加する運賃体系を採る。そのため、利用運賃の取得には、例えば、前述した特許文献1の
図4に開示されているような運賃三角表データが用いられる。
【0034】
このバス90には、降車口93付近に利用者が現金やICカードで利用運賃の支払いを行うことが可能な運賃箱が設けられている。本実施形態では、この運賃箱がホスト装置40の役割を果たす。ホスト装置40は、バス90に搭載される機器装置であれば、このような運賃箱のほかに、例えば、利用者に乗車区間に対応した運賃を表示する運賃表示器、次の停留所名等を車内に放送する車内放送装置や、車外に向けて当該バス90の行き先等を表示する行先表示装置の操作盤等の車載機器でもよい。
【0035】
運賃収受システム5は、主に、車載装置10、ICカード50、サーバ装置60により構成されており、さらに車載装置10は、乗車時端末20、降車時端末30およびホスト装置40により構成されている。これらのうち、車載装置10はバス90に搭載されており、ICカード50は利用者が所持している。サーバ装置60は、例えば、クラウド(インターネットN)上に存在している。
【0036】
インターネットNは、データを伝送する情報通信回線網の一例であり、インターネットプロトコルを使用してコンピュータを相互接続するコンピュータネットワークである。インターネットNには、移動体通信事業者(MNO)が運用管理する基地局80や、ISP(Internet Service Provider)が接続されており、これらや基地局80の無線通信回線85を経由して、バス90に搭載されたホスト装置40がインターネットNに接続される。なお、ホスト装置40とサーバ装置60の間でデータ通信可能であれば、インターネットN以外の情報通信回線網(例えば、専用線やVPN等)でもよい。また、有線通信回線に限られることなく無線通信回線でもよい。
【0037】
乗車時端末20は、主に、制御ユニット21、読取りユニット23、表示ユニット25、有線通信ユニット27等により構成されており、本実施形態では、例えば、バス90の乗車口91付近に設けられる握り棒等に取り付けられている。
【0038】
制御ユニット21は、MPU、メモリ(DRAM、ROM)、インタフェース等により構成されるコントローラである。本実施形態では、制御ユニット21には、読取りユニット23や有線通信ユニット27等が接続されている。ROMには、これらのユニット25,27をMPUが制御可能に構成される所定のシステムプログラムや、後述する乗車時読取り等処理200をMPUが実行可能に構成される乗車時読取り等処理プログラム等が格納されている。
【0039】
読取りユニット23は、例えばICカード50に保持されたデータ(識別情報ID等)を読み取り可能なICカードリーダである。本実施形態では、後述するように、例えば、交通系ICカードをICカード50として使用するため、読取りユニット23はそれに対応した非接触式タイプのICカードリーダである。なお、交通系ICカードは、データの読み取りに加えて書き込みも可能に構成されているが、後述する識別情報IDおよび担保金情報CMは、ICカード50に一度記憶(保存)された後は、乗車時端末20では書き換え等の更新は行われない。そのため、本実施形態では、読取りユニット23はデータ、つまり識別情報IDおよび担保金情報CMの読み取りだけを行う。
【0040】
表示ユニット25は、表示デバイスとして液晶表示パネルを備えたディスプレィ装置であり、制御ユニット21に対して、例えば、液晶映像パラレルインタフェース等を介して接続されている。本実施例では、利用者に対して乗車の可否を視覚的に明示可能な情報を表示したり所定のメッセージを表示したりする。表示ユニット25には、図略の音響デバイスが内蔵されており、本実施形態では、聴覚的に乗車可否のイメージさせる効果音を出力し得るように構成されている。
【0041】
有線通信ユニット27は、有線通信回線15を介して制御ユニット21がホスト装置40とデータ通信可能に構成されるシリアル通信装置である。本実施形態では、ホスト装置40、乗車時端末20、降車時端末30等の間をマルチドロップで接続可能なRS-458に準拠したものを使用している。これらの接続は、例えば、カレントループやRS-422に準拠したものや、Ethernetに準拠したLANを用いてもよい。
【0042】
本実施形態では、例えば、有線通信ユニット27は、ホスト装置40から送出されるポーリング信号に呼応してデータを送出する。即ち、読取りユニット23により読み取られた識別情報IDおよび担保金情報CMは、ホスト装置40から自装置宛のポーリング信号が届くとそれに応答して当該ホスト装置40に送出される。そのため、ホスト装置40は、送られてきた識別情報IDおよび担保金情報CMが乗車時端末20から送出されたものであることを把握することが可能である。
【0043】
なお、制御ユニット21、読取りユニット23および有線通信ユニット27には、ハウジング内に設けられる図略の電源ユニットからそれぞれの駆動電力が供給されている。そのため、
図1には図示されていないが、乗車時端末20には電源ラインのワイヤハーネスが接続されている。また、有線通信回線15は、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)等の無線規格に準拠した無線通信回線に代えてもよい。この場合、通信ユニット27は、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)等に対応したものに置き換える。
【0044】
降車時端末30は、例えば、バス90の降車口93付近に設けられる運賃箱に隣接して取り付けられており、前述の乗車時端末20と同様にハードウェアが構成されている。即ち、降車時端末30は、主に、制御ユニット31、読取りユニット33、表示ユニット35、有線通信ユニット37等により構成されており、前述した乗車時端末20の、制御ユニット21、読取りユニット23、表示ユニット25、有線通信ユニット27にそれぞれ対応する。そのため、ここでは制御ユニット31等の構成や接続関係の説明を省略する。
【0045】
ホスト装置40は、本実施形態では運賃箱がこれに相当する。そのため、制御ユニット41は運賃箱の制御ユニットが、また有線通信ユニット47は運賃箱の通信ユニットが、それぞれその役割を担う。なお、ホスト装置40は、このように既存の運賃箱等を用いることなく、ホスト装置40を別個に設けてもよい。
【0046】
制御ユニット41は、運賃箱に設けられている運賃収受機構の駆動ユニット、運賃三角表データ等が書き込まれたデータカセット、ICカードリーダライタ、ディスプレィ等の各種ユニット46や、有線通信ユニット47、無線通信ユニット48等を制御するコントローラであり、MPU42、メモリ43、入出力インタフェース44、図略の時計ユニット等から構成されている。MPU42は、各種ユニット46等を制御する演算処理装置であり、システムバス45等を介して、メモリ43や入出力インタフェース44等と接続されている。
【0047】
なお、図示されていないが、バス90が停留所BSを発車する都度、乗務員(運転士)が手動で操作する押しボタン(以下「停留所送りボタン」という)が運転席に設けられている。本実施形態では、この停留所送りボタンから出力される停留所送り信号(歩進信号)がホスト装置40に入力される。この停留所送り信号は、運賃表示器、車内放送装置、運賃箱等の車載機器の制御を次に停車する停留所ごとに進めるトリガ信号であり、これらの機器にも入力される。本実施形態では、ホスト装置40は、この停留所送り信号が入力されるごとに、乗車時端末20および降車時端末30に対して停留所連番号BS#を1つ進める指令信号を送出する。
【0048】
メモリ43は、半導体記憶装置であり、MPU42が使用する主記憶空間を構成するものである。本実施形態では、プログラム領域を担うROMとワーク領域やデータ領域に割り当てられるDRAMとにより構成されている。本実施形態では、ROMには、各種ユニット46を制御するシステムプログラムや、後述する運賃収受処理100やリカバリ処理400を可能にする各種の制御プログラムが格納されている。
【0049】
入出力インタフェース44は、制御ユニット41の周辺装置に対して、シリアルやパラレルのデータのやり取りを仲介する入出力インタフェース装置である。本実施形態では、各種ユニット46や有線通信ユニット47、無線通信ユニット48等と接続可能に構成されている。入出力インタフェース44は、各種ユニット46を駆動するドライバ回路を備えている場合もある。
【0050】
通信ユニット47は、前述した乗車時端末20の有線通信ユニット27と同様に構成されているので、ここでは説明を省略する。無線通信ユニット48は、移動体通信事業者(MNO)により運用される、例えば、800MHz帯や1.5GHz帯の無線通信回線85を介してデータ通信や音声通信可能に構成されている。本実施形態では、ホスト装置40は、無線通信回線85やISP(Internet Service Provider)を経由してインターネットNに接続される。
【0051】
ICカード50は、例えば交通系ICカードであり、FeliCa(登録商標)の規格に準拠したICチップや電磁誘導コイルが内蔵された非接触式タイプである。ICチップは、制御ユニットや半導体メモリを備えており、近距離無線通信を介して取得された、利用者の基本情報(氏名、電話番号等)、識別情報IDや担保金情報CMを記憶している。本実施形態では、これらの情報は、バス90の運行事業者の営業所等において、利用者が本運賃収受システム5の利用登録を行う際にICカード50に書き込まれて記憶(保存)されるが、その後は、同営業所等にて基本情報や担保金の金額が変更される等の変更が行われる場合以外は、書き換え等の更新は行われない。したがって、ICカード50は、乗車時端末20では書き換え等の更新は行われない。
【0052】
サーバ装置60は、例えば、インターネットNに接続されたクラウドサーバである。クラウドサーバは、インターネットN上に分散して設けられる複数のサーバ装置(物理サーバ)を1つの仮想サーバとして、クラウドサービス提供事業者が提供するクラウドコンピューティングの1つである。本実施形態では、サーバ装置60は、管理機能と決済機能を有し後述する運賃決済処理500を行う。これらの機能は、例えば、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)により提供される。
【0053】
本実施形態では、サーバ装置60は、利用者が有する(当該利用者の識別情報IDに関連付けられた)運賃バリューV、後述する負債バリューW、担保金情報CM、利用者の基本情報等を当該利用者の識別情報IDに関連付けてテーブル(情報の集まり)として記憶している。運賃バリューVは、バス90の利用運賃を精算することが可能な価値のことである。識別情報ID、運賃バリューV、担保金情報CMおよび利用者の基本情報は、運賃収受システム5の利用登録が行われる際にサーバ装置60に記憶される。運賃バリューVは、利用者がチャージ端末等でチャージすると増加し、バス90で利用運賃を当該運賃バリューVで精算すると減少する。負債バリューWは、後述する運賃決済処理500の事後決済処理(S580)において、負債バリューWが算出された場合に生じてサーバ装置60に記憶される。
【0054】
このように車載装置10(乗車時端末20、降車時端末30およびホスト装置40)、ICカード50やサーバ装置60を構成することによって、本実施形態の運賃収受システム5では、
図2に表されるシーケンス図のように、利用者M(Ma,Mb)がバス90に乗車して降車するまでの間において、運賃収受処理100、乗車時読取り等処理200、降車時読取り等処理300、運賃決済処理500等の各処理が行われる。なお、リカバリ処理400は、例えば、営業所等に設けられた車庫に当該バス90が入庫する際や入庫した後に行われる。
【0055】
なお、利用者Mは、本運賃収受システム5を利用する前に、例えば、当該バス90の運行事業者の営業所等において、本システム5の利用登録を行ってICカード50に当該利用者の基本情報(氏名、電話番号等)、識別情報IDや担保金情報CMを記憶させる(登録する)必要がある。識別情報IDは、当該利用者Mを一意に特定し得る情報であり、例えば、所定桁数の英数字の組み合わせにより構成される。また担保金情報CMは、担保金の金額を表す情報である。担保金は、後述する超過分の返済義務(債務)の履行を確保するために当該利用者Mからバス90の運行事業者に提供される金員のことである。
【0056】
本実施形態では、担保金の金額は、本運賃収受システム5の利用登録時において、利用者Mが任意に設定することが可能である。例えば、通勤や通学でバス90を利用する利用者Mの場合には、その往復の利用で必要になる往復利用運賃(片道利用運賃の2倍)の金額を担保金の金額に設定することが可能である。本運賃収受システム5では、当該システムの利用条件として利用規約等で担保金の提供を利用者Mに義務づけている。ここでは、例えば、利用者Mは、往復利用運賃1000円(片道利用運賃500円×2)を担保金として運行事業者に提供することにする。なお、バス90の運営事業者は、例えば、最低金額を予め決定しその最低金額以上の担保金を利用者に提供させることを本運賃収受システム5の利用条件にしてもよい。
【0057】
後述するように、無線通信回線85による通信障害の発生が一時的なものであり発生頻度が運賃収受システム5の構成上、低いことが想定されるときには、このような担保金が活用される場面は多くない。そのため、例えば、通勤や通学でバス90を利用する利用者の場合、その往復の利用で必要になる往復利用運賃(片道利用運賃の2倍)を最低金額として予め決定することによって、当該利用者が負担する担保金の額を最小限に抑えることが可能になる。また、日常的にキャッシュレス決済を利用しており現金を通常所持していない利用者Mの場合には、不測の事態に備えて当該利用者Mが必要であると想定する任意の金額を担保金としてバス90の運営事業者に提供することで、通信障害が発生してもキャッシュレスで当該バス90に乗車したり降車したりすることが可能になる。これに対して、日常的に現金決済を利用している利用者Mの場合には、バス90の運営事業者が求める最小金額を担保金として提供することによって、通信障害の発生の有無にかかわらず常に現金支払いで当該バス90に乗車したり降車したりすることが可能になる。
【0058】
なお、担保金は、原則として、本運賃収受システム5の利用登録を解約する際に全額返金される。ただし、負債バリューWの一部または全部が残っている場合には、その残っている負債バリューWの一部または全部に相当する金額を担保金から差し引いた金額が返金される。負債バリューWは、後述する超過分の金額に相当するバリューであり、利用者Mが返済義務(債務)を負うからである。これにより、当該超過分の返済義務(債務)を利用者Mに履行させることが可能になるので、後述するように、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行うことができる。
【0059】
本実施形態では、担保金と運賃バリューVは、全く別の概念である。即ち、担保金は、本運賃収受システム5の利用登録時に利用者Mが任意に設定した金額を支払って(提供して)本システム5に登録し、本システム5の利用登録を解約するまで返金されない。そのため、例えば、利用者Mが基本情報の変更を行うのと同様に、利用者Mが本システム5の利用登録を変更する手続を行って担保金の金額を増減させる変更を行うことがない限り、担保金の金額が増えたり減ったりすることはない。また、担保金が0(ゼロ)円になる場合はない。本システム5の利用登録を解約すると担保金は返金されるため、見かけ上は0円になり得るがその場合には利用登録が解約されているので、その担保金はもはや登録されてなく存在しない。また、担保金の性質上、0円では担保の意義が失われることから、担保金は0円になり得ない。
【0060】
このような担保金に対して、運賃バリューは、利用者Mが任意にチャージしたり使ったりすることができる。そのため、複雑な手続を伴うことなく、自由にバリューを増減させることが可能である。また、運賃バリューは、バリューを使い切ることによってその価値が0円相当になり得るが、マイナスにはならない。つまり、本実施形態において登場する概念である負債バリューWとは性質が異なる。負債バリューWは、後述するように、利用運賃Xが運賃バリューVを超えている場合に利用運賃Xの超過分(V-X)の金額に相当するバリューであり、プラス(正)の値にはならない。そのため、後述する説明では、マイナス(負)の符号を付けて正負を逆転させて表現している(-(V-X)→(X-V))ことに注意されたい。以上から、担保金と運賃バリューVは、全く異なる概念であり、また運賃バリューVと負債バリューWは相容れない価値の概念である、ことがわかる。
【0061】
本実施形態では、担保金の金額を表す情報(担保金情報CM)は、利用者Mが所持するICカード50等の情報担持媒体に保持されており、車載装置10(乗車時端末20、降車時端末30、ホスト装置40)は、担保金情報CMに対しては専ら読み取り(参照)だけを行い、担保金情報CMの内容を変更する等の書き換えを行うことはない。担保金情報(担保金の金額を表す情報)を保持する(有する)媒体を情報記憶媒体ではなく「情報担持媒体」と表現しているのは、そのためである。このように本実施形態の車載装置10では、ICカード50に保持された担保金情報CMに対して書換え処理等を行うことなく、サーバ装置60やそれに接続されて営業所等に設備される端末装置(チャージ端末等)による運賃収受システム5の利用登録やその変更においてだけ、ICカード50に保持された担保金情報CMを書き換える。したがって、サーバ装置60やその端末装置以外でも、担保金情報CMの書換え処理を行う場合に比べて、運賃収受システム全体における当該担保金情報CMの管理の単純にして取り扱いを簡便かつ容易にしている。
【0062】
[運賃収受処理100]
図2に示すように、本実施形態の運賃収受システム5では、まずバス90のホスト装置40が運賃収受処理100を開始する。即ち、ホスト装置40では、前述したように制御ユニット41のメモリ43のROMに運賃収受処理プログラムが格納されている。そのため、バス90の運行開始前においてホスト装置40に電源が投入されると、その直後にメモリ43のDRAMに展開される運賃収受処理プログラムを、MPU42が実行することによって
図3に示す運賃収受処理100が開始される。なお、DRAMに展開されたものではなくROMに格納された運賃収受処理プログラムをMPU42が直接実行するように構成してもよい。
【0063】
図3に示すように、運賃収受処理100では、まずステップS101により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、制御ユニット41のメモリ43の本処理用のワーク領域やフラグをクリアしたり、ほぼ同時期に起動される乗車時端末20や降車時端末30に対する初期設定用の制御コマンドの送出が行われたりする。ここでクリアされるフラグには、後述する、乗車時送信エラーフラグ、降車時送信エラーフラグ、ID未登録フラグがあり、それぞれのフラグがオフに設定される。
【0064】
次のステップS103ではID情報等取得処理が行われる。この処理は、乗車時端末20や降車時端末30から送られてくる識別情報ID、担保金情報CMおよび停留所連番号BS#をこれらの端末20,30から取得するものである。識別情報IDおよび担保金情報CMは、乗車時端末20が乗車時読取り等処理200を実行したり降車時端末30が降車時読取り等処理300を実行したりすることによって利用者Mが所持するICカード50から読み取られる。以下、識別情報IDおよび担保金情報CMをまとめて「識別情報等ID/CM」という場合がある。また、停留所連番号BS#は、始発の停留所BSaから終着の停留所BSzまで(例えば「001」~「026」)まで連続する番号が停留所BSごとに付与されるものであり、バス90が次の停留所BSに停車するまでの間にホスト装置40から乗車時端末20および降車時端末30に送出される。
【0065】
本実施形態では、ホスト装置40は、乗車時端末20や降車時端末30に対してポーリング信号を送出することにより、識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#を取得する。乗車時端末20や降車時端末30は、前述したように、ICカード50から識別情報等ID/CMを読み取られている場合には、自装置宛のポーリング信号に呼応して当該識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#のデータをホスト装置40に送出する。これにより、ホスト装置40は、乗車時端末20や降車時端末30から、識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#を取得することが可能になる。
【0066】
そして、続くステップS105により識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#が取得されたか否かが判定され、乗車時端末20や降車時端末30から取得した場合には(S105;Yes)、次のステップS107の乗降車判定処理に進む。取得していない場合には(S105;No)、ステップS103に戻って識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#を取得するまでステップS103とステップS105を繰り返し行う。
【0067】
ステップS107では、乗車時端末20や降車時端末30から取得した識別情報等ID/CMが乗車時のものであるか降車時のものであるかを判定する。ホスト装置40は、乗車時端末20や降車時端末30に対して、それぞれの宛先が付与されたポーリング信号を送出する。そのため、それらポーリング信号に呼応して送られてきた識別情報等ID/CMは送出元を把握可能であることから、その送出元が乗車時端末20である場合には当該識別情報等ID/CMは乗車時のものであると判定して(S107;乗車)、ステップS120に処理を移行する。これに対して、降車時端末30である場合には、当該識別情報等ID/CMは降車時のものであると判定して(S107;降車)、ステップS150に処理を移行する。
【0068】
なお、ホスト装置40が乗車時端末20や降車時端末30に対してポーリング信号を送出することなく、乗車時端末20や降車時端末30から自発的に識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#をホスト装置40に送出する場合には、送出元を識別可能な情報(乗車/降車フラグ等)を識別情報等ID/CMに付加してホスト装置40に送出するように構成してもよい。これにより、ホスト装置40は、この送出元情報(乗車/降車フラグ等)に基づいて、識別情報等ID/CMが乗車時のものであるか降車時のものであるかをステップS107により判定することが可能になる。
【0069】
<車載側乗車時処理(S120)>
ステップS120では車載側乗車時処理が行われる。この処理の詳細は、
図4に表されているため、ここからは同図も参照しながら説明する。ここでは、停留所BSaでバス90に乗車した利用者Maが所持するICカード50から、乗車時端末20によって、識別情報IDaおよび担保金情報CMa(識別情報等IDa/CMa)を読み取られた場合の例について説明する。なお、利用者Maや後述する利用者Mbは、バス90を利用する利用者Mの一例にすぎない。
【0070】
図4に示すように、車載側乗車時処理ではステップS121によりID情報等送信処理が行われる。この処理では、ICカード50から乗車時端末20により読み取られた後に送出されてホスト装置40に届いた識別情報等IDa/CMaのうち、識別情報IDaを、サーバ装置60に送信する。また、送信する識別情報IDが乗車時のものであることを示す乗車フラグも合わせて送信する。例えば、当該ホスト装置40を特定可能な送信元IPアドレスと宛先のサーバ装置60を特定可能な宛先IPアドレス等を識別情報IDaに付加することにより送信データTX(ここではTXa)を生成し、それを無線通信ユニット48を介して基地局80に送信する。
【0071】
なお、ホスト装置40ではなく、サーバ装置60において利用運賃Xを算出する場合には、さらに乗車時端末20から届いた乗車時の停留所連番号BS#(例えば「001」)を含めて送信データTXaを生成する。ただし、車載側降車時処理(
図5)において乗車時の停留所連番号BS#(例えば「001」)と降車時の停留所連番号BS#(例えば「004」)の両方をサーバ装置60に送信する場合には、送信データTXaに乗車時の停留所連番号BS#を含める必要はない。
【0072】
後述するように、サーバ装置60では、車載側乗車時処理(S120)による送信データTXaを受信すると、運賃決済処理500による情報処理の結果として、受信完了情報、ID未登録情報や利用停止中情報を当該ホスト装置40に対して送信する(
図2;RXa、
図8;S533、
図7;S513)。これに対して、送信データTXa等を受信できないとき(
図2;×印付きの破線矢印)には何も送信しない。そのため、ホスト装置40では、送信データTXaを送信した後、サーバ装置60から受信完了情報等の受信データRX(ここではRXa)を受信したか否か、つまりサーバ装置60が送信データTXaを受信したか否かを判定する処理が行われる。
【0073】
そして、所定時間を経過してもサーバ装置60から受信完了情報等を受信できない場合には(S123;No)、ステップS121に戻って送信データTXaの再送信を行い、所定のタイムアウト時間が経過するまでこの再送信を繰り返す。タイムアウト時間が経過する前に受信完了情報等を受信できた場合には(S123;Yes)、ステップS125によるID登録済み判定処理に移行する。またタイムアウト時間が経過した場合には(S123;NA)、無線通信回線85において通信障害が発生している可能性が高いことから、ステップS129による乗車時送信エラーフラグ設定処理に移行する。
【0074】
ステップS129の乗車時送信エラーフラグ設定処理は、ホスト装置40からサーバ装置60に送信データTXa、即ちICカード50から読み取られた識別情報等IDa/CMaが通信障害によりサーバ装置60に受信されていないと推定されること、換言すれば送信を失敗したことを、乗車時送信エラーフラグをオンに設定して明示するものである。このエラーフラグのオン情報は、ステップS131によりホスト装置40のメモリ43(DRAM)に記憶されて後述するリカバリ処理400において読み出されて使用される。
【0075】
ステップS125のID登録済み判定処理では、サーバ装置60からID未登録情報を受信したか否かの判定が行われる。後述するように、サーバ装置60では、ホスト装置40から送信されてきた識別情報ID、即ち利用者Maが所持するICカード50の識別情報IDaが本運賃収受システム5に登録されているか否かを判定し、登録されていない場合にはID未登録情報を当該ホスト装置40に送信する。
【0076】
このため、ID未登録情報を受信した場合には、先に送信した識別情報等IDa/CMaを保持しているICカード50は、本運賃収受システム5を利用することができないことになるので、ステップS125ではID登録済みではないと判定して(S125;No)、ステップS127によりID未登録フラグをオンに設定する処理が行われる。ID未登録フラグのオン情報は、ステップS131によりホスト装置40のメモリ43(DRAM)に記憶されて車載側降車時処理(S150)において読み取られて使用される。
【0077】
一方、ID未登録情報を受信することなく受信完了情報を受信した場合には、当該ICカード50の識別情報IDaは本運賃収受システム5に登録されていることになるので、ステップS125ではID登録済みであると判定して(S125;Yes)、ステップS131に処理を移行する。
【0078】
ステップS131のID情報等記憶処理では、車載側乗車時処理(S120)において行われた情報処理の結果(サーバ装置60から受信した情報(受信完了情報、ID未登録情報または利用停止中情報)、乗車時送信エラーフラグのオン情報、ID未登録フラグのオン情報)を、識別情報IDa(ID)とともにこれに関連付けてホスト装置40のメモリ43(DRAM)に記憶する。ステップS131の処理が終わると、本車載側乗車時処理(S120)が終了するため、
図3に示す運賃収受処理100に戻る。
【0079】
これにより、利用者Maの乗車時において、乗車時端末20によりそのICカード50から読み取られた識別情報等IDa/CMaに関する一連の運賃収受処理100が終了する。そのため、ホスト装置40は、再度、運賃収受処理100を最初(S101)から実行して、次の利用者M等が所持するICカード50を乗車時端末20が読み取るまで、ID情報等取得処理(S103)と取得判定処理(S105)を繰り返して待機する。
【0080】
<車載側降車時処理(S150)>
ステップS150では車載側降車時処理が行われる。この処理の詳細は、
図5に表されているため、ここからは同図も参照しながら説明する。ここでは、先の例で停留所BSaからバス90に乗車した利用者Maが停留所BScで降車する場合において、所持するICカード50から、降車時端末30が識別情報IDaおよび担保金情報CMa(識別情報等IDa/CMa)を読み取った場合の例について説明する。
【0081】
図5に示すように、車載側降車時処理では、ステップS151により利用運賃算出処理が行われる。即ち、利用者Maは、バス90に乗車してから降車するまでに当該バス90を利用することにより生じた運賃(利用運賃X)を、前方の降車口93から降車する際に支払う必要がある。そのため、この処理では、今回の降車時に行われた運賃収受処理100のステップS103により降車時端末30から取得した降車時の停留所連番号BS#(例えば「003」)と、前回の乗車時に行われた運賃収受処理100のステップS103により乗車時端末20から取得した乗車時の停留所連番号BS#(例えば「001」)とに基づいて利用運賃Xの金額を算出する。この算出には、例えば運賃三角表が用いられる。なお、降車時の停留所連番号BS#と乗車時の停留所連番号BS#は、特許請求の範囲に記載の「利用運賃の算出に要する情報」に相当し得るものである。
【0082】
ここでは、前述した特許文献1(特開2010-44734)の
図4に開示されている運賃三角表を用いて説明すると、乗車時の停留所連番号BS#が「001」であり、降車時の停留所連番号BS#が「003」である場合には、140円が求められる。なお、このような運賃三角表を用いることなく所定の演算式に基づいて算出してもよい。例えば、基本運賃(例えばXXX円)に対して、降車する停留所BS#から乗車した停留所BS#を減算して得られた数(例えばN)を所定金額(例えばYY円)に乗算したものを加算して算出してもよい((XXX+YY×N)円)。
【0083】
なお、このような利用運賃Xをホスト装置40ではなく、サーバ装置60において算出する場合には、この利用運賃算出処理(S151)は不要になるが、降車時の停留所連番号BS#の情報をステップS155のID情報等送信処理においてサーバ装置60に送信する必要がある。また、前述した車載側乗車時処理(
図4)のID情報等送信処理(S121)により乗車時の停留所連番号BS#の情報をサーバ装置60に送信していない場合には、その停留所連番号BS#もステップS155のID情報等送信処理によりサーバ装置60に送信する必要がある。
【0084】
続くステップS153では、識別情報IDaが本運賃収受システム5に登録されているか否かを判定する処理が行われる。この判定はID未登録フラグに基づいて行われる。ID未登録フラグは、前述した車載側乗車時処理(S120)のステップS125においてID登録済みではないと判定された場合(S125;No)、オンに設定される。そのため、このID未登録フラグがオフに設定されている場合には当該識別情報IDaは登録済みであることから(S153;Yes)、続くステップS155によりID情報等送信処理が行われる。
【0085】
一方、ID未登録フラグがオンに設定されている場合には当該識別情報IDaは未登録であり本運賃収受システム5の利用登録は未だ行われていないことになる(S153;No)。そのため、このような場合には、ステップS161の現金決済情報出力処理に移行し利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSaを降車時端末30に出力させる処理が行われる。
【0086】
ステップS155のID情報等送信処理は、ICカード50から降車時端末30により読み取られた後に送出されてホスト装置40に届いた識別情報IDaと、前述した利用運賃算出処理(S151)により算出された利用運賃Xの情報(利用運賃情報CF)と、をサーバ装置60に送信するものである。また送信する識別情報IDが降車時のものであることを示す降車フラグも合わせて送信する。なお、利用運賃Xをサーバ装置60において算出する場合には、利用運賃情報CFに代えて、降車時の停留所連番号BS#の情報(と必要に応じて乗車時の停留所連番号BS#)を識別情報IDaとともにサーバ装置60に送信する。IPアドレスや無線通信ユニット48等に、前述した車載側乗車時処理(S120)のID情報等送信処理(S121)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0087】
後述するように、サーバ装置60では、車載側降車時処理(S150)による送信データTXbを受信すると、運賃決済処理500による情報処理の結果として、決済完了情報、ID未登録情報や利用停止中情報を当該ホスト装置40に対して送信する(
図2;RXb、
図9(A);S575、
図7;S513)。これに対して、送信データTXc,TXdのように、受信できないとき(
図2;×印付きの破線矢印)には何も送信しない。そのため、ホスト装置40では、送信データTXb等を送信した後、サーバ装置60から決済完了情報等の受信データRXbを受信したか否か、つまりサーバ装置60が送信データTXbを受信したか否かを判定する処理が行われる。
【0088】
そして、送信データTXc,TXdのように所定時間を経過してもサーバ装置60から決済完了情報等を受信できない場合には(S157;No)、ステップS155に戻って送信データTXbの再送信を行い、所定のタイムアウト時間が経過するまでこの再送信を繰り返す。送信データTXcのようにタイムアウト時間が経過する前に受信完了情報等を受信できた場合には(S157;Yes)、ステップS159による利用停止中判定処理に移行する。一方、送信データTXdのようにタイムアウト時間が経過した場合には(S157;NA)、無線通信回線85において通信障害が発生している可能性が高いことから、ステップS163による降車時送信エラーフラグ設定処理に移行する。
【0089】
ステップS163の降車時送信エラーフラグ設定処理は、送信データTXdのようにホスト装置40からサーバ装置60に送信データ(ICカード50から読み取られた識別情報等IDa/CMa)が通信障害によりサーバ装置60に受信されていないと推定されること、換言すれば送信を失敗したことを、降車時送信エラーフラグをオンに設定して明示するものである。このエラーフラグのオン情報は、ステップS169によりホスト装置40のメモリ43(DRAM)に記憶されて後述するリカバリ処理400において読み出されて使用される。
【0090】
サーバ装置60に対してICカード50から読み取られ識別情報等IDa/CMaが送信できなかった場合には(S157;No)、現時点においてはサーバ装置60による利用運賃Xの決済処理を行うことができない。そのため、本実施形態では、ステップS165による判定処理を行う。即ち、この判定処理では、ステップS151により算出された利用者Maの利用運賃Xが、ICカード50から降車時端末30により読み取られた担保金情報CMaによる担保金Y(の金額)以下(利用運賃X≦担保金Y)であるか否かを判定する。
【0091】
そして、利用運賃Xが担保金Y以下である場合には(S165;Yes)、当該識別情報IDaに関連付けられてサーバ装置60により管理されている運賃バリューV(利用者Maが有する運賃バリュー)が利用運賃Xに相当する運賃バリューよりも小さいときにも(V<X)、当該利用運賃Xが運賃バリューVを超える超過分(X-V)を担保金Yにより補填し得る。利用運賃Xが担保金Y以下である場合には(X≦Y)、超過分(X-V)は必ず担保金Yよりも小さくなる((X-V)<Y)からである。したがって、この場合には(S165;Yes)、当該利用者の降車を許容する情報MSbをステップS167に移行して降車時端末30に出力する。
【0092】
これに対して、利用運賃Xが担保金Y以下でない場合、つまり利用運賃Xが担保金Yを超える場合には(S165;No)、その超過分が利用者Maの有する運賃バリューVよりも大きいときには、当該利用運賃Xが運賃バリューVを超える超過分を担保金Yにより補填することができない。利用運賃Xが担保金Yを超える場合には(X>Y)、超過分(X-V)が担保金Yを上回る可能性がある((X-V)>Y)からである。したがって、この場合には(S165;No)、ステップS161に現金決済情報出力処理を移行し当該利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSbを降車時端末30に出力させる処理が行われる。
【0093】
ステップS159では、識別情報IDが利用停止中であるか否か、または運賃バリュー不足であるか否かを判定する処理が行われる。後述するように、サーバ装置60では、ホスト装置40から送信されてきた識別情報ID、即ち利用者Maが所持するICカード50の識別情報IDaが本運賃収受システム5の利用を停止されているか否かを判定し、停止されている場合には利用停止中情報を当該ホスト装置40に送信する。また、利用者Maが所持するICカード50の識別情報IDaに関連付けられた運賃バリューV、つまり当該利用者Maが有する運賃バリューVに対して、利用者Maの利用運賃Xに相当するバリューがそれ以下(利用運賃X相当のバリュー≦運賃バリューV)であるか否かを判定し、利用運賃X相当のバリューが運賃バリューVを超えている場合には運賃バリュー不足情報を当該ホスト装置40に送信する。
【0094】
このため、利用停止中情報や運賃バリュー不足情報を受信した場合には、先に送信した識別情報等IDa/CMaを保持しているICカード50は、本運賃収受システム5を利用することができないことから、ステップS159では利用停止中や運賃バリュー不足であると判定して(S159;Yes)、ステップS161により現金決済情報出力処理が行われる。これにより、降車時端末30の表示ユニット35には、利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSaが出力される。
【0095】
一方、利用停止中情報や運賃バリュー不足情報のいずれも受信することなく決済完了情報を受信した場合には、後述するように、サーバ装置60において利用運賃Xの決済処理が完了していることになるので、ステップS159では本運賃収受システム5の利用停止中ではない(利用可能である)と判定して(S159;No)、ステップS167に処理を移行する。
【0096】
ステップS161の現金決済情報出力処理では、利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSaをホスト装置40から降車時端末30に出力する。利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報は、例えば、利用者Maが一見して「現金支払いが必要」であることを視覚的に理解可能な図形(赤色の大きな¥印等)や現金をイメージさせるピクトグラム等を降車時端末30の表示ユニット35に表示し得るものである。またこの処理では、このような表示とともに利用者Maに対して聴覚的に注意喚起し得る「ピッピッピッ」等の効果音を表示ユニット35から出力し得る音響データを降車時端末30に出力してもよい。
【0097】
ステップS167の降車許容情報出力処理では、当該利用者Maに対して降車を許容することを明示する情報MSaをホスト装置40から降車時端末30に出力する。降車を許容することを明示する情報は、例えば、利用者Maが一見して「降車してもよい」ことを視覚的に理解可能な図形(緑色の大きな○印等)や降車をイメージさせるピクトグラム等を降車時端末30の表示ユニット35に表示し得るものである。またこの処理では、このような表示とともに「降車してもよい」ことを聴覚的にイメージさせる「ピンポーン」等の効果音を表示ユニット35から出力し得る音響データを降車時端末30に出力してもよい。
【0098】
ステップS169のID情報等記憶処理では、車載側降車時処理(S150)において行われた情報処理の結果(サーバ装置60から受信した情報(決済完了情報、ID未登録情報または利用停止中情報)、降車時送信エラーフラグのオン情報)を、識別情報IDa(ID)とともにこれに関連付けてホスト装置40のメモリ43(DRAM)に記憶する。ステップS169の処理が終わると本車載側降車時処理(S150)が終了するため、
図3に示す運賃収受処理100に戻る。この後は車載側乗車時処理(S120)で説明した通りである。
【0099】
[乗車時読取り等処理200(降車時読取り等処理300)]
本実施形態の運賃収受システム5では、前述したように、乗車時端末20は乗車時読取り等処理200を行い、また降車時端末30は降車時読取り等処理300を行う。そのため、ここからは、
図6を参照しながら、乗車時読取り等処理200(乗車時)および降車時読取り等処理300について説明する。なお、乗車時読取り等処理200と降車時読取り等処理300は、情報処理の内容がほぼ同様であることから、ここでは乗車時読取り等処理200を代表して説明する。降車時読取り等処理300については、乗車時読取り等処理200の各ステップS2xx(xxは01,03,05,07,09,11,13,15)の番号をステップS3xxに変更することによって、ほぼ同じように説明することができる。また、乗車時端末20の制御ユニット21等の符号に続けて記載する括弧内の番号が降車時端末30の制御ユニット31等の符号に対応する。
【0100】
図6に示すように、乗車時読取り等処理200では、まずステップS201により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、制御ユニット21(31)のメモリの本処理用のワーク領域やフラグをクリアしたり、ほぼ同時期に起動されるホスト装置40から送られてくる初期設定用の制御コマンドに従って、読取りユニット23(33)、表示ユニット25(35)や有線通信ユニット27(37)の初期設定がそれぞれ行われたりする。停留所連番号BS#もこの初期化処理において、始発の停留所連番号である「01」にセットされる。停留所連番号BS#は、停留所連番号BS#を1つ進める指令信号がホスト装置40から送られてくると、その時点の停留所連番号BS#に1を加えた新たな停留所連番号BS#が自動的にセットされる。
【0101】
次のステップS203では停留所情報取得処理が行われる。この処理は、現在、セットされている停留所連番号BS#を取得する処理であり、取得された停留所連番号BS#は、次のステップS205において使用される。続くステップS205ではID情報等読取り処理が行われる。本実施形態では、ICカード50に保持されている識別情報等ID/CM(識別情報IDおよび担保金情報CM)を読取りユニット23(33)により読み取る。読取りユニット23はICカード50に対応した非接触式タイプのICカードリーダであるため、読取りユニット23にICカード50がかざされることで識別情報等ID/CMが読み取られる。
【0102】
次のステップS207では、ステップS205により識別情報等ID/CMが読み取られたか否かが判定される。即ち、読取りユニット23(33)にICカード50がかざされていない場合や、ICカード50がかざされていても識別情報IDや担保金情報CMを正常に読み取ることができない場合がある。そのため、ステップS207ではこのような読み取りの可否を判定する。
【0103】
そして、ステップS207により識別情報等ID/CMが読み取られたと判定した場合には(S207;Yes)、続くステップS209に処理を移行し、読み取られていないと判定した場合には(S207;No)、ステップS205に戻る。つまり、識別情報等ID/CMを読み取ることができるまで、ID情報等読取り処理(S205)と判定処理(S207)が繰り返し行われる。
【0104】
ステップS209ではID情報等送出処理が行われる。この処理は、ステップS205により読み取った識別情報等ID/CMをその読み取った停留所BSの停留所連番号BS#とともにホスト装置40に送るものである。また前述したように、ホスト装置40から送出されるポーリング信号に呼応して有線通信ユニット27(37)がデータを送出するように、乗車時端末20(降車時端末30)が構成されていない場合、即ち乗車時端末20(降車時端末30)が自発的に識別情報等ID/CMとその停留所連番号BS#をホスト装置40に送出する場合には、送出元を識別可能な情報(乗車/降車フラグ等)をさらに付加してホスト装置40に送る。
【0105】
次のステップS211では出力情報受取り処理が行われる。前述したようにホスト装置40は、車載側降車時処理(
図5)において、利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSa(S161)や、降車を許容することを明示する情報MSa,MSb(S167)を降車時端末30に出力する。また、前述した車載側乗車時処理(
図4)においてはなかったが、ホスト装置40から乗車時端末20に同様の情報を出力する場合もある。例えば、
図11を参照しながら後述するように、バス90が「前乗り前払い後降り方式」を採用する場合には、利用運賃Xを現金で支払う必要がある旨や降車を許容する旨を明示する情報MSaがホスト装置40から乗車時端末20に出力される。
【0106】
このため、ステップS211では出力情報受取り処理によりこれらの情報MSa,MSbの受け取りを試み次のステップS213により情報MSa,MSbを受け取ったか否かを判定する。そして、受け取っていない場合には(S213;No)、所定回数または所定時間の間、ステップS211の出力情報受取り処理を繰り返し、情報MSa,MSbを受け取ったと判定したときには(S213;Yes)、受け取ったこれらの情報MSa,MSbのいずれかを次のステップS215の出力情報表示処理によって表示ユニット25(35)に表示する。
【0107】
これに対して、所定回数または所定時間を経過しても情報MSa,MSbを受け取ることができない場合には(S213;NA)、例えば、前述した車載側乗車時処理(S120)のように、ホスト装置40から乗車時端末20(降車時端末30)に送出される情報MSa,MSbがないこともある。そのため、この場合には次の利用者M等がICカード50を読取りユニット23にかざすときに備えてステップS203に戻った後、ID情報等読取り処理(S205)と読取り判定処理(S207)を繰り返して待機する。ステップS215の出力情報表示処理を終えた後もステップS203に戻って同様に待機する。
【0108】
[運賃決済処理500]
本実施形態の運賃収受システム5では、前述したように、車載装置10は、乗車時端末20や降車時端末30から識別情報IDが送られてくると、それに停留所連番号BS#の情報や利用運賃情報CF等を付加した送信データTXa(TX)をサーバ装置60に送信する。そのため、ここからは
図7を参照しながら、送信データTXaを受信するサーバ装置60により行われる運賃決済処理500について説明する。
【0109】
図7に示すように、運賃決済処理500では、まずステップS501によりテーブル読出し処理が行われる。このテーブルは、利用者Mに関する一連の情報を当該利用者Mの識別情報IDに関連付けて記憶されている複数の情報の集まりである。本実施形態では、例えば、利用者Mが有する運賃バリューV、負債バリューW、担保金情報CM、各種のフラグ、利用者の基本情報等が登録(記憶)されている。なお、各種のフラグについては後述する。
【0110】
次のステップS503ではID情報等受信処理が行われる。この処理では、ホスト装置40から送信されてくる識別情報ID等を受信する。
図2に表されるシーケンス図の例では、利用者Maの乗車時には、識別情報ID、乗車フラグや乗車時の停留所連番号BS#等が送信データTXaとしてホスト装置40から送信され(
図4;S121)、また利用者Maの降車時には、識別情報ID、利用運賃情報CF、降車フラグや降車時の停留所連番号BS#等が送信データTXbとして送信されてくる(
図5;S155)。また、後述するリカバリ処理400では、サーバ装置60が受信できなかったと推定される識別情報ID等に加えて乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグも送信データTXeとしてホスト装置40から送られてくる。そのため、ステップS503のID情報等受信処理では、これらの送信データTXa等(識別情報ID等)を受信する。
【0111】
なお、利用運賃情報CFは、サーバ装置60で利用運賃Xを算出しない(ホスト装置40で利用運賃Xを算出する)場合にホスト装置40から送られてくるが、サーバ装置60で利用運賃Xを算出する(ホスト装置40で利用運賃Xを算出しない)場合には、前述したように利用運賃情報CFの代わりに、乗車時の停留所連番号BS#および降車時の停留所連番号BS#がホスト装置40から送られてくる。
【0112】
そして、続くステップS505によりこれらの識別情報ID等が受信されたか否かが判定され、ホスト装置40から受信した場合には(S505;Yes)、次のステップS507の判定処理に進む。まだ受信していない場合には(S505;No)、ステップS503に戻って識別情報ID等を受信するまでステップS503とステップS505を繰り返し行う。つまり、サーバ装置60は識別情報ID等を受信するまで待機する。
【0113】
続くステップS507では、識別情報IDが未登録であるか否か、または利用停止中であるか否かを判定する処理が行われる。利用者Mは、本運賃収受システム5を利用する場合には、前述したように、予め本システム5の利用登録を行う必要があり、この利用登録により、前述のテーブルに識別情報IDが登録される。そのため、ステップS507では読み出されたテーブルに当該識別情報IDが登録されているか否かを判定する。また、後述する事後決済処理(S580)においては、利用運賃Xが運賃バリューV以下でない(利用運賃Xが運賃バリューVを超えている)と判定した場合に利用停止フラグをオンに設定する(S591)。そのため、ステップS507ではこの利用停止フラグの情報に基づいて利用停止中であるか否かについても判定する。
【0114】
そして、ステップS507の判定処理により、当該識別情報IDが未登録および利用停止中のいずれか一方または両方(少なくとも一方)であると判定した場合には(S507;Yes)、ステップS511に移行してID未登録または停止中の情報をホスト装置40に送信する処理が行われる。即ち、当該識別情報IDがサーバ装置60のテーブルに登録されていないと判定した場合にはID未登録情報をホスト装置40に送信し、また当該識別情報IDが本運賃収受システム5の利用を停止されていると判定した場合には利用停止中情報をホスト装置40に送信する。これを受信したホスト装置40は、前述のように、ID未登録フラグをオンに設定したり(
図4;S127)、現金決済情報を降車時端末30に出力したりする(
図5;S161)。
【0115】
これに対して、当該識別情報IDが未登録でも利用停止中でもないと判定した場合には(S507;No)、ステップS503により受信した識別情報ID等が乗車時のものであるか降車時のものであるかをステップS509で判定する。ステップS503では識別情報IDのほかに乗車フラグや降車フラグも受信しているため、ステップS509の乗降車判定処理ではこれらのフラグに基づいて乗車時か降車時かを判定する。
【0116】
そして、乗車時のものであると判定した場合には(S509;乗車)、ステップS530に移行してサーバ側乗車時処理を行い、降車時のものであると判定した場合には(S509;降車)、ステップS550に移行してサーバ側降車時処理を行う。サーバ側乗車時処理(S530)は
図8(A)に、またサーバ側降車時処理は
図8(B)にそれぞれ表されているため、ここからは
図8も参照しながら説明する。
【0117】
<サーバ側乗車時処理(S530)>
図8(A)に示すように、サーバ側乗車時処理ではステップS531により識別情報IDに関連付けられた情報の更新が行われる。例えば、先の例で停留所BSaから利用者Maがバス90に乗車したときにホスト装置40から識別情報ID等が送信された場合には、前述したように乗車フラグや乗車時の停留所連番号BS#も一緒に送信されていることから、識別情報IDに関連付けてこれらで前述したテーブルを書き換えて更新する。また、リカバリ処理400により、識別情報ID等(サーバ装置60が受信できなかったと推定されるもの)と一緒に乗車時送信エラーフラグが送信されてきた場合には、識別情報IDに関連付けてこのようなエラーフラグで前述したテーブルを書き換えて更新する。なお、これらのフラグは、前述した各種のフラグ(識別情報IDに関連付けられてテーブルに登録されるフラグ)に含まれる。
【0118】
次のステップS533では受信完了情報送信処理が行われる。受信完了情報は、ホスト装置40から送信されてきた識別情報ID等が当該サーバ装置60に問題なく受信されたことを示す情報であり、これを当該ホスト装置40に送信する(
図2に示すRXa)。これにより、前述したように、サーバ装置60が受信したか否かの判定をホスト装置40が行うことを可能にしている。ステップS533の処理が終わると、本サーバ側乗車時処理が終了するため、
図7に示す運賃決済処理500に戻る。
【0119】
運賃決済処理500に戻ると、次のステップS513によりテーブル保存処理が行われる。この処理では、前述した受信完了情報送信処理(
図8(A))の更新処理(S531)により更新されたテーブルをホスト装置40のメモリ43に保存する。ステップS513の処理が終わると、一連の運賃決済処理500が終了する。そのため、サーバ装置60は、再度、運賃決済処理500を最初(S501)から実行して、次の送信データTXb等がホスト装置40から送信されてくるまで、ID情報等受信処理(S503)と受信判定処理(S505)を繰り返して待機する。
【0120】
<サーバ側降車時処理(S550)>
図8(B)に示すように、サーバ側降車時処理ではステップS551により利用運賃算出処理が行われる。この処理は、前述した車載側降車時処理(
図5)で説明した利用運賃算出処理(S151)とほぼ同じであり、乗車時の停留所連番号BS#と降車時の停留所連番号BS#とに基づいて利用運賃Xの金額を算出する。乗車時と降車時の停留所連番号BS#は、前述したID情報等受信処理(S503)によりホスト装置40から受信したものである。なお、降車時の停留所連番号BS#と乗車時の停留所連番号BS#は、特許請求の範囲に記載の「利用運賃の算出に要する情報」に相当し得るものである。
【0121】
この算出には、前述のID情報等受信処理(S503)と同様に、例えば運賃三角表が用いられるが、所定の演算式に基づいて算出してもよい。例えば、基本運賃(例えばXXX円)に対して、降車する停留所BS#から乗車した停留所BS#を減算して得られた数(例えばN)を所定金額(例えばYY円)に乗算したものを加算して算出してもよい((XXX+YY×N)円)。なお、ホスト装置40により利用運賃Xが算出される場合には、ホスト装置40から送信されてきた利用運賃情報CFに基づいて利用運賃Xが得られて算出する必要がない。そのため、この利用運賃算出処理(S551)は不要になる。
【0122】
次のステップS553では、ステップS503により受信した識別情報ID等が、現在降車しようとしている利用者MaのICカード50から読み取られてホスト装置40によりほぼリアルタイムに送信されたものであるか、それとも通信障害の発生により送信できなかったことに起因して後述するリカバリ処理400により再度送信されたものであるかを判定する。
【0123】
そして、ほぼリアルタイムに送信されたものであると判定した場合には(S553;現時点)、ステップS570に移行して現時点決済処理を行い、再度送信されたものであると判定した場合には(S553;リカバリ)、ステップS580に移行して事後決済処理を行う。現時点決済処理(S570)は
図9(A)に、また事後決済処理は
図9(B)にそれぞれ表されているため、ここからは
図9も参照しながら説明する。
【0124】
<現時点決済処理(S570)>
図9(A)に示すように、現時点決済処理ではステップS571の判定処理により、ステップS551により算出された利用者Maの利用運賃Xに相当するバリューが、当該利用者Maが有する運賃バリューV以下(利用運賃X相当のバリュー(利用運賃)≦運賃バリューV)であるか否かを判定する。なお、「利用運賃X相当のバリュー(利用運賃)」の括弧内は利用運賃Xと運賃バリューVが等価である場合には、利用運賃X≦運賃バリューVになることを表しており、
図9(A)や
図9(B)にはこの場合が図示されている。
【0125】
そして、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューV以下であると判定された場合には(S571;Yes)、続くステップS573の運賃バリュー減算処理により、利用者Maの運賃バリューVから利用運賃Xに相当するバリューを減算する。つまり、利用運賃Xを運賃バリューVで決済(精算)する。そしてその後、ステップS575の決済完了情報送信処理により、決済完了情報をホスト装置40に送信する(
図2に示すRXa)。これにより、決済完了情報を受信したホスト装置40は、前述したように、車載側降車時処理(
図5)の降車許容情報出力処理(S167)によって当該利用者Maに対して降車を許容することを明示する情報MSaを降車時端末30に出力する。利用者Maは、降車時端末30の表示ユニット35に出力される表示を見たり表示ユニット35から出力される音を聞いたりして、自分が所持するICカード50により利用運賃Xが決済されたことや、バス90を降車できることを把握する。
【0126】
これに対して、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューVを超えると判定された場合には(S571;No)、利用者Maが所持するICカード50では運賃バリューVが不足することから利用運賃Xを決済することができない。このような場合には、ステップS577の運賃バリュー不足情報送信処理により、運賃バリュー不足情報をリアルタイムでホスト装置40に送信する(
図2に示すRXa)。これにより、運賃バリュー不足情報を受信したホスト装置40は、前述したように、車載側降車時処理(
図5)の現金決済情報出力処理(S161)によって当該利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることを明示する情報MSaを降車時端末30に出力する。利用者Maは、降車時端末30の表示ユニット35に出力される表示を見たり表示ユニット35から出力される音を聞いたりして、自分が所持するICカード50では利用運賃Xを決済することができないことや、利用運賃Xを現金で支払うことでバス90を降車できることを把握する。これにより、当該利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることをリアルタイムに告知する。
【0127】
ステップS575やステップS577の処理が終わると、本現時点決済処理(S570)が終了するため、
図8(B)に示すサーバ側降車時処理に戻る。サーバ側降車時処理(S550)に戻ると、次のステップS555により識別情報IDに関連付けられた情報の更新が行われる。先の例では、利用者Maが停留所BScでバス90を降車する際にホスト装置40から識別情報ID等が送信された場合には、前述したように降車フラグや降車時の停留所連番号BS#も一緒に送信されていることから、識別情報IDに関連付けてこれらで前述したテーブルを書き換えて更新する。また、リカバリ処理400により、識別情報ID等(サーバ装置60が受信できなかったと推定されるもの)と一緒に降車時送信エラーフラグが送信されてきた場合には、識別情報IDに関連付けてこのようなエラーフラグで前述したテーブルを書き換えて更新する。なお、これらのフラグは、前述した各種のフラグ(識別情報IDに関連付けられてテーブルに登録されるフラグ)に含まれる。
【0128】
ステップS555の処理が終わると、本サーバ側降車時処理(S550)が終了するため、
図7に示す運賃決済処理500に戻る。この後はサーバ側乗車時処理(S530)で説明した通りである。
【0129】
<事後決済処理(S580)>
図9(B)に示すように、事後決済処理ではステップS581の判定処理により、ステップS551により算出された利用者Maの利用運賃Xに相当するバリューが、当該利用者Maが有する運賃バリューV以下(利用運賃X相当のバリュー(利用運賃)≦運賃バリューV)であるか否かを判定する。
【0130】
そして、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューV以下であると判定された場合には(S581;Yes)、続くステップS583の運賃バリュー減算処理により、利用者Maの運賃バリューVから利用運賃Xに相当するバリューを減算する。つまり、利用運賃Xを運賃バリューVで決済(精算)する。ここまでは、前述した現時点決済処理(
図9(A))の場合と同様である。
【0131】
これに対して、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューVを超えると判定された場合には(S581;No)、当該利用者Maが所持するICカード50では運賃バリューVが不足することから利用運賃Xを決済することができない。そのため、前述の現時点決済処理(
図9(A))では、運賃バリュー不足情報をホスト装置40に送信し、当該利用者Maに対して利用運賃Xを現金で支払う必要があることをリアルタイムに告知した。
【0132】
しかし、本事後決済処理(S580)の場合には、車載側降車時処理(
図5)において通信障害に起因してホスト装置40が識別情報ID等の送信を失敗したことから、利用者Maの利用運賃Xが利用者Maの担保金Y以下(利用運賃X≦担保金Y)であるときに限って当該利用者Mの降車を許容した。前述したように、利用運賃Xが運賃バリューVを超えたとしても、その超過分(X-V)を担保金Yにより補填し得るからである。
【0133】
このため、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューVを超えると判定された場合には(S581;No)、ステップS587の負債バリュー算出処理により負債バリューWを算出する。負債バリューWは、利用運賃Xが運賃バリューVを超える金額であって担保金Yの範囲内、つまり担保金Y以下の金額に相当するバリューである。なお、負債バリューは、バス90の事業者から利用者Maが借りている価値であり借り主である当該利用者Maが返済義務(債務)を負うものである。
【0134】
続くステップS589では運賃バリュー無効化処理が行われる。負債バリューWが算出されている場合、利用運賃Xに相当するバリューが利用者Maの運賃バリューVを超えているため、利用者Maが有する運賃バリューVは0(ゼロ)になるべきである。そのため、この処理では、当該利用者Maの運賃バリューVを0(ゼロ)に設定したり、運賃バリューVそれ自体を使用することができないように無効(無価値)にしたりする。
【0135】
そして、次のステップS591では、利用停止フラグをオンに設定する処理が行われる。利用停止フラグがオンに設定されると、そのフラグに関連付けられた識別情報IDや、当該識別情報IDを有するICカード50では、本運賃収受システム5を利用することができなくなる。つまり、本運賃収受システム5の利用が停止される。なお、この利用停止フラグも、前述した各種のフラグ(識別情報IDに関連付けられてテーブルに登録されるフラグ)に含まれる。
【0136】
この利用停止フラグは、サーバ装置60に接続されて営業所等に設備されるチャージ端末等により、例えば、ICカード50を用いてその識別情報IDに関連付けられた運賃バリューVをチャージ(ICカード50をチャージ)することによって、運賃バリューVが前述した超過分(利用運賃X-運賃バリューV)以上になった場合や超過分以上バリューがチャージされた場合には、フラグがオフにされる。これにより、本システム5の利用の停止が解除されるので、利用者Mは、本システム5を再び利用することが可能になる。また、運賃バリューVのチャージを促すことが可能になるので、利用者Mによる当該超過分の返済義務(債務)の履行が促進される。
【0137】
ステップS585では決済完了情報送信処理が行われる。運賃バリュー減算処理(S583)が行われた場合には、利用運賃Xを運賃バリューVで決済している。また負債バリュー算出処理(S587)や運賃バリュー無効化処理(S589)が行われた場合には、担保金Yの範囲内で負債バリューWが生じさせることにより、負債バリューWに相当する超過分の金額(X-V)は回収が可能であり、将来の決済が見込まれる。したがって、ステップS585の決済完了情報送信処理により、決済完了情報をホスト装置40に送信する(
図2に示すRXa)。これにより、後述のリカバリ処理400において決済完了情報を受信したホスト装置40は、送信エラー情報等送信処理(S405)で再度送信した識別情報ID等がサーバ装置60によって決済処理された旨の情報を得ることができる。
【0138】
ステップS585の処理が終わると、本事後決済処理(S580)が終了するため、
図8(B)に示すサーバ側降車時処理に戻る。この後は現時点決済処理(S570)で説明した通りであるので、省略する。
【0139】
[リカバリ処理400]
図2に示すように、本実施形態の運賃収受システム5では、前述した通信障害の発生により、ホスト装置40からサーバ装置60に送信された送信データTXがサーバ装置60に受信されない場合がある(
図2に示すTXd)。つまり、ホスト装置40からの送信が失敗する場合がある。そのため、本実施形態では、このように送信が失敗した場合には、車載側乗車時処理(
図4)や車載側降車時処理(
図5)において乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグをオンに設定し、かつ、識別情報IDに関連付けてホスト装置40のメモリ43に記憶している(
図4;S129、
図5;S163)。
【0140】
このため、リカバリ処理400では、このような乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグがホスト装置40のメモリ43に記憶されている場合には通信障害の発生に起因した送信エラーが生じている可能性が高いことから、該当する識別情報IDについて送信されるべき識別情報ID等の送信データTXeを再度送信する。そのため、ここからは
図10も参照しながら、リカバリ処理400について説明する。なお、このリカバリ処理400は、原則として、ホスト装置40の無線通信ユニット48に対して、電波状態が良好な場所、例えば、終着停留所BSz、バス90の営業所等、その車庫の付近や当該車庫(入庫時)において行われるが、電波状態が良好な路線をバス90が走行している間に行ってもよい。
【0141】
図10に示すように、リカバリ処理400では、まずステップS401により送信エラー情報読出し処理が行われる。この処理では、送信エラー情報として、車載側乗車時処理(
図4)や車載側降車時処理(
図5)において、オンに設定された乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグをホスト装置40のメモリ43から読み出す。読み出された乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグが存在するか否かの判定処理が続くステップS403により行われる。
【0142】
そして、これらいずれの送信エラーフラグがメモリ43から読み出されている場合には(S403;Yes)、次のステップS405により再度送信する必要のある識別情報ID等の送信処理を行い、読み出されていない場合には(S403;No)、再度送信する必要のある識別情報ID等は存在しないため、本リカバリ処理400を終了する。
【0143】
ステップS405により再度送信される情報は、本来、利用者Mの乗車時や降車時にほぼリアルタイムに送信されるべき識別情報ID等とそれに付加する送信エラーフラグである。そのため、車載側乗車時処理(
図4)のID情報等送信処理(S121)や車載側降車時処理(
図5)のID情報等送信処理(S155)において送信されるものと、乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグである。なお、このような送信エラーフラグを付加するのは、サーバ装置60で行われる運賃決済処理500において、リアルタイムにホスト装置40から送信されてくる識別情報ID等と区別して情報処理を行うためである(
図8(B);S553)。
【0144】
即ち、乗車時送信エラーフラグがオンに設定されている場合には、それに関連付けられている識別情報ID、乗車フラグおよび乗車時送信エラーフラグを送信する。また、サーバ装置60において利用運賃Xを算出するときには、乗車時の停留所連番号BS#も一緒に送信する。また、降車時送信エラーフラグがオンに設定されている場合には、それに関連付けられている識別情報ID、降車フラグ、利用運賃情報CFおよび降車時送信エラーフラグを送信する(送信データTXe)。また、サーバ装置60において利用運賃Xを算出するときには、利用運賃情報CFに代えて降車時の停留所連番号BS#を一緒に送信する。
【0145】
そして、所定時間を経過してもサーバ装置60から受信完了情報等(受信データTXe)を受信できない場合には(S407;No)、ステップS405に戻って送信データTXeの再送信を行い、所定のタイムアウト時間が経過するまでこの再送信を繰り返す。
【0146】
タイムアウト時間が経過する前に受信完了情報等を受信できた場合には(S407;Yes)、ステップS409の乗(降)車送信エラーフラグオフ処理に移行する。またタイムアウト時間が経過した場合には(S407;NA)、その時点においても無線通信回線85において通信障害が発生している可能性が高い。そのため、送信エラーフラグをオンに設定したままステップS411の判定処理に移行する。なお、送信エラーフラグをオンに設定したまま本リカバリ処理400を終了してもよい。
【0147】
ステップS409の乗(降)車送信エラーフラグオフ処理では、送信が完了した送信データTXeの識別情報ID等は再度送信する必要がないため、これに関連付けられている乗車送信エラーフラグまたは降車送信エラーフラグをオフに設定する処理が行われる。そして、ステップS411により、再送の必要がある乗車時送信エラーフラグや降車時送信エラーフラグが残っているか否かの判定処理を行い、残っている場合には(S411;Yes)、ステップS405に戻って再度送信を試みる。残っていない場合には本リカバリ処理400を終了する。
【0148】
上述した本実施形態の運賃収受システム5について、より具体的な例を挙げて説明すると次のようになる。例えば、利用者Mは、毎日の通勤に片道500円(往復1000円)の利用運賃Xが必要な経路でバス90を利用している。利用者Mは、運賃収受システム5の利用登録時に担保金Yとして1000円(往復時の利用運賃Xの相当額)を支払って本システム5に登録している。運賃バリューVは、担保金Yとは別に、いくらか支払ってチャージしている。このような状況において、5つのケースを例示して説明する。
【0149】
(ケース1)
運賃バリューV:600円相当、利用運賃X:500円、担保金Y:1000円である場合において、降車時にICカード50を使って利用運賃Xを精算しようとしたところ、ホスト装置40からサーバ装置60にICカード50の識別情報ID等が送信された。これにより、サーバ装置60の運賃決済処理(
図7)は、運賃バリューVでの精算を完了したため、利用者MはICカード50を使って降車できた。
【0150】
この場合、利用運賃X:500円≦運賃バリューV:600円であることから、運賃バリュー減算処理(
図9(A);S573)により運賃バリューVの残高は100円相当(=600円(運賃バリューV)-500円(利用運賃X))になった。
【0151】
(ケース2)
運賃バリューV:600円相当、利用運賃X:700円、担保金Y:1000円である場合において、降車時にICカード50を使って利用運賃Xを精算しようとしたところ、ホスト装置40からサーバ装置60にICカード50の識別情報ID等が送信された。これにより、サーバ装置60の運賃決済処理(
図7)は、運賃バリューVでは不足するため、精算できないことから、降車時端末30の表示ユニット35には現金支払いのメッセージが表示された。利用者Mは現金で700円を支払って降車した。
【0152】
この場合、利用運賃X:700円>運賃バリューV:600円であることから、運賃バリュー不足情報送信処理(
図9(A);S577)により運賃バリュー不足情報が送信され、それを受信したホスト装置40から降車時端末30にメッセージ情報が出力されて表示ユニット35に「現金支払いが必要」である旨が表示された。運賃バリューVは、何も引かれていないことから、現状の600円相当を維持している。
【0153】
(ケース3)
運賃バリューV:600円相当、利用運賃X:500円、担保金Y:1000円である場合において、降車時にICカード50を使って利用運賃Xを精算しようとしたところ、通信障害が発生してホスト装置40からサーバ装置60にICカード50の識別情報ID等が送信されなかった。そのため、リアルタイムではサーバ装置60の運賃決済処理が行われなかったが、ホスト装置40の運賃収受処理(
図3)は、降車を許容したため、利用者MはICカード50を使って降車できた。
【0154】
この場合、利用運賃X:500円≦担保金Y:1000円であることから、降車許容情報出力処理(
図5;S167)により降車許容情報が送出されて降車時端末30にメッセージ情報が出力されて表示ユニット35に「降車してもよい」旨が表示された。また、利用運賃X:500円≦運賃バリューV:600円であることから、運賃バリュー減算処理(
図9(B);S583)により運賃バリューVの残高は100円相当(=600円(運賃バリューV)-500円(利用運賃X))になった。
【0155】
(ケース4)
運賃バリューV:300円相当、利用運賃X:500円、担保金Y:1000円である場合において、降車時にICカード50を使って利用運賃Xを精算しようとしたところ、通信障害が発生して車載装置10からサーバ装置60にICカード50の識別情報ID等が送信されなかった。そのため、リアルタイムではサーバ装置60の運賃決済処理(
図7)が行われなかったが、ホスト装置40の運賃収受処理(
図3)は、降車を許容したため、利用者MはICカード50を使って降車できたが、その後のICカード50を使用したバス90の利用(本運賃収受システム5の利用)ができなくなった。
【0156】
この場合、利用運賃X:500円≦担保金Y:1000円であることから、降車許容情報出力処理(
図5;S167)により降車許容情報が送出されて降車時端末30にメッセージ情報が出力されて表示ユニット35に「降車してもよい」旨が表示された。また、利用運賃X:500円>運賃バリューV:300円であることから、負債バリュー算出処理(
図9(B);S587)により負債バリューW:200円相当(=500円(利用運賃X)-300円(運賃バリューV))が生じて利用者MのICカード50が利用停止になった。利用者Mは、負債バリューW:200円相当以上チャージすることによって、負債バリューW(超過分)の返済義務が履行されて負債バリューWの支払い債権が消滅するため、再びICカード50を使用したバス90の利用(本運賃収受システム5の利用)ができるようになる。
【0157】
(ケース5)
運賃バリューV:600円相当、利用運賃X:1100円、担保金Y:1000円である場合において、降車時にICカード50を使って利用運賃Xを精算しようとしたところ、通信障害が発生してホスト装置40からサーバ装置60にICカード50の識別情報ID等が送信されなかった。そのため、リアルタイムではサーバ装置60の運賃決済処理が行われず、ホスト装置40の運賃収受処理(
図3)は、利用運賃Xが担保金Yを超えており運賃バリューVの残高によっては回収できない可能性があるので、降車時端末30の表示ユニット35には現金支払いのメッセージが表示された。利用者Mは現金で1100円を支払って降車した。
【0158】
この場合、利用運賃X:1100円>担保金Y:1000円であることから、現金決済情報出力処理(
図5;S161)により現金決済情報が送出されて降車時端末30にメッセージ情報が出力され表示ユニット35に「現金支払いが必要」である旨が表示された。運賃バリューVは、何も引かれていないことから、現状の600円相当を維持している。
【0159】
なお、本実施形態のバス90と異なり、停留所BSで利用者Mが前方の乗車口しその際に定額の利用運賃Xを支払い、降車時には後方の降車口から降車する「前乗り前払い後降り方式」を採用するバス90’においても、本発明の運賃収受システムや車載装置を適用することが可能である。例えば、車載装置10’、ICカード50およびサーバ装置60’により実行される各処理の一連の流れは、例えば、
図11に示すようなシーケンス図で表される。
図11に示すように「前乗り前払い後降り方式」のバス90’では、利用運賃Xが定額であり、利用者Mは乗車時に利用運賃Xを支払う。そのため、降車時端末30は存在することなく、降車時の処理もないので(
図11に示す停留所BSc,BSg付近の一点鎖線部分)、シーケンスがシンプルになる。なお、利用者M(Ma,Mb)が所持するICカード50は変更がない。
【0160】
ホスト装置40’は、ハードウェア的には前述のホスト装置40と同様であるものの、運賃収受処理100’は次のように異なる。降車時端末30が存在しないため、例えば、
図3に示す運賃収受処理100に対して、ステップS107の乗降車判定処理と、ステップS150の車載側降車時処理が不要になる。またステップS120の車載側降車時処理の内容が
図5に示す車載側降車時処理に置き換わる。そして、そのステップS151の利用運賃算出処理が不要になる。利用運賃Xは定額であり算出する必要がないからである。またステップS163が「乗車時送信エラーフラグ設定」になり、さらにステップS167が「乗車許容情報出力処理」になる。これらの説明においては「降車」が「乗車」に置き換わる。また、
図6に示す乗車時読取り等処理200(降車時読取り等処理300)は、乗車時読取り等処理200’だけになり、説明においては乗車時の処理だけになる(降車に関するものは必要なくなる)。
【0161】
また、リカバリ処理400’においては、送信エラーフラグは、降車送信エラーフラグがなくなり、乗車時送信エラーフラグだけになるため、
図10に示すリカバリ処理400のステップS409は、乗車送信エラーフラグオフ処理になる。また説明においても、降車に関するものは必要なくなる。
【0162】
サーバ装置60’は、ハードウェア的には前述のサーバ装置60と同様であるものの、運賃決済処理500’は次のように異なる。降車時端末30が存在しないため、例えば、
図7に示す運賃決済処理500に対して、ステップS509の乗降車判定処理と、ステップS550のサーバ側降車時処理が不要になる。またステップS530のサーバ側乗車時処理の内容が
図8(B)に示すサーバ側降車時処理に置き換わる。そして、そのステップS551の利用運賃算出処理が不要になる。利用運賃Xは定額であり算出する必要がないからである。これらの説明においては「降車」が「乗車」に置き換わり、乗車時の処理だけになる(降車に関するものは必要なくなる)。
【0163】
このように車載装置10’(乗車時端末20’、ホスト装置40’)、ICカード50’およびサーバ装置60’を構成することによって「前乗り前払い後降り方式」を採用するバス90’においても、本発明の運賃収受システムや車載装置を適用することが可能になり、上述した運賃収受システム5と同様に以下のように作用および効果が得られる。なお、括弧内の数字や用語が「前乗り前払い後降り方式」を採用するバス90’に本発明の運賃収受システムや車載装置を適用した場合である。
【0164】
以上説明したように本実施形態の運賃収受システム5は、車載装置10(10’)、ICカード50およびサーバ装置60(60’)を含む。サーバ装置60(60’)は、バス90(90’)外に設けられてインターネットNに接続されており、バス90(90’)の利用者Mを識別する識別情報IDと、これに関連付けられた運賃バリューVと、利用者Mが当該システム5の利用登録時にバス90(90’)の事業者に提供した担保金Yの担保金情報CMと、を記憶する。ICカード50は、利用者Mに所持されて識別情報IDおよび担保金情報CMを有する。車載装置10(10’)は、利用運賃情報CFと、ICカード50から読み出された識別情報IDと、を無線通信回線85およびインターネットNを介してサーバ装置60(60’)に送信する。車載装置10(10’)は、サーバ装置60(60’)に対して送信した、(1) 識別情報IDおよび利用運賃情報CFがサーバ装置60(60’)に受信された場合、利用者Mの降車(乗車)を許容する情報MSaを出力する[通信正常時]。そして、サーバ装置60(60’)は、車載装置10(10’)から、(3) 識別情報IDおよび利用運賃情報CFを受信した場合、利用運賃Xに相当するバリューを運賃バリューVから減算し収受する。
【0165】
これに対して、サーバ装置60(60’)に送信した、(2) 識別情報IDおよび/または利用運賃情報CFがサーバ装置60(60’)に受信されない通信障害が発生した場合には、車載装置10(10’)は、利用者Mが所持するICカード50から読み出された担保金情報CMに基づいて次のいずれかを行う[通信障害時]。(2a)利用運賃情報CFから得られる利用運賃Xが担保金Y以下であるときには、利用者Mの降車(乗車)を許容する情報MSaを出力し、かつ、通信障害の解消後、サーバ装置60(60’)に通信障害の発生情報、識別情報IDおよび利用運賃情報CFを送信する。また、(2b)利用運賃情報CFから得られる利用運賃Xが担保金Yを超えるときには、利用者Mに利用運賃Xの現金支払いを要求する情報MSbを出力する。
【0166】
これにより、通信障害が発生して車載装置10(10’)とサーバ装置60(60’)が情報通信を行うことができない事態が生じても(上記(2))、バス90(90’)の利用者Mは、利用運賃Xが担保金Y以下である場合には、利用者Mの降車(乗車)を許容する情報MSaが出力されるので(上記(2a))、運賃後払い方式(運賃前払い方式)の場合には降車(乗車)することが可能になる。利用運賃Xが担保金Yを超えるときには、利用者Mに利用運賃Xの現金支払いを要求する情報MSbが出力されるので(上記(2b))、当該利用者Mは利用運賃Xを現金で支払うことにより乗車したり降車したりすることが可能になる。
【0167】
そして、車載装置10(10’)が上記(2a)を行い、サーバ装置60(60’)が、(4) 通信障害情報FC、識別情報IDおよび利用運賃情報CFを受信した場合において、(4a)利用運賃情報CFに基づく利用運賃Xが運賃バリューV以下であるときには、運賃バリューVから利用運賃Xに相当するバリューを減算する。また、(4b)利用運賃情報CFに基づく利用運賃Xが運賃バリューVを超えるときには、運賃バリューVを超える超過分を担保金情報CMに基づく担保金Yの範囲内で負債バリューWとして記憶するとともに運賃バリューVをゼロまたは無価値に変更し、かつ、その後、識別情報IDに関連付けられた運賃バリューVを用いた利用運賃Xの収受を停止する。
【0168】
これにより、バス90(90’)の事業者は、サーバ装置60(60’)が通信障害情報FC、識別情報IDおよび利用運賃情報CFを車載装置10(10’)から受信した場合においては(上記(4))、利用運賃Xが運賃バリューV以下であるときには、運賃バリューVから利用運賃Xに相当するバリューが減算されるので(上記(4a))、事後的に利用運賃Xを運賃バリューVから回収することが可能になる。利用運賃Xが運賃バリューVを超えるときには、運賃バリューVを超える超過分は担保金Yの範囲内で負債バリューWとしてサーバ装置60(60’)に記憶されるとともに運賃バリューVはゼロまたは無価値に変更され(上記(4b))、その後、当該運賃バリューVを用いた利用運賃Xの収受が停止される(上記(4b))。負債バリューWは、運賃バリューVを超える超過分であり担保金Yの範囲内で当該事業者が立て替える「立替えバリュー」でもある。そのため、当該超過分を担保金Yの範囲内で当該事業者は負債バリューWの支払い債権を得ることが可能になり、利用者Mには当該超過分の返済義務を負わせることが可能になる。また利用者Mは、当該運賃バリューVを用いた利用運賃Xの支払いができなくなるため、ICカード50を用いた当該バス90(90’)の利用ができなくなる。例えば、利用者Mが当該システム5の登録時に事業者に提供した担保金Yから、当該システム5の解約時に当該超過分を差し引いて返金することにより、当該超過分の返済義務(債務)を当該利用者Mに履行させることが可能になる。したがって、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行うことができる。
【0169】
また、本実施形態の車載装置10(10’)は、バス90(90’)の利用者Mから利用運賃Xを収受する運賃収受システム5に用いられる。当該システム5は、バス90(90’)外に設けられてインターネットNに接続されており利用者Mを識別する識別情報IDとこの識別情報IDに関連付けられた運賃バリューVと利用者Mが当該システム5の利用登録時にバス90(90’)の事業者に提供した担保金Yの担保金情報CMとを記憶するサーバ装置60(60’)と、利用者Mに所持されて識別情報IDおよび担保金情報CMを有するICカード50と、を含む。車載装置10(10’)は、利用運賃情報CFとICカード50から読み出された識別情報IDとを無線通信回線85およびインターネットNを介してサーバ装置60(60’)に送信する。
【0170】
そして、車載装置10(10’)は、(1) 識別情報IDおよび利用運賃情報CFがサーバ装置60(60’)に受信された場合、利用者Mの降車(乗車)を許容する情報MSaを出力する[通信正常時]。また、(2) 識別情報IDおよび/または利用運賃情報CFがサーバ装置60(60’)に受信されない通信障害が発生した場合、ICカード50から読み出された担保金情報CMに基づいて次のいずれかを行う[通信障害時]。(2a)利用運賃情報CFから得られる利用運賃Xが担保金Y以下であるときには、利用者Mの降車(乗車)を許容する情報MSaを出力し、かつ、通信障害の解消後、サーバ装置60(60’)に通信障害情報FC、識別情報IDおよび利用運賃情報CFを送信する。また、(2b)利用運賃情報CFから得られる利用運賃Xが担保金Yを超えるときには、利用者Mに利用運賃Xの現金支払いを要求する情報MSbを出力する。
【0171】
これにより、通信障害が発生して車載装置10(10’)とサーバ装置60(60’)が情報通信を行うことができない事態が生じても(上記(2))、バス90(90’)の利用者Mは、利用運賃Xが担保金Y以下である場合には、利用者Mの乗車や降車を許容する情報MSaを出力されるので(上記(2a))、運賃前払い方式の場合に乗車することが可能になり、また運賃後払い方式の場合には降車することが可能になる。そして、通信障害の解消後、車載装置10(10’)からサーバ装置60(60’)に対して、通信障害情報FC、識別情報IDおよび利用運賃情報CFが送信されるので、サーバ装置60(60’)は、通信障害情報FCと、その通信障害により当該サーバ装置60(60’)が受信することができなかった識別情報IDおよび利用運賃情報CFとを、得ることが可能になる。例えば、バス90(90’)の事業者は、これらの情報に基づいて、事後的に利用運賃Xを運賃バリューVから回収したり、利用運賃Xが運賃バリューVを超えるときにはその超過分を担保金Yの範囲内で負債バリューWの支払い債権を得たり、することが可能になる。これに対して、利用運賃Xが担保金Yを超えるときには、利用者Mに利用運賃Xの現金支払いを要求する情報MSbが出力されるので(上記(2b))、当該利用者Mは利用運賃Xを現金で支払うことにより降車したり(乗車したり)することが可能になる。したがって、通信障害が生じた場合においても運賃収受を行うことができる。
【0172】
担保金Yの金額は、本運賃収受システム5の利用登録時において、利用者Mが任意に設定することが可能である。そのため、上述した無線通信回線85による通信障害の発生が一時的なものであり発生頻度が運賃収受システム5の構成上、低いことが想定される場合、例えば、通勤や通学でバス90を日常的に利用する利用者Mは、その往復の利用で必要になる往復利用運賃(片道利用運賃の2倍)を担保金Yとしてバス90の運営事業者に提供することによって、当該利用者Mが負担する担保金Yの額を最小限に抑えることができる。また、例えば、日常的にキャッシュレス決済を利用しており現金を通常所持していない利用者Mは、不測の事態に備えて必要であると想定する任意の金額を担保金Yとしてバス90の運営事業者に提供することによって、通信障害が発生してもキャッシュレスで当該バス90に乗車したり降車したりすることができる。さらに、例えば、日常的に現金決済を利用している利用者Mは、バス90の運営事業者が求める最小金額を担保金Yとして提供することによって、通信障害の発生の有無にかかわらず常に現金支払いで当該バス90に乗車したり降車したりすることができる。
【0173】
なお、上述した実施形態では、車載装置10(10’)を構成する降車時端末30(乗車時端末20’)を運賃箱に隣接して設けるとともに、車載装置10(10’)を構成するホスト装置40(40’)の機能を運賃箱に担わせる構成を例示して説明したが、本発明の車載装置はこのような構成に限られない。例えば、読取りユニット33(23)や表示ユニット35(25)にそれぞれ相当するものが運賃箱に設けられている場合には、当該運賃箱に降車時端末30(乗車時端末20’)およびホスト装置40(40’)の機能を担わせるように構成してもよい。この場合には、降車時端末30(乗車時端末20’)の有線通信ユニット37(27)は不要になる。
【0174】
また、上述した実施形態では、情報担持媒体としてICカード50を用いて運賃収受システムを構成する場合を例示して説明したが、本発明の運賃収受システムは、識別情報および担保金情報を担持可能または記憶可能な情報媒体であれば、このような構成に限られない。例えば、二次元コード(QRコード(登録商標)、PDF417等)や一次元コード(JANコード、CODE39等)を印刷した紙等の情報印刷媒体、これらのコードを画面表示可能な携帯情報端末装置(スマートフォン、携帯電話機等)等の情報表示媒体、識別情報IDおよび担保金情報CMを記録している磁気カード、接触式タイプのICカード、RFIDやICカード50の機能を備える携帯情報端末装置(スマートフォン、携帯電話機等等)等の情報記憶媒体でもよい。
【0175】
また、上述した実施形態では、担保金情報は、情報担持媒体としてのICカード50が有する場合を例示して説明したが、例えば、車載装置10を構成するホスト装置40(40’)のメモリ43に担保金情報CMを記憶させたり保持させたりするように構成してもよい。また、ICカード50とホスト装置40(40’)のメモリ43の両方に担保金情報CMを保持させるように構成してもよい。これにより、ICカード50に代えて担保金情報CMがホスト装置40(40’)のメモリ43に記憶されている場合には、ICカード50は担保金情報CMを保持する必要がないので、例えば、保持可能な情報が少ない一次元バーコードを用いて識別情報IDを表示させることが可能になる。また、担保金情報CMはホスト装置40(40’)に保持されるので、担保金情報CMの改ざんを防止することも可能になる。また、ICカード50に加えてホスト装置40(40’)のメモリ43にも記憶されている場合には、これらの両方に担保金情報CMが記憶されて、担保金情報CMの記憶を冗長構成にするので、いずれか一方の担保金情報CMが壊れた場合においても残りの他方の担保金情報CMを用いることが可能になる。
【0176】
また、上述した実施形態では、乗車時端末20(20’)および降車時端末30の読取りユニット23,33として、非接触式タイプのICカードリーダで構成する場合を例示して説明したが、情報担持媒体が有する識別情報および担保金情報を読み取り可能な装置であれば、情報担持媒体に担持された情報の読み取り方式(光学式、磁気式、電磁波式等)に合わせて、例えば、光学式コードリーダや磁気カードリーダ、RFIDリーダ等でもよい。
【0177】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0178】
5…運賃収受システム
10,10’…車載装置
15…有線通信回線
20,20’…乗車時端末
30…降車時端末
40,40’…ホスト装置
50…ICカード(情報担持媒体)
60,60’…サーバ装置
80…基地局
85…無線通信回線
90,90’…バス(交通機関の車両)
91…乗車口
93…降車口
100,100’…運賃収受処理
200,200’…乗車時読取り等処理
300…降車時読取り等処理
400,400’…リカバリ処理
500,500’…運賃決済処理
BS,BSa,BSc,BSd,BSg,BSz…停留所
CF…利用運賃情報
CM…担保金情報
FC…通信障害情報
ID,IDa,IDb…識別情報
M,Ma,Mb…利用者
MS,MSa,MSb…情報
N…インターネット
RX,RXa,RXb,RXc,RXe…受信データ
TX,TXa,TXb,TXc,TXd,TXe…送信データ
V…運賃バリュー
W…負債バリュー
X…利用運賃
Y…担保金