(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158830
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】環境認識装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01B11/30 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074388
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
(72)【発明者】
【氏名】永崎 健
(72)【発明者】
【氏名】的野 春樹
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065CC40
2F065DD04
2F065FF01
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM06
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】高精度にスピードバンプなどの凹凸部を検出することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載される環境認識装置(1)であって、カメラ(2)で撮像した画像を取得する画像取得部(100)と、前記画像に基づいて走行路の境界に位置する立体物を認識する走行環境認識部(101)と、前記立体物の高さを奥行方向に算出し、算出した高さ変化から走行路の路面の凹凸部を検出する凹凸検出部(102)とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される環境認識装置であって、
カメラで撮像した画像を取得する画像取得部と、
前記画像に基づいて走行路の境界に位置する立体物を認識する走行環境認識部と、
前記立体物の高さを奥行方向に算出し、算出した高さ変化から前記走行路の路面の凹凸部を検出する凹凸検出部と
を備えることを特徴とする環境認識装置。
【請求項2】
前記凹凸検出部は、
前記高さとして画像上におけるピクセル数を算出し、奥行方向に算出された前記高さに対して曲線を当てはめ、前記曲線から乖離している地点を凹凸部として検出することを特徴とする請求項1に記載の環境認識装置。
【請求項3】
周辺環境の3次元情報を取得する3次元情報取得部をさらに備え、
前記凹凸検出部は、前記高さとして前記立体物の3次元高さを奥行方向に算出し、各奥行方向の3次元高さから前記立体物の基準高さを決定し、前記基準高さと乖離している地点を凹凸部として検出することを特徴とする請求項1に記載の環境認識装置。
【請求項4】
前記車両から前記凹凸部までの距離を計測する凹凸距離計測部をさらに備え、
前記凹凸距離計測部は、前記立体物から取得された距離を前記車両から前記凹凸部までの距離とすることを特徴とする請求項3に記載の環境認識装置。
【請求項5】
前記立体物の過去のテクスチャを記憶し、現在のテクスチャと前記過去のテクスチャを比較し、前記現在と過去のテクスチャが乖離した場合、前記凹凸検出部による前記凹凸部の検出を実行しないと判定する検出判定部を有することを特徴とする、請求項1に記載の環境認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度超過を抑制するため、路面にスピードバンプなどの構造物が設置されている。一方、設置されているスピードバンプに気づかず、高車速域で車両がスピードバンプを通過した際、ドライバに強い衝撃が及ぶ。そのため、予防安全機能を用いてスピードバンプを認識し、車両の減速やサスペンション制御などを実現することに期待が寄せられている。特許文献1では、ステレオカメラを利用したスピードバンプ検出の方法が開示されている。特許文献1には、ステレオカメラの視差を解析し、路面の凹凸部を検出することでスピードバンプを検出する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1におけるスピードバンプの検出手法は路面の視差を利用したものである。一般に、路面の視差は遠方で精度が低下することや、夜間ではボケなどのノイズにより視差の算出自体が困難であることが知られている。そのため、路面の視差の精度が低下した場合においても、高精度にスピードバンプなどの凹凸部を検出することが課題となる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度にスピードバンプなどの凹凸部を検出する環境認識装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の環境認識装置は、
車両に搭載される環境認識装置であって、
カメラで撮像した画像を取得する画像取得部と、
前記画像に基づいて走行路の境界に位置する立体物を認識する走行環境認識部と、
前記立体物の高さを奥行方向に算出し、算出した高さ変化から前記走行路の路面の凹凸部を検出する凹凸検出部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高精度にスピードバンプなどの凹凸部を検出することができる。
【0007】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の環境認識装置の構成を示す機能ブロック図。
【
図3】
図3は、第1実施形態における車両周囲の環境を示す図。
【
図4】
図3に対する走行環境識別処理の結果を示す図。
【
図5】縁石領域の各y座標を奥行zに変換する方法を説明する概念図。
【
図6】第1実施形態における縁石の高さと、曲線フィッティング処理を説明する図。
【
図9】変形例の内容を説明するための
図6の対応図。
【
図10】第2実施形態の環境認識装置の構成を示す機能ブロック図。
【
図12】第2実施形態における縁石の3次元高さの計測結果と基準高さを説明する図。
【
図13】第2実施形態における凹凸の距離計算方法を説明する図。
【
図14】第3実施形態の環境認識装置の構成を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の環境認識装置1の構成を示す機能ブロックである。
環境認識装置1は、コンピュータ、メモリおよび記憶装置などを有する車載ECUによって構成されている。環境認識装置1には、1台のカメラ2が接続されている。カメラ2は、いわゆる単眼カメラであり、例えば車両の車室内に配置されてフロントウインドウを通して車両前方を撮像する構成を有している。環境認識装置1は、本実施形態ではカメラ2の筐体内に配置された構成を有しているが、カメラ2と別体に設けられた構成としてもよい。
【0011】
環境認識装置1は、コンピュータのメモリ等に格納された制御プログラムを実行することにより各種機能部として動作する。環境認識装置1は、
図1に示すように、コンピュータの動作により実現される機能部として、画像取得部100、走行環境認識部101、及び凹凸検出部102を有している。
【0012】
画像取得部100は、カメラ2で撮像された画像を取得する。カメラ2は、一定の時間間隔で画像を撮像するため、画像取得部100では各時刻における画像を取得する。
【0013】
走行環境認識部101では、画像取得部100で取得した画像を入力として、走行環境の認識を実行する。走行環境認識部101は、画像に基づいて走行路300の側方の境界に位置する立体物を認識する。具体的には、画像に撮像された各ピクセルに対して、走行路、歩道、縁石やガードレールなどの立体物、などの種別を特定する。認識には、畳み込みニューラルネットワークを利用することできる。また、ランダムフォレストのような機械学習アルゴリズムを利用して各ピクセルの種別を特定してもよい。
【0014】
凹凸検出部102は、走行環境認識部101の認識結果をもとにスピードバンプを含む路面の凹凸部を検出する。凹凸検出部102は、高さとして画像上におけるピクセル数を算出し、奥行方向に算出された高さに対して曲線を当てはめ、曲線から乖離している地点を凹凸部として検出する。具体的には、走行環境認識部101が特定した領域のうち、走行路に接する立体物(縁石やガードレールなど)の高さを算出し、その立体物と走行路300との間の高さの変化に基づいて路面の凹凸部を検出する。凹凸検出部102は、高さ算出部103と、高さ変化検出部104を有する。
【0015】
以降では、
図2のフローチャートを参照し、本実施形態の環境認識装置1の動作例を詳細に説明する。
【0016】
図2は、第1実施形態における処理フロー図、
図3は、第1実施形態における車両周囲の環境を示す図であり、
図3(1)は、車両前方にスピードバンプが存在する状態を模式的に示す平面図、
図3(2)は、画像取得部100によって取得された画像を模式的に示す図である。
【0017】
図3(1)には、車両3が走行する走行路300の路面と、その前方の路面に凹凸部であるスピードバンプ303が配置された状況が示されている。車両3に搭載されたカメラ2では、
図3(2)に示す画像311が撮像されているものとする。画像311には、走行路300、歩道301、縁石302、スピードバンプ303が撮像されている。
【0018】
走行路300の路肩には、縁石302が配置されており、その縁石302を介して走行路300から一段高い位置に歩道301が設けられている。縁石302は、走行路300の歩道301側の端部(以下、境界位置304という)において路面からほぼ垂直に立ち上がり、上端で歩道301側に向かって折れ曲がり、歩道301の上面に連続する段差を形成している。
【0019】
スピードバンプ303は、車両3が低速で通過可能な高さを有しており、走行路300の路面において路幅方向全幅に亘って延在するように凸条に設けられている。スピードバンプ303の歩道301側の端部は、縁石302に接している。走行路300と縁石302との間の境界位置304は、歩道301の上面との間に一定の間隔をおいて画像311の奥行方向に連続して線状に延びており、スピードバンプ303が存在する箇所において歩道301の上面との間隔が狭くなるように、つまり、歩道301の上面側に接近するようにその高さが変化している。
【0020】
環境認識装置1は、
図2に示すように、画像取得処理P101、走行環境識別処理P102、立体物高さ計算処理P103、曲線フィッティング処理P104、凹凸判定処理P105を順に実行する。
【0021】
画像取得処理P101は、画像取得部100によって行われる。画像取得処理P101では、カメラ2で撮像された画像の取得が行われる。
【0022】
走行環境識別処理P102は、走行環境認識部101によって行われる。走行環境識別処理P102では、カメラ2から取得した画像に対して、畳み込みニューラルネットワークを利用し、公知のセマンティックセグメンテーションを実行する。畳み込みニューラルネットワークの出力を
図4(1)、
図4(2)に示す。
【0023】
図4は、走行環境識別処理の結果を示す図であり、
図4(1)は、
図3(2)の画像に対する畳み込みニューラルネットワークの出力を示し、
図4(2)は、
図4(1)の要部A2を拡大して示す図である。畳み込みニューラルネットワークでは、画像311の各ピクセルに対して識別処理を実行し、
図4(1)に示すように、識別処理後の画像411において、歩道領域401、縁石領域402、路面領域400を認識する。
【0024】
立体物高さ計算処理P103は、凹凸検出部102の高さ算出部103によって行われる。立体物高さ計算処理P103では、走行路300の路面に接する立体物である縁石302の走行路300からの高さを計算する。この縁石302の走行路300からの高さは、具体的には、路面領域400からの縁石領域402のピクセル高さhになる(
図4(2)のh1、h2、h3)。走行路300の路面にスピードバンプ303が存在している場合には、縁石302の高さは、スピードバンプ303の上面からの高さになる。
【0025】
立体物高さ計算処理P103では、車両3から前方に離れる方向である各奥行方向における画像上の縁石302の高さを計算する。縁石領域402の各y座標(画像411の上下方向)において、縁石領域402の下端と上端の画像位置から画像上の高さ(ピクセル高さ)hを計算する(図中の矢印)。
図4(2)には、y1~y3の座標位置において縁石領域402の下端から上端までの画像上の高さh1、h2、h3を計算する例が示されている。
【0026】
その後、縁石領域402の各y座標を奥行zに変換する。
図5は、縁石領域の各y座標を奥行zに変換する方法を説明する概念図である。
カメラ2の接地高さをcamhとし、画像411における各y座標の視線と鉛直方向のなす角度をθ(y)とした場合、z=camh/tan(θ(y))より、縁石領域の各y座標を、奥行zに変更できる。
【0027】
図6は、第1実施形態における縁石の高さと、曲線フィッティング処理を説明する図である。
図6では、奥行zにおける画像上の高さhの例を示しており、
図6(1)のグラフにおいて横軸は奥行zであり、縦軸は画像上の高さhを示している。立体物高さ計算処理P103では、以上の処理を実行し、
図6(1)に示すように、各奥行zにおける画像上の高さhを取得する。
【0028】
曲線フィッティング処理P104と凹凸判定処理P105は、凹凸検出部102の高さ変化検出部104によって行われる。曲線フィッティング処理P104では、立体物高さ計算処理P103が計算した結果に対して、曲線の当てはめを実行する。
【0029】
実行結果を
図6(2)に示す。曲線をh=α×(1/z)とパラメータ化し、各奥行zに対する縁石領域402の画像上の高さhと最も当てはまるパラメータαを推定する。パラメータαの推定には、公知のRANSAC(Random Sample Consensus)を利用する。RANSACを利用することで、外れ値を取り除いた上でパラメータを推定することができる。
【0030】
凹凸判定処理P105では、曲線フィッティング処理P104で推定した曲線と立体物高さ計算処理P103で計算した画像上の縁石領域402の高さ情報を利用して走行路300の凹凸部を検出する。
【0031】
図7は、路面の凹凸部を検出する処理フロー図である。
はじめに、対象の奥行zに対して、誤差abs(α/z-h(z))を計算する(F102)。ここで、αは曲線フィッティング処理P104で求めたパラメータであり、h(z)は立体物高さ計算処理P103で計算した縁石領域402の高さ(高さ計算値)である。この誤差は、曲線と縁石高さとの誤差を示している。
【0032】
次に、この誤差を閾値(例えば、10)と比較する(F103)。誤差の値が閾値以上であった場合、スピードバンプ303が存在する可能性が高いと判断し、検出カウントを1だけ加算する(F104)。また、誤差が閾値よりも小さい場合、検出カウントを0としてリセット(F105)し、次の奥行zにおける縁石高さの誤差計算に処理を移す(F101)。
【0033】
F106では、検出カウントを閾値(例えば、3)と比較する。検出カウントが閾値以上であった場合はスピードバンプ303が検出されたとみなし、以降の処理F107を実行し、閾値未満であった場合には次の奥行zにおける縁石高さの誤差計算に処理を移す(F101)。F107では、凹凸の検出位置として、画像座標を記憶する。このように、凹凸判定処理P105では、縁石領域402の画像上の高さが、
図6(2)に示すδ1、δ2のように、縁石領域402の高さをモデル化した曲線と複数回連続して乖離した場合に、かかる位置にスピードバンプ303が存在すると判断する。
【0034】
以上より、本実施形態の環境認識装置1は、走行路300の路面と接する縁石302などの立体物と走行路との間の高さの変化に基づいてスピードバンプ303を検出する。本実施形態の環境認識装置1では、視差を利用していないため、視差が算出できないような夜間などにおいても、スピードバンプ303を高精度に検出することができる。
【0035】
また、本実施形態の環境認識装置1は、カメラ2として単眼カメラを想定しており、縁石302などの立体物の画像上の高さ変化に基づいてスピードバンプ303を検出する。他の3次元センサを利用せずに単眼カメラのみでスピードバンプ303を検出することができるため、センサにかかる費用を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態の環境認識装置1では、縁石302などの立体物の上端と走行路との間の高さ変化に基づいてスピードバンプ303などの凹凸を検出する場合について説明したが、一方で、実環境においては、縁石302などの立体物の下端は検出できたものの、上端を検出できないようなケースも存在する。そのような場合においては、
図5に示したように縁石302の上端と走行路300と間の高さ変化に基づいて縁石302を検出するのではなく、
図8に示すように、縁石302の下端の位置(境界位置304)に基づいてスピードバンプ303などの凹凸を検出することができる。
【0037】
図8は、走行環境識別処理P102の結果を示す図であり、
図8(1)は、
図3(2)の画像に対する畳み込みニューラルネットワークの出力を示し、
図8(2)は、
図8(1)の要部A2を拡大して示す図である。
図9は、変形例の内容を説明するための
図6の対応図である。
【0038】
本変形例では、縁石領域402の下端位置に沿って直線405を当てはめる(
図8(2)を参照)。この際、RANSACを利用して、縁石領域402のうち、スピードバンプ303に接していない部分をモデル化する。そして、モデル化した直線405に対して縁石領域402の下端(境界位置404)までの画像上の高さhを奥行方向の各奥行zについて取得する(
図9(1)を参照)。そして、画像上の高さhが一定値以上(δ)となる凹凸部候補が複数集合した、上に凸な領域を検出する(
図9(2)を参照)。この領域を、スピードバンプ303として検出する。これにより、縁石302などの立体物の上端を計測できないようなケースにおいても、スピードバンプ303などの凹凸部を検出することができる。
【0039】
本実施形態の環境認識装置1によれば、凹凸部の存在を検出するとともに凹凸部までの距離を把握することができる。したがって、この凹凸部までの距離情報を用いて、車速を制御して凹凸部の手前で減速させる、或いは、車両サスペンションを制御して凹凸部を乗り越える際の衝撃を緩和するなどの車両制御を行うことができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態の環境認識装置1Aの構成を示す機能ブロックである。
【0041】
第2実施形態の構成では、環境認識装置1Aにステレオカメラとして2台のカメラ2A、2Bが接続される。以降では、第1実施形態と機能的に違いのあるブロックと第2実施形態で新しく追加されたブロックに絞り説明する。
【0042】
画像取得部100では、左右一対となる2台のカメラ2A、2Bで同時刻に車両から前方が撮像された2枚の画像を取得する。3次元情報取得部203では、画像取得部100で取得した2枚の画像を利用して、周辺環境の3次元情報を取得する。具体的には、公知のステレオマッチング手法を利用し、3次元情報を計算することができる。
【0043】
走行環境認識部101では、第1実施形態の構成と同様にピクセル毎に種別を特定し、走行環境中の立体物を含めたラベルを推定しても良いし、3次元情報取得部203で取得した距離情報を利用して、地面に対して垂直方向に立つ立体物の領域を特定してもよい。
【0044】
凹凸距離計測部204では、車両3から凹凸検出部102で検出した凹凸部までの距離を計測する。具体的には、検出した際の奥行情報を利用して、凹凸部までの距離を確定してもよいし、凹凸部に接する箇所に位置する縁石やガードレールなどの立体物までの距離を凹凸部までの距離とすることができる。
【0045】
以降では、
図11のフローチャートを参照し、本実施形態の環境認識装置1Aの動作例を説明する。カメラ2A、2Bには
図3で示すシーンが撮像されているものとする。
図2に示した第1実施形態のフローチャートと処理内容に違いのある処理は、3次元情報取得処理P201、立体物高さ計算処理P202、基準高さ算出処理P203、凹凸判定処理P204、凹凸距離計測処理P205であるため、以降ではこれら処理について説明する。
【0046】
3次元情報取得処理P201は、3次元情報取得部203によって行われる。3次元情報取得処理P201では、カメラ2A、2Bで取得した左右の画像を利用してステレオマッチングを実行する。ステレオマッチングを実行することで、画像の各ピクセルに対して視差dを計算する。そして、計算した視差dを利用して、立体物までの距離z=f*B/(w*d)を計算する。ここで、fはカメラの焦点距離であり、Bはステレオカメラの基線長、wは1画素の実サイズである。
【0047】
立体物高さ計算処理P202および基準高さ算出処理P203は、凹凸検出部102の高さ算出部103によって行われる。立体物高さ計算処理P202では、走行環境識別処理P102で認識した縁石302の3次元高さhを計算する。縁石の3次元高さhは、h=(w*hi*z)/fの式を用いて計算できる。ここで、hiは縁石302の画像上の高さであり、zは3次元情報取得処理P201で計算した距離である。この計算を縁石302の各ピクセルに対して実行することで、
図12(1)に示すように、横軸z、縦軸hの波形データを生成する。
【0048】
基準高さ算出処理P203では、縁石302の各3次元高さを利用して、縁石302の高さを確定する。基準高さ算出処理P203は、高さとして立体物の3次元高さを奥行方向に算出し、各奥行方向の3次元高さから立体物の基準高さを決定する。具体的には、縁石302から取得した3次元高さの中央値を基準高さとする。基準高さの概念を
図12(2)に示す。
【0049】
凹凸判定処理P204は、凹凸検出部102の高さ変化検出部104によって行われる。凹凸判定処理P204では、基準高さの情報と、縁石302の各3次元高さを利用して、凹凸部を検出する。具体的には、対象の縁石302までの距離がzである場合、基準高さh’と縁石302の3次元高さh(z)との差abs(h’-h(z))を計算し、その値が閾値以上(例えば、10cm)であるか否かを判定する。閾値以上であった場合には、凹凸部の候補とする。その後、その次の距離z’に対しても同様に、abs(h’-h(z’))を計算し、閾値以上であるか否かを判定する。そして、距離z’でも同様に高さ同士の差が閾値以上であった場合に、その地点に凹凸部があると確定する。
【0050】
凹凸距離計測処理P205は、凹凸距離計測部204によって行われる。凹凸距離計測処理P205では、車両3から凹凸部までの距離を確定する。凹凸判定処理P204において、上で述べたように、距離zと距離z’(z’>z)とで高さの差分が閾値以上であった場合、より自車両の近い距離である距離zを車両3から凹凸部までの距離とする。
【0051】
以上より、本実施形態の環境認識装置1Aは、縁石302の3次元高さを計算し、その3次元高さが縁石302の基準となる高さと乖離している地点に凹凸部があると判断する。一般に、縁石302の3次元高さは奥行方向に一定であるため、測定した縁石302の各3次元高さの中央値を取得するだけで縁石302の基準となる高さを計算でき、曲線フィッティング処理などの処理負荷の高い計算を用いることなく凹凸部を検出することができる。
【0052】
本実施形態の環境認識装置1Aによれば、凹凸部を検出するとともに凹凸部までの距離を把握することができる。したがって、この凹凸部までの距離情報を用いて、車速を制御して凹凸部の手前で減速させる、或いは、車両サスペンションを制御して凹凸部を乗り越える際の衝撃を緩和するなどの車両制御を行うことができる。
【0053】
以上の第2実施形態の凹凸距離計測処理P205では、凹凸判定処理P204で凹凸部が存在すると判定された距離zを利用して凹凸部の距離を確定したが、
図13に示す縁石領域402を上方向に探索し(図中の矢印方向)、その縁石領域402における距離の中央値を凹凸部までの距離とすることができる。こうすることで、複数の距離情報を利用して凹凸部の距離を確定できることから、距離の精度を向上することができる。
【0054】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態の環境認識装置1Bの構成を示す機能ブロックである。第3実施形態の環境認識装置1Bは、第1実施形態の構成と同じく、1台のカメラ2が接続されている構成を有している。第1実施形態との違いは、環境認識装置1Bが検出判定部305を備えている点である。
【0055】
検出判定部305では、立体物のテクスチャに基づき凹凸部の検出を実行するか否かを判定する。具体的には、過去に取得した立体物のテクスチャと現在フレームにおける立体物のテクスチャを比較し、テクスチャが類似していれば凹凸部の検出を実行する。
【0056】
以降では、
図15のフローチャートを参照し、本実施形態の環境認識装置1Bの動作例を説明する。
図2に示した第1実施形態のフローチャートとの違いは、立体物テクスチャ取得処理P300、立体物テクスチャ比較処理P301、及び判定処理P302であるため、以降ではこれら処理について説明する。
【0057】
立体物テクスチャ取得処理P300では、毎フレーム立体物(縁石など)のテクスチャをテンプレートとして取得し、テンプレートとして記憶領域に保存する。
【0058】
立体物テクスチャ比較処理P301では、過去に取得した立体物のテンプレートを、現在フレームの立体物領域上に対して走査する。そして、類似度が最も高い領域を特定する。その類似度を閾値(例えば0.5)と比較し、閾値以上の場合には以降の立体物高さ計算処理P103に処理を移す。一方で、類似度が閾値未満の場合には、今回フレームにおいて凹凸部の検出を実行しない。
【0059】
以上より、本実施形態の環境認識装置1Bは、現在と過去の立体物(縁石など)のテクスチャを比較し、そのテクスチャ同士が類似している場合においては、今回フレームにおいて凹凸部を検出し、類似していない場合においては、今回フレームにおいて凹凸部の検出を実行しない。これにより、走行路300と縁石302の境界に小さな落下物などが存在し、それら落下物の影響により、本来は走行路300の路面上にスピードバンプ303などの凹凸部が存在していないにも関わらず、路面上に凹凸部が存在すると誤って判断してしまうことを、検出処理を実行しないことで、低減することができる。
【0060】
その他の実施形態として、上記の第1実施形態から第3実施形態の構成に加えて、地図データと連携する構成としてもよい。具体的には、一度認識した凹凸部の位置を地図上に登録しておき、次回の走行時において、地図上に登録された凹凸部周辺を走行した場合、
図2や
図11の凹凸判定処理における閾値を緩和する。これまで説明した実施形態では、連続して凹凸部候補が存在していた場合に凹凸部の存在を確定していたが、閾値の緩和として、1度凹凸部候補が存在すると判定された場合において、凹凸部の存在を確定することができる。これにより、地図上に凹凸部が存在する場合において、凹凸部の検出に対する応答性を高めたり、未検知を防止することができる。
【0061】
また、本発明に係る環境認識装置は、走行路300の路面の凹凸部として、スピードバンプ以外にも適用できるものである。具体的には、ポットホールのような路面のへこみなど、下に凹なものに対しても適用できる。
【0062】
また、本発明に係る環境認識装置は、車載カメラから見た際の水平面に該当する路面上の物体を検出するために、それと接する立体物などの垂直面の情報を利用するもの、と一般化することができる。そのため、本発明では、上記以外の構造物などの検出にも適用できるものである。
【0063】
以上、第1実施形態から第3実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記した各実施形態の構成に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当事者が理解し得る様々な変更を加えることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B・・・環境認識装置、2、2A、2B・・・カメラ、3・・・車両、100・・・画像取得部、101・・・走行環境認識部、102・・・凹凸検出部、103・・・算出部、104・・・変化検出部、203・・・3次元情報取得部、204・・・凹凸距離計測部、300・・・走行路、301・・・歩道、302・・・縁石、303・・・スピードバンプ(凹凸部)、304・・・境界位置、305・・・検出判定部、311・・・画像、400・・・路面領域、401・・・歩道領域、402・・・縁石領域