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特開2024-158842電池システムおよび電池システムの異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158842
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電池システムおよび電池システムの異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241031BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241031BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/0562
H01M50/342 201
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074406
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 英輝
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 浩
(72)【発明者】
【氏名】小熊 泰正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】内田 義宏
【テーマコード(参考)】
5H012
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5H012AA03
5H012BB18
5H012CC10
5H029AJ12
5H029AK02
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF32
5H030FF61
(57)【要約】
【課題】全固体電池からの硫化水素の発生を速やかに検知することが可能な電池システムを提供する。
【解決手段】電池システム100は、全固体電池セル221が密閉された複数のパック222を備える。電池システム100(ECU150)は、複数のパック222の各々の内圧の変化に起因する複数のパック222の各々の変形を検知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池セルが密閉された少なくとも1つのパックと、
前記少なくとも1つのパックの内圧の変化に起因する前記少なくとも1つのパックの変形を検知する検知部と、を備える、電池システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパックは、複数のパックを含み、
前記検知部は、前記複数のパックの各々の変形を検知する、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記検知部は、前記少なくとも1つのパックと非接触状態で、前記少なくとも1つのパックの変形を検知する、請求項1または2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記検知部は、
撮像部を含み、
前記撮像部により撮像された前記少なくとも1つのパックの画像に基づいて、前記少なくとも1つのパックの変形を検知する、請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパックは、前記内圧が所定値以上になった場合にガスを排出する排出弁を含み、
前記検知部は、前記排出弁が開弁していることを示す前記画像に基づいて、前記少なくとも1つのパックの変形を検知する、請求項4に記載の電池システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパックは、所定の方向に並ぶ複数のパックを含み、
前記撮像部は、前記所定の方向に沿って移動可能に構成されている、請求項4に記載の電池システム。
【請求項7】
前記検知部は、歪みゲージを含み、
前記歪みゲージは、前記少なくとも1つのパックのうち、前記内圧の変化に起因して変形する部分に接触状態で取り付けられている、請求項1または2に記載の電池システム。
【請求項8】
前記検知部は、圧力センサを含み、
前記圧力センサは、前記少なくとも1つのパックのうち、前記内圧の変化に起因して変形する部分に設けられている、請求項1または2に記載の電池システム。
【請求項9】
全固体電池セルを備える電池システムの異常検知方法であって、
前記全固体電池セルが密閉されたパックを準備する工程と、
前記パックの内圧の変化に起因する前記パックの変形を検知する工程と、を備える、電池システムの異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムおよび電池システムの異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-046077号公報(特許文献1)には、バッテリケース内の全固体電池から発生した硫化水素の濃度等を、バッテリケース内に配置されたセンサにより検知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-046077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、バッテリケース内に硫化水素が一定以上流出しなければ、硫化水素の発生を検知することが困難である。これに対し、全固体電池からの硫化水素等のガスの発生を速やかに検知することが可能なシステムが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全固体電池からのガスの発生を速やかに検知することが可能な電池システムおよび電池システムの異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係る電池システムは、全固体電池セルが密閉された少なくとも1つのパックと、上記少なくとも1つのパックの内圧の変化に起因する上記少なくとも1つのパックの変形を検知する検知部と、を備える。
【0007】
本開示の第1の局面に係る電池システムでは、上記のように、パックの内圧の変化に起因するパックの変形が検知される。これにより、たとえば、パックに比べて容量が十分に大きいバッテリケースにおける硫化水素の濃度等に基づいて硫化水素の発生を検知する場合に比べて、ガスの発生量が少量でも、ガスの発生を容易に検知することができる。その結果、全固体電池セルからのガスの発生を速やかに検知することができる。
【0008】
上記第1の局面に係る電池システムにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つのパックは、複数のパックを含む。検知部は、複数のパックの各々の変形を検知する。ここで、複数のパックを収容するバッテリケース内の硫化水素の濃度等を検知する場合、いずれのパックから硫化水素が発生しているかを判断することは困難である。これに対し、上記のように構成することにより、複数のパックの各々における変形の有無を検知することができる。その結果、複数のパックのうちのどのパックからガスが発生しているかを容易に検知することができる。
【0009】
上記第1の局面に係る電池システムにおいて、好ましくは、検知部は、上記少なくとも1つのパックと非接触状態で、上記少なくとも1つのパックの変形を検知する。このように構成すれば、検知部が上記少なくとも1つのパックと接触している場合と異なり、パックの変形時に検知部がパックから圧力を受けるのを防止することができる。その結果、検知部が劣化するのを抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、検知部は、撮像部を含み、撮像部により撮像された上記少なくとも1つのパックの画像に基づいて、上記少なくとも1つのパックの変形を検知する。このように構成すれば、パックの変形を画像を用いて容易に検知することができる。
【0011】
上記検知部が撮像部を含む電池システムにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つのパックは、内圧が所定値以上になった場合にガスを排出する排出弁を含む。検知部は、排出弁が開弁していることを示す画像に基づいて、少なくとも1つのパックの変形を検知する。このように構成すれば、パックの膨張のみに基づいてガスの発生を検知する場合に比べて、より確実にガスの発生を検知することができる。
【0012】
上記検知部が撮像部を含む電池システムにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つのパックは、所定の方向に並ぶ複数のパックを含む。撮像部は、上記所定の方向に沿って移動可能に構成されている。このように構成すれば、撮像部を複数のパックの各々に接近させることができる。その結果、複数のパックの各々の詳細な画像を取得することができる。
【0013】
上記第1の局面に係る電池システムにおいて、好ましくは、検知部は、歪みゲージを含む。歪みゲージは、上記少なくとも1つのパックのうち、内圧の変化に起因して変形する部分に接触状態で取り付けられている。このように構成すれば、パックの変形を、パックにおける歪みの変化に基づいて容易に検知することができる。
【0014】
上記第1の局面に係る電池システムにおいて、好ましくは、圧力センサは、少なくとも1つのパックのうち、内圧の変化に起因して変形する部分に設けられている。このように構成すれば、パックの変形を、圧力センサがパックから受ける圧力の変化に基づいて容易に検知することができる。
【0015】
本開示の第2の局面に係る電池システムの異常検知方法は、全固体電池セルを備える電池システムの異常検知方法であって、全固体電池セルが密閉されたパックを準備する工程と、パックの内圧の変化に起因するパックの変形を検知する工程と、を備える。
【0016】
本開示の第2の局面に係る電池システムの異常検知方法では、上記のように、パックの内圧の変化に起因するパックの変形が検知される。これにより、全固体電池からのガスの発生を速やかに検知することが可能な電池システムの異常検知方法を提供することができる。
【0017】
本開示によれば、全固体電池からの硫化水素等のガスの発生を速やかに検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態による電池システムを備える電動車両の構成を示す図である。
図2】第1実施形態によるバッテリを示す概略的な図である。
図3】全固体電池の断面図である。
図4】第1実施形態によるパックの変形を示す図である。
図5】第1実施形態による電池システムの異常検知方法を示す図である。
図6】硫化水素の発生を報知する画面を示す図である。
図7】第2実施形態による電池システムの構成を示す図である。
図8】第2実施形態によるパックの変形と歪みゲージとを示す図である。
図9】第2実施形態による電池システムの異常検知方法を示す図である。
図10】第2実施形態の変形例によるパックの変形と圧力センサとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電池システム100を搭載した電動車両300の全体構成を概略的に示す図である。電池システム100は、後述する、監視モジュール130、バッテリ200、および、ECU150を備える。
【0021】
電動車両300は、バッテリ200に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。第1実施形態において、電動車両300は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)であるが、エンジンを備えたハイブリッド車両(HEV)、あるいは、プラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。なお、バッテリ200は、充電設備から供給される電力によって、充電(外部充電)される。
【0022】
ECU150は、バッテリ200の充電制御および放電制御を行うように構成される。ECU150は、プロセッサ151と、RAM(Random Access Memory)152と、記憶装置153とを含む。
【0023】
ECU150はコンピュータであってもよい。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0024】
RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。
【0025】
記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御が実行される。
【0026】
監視モジュール130は、バッテリ200の状態(たとえば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール130は、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、および通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール130の出力に基づいてバッテリ200の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、および内部抵抗)を取得することができる。
【0027】
電動車両300は、走行駆動部110と、HMI(Human Machine Interface)装置120と、駆動輪Wとをさらに備える。
【0028】
走行駆動部110は、PCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含み(共に図示せず)、バッテリ200に蓄えられた電力を用いて電動車両300を走行させるように構成される。
【0029】
PCUは、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)とを含んで構成される。PCUは、ECU150によって制御される。
【0030】
MGは、たとえば三相交流モータジェネレータである。MGは、PCUによって駆動され、駆動輪Wを回転させるように構成される。PCUは、バッテリ200から供給される電力を用いてMGを駆動する。また、MGは、回生発電を行い、発電した電力をバッテリ200に供給するように構成される。
【0031】
SMRは、バッテリ200からPCUまでの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、電動車両300の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0032】
HMI装置120は、入力装置および表示装置を含む。HMI装置120は、タッチパネルディスプレイ121を含んでもよい。
【0033】
図2は、バッテリ200の概略的な断面図である。バッテリ200は、バッテリケース210と、複数の電池モジュール220と、排気管230と、カメラ240と、移動機構250とを備える。複数の電池モジュール220、カメラ240、および、移動機構250の各々は、バッテリケース210に収容されている。なお、図2では、電池モジュール220が3つ設けられている例が示されているが、電池モジュール220の個数は上記の例に限られない。また、カメラ240は、本開示の「撮像部」の一例である。また、カメラ240およびECU150の各々は、本開示の「検知部」に含まれる。
【0034】
複数の電池モジュール220は、バッテリケース210内において、図2に示すX方向に沿って並んで配置されている。なお、電池モジュール220同士は、互いに離間して配置されている。
【0035】
複数の電池モジュール220の各々は、バッテリケース210の底面211に配置されている。複数の電池モジュール220の各々は、複数の全固体電池セル221と、パック222とを含む。複数の全固体電池セル221の各々は、図3にて説明するように、硫化物系の全固体電池である。複数の電池モジュール220の各々の複数の全固体電池セル221は、図2に示すY方向に積層されている。なお、Y方向は、上記のX方向と直交する方向である。
【0036】
パック222は、互いに積層されている複数の全固体電池セル221を包むように収容している。これにより、複数の全固体電池セル221は、パック222により密閉されている。なお、パック222は、ラミネート型のパック(金属箔ラミネートフィルム製のパウチ)である。パック222は、硫化水素の発生により内圧が高くなると変形(たとえば膨張)する。
【0037】
排気管230は、バッテリケース210の内部から外部に延びるように設けられている。排気管230は、バッテリケース210内の硫化水素をバッテリケース210の外側に排出する。
【0038】
カメラ240は、複数の電池モジュール220の各々を撮像する。カメラ240は、複数の電池モジュール220(パック222)の各々と非接触状態で、複数の電池モジュール220の各々を撮像する。カメラ240により取得された複数の電池モジュール220の各々の画像は、ECU150(図1参照)に送信される。
【0039】
移動機構250は、たとえば、バッテリケース210の底面211と対向するバッテリケース210の天井面212に取り付けられている。移動機構250は、カメラ240をX方向に沿って移動させるように構成されている。具体的には、移動機構250は、カメラ240を複数の電池モジュール220の各々と(Y方向に)対向する位置に移動させることが可能である。これにより、カメラ240を複数の電池モジュール220の各々に接近させて画像を取得することが可能となる。
【0040】
移動機構250は、カメラ240を所定の周期ごとに自動的に移動させてもよい。移動機構250は、ECU150からの指令に従ってカメラ240を移動させてもよい。また、移動機構250は、HMI装置120または図示しない携帯端末等を通じたユーザの指令(操作)に基づいてカメラ240を移動させてもよい。なお、移動機構250は、X方向だけではなく、天井面212に沿って2次元的にカメラ240を移動させるように構成されていてもよいし、Y方向にカメラ240を移動させるように構成されていてもよい。
【0041】
<全固体電池>
図3は、全固体電池セル221の構成を概略的に示す図である。全固体電池セル221は、蓄電要素として、正極層221aと、負極層221bと、固体電解質層221cとを含む。全固体電池セル221は、蓄電要素を収納するための外装体(図示せず)を含んでもよい。外装体は、たとえば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチである。
【0042】
≪正極層≫
正極層221aは、正極活物質層221dと、正極集電体221eとを含む。正極活物質層221dは、正極スラリー(正極活物質層221dの材料と溶媒とを混練することにより調製されるスラリー)を正極集電体221eの表面に塗工して乾燥させることにより形成される。正極活物質層221dは固体電解質層221cに密着している。正極活物質層221dの厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0043】
≪負極層≫
負極層221bは、負極活物質層221fと、負極集電体221gとを含む。負極活物質層221fは、負極スラリー(負極活物質層221fの材料と溶媒とを混練することにより調製されたスラリー)を負極集電体221gの表面に塗工して乾燥させることにより形成される。負極活物質層221fは固体電解質層221cに密着している。負極活物質層221fの厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0044】
≪固体電解質層≫
固体電解質層221cは、正極層221aと負極層221bとの間に介在している。固体電解質層221cは、正極層221aを負極層221bから分離している。固体電解質層221cの厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0045】
また、正極層221aと、固体電解質層221cと、負極層221bとは、複数の全固体電池セル221が積層される方向(Y方向)に積層されている。図3に示す例では、正極層221aが固体電解質層221cのY1側に設けられ、負極層221bが固体電解質層221cのY2側(Y1とは反対側)に設けられている。なお、正極層221aの位置と負極層221bの位置とが図3に示す例の反対であってもよい。
【0046】
図4は、パック222の内圧の変化に応じてパック222が変形する様子を示す図である。
【0047】
図4(A)は、全固体電池セル221から硫化水素が発生していない(または発生量が少量である)ことにより、パック222の内圧が低い場合の図である。この場合、パック222は変形していない。
【0048】
図4(B)は、全固体電池セル221から硫化水素が発生していることにより、パック222の内圧が中程度である場合の図である。この場合、パック222の部分222aが膨張するように変化する。なお、この場合のパック222の内圧は、後述する閾値未満である。なお、部分222aは、パック222のY1側(カメラ240側)の面のうちX方向における中央部に設けられている。部分222aは、パック222の内圧の上昇により膨張可能に形成された部分である。たとえば、部分222aは、硫化水素が発生していない状態で、僅かに弛むように形成された部分である。また、部分222aは、部分222a以外のパック222の部分よりも剛性が低い部分であってもよい。
【0049】
図4(C)は、全固体電池セル221から硫化水素が発生していることにより、パック222の内圧が高い場合の図である。この場合、パック222の部分222aの膨張に加えて、パック222の排気弁222bが開弁する。排気弁222bは、硫化水素をパック222から排気する機能を有する。排気弁222bは、パック222の内圧が閾値以上になった場合に開弁するように形成されている。排気弁222bは、たとえば、パック222のY1側(カメラ240側)の面のうちX1側の端部に設けられている。
【0050】
ここで、従来の電池システムでは、バッテリケース内に硫化水素を検出するセンサを配置することにより、硫化水素の発生が検知されていた。この場合、バッテリケース内に硫化水素が一定以上流出しなければ、硫化水素の発生を検知することが困難である。これに対し、全固体電池からの硫化水素の発生を速やかに検知することが可能なシステムが望まれている。
【0051】
ここで、第1実施形態では、ECU150は、パック222の内圧の変化に起因するパック222の変形を検知する。具体的には、ECU150は、カメラ240により撮像されたパック222の画像に基づいて、パック222が変形しているか否かを判定する。なお、ECU150は、カメラ240により撮像された複数のパック222の各々の画像に基づいて、複数のパック222の各々の変形を検知する。
【0052】
詳細には、ECU150は、パック222の画像に基づきパック222の部分222a(図4(A)参照)が膨張していることを検知した場合に、パック222が変形していると判定する。また、ECU150は、パック222の画像に基づきパック222の排気弁222b(図4(C)参照)が開弁していることを検知した場合に、パック222が変形していると判定する。
【0053】
たとえば、ECU150の記憶装置153には、硫化水素が発生していない場合(図4(A)参照)のパック222の画像が記憶されている。ECU150(プロセッサ151)は、記憶装置153に記憶されている上記画像と、カメラ240により取得されたパック222の画像とを比較することにより、パック222が変形しているか否かを判定する。また、上記の判定処理には、たとえば、ディープラーニング(深層学習)などの機械学習の技術により生成された学習済みモデルを用いてもよい。
【0054】
<電池システムの異常検知方法>
次に、図5および図6を参照して、電池システム100の異常検知方法について説明する。なお、以下のステップS3~S5は、所定の周期ごとに継続的に繰り返されている。
【0055】
ステップS1において、パック222の準備が行われる。具体的には、パック222により複数の全固体電池セル221が密閉された電池モジュール220が準備される。ステップS2において、変形前のパック222の画像(図4(A)参照)が記憶装置153(図1参照)に記憶される。なお、ステップS1およびS2の工程は、電動車両300の製造段階において行われる工程である。以下のステップS3~S5の処理は、電動車両300がユーザにより使用されている段階で行われる。
【0056】
ステップS3において、カメラ240は、バッテリケース210内の複数のパック222の各々の画像を取得する。カメラ240は、移動機構250により移動されながら、複数のパック222を順番に(1つずつ)撮像してもよい。また、カメラ240は、複数のパック222を同時に撮像できるように広範囲の画角を有していてもよい。
【0057】
ステップS4において、ECU150は、パック222が変形しているか否かを判定する。具体的には、ECU150は、ステップS2において記憶装置153に記憶されたパック222の変形前の画像と、ステップS3において取得されたパック222の画像とを比較する。ECU150は、上記比較により、パック222の部分222aの膨張、および、排気弁222bの開弁の少なくとも1つを検知した場合に、パック222が変形していると判定する。パック222が変形していると判定された場合(S4においてYes)、処理はステップS5に進む。パック222が変形していないと判定された場合(S4においてNo)、処理は終了する。
【0058】
ステップS5において、ECU150は、硫化水素の発生を、電動車両300のユーザに報知する。たとえば、ECU150は、図6に示すように、「バッテリから硫化水素が発生している可能性があります」というメッセージ122を、HMI装置120のタッチパネルディスプレイ121に表示させる。なお、メッセージ122の表示に代えて(または加えて)、音声による報知が行われてもよい。また、ECU150は、ユーザの図示しない携帯端末等に上記の報知を行わせる信号が送信されてもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態では、ECU150は、カメラ240により取得された画像に基づいて、パック222の内圧の変化に起因するパック222の変形を検知する。これにより、パック222からバッテリケース210に排出された硫化水素を直接検出する場合に比べて、硫化水素の発生を速やかに検知することができる。その結果、硫化水素がバッテリケース210に排出されるのを抑制することができる。
【0060】
[第2実施形態]
図7図9を参照して、本開示の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、歪みゲージ510を用いてパック222の変形を検知する。上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付すとともに繰り返しの説明は行わないものとする。
【0061】
図7は、第2実施形態に係る電池システム400の構成を概略的に示す図である。電池システム400は、バッテリ500と、ECU450とを備える。
【0062】
ECU450は、バッテリ500の充電制御および放電制御を行うように構成される。ECU450は、プロセッサ451と、RAM452と、記憶装置453とを含む。
【0063】
バッテリ500は、カメラ240および移動機構250(共に図2参照)に代えて歪みゲージ510を備える点で、上記第1実施形態のバッテリ200とは異なる。歪みゲージ510は、複数のパック222の各々に取り付けられている。歪みゲージ510により検出される歪み量のデータは、ECU450に送信される。なお、歪みゲージ510およびECU450の各々は、本開示の「検知部」に含まれる。
【0064】
図8(A)に示すように、歪みゲージ510は、パック222の部分222aに接触状態で取り付けられている。たとえば、歪みゲージ510は、部分222aに接着剤等により接着されることにより固定されている。パック222の内圧が低くパック222が変形していない場合、歪みゲージ510により検出される歪み量は0である。
【0065】
硫化水素により部分222aが膨張した場合(図8(B)参照)、歪みゲージ510により検出される歪みは0よりも大きくなる。ECU450は、歪みゲージ510により検出された歪み量が閾値以上になった場合に、パック222が変形していると判定する。
【0066】
<電池システムの異常検知方法>
次に、図9を参照して、電池システム400の異常検知方法について説明する。なお、上記第1実施形態と同じ工程については、繰り返しの詳細な説明を行わないものとする。以下のステップS11、S12、およびS5は、電動車両がユーザにより使用されている段階において行われ、所定の周期ごとに継続的に繰り返されている。
【0067】
ステップS1の後のステップS11において、ECU450は、各パック222に取り付けられている歪みゲージ510の検出値(歪み量)のデータを取得する。
【0068】
ステップS12において、ECU450は、パック222が変形しているか否かを判定する。具体的には、ECU450は、ステップS11において取得された歪みゲージ510の検出値が閾値以上である場合に、パック222が変形していると判定する。パック222が変形していると判定された場合(S12においてYes)、処理はステップS5に進む。パック222が変形していないと判定された場合(S12においてNo)、処理は終了する。
【0069】
なお、その他の構成および効果については、上記第1実施形態と同様であるので、繰り返しの説明は行わないものとする。
【0070】
上記第2実施形態では、歪みゲージ510がパック222の部分222aに設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。図10に示すように、部分222aに対応するように圧力センサ610が設けられていてもよい。なお、圧力センサ610は、複数のパック222の各々の部分222aに設けられている。
【0071】
具体的には、図10(A)に示すように、圧力センサ610は、パック222が変形していない状態の部分222aと離間して設けられている。言い換えると、圧力センサ610は、パック222が変形していない状態の部分222aと隣り合うように(対向して)設けられている。圧力センサ610は、たとえばバッテリケース210の天井面212(図2参照)等に固定されていてもよい。
【0072】
そして、図10(B)に示すように、圧力センサ610は、変形した状態の部分222aと接触する。これにより、パック222が変形した場合に、圧力センサ610により検出される検出値が上昇する。ECUは、上記検出値が閾値以上になった場合に、パック222が変形していると判定する。なお、圧力センサ610は、パック222が変形していない状態の部分222aと接触していてもよい。また、圧力センサ610は、本開示の「検知部」に含まれる。
【0073】
また、圧力センサ610の代わりに、部分222aと対向する位置に距離センサを設けてもよい。距離センサにより、部分222aの膨張に起因して距離センサと部分222aとの間の距離が変化するのを検出することが可能である。
【0074】
上記第1および第2実施形態では、バッテリに複数のパック222が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。バッテリにパック222が1つだけ設けられていてもよい。また、各パック222に密閉されている全固体電池セル221が1つでもよい。
【0075】
上記実施形態では、ECUがパックの変形を判定する例を示したが、本開示はこれに限られない。カメラや歪みゲージ等のセンサが上記判定を行って、判定結果をECUに送信してもよい。
【0076】
なお、上記の実施形態および上記の各変形例の構成(処理)が互いに組み合わされてもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
100、400 電池システム,150、450 ECU(検知部),221 全固体電池セル,222 パック,221a 部分(変形する部分),222b 排出弁,240 カメラ(撮像部)(検知部),510 歪みゲージ(検知部),610 圧力センサ。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図9
図10