(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158845
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】CO2回収システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0668 20160101AFI20241031BHJP
H01M 8/1009 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/0668
H01M8/1009
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/04537
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074412
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 航也
(72)【発明者】
【氏名】南里 浩太
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB08
5H127AA08
5H127AC04
5H127BA01
5H127BA03
5H127BA20
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127DB66
5H127DC12
5H127EE11
(57)【要約】
【課題】液体燃料電池からの排出物が貯留されるドレインタンクの破損が防止されるCO
2回収システムを提供する。
【解決手段】液体燃料電池10から排出されるCO
2を回収するCO
2回収システム1は、液体燃料電池10から排出された未使用の液体燃料とCO
2とを含有する排出物を貯留するドレインタンク20と、CO
2固定化反応を行うための反応液が貯留された反応槽30と、ドレインタンク20の気相領域21と反応槽30とを連通するガス流路40と、ガス流路40に設けられ、ドレインタンク20の気相領域21に貯留されたCO
2含有ガスを反応槽30内に向けて送り出すエアポンプ50と、エアポンプ50よりもドレインタンク20側に設けられてドレインタンク20の気相領域21と連通するとともに、容量可変に構成された圧力緩衝部60とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料電池から排出されるCO2を回収するCO2回収システムであって、
上記液体燃料電池から排出された未使用の液体燃料とCO2とを含有する排出物を貯留するドレインタンクと、
CO2固定化反応を行うための反応液が貯留された反応槽と、
上記ドレインタンクの気相領域と上記反応槽とを連通するガス流路と、
上記ガス流路に設けられ、上記ドレインタンクの気相領域に貯留されたCO2含有ガスを上記反応槽内に向けて送り出すエアポンプと、
上記エアポンプよりも上記ドレインタンク側に設けられて上記ドレインタンクの気相領域と連通するとともに、容量可変に構成された圧力緩衝部と、
を備える、CO2回収システム。
【請求項2】
上記ガス流路を、CO2含有ガスの流通が許容された開放状態とCO2含有ガスの流通が規制された閉塞状態とのいずれかに切り替える切替弁が設けられている、請求項1に記載のCO2回収システム。
【請求項3】
上記圧力緩衝部は、上記ドレインタンクに直接接続されている、請求項1又は2に記載のCO2回収システム。
【請求項4】
上記エアポンプの動作を制御する制御部を有し、
上記制御部は、上記液体燃料電池の発電量に基づいて上記エアポンプの流量を制御する、請求項1又は2に記載のCO2回収システム。
【請求項5】
上記エアポンプの動作を制御する制御部を有し、
上記制御部は、上記反応槽での上記固定化反応における上限CO2固定量に基づいて上記エアポンプの流量を制御する、請求項1又は2に記載のCO2回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスとしてのCO2ガスの排出を抑制することが求められており、CO2ガスを回収するCO2回収システムが種々検討されている。CO2を回収する方法として、例えば、CO2をNaOHなどのアルカリ溶液に化学的に吸収させて回収するように構成されたものがある。このようなCO2回収システムとして、特許文献1に開示の構成では、L-グルタミン酸発酵において発生したCO2を反応槽内のNaOH水溶液中に曝気させて、NaHCO3又はNa2CO3を生成することでCO2を固定化して回収している。
【0003】
また、CO2ガスの発生源の一つとして燃料電池があげられる。例えば、特許文献2に開示の構成では、ギ酸を燃料とする液体燃料電池から排出されたCO2ガスは、液体燃料電池から排出された未反応のギ酸や水とともにドレインタンクに貯留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-243985号公報
【特許文献2】特開2021-072216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示の構成において、ドレインタンク内のCO2ガスを、特許文献1に開示の構成の反応槽内でCO2を固定化して回収する場合、CO2ガスの外部への漏出を防止するためにドレインタンク及び反応槽を外部へのガスの漏洩が防止された密閉系とし、ドレインタンク内のCO2ガスをエアポンプによりドレインタンクから反応槽へ輸送する必要がある。そして、通常、ドレインタンクは変形しにくい材質で構成されることから、エアポンプによる反応槽へのCO2ガスの輸送量が少ない場合やエアポンプ停止中の場合にはドレインタンクの内圧が高まり、エアポンプによる反応槽へのCO2ガスの輸送量が多い場合にはドレインタンクの内圧が低くなる。このようなドレインタンクの内圧の変化はドレインタンクの破損を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、液体燃料電池からの排出物が貯留されるドレインタンクの破損が防止されるCO2回収システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、液体燃料電池から排出されるCO2を回収するCO2回収システムであって、
上記液体燃料電池から排出された未使用の液体燃料とCO2とを含有する排出物を貯留するドレインタンクと、
CO2固定化反応を行うための反応液が貯留された反応槽と、
上記ドレインタンクの気相領域と上記反応槽とを連通するガス流路と、
上記ガス流路に設けられ、上記ドレインタンクの気相領域に貯留されたCO2含有ガスを上記反応槽内に向けて送り出すエアポンプと、
上記エアポンプよりも上記ドレインタンク側に設けられて上記ドレインタンクの気相領域と連通するとともに、容量可変に構成された圧力緩衝部と、
を備える、CO2回収システムにある。
【発明の効果】
【0008】
上記一態様のCO2回収システムでは、圧力緩衝部の容量が可変であるため、エアポンプによる反応槽へのCO2ガスの輸送量が少ない場合やエアポンプ停止中の場合には圧力緩衝部の容量が拡大してドレインタンクの内圧が高まることが防止され、エアポンプによる反応槽へのCO2ガスの輸送量が多い場合には圧力緩衝部の容量が縮小してドレインタンクの内圧が低くなることが防止される。その結果、ドレインタンクの内圧の変化が抑制され、ドレインタンクの破損が防止される。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、液体燃料電池からの排出物が貯留されるドレインタンクの破損が防止されるCO2回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、第1状態のCO
2回収システムの構成を示す概念図。
【
図2】実施形態1における、第2状態のCO
2回収システムの構成を示す概念図。
【
図3】変形形態1における、CO
2回収システムの構成を示す概念図。
【
図4】変形形態2における、CO
2回収システムの構成を示す概念図。
【
図5】実施形態2における、第1状態のCO
2回収システムの構成を示す概念図。
【
図6】実施形態2における、第2状態のCO
2回収システムの構成を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.CO
2回収システム1
上記CO
2回収システム1の本実施形態1について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態のCO
2回収システム1は、液体燃料電池10から排出されるCO
2を回収するものであって、主として、ドレインタンク20及び反応槽30を備える。
【0012】
2.液体燃料電池10
液体燃料電池10の構成は限定されないが、固体高分子型の液体燃料電池10を例示することができる。固体高分子型の液体燃料電池10は、電解質膜の一面側にアノード電極が形成され、電解質膜の他面側にカソード電極が形成される。ここで、電解質膜、アノード電極及びカソード電極は、電極構造体であるMEA(Membrane-Electrode-Assembly:膜―電極接合体)を形成する。なお、アノード電極及びカソード電極は、例えば、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の金属触媒及びこれら金属触媒が付加されたカーボン及び電解質がコーティングされて形成される。また、燃料供給構造を有する導電性構造物からなる燃料拡散層がMEAと電極(多層セルの場合はセパレータと呼ぶ燃料供給兼電気取り出し構造部材)との間に存在する。
【0013】
固体高分子型の液体燃料電池10のアノード電極に対して供給される燃料としては、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等の液体燃料を例示することができる。本実施形態1では、液体燃料電池10が液体燃料としてギ酸を直接用いる直接ギ酸型燃料電池(DFAFC)である場合を例示する。また、液体燃料電池10のカソード電極に対して供給される酸化剤(酸化剤ガス)としては、酸素(O2)ガス、空気等を例示することができる。
【0014】
3.ドレインタンク20
ドレインタンク20は液体燃料電池10の排出物が貯留される。液体燃料電池10の排出物には、液体燃料電池10に供給されて電池反応しなかった未反応の液体燃料とともに、液体燃料電池10の電池反応により生成されたCO2ガスが含まれる。なお、ドレインタンク20内には初期状態などでは空気が存在していてもよい。液体燃料電池10の排出物がドレインタンク20内に貯留されることにより、ドレインタンク20内には鉛直方向Yの上方に位置する気相領域21と、気相領域21の鉛直方向Yの下方に位置する液相領域22とが形成される。ドレインタンク20には、上方に位置する気相領域21に液体燃料電池10の排出物が流入する排出物流入部23が接続されており、下方に位置する液相領域22にはドレインタンク20内に蓄積された排出物から未反応のギ酸が取り出されるギ酸取出部24が接続されている。
【0015】
4.反応槽30
反応槽30は、CO2固定化反応を行うための反応液Lが貯留される。反応液Lは、アルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアルカリ土類金属水酸化物水溶液とすることができ、本実施形態1では、アルカリ金属水酸化物水溶液であるNaOH水溶液を用いる。反応槽30の材質は耐アルカリ性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂製、ポリ塩化ビニル樹脂製などの樹脂製とすることができる。また、反応槽30はステンレス製とすることもでき、樹脂ライニングなどの表面処理を施した金属製とすることもできる。反応槽30には、図示しないが、反応槽30内に反応液Lを供給する反応液供給部、反応槽30から反応生成物を取り出すための取り出し部、反応液Lの温度を検出する温度検出部などが設けられている。
【0016】
5.ガス流路40
ガス流路40は一旦側が、ドレインタンク20の上部の気相領域21に接続されており、他端側が反応槽30の反応液L内に位置している。そして、ドレインタンク20、反応槽30及びガス流路40は互いに連通して密閉されて外部へのガスの漏洩が防止された密閉系を形成しており、ガス流路40はドレインタンク20の気相領域21を形成するCO2含有ガスが流通可能となっている。なお、本明細書では、「CO2含有ガス」とは、構成成分としてCO2を含有するガスを指すものとする。当該CO2含有ガスは、構成成分としてCO2のみを含むガスであってもよいし、さらに不可避的不純物を含むガスであってもよい。また、CO2含有ガスは、構成成分としてCO2とその他の物質とが混在する混合ガスであってよい。混合ガスにおいてCO2が占める割合は限定されず、混合ガスにおいて占める割合が最も多い主成分はCO2であってもよいし、CO2以外の物質であってもよい。
【0017】
ガス流路40の反応槽30側の端部41には多数の微細な孔が形成されており、ガス流路40を介して反応槽30内に供給されたCO2含有ガスは、微小な気泡の状態となってバブリングされることとなる。なお、これに替えて、ガス流路40の反応槽30側の端部41に回転可能なノズルを設けて、当該ノズルから吐出されるCO2含有ガスのエア圧により当該ノズルを回転させることにより、反応槽30内の反応液LとCO2含有ガスとの攪拌を促す構成としてもよい。
【0018】
6.エアポンプ50
エアポンプ50は、ガス流路40に設けられて、ドレインタンク20に貯留されたCO2含有ガスを反応槽30内に向けて送り出す。エアポンプ50の構成は限定されず。公知の構成を採用することができる。なお、本実施形態1では、エアポンプ50はガス流路40の一部を構成しており、エアポンプ50が停止した状態ではCO2含有ガスはエアポンプ50を流通可能な状態となる。
【0019】
エアポンプ50の動作は、
図1に示す制御部55により制御される。制御部55は、液体燃料電池10の発電量に基づいてエアポンプ50の流量を制御することができる。液体燃料電池10の発電量は、液体燃料電池10において生成されるCO
2と正の相関関係を有する。そのため、液体燃料電池10の発電量が多い場合にはエアポンプ50の流量を多くし、液体燃料電池10の発電量が少ない場合にはエアポンプ50の流量を少なくすることで、液体燃料電池10の発電効率を低下させることなく、CO
2の固定化反応を行うようにすることができる。なお、反応槽30に過剰にCO
2含有ガスが供給された場合には、バブリングされたCO
2含有ガスの一部が反応槽30の気相領域31に一時的に滞在することとなる場合がある。この場合には、反応液Lと気相領域31との界面において、反応液LとCO
2含有ガスとが接触することで固定化反応を進行させることができる。また、反応槽30にNaOH水溶液を追加することでも固定化反応を進行させることができる。
【0020】
また、制御部55は、反応槽30でのCO2固定化反応における上限CO2固定量に基づいてエアポンプ50の流量を制御することができる。反応槽30でのCO2固定化反応における上限CO2固定量は、反応槽30に供給されるNaOHの量に基づいて算出でき、反応槽30に供給されるNaOHの量に正比例する。そのため、当該上限CO2固定量が多い場合にはエアポンプ50の流量を多くし、当該上限CO2固定量が少ない場合にはエアポンプ50の流量を少なくすることで、CO2の固定化反応を一層効率的に行うようにすることができる。
【0021】
7.切替弁70
本実施形態1では、ガス流路40に切替弁70が設けられている。切替弁70は、ガス流路40をCO2含有ガスの流通が許容された開放状態とCO2含有ガスの流通が規制された閉塞状態とのいずれかに切り替えるように構成されている。本実施形態1では、切替弁70は、ガス流路40におけるエアポンプ50よりもドレインタンク20側の位置に設けられている。
【0022】
そして、エアポンプ50が停止した状態において、切替弁70によりガス流路40を閉塞状態とすることにより、CO2含有ガスがガス流路40を流通することを規制できる。切替弁70の動作制御は、制御部55によりエアポンプ50の動作と連動して、エアポンプ50が駆動しているときは切替弁70を開放状態とし、エアポンプ50が停止しているときは切替弁70を閉塞状態とするように制御することができる。
【0023】
8.圧力緩衝部60
圧力緩衝部60は、圧力緩衝部60は容量可変となっており、エアポンプ50よりもドレインタンク20側に設けられてドレインタンク20の気相領域21と連通する。本実施形態1では、圧力緩衝部60はドレインタンク20に直接接続されている。圧力緩衝部60は容量可変となっていることにより、ドレインタンク20の内圧の変化が緩和される。
【0024】
圧力緩衝部60の構造は、容量が可変となる構造であれば特に限定されない。例えば、圧力緩衝部60の一部又は全部を弾性変形可能な材料により形成することで容量を可変とすることができる。また、弾性変形可能な材料を用いることに限らず、圧力緩衝部60の一部に可動部を設けて容量を可変としてもよい。また、圧力緩衝部60を設ける数は、限定されず、本実施形態ではドレインタンク20に1個設けているが、エアポンプ50よりもドレインタンク20側に複数設けてもよい。
【0025】
圧力緩衝部60の容量変化は次のように行うことができる。例えば、エアポンプ50が駆動して切替弁70が開放状態である第1状態において、エアポンプ50により反応槽30へ輸送されるCO
2含有ガスの体積とギ酸取出部24から取り外されるギ酸の体積との合計よりも、排出物流入部23からドレインタンク20内に流入してくる排出物の体積が小さい場合に、
図1に示すように圧力緩衝部60は縮小して容量が小さくなる。
【0026】
一方、エアポンプ50が駆動して切替弁70が開放状態である第1状態において、エアポンプ50により反応槽30へ輸送されるCO
2含有ガスの体積とギ酸取出部24から取り外されるギ酸の体積との合計よりも、排出物流入部23からドレインタンク20内に流入してくる排出物の体積が大きい場合は、
図1に示す状態から圧力緩衝部60は拡張して容量が大きくなる。
【0027】
また、
図2に示すように、エアポンプ50が停止して切替弁70が閉塞状態である第2状態では、圧力緩衝部60は、排出物流入部23からドレインタンク20内に流入してくる排出物に応じて拡張して容量が大きくなっている。これにより、圧力緩衝部60によって、ドレインタンク20の内圧の変化が緩和されることとなる。なお、切替弁70が閉塞状態である場合は、反応槽30におけるCO
2含有ガスのバブリングは停止される。
【0028】
9.開放弁80
本実施形態1では、反応槽30の気相領域31に連通する開放弁80が設けられている。開放弁80は通常状態では閉塞しているが、運転開始後の運転初期状態において、ドレインタンク20に存在していた空気が反応槽30に流入してきて反応槽30の内圧が高まった場合に、一時的に開放弁80を開放することで反応槽30の内圧を低くすることができる。
【0029】
10.CO2固定化反応
次に、反応槽30におけるCO2固定化反応について説明する。上述のように、CO2含有ガスが反応槽30内の反応液Lにバブリングされることにより、CO2固定化反応が進行する。本実施形態1では、反応液LとしてNaOH水溶液を用いる場合について説明する。
【0030】
反応槽30内でのCO2固定化反応として、下記の式1の反応が行われた後、式2の反応が行われる。
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O (式1)
Na2CO3+CO2+H2O → 2NaHCO3 (式2)
【0031】
上記反応の開始前は、反応槽30内にはNaHCO3及びNa2CO3は存在していない状態であるが、上記反応の進行状態に応じて、Na2CO3が生成されてNaHCO3が存在しない状態と、一部のNa2CO3がさらにCO2と反応してNaHCO3が生成されて両者がともに存在する状態と、すべてのNa2CO3がNaHCO3に変換されてNa2CO3がなくなりNaHCO3が存在する状態とのいずれかとなる。上記反応により生じるNaHCO3及びNa2CO3はいずれも、反応槽30内の水に溶解して水溶液の状態となっている。本明細書ではNaHCO3、Na2CO3及び両者の混合物を総称して「生成物」といい、これらの水溶液を総称して「生成物水溶液」というものとする。そして、反応槽30から回収した生成物水溶液の脱水・乾燥を行うことで、固体の状態で回収することができる。なお、生成物水溶液の状態で回収することとしてもよい。回収された当該生成物及び生成物水溶液は資源として利用することができる。
【0032】
11.作用効果
次に、本実施形態のCO2回収システム1における作用効果について詳述する。本実施形態1のCO2回収システムでは、圧力緩衝部60の容量が可変であるため、エアポンプ50による反応槽30へのCO2含有ガスの輸送量が少ない場合やエアポンプ50停止中の場合には圧力緩衝部60の容量が拡大してドレインタンク20の内圧が高まることが防止され、エアポンプ50による反応槽30へのCO2ガスの輸送量が多い場合には圧力緩衝部60の容量が縮小してドレインタンク20の内圧が低くなることが防止される。その結果、ドレインタンク20の内圧の変化が抑制され、ドレインタンク20の破損が防止される。
【0033】
また、本実施形態1では、ガス流路40をCO2含有ガスの流通が許容された開放状態とCO2含有ガスの流通が規制された閉塞状態とのいずれかに切り替える切替弁70が設けられている。これにより、エアポンプ50が停止した状態であってもガス流路40を閉塞状態とすることで、ガス流路40を介して反応槽30からドレインタンク20へ反応液Lが逆流を防止することをできる。
【0034】
なお、
図3に示す変形形態1のように、切替弁70をガス流路40におけるエアポンプ50と反応槽30との間の位置に設けてもよい。また、
図4に示す変形形態2のように、エアポンプ50に替えてガス流路40における逆流を防止する逆流防止機構501を有するエアポンプ500を用いることができ、この場合は必ずしも切替弁70を設ける必要はない。
【0035】
また、本実施形態1では、圧力緩衝部60はドレインタンク20に直接接続されている。これにより、圧力緩衝部60の取り付けを容易にすることができる。
【0036】
また、本実施形態1では、エアポンプ50の動作を制御する制御部55を有し、制御部55は、液体燃料電池10の発電量に基づいてエアポンプ50の流量を制御するように構成されている。これにより、液体燃料電池10の発電効率を低下させることなく、CO2の固定化反応を行うようにすることができる。
【0037】
また、本実施形態1では、制御部55は、反応槽30での固定化反応における上限CO2固定量に基づいてエアポンプ50の流量を制御する。これにより、CO2の固定化反応を効率的に行うようにすることができる。
【0038】
以上のごとく、本実施態様1及び変形形態によれば、液体燃料電池10からの排出物が貯留されるドレインタンク20の破損が防止されるCO2回収システム1を提供することができる。
【0039】
(実施形態2)
上記実施形態1では、
図1及び
図2に示すドレインタンク20に圧力緩衝部60を直接接続したが、これに替えて、
図5及び
図6に示す実施形態2では、圧力緩衝部60をガス流路40におけるエアポンプ50の上流側(すなわち、ドレインタンク20側)の位置に接続した。実施形態2では、ドレインタンク20に圧力緩衝部60を直接接続するためのスペースを確保することが困難な場合にも圧力緩衝部60を設けることができる。なお、本実施形態2において、上記実施形態1と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施形態2では、上記実施形態1においてドレインタンク20に圧力緩衝部60を直接接続したことによる作用効果を除いて、上記実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0041】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 CO2回収システム
10 液体燃料電池
20 ドレインタンク
21 気相領域
22 液相領域
23 排出物流入部
24 ギ酸取出部
30 反応槽
31 気相領域
40 ガス流路
50、500 エアポンプ
55 制御部
60 圧力緩衝部
70 切替弁
80 開放弁