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特開2024-158869誤差推定装置、後処理システム、誤差推定方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158869
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】誤差推定装置、後処理システム、誤差推定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20241031BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241031BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241031BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F01N3/18 C
F01N3/08 A
F01N3/24 R
F01N11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074464
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】池戸 隆人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 英人
(72)【発明者】
【氏名】上田 松栄
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AA18
3G091AB03
3G091AB06
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091BA26
3G091BA31
3G091CA16
3G091DB13
3G091DB16
3G091DC07
3G091EA05
3G091EA08
3G091EA17
3G091EA18
3G091EA21
3G091EA22
3G091EA33
3G091EA35
3G091EA36
3G091HA08
3G091HA36
3G091HA37
(57)【要約】
【課題】排気中の所定成分についての物理量を取得する取得部における観測誤差を推定する技術の向上を図る。
【解決手段】誤差推定装置は、第1物理量を取得するセンサと、第2物理量を取得する取得部と、センサにより取得される第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定部と、状態推定部により推定された状態量と、センサにより取得された第1物理量とから、状態推定理論を用いて、取得部における観測誤差を推定する誤差推定部とを備える。誤差推定部は、状態推定部により推定された状態量を用いて、状態推定部によって推定された推定値と、センサにより取得された第1物理量と、取得部により取得された第2物理量と、誤差推定部により推定された観測誤差と、から算出された算出値とについて、推定値と算出値とが等しいという拘束条件を用いて、観測誤差を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誤差推定装置であって、
排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得するセンサと、
前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する取得部と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定部と、
前記状態推定部により推定された前記状態量と、前記センサにより取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定部と、
を備え、
前記誤差推定部は、
前記状態推定部により推定された前記状態量を用いて、前記状態推定部によって推定された推定値と、
前記センサにより取得された前記第1物理量と、前記取得部により取得された前記第2物理量と、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、誤差推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誤差推定装置であって、
前記触媒は、有害物質としてのNOxを浄化するNSR触媒であり、
前記センサは、前記第1物理量として、前記触媒の下流側における前記排気中のNOx濃度を取得する出口NOxセンサであり、
前記取得部は、前記第2物理量として、前記触媒の上流側における前記排気中のNOx濃度を取得する入口NOxセンサであり、
前記状態推定部は、前記状態量として、前記触媒におけるNOx吸蔵量を推定する、誤差推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の誤差推定装置であって、
前記拘束条件ypは、次式により定義され、
上記式において、
NOx,stは、前記推定値としての、NOx吸蔵率推定値であり、
NOobs x,inは、前記取得部により取得された前記第2物理量であり、
NOx,outは、前記センサにより取得された前記第1物理量であり、
θinは、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差である、誤差推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の誤差推定装置であって、
前記誤差推定部は、前記状態推定理論として、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムを使用する、誤差推定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誤差推定装置であって、
前記取得部は、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、取得した前記第2物理量を補正する、誤差推定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誤差推定装置であって、さらに、
前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、前記取得部の異常を検出する制御部を備える、誤差推定装置。
【請求項7】
後処理システムであって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誤差推定装置と、
排気が流通する主流路に設けられ、排気中の有害物質を浄化する触媒と、
前記触媒に対して有害物質を浄化するための添加剤を供給する供給部と、
前記供給部における前記添加剤の供給を制御する供給制御部と、
を備える、後処理システム。
【請求項8】
誤差推定方法であって、情報処理装置が、
センサを用いて、排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得する工程と、
取得部を用いて、前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する工程と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定工程と、
推定された前記状態量と、取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定工程と、
を実行し、
前記誤差推定工程では、
推定された前記状態量を用いて、前記状態推定工程によって推定された推定値と、
取得された前記第1物理量と、取得された前記第2物理量と、前記誤差推定工程により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、誤差推定方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、情報処理装置に、
センサを用いて、排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得する機能と、
取得部を用いて、前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する機能と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定機能と、
推定された前記状態量と、取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定機能と、
を実行させ、
前記誤差推定機能は、
推定された前記状態量を用いて、前記状態推定機能によって推定された推定値と、
取得された前記第1物理量と、取得された前記第2物理量と、前記誤差推定機能により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理システムに設けられた取得部における観測誤差を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等から排出される排気に含まれる有害物質を浄化する技術が知られている。例えば、特許文献1には、添加剤としてNH3(アンモニア)を使用し、有害物質としてのNOx(窒素酸化物)を浄化するSCR触媒(選択還元触媒:Selective Catalytic Reduction catalyst)を用いた後処理システムについて開示されている。例えば、特許文献2及び特許文献3には、添加剤としてリッチスパイク処理により生じるCO(一酸化炭素),H2(水素),HC(炭化水素)を用い、有害物質としてのNOxを浄化するNSR触媒(吸蔵還元触媒:NOx Storage Reduction catalyst、NOx触媒とも呼ばれる)を用いた後処理システムについて開示されている。
【0003】
非特許文献1には、飛翔体の追尾問題において疑似観測量を使用することが開示されている。飛翔体の追尾問題などでは、ターゲットの速度が速いことから通常のカルマンフィルタでは十分な推定精度が得られず、補助的な観測データを生成して推定精度を向上させることが試みられている。例えば、ターゲットが等速直線運動するなどの物理的拘束条件を、ターゲットのダイナミクスとは別に考慮し、その拘束条件が成り立っていることをあたかも観測しているかのように考え、それを擬似的に観測値とみなして本来の観測方程式に付加し、拡張された観測方程式を構成している。このように補助的に生成される観測量は「疑似観測量」と呼ばれる。また、非特許文献2には、船舶のレーダによる追尾問題を対象に、ターゲットの位置、速度、及び加速度の推定精度を高めるために疑似観測量を導入することが開示されている。一方、非特許文献3には、エンジンシステムにおける酸素センサの時間遅れを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-190383号公報
【特許文献2】特開2004-308455号公報
【特許文献3】特開2009-180086号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Tahk, J.L. Speyer, Target tracking problems subject to kinematic constraints, IEEE Transactions on Automatic Control, 3 March 1990, vol. 35, No. 3, pp. 324-326.
【非特許文献2】大住晃、安木誠一、平田順士、井尻善久、長山剛久、佐々木啓人、針路と速度を不規則に変更する移動体の拡張カルマンフィルタによるトラッキング、システム制御情報学会論文誌、2001年、14巻10号、pp. 490-498.
【非特許文献3】Michael M. Moser, Christopher H. Onder, Lino Guzzella, Recursive parameter estimation of exhaust gas oxygen sensors with input-dependent time delay and linear parameters, Control Engineering Practice, 28 May 2015, vol. 41, pp. 149-163.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した後処理システムでは、排気が流通する主流路に排気中の所定成分についての物理量を検出する取得部を設け、当該センサの観測値を利用した後処理システムの制御が行われている。例えば、特許文献2に記載の技術では、NSR触媒の上流側と下流側とにNOxセンサを設け、これらNOxセンサの観測値の変化から、NSR触媒の劣化状態を診断している。例えば、特許文献3に記載の技術では、排気中のO2(酸素)濃度を検出する空燃比センサを設け、この空燃比センサの観測値を用いて、NSR触媒における還元処理の実行時間を決定している。しかし、これらの取得部では、ハード的なばらつき(例えば、検出素子等の製造誤差)や、経年劣化等に起因して、正確な物理量を検出できない場合がある。
【0007】
この点、特許文献1に記載の技術では、内燃機関から排出されるNOx流量の基準パターンと、NOxセンサの観測値によるNOx濃度の追従パターンと、を比較することでNOxセンサの故障診断を実現している。しかし、特許文献1に記載の技術では、内燃機関の運転状態によっては、長時間、内燃機関から排出されるNOx流量が基準パターンとならない場合があり、このような場合に、NOxセンサの故障診断ができないという課題を有する。また、非特許文献1,2では、NOxセンサや空燃比センサにおける観測誤差の推定や、後処理システムにおける拘束条件について何ら論じられていない。さらに、特許文献2,3、及び、非特許文献3に記載の技術では、NOxセンサや空燃比センサにおける観測誤差の推定について、何ら考慮されていない。
【0008】
なお、このような課題は、取得部として、特許文献1~3に記載されたNOxセンサや空燃比センサを用いる場合に限らず、排気中の所定成分(任意の成分)についての物理量を検出あるいは演算により取得する「取得部」の全般に共通する。すなわち、「取得部」とは、物理量を直接取得するセンサと、物理量を演算により求める機能部と、の両方を含む。また、物理量としては、NOx濃度に限られず、NOx以外の所定成分の濃度、流量、温度、圧力等が使用されてもよい。さらに、このような課題は、添加剤としてNH3を用いるSCR触媒や、添加剤としてリッチスパイク処理により生じるCO,H2,HCを用いるNSR触媒に限らず、添加剤として酸化還元反応により生じるO2を使用する三元触媒(Three-Way Catalyst)にも共通する。
【0009】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、排気中の所定成分についての物理量を取得する取得部における観測誤差を推定する技術の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本発明の一形態によれば、誤差推定装置が提供される。この誤差推定装置は、排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得するセンサと、前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する取得部と、前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定部と、前記状態推定部により推定された前記状態量と、前記センサにより取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定部と、を備える。前記誤差推定部は、前記状態推定部により推定された前記状態量を用いて、前記状態推定部によって推定された推定値と、前記センサにより取得された前記第1物理量と、前記取得部により取得された前記第2物理量と、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する。
【0012】
この構成によれば、誤差推定部は、状態推定部により推定された状態量と、センサにより取得された第1物理量とから、状態推定理論を用いて取得部における観測誤差を推定する。このため、内燃機関の運転状態や所定成分の流量パターンに左右されずに、取得部における観測誤差を推定することができるため、観測誤差を利用した取得部の異常診断の頻度を向上できる。また、誤差推定部は、状態推定部を利用して推定した推定値Aと、センサ、取得部、及び誤差推定部による取得及び推定結果から算出された算出値Bと、が等しいという拘束条件(A=B)を用いて、観測誤差を推定する。ここで一般に、取得部における観測誤差は、状態変数を通してしか観測データに反映されない。しかし、本構成によれば、拘束条件に、(過去に)誤差推定部により推定された観測誤差が含まれることによって、誤差推定部による観測誤差の推定時に考慮される情報として、(過去に)誤差推定部により推定された観測誤差が追加される。このため、観測誤差を未知パラメータとして誤差推定部を構成した場合と比較して、コスト増加なしで、取得部における観測誤差の推定精度を向上できる。これらの結果、本構成の誤差推定装置によれば、排気中の所定成分についての物理量を取得する取得部における観測誤差を推定する技術の向上を図ることができる。
【0013】
(2)上記形態の誤差推定装置において、前記触媒は、有害物質としてのNOxを浄化するNSR触媒であり、前記センサは、前記第1物理量として、前記触媒の下流側における前記排気中のNOx濃度を取得する出口NOxセンサであり、前記取得部は、前記第2物理量として、前記触媒の上流側における前記排気中のNOx濃度を取得する入口NOxセンサであり、前記状態推定部は、前記状態量として、前記触媒におけるNOx吸蔵量を推定してもよい。
この構成によれば、誤差推定部は、触媒の上流側における排気中のNOx濃度を取得する入口NOxセンサの観測誤差を推定することができる。
【0014】
(3)上記形態の誤差推定装置において、前記拘束条件ypは、次式により定義され、
上記式において、RNOx,stは、前記推定値としての、NOx吸蔵率推定値であり、NOobs x,inは、前記取得部により取得された前記第2物理量であり、NOx,outは、前記センサにより取得された前記第1物理量であり、θinは、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差であってもよい。
この構成によれば、状態推定部を利用して推定したNOx吸蔵率推定値A(RNOx,st)と、センサ、取得部、及び誤差推定部による取得及び推定結果から算出された算出値Bと、が等しいという拘束条件yp=A-B=0を定義できる。
【0015】
(4)上記形態の誤差推定装置において、前記誤差推定部は、前記状態推定理論として、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムを使用してもよい。
この構成によれば、誤差推定部は、状態推定理論として、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムを使用することで、実測が困難な状態量(すなわち、取得部における観測誤差)を推定できる。
【0016】
(5)上記形態の誤差推定装置において、前記取得部は、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、取得した前記第2物理量を補正してもよい。
この構成によれば、取得部は、誤差推定部により推定された観測誤差を用いて、取得した第2物理量を補正するため、第2物理量の精度を向上できる。この結果、補正後の第2物理量を用いて行われる種々の制御(例えば、状態推定部における状態量の推定制御や、触媒における有害物質浄化のための添加剤供給制御)における精度を向上させることができる。
【0017】
(6)上記形態の誤差推定装置では、さらに、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、前記取得部の異常を検出する制御部を備えてもよい。
この構成によれば、制御部は、誤差推定部により推定された観測誤差を用いて、取得部の異常を検出する。このため、異常検出(故障診断)を目的とした特別な運転モードを要することなく異常検出を実施でき、異常検出の実施頻度を向上させることができる。
【0018】
(7)本発明の一形態によれば、後処理システムが提供される。この後処理システムは、上記形態の誤差推定装置と、排気が流通する主流路に設けられ、排気中の有害物質を浄化する触媒と、前記触媒に対して有害物質を浄化するための添加剤を供給する供給部と、前記供給部における前記添加剤の供給を制御する供給制御部と、を備える。
この構成によれば、取得部における観測誤差を考慮した添加剤の供給が可能な後処理システムを提供できる。このため、後処理システムにおける浄化効率を向上でき、燃費向上にも資する。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、誤差推定装置、センサ状態推定装置、推定された観測誤差を使用して後処理システムを制御する制御装置、これらの装置を含む後処理システム、これら装置及びシステムの制御方法、これら装置及びシステムにおいて実行されるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態としての後処理システムのブロック図である。
図2】誤差推定装置における各機能について説明する図である。
図3】第4モデルについて説明する図である。
図4】誤差推定装置における誤差推定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】入口NOx濃度取得部の観測誤差の正解値を+20%に設定した際のシミュレーション結果を表す。
図6】入口NOx濃度取得部の観測誤差の正解値を-20%に設定した際のシミュレーション結果を表す。
図7】誤差推定装置における異常検出処理の手順を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態の後処理システムのブロック図である。
図9】第3実施形態における後処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての後処理システム1のブロック図である。本実施形態の後処理システム1は、誤差推定装置10と、排気浄化装置20とを備える。本実施形態の誤差推定装置10は、後述する処理によって、排気中の所定成分についての物理量を取得する取得部における観測誤差を推定できる。
【0022】
ここで「取得部」とは、排気中の所定成分についての物理量を直接取得するセンサと、物理量を演算により求める機能部と、の両方を含む。所定成分としては、NOx(窒素酸化物)のほかにも、CO(一酸化炭素),H2(水素),HC(炭化水素),O2(酸素),NH3(アンモニア)等を採用できる。以降の例では、排気中の所定成分として、NOxを例示する。また、取得部として、触媒の上流側に設けられたセンサであって、排気中のNOx濃度を、直接取得するセンサ(入口NOxセンサ)を例示する。
【0023】
排気浄化装置20は、内燃機関92の排気中における有害物質としてのNOxを浄化する装置であり、触媒としてNSR触媒70(吸蔵還元触媒:NOx Storage Reduction catalyst、NOx触媒とも呼ばれる)を備え、添加剤としてリッチスパイク処理により生じるCO,H2,HCを使用する。
【0024】
内燃機関92は、例えば、ディーゼルエンジンや、リーンバーン運転方式のガソリンエンジンである。燃焼状態制御部91は、内燃機関92に対する空気や燃料の噴射を制御することで、内燃機関92内の空燃比をリーン、ストイキ、リッチの各状態へと制御する。燃焼状態制御部91は、例えば、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)により実装される。なお、以下の説明では、排気浄化装置20のうち、内燃機関92に近い側を「上流側」と呼び、内燃機関92に遠い側を「下流側」と呼ぶ。図1の場合、左側が上流側に相当し、右側が下流側に相当する。なお、排気浄化装置20は、内燃機関92に代えて、有害物質を含む排気を排出する他の装置(例えば、工場、多種の燃焼装置等)に接続されてもよい。
【0025】
排気浄化装置20は、内燃機関92に接続された排気管30と、排気管30上に設けられたNSR触媒70と、リッチスパイク制御部93とを備える。排気管30は、内燃機関92からの排気が流通する主流路を形成する。内燃機関92からの排気は、排気管30内の主流路を通って、NSR触媒70を通過して外気に放出される。NSR触媒70は、排気中のNOxをNSR触媒70内に吸蔵して溜め込むことで、排気中のNOxを浄化する。NSR触媒70は「触媒」に相当する。
【0026】
リッチスパイク制御部93は、NSR触媒70に吸蔵されたNOxを浄化するリッチスパイク制御(「還元制御」とも呼ばれる)を実施する。リッチスパイク制御において、リッチスパイク制御部93は、内燃機関92内の空燃比を短時間リッチ状態とすることで、CO、H2、及び、HC等のその他の未燃ガス(以降「CO,H2,HC等」とも呼ぶ)を内燃機関92から排出させる。そして、排出されたCO,H2,HC等によって、NSR触媒70に吸蔵されているNOxを窒素ガス(N2)へと還元する。すなわち、CO,H2,HC等は、NSR触媒70に吸蔵されているNOxの還元反応のために用いられる添加剤(より具体的には還元剤)として機能する。本実施形態において、CO,H2,HCのうち、少なくともいずれか1つ以上の要素(1つでもよく、複数でもよい)は「添加剤」に相当する。また、リッチスパイク制御部93は「供給制御部」に相当し、内燃機関92は「供給部」に相当する。リッチスパイク制御部93は、燃焼状態制御部91と同様に、ECUにより実装できる。
【0027】
誤差推定装置10は、CPU11と、記憶部12と、表示部13と、流量取得部52と、排気温度取得部53と、入口NOx濃度取得部54と、温度取得部78と、出口NOxセンサ99とを備える。CPU11及び記憶部12は、例えば、ECUにより実装される。表示部13には、任意の表示装置、例えばLED(Light Emitting Diode)、液晶パネル、タッチパネル等を採用できる。
【0028】
CPU11は、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、誤差推定装置10の各部を制御する。そのほかCPU11は、状態推定部110、誤差推定部111、及び制御部112としても機能する。
【0029】
図2は、誤差推定装置10における各機能について説明する図である。状態推定部110は、記憶部12に記憶された触媒状態推定モデル120を用いて、NSR触媒70のNOx吸蔵量を推定する。状態推定部110により推定されたNOx吸蔵量は、排気浄化装置20の内部の状態を表す状態量である。NOx吸蔵量は、出口NOxセンサ99の観測値(以降「第1物理量」とも呼ぶ)に影響を及ぼす。
【0030】
誤差推定部111は、図4で後述する誤差推定処理によって、入口NOx濃度取得部54における観測誤差を推定する。ここで「観測誤差」とは、入口NOx濃度取得部54により得られる値が、中央値(真値)からどれだけ離れているか、換言すれば、中央値からの差を表す値である。入口NOx濃度取得部54の観測誤差は、入口NOx濃度取得部54が、排気中の所定成分についての物理量を直接取得するセンサとして構成されている場合は、内蔵された検出素子の製造誤差(ハード的なばらつき)や、検出素子の経年劣化に起因して生じる。また、入口NOx濃度取得部54が、物理量を演算により求める機能部として構成されている場合は、モデル化誤差(モデルと実対象との間に存在する誤差)などに起因して生じる。以降、入口NOx濃度取得部54における観測誤差を、単に「取得部における観測誤差」または「観測誤差」とも呼ぶ。
【0031】
図2に示すように、誤差推定部111は、状態推定部110により推定された状態量と、出口NOxセンサ99により取得された第1物理量とを用いて、状態推定理論を用いて、入口NOx濃度取得部54における観測誤差(取得部における観測誤差)を推定する。このとき、誤差推定部111は、記憶部12に記憶された拘束条件121を用いて、観測誤差の推定を行う。詳細は後述する。本実施形態の誤差推定部111は、状態推定理論を実現する状態推定器として、アンセンテッドカルマンフィルタ(UKF)を使用する場合を例示する。アンセンテッドカルマンフィルタは、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムである。なお、誤差推定部111は、同様の他のアルゴリズム、例えば、拡張カルマンフィルタ(EKF)、シグマポイントカルマンフィルタ、パーティクルフィルタ等を使用してもよい。
【0032】
制御部112は、誤差推定部111により推定された観測誤差を用いて、入口NOx濃度取得部54の異常検出を行う。詳細は、図7において説明する。
【0033】
流量取得部52は、内燃機関92からの排気の流量を取得する。流量取得部52は、例えば、排気管30に設けられたピトー管式流量計によって測定された測定信号を取得することで実現してもよい。また、流量取得部52は、内燃機関92への吸入空気量信号や、燃料噴射量信号から排気の流量を推定してもよい。排気温度取得部53は、内燃機関92からの排気の温度を測定するセンサである。
【0034】
入口NOx濃度取得部54は、NSR触媒70の上流側における排気中のNOx濃度、換言すれば、NSR触媒70へ流入する排気中のNOx濃度を測定するセンサ(入口NOxセンサ)である。入口NOx濃度取得部54は「取得部」に相当し、入口NOx濃度取得部54により測定されるNOx濃度は「第2物理量」に相当する。なお、入口NOx濃度取得部54は、センサによる測定に代えて、内燃機関92の燃焼状態(リーン、ストイキ、リッチ)から排気中のNOx濃度を、演算により求める機能部として構成されてもよい。
【0035】
前端温度取得部76は、NSR触媒70の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。温度取得部78は、NSR触媒70の床温を測定するセンサである。
【0036】
出口NOxセンサ99は、NSR触媒70の下流側における排気中のNOx濃度、換言すれば、NSR触媒70から排出された排気中のNOx濃度を測定するセンサ(出口NOxセンサ)である。出口NOxセンサ99は「センサ」に相当し、出口NOxセンサ99により測定されるNOx濃度は「第1物理量」に相当する。なお、出口NOxセンサ99は、センサによる測定に代えて、内燃機関92の燃焼状態(リーン、ストイキ、リッチ)から排気中のNOx濃度を、演算により求める機能部として構成されてもよい。
【0037】
記憶部12は、フラッシュメモリ、メモリカード、ハードディスクなどで構成される。記憶部12には、予め、触媒状態推定モデル120と、拘束条件121と、が記憶されている。触媒状態推定モデル120には、第1モデルと、第2モデルと、第4モデルとが含まれている。
【0038】
第1モデルは、NSR触媒70における「NOx浄化率」を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNN(ニューラルネットワーク:Neural Network)により構成されている。第1モデルの入力変数には、例えば、以下の項目a1,a2に示すパラメータのうち、少なくとも1つ以上を採用できる。第1モデルの出力変数は、入力変数が表わす諸条件下における、NSR触媒70のNOx浄化率の推定値である。
(a1)触媒の情報:NSR触媒70の前端の温度と、NSR触媒70の温度と、1時刻前においてNSR触媒70に吸蔵されているNOxの吸蔵量と、NSR触媒70におけるNOxの飽和吸蔵量に対する吸蔵量(実吸蔵量)の比と、のうちの少なくとも1つ
(a2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の流量と、排気に含まれるNOxの量と、のうちの少なくとも1つ
【0039】
第2モデルは、NSR触媒70における「NOx還元量」を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第2モデルの入力変数には、例えば、以下の項目b1~b3に示すパラメータのうち、少なくとも1つ以上を採用できる。第2モデルの出力変数は、入力変数が表わす諸条件下における、リッチスパイク制御で還元されるNOx還元量の推定値である。
(b1)触媒の情報:NSR触媒70の前端の温度と、NSR触媒70の温度と、1時刻前においてNSR触媒70に吸蔵されているNOxの吸蔵量(実吸蔵量)と、のうちの少なくとも1つ
(b2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の流量と、のうちの少なくとも1つ
(b3)添加剤の情報:NSR触媒70に流入する添加剤(CO,H2,HC等)の量と、後述する第4モデルにより求められたリッチスパイク制御において還元反応に寄与しない添加剤の量と、のうちの少なくとも1つ
【0040】
なお、第1モデルと第2モデルとは、出力変数が推定対象となる物理量と一致するように、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させ、NNにおける重み定数等が予め決定されている。なお、第1モデルと第2モデルの学習には、内燃機関92の過渡運転時に取得されたデータを教師データとして用いることが好ましい。
【0041】
図3は、第4モデルについて説明する図である。第4モデルは、上述したリッチスパイク制御において、「還元反応に寄与しない添加剤量(CO,H2,HC等の量)」を推定するためのモデルであり、物理モデルにより構成されている。内燃機関92からの排気の温度やNSR触媒70の温度によっては、NSR触媒70に吸蔵されているNOxと、添加剤との還元反応が十分に進行しない場合がある。第4モデルでは、このような還元反応に寄与しない添加剤の量を推定する。図3では、第4モデルの一例として、還元反応に寄与しないCOの量を推定するアレニウスの式を示す。還元反応に寄与しないH2やHCの量を推定する場合、図3のCOをH2またはHCと読み替えればよい。アレニウスの式のうち、頻度因子(A)、活性化エネルギー(E)については予め実験等により求めた値を使用できる。第4モデルの入力変数には、例えば、以下の項目c1~c3に示すパラメータのうち、少なくとも1つ以上を採用できる。第4モデルの出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、リッチスパイク制御での還元反応に寄与しない添加剤の量の推定値である。
(c1)触媒の情報:NSR触媒70の前端の温度と、NSR触媒70の温度と、のうちの少なくとも1つ
(c2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、NSR触媒70に流入する排気の空燃比と、のうちの少なくとも1つ
(c3)添加剤の情報:NSR触媒70に流入する添加剤(CO,H2,HC等)の量
【0042】
触媒状態推定モデル120は、1時刻後においてNSR触媒70に吸蔵されているNOx吸蔵量の推定値を求めるためのモデルである。触媒状態推定モデル120は、以下の数式1により構成されている。
【0043】
【数1】
【0044】
数式1の各値は、以下の項目d1~d5に示す通りである。
(d1)NOxSt[k+1]:1時刻後においてNSR触媒70に吸蔵されているNOx吸蔵量の推定値
(d2)NOxSt[k]:前回の推定処理の結果得られたNOx吸蔵量(実吸蔵量)
(d3)NOx_NSRin[k]:NSR触媒70に流入するNOx量
(d4)NOx_NSRout[k]:第1モデルによって推定されたNSR触媒70のNOx浄化率と、NSR触媒70に流入するNOx量(上記d3)とから算出された流出NOx量であって、現在時刻においてNSR触媒70から流出する流出NOx量
(d5)NOx_rdct[k]:第2モデルによって推定されたリッチスパイク制御で還元されるNOxの還元量
【0045】
なお、数式1において、時刻t=kΔtは現在時刻を、時刻t=(k+1)Δtは1時刻後(1単位時間後)を、時刻t=(k-1)Δtは1時刻前(1単位時間前)を意味する。kは整数である。Δtは誤差推定装置10における単位時間(例えば、CPU11の演算周期、上述した各取得部52~78におけるサンプリング周期)である。これらの点は、図4以降の説明においても同様である。
【0046】
状態推定部110は、第1モデルを用いてNOx浄化率NOxConv[k]を、第4モデルを用いて還元反応に寄与しない添加剤量Ad_thrmlytc[k]を、第2モデルを用いてNOx還元量NOx_rdct[k]を、それぞれ推定する。その後、状態推定部110は、これらの推定結果と、流量取得部52等の取得値とを、触媒状態推定モデル120(数式1)に入力することで、1時刻後においてNSR触媒70に吸蔵されているNOx吸蔵量の推定値NOxSt[k+1]を求めることができる。
【0047】
このように、触媒状態推定モデル120は、数理モデルにより構成されている。触媒状態推定モデル120は、NNモデル(機械学習モデル)である第1モデル、及び第2モデルによる推定結果(NOx浄化率、NOx還元量)と、物理モデルである第4モデルによる推定結果(還元反応に寄与しない添加剤量)とを併用し、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)においてNSR触媒70に吸蔵されているNOx吸蔵量NOxSt[k+1]を推定するモデルである。このため、触媒状態推定モデル120を用いることで、状態推定部110は、数多くの要因(例えば、項目a1~a2,b1~b3,c1~c3に列挙した要因)が影響するNOx吸蔵量NOxSt[k+1]の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。
【0048】
また、NSR触媒70のNOx吸蔵量は、前の時刻の吸蔵量の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。触媒状態推定モデル120によれば、第1,2,4モデルによる現在時刻kの推定結果NOxSt[k]を用いて、次の時刻k+1におけるNOx吸蔵量NOxSt[k+1]を推定する。このため、状態推定部110は、前の時刻のNSR触媒70のNOx吸蔵量を踏まえて、次の時刻におけるNOx吸蔵量を高精度に推定できる。
【0049】
図4は、誤差推定装置10における誤差推定処理の手順を示すフローチャートである。誤差推定処理は、排気中の所定成分についての物理量を取得する取得部における観測誤差、具体的には、入口NOx濃度取得部54(入口NOxセンサ)の観測誤差を推定する処理である。誤差推定処理は任意のタイミングで実行可能であり、例えば、内燃機関92の始動後に繰り返し実行される。なお、誤差推定処理は、後処理システム1の利用者からの要求によって実行されてもよく、後処理システム1を搭載する車両等における他の制御部からの要求によって実行されてもよい。
【0050】
誤差推定処理の前提条件について説明する。誤差推定処理では、排気浄化装置20の内部の状態を表す状態量として、数式2に示すベクトルxを用いる。ここで、数式2のNOx,stは、NSR触媒70におけるNOx吸蔵量を表し、θinは、入口NOx濃度取得部54の観測誤差、換言すれば、取得部における観測誤差を表す。また、数式3のy[k]は、出口NOxセンサ99の観測値、換言すれば、センサにより取得された第1物理量を表す。
【0051】
【数2】
【数3】
【0052】
誤差推定処理では、図1及び図2で説明した拘束条件121として、数式4に示すypを用いる。ここで、数式4のRNOx,stは、NOx吸蔵率推定値である。RNOx,stは、状態推定部110により、触媒状態推定モデル120を用いて推定されたNOx吸蔵量の推定値(状態量)を用いて、状態推定部110によって推定できる。RNOx,stは「推定値」に相当する。NOobs x,inは、入口NOx濃度取得部54の観測値、換言すれば、取得部により取得された第2物理量である。NOx,outは、出口NOxセンサ99の観測値、換言すれば、センサにより取得された第1物理量である。θinは、入口NOx濃度取得部54の観測誤差、換言すれば、取得部における観測誤差である。θinは、誤差推定処理を経て、誤差推定部111により推定される。
【0053】
数式4に示す拘束条件ypは、次の推定値Aと、算出値Bとが等しい(yp=A-B=0)ことを表している。以降の処理では、拘束条件ypが成り立っていることをあたかも観測しているかのように考え、それを疑似的な観測値とみなして本来の観測方程式に付加することで、拡張された観測方程式を構成する。このため、拘束条件ypを、以降の処理では、疑似観測量ypとも呼ぶ。
(A)推定値RNOx,st
(B)NOx,outと、NOobs x,inと、θinと、から数式4に示すように演算された算出値
【0054】
【数4】
【0055】
誤差推定処理では、排気浄化装置20の内部の状態を表す状態量の離散時間非線形状態空間表現として、数式5を用いる。また、出口NOxセンサ99の観測値(センサにより取得された第1物理量)の離散時間非線形状態空間表現として、数式6を用いる。ここで、f1(・)は、触媒状態推定モデル120を表す。w[k]は、平均値0,共分散行列Q[k]の正規性白色雑音を表す。v1[k]は、平均値0,分散R1[k]の正規性白色雑音を表す。v2[k]は、平均値0,分散R2[k]の正規性白色雑音を表す。
【0056】
【数5】
【数6】
【0057】
誤差推定処理の処理手順について説明する。ステップS10において誤差推定部111は、処理開始条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、例えば、誤差推定部111は、温度取得部78が正常であり、かつ、リッチスパイク制御部93が正常であり、かつ、入口NOx濃度取得部54及び出口NOxセンサ99が活性状態である場合に、処理の開始条件が成立していると判定できる。開始条件が成立している場合(ステップS10:YES)、誤差推定部111は処理をステップS12へ遷移させる。開始条件が成立していない場合(ステップS10:NO)、誤差推定部111は処理を終了させる。
【0058】
ステップS12において誤差推定部111は、流量取得部52から、現在(時刻t=kΔt)の排気管30内部の流量Q[k]を取得する。
【0059】
ステップS14において誤差推定部111は、現在(時刻t=kΔt)のNSR触媒70に流入するNOx量NOx_NSRinを取得する。具体的には、状態推定部110は、入口NOx濃度取得部54から、NSR触媒70へと流入する排気中の現在のNOx濃度[k]を取得する。次に誤差推定部111は、取得した排気中のNOx濃度[k]と、ステップS12で取得した排気の流量Q[k]とから、NOx量NOx_NSRin[k]を算出する。
【0060】
ステップS16において誤差推定部111は、温度取得部78から、現在(時刻t=kΔt)のNSR触媒70の床温T[k]を取得する。なお、誤差推定部111は、温度取得部78から床温T[k]を取得することに代えて、非線形カルマンフィルタなどの状態推定器を用いて床温T[k]を推定してもよい。
【0061】
ステップS18において誤差推定部111は、1時刻前(時刻t=(k-1)Δt)に状態推定部110により実行された推定処理における、触媒状態推定モデル120の入力変数u[k-1]を取得する。具体的には、誤差推定部111は、以下に示す、1時刻前の触媒状態推定モデル120の入力変数d2~d5を取得する。
(d2)NOxSt[k-1]:前回の推定処理の結果得られたNOx吸蔵量(実吸蔵量)
(d3)NOx_NSRin[k-1]:NSR触媒70に流入するNOx量
(d4)NOx_NSRout[k-1]:NSR触媒70から流出する流出NOx量
(d5)NOx_rdct[k-1]:第2モデルによって推定されたリッチスパイク制御で還元されるNOxの還元量
【0062】
ステップS20において誤差推定部111は、次に示す項目e1とe2とを用いて、2n+1個のシグマポイントを算出する。2n+1個のシグマポイントは、平均値と標準偏差に対応するサンプル点に相当し、数式7に表される。ここで、(√P)iは、共分散行列Pの平方根行列のi番目の列を意味する。
(e1)1時刻前に得られた状態量x[k-1]、すなわち、NSR触媒70におけるNOx吸蔵量NOx,st[k-1]と、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θin[k-1]
(e2)1時刻前に得られた共分散行列P[k-1]
なお、項目e1,e2について、2回目以降の処理時は1時刻前に得られた値を使用するが、初回処理時は任意の初期値を使用できる。
【0063】
【数7】
【0064】
ステップS22において誤差推定部111は、数式8に示すように、f=[f12Tを用いてシグマポイントXi ̄[k]を更新する。なお、f1は、状態量ベクトルx(数式2)のうち、NOx吸蔵量NOx,stを求めるための触媒状態推定モデル120である。f2は、状態量ベクトルx(数式2)のうち、入口NOx濃度取得部54の観測誤差に関する時間更新式である。
【0065】
【数8】
【0066】
ステップS24において誤差推定部111は、現在の時刻kにおける、NOx吸蔵量及び観測誤差の事前状態推定値を算出する。具体的には、誤差推定部111は、ステップS22で更新したシグマポイントXi ̄[k]を、以下に示す数式9に入力することで、現在(時刻t=kΔt)における、NOx吸蔵量及びばらつき量の事前状態推定値x^ ̄[k](数式9左項)を取得する。ここで、誤差推定部111は、各シグマポイントXi ̄に対して、重み係数wiを数式10によって計算する。
【0067】
【数9】
【数10】
【0068】
ステップS26において誤差推定部111は、数式11を用いて、現在の時刻kにおける、NOx吸蔵量及びばらつき量の事前誤差共分散行列P ̄[k]を算出する。
【0069】
【数11】
【0070】
ステップS28において誤差推定部111は、数式12と、次に示す項目f1とf2とを用いて、現在の時刻kにおける2n+1個のシグマポイントを算出する。
(f1)現在時刻の状態量x[k]、すなわち、NSR触媒70におけるNOx吸蔵量NOx,st[k]と、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θin[k]
(f2)現在時刻の共分散行列P[k]
【0071】
その後、誤差推定部111は、出口NOxセンサ99の観測値(センサにより取得された第1物理量)y[k]と、観測方程式y[k]=h1(x[k])とを用いて、観測値y[k]に関するシグマポイントYi ̄[k]を算出する(数式13上段)。ここで、観測方程式y[k]=h1(x[k])は、出口NOxセンサ99の観測値と、状態量であるNOx吸蔵量NOx,stと、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θinと、の関係式である。
【0072】
【数12】
【数13】
【0073】
ステップS29において誤差推定部111は、数式4に示す疑似観測量yp[k]と、観測方程式yp[k]=h2(x[k])とを用いて、疑似観測量yp[k]に関するシグマポイントYp,i ̄[k]を算出する(数式13下段)。ここで、観測方程式yp[k]=h2(x[k])は、疑似観測量ypと、状態量(NOx吸蔵量NOx,st、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θin)との関係式である。
【0074】
ステップS30において誤差推定部111は、事前出力推定値y^ ̄[k],yp^ ̄[k]を算出する。事前出力推定値y^ ̄[k]は、現在の時刻kにおける、出口NOxセンサ99の観測値(センサにより取得された第1物理量)を取得する前段階における、出口NOxセンサ99の観測値の推定値である。同様に、事前出力推定値yp^ ̄[k]は、疑似観測量の推定値である。具体的には、誤差推定部111は、ステップS28で算出したシグマポイントYi ̄[k]を数式14上段に入力することで、事前出力推定値y^ ̄[k]を算出する。また、誤差推定部111は、ステップS29で算出したシグマポイントYp,i ̄[k]を数式14下段に入力することで、事前出力推定値yp^ ̄[k]を算出する。重み係数wiは、数式10で説明した通りである。
【0075】
【数14】
【0076】
ステップS32において誤差推定部111は、事前出力誤差共分散行列Pyy ̄[k],Pypyp ̄[k]を算出する。具体的には、誤差推定部111は、ステップS28で算出したシグマポイントYi ̄[k]と、ステップS30で求めた事前出力推定値y^ ̄[k]とを、以下に示す数式15に入力することで、出口NOxセンサ99の観測値の事前出力誤差共分散行列Pyy ̄[k]を取得する。また、誤差推定部111は、ステップS29で算出したシグマポイントYp,i ̄[k]と、ステップS30で求めた事前出力推定値yp^ ̄[k]とを、以下に示す数式15に入力することで、疑似観測量の事前出力誤差共分散行列Pypyp ̄[k]を取得する。重み係数wiは、数式10で説明した通りである。
【0077】
【数15】
【0078】
ステップS34において誤差推定部111は、事前状態・出力誤差共分散行列Pxy ̄[k],Pxyp ̄[k]を算出する。具体的には、誤差推定部111は、ステップS22で更新したシグマポイントXi ̄[k]と、ステップS24で算出した事前状態推定値x^ ̄[k]と、ステップS28で算出したシグマポイントYi ̄[k]と、ステップS30で算出した事前出力推定値y^ ̄[k]とを、以下に示す数式16上段に入力することで、出口NOxセンサ99の観測値と、状態量(NOx吸蔵量NOx,st、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θin)とに関する事前状態・出力誤差共分散行列Pxy ̄[k]を算出する。重み係数wiは、数式10で説明した通りである。
【0079】
また、ステップS34において誤差推定部111は、ステップS22で更新したシグマポイントXi ̄[k]と、ステップS24で算出した事前状態推定値x^ ̄[k]と、ステップS29で算出したシグマポイントYp,i ̄[k]と、ステップS30で算出した事前出力推定値yp^ ̄[k]とを、以下に示す数式16下段に入力することで、疑似観測量と、状態量(NOx吸蔵量NOx,st、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θin)とに関する事前状態・出力誤差共分散行列Pxyp ̄[k]を算出する。重み係数wiは、数式10で説明した通りである。
【0080】
【数16】
【0081】
ステップS36において誤差推定部111は、カルマンゲインを算出する。具体的には、誤差推定部111は、ステップS34で求めた事前状態・出力誤差共分散行列Pxy ̄[k],Pxyp ̄[k]と、ステップS32で求めた事前出力誤差共分散行列Pyy ̄[k],Pypyp ̄[k]とを、以下に示す数式17に入力することで、カルマンゲインG[k]を求める。
【0082】
【数17】
【0083】
ステップS38において誤差推定部111は、出口NOxセンサ99の観測値y[k]を取得する。換言すれば、出口NOxセンサ99の観測値y[k]は、NSR触媒70の下流側(換言すれば、排気管30の出口)におけるNOx濃度の実測定値である。
【0084】
ステップS40において誤差推定部111は、状態推定値x1^[k],x2^[k]を算出する。具体的には、誤差推定部111は、ステップS24で算出した事前状態推定値x^ ̄[k]と、ステップS36で算出したカルマンゲインG[k]と、ステップS38で取得した出口NOxセンサ99の観測値y[k]と、、数式4に示す疑似観測量ypと、ステップS30で算出した事前出力推定値y^ ̄[k],yp^ ̄[k]とを、以下に示す数式18にそれぞれ入力することで、状態推定値x1^[k],x2^[k]をそれぞれ求める。
【0085】
【数18】
【0086】
ここで、数式2で説明したように、x^により表されるベクトルxは、NSR触媒70におけるNOx吸蔵量NOx,stと、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θinと、を含んでいる。このように、状態推定理論を用いてNOx吸蔵量NOx,stを推定するため、誤差推定部111は、状態推定部110により推定されたNOx吸蔵量よりも高精度なNOx吸蔵量NOx,stを求めることができる。また、誤差推定部111は、状態推定部110により推定されたNOx吸蔵量と、出口NOxセンサ99の観測値(第1物理量)とから、状態推定理論を用いて、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θinを推定することができる。すなわち、誤差推定部111は、内燃機関92の運転状態やNOxの流量パターンに左右されずに、入口NOx濃度取得部54の観測誤差θinを推定できる。
【0087】
ステップS42において誤差推定部111は、数式19を用いて、事後誤差共分散行列P[k]を算出し、処理を終了する。事後誤差共分散行列P[k]は、次回の処理において使用される。
【0088】
【数19】
【0089】
図5は、入口NOx濃度取得部54の観測誤差の正解値を+20%に設定した際のシミュレーション結果を表す。図5(A)は、誤差推定装置10による観測誤差θinの推定結果の継時的変化を示す。図5(B)は、誤差推定装置10によるNOx吸蔵量NOx,stの推定結果の継時的変化を示す。図5(A),(B)では、上記実施形態で説明した方法(具体的には、拘束条件121としての疑似観測量ypを用いた方法)により得られた推定結果を破線で表す。一方、疑似観測量ypを用いないで得られた推定結果を一点鎖線で表す。図5(A),(B)に示すように、観測誤差θin及びNOx吸蔵量NOx,stの両方について、疑似観測量ypを用いた方法(破線)の方が、疑似観測量ypを用いない方法(一点鎖線)よりも、実線で示す正解値に近く高精度であることがわかる。
【0090】
図6は、入口NOx濃度取得部54の観測誤差の正解値を-20%に設定した際のシミュレーション結果を表す。図6(A)は、誤差推定装置10による観測誤差θinの推定結果の継時的変化を示す。図6(B)は、誤差推定装置10によるNOx吸蔵量NOx,stの推定結果の継時的変化を示す。観測誤差の正解値をマイナス側にした場合も、プラス側と同様に、観測誤差θin及びNOx吸蔵量NOx,stの両方について、疑似観測量ypを用いた方法(破線)の方が、疑似観測量ypを用いない方法(一点鎖線)よりも、実線で示す正解値に近く高精度であることがわかる。
【0091】
図7は、誤差推定装置10における異常検出処理の手順を示すフローチャートである。異常検出処理は、入口NOx濃度取得部54の異常(劣化、故障等)を検出する処理である。異常検出処理は任意のタイミングで実行可能であり、例えば、誤差推定処理(図4)の終了後に自動的に行われる。異常検出処理は、後処理システム1の利用者からの要求によって実行されてもよく、後処理システム1を搭載する車両等における他の制御部からの要求によって実行されてもよい。
【0092】
ステップS100において制御部112は、異常検出処理(図4)における状態量xの算出が正常に終了したか否かを判定する。正常終了していない場合(ステップS100:NO)、制御部112は処理を終了させる。正常終了した場合(ステップS100:YES)、制御部112は処理をステップS102に遷移させる。
【0093】
ステップS102において制御部112は、状態量xのうちの観測誤差θinを取得する。ステップS104において制御部112は、観測誤差θinが、所定閾値以下であるか否かを判定する。所定閾値は、入口NOx濃度取得部54の観測誤差の許容上限値であり、予め定められて記憶部12に記憶されている。
【0094】
観測誤差θinが所定閾値以下である場合(ステップS104:YES)、制御部112は、入口NOx濃度取得部54は正常であると判定(ステップS106)し、処理を終了する。一方、観測誤差θinが所定閾値以下でない場合(ステップS104:NO)、制御部112は、入口NOx濃度取得部54に異常があると判定する(ステップS108)。なお、ステップS108において制御部112は、表示部13にアラート表示をしてもよく、記憶部12に異常判定ログを残してもよい。この際、制御部112は、異常検出処理(図4)により推定された観測誤差θinの値そのものをアラート表示、あるいはログを残すことで、出力してもよい。アラート表示は、LEDの点灯、LEDの色、所定の文字やアイコン表示等の任意の態様とできる。なお、制御部112は、観測誤差θinの大きさから推定した「劣化の程度」を表示してもよい。
【0095】
なお、図7で説明した異常検出処理に代えて、または、図7で説明した異常検出処理と共に、次のg1,g2に示す処理の少なくとも一方を実行してもよい。
(g1)入口NOx濃度取得部54の観測値の補正
入口NOx濃度取得部54は、観測値(実観測値:第2物理量)を、観測誤差θinで補正してもよい。補正された第2物理量は、処理g2のリッチスパイク制御で用いられてもよい。補正された第2物理量は、他のECUに送信され、当該ECUでの制御に用いられてもよい。
(g2)リッチスパイク制御(添加剤の供給制御)
制御部112は、異常検出処理(図4)により得られたNOx吸蔵量NOx,stと、処理g1により補正された第2物理量と、の少なくとも一方を、リッチスパイク制御部93に送信する。リッチスパイク制御部93は、これらの値を用いて、リッチスパイク制御部93を行うことで添加剤(CO,H2,HC等)の供給制御を行う。
【0096】
以上のように、第1実施形態の誤差推定装置10によれば、誤差推定部111は、状態推定部110により推定された状態量と、出口NOxセンサ99(センサ)により取得された第1物理量とから、状態推定理論を用いて、入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinを推定する。このため、内燃機関92の運転状態や所定成分の流量パターンに左右されずに、入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinを推定することができるため、観測誤差θinを利用した取得部の異常診断の頻度を向上できる(図7)。また、誤差推定部111は、状態推定部110を利用して推定した推定値Aと、出口NOxセンサ99(センサ)、入口NOx濃度取得部54(取得部)、及び誤差推定部111による取得及び推定結果から算出された算出値Bと、が等しいという拘束条件(数式4、疑似観測量yp)を用いて、観測誤差θinを推定する。ここで一般に、入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinは、状態変数を通してしか観測データに反映されない。しかし、誤差推定装置10によれば、拘束条件ypに、(過去に)誤差推定部111により推定された観測誤差θinが含まれることによって、誤差推定部111による観測誤差θinの推定時に考慮される情報として、(過去に)誤差推定部111により推定された観測誤差θinが追加される。このため、観測誤差θinを未知パラメータとして誤差推定部111を構成したのみの場合(疑似観測量ypを用いない場合)と比較して、コスト増加なしで、入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinの推定精度を向上できる。これらの結果、誤差推定装置10によれば、排気中の所定成分についての物理量を取得する入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinを推定する技術の向上を図ることができる。
【0097】
また、第1実施形態の誤差推定装置10によれば、誤差推定部111は、NSR触媒70の上流側における排気中のNOx濃度を取得する入口NOx濃度取得部54(入口NOxセンサ)の観測誤差θinを推定することができる。
【0098】
さらに、第1実施形態の誤差推定装置10(数式4)によれば、状態推定部110を利用して推定したNOx吸蔵率推定値A(RNOx,st)と、出口NOxセンサ99(センサ)、入口NOx濃度取得部54(取得部)、及び誤差推定部111による取得及び推定結果から算出された算出値Bと、が等しいという拘束条件yp=A-B=0を定義できる。
【0099】
さらに、第1実施形態の誤差推定装置10によれば、誤差推定部111は、状態推定理論として、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムを使用することで、実測が困難な状態量x(すなわち、取得部における観測誤差θin)を推定できる。
【0100】
さらに、第1実施形態の誤差推定装置10によれば、入口NOx濃度取得部54(取得部)は、誤差推定部111により推定された観測誤差θinを用いて、取得した第2物理量を補正するため、第2物理量の精度を向上できる(処理g1)。この結果、補正後の第2物理量を用いて行われる種々の制御(例えば、NSR触媒70における有害物質浄化のための添加剤供給制御:処理g2)における精度を向上させることができる。
【0101】
さらに、第1実施形態の誤差推定装置10によれば、制御部112は、誤差推定部111により推定された観測誤差θinを用いて、入口NOx濃度取得部54(取得部)の異常を検出する(図7)。このため、異常検出(故障診断)を目的とした特別な運転モードを要することなく異常検出を実施でき、異常検出の実施頻度を向上させることができる。
【0102】
さらに、第1実施形態の後処理システム1によれば、入口NOx濃度取得部54(取得部)における観測誤差θinを考慮した添加剤の供給が可能な後処理システム1を提供できる(処理g2)。このため、後処理システム1における浄化効率を向上でき、燃費向上にも資する。
【0103】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の後処理システム1aのブロック図である。第2実施形態では、複数のNSR触媒を搭載する場合に、複数のNSR触媒全体としてのNOx吸蔵量を推定する構成について説明する。第2実施形態の後処理システム1aは、誤差推定装置10に代えて誤差推定装置10aを備え、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20aを備える。
【0104】
排気浄化装置20aは、第1実施形態で説明した構成に加えて、NSR触媒70の下流側に配置された第2NSR触媒71を備える。以降では区別のために、NSR触媒70を第1NSR触媒70とも呼ぶ。第2NSR触媒71は、第1NSR触媒70と同種の吸蔵還元触媒である。本実施形態において、「同種の触媒」とは、触媒における排気浄化メカニズムが同一または類似の触媒を意味する。第2NSR触媒71は、第1NSR触媒70において吸蔵しきれずに下流側に漏れ出した有害物質(NOx)を、第2NSR触媒71内に吸蔵して溜め込むことで、排気中のNOxを浄化する。以降、排気浄化装置20aに搭載された複数の同種の触媒(第1及び第2NSR触媒70,71)を総称して「触媒群CG」とも呼ぶ。第1NSR触媒70を「最上流に位置する触媒」とも呼び、第2NSR触媒71を「最下流に位置する触媒」とも呼ぶ。
【0105】
なお、本実施形態では、第1実施形態で説明したリッチスパイク制御(還元制御)は、複数の触媒のそれぞれで実施される。具体的には、内燃機関92から排出されたCO,H2,HC等によって、第1NSR触媒70に吸蔵されているNOxが窒素ガス(N2)へと還元される。また、第1NSR触媒70での還元制御で用いられずに第1NSR触媒70から流出したCO,H2,HC等によって、第2NSR触媒71に吸蔵されているNOxが窒素ガス(N2)へと還元される。
【0106】
誤差推定装置10aは、さらに、第2NSR触媒71の床温を測定するセンサからなる第2温度取得部79を備える。また、誤差推定装置10aは、状態推定部110に代えて状態推定部110aを、誤差推定部111に代えて誤差推定部111aを備える。さらに誤差推定装置10aは、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120aを、拘束条件121に代えて拘束条件121aを備える。なお、誤差推定装置10aは、第2温度取得部79に代えて、下流側の触媒(図5の例では、第2NSR触媒71)の温度を推定する温度推定部を備えてもよい。温度推定部は、温度取得部78により取得された第1NSR触媒70の温度から、予め用意された計算式やマップ等を用いて、第2NSR触媒71の温度を算出する。なお、温度推定部は、内燃機関92からの排気の温度、排気の流量、第1NSR触媒70の反応熱、その他の任意のパラメータを考慮して、第2NSR触媒71の温度を算出してもよい。
【0107】
触媒状態推定モデル120aのうち、第1,2,4モデルは、触媒群CG全体としてのNOx浄化率、NOx還元量、還元反応に寄与しない添加剤量(CO,H2,HC等の量)、をそれぞれ出力するよう構成されている。状態推定部110aは、このような触媒状態推定モデル120aを用いて、触媒群CG全体としてのNOx吸蔵量を推定する。
【0108】
以降、図4を参照しつつ、第1実施形態とは異なる処理をする部分についてのみ説明する。ステップS14において誤差推定部111aは、触媒群CGのうち最上流の触媒(第1NSR触媒70)に流入するNOx量を取得する。ステップS16において誤差推定部111aは、第1温度取得部78から第1NSR触媒70の床温を取得し、第2温度取得部79から第2NSR触媒71の床温を取得する。ステップS20,S22において誤差推定部111aは、触媒群CG全体としてのNOx吸蔵量合計値を用いて、シグマポイントを算出及び更新する。以降は、図4において「NOx吸蔵量」と説明していた箇所を、「NOx吸蔵量合計値」に読み替えれば足り、他の処理内容については図4で説明した第1実施形態と同様である。すなわち、誤差推定装置10aでは、状態推定部110aが触媒状態推定モデル120aにより推定するNOx吸蔵量(NOx吸蔵量NOxSt)と、誤差推定部111aが図4の処理により推定する補正後吸蔵量(NOx吸蔵量NOx,st)とは、共に、触媒群CG全体としてのNOx吸蔵量合計値である。
【0109】
このように、第2実施形態の誤差推定装置10aによれば、排気管30(主流路)に同種の複数の第1及び第2NSR触媒70,71が設けられている場合に、状態推定部110aは、当該複数の触媒全体70,71を1つの触媒(触媒群CG)とみなして、触媒群CG全体としてのNOx吸蔵量の合計値を推定する。このため、第1NSR触媒70と第2NSR触媒71との間における排気管30等の影響を数理モデル(触媒状態推定モデル120a)に予め織り込んでおくことで、排気管30等に関する情報を取得することなく、NOx吸蔵量の合計値を高精度に推定できる。換言すれば、各触媒70,71のNOx吸蔵量をそれぞれ推定する場合と比較して、センサ等の数を減らすことができるため、後処理システム1aの部品点数を削減できると共に、状態推定部110aの演算負荷を低減でき、処理を高速化できる。また、状態推定部110aは、排気管30に設けられた複数の触媒70,71が同種の触媒である場合に、これらを1つの触媒(触媒群CG)とみなしてNOx吸蔵量の合計値を推定する。同種の触媒であれば、NOx吸蔵量の合計値を左右する触媒の情報項目(例えば、触媒の温度、触媒に吸蔵されている添加剤の量)に相違がないため、状態推定部110aは、NOx吸蔵量の合計値を精度良く推定することができる。さらに、センサは、複数の触媒70,71のうち、最上流の触媒よりも上流側(具体的には、第1NSR触媒70の上流側の入口NOx濃度取得部54)、または、最下流の触媒よりも下流側(具体的には、第2NSR触媒71の下流側の出口NOxセンサ99)に設けられている。このため、誤差推定部111aは、当該センサ(出口NOxセンサ99または入口NOx濃度取得部54)を、複数の触媒70,71からなる触媒群CGの上流側または下流側に設けられたセンサとして取り扱うことができる。
【0110】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態における後処理システム1bのブロック図である。第3実施形態の後処理システム1bでは、第1実施形態で説明したNSR触媒に代えて、三元触媒(Three-Way Catalyst)を用いる。三元触媒は、添加剤として、酸化還元反応により生じるO2(酸素)を使用することで、排気中のCO,HC,NOx(有害物質)を浄化する。本実施形態では、排気中の所定成分としてO2を例示する。後処理システム1bは、誤差推定装置10に代えて誤差推定装置10bを備え、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20bを備える。
【0111】
排気浄化装置20bは、NSR触媒70に代えて三元触媒80を備え、リッチスパイク制御部93を備えていない。三元触媒80は、排気中に含まれるCO,HC,NOxをそれぞれ酸化又は還元することで除去し、これら有害物質を浄化する。三元触媒80は、酸素吸蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有し、三元触媒80に流入する排気中のO2をため込む(吸蔵する)ことができる。本実施形態において「添加剤」とは、酸化反応に使用されるO2を意味する。なお、本実施形態において、三元触媒80は「触媒」に相当する。燃焼状態制御部91は「供給制御部」に相当し、内燃機関92は「供給部」に相当する。
【0112】
誤差推定装置10bは、入口NOx濃度取得部54に代えて入口酸素濃度取得部84を、前端温度取得部76に代えて前端温度取得部86を、温度取得部78に代えて温度取得部88を、出口NOxセンサ99に代えて出口酸素センサ99dを、状態推定部110に代えて状態推定部110bを、誤差推定部111に代えて誤差推定部111bを、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120bを、拘束条件121に代えて拘束条件121bを、それぞれ備えている。
【0113】
入口酸素濃度取得部84は、内燃機関92からの排気中のO2濃度を取得する。入口酸素濃度取得部84は、例えば、排気管30に設けられたA/Fセンサによって測定された測定信号を取得することで実現してもよく、酸素センサによって測定された測定信号を取得することで実現してもよい。入口酸素濃度取得部84は、内燃機関92への吸入空気量信号や、燃料噴射量信号から排気中のO2濃度を推定してもよい。前端温度取得部86は、三元触媒80の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。温度取得部88は、三元触媒80の床温を測定するセンサである。出口酸素センサ99dは、三元触媒80の下流側(換言すれば、排気管30の出口)における排気中のO2濃度を取得するセンサであり、例えば、A/Fセンサや酸素センサにより実現できる。
【0114】
本実施形態では、排気中の所定成分はO2であり、酸素濃度取得部84が「取得部」に相当し、酸素濃度取得部84の観測値が「第2物理量」に相当する。また、出口酸素センサ99dが「センサ」に相当し、出口酸素センサ99dの観測値が「第1物理量」に相当する。
【0115】
触媒状態推定モデル120bは、第1実施形態の触媒状態推定モデル120と同様に、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80のCO浄化率を出力とする第1モデルと、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80におけるNOx浄化率を出力とする第2モデルと、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80におけるTHC浄化率を出力とする第3モデルと、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80から流出する添加剤(O2)の流出量を出力とする第4モデルと、物理モデルにより構成され、三元触媒80に流入するNOx中のNO(一酸化窒素)とNO2(二酸化窒素)の比率を出力とする第5モデルとを含んでいる。状態推定部110bは、このような触媒状態推定モデル120bを用いて、三元触媒80の酸素貯蔵量OSAを、例えば、質量保存則、物質収支則、熱収支則、エネルギー収支則等の物理則を用いて求める。
【0116】
誤差推定部111bは、三元触媒80の酸素貯蔵量OSA(所定成分の吸蔵量)と、酸素濃度取得部84の観測誤差と、を数式2のベクトルxとして、第1実施形態の図4(誤差推定処理)と同様の処理を行い、酸素貯蔵量OSAと、酸素濃度取得部84の観測誤差を推定する。なお、拘束条件121bは、数式4と同様に設計すればよい。
【0117】
誤差推定装置10bは、誤差推定部111bにより推定された酸素貯蔵量OSAと観測誤差とを用いて、酸素濃度取得部84に対する異常検出処理(図7と同様の処理)や、酸素濃度取得部84による観測値の補正(処理g1と同様の処理)を行ってもよい。さらに、誤差推定装置10bは、誤差推定部111bにより推定された酸素貯蔵量OSAと、処理g1により補正された値と、の少なくとも一方を用いて、燃焼状態制御部91による空気や燃料の噴射を制御することで、内燃機関92内の空燃比をリーン、ストイキ、リッチの各状態へと制御することで、添加剤量(すなわちO2量)を制御する。このようにすれば、三元触媒80を利用した第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。そのほか、例えば次のような変形も可能である。
【0119】
[変形例1]
上記実施形態では、後処理システムの構成の一例を示した。しかし、後処理システムの構成は種々の変更が可能である。例えば、後処理システムの排気浄化装置には、SCR触媒と、NSR触媒と、三元触媒とのうちの複数の触媒が組み合わせて搭載され、誤差推定装置は、これら複数の触媒それぞれに対して、異なる所定成分(例えば、NOx,NH3,O2,A/F)の吸蔵量と、触媒の上流側または下流側に設けられた取得部における観測誤差とを、状態推定理論を用いて推定してもよい。また、排気浄化装置は、粒子状物質(PM)を除去する粒子状物質除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)や、加水分解触媒等の他の構成を備えてもよい。
【0120】
例えば、触媒の床温を取得する温度取得部は、触媒の前方(入口近傍)又は後方(出口近傍)に設けられてもよい。例えば、流量取得部、NOx濃度取得部、前端温度取得部、温度取得部がそれぞれ取得するとした流量、NOx濃度、前端温度、触媒の温度のうちの少なくともいずれかは、センサによる計測値に代えて、NNやマップ等を用いて得られた推定値であってもよい。例えば、誤差推定装置は、表示部を備えていなくてもよい。また、誤差推定装置は、ネットワークを介して接続された他の装置(スマートフォンや、車載装置等)を表示部として利用してもよい。
【0121】
[変形例2]
上記実施形態では、誤差推定処理(図4)や、異常検出処理(図7)の一例を示した。しかし、これらの処理の内容は種々の変形が可能である。例えば、各ステップの実行順序を変更してもよく、一部のステップを省略してもよく、説明しない他のステップが実行されてもよい。例えば、異常検出処理(図7)は、実行されなくてもよい。
【0122】
例えば、誤差推定処理では、入口NOx濃度取得部の観測誤差θinに代えて、出口NOxセンサの観測誤差θoutを推定してもよい。この場合、図4で説明した誤差推定処理において、「入口NOx濃度取得部54」と、「出口NOxセンサ99」とを逆に読み替えて、処理を実行すればよい。さらに、誤差推定装置は、出口NOxセンサの観測誤差θoutと、入口NOx濃度取得部の観測誤差θinとの両方を推定してもよい。
【0123】
例えば、状態推定部は、上述した構成(触媒状態推定モデル120、第1,2,4モデル)とは異なるNN,マップ,物理式等の任意の手段を用いて、NOx吸蔵量、NOx浄化率、NOx還元量、還元反応に寄与しない添加剤量を推定してもよい。例えば、第1実施形態の構成において、状態推定部は、第2モデルに代えて、NSR触媒から流出する添加剤の量である流出添加剤量を推定する第5モデルを用いて、NOx吸蔵量を推定してもよい。
【0124】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0125】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
誤差推定装置であって、
排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得するセンサと、
前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する取得部と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定部と、
前記状態推定部により推定された前記状態量と、前記センサにより取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定部と、
を備え、
前記誤差推定部は、
前記状態推定部により推定された前記状態量を用いて、前記状態推定部によって推定された推定値と、
前記センサにより取得された前記第1物理量と、前記取得部により取得された前記第2物理量と、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、誤差推定装置。
[適用例2]
適用例1に記載の誤差推定装置であって、
前記触媒は、有害物質としてのNOxを浄化するNSR触媒であり、
前記センサは、前記第1物理量として、前記触媒の下流側における前記排気中のNOx濃度を取得する出口NOxセンサであり、
前記取得部は、前記第2物理量として、前記触媒の上流側における前記排気中のNOx濃度を取得する入口NOxセンサであり、
前記状態推定部は、前記状態量として、前記触媒におけるNOx吸蔵量を推定する、誤差推定装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の誤差推定装置であって、
前記拘束条件ypは、次式により定義され、
上記式において、
NOx,stは、前記推定値としての、NOx吸蔵率推定値であり、
NOobs x,inは、前記取得部により取得された前記第2物理量であり、
NOx,outは、前記センサにより取得された前記第1物理量であり、
θinは、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差である、誤差推定装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれか一項に記載の誤差推定装置であって、
前記誤差推定部は、前記状態推定理論として、評価関数として平均二乗誤差を用いた場合に、状態量の平均二乗誤差を最小にする推定値を求めるアルゴリズムを使用する、誤差推定装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれか一項に記載の誤差推定装置であって、
前記取得部は、前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、取得した前記第2物理量を補正する、誤差推定装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5のいずれか一項に記載の誤差推定装置であって、さらに、
前記誤差推定部により推定された前記観測誤差を用いて、前記取得部の異常を検出する制御部を備える、誤差推定装置。
[適用例7]
後処理システムであって、
適用例1から適用例6のいずれか一項に記載の誤差推定装置と、
排気が流通する主流路に設けられ、排気中の有害物質を浄化する触媒と、
前記触媒に対して有害物質を浄化するための添加剤を供給する供給部と、
前記供給部における前記添加剤の供給を制御する供給制御部と、
を備える、後処理システム。
[適用例8]
誤差推定方法であって、情報処理装置が、
センサを用いて、排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得する工程と、
取得部を用いて、前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する工程と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定工程と、
推定された前記状態量と、取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定工程と、
を実行し、
前記誤差推定工程では、
推定された前記状態量を用いて、前記状態推定工程によって推定された推定値と、
取得された前記第1物理量と、取得された前記第2物理量と、前記誤差推定工程により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、誤差推定方法。
[適用例9]
コンピュータプログラムであって、情報処理装置に、
センサを用いて、排気が流通する主流路と、排気中の有害物質を浄化する触媒とを備える排気浄化装置について、前記排気中の所定成分についての第1物理量を取得する機能と、
取得部を用いて、前記排気中の前記所定成分についての第2物理量を取得する機能と、
前記排気浄化装置の内部の状態を表す状態量であって、前記センサにより取得される前記第1物理量に影響を及ぼす状態量を推定する状態推定機能と、
推定された前記状態量と、取得された前記第1物理量とから、状態推定理論を用いて、前記取得部における観測誤差を推定する誤差推定機能と、
を実行させ、
前記誤差推定機能は、
推定された前記状態量を用いて、前記状態推定機能によって推定された推定値と、
取得された前記第1物理量と、取得された前記第2物理量と、前記誤差推定機能により推定された前記観測誤差と、から算出された算出値と、
について、前記推定値と前記算出値とが等しいという拘束条件を用いて、前記観測誤差を推定する、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0126】
1,1a,1b…後処理システム
10,10a,10b…誤差推定装置
11…CPU
12…記憶部
13…表示部
20,20a,20b…排気浄化装置
30…排気管
52…流量取得部
53…排気温度取得部
54…入口NOx濃度取得部(取得部)
70…触媒,第1NSR触媒
71…第2NSR触媒
76…前端温度取得部
78…温度取得部,第1温度取得部
79…第2温度取得部
80…三元触媒
84…酸素濃度取得部(取得部)
86…前端温度取得部
88…温度取得部
91…燃焼状態制御部
92…内燃機関
93…リッチスパイク制御部
99…出口NOxセンサ(センサ)
99d…出口酸素センサ(センサ)
110,110a,110b…状態推定部
111,111a,111b…誤差推定部
112…制御部
120,120a,120b…触媒状態推定モデル
121,121a,121b…拘束条件
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9