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特開2024-158878検知装置、検知方法および検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158878
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法および検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01K 15/00 20060101AFI20241031BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01K15/00
G01R35/00 E
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074484
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】東 栄治
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】岩間 成美
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治
(72)【発明者】
【氏名】梅村 侑史
【テーマコード(参考)】
2F056
2G036
【Fターム(参考)】
2F056XA10
2G036AA18
2G036AA27
2G036BA35
2G036BB20
(57)【要約】
【課題】送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知する。
【解決手段】検知装置は、温度センサによる温度実測値を取得する第1取得部と、電流センサによる電流実測値を取得する第2取得部と、気象データを取得する第3取得部と、前記温度実測値、前記電流実測値および前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部とを備え、前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置であって、
前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、
前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、
気象データを取得する第3取得部と、
前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部とを備え、
前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する、検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記温度実測値および前記電流実測値の少なくともいずれか一方の時間変化に基づいて、前記送電線の過渡状態を判断し、判断結果に応じて、前記電流理論値の算出方法および前記温度理論値の算出方法の少なくともいずれか一方を決定する、請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記比較処理において、前記送電線の定常状態における前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記電流理論値と、前記定常状態における前記電流実測値との比較、または前記定常状態における前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記温度理論値と、前記定常状態における前記温度実測値との比較を行う、請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記比較処理において、前記過渡状態における前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記温度理論値と、前記過渡状態における前記温度実測値との比較を行う、請求項2に記載の検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記電流実測値、第1のタイミングにおける前記気象データ、および前記第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにおける前記温度実測値に基づいて算出される前記温度理論値と、前記第1のタイミングにおける前記温度実測値との比較、ならびに、前記電流実測値、前記第2のタイミングにおける前記気象データ、および前記第2のタイミングにおける前記温度実測値に基づいて算出される前記温度理論値と、前記第1のタイミングにおける前記温度実測値との比較を行う、請求項4に記載の検知装置。
【請求項6】
前記第3取得部は、前記温度センサおよび前記電流センサに対応する位置に設けられた気象センサによる測定結果を示す前記気象データを取得する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項7】
前記第3取得部は、天候を認識可能な前記気象データを取得し、
前記検知部は、前記気象データが示す天候に応じて、前記比較処理の実行を判断する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項8】
送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置における検知方法であって、
前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得するステップと、
前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得するステップと、
気象データを取得するステップと、
取得した前記温度実測値、取得した前記電流実測値、および取得した前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知するステップとを含み、
前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知するステップにおいては、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する、検知方法。
【請求項9】
送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置、において用いられる検知プログラムであって、
コンピュータを、
前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、
前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、
気象データを取得する第3取得部と、
前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する、検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知装置、検知方法および検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線にセンサを取り付け、送電線に関する物理量を計測する技術が提案されている。たとえば、特許文献1(国際公開第2019/239783号)には、以下のような電力線物理量測定装置が開示されている。すなわち、電力線物理量測定装置は、電力線を囲むように設けられる電源用コアと、前記電源用コアに巻回され、前記電力線に流れる電流によって前記電源用コアに生じる磁束の変化に基づいて、電磁誘導により誘導電流を生じさせる電源用コイルと、を有する電源用カレントトランス部と、前記電源用カレントトランス部に接続され、前記電源用カレントトランス部で発生した前記誘導電流に基づいて電力を供給する電源部と、前記電源部から供給される前記電力により、前記電力線に係る物理量を測定する物理量測定部と、を備え、前記電源用コアは、前記電力線に流れる前記電流の電流値が前記電力線の許容電流値以下の所定の電流値であるときに、前記電力線に流れる前記電流によって生じる磁界に対して磁気飽和するよう構成される。
【0003】
また、特許文献2(特開2004-325110号公報)には、温度センサの故障を検出する方法として、以下のような故障検出方法が開示されている。すなわち、故障検出方法は、温度センサの温度測定値を監視し、前記温度測定値の変化率に基づいて故障を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/239783号
【特許文献2】特開2004-325110号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】電気学会技術報告第660号「架空送電線の電流容量」、電気学会 電力・エネルギー部門 高電圧技術委員会、1997年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送電線に取り付けたセンサが故障した場合、送電線に関する物理量を正確に計測することができない場合がある。特許文献2に記載の技術を超えて、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することが可能な検知装置、検知方法および検知プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の送電線管理装置は、送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置であって、前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、気象データを取得する第3取得部と、前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部とを備え、前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する。
【0009】
本開示の一態様は、検知装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、検知装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る検知装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る検知装置における処理部による温度理論値の算出方法の一例を示す図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る検知装置が検知処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る検知装置が過渡状態における比較処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る検知装置が定常状態における比較処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の実施の形態に係る検知装置は、送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置であって、前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、気象データを取得する第3取得部と、前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部とを備え、前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する。
【0014】
このように、温度センサまたは電流センサによる物理量の実測値と、当該物理量の理論値との比較結果に基づいて、温度センサまたは電流センサの異常を検知する構成により、同じ物理量を測定する複数のセンサの実測値を用いることなく、1台のセンサの実測値と理論値との比較結果に基づいて、実測値の妥当性を判断することができる。そして、これにより、実測値の妥当性の判断結果に応じて当該センサの異常を検知することができる。したがって、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することができる。
【0015】
(2)上記(1)において、前記検知部は、前記温度実測値および前記電流実測値の少なくともいずれか一方の時間変化に基づいて、前記送電線の過渡状態を判断し、判断結果に応じて、前記電流理論値の算出方法および前記温度理論値の算出方法の少なくともいずれか一方を決定してもよい。
【0016】
このような構成により、送電線の状態に応じてより正確な理論値を算出することができるので、算出した理論値と実測値との比較結果に基づいて、センサの異常をより正確に検知することができる。
【0017】
(3)上記(2)において、前記検知部は、前記比較処理において、前記送電線の定常状態における前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記電流理論値と、前記定常状態における前記電流実測値との比較、または前記定常状態における前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記温度理論値と、前記定常状態における前記温度実測値との比較を行ってもよい。
【0018】
このような構成により、たとえば、送電線温度および送電線電流の変化量が比較的小さい夜間等の期間における実測値および気象データを用いて、センサの異常を検知することができる。
【0019】
(4)上記(2)または(3)において、前記検知部は、前記比較処理において、前記過渡状態における前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記温度理論値と、前記過渡状態における前記温度実測値との比較を行ってもよい。
【0020】
このような構成により、たとえば、送電線温度および送電線電流の変化が比較的大きい日中等の期間における実測値および気象データを用いて、センサの異常を検知することができる。
【0021】
(5)上記(4)において、前記検知部は、前記電流実測値、第1のタイミングにおける前記気象データ、および前記第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにおける前記温度実測値に基づいて算出される前記温度理論値と、前記第1のタイミングにおける前記温度実測値との比較、ならびに、前記電流実測値、前記第2のタイミングにおける前記気象データ、および前記第2のタイミングにおける前記温度実測値に基づいて算出される前記温度理論値と、前記第1のタイミングにおける前記温度実測値との比較を行ってもよい。
【0022】
このような構成により、気象データの取得頻度を低く抑えながら、異なるタイミングにおける複数の気象データを用いてそれぞれ算出される複数の温度理論値と、温度実測値との比較結果に基づいて、センサの異常をより正確に検知することができる。
【0023】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記第3取得部は、前記温度センサおよび前記電流センサに対応する位置に設けられた気象センサによる測定結果を示す前記気象データを取得してもよい。
【0024】
このような構成により、送電線の周囲におけるより正確な気象データを用いて、センサの異常をより正確に検知することができる。
【0025】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記第3取得部は、天候を認識可能な前記気象データを取得してもよく、前記検知部は、前記気象データが示す天候に応じて、前記比較処理の実行を判断してもよい。
【0026】
このような構成により、たとえば降雨が送電線温度に与える影響を無視することができる天候条件下における実測値および気象データを用いて、より正確な理論値を算出することができるので、センサの異常をより正確に検知することができる。
【0027】
(8)本開示の実施の形態に係る検知方法は、送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置における検知方法であって、前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得するステップと、前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得するステップと、気象データを取得するステップと、取得した前記温度実測値、取得した前記電流実測値、および取得した前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知するステップとを含み、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知するステップにおいては、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する。
【0028】
このように、温度センサまたは電流センサによる物理量の実測値と、当該物理量の理論値との比較結果に基づいて、温度センサまたは電流センサの異常を検知する方法により、同じ物理量を測定する複数のセンサの実測値を用いることなく、1台のセンサの実測値と理論値との比較結果に基づいて、実測値の妥当性を判断することができる。そして、これにより、実測値の妥当性の判断結果に応じて当該センサの異常を検知することができる。したがって、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することができる。
【0029】
(9)本開示の実施の形態に係る検知プログラムは、送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置、において用いられる検知プログラムであって、コンピュータを、前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、気象データを取得する第3取得部と、前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部、として機能させるためのプログラムであり、前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知するプログラムである。
【0030】
このように、温度センサまたは電流センサによる物理量の実測値と、当該物理量の理論値との比較結果に基づいて、温度センサまたは電流センサの異常を検知する構成により、同じ物理量を測定する複数のセンサの実測値を用いることなく、1台のセンサの実測値と理論値との比較結果に基づいて、実測値の妥当性を判断することができる。そして、これにより、実測値の妥当性の判断結果に応じて当該センサの異常を検知することができる。したがって、送電線に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することができる。
【0031】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0032】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。図1を参照して、電線監視システム301は、接触ユニット101と、収集ユニット102と、検知装置201とを備える。接触ユニット101は、温度センサ111と、気象センサ121と、電流センサ131と、転送装置161とを含む。収集ユニット102は、集約装置151を含む。
【0033】
図1では、1つの収集ユニット102を代表的に示しているが、電線監視システム301は、複数の収集ユニット102を備える構成であってもよい。また、図1では、3つの接触ユニット101を示しているが、電線監視システム301は、1つ、2つまたは4つ以上の接触ユニット101を備える構成であってもよい。
【0034】
図2は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。図1および図2を参照して、収集ユニット102は、たとえば鉄塔2に設けられる。
【0035】
送電線1U,1V,1Wは、それぞれ、電力系統におけるU相,V相,W相の電線であり、複数の鉄塔2により支持されている。送電線1U,1V,1Wにより1つの回線3が構成される。図2では、1つの回線3を代表的に示しているが、複数の回線3が設けられてもよい。以下、送電線1U,1V,1Wの各々を、送電線1とも称する。電線監視システム301は、電力系統の送電線1を監視する。
【0036】
接触ユニット101に含まれる気象センサ121は、当該接触ユニット101に含まれる温度センサ111および電流センサ131に対応する位置に設けられる。
【0037】
接触ユニット101は、たとえば、複数相の送電線1において、互いに対応する位置に設けられる。より詳細には、3つの接触ユニット101は、たとえば、送電線1U,1V,1Wの各々における鉄塔2の近傍の位置に設けられる。これらの3つの接触ユニット101と鉄塔2との距離は、たとえば略同じである。なお、電線監視システム301は、これらの3つの接触ユニット101に加えて、同じ送電線1における異なる鉄塔2の近傍の位置に設けられた接触ユニット101をさらに備える構成であってもよい。
【0038】
接触ユニット101に含まれる温度センサ111は、送電線1の温度を測定する。より詳細には、温度センサ111は、送電線1自体の温度を測定する。以下、送電線1の温度を「送電線温度Tw」とも称し、温度センサ111による送電線温度Twの実測値を「温度実測値MT」とも称する。
【0039】
接触ユニット101に含まれる気象センサ121は、送電線1の周囲の気象に関する物理量PQを測定する。たとえば、気象センサ121は、物理量PQとして、送電線1の周囲の気温、風速、風向、日射量および降水量を測定する。以下、気象センサ121による物理量PQの実測値を「気象実測値MPQ」とも称する。
【0040】
接触ユニット101に含まれる電流センサ131は、送電線1を通して流れる電流を測定する。より詳細には、電流センサ131は、電流センサ131の設置個所において送電線1を通して流れる電流を測定する。以下、送電線1を通して流れる電流を「送電線電流Cw」とも称し、電流センサ131による送電線電流Cwの実測値を「電流実測値MC」とも称する。
【0041】
転送装置161は、温度センサ111による測定結果、気象センサ121による測定結果および電流センサ131による測定結果を送信する。より詳細には、転送装置161は、たとえば所定の測定周期Cmに従う測定タイミングにおいて、温度センサ111から温度実測値MTを取得し、気象センサ121から気象実測値MPQを取得し、電流センサ131から電流実測値MCを取得する。測定周期Cmは、たとえば10分である。
【0042】
転送装置161は、温度実測値MTとして、所定期間における送電線1の温度の平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。また、転送装置161は、気象実測値MPQとして、所定期間における物理量PQの平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。また、転送装置161は、電流実測値MCとして、所定期間において送電線1を通して流れる電流の平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。転送装置161は、取得した温度実測値MT、電流実測値MC、気象実測値MPQおよび測定時刻t(m)を示すセンサ情報S1を生成する。以下、測定時刻t(m)における温度実測値MTを「温度実測値MT(m)」とも称し、測定時刻t(m)における電流実測値MCを「電流実測値MC(m)」とも称し、測定時刻t(m)における気象実測値MPQを「気象実測値MPQ(m)」とも称する。
【0043】
転送装置161は、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、差出元としての当該転送装置161のID、宛先としての集約装置151のIDおよびセンサ情報S1を含むセンサパケットを作成し、作成したセンサパケットを含む920MHz帯の無線信号を送信する。
【0044】
また、転送装置161は、たとえば、電線監視システム301における他の転送装置161によって送信されたセンサパケットを転送する。より詳細には、転送装置161は、他の転送装置161からセンサパケットを含む無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれるセンサパケットを再び無線信号に含めて送信する。
【0045】
センサパケットの伝送ルートは、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、各転送装置161によって自動的に構築される。図2では、センサパケットの伝送ルートの一例が破線により示されている。この例では、3つの接触ユニット101のうちの1つの接触ユニット101である代表接触ユニットが、作成したセンサパケットを送信するとともに、対応の位置に設けられた他の接触ユニット101から送信されたセンサパケットを受信して転送する。
【0046】
代表接触ユニットは、作成したセンサパケットを収集ユニット102における集約装置151へ送信するとともに、対応の位置に設けられた接触ユニット101から送信されたセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットを収集ユニット102における集約装置151へ送信する。
【0047】
また、たとえば、電線監視システム301において転送装置161が故障した場合、センサパケットの伝送ルートは、他の各転送装置161によって自動的に切り替えられる。
【0048】
集約装置151は、転送装置161からセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットからセンサ情報S1および当該センサ情報S1を生成した転送装置161のIDを取得する。たとえば、集約装置151は、取得した転送装置161のIDを、当該転送装置161を含む接触ユニット101のIDとして扱う。集約装置151は、取得したセンサ情報S1および対応の転送装置161のIDを含む集約情報を、無線通信により検知装置201へ送信する。なお、集約装置151は、集約情報を有線通信により検知装置201へ送信してもよい。
【0049】
検知装置201は、集約装置151から集約情報を受信し、受信した集約情報に基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する。
【0050】
(検知装置)
図3は、本開示の実施の形態に係る検知装置の構成を示す図である。図3を参照して、検知装置201は、受信部11と、処理部12と、記憶部13とを備える。受信部11は、第1取得部の一例であり、第2取得部の一例であり、かつ第3取得部の一例である。処理部12は、検知部の一例である。受信部11および処理部12の一部または全部は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。記憶部13は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。
【0051】
記憶部13は、送電線1の外径および抵抗値等の、送電線1に固有のパラメータである送電線情報を記憶している。また、記憶部13は、送電線1と、当該送電線1に設けられた接触ユニット101における転送装置161のIDとの対応関係を示す対応情報を記憶している。
【0052】
また、たとえば、記憶部13は、送電線温度Twの理論値である温度理論値TTと、温度実測値MTとが所定値以上乖離した回数を示すカウント値CntT、および送電線電流Cwの理論値である電流理論値TCと、電流実測値MCとが所定値以上乖離した回数を示すカウント値CntCを記憶している。また、たとえば、記憶部13は、温度実測値MTと、気象実測値MPQが示す気温とが所定値内に近似した回数を示すカウント値CntSを記憶している。カウント値CntT,CntC,CntSの詳細については後述する。
【0053】
受信部11は、温度センサ111による送電線温度Twの温度実測値MT、電流センサ131による送電線電流Cwの電流実測値MC、および気象データを取得する。たとえば、受信部11は、気象センサ121による計測結果を示す、天候を認識可能な気象データである気象実測値MPQを取得する。より詳細には、受信部11は、集約装置151から集約情報を受信し、受信した集約情報から複数のセンサ情報S1および複数の転送装置161のIDを取得する。受信部11は、センサ情報S1を転送装置161のIDに対応付けて記憶部13に保存する。
【0054】
処理部12は、受信部11により取得された温度実測値MT、電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する検知処理を行う。たとえば、処理部12は、転送装置161のIDごとに、対応のセンサ情報S1および記憶部13における対応情報に基づいて、当該転送装置161に対応する温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する。
【0055】
(検知処理)
処理部12は、温度実測値MTおよび気象実測値MPQに基づいて算出される電流理論値TCと電流実測値MCとを比較するか、または、電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて算出される温度理論値TTと温度実測値MTとを比較する比較処理を行う。処理部12は、転送装置161のIDごとに、対応のセンサ情報S1および記憶部13における対応情報に基づいて比較処理を行い、比較処理の結果に基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する。以下、測定時刻t(m)における電流理論値TCを「電流理論値TC(m)」とも称し、測定時刻t(m)における温度理論値TTを「温度理論値TT(m)」とも称する。
【0056】
たとえば、処理部12は、気象実測値MPQが示す天候に応じて、比較処理の実行を判断する。より詳細には、処理部12は、受信部11により記憶部13にセンサ情報S1が保存されると、当該センサ情報S1における気象実測値MPQが示す降水量と、所定の閾値Thrとを比較し、降水量と閾値Thrとの比較結果に応じて、比較処理の実行を判断する。
【0057】
処理部12は、気象実測値MPQが示す降水量が閾値Thrよりも大きい場合、比較処理を実行することなく、記憶部13におけるカウント値CntS,CntT,CntCをゼロにリセットする。そして、処理部12は、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0058】
一方、処理部12は、気象実測値MPQが示す降水量が閾値Thr以下である場合、比較処理を実行する。
【0059】
(電流変化量Δcの算出)
処理部12は、電流実測値MCの時間変化に基づいて、送電線1の過渡状態を判断し、判断結果に応じて、電流理論値TCの算出方法および温度理論値TTの算出方法を決定する。たとえば、処理部12は、電流実測値MCの時間変化に基づいて、送電線1は過渡状態であると判断するか、または送電線1は定常状態であると仮判断する。ここで、送電線1の定常状態とは、送電線1の発熱および吸熱と、送電線1からの放熱とが平衡した状態である。また、送電線1の過渡状態とは、送電線1が熱平衡に達する前の状態である。
【0060】
より詳細には、処理部12は、センサ情報S1における気象実測値MPQが示す降水量が閾値Thr以下である場合、当該センサ情報S1に基づいて、測定時刻t(m)ごとの電流実測値MCの変化量を示す電流変化量Δcを算出する。以下、測定時刻t(m)に対応する電流変化量Δcを「電流変化量Δc(m)」とも称する。
【0061】
一例として、処理部12は、受信部11により記憶部13にセンサ情報S1が保存されるたびに、当該センサ情報S1における気象実測値MPQが示す降水量と閾値Thrとを比較し、降水量が閾値Thr以下である場合、当該センサ情報S1が示す測定時刻t(n)における電流実測値MC(n)から、当該センサ情報S1よりも1つ前に記憶部13に保存されたセンサ情報S1が示す測定時刻t(n-1)における電流実測値MC(n-1)を差し引いた差分である電流変化量Δc(n)を算出する。
【0062】
処理部12は、算出した電流変化量Δc(n)と、所定の閾値Th1とを比較する。処理部12は、電流変化量Δc(n)が閾値Th1よりも大きい場合、測定時刻t(n)における送電線1は、過渡状態であると判断する。そして、処理部12は、記憶部13におけるカウント値CntS,CntCをゼロにリセットする。
【0063】
一方、処理部12は、電流変化量Δc(n)が閾値Th1以下である場合、測定時刻t(n)における送電線1は、定常状態の可能性があると判断する。すなわち、処理部12は、電流変化量Δc(n)が閾値Th1以下である場合、測定時刻t(n)における送電線1は、定常状態であると仮判断する。そして、処理部12は、記憶部13におけるカウント値CntTをゼロにリセットする。
【0064】
(過渡状態における比較処理)
処理部12は、比較処理において、過渡状態における電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて算出される温度理論値TTと、過渡状態における温度実測値MTとの比較を行う。
【0065】
図4は、本開示の実施の形態に係る検知装置における処理部による温度理論値の算出方法の一例を示す図である。図4において、横軸は時刻であり、縦軸は電流および温度である。図4における実線は、測定時刻t(n-1)から測定時刻t(n)までの期間における送電線温度Twの推移を示している。図4における一点鎖線は、測定時刻t(n-1)から測定時刻t(n)までの期間における送電線電流Cwの推移を示している。
【0066】
図4を参照して、処理部12は、測定時刻t(n)における送電線1は過渡状態であると判断した場合、たとえば非特許文献1に記載されている、過渡状態における送電線温度Twの算出方法CM1に従って、送電線情報およびセンサ情報S1に基づいて温度理論値TT(n)を算出する。処理部12は、算出した温度理論値TT(n)と、センサ情報S1が示す温度実測値MT(n)とを比較する。
【0067】
ここで、算出方法CM1は、測定時刻t(n-1)から測定時刻t(n)までの期間を複数の時間Δtに分割し、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、気象実測値MPQ、および電流実測値MC(n)に基づいて、時間Δtごとの送電線温度Twの変化量を算出して累積することにより、測定時刻t(n)における温度理論値TT(n)を算出する算出方法である。
【0068】
たとえば、処理部12は、電流実測値MC、測定時刻t(n)における気象実測値MPQ(n)、および測定時刻t(n)よりも前の測定時刻t(n-1)における温度実測値MT(n-1)に基づいて算出される温度理論値TT(n)と、測定時刻t(n)における温度実測値MT(n)との比較、および、電流実測値MC、測定時刻t(n-1)における気象実測値MPQ(n-1)、および測定時刻t(n-1)における温度実測値MT(n-1)に基づいて算出される温度理論値TT(n)と、測定時刻t(n)における温度実測値MT(n)との比較を行う。測定時刻t(n)は、第1のタイミングの一例であり、測定時刻t(n-1)は、第2のタイミングの一例である。
【0069】
より詳細には、処理部12は、算出方法CM1に従って、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、電流実測値MC(n)、および気象実測値MPQ(n)に基づいて、温度理論値TT(n)である温度理論値TTA(n)を算出する。温度理論値TTA(n)は、測定時刻t(n-1)から測定時刻t(n)までの期間において、気象実測値MPQ(n)が示す物理量PQが継続したと仮定した場合における温度理論値TT(n)である。
【0070】
また、処理部12は、算出方法CM1に従って、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、電流実測値MC(n)、および気象実測値MPQ(n-1)に基づいて、温度理論値TT(n)である温度理論値TTB(n)を算出する。温度理論値TTB(n)は、測定時刻t(n-1)から測定時刻t(n)までの期間において、気象実測値MPQ(n-1)が示す物理量PQが継続したと仮定した場合における温度理論値TT(n)である。
【0071】
たとえば、処理部12は、算出した温度理論値TTA(n)と、センサ情報S1が示す温度実測値MT(n)との差分の絶対値DtA(n)を算出し、算出した絶対値DtA(n)と所定の閾値Thtとを比較する。また、たとえば、処理部12は、算出した温度理論値TTB(n)と、センサ情報S1が示す温度実測値MT(n)との差分の絶対値DtB(n)を算出し、算出した絶対値DtB(n)と閾値Thtとを比較する。
【0072】
処理部12は、絶対値DtA(n),DtB(n)が閾値Thtよりも大きい場合、記憶部13におけるカウント値CntTをインクリメントする。
【0073】
処理部12は、インクリメントしたカウント値CntTが、所定の異常閾値TarmT以下である場合、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0074】
一方、処理部12は、インクリメントしたカウント値CntTが異常閾値TarmTよりも大きい場合、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断する。たとえば、処理部12は、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断した場合、所定のアラーム通知を行う。
【0075】
一方、処理部12は、絶対値DtA(n),DtB(n)の少なくともいずれか一方が閾値Tht以下である場合、温度センサ111および電流センサ131に異常は発生していないと判断する。そして、処理部12は、記憶部13におけるカウント値CntTをゼロにリセットし、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。なお、処理部12は、絶対値DtA(n),DtB(n)の少なくともいずれか一方が閾値Tht以下である状態、が複数回継続するまでカウント値CntTのリセットを保留し、絶対値DtA(n),DtB(n)の少なくともいずれか一方が閾値Tht以下である状態、が複数回継続した場合、カウント値CntTをゼロにリセットする構成であってもよい。
【0076】
(定常状態における比較処理)
処理部12は、測定時刻t(n)における送電線1は定常状態であると仮判断した場合、気象実測値MPQ(n)が示す気温と、温度実測値MT(t)との差分の絶対値DS(n)を算出し、算出した絶対値DS(n)と所定の閾値ThSとを比較する。
【0077】
処理部12は、絶対値DS(n)が所定の閾値ThS以下である場合、記憶部13におけるカウント値CntSをインクリメントする。
【0078】
処理部12は、インクリメントしたカウント値CntSが、所定の定常閾値ThSX以下である場合、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0079】
一方、処理部12は、インクリメントしたカウント値CntSが定常閾値ThSXよりも大きい場合、測定時刻t(n)における送電線1は、定常状態であると判断する。
【0080】
一方、処理部12は、絶対値DS(n)が閾値ThSよりも大きい場合、記憶部13におけるカウント値CntSをゼロにリセットし、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。なお、処理部12は、絶対値DS(n)が閾値ThS以下である状態が複数回継続するまでカウント値CntSのリセットを保留し、絶対値DS(n)が閾値ThS以下である状態が複数回継続した場合、カウント値CntSをゼロにリセットする構成であってもよい。
【0081】
処理部12は、比較処理において、定常状態における温度実測値MTおよび気象実測値MPQに基づいて算出される電流理論値TCと、定常状態における電流実測値MCとの比較を行う。たとえば、処理部12は、測定時刻t(n)における送電線1は定常状態であると判断した場合、たとえば非特許文献1に記載されている、定常状態における送電線電流Cwの算出方法CM2に従って、送電線情報およびセンサ情報S1に基づいて電流理論値TC(n)を算出する。
【0082】
より詳細には、処理部12は、算出方法CM2に従って、送電線情報、温度実測値MT(n)、および気象実測値MPQ(n)に基づいて、電流理論値TC(n)を算出する。処理部12は、算出した電流理論値TC(n)と、センサ情報S1が示す電流実測値MC(n)とを比較する。
【0083】
たとえば、処理部12は、算出した電流理論値TC(n)と、センサ情報S1が示す電流実測値MC(n)との差分の絶対値Dc(n)を算出し、算出した絶対値Dc(n)と所定の閾値Thcとを比較する。
【0084】
処理部12は、絶対値Dc(n)が閾値Thcよりも大きい場合、記憶部13におけるカウント値CntCをインクリメントする。
【0085】
処理部12は、インクリメントしたカウント値CntCが、所定の異常閾値TarmC以下である場合、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0086】
一方、処理部12は、インクリメントしたカウント値CntCが異常閾値TarmCよりも大きい場合、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断する。たとえば、処理部12は、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断した場合、所定のアラーム通知を行う。
【0087】
一方、処理部12は、絶対値Dc(n)が閾値Thc以下である場合、温度センサ111および電流センサ131に異常は発生していないと判断する。そして、処理部12は、記憶部13におけるカウント値CntCをゼロにリセットし、受信部11により新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。なお、処理部12は、絶対値Dc(n)が閾値Thc以下である状態が複数回継続するまでカウント値CntCのリセットを保留し、絶対値Dc(n)が閾値Thc以下である状態が複数回継続した場合、カウント値CntCをゼロにリセットする構成であってもよい。
【0088】
[動作の流れ]
図5は、本開示の実施の形態に係る検知装置が検知処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0089】
図5を参照して、まず、検知装置201は、集約装置151から集約情報が到来するのを待ち受け(ステップS11でNO)、集約装置151から集約情報を受信すると(ステップS11でYES)、集約情報からセンサ情報S1を取得して記憶部13に保存する(ステップS12)。
【0090】
次に、検知装置201は、取得したセンサ情報S1における気象実測値MPQが示す降水量が閾値Thrよりも大きい場合(ステップS13でNO)、記憶部13におけるカウント値CntS,CntT,CntCをゼロにリセットし(ステップS14)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0091】
一方、検知装置201は、取得したセンサ情報S1における気象実測値MPQが示す降水量が閾値Thr以下である場合(ステップS13でYES)、当該センサ情報S1が示す電流実測値MC(n)から、当該センサ情報S1よりも1つ前に記憶部13に保存したセンサ情報S1が示す電流実測値MC(n-1)を差し引いた差分である電流変化量Δc(n)を算出し、算出した電流変化量Δc(n)と閾値Th1とを比較する(ステップS15)。
【0092】
次に、検知装置201は、電流変化量Δc(n)が閾値Th1よりも大きい場合(ステップS16でYES)、測定時刻t(n)における送電線1は過渡状態であると判断する(ステップS17)。
【0093】
次に、検知装置201は、記憶部13におけるカウント値CntS,CntCをゼロにリセットする(ステップS18)。
【0094】
次に、検知装置201は、過渡状態における比較処理を行い(ステップS19)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0095】
一方、検知装置201は、電流変化量Δc(n)が閾値Th1以下である場合(ステップS16でNO)、測定時刻t(n)における送電線1は定常状態であると仮判断する(ステップS20)。
【0096】
次に、検知装置201は、記憶部13におけるカウント値CntTをゼロにリセットする(ステップS21)。
【0097】
次に、検知装置201は、気象実測値MPQ(n)が示す気温と、温度実測値MT(t)との差分の絶対値DS(n)を算出し、算出した絶対値DS(n)と閾値ThSとを比較する(ステップS22)。
【0098】
次に、検知装置201は、絶対値DS(n)が閾値ThSよりも大きい場合(ステップS23でNO)、記憶部13におけるカウント値CntSをゼロにリセットし(ステップS24)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0099】
一方、検知装置201は、絶対値DS(n)が閾値ThS以下である場合(ステップS23でYES)、記憶部13におけるカウント値CntSをインクリメントする(ステップS25)。
【0100】
次に、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntSが定常閾値ThSX以下である場合(ステップS26でNO)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0101】
一方、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntSが定常閾値ThSXよりも大きい場合(ステップS26でYES)、測定時刻t(n)における送電線1は定常状態であると判断する(ステップS27)。
【0102】
次に、検知装置201は、定常状態における比較処理を行い(ステップS28)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0103】
図6は、本開示の実施の形態に係る検知装置が過渡状態における比較処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図6は、図5におけるステップS19の詳細を示している。
【0104】
図6を参照して、まず、検知装置201は、算出方法CM1に従って、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、電流実測値MC(n)、および気象実測値MPQ(n)に基づいて、温度理論値TTA(n)を算出する。また、検知装置201は、算出方法CM1に従って、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、電流実測値MC(n)、および気象実測値MPQ(n-1)に基づいて、温度理論値TTB(n)を算出する(ステップS31)。
【0105】
次に、検知装置201は、算出した温度理論値TTA(n),TTB(n)と、センサ情報S1が示す温度実測値MT(n)との差分の絶対値DtA(n),DtB(n)をそれぞれ算出する(ステップS32)。
【0106】
次に、検知装置201は、算出した絶対値DtA(n),DtB(n)と閾値Thtとを比較する(ステップS33)。
【0107】
次に、検知装置201は、絶対値DtA(n),DtB(n)の少なくともいずれか一方が閾値Tht以下である場合(ステップS34でNO)、温度センサ111および電流センサ131に異常は発生していないと判断する(ステップS35)。
【0108】
次に、検知装置201は、記憶部13におけるカウント値CntTをゼロにリセットし(ステップS36)、比較処理を終了する。
【0109】
一方、検知装置201は、絶対値DtA(n),DtB(n)が閾値Thtよりも大きい場合(ステップS34でYES)、記憶部13におけるカウント値CntTをインクリメントする(ステップS37)。
【0110】
次に、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntTが異常閾値TarmT以下である場合(ステップS38でNO)、比較処理を終了する。
【0111】
一方、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntTが異常閾値TarmTよりも大きい場合(ステップS38でYES)、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断し、所定のアラーム通知を行い(ステップS39)、比較処理を終了する。
【0112】
図7は、本開示の実施の形態に係る検知装置が定常状態における比較処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図7は、図5におけるステップS28の詳細を示している。
【0113】
図7を参照して、まず、検知装置201は、算出方法CM2に従って、送電線情報、温度実測値MT(n)、および気象実測値MPQ(n)に基づいて、電流理論値TC(n)を算出する(ステップS41)。
【0114】
次に、検知装置201は、算出した電流理論値TC(n)と、センサ情報S1が示す電流実測値MC(n)との差分の絶対値Dc(n)を算出する(ステップS42)。
【0115】
次に、検知装置201は、算出した絶対値Dc(n)と閾値Thcとを比較する(ステップS43)。
【0116】
次に、検知装置201は、絶対値Dc(n)が閾値Thc以下である場合(ステップS44でNO)、温度センサ111および電流センサ131に異常は発生していないと判断する(ステップS45)。
【0117】
次に、検知装置201は、記憶部13におけるカウント値CntCをゼロにリセットし(ステップS46)、比較処理を終了する。
【0118】
一方、検知装置201は、絶対値Dc(n)が閾値Thcよりも大きい場合(ステップS44でYES)、記憶部13におけるカウント値CntCをインクリメントする(ステップS47)。
【0119】
次に、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntCが異常閾値TarmC以下である場合(ステップS48でNO)、比較処理を終了する。
【0120】
一方、検知装置201は、インクリメントしたカウント値CntCが異常閾値TarmCよりも大きい場合(ステップS48でYES)、温度センサ111または電流センサ131に異常が発生したと判断し、所定のアラーム通知を行い(ステップS49)、比較処理を終了する。
【0121】
なお、本開示の実施の形態に係る電線監視システム301では、接触ユニット101は、気象センサ121を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301における一部の接触ユニット101は、気象センサ121を含まない構成であってもよい。気象センサ121を含まない接触ユニット101における転送装置161は、センサ情報S1の代わりに、温度実測値MT、電流実測値MCおよび測定時刻t(m)を示すセンサ情報S2を生成する。この場合、たとえば、検知装置201における処理部12は、気象センサ121を含まない接触ユニット101における転送装置161のIDに対応する温度センサ111または電流センサ131の異常を、当該転送装置161のIDに対応するセンサ情報S2と、当該接触ユニット101の近傍に設けられた他の接触ユニット101において生成されたセンサ情報S1が示す気象実測値MPQとに基づいて検知する。
【0122】
また、電線監視システム301では、接触ユニット101の代わりに、収集ユニット102が気象センサ121を含む構成であってもよい。この場合、収集ユニット102における集約装置151は、気象センサ121から気象実測値MPQを取得する。また、接触ユニット101における転送装置161は、センサ情報S1の代わりに、温度実測値MT、電流実測値MCおよび測定時刻t(m)を示すセンサ情報S2を生成し、生成したセンサ情報S2を含むセンサパケットを作成し、作成したセンサパケットを含む無線信号を送信する。集約装置151は、転送装置161からセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットからセンサ情報S2を取得し、取得したセンサ情報S2に取得した気象実測値MPQを加えることによりセンサ情報S1を生成し、生成したセンサ情報S1を含む集約情報を検知装置201へ送信する。
【0123】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、受信部11により記憶部13にセンサ情報S1が保存されるたびに電流変化量Δcを算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、測定周期Cmよりも長い周期たとえば1日周期で、測定時刻t(m)ごとの電流変化量Δcを算出する構成であってもよい。すなわち、処理部12は、オフラインで検知処理を行う構成であってもよい。
【0124】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、気象実測値MPQが示す天候に応じて、比較処理の実行を判断する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、気象実測値MPQが示す天候に関わらず、比較処理を実行する構成であってもよい。
【0125】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、気象実測値MPQが示す降水量と閾値Thrとの比較結果に応じて、比較処理の実行を判断する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、気象実測値MPQが示す雨の有無に応じて、比較処理の実行を判断する構成であってもよい。この場合、処理部12は、雨が降っている場合、比較処理を実行することなく、記憶部13におけるカウント値CntTをゼロにリセットする一方で、雨が降っていない場合、比較処理を実行する。また、この場合、接触ユニット101に含まれる気象センサ121は、降水量を測定する代わりに、雨の有無を測定する構成であってもよい。
【0126】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、電流実測値MCに基づいて、送電線1の過渡状態を判断し、判断結果に応じて、電流理論値TCの算出方法および温度理論値TTの算出方法を決定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。送電線1の過渡状態の判断を行うことなく、算出方法CM1に従って算出した温度理論値TT(n)および算出方法CM2に従って算出した電流理論値TC(n)を用いて、過渡状態における比較処理および定常状態における比較処理の両方を行う構成であってもよい。
【0127】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、電流実測値MCの代わりに、温度実測値MTに基づいて、送電線1の過渡状態を判断する構成であってもよい。より詳細には、処理部12は、測定時刻t(m)ごとの温度実測値MTの変化量を示す温度変化量Δtに基づいて、送電線1の過渡状態を判断する構成であってもよい。
【0128】
また、処理部12は、電流実測値MCの代わりに、電流実測値MCに加えて、または電流実測値MCおよび温度実測値MTに加えて、気象実測値MPQが示す気温に基づいて、送電線1の過渡状態を判断する構成であってもよい。この場合、処理部12は、測定時刻t(n)における気象実測値MPQ(n)が示す気温から、測定時刻t(n-1)における気象実測値MPQ(n-1)が示す気温を差し引いた差分である気温変化量Δtmp(n)を算出する。処理部12は、算出した気温変化量Δtmp(n)と、所定の閾値Th2とを比較する。処理部12は、気温変化量Δtmp(n)が閾値Th2よりも大きい場合、測定時刻t(n)における送電線1は、過渡状態であると判断する。一方、処理部12は、気温変化量Δtmp(n)が閾値Th2以下である場合、測定時刻t(n)における送電線1は、定常状態であると仮判断する。
【0129】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、過渡状態における比較処理および定常状態における比較処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、過渡状態における比較処理および定常状態における比較処理のいずれか一方を行わない構成であってもよい。
【0130】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、定常状態における温度実測値MTおよび気象実測値MPQに基づいて算出される電流理論値TCと、定常状態における電流実測値MCとの比較を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、定常状態における電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて算出される温度理論値TTと、定常状態における温度実測値MTとの比較を行う構成であってもよい。より詳細には、処理部12は、算出方法CM2に従って、送電線情報、電流実測値MC(n)、および気象実測値MPQ(n)に基づいて、温度理論値TT(n)を算出する。処理部12は、算出した温度理論値TT(n)と、センサ情報S1が示す温度実測値MT(n)との差分の絶対値Dtx(n)を算出し、算出した絶対値Dtx(n)と所定の閾値Thtxとを比較する。処理部12は、絶対値Dtx(n)が閾値Thtxよりも大きい場合、記憶部13におけるカウント値CntCをインクリメントする一方で、絶対値Dtx(n)が閾値Thtx以下である場合、記憶部13におけるカウント値CntCをゼロにリセットする。
【0131】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、温度理論値TTA(n),TTB(n)および絶対値DtA(n),DtB(n)を算出し、算出した絶対値DtA(n),DtB(n)と閾値Thtとを比較する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、絶対値DtA(n),DtB(n)のいずれか一方の算出を行わない構成であってもよい。すなわち、処理部12は、送電線情報、温度実測値MT(n-1)、電流実測値MC(n)、および、ある測定タイミングにおける気象実測値MPQに基づいて、1つの温度理論値TT(n)を算出し、算出した温度理論値TT(n)と温度実測値MT(n)との差分の絶対値Dt(n)を算出し、当該絶対値Dt(n)と閾値Thtとを比較する構成であってもよい。
【0132】
本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、測定時刻t(n)における送電線1は過渡状態であると判断した場合、測定時刻t(n)における温度理論値TT(n)を算出し、算出した温度理論値TT(n)と温度実測値MT(n)とを比較する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、測定周期Cmがたとえば1分程度の短い周期である場合、測定周期Cmごとに送電線1の過渡状態を判断する代わりに、測定周期Cmの数倍の周期である算出周期Ccごとに、送電線1の過渡状態を判断する構成であってもよい。そして、処理部12は、算出周期Ccに従う算出時刻tc(n)における送電線1は過渡状態であると判断した場合、算出時刻tc(n)の1つ前の算出時刻tc(n-1)から算出時刻tc(n)までの期間における測定周期Cmごとの送電線温度Twの変化量を算出して累積することにより、算出時刻tc(n)における温度理論値TT(n)を算出し、算出した温度理論値TT(n)と温度実測値MT(n)とを比較する構成であってもよい。
【0133】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、受信部11は、気象センサ121による計測結果を示す気象実測値MPQを取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。受信部11は、気象実測値MPQの代わりに、電線監視システム301の外部において生成された気象データを取得する構成であってもよい。
【0134】
また、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、処理部12は、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、共通の送電線1に対応して設けられた複数の電流センサ131による電流実測値MCを比較することにより電流センサ131が正常であると判断できる場合において、カウント値CntTが異常閾値TarmTを超えるか、またはカウント値CntCが異常閾値TarmCを超えた場合、温度センサ111に異常が発生したと判断する構成であってもよい。また、処理部12は、共通の送電線1に対応して近傍に設けられた複数の温度センサ111による温度実測値MTを比較することにより温度センサ111が正常であると判断できる場合において、カウント値CntTが異常閾値TarmTを超えるか、またはカウント値CntCが異常閾値TarmCを超えた場合、電流センサ131に異常が発生したと判断する構成であってもよい。
【0135】
ところで、送電線1に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することが可能な技術が望まれる。たとえば、送電線1に対応して設けられる温度センサ111による温度実測値MTは、当該温度センサ111の周囲の気象条件の影響を受けた値となるので、所定値以上の間隔を空けて設けられた複数の温度センサ111による温度実測値MTの比較結果に基づいて、異常な温度センサ111を検知することは困難である。
【0136】
また、複数の温度センサ111を近接して配置し、近接して設けられた複数の温度センサ111による温度実測値MTの比較結果に基づいて異常な温度センサ111を検知する構成では、より多数の温度センサ111が必要となり、高コスト化する。
【0137】
これに対して、本開示の実施の形態に係る検知装置201では、受信部11は、温度センサ111による温度実測値MT、電流センサ131による電流実測値MC、および気象実測値MPQを取得する。処理部12は、受信部11により取得された温度実測値MT、電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する。処理部12は、温度実測値MTおよび気象実測値MPQに基づいて算出される電流理論値TCと電流実測値MCとを比較するか、または、電流実測値MCおよび気象実測値MPQに基づいて算出される温度理論値TTと温度実測値MTとを比較する比較処理を行い、比較処理の結果に基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する。
【0138】
このように、温度センサ111または電流センサ131による物理量の実測値と、当該物理量の理論値との比較結果に基づいて、温度センサ111または電流センサ131の異常を検知する構成により、同じ物理量を測定する複数のセンサの実測値を用いることなく、1台のセンサの実測値と理論値との比較結果に基づいて、実測値の妥当性を判断することができる。そして、これにより、実測値の妥当性の判断結果に応じて当該センサの異常を検知することができる。したがって、送電線1に関する物理量を測定するセンサの異常を簡易な構成でより正確に検知することができる。
【0139】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0140】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0141】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置であって、
前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得する第1取得部と、
前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得する第2取得部と、
気象データを取得する第3取得部と、
前記第1取得部により取得された前記温度実測値、前記第2取得部により取得された前記電流実測値、および前記第3取得部により取得された前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する検知部とを備え、
前記検知部は、前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知し、
前記検知部は、前記電流実測値の変化量に基づいて、前記送電線の定常状態および過渡状態を判断し、判断結果に応じて、前記比較処理における比較対象を決定する、検知装置。
【0142】
[付記2]
送電線の温度である送電線温度を測定する温度センサ、または前記送電線を通して流れる電流である送電線電流を測定する電流センサの異常を検知する検知装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記温度センサによる前記送電線温度の実測値である温度実測値を取得し、
前記電流センサによる前記送電線電流の実測値である電流実測値を取得し、
気象データを取得し、
取得した前記温度実測値、取得した前記電流実測値、および取得した前記気象データに基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知し、
前記温度実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線電流の理論値である電流理論値と前記電流実測値とを比較するか、または、前記電流実測値および前記気象データに基づいて算出される前記送電線温度の理論値である温度理論値と前記温度実測値とを比較する比較処理を行い、前記比較処理の結果に基づいて、前記温度センサまたは前記電流センサの異常を検知する、検知装置。
【符号の説明】
【0143】
1,1U,1V,1W 電線
2 鉄塔
3 回線
11 受信部(第1取得部、第2取得部、第3取得部)
12 処理部(検知部)
13 記憶部
101 接触ユニット
102 収集ユニット
111 温度センサ
121 気象センサ
131 電流センサ
151 集約装置
161 転送装置
201 検知装置
301 電線監視システム
tn,t(n-1) 測定時刻
Cw 送電線電流
Tw 送電線温度
Δt 時間
MC,MC(n) 電流実測値
MT,MT(n),MT(n-1) 温度実測値
TT,TT(n) 温度理論値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7