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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158881
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】実証実験管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0217 20230101AFI20241031BHJP
【FI】
G06Q30/0217
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074488
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大槻 将久
(72)【発明者】
【氏名】山下 大地
(72)【発明者】
【氏名】武島 健太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB07
5L049BB07
(57)【要約】
【課題】実証実験の参加者に対して、実証実験への貢献度に応じた適切なインセンティブを付与することができる技術を提供すること。
【解決手段】本開示は、実証実験を管理する実証実験管理システムに関連する。実証実験管理システムは、1又は複数のプロセッサを備える。1又は複数のプロセッサは、要求項目のうち実証実験の参加者が提供に同意した同意項目についての情報を取得する。要求項目は、実証実験の実施者が参加者に対してデータの提供を求める項目である。また、1又は複数のプロセッサは、同意項目に少なくとも基づいて、参加者の実証実験への貢献度を算出する。またし、1又は複数のプロセッサは、少なくとも算出した貢献度に基づいて、実施者が参加者に対して支払うインセンティブを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実証実験を管理する実証実験管理システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
要求項目は、前記実証実験の実施者が前記実証実験の参加者に対してデータの提供を求める項目であり、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記要求項目のうち前記参加者が提供に同意した同意項目についての情報を取得し、
少なくとも前記同意項目に基づいて、前記参加者の前記実証実験への貢献度を算出し、
少なくとも前記貢献度に基づいて、前記実施者が前記参加者に対して支払うインセンティブを決定する
ように構成された
実証実験管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の実証実験管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記同意項目の数、前記同意項目の種類、及び前記要求項目に対する前記同意項目の割合の少なくともいずれか基づいて、前記貢献度を算出する
ように構成された
実証実験管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の実証実験管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記参加者による前記実施者へのフィードバック、及び前記参加者の前記実証実験への参加率の少なくともいずれかに更に基づいて、前記貢献度を算出する
ように構成された
実証実験管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の実証実験管理システムであって、
前記参加者毎、あるいは、前記実証実験の種類毎に前記インセンティブの適正度を示すデータベースを格納する1又は複数の記憶装置を更に備え、
前記1又は複数のプロセッサは、前記データベースから前記適正度を取得し、取得した前記適正度及び前記貢献度に基づいて、前記インセンティブを決定するように構成された
実証実験管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の実証実験管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記参加者からの前記インセンティブに対する評価を受け付け、
前記参加者に対して過去に支払われた前記インセンティブに対する前記参加者からの前記評価に基づいて、前記適正度を算出して前記データベースを生成、更新する
ように構成された
実証実験管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実証実験を管理する実証実験管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一定の予算の下でデータ市場実験を計画する装置及び方法を開示している。データ市場実験は、医学的検査、市場調査、オンライン調査などを含む多くの用途を有する。
【0003】
なお、本開示の技術分野或いはそれに関連する技術分野における出願時の技術レベルを示す文献としては、特許文献1の他にも下記の特許文献2及び特許文献3を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-509307号公報
【特許文献2】特開2006-004324号公報
【特許文献3】特許第5515781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新たな製品や技術の実用化にあたって有効性を検証する手法の1つとして、実証実験が知られている。実証実験は、製品や技術を実際の場面で使用して行われる実験である。実証実験の実施者にとっては、正確な検証を行うためにも、実証実験を通じて多くの参加者のデータが得られることが望ましい。そこで、実証実験に参加することへの動機づけとして、それぞれの参加者に対してインセンティブを付与することを考える。インセンティブを、それぞれの参加者の実証実験への貢献度に応じた適切なものとすることができれば、参加者が実証実験に参加することへのモチベーションを高めることができる。
【0006】
本開示の1つの目的は、実証実験の参加者に対して、実証実験への貢献度に応じた適切なインセンティブを付与することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、実証実験を管理する実証実験管理システムに関連する。実証実験管理システムは、1又は複数のプロセッサを備える。1又は複数のプロセッサは、要求項目のうち実証実験の参加者が提供に同意した同意項目についての情報を取得する。要求項目は、実証実験の実施者が参加者に対してデータの提供を求める項目である。また、1又は複数のプロセッサは、同意項目に少なくとも基づいて、参加者の実証実験への貢献度を算出する。また、1又は複数のプロセッサは、少なくとも算出した貢献度に基づいて、実施者が参加者に対して支払うインセンティブを決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、参加者の実証実験への貢献度が算出され、算出された貢献度に基づいて参加者に支払われるインセンティブが決定される。貢献度は、少なくとも参加者がデータを提供することに同意した同意項目に基づいて算出される。
【0009】
参加者が提供に同意したデータは実施者によって活用される。つまり、参加者は自身に関連したデータを提供することで実証実験に貢献する。また、項目ごとに参加者の同意を得た上で実施者がデータを取得することは、実証実験に特有である。そのため、同意項目についての情報に基づいて貢献度が算出されることで、実証実験の特性を考慮した適切な貢献度の評価を行うことができる。こうして算出された貢献度に基づいてインセンティブが決定されることで、参加者に対して適切なインセンティブを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る実証実験管理システムの構成例を示す概念図である。
図2】本実施の形態に係る管理装置が実証実験に際して取得するデータの例を示す表である。
図3】1つ目の実施形態に係る実証実験管理システムについて説明するための図である。
図4】2つ目の実施形態に係る実証実験管理システムについて説明するための図である。
図5】2つ目の実施形態においてデータベースに含まれる情報の別の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
1.実証実験管理システムの概要
図1は、実証実験を管理する実証実験管理システム10の構成例を示す概念図である。実証実験管理システム10は、管理装置11と、管理装置11と結合した記憶装置12とを含む。
【0013】
管理装置11は、実証実験を管理するサーバである。管理装置11は、1又は複数のプロセッサ111(以下、単にプロセッサ111と呼ぶ)、及び1又は複数のメモリ112(以下、単にメモリ112と呼ぶ)を備える。プロセッサ111は、各種処理を実行する。プロセッサ111が実行する処理により、管理装置11の機能が実現される。メモリ112は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ111が使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。
【0014】
記憶装置12は、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)といった不揮発性の記憶媒体である。記憶装置12には、管理装置11による実証実験の管理に必要な各種プログラム及び各種データが格納されている。記憶装置12に格納される各種データには、後述するデータベースが含まれる。記憶装置12は、複数であってもよい。また、記憶装置12は、管理装置11に含まれていてもよい。
【0015】
管理装置11は、実証実験の実施者20が所有する実施者端末21と通信することができる。実施者20及び実施者端末21は複数であってもよい。実施者20は、実施を希望する実証実験を管理装置11に登録する。また、実施者20は、実証実験を行うにあたって必要な情報を管理装置11に送信する。例えば、実施者20は、実証実験の内容や、希望する日時、取得を希望するデータなどについての情報を管理装置11に送信する。実施者20は、管理装置11とのこれらの情報の送受信を実施者端末21を通じて行う。
【0016】
管理装置11は、実証実験管理システム10の複数のユーザ30A、30B、30Cがそれぞれ所有するユーザ端末31A、31B、31Cと通信を行うことができる。以下、参加者を示す符号としては、1の参加者を特定する場合は符号30A、30B、30Cを用いるが、任意の参加者を指す場合及び総称する場合は符号30を用いる。また、参加者端末を示す符号としては、1つを特定する場合は符号31A、31B、31Cを用いるが、任意の参加者端末を指す場合及び総称する場合は符号31を用いる。
【0017】
実施者20によって新たな実証実験が管理装置11に登録されると、管理装置11は、当該実証実験に関する情報をユーザ端末31を通じてユーザ30に通知する。ユーザ30は、通知された実証実験への参加を希望する場合には、参加に必要な情報をユーザ端末31を通じて管理装置11に登録する。実施者20の募集条件とユーザ30の条件が合致すれば、ユーザ30の実証実験への参加が決定する。
【0018】
実証実験の参加者となったユーザ30は、実証実験において、自身に関連したデータを実施者20に提供する。ユーザ30に関するデータは、まず、ユーザ端末31などの端末装置から管理装置11によって取得される。そして、管理装置11が実施者端末21に取得したデータを送信することで、実施者20にデータが提供される。管理装置11から実施者端末21へ送信されるデータは端末装置から取得されたデータそのものであってもよいし、データ集計などの処理が行われたデータであってもよい。
【0019】
図2は、実証実験に際して管理装置11によって取得される、参加者(ここでは、ユーザ30A)に関連するデータの例を説明するための表である。
【0020】
要求項目は、実施者20が、実証実験の参加者に対してデータの提供を求める項目である。実証実験の参加者は、それぞれの要求項目ごとに、実施者20にデータを提供するか否かを選択することができる。以下、要求項目のうち、実証実験の参加者がデータの提供に同意した項目を同意項目と呼ぶ。同意項目についての参加者のデータは、端末装置を通じて管理装置11によって取得される。このとき、管理装置11は、同意が得られなかった項目についての参加者のデータは取得しない。こうして、参加者のプライバシーに配慮しつつ、参加者のデータが管理装置11によって集められる。
【0021】
例えば、実施者20は、実証実験D1の中で、参加者の年齢、性別、呼吸数、脈拍、体温に関するデータの提供を求めている。その中で、ユーザ30Aは呼吸数及び脈拍に関するデータの提供に同意している。そこで、管理装置11は、ユーザ30Aの呼吸数及び脈拍に関するデータを取得し、年齢、性別、及び体温に関するデータは取得しない。
【0022】
また、実施者20は、参加者に対して実証実験についてのフィードバックを求めることもできる。参加者からのフィードバックは、実施者20からの要求に応答して、参加者によって自発的に行われる。フィードバックの例としては、アンケートへの回答が挙げられる。アンケートは、実施者20からの要求に基づいて管理装置11によって実施される。例えば、実証実験D1においては、管理装置11によって50問の設問からなるアンケートが実施され、ユーザ30Aはそのうちの20問に回答している。回答は、ユーザ30Aによってユーザ端末31Aに入力され、管理装置11によって取得される。
【0023】
また、それぞれの実証実験は複数回行われてもよく、この場合、参加者がそれぞれの回ごとに参加又は不参加を選択可能であってもよい。例えば、実証実験D2は3回行われ、ユーザ30Aはそのうちの1回目と3回目に参加し、2回目には参加していない。
【0024】
再び図1を参照する。実施者20にとっては、データの偏りを減らして実証実験を有意義なものとするために、実証実験への参加を希望するユーザ30の数は多いことが望ましいし、それぞれの参加者から取得できる情報の量は多いことが望ましい。そこで、ユーザ30への実証実験への参加及びデータ提供への動機づけとして、実証実験に参加したユーザ30に対してインセンティブを付与することが行われる。インセンティブは、実施者20から直接参加者に対して付与されてもよいし、管理装置11を介して参加者に付与されてもよい。また、インセンティブは、金銭や企業通貨などによって支払われてもよい。ただし、一般的には、物やサービスなどで支払われることが多い。
【0025】
参加者に対して支払われるインセンティブを実証実験への参加者の貢献度に応じた適切なものとできれば、より多くの実証実験への参加及びより多くのデータ提供を、更に効果的にユーザ30に促すことができる。以下、貢献度に応じた適切なインセンティブを参加者に付与するための、実証実験管理システム10の実施形態を2つ説明する。
【0026】
2.1つ目の実施形態
貢献度に応じた適切なインセンティブが支払われるためには、それぞれの参加者の実証実験への貢献度が適切に評価される必要がある。そこで、実施形態の1つ目として、管理装置11による参加者の貢献度の算出について説明する。
【0027】
図3は、管理装置11が貢献度を算出するために用いる情報の例を示す表である。図3の表には、それぞれのユーザ30の同意項目についての情報、参加率、及びフィードバックが、実証実験ごとに示されている。管理装置11は、これらの情報を、実証実験に際して端末装置から取得するデータに基づいて算出することができる。管理装置11は、これらの情報のうちの少なくとも1つの項目に基づいて貢献度を算出する。
【0028】
ここでは、同意項目についての情報として、同意項目の割合が用いられている。同意項目の割合は、それぞれの実証実験における要求項目に対する同意項目の割合である。例えば、実証実験D1において、ユーザ30Aは5つの要求項目のうちの3つの項目について、データの提供に同意している。そのため、同意項目の割合は60%として算出されている。
【0029】
管理装置11は、同意項目の割合に基づいて貢献度を算出する場合、同意項目の割合が大きくなるほど貢献度が高くなるように、貢献度を算出する。
【0030】
管理装置11は、同意項目についての情報として、同意項目の割合以外の情報を用いて貢献度を算出してもよい。例えば、管理装置11は、同意項目の数に基づいて貢献度を算出してもよい。この場合、管理装置11は、同意項目の数が多くなるほど貢献度が高くなるように、貢献度を算出する。
【0031】
あるいは、管理装置11は、同意項目の種類に基づいて貢献度を算出してもよい。実施者20にとっては、要求項目の種類によってデータを取得することの重要度に差がある場合がある。このような場合は、重要度の高さに応じてそれぞれの項目に重みづけをした上で、同意項目の数や割合から貢献度が算出されてもよい。例えば、図2の実証実験D1の例において、データを集計する際の偏りを減らす上では、呼吸数、脈拍、及び体温のデータが取得されることよりも、年齢及び性別のデータが取得されることの方が実施者20にとって重要である。そこで、管理装置11は、同意項目に呼吸数、脈拍、及び体温のいずれかが含まれる場合よりも、年齢及び性別のいずれかが含まれる場合の方が貢献度が高くなるように、参加者の貢献度を算出してもよい。
【0032】
あるいは、要求項目の種類によって、参加者からの同意の得やすさに差がある場合がある。例えば、図2の実証実験D2において、年齢やカメラの起動回数のデータと比較して、GPSデータや写真データは参加者にとってプライベートな情報のため、データの提供についての同意が得にくい可能性がある。そこで、GPSデータ及び写真データが同意項目に含まれる場合はそうでない場合よりも貢献度が高くなるように、貢献度が算出されてもよい。
【0033】
なお、同意項目についての情報に基づいて参加者の実証実験に対する貢献度を算出する方法は、実証実験に特有の貢献度の算出方法である。つまり、実証実験においては、実際の場面で製品や技術を使用することで実験が行われるため、参加者のプライバシーに配慮するために、参加者の同意を得てからデータを集める必要がある。これは、実証実験に特有である。
【0034】
参加率は、複数行われた実証実験に対して、ユーザ30が参加した割合である。例えば、実証実験D2は3回行われ、ユーザ30Aはそのうちの2回に参加しているため、参加率は60%として算出されている。貢献度が参加率に基づいて算出される場合、管理装置11は、参加率が高くなるほど貢献度が高くなるように、貢献度を算出する。なお、実証実験が1回しか行われていない場合は、参加率は算出されなくてもよいし、100%として算出されてもよい。
【0035】
また、管理装置11は、参加者からのフィードバックを評価して、評価の結果を貢献度の算出に用いてもよい。ここでは、フィードバックの評価は、アンケートへの回答率によって行われている。管理装置11は、フィードバックについての評価に基づいて貢献度を算出する場合、評価が大きいほど貢献度が高くなるように、貢献度を算出する。例えば、参加者からのフィードバックがアンケートへの回答であれば、回答率が高いほど貢献度が高くなるように、貢献度を算出する。
【0036】
管理装置11は、これらの情報のうち、同意項目についての情報に基づいて貢献度を算出してもよい。同意項目についての情報に基づいて貢献度を算出することで、実証実験の特性を踏まえた適切な貢献度を算出することができる。
【0037】
あるいは、管理装置11は、同意項目についての情報、参加率、及びフィードバックに対する評価の3つを全て用いて貢献度を算出してもよい。より多くの情報に基づいて貢献度を算出することで、より実態に即した適切な貢献度を算出することができる。
【0038】
以上のように、1つ目の実施形態の実証実験管理システム10によれば、参加者の実証実験への貢献度を適正に算出することができる。貢献度が適切に算出されることで、貢献度に基づいて決定されるインセンティブについても適切なものとすることができる。こうして、参加者に対して、実証実験への貢献度に応じた適切なインセンティブを支払うことができ、インセンティブの支払いによる、ユーザ30の実証実験への参加及びデータ提供への動機づけとしての効果を高めることができる。
【0039】
なお、算出された貢献度に基づくインセンティブは任意に決定することができる。例えば、管理装置11によって算出された貢献度は、参加者に付与されるインセンティブの量に反映されてもよい。例えば、貢献度の低い参加者に対してはジュース1本をインセンティブとして支払い、貢献度の高い参加者に対してはジュース3本をインセンティブとして支払う、といったことが想定される。
【0040】
あるいは、算出された貢献度は、付与されるインセンティブの種類に反映されてもよい。例えば、貢献度の低い参加者に対しては市場に多く流通する一般的なコーヒー飲料をインセンティブとして支払い、貢献度の高い参加者に対してはオリジナルブレンドのコーヒー飲料をインセンティブとして支払う、といったことが想定される。あるいは、後述されるインセンティブの適正度についての情報を用い、貢献度の高い参加者には適正度の高いインセンティブを支払い、貢献度の低い参加者には適正度の低いインセンティブを支払ってもよい。インセンティブの適正度については、2つ目の実施形態において説明される。
【0041】
また、参加者に支払われるインセンティブは、管理装置11によって決定されてもよい。この場合、管理装置11は、決定したインセンティブについての情報を実施者20に通知してもよい。あるいは、実施者20が参加者に支払うインセンティブを決定してもよい。この場合、管理装置11は、算出された貢献度についての情報を、実施者端末21を通じて実施者20に送信する。実施者20は、管理装置11から取得した参加者の貢献度に基づいてインセンティブを決定することができる。
【0042】
3.2つ目の実施形態
貢献度に応じた適切なインセンティブをユーザ30に付与するためには、参加者のニーズに合ったインセンティブを知ることができるとより効果的である。そこで、実施形態の2つ目として、実証実験管理システム10による、インセンティブの適正度に関するデータベースの構築について説明する。2つ目の実施形態は、インセンティブが物やサービスによって支払われる場合の実施形態である。
【0043】
管理装置11は、実証実験に際して支払われるインセンティブに対する、参加者からの評価を受け付けることができる。実証実験に参加してインセンティブを受け取ったユーザ30は、ユーザ端末31に評価を入力し、管理装置11はユーザ端末31と通信を行って入力された評価を取得する。そして、管理装置11は、取得した評価に基づいて、インセンティブの適正度についてのデータベースを構築する。構築されたデータベースは、記憶装置12に格納される。
【0044】
図4は、構築されるデータベースに含まれる、インセンティブの適正度についての情報の例を示す表である。図4の表には、過去に支払われたインセンティブの内容と、それぞれのインセンティブの適正度が、ユーザ30毎に示されている。
【0045】
ここでは、適正度は点数として算出されており、点数が高いほど適正度が高いことを意味する。管理装置11は、データベースを構築する際には、なるべく多くの種類のインセンティブがそれぞれの参加者に対して支払われるように、それぞれの参加者に対するインセンティブを決定する。このとき、図4のように、それぞれ異なるインセンティブが、複数回の実証実験のそれぞれで1つずつ付与されてもよい。あるいは、1回の実証実験において付与されるインセンティブが複数の種類を含むように決定されてもよい。そして、管理装置11は、それぞれのインセンティブに対する参加者からの評価を受け付け、評価が高いインセンティブほど適正度が高くなるように、適正度を算出する。適正度の算出の例として、参加者からの評価が点数で付けられる場合は、参加者が付けた評価がそのまま適正度とされてもよい。
【0046】
こうして算出されたインセンティブの適正度についての情報は、データベースとして記憶装置12に格納される。記憶装置12に格納されたデータベースは、その後の実証実験において参加者に対して支払うインセンティブを決定する際に役立てることができる。
【0047】
例えば、データベースの構築後、ユーザ30Dが新たな実証実験に参加したとする。管理装置11は、データベースから、ユーザ30Dに対して支払われるインセンティブの適正度についての情報を取得する。ユーザ30Dに対してのインセンティブの適正度は、ポテトチップスやチョコレートが特に高い。これは、ユーザ30Dがインセンティブとしてポテトチップスやチョコレート特に好んでいることを意味する。そこで、管理装置11は、これらをユーザ30Dに対して新たに支払うインセンティブとして決定する。ユーザ30D以外のユーザ30が新たな実証実験に参加した場合も同様である。こうすることで、それぞれの参加者のニーズに合ったインセンティブを付与することができ、受け取ったインセンティブへの参加者の満足度を高めることができる。
【0048】
データベースに含まれるインセンティブの適正度についての情報の別の例として、それぞれのインセンティブの適正度は、ユーザ30毎ではなく、実証実験の内容毎に算出されてもよい。図5は、インセンティブの適正度についての情報の別の例を示す表である。
【0049】
同じ内容の実証実験に参加する参加者は、物やサービスの好みも似た傾向を示す可能性がある。例えば、サウナに関する実証実験の参加者は全体的にオレンジジュースよりもスポーツドリンクを好む傾向にあるのに対し、お菓子に関する実証実験の参加者は、全体的にスポーツドリンクよりもオレンジジュースを好む傾向にある、といったことが考えられる。そこで、管理装置11は、図5のように実証実験の内容毎に算出されたインセンティブの適正度についての情報をデータベースとして構築してもよい。
【0050】
この場合、管理装置11は、予め複数の種類のインセンティブを用意しておき、実証実験の参加者に対してそれらをランダムに付与する。そして、管理装置11は、インセンティブの種類毎に参加者からのインセンティブに対する評価を集計し、参加者からの評価が高いインセンティブほど適正度が高くなるように、適正度を算出する。例えば、それぞれのインセンティブに対する参加者の評価の平均値が適正度とされてもよい。
【0051】
こうして構築されたデータベースは、記憶装置12に格納され、その後の実証実験においてインセンティブを決定する際に役立てることができる。
【0052】
例えば、サウナに関する実証実験におけるインセンティブとしては、スポーツドリンクやバスタオルの適正度が特に高い。これは、サウナに関する実証実験への参加を希望するユーザ30は、インセンティブとしてスポーツドリンクやバスタオルを好む傾向にあることを意味する。そこで、管理装置11は、これらをインセンティブとして決定する。こうして、ユーザ30のニーズに合ったインセンティブを支払うことができ、インセンティブを受け取った参加者の満足度を高めることができる。
【0053】
また、インセンティブが物やサービスによって支払われる場合、インセンティブの付与は商品の宣伝としての役割を兼ねる場合もある。そのため、実施者20がインセンティブの支払いを協力先の企業に依頼する場合もある。このような場合にも、協力先の企業を探す目的で、図5のようなインセンティブの適正度についての情報を活用することができる。例えば、サウナに関する実証実験の実施者20が菓子メーカー又は飲料メーカーに協力を依頼することを考えていたとする。図5の情報によれば、サウナに関する実証実験の参加者に対するインセンティブとしての適正度は、ポテトチップスやチョコレートよりもオレンジジュースやスポーツドリンクの方が高い。そこで、実施者20は、協力を依頼する先の企業として飲料メーカーを選択する。飲料メーカーにとっては、自社の製品が好まれる可能性が高いユーザ30に自社の製品を配布できるというメリットがあるため、協力を得られる可能性が高くなる。
【0054】
また、構築されるデータベースは、更に次のようにして算出された情報を含んでいてもよい。管理装置11は、実証実験の内容に加えて、更に細かい区分毎にインセンティブの適正度を算出してもよい。例えば、管理装置11は、年齢、性別などの参加者の属性毎にインセンティブの適正度を算出してもよい。このように算出された情報についても、その後の実証実験において参加者に支払うインセンティブを決定する際に活用することができる。これにより、参加者の属性に合わせてより適正度の高いインセンティブを決定することができ、インセンティブをより参加者のニーズに合ったものとすることができる。
【0055】
なお、インセンティブの適正度についての情報が参加者毎の情報である場合、及び実証実験の内容毎の情報である場合のいずれにおいても、記憶装置12に格納されたデータベースを使ってインセンティブを決定する主体は、管理装置11であってもよいし、実施者20であってもよい。実施者20が決定主体となる場合は、管理装置11から実施者20に対して、構築された情報の一部又は全部が提供され、実施者20は提供された情報に基づいてインセンティブを決定する。
【0056】
以上のように、2つ目の実施形態の実証実験管理システム10によれば、支払われたインセンティブに対する参加者からの評価が受け付けられ、受け付けた評価を基にインセンティブの適正度が算出される。そして、算出されたインセンティブの適正度についての情報がデータベースとして構築される。データベースは、管理装置11によって、あるいは実施者20によって活用されることで、インセンティブを参加者のニーズに合った適切なものとするために役立てることができる。こうして、ユーザ30による実証実験への参加のモチベーションを高め、ユーザ30の実証実験への参加の動機づけとしての、インセンティブの付与の効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…実証実験管理システム、 11…管理装置、 12…記憶装置
20…実施者、 21…実施者端末、 30…ユーザ、 31…ユーザ端末
111…プロセッサ、 112…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5