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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158882
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A47J27/00 103P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074491
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
(72)【発明者】
【氏名】下峰 実
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祥紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐輝
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA28
4B055CA39
4B055CA68
4B055CC26
4B055CC28
4B055FA09
4B055GA11
4B055GB25
4B055GC33
(57)【要約】
【課題】内部が加圧状態のときに蓋体が開かないようにする係止解除防止機構について、従来と比較して部品点数を減らし、製造コストを抑制した炊飯器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器は、鍋4を収容する本体1と、本体1の上部開口を開閉する蓋体2を備え、蓋体2は、クランプボタン13と、クランプ42と、ロックバネ43と、を有し、蓋体2を閉塞するとクランプ42が本体1に係止し、クランプ42は、蓋体2に回動可能に設けられ、蓋体2を閉塞した状態で鍋4の内部の圧力が所定値未満の場合に、クランプボタン13を操作するとクランプ42が回動し、本体1とクランプ42との係止が解除され、蓋体2を閉塞した状態で鍋4の内部の圧力が所定値以上の場合に、クランプボタン13を操作するとロックバネ43が弾性変形し、本体1とクランプ42との係止が維持される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を収容する収容容器を収容する本体と、
前記本体に回動可能に軸支され、前記本体の上部開口を開閉する蓋体と、を備え、
前記蓋体は、前記蓋体を開放操作する蓋開操作体と、前記本体に係止する係止具と、前記蓋開操作体と前記係止具との間に配設された板バネと、を有し、
前記蓋体を閉塞すると前記係止具が前記本体に係止し、
前記係止具は、前記蓋体に回動可能に設けられ、
前記蓋体を閉塞した状態で前記収容容器の内部の圧力が所定値未満の場合に、前記蓋開操作体を操作すると前記係止具が回動し、前記本体と前記係止具との係止が解除され、
前記蓋体を閉塞した状態で前記収容容器の内部の圧力が前記所定値以上の場合に、前記蓋開操作体を操作すると前記板バネが弾性変形し、前記本体と前記係止具との係止が維持されることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記板バネは、前記蓋体に形成された当接受部に当接する当接部を有し、
前記当接部が前記当接受部に当接すると、前記板バネが一定量以上弾性変形することを規制することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記収容容器の内部の圧力が前記所定値未満の場合に前記係止具を回動させるために必要な力である第1の回動力と、
前記板バネを弾性変形させるために必要な力である変形力と、
前記収容容器の内部の圧力が前記所定値以上の場合に前記係止具を回動させるために必要な力である第2の回動力と、を比較すると、
前記第1の回動力よりも前記変形力が大きく、前記変形力よりも前記第2の回動力が大きいことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記収容容器の内外を連通する蒸気排出経路と、
前記蒸気排出経路を開閉する弁体と、
前記弁体を移動させて前記蒸気排出経路の開閉を制御する開閉制御装置と、を有し、
前記蒸気排出経路が閉塞されているときに、前記開閉制御装置が前記係止具の回動を規制することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部が加圧状態のときに蓋体が開かないようにする係止解除防止機構を備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、特許文献1に示すような特許を有している。特許文献1に記載された炊飯器は、蓋開操作体(14)を押すと、本体(1)と蓋体(2)との係止が解除され、本体(1)の上部後方に設けたヒンジバネにより、ヒンジ軸を回転中心として蓋体(2)が開く構成となっている。
【0003】
また、特許文献1に記載された炊飯器は、炊飯工程において鍋(4)の内部が加圧状態となる。鍋(4)の内部が加圧状態のときに蓋開操作体(14)を押動操作した場合に、蓋体(2)が開く構造であると、蓋体(2)が勢いよく開くなどの危険がある。そのため、当該炊飯器は、鍋(4)の内部が加圧状態のときに蓋開操作体(14)を押動操作しても蓋体(2)が開かないようにする構造が用いられている。
【0004】
この構造については特許文献1において説明されていないため、図11および図12を参照して説明する。蓋体(2)を閉じると、蓋体(2)に軸支されたクランプ142が本体(1)に設けられたクランプ受部146に係止する。クランプ142には、円錐バネ143がストッパ148とシャフト149により取り付けられている。この円錐バネ143は蓋開操作体(14)の下方に配設されている。
【0005】
円錐バネ143の反力は、クランプ142を回動させるために必要な力よりも大きく設定されている。鍋(4)の内部の圧力が所定値未満の場合には、蓋開操作体(14)を押動操作することで、蓋開操作体(14)を押す力が円錐バネ143を介してクランプ142に伝達し、この力によりクランプ142が回動してクランプ142とクランプ受部146との係止が解除され蓋体(2)が開く。
【0006】
一方、鍋(4)の内部の圧力が所定値以上の場合には、内圧により蓋体(2)と共にクランプ142が上方向に僅かに移動する。そのため、クランプ142とクランプ受部146との係止がより強固となり、クランプ142を回動させてクランプ142とクランプ受部146との係止を解除すために必要な力が円錐バネ143の反力よりも大きくなる。そうすると、蓋開操作体(14)を押動操作した場合に円錐バネ143が弾性変形で圧縮され、クランプ142は回動しない。そのため、クランプ142とクランプ受部146との係止が維持されて蓋体(2)は開かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第7235913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の炊飯器は、円錐バネ143をストッパ148とシャフト149によりクランプ142に取り付ける際に、カシメの工程があり、部品点数が多く、製造コストが高いという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、内部が加圧状態のときに蓋体が開かないようにする係止解除防止機構について、従来と比較して部品点数を減らし、製造コストを抑制した炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る炊飯器は、被炊飯物を収容する収容容器を収容する本体と、前記本体に回動可能に軸支され、前記本体の上部開口を開閉する蓋体と、を備え、前記蓋体は、前記蓋体を開放操作する蓋開操作体と、前記本体に係止する係止具と、前記蓋開操作体と前記係止具との間に配設された板バネと、を有し、前記蓋体を閉塞すると前記係止具が前記本体に係止し、前記係止具は、前記蓋体に回動可能に設けられ、前記蓋体を閉塞した状態で前記収容容器の内部の圧力が所定値未満の場合に、前記蓋開操作体を操作すると前記係止具が回動し、前記本体と前記係止具との係止が解除され、前記蓋体を閉塞した状態で前記収容容器の内部の圧力が前記所定値以上の場合に、前記蓋開操作体を操作すると前記板バネが弾性変形し、前記本体と前記係止具との係止が維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯器によれば、内部が加圧状態のときに蓋体が開かないようにする係止解除防止機構について、従来と比較して部品点数を減らし、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す炊飯器の斜視図である。
図2】同、蒸気排出経路を開口した状態の炊飯器の縦方向の縦断面図である。
図3】同、蒸気排出経路を閉塞した状態の炊飯器の縦方向の縦断面図である。
図4】同、炊飯器の横方向の縦断面図である。
図5】同、蒸気排出経路を開口した状態の外蓋を外した蓋体の斜視図である。
図6】同、蒸気排出経路を閉塞した状態の外蓋を外した蓋体の斜視図である。
図7】同、クランプの斜視図である。
図8】同、係止解除防止機構とその周辺を示す断面図である。
図9】同、クランプの当接部の軌跡とロックバネの後端部の軌跡を示す説明図である。
図10】同、炊飯器の主な電気的構成を示すブロック図である。
図11】従来の炊飯器のクランプの斜視図である。
図12】従来の炊飯器の係止解除防止機構とその周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0014】
図1図10は、本発明における炊飯器の一実施形態を示している。先ず炊飯器全体の構成を図1図4に基づいて説明すると、1は本体であり、上方から見て前面と後面、左側面と右側面が対向する略矩形状をなし、上部が開口している。2は本体1の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体であり、本体1と同様に、上方から見て前面と後面、左側面と右側面が対向する略矩形状をなし、上面が略平坦に構成されている。本体1は上部を開口した鍋収容部3を有し、蓋体2を開いたときに、被炊飯物である水や米を収容する収容容器としての有底状の鍋4が、その鍋収容部3に着脱自在に収容される構成となっている。鍋収容部3は、椀状で樹脂製の内枠5などを組み合わせて構成され、全体が有底筒状に形成される。
【0015】
鍋4は、熱伝導性の良いアルミニウムを主材6とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体7が、主材6の外面の側部下部から底部にかけて接合してある。また、鍋4の側面下部から底面に対向する内枠5の外面には、鍋4の発熱体7を電磁誘導加熱する加熱手段として、加熱コイル8を備えている。そして加熱コイル8に高周波電流を供給すると、加熱コイル8から発生する交番磁界によって鍋4の発熱体7が発熱し、炊飯時と保温時に鍋4内の被炊飯物を加熱する構成となっている。また内枠5の底部中央部には、鍋温度検出手段としての鍋センサ9が、鍋4の外面底部と弾発的に接触するように配設される。
【0016】
蓋体2の外形は、外蓋10と、この外蓋10の下方開口部を覆うように取付けられる外蓋カバー11と、で概ね形成されている。また蓋体2の後部には本体1との連結部となるヒンジ部12が設けられる。そして蓋体2の前方上面には、開放操作する蓋開操作体であるクランプボタン13が露出状態で配設されており、外蓋10とクランプボタン13との間に、隙間Gが形成される。ここでクランプボタン13を押動操作すると、本体1と蓋体2との係止が解除され、本体1の上部後方に設けたヒンジバネ14により、ヒンジ部12のヒンジ軸15を回転中心として蓋体2が開く構成となっている。
【0017】
蓋体2の後方上面には、鍋4内の被炊飯物から発生する蒸気を炊飯器の外部に排出する蒸気口16が配設される。また蓋体2の上面には、この蒸気口16やクランプボタン13の他に、炊飯に関わる様々な情報を表示するための、画面表示部としてのLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)17や状態表示部としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)表示部18などで構成される表示手段と、タッチセンサで構成されてLCD16の上方に配設され、炊飯を開始させたり、時間や炊飯コ-スなどを選択させたりするための操作手段19と、がそれぞれ配設される。これらの表示手段や操作手段19は、当該表示手段や操作手段19の下に配置された制御PC(Printed Circuit:印刷回路)板20に搭載されている。
【0018】
LCD17は、炊飯に関わる様々な情報を表示するものであり、LED表示部18は、実際の炊飯器の状態を表示するものである。本実施形態では、予約設定がされていているときに「予約」が点灯し、保温状態になると「保温」が点灯し、後述する減圧手段31により鍋4の内部が大気圧より低い減圧状態になると、「真空」が点灯し、炊飯中に鍋4の内部に圧力がかかり始めてから、被炊飯物が炊き上がるまでの鍋4の内部が加圧されているときに、「圧力」が点灯するように構成される。そのため、LCD17のバックライトを減光させた減光状態のときでも、ユーザがLED表示部18を確認することで炊飯器の現在の状態を一目で理解することができる。ここでそれぞれのLED表示部18が点灯したときの光の色をそれぞれ異ならせてもよく、炊飯器が現在どのような状態であるかを一目で理解できる。
【0019】
タッチセンサで構成された操作手段19は、例えば、導電性ポリマーによる透明電極部と制御PC板20に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、LCD17に表示される複数のボタン表示部の何れかにタッチ操作を行なうことで、そのボタン表示部の上に配設され、当該ボタン表示部に対応したタッチキーがタッチ操作されて、このボタン表示部が選択される構成となっている。
【0020】
蓋体2の外蓋カバー11の下側には、蓋体2の下部部材としての内蓋組立体21が配設される。内蓋組立体21は、鍋4の上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、鍋4の上方開口部を覆う内蓋22と、この内蓋22と鍋4との間をシールするために、内蓋22の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン23と、鍋4の内圧力を調整する調圧部24とを備えている。環状に形成された蓋パッキン23は、図2および図3に示されるように蓋体2を閉じた蓋閉時に、鍋4の開口部である上面に当接して、この鍋4と内蓋22との間の隙間を塞ぎ、鍋4から発生する蒸気を密閉するものである。
【0021】
外蓋10および外蓋カバー11に囲まれた蓋体2の内部には、内蓋22を加熱する蓋加熱手段としての蓋ヒータ25と、この蓋ヒータ25による内蓋22の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ26がそれぞれ設けられる。そして蓋体2の内部には、鍋4内で発生した蒸気を外部へ放出する通路として、蒸気口16と調圧部24とを連通する蒸気排出経路27が形成される。
【0022】
調圧部24には、鍋4の内部と蒸気口16との間の蒸気排出経路27を開閉する弁体28が設けられる。弁体28はボール状で、蓋体2の内部に設けたソレノイド29と連動し、鍋4内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気排出経路27を開放し、鍋4内を加圧または減圧状態にする場合には蒸気排出経路27を閉塞するように、ソレノイド29が弁体28を転動させる。そして加圧時には、加熱コイル8への高周波通電により鍋4内の被炊飯物が加熱され、被炊飯物が沸騰して蒸気が発生し、この蒸気が鍋4内に充満することにより鍋4の内圧が所定値に達すると、弁体28の自重に抗して蒸気排出経路27を開放することで、鍋4内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。また蓋体2の内部には、圧力センサ30(図10参照)が調圧部24に臨んで設けられ、鍋4内部の圧力を検知している。
【0023】
31は、蓋体2を本体1に閉じた状態で、鍋4の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段である。減圧手段31は、鍋4を鍋収容体3に収容し、蓋体2を閉じた後にソレノイド29を通電させて弁体28が蒸気排出経路27を塞いだ状態で、密閉した鍋4の内部圧力を低下させる。また、鍋4内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧手段31の動作源となる減圧ポンプ32の動作を停止し、鍋4内部を減圧状態に保っている。さらに、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力である大気圧状態に戻す場合には、減圧ポンプ32の動作を停止し、減圧ポンプ32と鍋4の内部との間を連通する図示しない経路を開放する。つまり減圧手段31は、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0024】
本体1の内部には、制御手段33を含むユニット化された加熱基板組立34が配設される。制御手段33は、鍋センサ9の検知温度に基づいて主に加熱コイル8を制御して鍋4の底部を温度管理し、蓋温度センサ26の検知温度に基づいて主に蓋ヒータ25を制御して、被炊飯物に対向する内蓋22を温度管理するように構成される。
【0025】
本実施形態の炊飯器は、炊飯工程において鍋4の内部が加圧状態となるため、この加圧状態のときにクランプボタン13が所定の力で押圧操作された場合であっても、蓋体2が開かないようにする係止解除防止機構41を備えている。ここでは、係止解除防止機構41について説明する。
【0026】
図5図8に示すように、係止解除防止機構41は、主にクランプ42と、ロックバネ43と、ロックバネ43をクランプ42に固定する固定具であるリベット44と、クランプ42を蓋体2に回動可能に取り付けるクランプ軸45と、クランプ42が係止するクランプ受部46と、ロックバネ43が当接する当接受部47と、を有して構成されている。
【0027】
図7に示すように、係止具であるクランプ42は、前後方向に略水平に延設されたバネ取付部51と、バネ取付部51の前側端から下方に延設された縦板部52と、縦板部52の左右両端から後方向に延設された一対の軸挿通部53A、53Bと、縦板部52の軸挿通部53A、53Bよりも内側に位置し下方に延設された一対の係止部54A、54Bと、有する。なお、本実施形態のクランプ42は、板状の金属材により折り曲げ形成しているが、複数部品から形成してもよい。
【0028】
バネ取付部51は、縦板部52に連続する幅広部55と、ロックバネ43をバネ取付部51に固定するリベット44を挿通する固定孔56(図8参照)およびロックバネ43の下端挿通部57を挿通する係止孔58が開口形成された幅狭部59と、を有する。側面視において、幅広部55は縦板部52から上方向に傾斜しており、幅狭部59は幅広部55から上方向に僅かに傾斜している。固定孔56と係止孔58は、幅狭部59の左右方向(横方向)の中央部分に形成されており、固定孔56が係止孔58よりも縦板部52側(前側)に位置している。下端挿通部57は、係止孔58の縁部分に係止している。
【0029】
縦板部52は、左右方向(横方向)に長く形成されている。軸挿通部53A、53Bには、前後方向に長い長孔である軸挿通孔60A、60Bが形成されている。係止部54A、54Bは、上下方向に長い略矩形状を有しており、下端部分には、後方向に折り曲げられた係止爪部61A、61Bを有している。係止爪部61A、61Bは90°よりも大きく折り曲げられている。
【0030】
本体1には、本体側受部としてのクランプ受部46が設けられており、蓋体2を閉塞すると、クランプ42の係止部54A、54Bがクランプ受部46に係止する。このとき係止部54A、54Bの係止爪部61A、61Bは、クランプ受部46の下面部46Aに係止する。
【0031】
ロックバネ43は、金属製の板バネであり、ロックバネ43をバネ取付部51に固定するリベット44を挿通する固定孔62(図8参照)が開口形成された基端部63と、基端部63に連続する湾曲部64と、湾曲部64に連続する上片部65と、上片部65に連続し上片部65よりも僅かに上方向に突出した段部66と、段部66に連続し下方向に延設された当接部67と、を有する。
【0032】
ロックバネ43は、クランプ42の幅狭部59にリベット44により取り付け固定されている。また、ロックバネ43は、クランプボタン13の真下に位置しており、クランプボタン13の下端部13Aがロックバネ43の段部66に当接している。クランプボタン13を押下操作していない状態では、クランプボタン13からロックバネ43に対して力は付加されておらず、ロックバネ43は弾性変形していない。
【0033】
ロックバネ43は、湾曲部64で湾曲しており、基端部63と上片部65とが略平行となっている。上片部65よりも突出した段部66を形成することで、係止解除防止機構41を他の炊飯器(他の機種)に転用した場合に、クランプボタン13の下端部13Aの形状が多少異なる場合であっても、段部66に下端部13Aを当接させ易くなっている。そのため、係止解除防止機構41を他の炊飯器(他の機種)に転用する場合に、ロックバネ43の形状を変更しなくてよい場合がある。
【0034】
図5および図6に示すように、当接部67は、段部66の左右方向(横方向)の中心部から右側半分にのみ形成されている。段部66の左側部分の下方には、後述するソレノイド29の規制体71が位置する場合がある。そのため、当接部67を右側に配設し、当接部67が規制体71に接触しないようになっている。
【0035】
ロックバネ43が弾性変形していない状態では、当接部67がクランプ42の幅狭部59の後端部59Aに接しており、当接部67の先端部67Aが後端部59Aよりも僅かに下側に位置している。また、当接部67は後方向に凸となるように僅かに湾曲しており、クランプボタン13が押下操作され、段部66がクランプボタン13により押圧されてロックバネ43が弾性変形した場合に、当接部67が幅狭部59の後端部59Aに接した状態を保持しながら下方向に移動するようになっている。図9に示すように、ロックバネ43が弾性変形し、当接部67が下方向に移動する際の先端部67Aの軌跡T1と、クランプ42が回動する際の後端部59Aの軌跡T2は、後端部59Aと当接部67との接触点Pで交差する。そして、軌跡T1が軌跡T2よりもクランプ軸45側(前側)を通るため、ロックバネ43が弾性変形し、当接部67が下方向に移動する際は、クランプ42が回動できないようになっている。
【0036】
図8に示すように、外蓋カバー11の上面部35には、ロックバネ43の当接部67が当接する当接受部47が形成されている。当接受部47は、凹形状の凹溝部36を有しており、この凹溝部36に当接部67の先端部67Aが当接することで、それ以上ロックバネ43が移動することを規制している。
【0037】
クランプ軸45は、軸挿通孔60A、60Bに挿通した状態で、両端部分が蓋体2の外蓋カバー11に設けられた固定レール37A、37Bに固定されている。クランプ42は、クランプ軸45に回動可能に軸支されており、クランプ軸45を中心に回動することでクランプ受部46に係止および係止の解除が行われる。
【0038】
次に、鍋4の内部の圧力が所定値以上となった状態で、クランプボタン13が押下操作されたときに、蓋体2が開かないようにする係止解除防止機構41の作用などについて説明する。
【0039】
鍋4の内部の圧力が所定値未満の場合に、クランプ42とクランプ受部46との係止を解除し、クランプ軸45を中心にクランプ42を回動させるために必要な力である第1の回動力F1と、ロックバネ43を弾性変形させるために必要な力である変形力F2と、鍋4の内部の圧力が所定値以上の場合にクランプ42とクランプ受部46との係止を解除し、クランプ軸45を中心にクランプ42を回動させるために必要な力である第2の回動力F3の関係は、F1<F2<F3となるように設定されている。
【0040】
鍋4の内圧が高まると、この圧力を受けて蓋体2と共にクランプ42が僅かに上方向に移動し、クランプ42とクランプ受部46の係止がより強固となる。鍋4の内圧が所定値以上となった状態で、クランプボタン13を押下操作し、ロックバネ43がクランプボタン13から受ける力が変形力F2以上(第2の回動力F3未満)になると、ロックバネ43が弾性変形する。このとき、変形力F2<第2の回動力F3であるため、クランプ42はクランプ軸45を中心として回動しない。ロックバネ43が弾性変形し、当接部67が幅狭部59の後端部59Aに接触しながら下方向へ移動する。クランプボタン13を押し下げる力がある一定の値を超えると、当接部67が当接受部47に当接する。当接部67が当接受部47に当接することで当接部67の移動が停止し、ロックバネ43がそれ以上弾性変形しなくなり、クランプボタン13を押し下げることができなくなる。このように、鍋4の内圧が所定値以上の状態でクランプボタン13を押下操作してもクランプ42は回動せず、係止部54A、54Bとクランプ受部46の係止が解除されず、蓋体2は開かない。
【0041】
一方、鍋4の内圧が所定値未満の場合には、クランプボタン13を押下操作し、ロックバネ43がクランプボタン13から受ける力が第1の回動力F1以上(変形力F2未満)になると、クランプボタン13を押し下げる力がロックバネ43を介してクランプ42に伝達され、係止部54A、54Bとクランプ受部46との係止が解除されて蓋体2が開く。
【0042】
図2および図3に示すように、ソレノイド29は、外蓋カバー12に固定された固定体68と、前後方向に移動可能なプランジャ69と、プランジャ69に取り付けられ弁体28を押圧する押圧体70と、プランジャ69に連動して前後方向に移動する規制体71と、を有している。
【0043】
ソレノイド29は、鍋4の内部が加圧状態や減圧状態でない通常時には、押圧体70が弁体28を押圧し、弁体28が蒸気排出経路27を開口する位置に保持されている。一方、鍋4の内部を加圧状態又は減圧状態とする場合には、押圧体70が弁体28から離れることで、弁体28は自重により蒸気排出経路27を閉塞する。
【0044】
図2は、ソレノイド29が作動していない状態を示しており、この状態では、ソレノイド29の規制体71は、クランプ42のバネ取付部51よりも後側に位置している。一方、図3は、ソレノイド29が作動している状態を示しており、この状態では、ソレノイド29の規制体71がバネ取付部51の幅狭部59の下方の位置まで移動している。
【0045】
図2に示すように、弁体28が蒸気排出経路27を開口しているときには、クランプボタン13を押下操作することでクランプ42が回動して蓋体2が開く。一方、図3に示すように、弁体28が蒸気排出経路27を閉塞しているときには、ソレノイド29の規制体71が幅狭部59の下方に位置しているため、クランプボタン13を押下操作してもクランプ42の幅狭部59が規制体71に当接してクランプ42の回動が規制されて蓋体2は開かない。
【0046】
このように、ソレノイド29が正常に作動している場合には、弁体28が蒸気排出経路27を閉塞し、鍋4の内部が加圧状態のときにクランプボタン13を押下操作しても蓋体2は開かない。一方で、炊飯器への給電が停止した場合には、ソレノイド29が作動しないため、係止解除防止機構41は、主として炊飯器への給電が停止中の安全装置として機能する。
【0047】
図10は、本実施形態における炊飯器の電気的な構成を示している。同図において、41は制御手段であり、マイクロコンピュータを構成する制御用IC、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段、タイマーなどの計時手段、各部の駆動素子などを含んで構成されている。制御手段33の入力ポートには、操作手段19と、鍋センサ9と、蓋温度センサ26と、圧力センサ30と、がそれぞれ電気的に接続される。また制御手段33の出力ポートには、表示手段19と、加熱コイル8と、蓋ヒータ25と、ソレノイド29と、減圧ポンプ32とがそれぞれ電気的に接続される。
【0048】
制御手段33は、操作手段19からの操作信号と、鍋センサ9や蓋温度センサ26や圧力センサ30からの各検知信号を受けて、内蔵する計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、表示手段19に表示制御信号を出力し、また加熱コイル8と、蓋ヒータ25とに、それぞれ加熱制御信号を出力し、そしてソレノイド29や減圧ポンプ32に駆動制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての記憶手段に予め記録したプログラムを、制御手段33が読み取ることで実現し、この制御手段33により、例えば鍋4に投入した米の吸水を促進させるひたし炊き工程と、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰状態を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程の各工程を順に実行する炊飯工程を行なわれ、鍋4内部の被炊飯物に対して所望の圧力で炊飯加熱する。また制御手段33により、保温時に鍋4内のご飯を所定の保温温度に維持する保温工程の制御が行なわれる。
【0049】
以上のように、本実施形態の炊飯器は、被炊飯物を収容する鍋4を収容する本体1と、本体1に回動可能に軸支され、本体1の上部開口を開閉する蓋体2と、を備え、蓋体2は、蓋体2を開放操作するクランプボタン13と、本体1に係止するクランプ42と、クランプボタン13とクランプ42との間に配設されたロックバネ43と、を有し、蓋体2を閉塞するとクランプ42が本体1に係止し、クランプ42は、蓋体2に回動可能に設けられ、蓋体2を閉塞した状態で鍋4の内部の圧力が所定値未満の場合に、クランプボタン13を操作するとクランプ42が回動し、本体1とクランプ42との係止が解除され、蓋体2を閉塞した状態で鍋4の内部の圧力が所定値以上の場合に、クランプボタン13を操作するとロックバネ43が弾性変形し、本体1とクランプ42との係止が維持される。このように、従来の円錐バネ143、ストッパ148およびシャフト149(図11および図12参照)に替えてロックバネ43およびリベット44を用いることで、従来と比較して部品点数を減らし、簡易な構造で同様の効果を奏する係止解除防止機構41を実現できる。
【0050】
また本実施形態の炊飯器は、ロックバネ43は、蓋体2に形成された当接受部47に当接する当接部67を有し、当接部67が当接受部47に当接すると、ロックバネ43が一定量以上弾性変形することを規制する。そのため、ロックボタン13が強く押下操作された場合であっても、クランプ42が回動することを防止できる。
【0051】
また、本実施形態の炊飯器は、鍋4の内部の圧力が所定値未満の場合にクランプ42を回動させるために必要な力である第1の第1の回動力F1と、ロックバネ43を弾性変形させるために必要な力である変形力F2と、鍋4の内部の圧力が所定値以上の場合にクランプ42を回動させるために必要な力である第2の第2の回動力F3と、を比較すると、第1の第1の回動力F1よりも変形力F2が大きく、変形力F2よりも第2の第2の回動力F3が大きい。そのため、鍋4の内部の圧力が所定値未満の場合には、クランプボタン13を押下操作するとロックバネ43が弾性変形することなく、クランプ42が回動し、クランプ42とクランプ受部46の係止が解除され蓋体2が開く。一方、鍋4の内部の圧力が所定値以上の場合には、クランプボタン13を押下操作するとロックバネ43は弾性変形するが、クランプ42は回動しない。すなわち、クランプ42とクランプ受部46の係止は解除されず蓋体2は開かない。
【0052】
また、本実施形態の炊飯器は、鍋4の内外を連通する蒸気排出経路27と、蒸気排出経路27を開閉する弁体28と、弁体28を移動させて蒸気排出経路27の開閉を制御するソレノイド29と、を有し、蒸気排出経路27が閉塞されているときに、ソレノイド29がクランプ42の回動を規制する。蒸気排出経路27が閉塞されているときには鍋4の内部が加圧状態の可能性があり、その場合には、ソレノイド29がクランプ42の回動を規制することで、クランプ42とクランプ受部46の係止が解除され蓋体2が開くことを防止できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、ソレノイド29の規制体71の位置と当接部67の位置を左右逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 本体
2 蓋体
4 鍋(収容容器)
13 クランプボタン(蓋開操作体)
27 蒸気排出経路
28 弁体
29 ソレノイド(開閉制御装置)
42 クランプ(係止具)
43 ロックバネ(板バネ)
46 クランプ受部
47 当接受部
67 当接部
F1 第1の回動力
F2 変形力
F3 第2の回動力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12