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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158890
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 59/122 20230101AFI20241031BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 50/826 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20241031BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241031BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H10K59/122
H10K50/10
H10K50/826
H10K50/844
H10K71/20
G09F9/30 348A
G09F9/30 339Z
G09F9/30 365
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074508
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 真一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD24
3K107DD46X
3K107DD89
3K107EE48
3K107FF15
3K107GG12
5C094AA37
5C094BA27
5C094DA07
5C094DA13
5C094EA04
5C094EA05
5C094EA07
5C094EC04
5C094FA02
5C094JA01
5C094JA08
5G435AA14
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】表示特性の劣化を抑制することが可能な表示装置及び表示装置の映像方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る表示装置は、下電極と、下電極の第1部分を覆い、下電極の第2部分と重なる画素開口を有するリブと、リブ上に配置されたボトム部と、ボトム部の上に配置された軸部と、当該軸部の上に配置され、当該軸部の側面から突出したトップ部とを含む隔壁と、画素開口を通じて下電極を覆う有機層と、有機層を覆い、ボトム部に接触した上電極とを備える。下電極の第1部分の厚さは、下電極の第2部分の厚さと異なる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極と、
前記下電極の第1部分を覆い、当該下電極の第2部分と重なる画素開口を有するリブと、
前記リブ上に配置されたボトム部と、当該ボトム部の上に配置された軸部と、当該軸部の上に配置され、当該軸部の側面から突出したトップ部とを含む隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極を覆う有機層と、
前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触した上電極と
を備え、
前記下電極の第1部分の厚さは、当該下電極の第2部分の厚さと異なる
表示装置。
【請求項2】
前記下電極の第1部分の厚さは、当該下電極の第2部分の厚さよりも厚い請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記下電極は、前記有機層の側に導電性酸化物層が配置された積層構造を有し、
前記下電極の第1部分の前記導電性酸化物層の厚さは、前記下電極の第2部分の前記導電性酸化物層の厚さよりも厚く、
前記下電極の第1部分の前記導電性酸化物層以外の層の厚さは、前記下電極の第2部分の前記導電性酸化物層以外の層の厚さと同一である
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記下電極の第2部分の厚さは一定である請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記下電極の第2部分の前記リブに近い部分の厚さは、当該下電極の第2部分の前記リブから離れた部分の厚さよりも厚い請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記下電極の第2部分のうちの厚さが最も薄い部分の幅は、前記画素開口の幅よりも短い請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記下電極の第1部分の厚さは一定である請求項2記載の表示装置。
【請求項8】
前記画素開口を形成する前記リブの端部は、前記下電極と接触する請求項2記載の表示装置。
【請求項9】
前記上電極を覆うキャップ層を更に備える請求項1~8のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記キャップ層及び前記隔壁を連続的に覆う封止層を更に備える請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
下電極を形成し、
前記下電極の第1部分を覆い、当該下電極の第2部分と重なる画素開口を有するリブを形成し、
前記下電極に作用する薬液を用いて当該下電極の第2部分の表層を除去する
表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記薬液は、酸性の溶液である請求項11記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記薬液は、アルカリ性の溶液である請求項11記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
ボトム部と、当該ボトム部の上に位置する軸部と、当該軸部の上に位置するトップ部とを含む隔壁を前記リブの上に形成する請求項11~13のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記画素開口を通じて前記下電極を覆う有機層を形成し、
前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触する上電極を形成する
請求項14記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記上電極を覆うキャップ層を形成する請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記キャップ層及び前記隔壁を連続的に覆う封止層を形成する請求項16記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。
【0003】
上記した表示装置を製造する過程において、当該表示装置における表示特性が劣化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【特許文献8】特開2013-213733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、表示特性の劣化を抑制することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極の第1部分を覆い、当該下電極の第2部分と重なる画素開口を有するリブと、前記リブ上に配置されたボトム部と、当該ボトム部の上に配置された軸部と、当該軸部の上に配置され、当該軸部の側面から突出したトップ部とを含む隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極を覆う有機層と、前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触した上電極とを備える。前記下電極の第1部分の厚さは、当該下電極の第2部分の厚さと異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る表示装置の構成例を示す図。
図2】副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図。
図3図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図。
図4】隔壁に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図。
図5】表示装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
図6】リブ及び隔壁を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図。
図7図6に続く工程を示す概略的な断面図。
図8図7に続く工程を示す概略的な断面図。
図9図8に続く工程を示す概略的な断面図。
図10図9に続く工程を示す概略的な断面図。
図11図10に続く工程を示す概略的な断面図。
図12】表示素子を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図。
図13図12に続く工程を示す概略的な断面図。
図14図13に続く工程を示す概略的な断面図。
図15図14に続く工程を示す概略的な断面図。
図16図15に続く工程を示す概略的な断面図。
図17図16に続く工程を示す概略的な断面図。
図18】薬液処理について説明するための図。
図19】薬液処理が実施された後の画素開口の端部を含む概略的な断面図。
図20】薬液処理が実施された後の画素開口の端部を含む概略的な断面図。
図21】表示装置の製造方法の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0011】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形または楕円形等の他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2及び赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2及びSP3とともに、白色等の他の色の副画素SPを含んでもよい。また、画素PXは、副画素SP1、SP2及びSP3のいずれかに代えて、他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
図2は、副画素SP1、SP2及びSP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。図2に示す例においては、副画素SP2及びSP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。更に、副画素SP2と副画素SP3とが第2方向Yに並んでいる。
【0018】
副画素SP1、SP2及びSP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列と、副画素SP2及びSP3が第2方向Yに交互に配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1、SP2及びSP3のレイアウトは図2に示す例に限られない。
【0019】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1、SP2及びSP3においてそれぞれ画素開口AP1、AP2及びAP3を有している。図2に示す例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0020】
隔壁6は、隣り合う副画素SPの境界に配置され、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yとを有している。第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う2つの画素開口AP1の間に配置されている。また、第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う画素開口AP2及びAP3の間に配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1及びAP2の間に配置されている。また、第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1及びAP3の間に配置されている。
【0021】
図2に示す例においては、第1隔壁6x及び第2隔壁6yが互いに接続されている。これにより、隔壁6は、全体として画素開口AP1、AP2及びAP3を囲う格子状となっている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1、SP2及びSP3において開口を有するということもできる。
【0022】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3を備えている。
【0023】
下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1、DE2及びDE3は、後述するキャップ層を更に含んでもよい。リブ5及び隔壁6は、これら表示素子DE1、DE2及びDE3の各々を囲っている。
【0024】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(図1を参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。図2に示す例においては、コンタクトホールCH1、CH2及びCH3が全体的にリブ5及び隔壁6と重なっているが、この例に限られない。
【0025】
図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SL及び電源線PL等の各種回路や配線を含む。
【0026】
回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1、CH2及びCH3は絶縁層12に設けられている。
【0027】
下電極LE1、LE2及びLE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12と、下電極LE1、LE2及びLE3との上に配置されている。下電極LE1、LE2及びLE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0028】
隔壁6は、リブ5の上に配置されたボトム部61と、ボトム部61の上に配置された軸部62と、軸部62の上に配置されたトップ部63とを備えている。トップ部63は、軸部62よりも大きい幅を有している。これにより、図3においてはトップ部63の両端部が軸部62の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0029】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。
【0030】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3が配置されている。キャップ層CP1、CP2及びCP3は、それぞれ有機層OR1、OR2及びOR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0031】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1及びキャップ層CP1を含む積層体を薄膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2及びキャップ層CP2を含む積層体を薄膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3及びキャップ層CP3を含む積層体を薄膜FL3と呼ぶ。
【0032】
薄膜FL1の一部は、トップ部63の上に位置している。この薄膜FL1の一部は、当該薄膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、薄膜FL2の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。更に、薄膜FL3の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0033】
副画素SP1、SP2及びSP3には、封止層SE1、SE2及びSE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、薄膜FL1及び副画素SP1の周囲の隔壁を連続的に覆っている。封止層SE2は、薄膜FL2及び副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、薄膜FL3及び副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0034】
図3に示す例においては、副画素SP1及びSP2の間の隔壁6上の薄膜FL1及び封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL2及び封止層SE2と離間している。また、副画素SP1及びSP3の間の隔壁6上の薄膜FL1及び封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL3及び封止層SE3と離間している。
【0035】
封止層SE1、SE2及びSE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13及び15と封止層14とは、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0036】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラス等のカバー部材が樹脂層15の上方に更に配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optikcal Clear Adhesive)等の接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0037】
絶縁層12は、有機絶縁材料で形成されている。リブ5、封止層14、SE1、SE2及びSE3は、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al)等の無機絶縁材料で形成することができる。リブ5、封止層14、SE1、SE2及びSE3は、いずれかの無機絶縁材料の単層構造を有してもよいし、2種類以上の無機絶縁材料の層が重ねられた積層構造を有してもよい。リブ5、封止層14、SE1、SE2及びSE3をそれぞれ形成する無機絶縁材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14、SE1、SE2及びSE3がシリコン窒化物で形成されている。
【0038】
樹脂層13及び15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。下電極LE1、LE2及びLE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面及び下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)等の透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0039】
上電極UE1、UE2及びUE3は、例えばマグネシウムと銀との合金(MgAg)等の金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1、LE2及びLE3はアノードに相当し、上電極UE1、UE2及びUE3はカソードに相当する。
【0040】
有機層OR1、OR2及びOR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層及び電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1、OR2及びOR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0041】
キャップ層CP1、CP2及びCP3は、例えば、透明な複数の薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1、UE2及びUE3の材料とは異なり、また、封止層SE1、SE2及びSE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1、CP2及びCP3の少なくとも1つは省略されてもよい。
【0042】
本実施形態において、ボトム部61は、例えば窒化チタン(TiN)またはモリブデン-タングステン合金(MoW)で形成されている。軸部62は、例えばアルミニウム(Al)で形成することができる。軸部62は、アルミニウム合金で形成されてもよい。アルミニウム合金としては、例えばアルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)及びアルミニウム-シリコン合金(AlSi)等を用い得る。軸部62は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の単層構造を有していてもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有していてもよい。また、軸部62は、シリコン窒化物、シリコン酸化物及びシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料で形成された層を含んでもよい。
【0043】
トップ部63は、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、モリブデン-ニオブ合金、ITO及びIZOのような導電性の材料で形成することができる。トップ部63は、これらのいずれかの材料の単層構造を有していてもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有していてもよい。また、トップ部63は、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物及びシリコンさん窒化物のような絶縁性の材料で形成された層を含んでもよい。
【0044】
上電極UE1、UE2及びUE3は、ボトム部61に接触している。ボトム部61には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、上電極UE1、UE2及びUE3にそれぞれ供給される。下電極LE1、LE2及びLE3には、副画素SP1、SP2及びSP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0045】
有機層OR1、OR2及びOR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1との間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2との間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3との間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0046】
他の例として、有機層OR1、OR2及びOR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1、SP2及びSP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1、SP2及びSP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0047】
図4は、隔壁6に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図である。ここでは、隔壁6のうち副画素SP1及びSP2の間に位置する部分を例示する。隔壁6のうち副画素SP1及びSP3の間に位置する部分と、副画素SP2及びSP3の間に位置する部分とについても図4と同様の構造を適用し得る。
【0048】
図4に示す例において、ボトム部61及び軸部62は、単層構造を有している。また、トップ部63は、第1トップ層631と、第1トップ層631の上に配置された第2トップ層632とを有している。第1トップ層631及び第2トップ層632の材料は、トップ部63の材料として上述したものから適宜に選定し得る。ボトム部61及びトップ部63は、軸部62よりも薄く形成されている。
【0049】
ボトム部61は、副画素SP1側の側面F11と、副画素SP2側の側面F12とを有している。軸部62は、副画素SP1側の側面F21と、副画素SP2側の側面F22とを有している。
【0050】
図4に示す例においては、側面F11及びF12が揃っており、段差のない平面を形成している。同様に、側面F12及びF22が揃っており、段差のない平面を形成している。他の観点からいうと、図4においては、ボトム部61の幅と軸部62の幅が同等である例が示されている。
【0051】
他の例として、側面F11が側面F21に対してわずかに後退していてもよい。また、側面F11が側面F21に対して突出していてもよい。同様に、側面F12が側面F22に対してわずかに後退していてもよい。また、側面F12が側面F22に対して突出していてもよい。また、図4においては側面F11、F12、F21及びF22が第3方向Zと平行であるが、この例に限られない。例えば、側面F11、F12、F21及びF22は、ボトム部61及び軸部62の幅がトップ部63に近づくにつれて狭まるように傾斜していてもよい。
【0052】
トップ部63は、側面F21及びF22から突出している。具体的には、トップ部63は、側面F21から突出する端部E1と、側面F22から突出する端部E2とを有している。
【0053】
有機層OR1は、側面F11及びF21と離間している。上電極UE1は、側面F11の少なくとも一部に接触している。図4に示す例においては、上電極UE1が側面F11の全体を覆うとともに、側面F21の一部にも接触している。この例に限られず、上電極UE1が側面F21に接触しなくてもよい。
【0054】
同様に、有機層OR2は、側面F12及びF22と離間している。上電極UE2は、側面F12の少なくとも一部に接触している。図4に示す例においては、上電極UE2が側面F12の全体を覆うとともに、側面F22の一部にも接触している。この例に限られず、上電極UE2が側面F22に接触しなくてもよい。
【0055】
封止層SE1は、薄膜FL1を覆うとともに、側面F21のうち上電極UE1で覆われていない部分及び端部E1の下面を覆っている。同様に、封止層SE2は、薄膜FL2を覆うとともに、側面F22のうち上電極UE2で覆われていない部分及び端部E2の下面を覆っている。
【0056】
なお、図4に示す隔壁6の構成は一例に過ぎない。ボトム部61及び軸部62は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、トップ部63は、単層構造を有していてもよいし、3層以上の積層構造を有していてもよい。
【0057】
続いて、隔壁6が図4に示す構成を有する場合を例に、表示装置DSPの製造方法について説明する。ここでは一例として、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、ボトム部61が窒化チタンで形成され、軸部62がアルミニウムで形成され、第1トップ層631がチタンで形成され、第2トップ層632がITOを形成され、封止層SE1、SE2及びSE3がシリコン窒化物で形成されている場合を想定する。
【0058】
図5は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。表示装置DSPの製造においては、まず基板10の上に回路層11、絶縁層12及び下電極LE1、LE2及びLE3が形成される(工程PR1)。更に、リブ5及び隔壁6が形成される(工程PR2)。
【0059】
図6図11は、リブ5及び隔壁6を形成するための工程PR2の一例を示す概略的な断面図である。これらの図においては、基板10、回路層11及び絶縁層12を省略している。
【0060】
工程PR2においては、図6に示すように、リブ5に加工するための絶縁層5aが形成され、ボトム部61に加工するための第1層L1が絶縁層5aの上に形成され、軸部62に加工するための第2層L2が第1層L1の上に形成され、トップ部63に加工するための第3層L3が第2層L2の上に形成される。更に、隔壁6の平面形状にパターニングされたレジストR1が第3層L3の上に形成される。第3層L3は、第1トップ層631aと、第1トップ層631aを覆う第2トップ層632aとを含む。
【0061】
本実施形態において、絶縁層5aはシリコン酸窒化物からなり、当該絶縁層5aの厚さは例えば400nmである。第1層L1は窒化チタンからなり、当該第1層L1の厚さは例えば20nmである。第2層L2はアルミニウムからなり、当該第2層L2の厚さは例えば800nmである。第1トップ層631aはチタンからなり、当該第1トップ層631aの厚さは例えば100nmである。第2トップ層632aはITOからなり、当該第2トップ層632aの厚さは例えば50nmである。
【0062】
なお、絶縁層5aは、例えば化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって形成される。また、第1層L1、第2層L2、第1トップ層631a及び第2トップ層632aは、例えばスパッタリング法によって形成される。
【0063】
続いて、図7に示すように、第2トップ層632aのうちレジストR1から露出した部分がウェットエッチングにより除去される。更に、第1トップ層631aのうちレジストR1から露出した部分が異方性のドライエッチングにより除去される。これらのエッチングにより、第1トップ層631及び第2トップ層632を含むトップ部63が形成される。
【0064】
上記した異方性のドライエッチングにおいては、第2層L2のうちレジストR1及びトップ部63から露出した部分の厚さも低減される。この例に限られず、第2層L2のうちレジストR1から露出した部分が全て除去されてもよい。また、図7に示すような第1トップ層631a及び第2層L2の加工が異なるエッチングにより行われてもよい。
【0065】
図7の工程の後、図8に示すように、等方性のウェットエッチングにより第2層L2が加工される。このウェットエッチングにおいては、第2層L2のうち図7の工程で厚さが低減された部分が除去される。更に、トップ部63の下方に残された第2層L2の幅がトップ部63の幅よりも低減される。これにより、軸部62が形成される。
【0066】
図8の工程の後、図9に示すように、第1層L1のうち軸部62から露出した部分がドライエッチングにより除去される。これにより、ボトム部61が形成される。以上の図6図9の工程にて隔壁6が形成された後、レジストR1が除去される。
【0067】
次に、図10に示すように、リブ5の平面形状にパターニングされたレジストR2が配置される。更に、図11に示すように、絶縁層5aのうちレジストR2から露出した部分がドライエッチングにより除去される。これにより、画素開口AP1、AP2及びAP3を有するリブ5が形成される。このドライエッチングの後、レジストR2が除去される。
【0068】
なお、図6図11に示す例においては、隔壁6が形成された後にリブ5の画素開口AP1、AP2及びAP3が形成されるものとして説明したが、他の例として、リブ5の画素開口AP1、AP2及びAP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。また、ここで例示したウェットエッチングやドライエッチング等の第1層L1、第2層L2、第3層L3及びリブ5を加工するための工程は、これらを形成する材料に応じて適宜変更されても構わない。
【0069】
また、図示されていないが、例えば周辺領域SAにおけるリブ5には、例えばボトム部61に共通電圧を供給する(つまり、ボトム部61をバックプレーンと接続させる)ためのコンタクトホール等が形成される。
【0070】
ところで、上記したように絶縁層5aのうちレジストR2から露出した部分がドライエッチングにより除去されてリブ5が形成される場合、画素開口AP1、AP2及びAP3と重なる下電極LE1、LE2及びLE3の表面がドライエッチングに晒されるため、下電極LE1、LE2及びLE3の表面が損傷(ダメージ)を受ける可能性がある。
【0071】
このような下電極LE1、LE2及びLE3の表面が受ける損傷(ダメージ)は、当該下電極LE1、LE2及びLE3の表面特性に影響を与え、表示装置DSPにおける表示特性に影響を与え得る。
【0072】
このため、本実施形態においては、工程PR2の後に、上記した下電極LE1、LE2及びLE3の表面が受ける損傷(ダメージ)が、表示装置DSPにおける表示特性に与える影響を緩和するための薬液処理が実施される(工程PR3)。なお、工程PR3における薬液処理については後述する。
【0073】
上記したようにリブ5及び隔壁6が形成され、薬液処理が実施された場合、表示素子DE1、DE2及びDE3を形成するための工程が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1、DE2及びDE3が形成される順序はこの例に限られない。
【0074】
図12図17は、表示素子DE1、DE2及びDE3を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図である。表示素子DE1の形成にあたっては、まず図12に示すように、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆う有機層OR1、有機層OR1を覆うとともにボトム部61に接触する上電極UE1、上電極UE1を覆うキャップ層CP1が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP1や隔壁6を連続的に覆う封止層SE1がCVDによって形成される(工程PR4)。
【0075】
有機層OR1、上電極UE1及びキャップ層CP1を含む薄膜FL1は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2及びSP3と隔壁6との上にも配置されている。薄膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE1は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL1及び隔壁6を連続的に覆っている。
【0076】
工程PR4の後、薄膜FL1及び封止層SE1がパターニングされる(工程PR5)。このパターニングにおいては、図13に示すように、封止層SE1の上にレジストR3が配置される。レジストR3は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部の上方に位置している。
【0077】
その後、レジストR3をマスクとしたエッチングにより、図14に示すように薄膜FL1及び封止層SE1のうちレジストR3から露出した部分が除去される。例えば、このエッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1及び有機層OR1に対して順に行われるウェットエッチングまたはドライエッチングを含む。具体的には、例えば、封止層SE1がドライエッチングによって除去され、キャップ層CP1(多層体)がウェットエッチング及びドライエッチングによって除去され、上電極UE1がウェットエッチングによって除去され、有機層OR1がドライエッチング(例えば、アッシング)によって除去される。
【0078】
図14の工程の後、レジストR3が除去される。これにより、図15に示すように、副画素SP1に表示素子DE1及び封止層SE1が形成され、副画素SP2及びSP3に表示素子及び封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0079】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR5の後、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆う有機層OR2、当該有機層OR2を覆う上電極UE2及び当該上電極UE2を覆うキャップ層CP2が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP2や隔壁6を連続的に覆う封止層SE2がCVDによって形成される(工程PR6)。
【0080】
有機層OR2、上電極UE2及びキャップ層CP2を含む薄膜FL2は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP2だけでなく副画素SP1及びSP3と隔壁6との上にも配置される。薄膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE2は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL2及び隔壁6を連続的に覆う。
【0081】
工程PR6の後、薄膜FL2及び封止層SE2がウェットエッチングまたはドライエッチングによりパターニングされる(工程PR7)。このパターニングの流れは、工程PR5と同様である。
【0082】
工程PR7を経ると、図16に示すように、副画素SP1に表示素子DE1及び封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2及び封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子及び封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0083】
表示素子DE3は、表示素子DE1及びDE2と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR7の後、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆う有機層OR3、当該有機層OR3を覆う上電極UE3及び当該上電極UE3を覆うキャップ層CP3が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP3及び隔壁6を連続的に覆う封止層SE3がCVDによって形成される(工程PR8)。
【0084】
有機層OR3、上電極UE3及びキャップ層CP3を含む薄膜FL3は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP3だけでなく副画素SP1及びSP2と隔壁6との上にも配置される。薄膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE3は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL3及び隔壁6を連続的に覆う。
【0085】
工程PR8の後、薄膜FL3及び封止層SE3がウェットエッチングまたはドライエッチングよりパターニングされる(工程PR9)。このパターニングの流れは工程PR5と同様である。
【0086】
工程PR9を経ると、図17に示すように、副画素SP1に表示素子DE1及び封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2及び封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子DE3及び封止層SE3が形成された基板を得ることができる。
【0087】
表示素子DE1、DE2及びDE3及び封止層SE1、SE2及びSE3が形成された後、図3に示す樹脂層13、封止層14及び樹脂層15が順次形成される(工程PR10)。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0088】
以下、図18を参照して、上記した図5に示す工程PR3において実施される薬液処理について説明する。図18は、図5に示す工程PR2において形成されたリブ5が有する画素開口の端部を含む概略的な断面図である。
【0089】
なお、図18に示す画素開口APは、上記した画素開口AP1、AP2及びAP3のうちのいずれか1つを意図している。同様に、図18に示す下電極LEは、画素開口APの下に配置される下電極LE1、LE2及びLE3のうちのいずれか1つを意図している。
【0090】
また、以下の説明では、下電極LEのうちリブ5によって覆われた部分LEaを第1部分LEaと称し、当該下電極LEのうち画素開口AP1と重なる部分LEbを第2部分LEbと称する。
【0091】
また、図18においては、説明の便宜上、絶縁層12、下電極LE及びリブ5のみが示されている。
【0092】
ここで、図18に示すように、下電極LEは、絶縁層12の上に配置された第1導電性酸化物層LEcと、当該第1導電性酸化物層LEcの上に配置された反射層LEdと、当該反射層LEdの上に配置された第2導電性酸化物層LEeとを含む積層構造を有する。
【0093】
なお、第1導電性酸化物層LEcは例えばITOで形成され、反射層LEdは例えば銀で形成され、第2導電性酸化物層LEeは例えばITOで形成されている。
【0094】
この場合、下電極LEは、第1導電性酸化物層LEcに加工するためのITOから構成される層、反射層LEdに加工するための銀から構成される層及び第2導電性酸化物層LEeに加工するためのITOから構成される層を順にスパッタリング法で形成した後に、レジストが形成されたこれらの層に対して順にウェットエッチングを行うことによって形成される。
【0095】
このように形成された下電極LEの第2部分LEbは上記したようにリブ5を形成するためのドライエッチングによって画素開口APにおいて露出するが、図18に示すように、有機層OR1が形成される側に配置される第2導電性酸化物層LEeの表面は、当該ドライエッチングによって損傷を受ける。
【0096】
表示装置DSPは第2導電性酸化物層LEeの上に有機層を形成することによって製造されるが、当該第2導電性酸化物層LEeの表面が損傷を受けていると、当該表示装置DSPにおける表示特性が劣化することが考えられる。具体的には、第2導電性酸化物層LEeの表面における損傷は、当該第2導電性酸化物層LEeを覆う有機層における正孔(ホール)の注入効率に影響を与え、当該有機層の発光効率を低下させる可能性がある。
【0097】
このため、本実施形態においては、リブ5が形成された後に薬液処理が実施される。なお、本実施形態における薬液処理は、下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)に作用する薬液を用いて実施される。
【0098】
ここで、上記した薬液処理に用いられる薬液は、例えば酸性の溶液(以下、酸溶液と表記)を含む。酸溶液の一例は、例えばリン酸、硝酸及び酢酸を混合した混酸である。このような酸溶液を用いた薬液処理においては、当該酸溶液を第2導電性酸化物層LEeに接触させることによって当該酸溶液が第2導電性酸化物層LEeに作用し、当該第2導電性酸化物層LEeの表層(つまり、ダメージ層)を除去することができる。
【0099】
換言すれば、本実施形態における薬液処理は、下電極LEの第2部分LEbが損傷を受けた層を除去して、損傷を受けていない層を露出させる処理に相当する。
【0100】
なお、薬液処理(に用いられる薬液)は例えば隔壁6(ボトム部61、軸部62及びトップ部63)にも影響を与える可能性があるため、当該薬液処理は、例えば図11に示すように、隔壁6がレジストR2によって覆われた状態で実施されることが好ましい。
【0101】
ただし、薬液処理は、上記したレジストR2が除去(剥離)された後に実施されても構わない。具体的には、レジストR2が除去された後に実施される薬液処理によれば例えば隔壁6に含まれるトップ部63の一部が除去される(削られる)可能性があるが、損傷を受けている第2導電性酸化物層LEeと比較して、損傷を受けていないトップ部63が薬液処理によって除去される程度(厚み)は小さいと考えられる。更に、トップ部63は、150nm程度の厚さがある。すなわち、薬液処理がトップ部63に与える影響が小さい場合には、レジストR2が除去された後に薬液処理が実施される構成が採用されてもよい。更に、隔壁6に備えられる軸部62がアルミニウムで形成されている場合において、レジストR2が除去された後に薬液処理を実施する場合には、当該アルミニウムに対して与える影響が小さい例えばシュウ酸を薬液に用いてもよい。また、リン酸/硝酸/酢酸の混酸を薬液に用いる場合は、リン酸比率を下げた混酸を用いてもよい。
【0102】
更に、ここでは薬液処理に用いられる薬液が酸溶液であるものとして主に説明したが、当該薬液は、アルカリ性の溶液(以下、アルカリ溶液と表記)であってもよい。また、上記した図11に示すレジストR2を除去(剥離)する場合にはアミン系アルカリ剥離液を使用する場合があるが、当該アミン系アルカリ剥離液を薬液処理における薬液として用いてもよい。これによれば、レジストR2の除去と薬液処理(第2導電性酸化物層LEeの表層の除去)とを同時に実施することが可能となり、効率的な表示装置DSPの製造を実現することができる可能性がある。
【0103】
なお、本実施形態における薬液処理に用いられる薬液は、下電極LE及び他の構成要素を形成する材料等に応じて適宜選択され得る。
【0104】
ここで、図19は、薬液処理が実施された後の画素開口APの端部を含む概略的な断面図である。
【0105】
上記したように薬液処理が実施された場合には、図19に示すように、下電極LEの第2部分LEbと重なる第2導電性酸化物層LEeの表層が除去される。すなわち、本実施形態に係る製造方法によって製造される表示装置DSPにおいては、薬液処理によって第2導電性酸化物層LEeの表面が削られることによって、下電極LEの第1部分LEaの厚さT1が当該下電極の第2部分LEbの厚さT2と異なる構造となる。
【0106】
具体的には、下電極LEの第1部分LEaの厚さT1は、下電極LEの第2部分LEbの厚さT2よりも厚くなる。この場合、下電極LEの第1部分LEaと下電極LEの第2部分LEbとで第1導電性酸化物層LEc及び反射層LEd(つまり、第2導電性酸化物層LEe以外の層)の厚さは同一であるが、下電極LEの第1部分LEaと重なる第2導電性酸化物層LEeの厚さが下電極LEの第2部分LEbと重なる第2導電性酸化物層LEeの厚さよりも厚くなる。
【0107】
なお、本実施形態において薬液処理によって除去される下電極LEの第2部分LEb(第2導電性酸化物層LEe)の表層の厚さは、例えば3~5nm程度を想定している。すなわち、上記した図5に示す工程PR1においては、このように薬液処理によって表層が除去されることを考慮した厚みを有する下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)が形成されることが好ましい。
【0108】
ここで、図19においては、下電極LEの第1部分LEaの厚さT1が一定であり、下電極LEの第2部分LEbの厚さT2が一定である、つまり、リブ5(画素開口AP)の端部51と薬液処理によって下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)に形成される凹部の端部LEfとが平面視において揃っている場合について示されているが、本実施形態に係る表示装置DSPは、例えば図20に示すように、下電極LEの第2部分LEbのリブ5(画素開口APの端部)に近い部分の厚さが当該下電極LEの第2部分LEbの当該リブ5から離れた部分の厚さよりも厚くなるような構成であってもよい。換言すれば、本実施形態において下電極LEに形成される凹部は、傾斜面LEgを有していてもよい。この場合、表示装置DSPは、下電極LEの第2部分LEbのうちの厚さが最も薄い部分の幅Wが画素開口AP1の幅よりも短い構成となる。
【0109】
なお、本実施形態においては下電極LEの上に有機層が形成されるが、本実施形態における下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)は、少なくとも当該有機層が平面視においてリブ5の下方に入り込まないような形状に形成されるものとする。この場合、例えば下電極LEの第1部分LEaの厚さが一定である、または、画素開口APを形成するリブ5の端部が下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)と接触しているような構成であればよい。
【0110】
上記したように本実施形態においては、下電極LE(LE1、LE2及びLE3)を形成し、当該下電極LEの第1部分LEaを覆い、当該下電極のLE第2部分LEbと重なる画素開口AP(AP1、AP2及びAP3)を有するリブ5を形成し、当該下電極LEの第2部分LEbに作用する薬液を用いて当該下電極LEの第2部分LEb(第2導電性酸化物層LEe)の表層を除去することによって表示装置DSPが製造される。なお、上記したように製造される表示装置DSPは、下電極LEの第1部分LEaの厚さT1が当該下電極LEの第2部分LEbの厚さT2と異なる構造を有する。
【0111】
これにより、本実施形態においては、リブ5を形成するためのドライエッチングによって下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)が受ける損傷の影響を緩和し、表示装置DSPにける表示特性の劣化(有機層OR1、OR2及びOR3における発光効率の低下)を抑制することができる。
【0112】
なお、本実施形態における薬液処理は、薬液として酸溶液またはアルカリ溶液を用いて実施することができる。また、本実施形態における薬液処理は、リブ5を形成するために隔壁6を覆うレジストR2が除去される前に実施されてもよいし、当該レジストR2が除去された後に実施されてもよい。
【0113】
更に、本実施形態において薬液として例えばアミン系アルカリ剥離液を用いる場合には、レジストR2の除去(剥離)と薬液処理(下電極LEの表層の除去)とを同時に実施してもよい。
【0114】
上記したように本実施形態においてはいくつかの表示装置DSPの製造方法について説明したが、これらの表示装置DSPの製造方法は、組み合わせても構わない。具体的には、例えばアミン系アルカリ剥離液を用いてレジストR2の除去と薬液処理とを実施した後に、酸溶液を用いて更に薬液処理を実施してもよい。このような構成によれば、表示装置DSPにおける表示特性の劣化を抑制する確実性を向上させることが可能となる。
【0115】
また、本実施形態においては、リブ5を形成するためのドライエッチングによって下電極LE(LE1、LE2及びLE3)の表面が損傷を受けることを考慮して、図5に示す工程PR3において薬液処理が実施されるものとして説明したが、例えば工程PR5におけるパターニングにおいて行われるエッチングにより、画素開口AP2及びAP3と重なる下電極LE2及びLE3の表面が損傷を受ける可能性がある。更に、図5に示す工程PR7におけるパターニングにおいて行われるエッチングにより、画素開口AP3と重なる下電極LE3の表面が損傷を受ける可能性がある。
【0116】
このため、本実施形態においては、例えば図21に示す表示装置DSPの製造方法が適用されてもよい。詳しい説明については省略するが、図21に示す工程PR101~PR105、PR107、PR108、PR110~PR112は、図5に示す工程PR1~PR10に相当する。すなわち、図21においては、図5に示す工程PR5に相当する工程PR105の後の工程PR106において薬液処理を更に実施するとともに、図5に示す工程PR7に相当する工程PR108の後の工程PR109において薬液処理を更に実施する表示装置DSPの製造方法が示されている。
【0117】
なお、このように表示装置DSPの製造工程において複数回実施される薬液処理は、同一の処理であってもよいし、それぞれ異なる処理であってもよい。具体的には、例えば図21に示す工程PR103においてリン酸、硝酸及び酢酸を混合した混酸を用いた薬液処理を実施し、工程PR106及びPR109においてアミン系アルカリ剥離液を用いた薬液処理を実施してもよい。更に、工程PR103においてはレジストR2が除去される前に薬液処理を実施し、工程PR106及びPR109においてはレジストR3が除去された後に薬液処理を実施するようにてもよい。
【0118】
また、図21においては薬液処理が複数回実施されるが、当該薬液処理のうちの一部が省略されるような構成であってもよい。
【0119】
なお、本実施形態は、表示装置DSPの表示特性の劣化を抑制するために、薬液処理で下電極LE(第2導電性酸化物層LEe)の表層を除去する構成であればよく、本実施形態において説明した表示装置DSPの製造方法の少なくとも一部が変更されても構わない。
【0120】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置及び表示装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置及び表示装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0121】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0122】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0123】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、AP,AP1,AP2,AP3…画素開口、LE,LE1,LE2,LE3…下電極、LEa…第1部分、LEb…第2部分、LEc…第1導電性酸化物層、LEd…反射層、LEe…第2導電性酸化物層、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、CP1,CP2,CP3…キャップ層、SE1,SE2,SE3…封止層、5…リブ、6…隔壁、61…ボトム部、62…軸部、63…トップ部。
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