IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンエー化研の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158892
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリエチレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241031BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/04
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074512
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】中端 洸稀
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA88
4F071AB21
4F071AF16Y
4F071AF20Y
4F071AH04
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB051
4J002BB052
4J002DE236
4J002FB236
4J002FD016
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、筆記、印刷が可能であり、包装材料等に使用できる柔軟性のある樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】
MFRが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)(以下本明細書中のMFRは、すべて前記した条件で測定しているので省略することがある。)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレン(以下本明細書中、「LLDPE(1)」ということがある。)を3~18質量部、MFRが3.00より大きく20.0g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)未満の範囲である直鎖状低密度ポリエチレン(以下本明細書中、「LLDPE(2)」ということがある。)を40~90質量部、炭酸カルシウムを7~42質量部を含む樹脂組成物からなるフィルムとする。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを3~18質量部、メルトフローレートが3.00より大きく20.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)未満の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを40~90質量部、及び炭酸カルシウムを7~42質量部を含む樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項2】
メルトフローレートが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンが9~18質量部である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの流れ方向及び流れ方向に対して垂直方向の破断伸度が600%以上であり、流れ方向及び流れ方向に対して垂直方向の破断応力が14.0MPa以上である請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムの流れ方向及び流れ方向に対して垂直方向の引張弾性率が、50.0~160.0MPaの範囲である請求項1又は2に記載のフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを含むポリエチレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
密度0.93g/cm、メルトフローレート(以下本明細書において、「MFR」ということがある。)2.1g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(以下本明細書中、「LLDPE」ということがある。)100質量部、密度0.910g/cm、MFR5.0g/10分のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン40部、平均粒径2μmの炭酸カルシウム(脂肪酸処理物)150部を含む樹脂組成物からなる多孔質フィルムAが知られている(特許文献1参照)。前記多孔質フィルムAは、発熱体等の収容に好適な収納袋として使用できる。
【0003】
高い透明性と透湿性をかねそなえ、かつ強度に優れる多孔質フィルムとして、LLDPE30~50重量%及び炭酸カルシウム等の無機充填剤70~50重量%からなるLLDPE樹脂組成物を面積倍率1.1~1.6倍で少なくとも1軸方向に延伸して得られる多孔質フィルムであって、MFRが0.5g/10分以上3g/10分未満のLLDPE30~70重量%と、MFR3g/10分以上20g/10分以下のLLDPE70~30重量%からなり、かつ前記LLDPEのMFRの差が3以上である多孔質フィルムBが知られている(特許文献2を参照)。前記多孔質フィルムBは、通気性補強材と積層することにより、ハウスラップやルーフィング等の建材用途、マルチシート等の農業用途、紙おむつや生理用ナプキン等の衛材用途、手術着等の医療用途、使い捨て雨合羽等の衣料用途、廃棄物処理用途等に好適に使用できる。
【0004】
印刷や不織布と貼り合わせる等の2次加工を行なう用途に使用した場合においても、優れた通気性を発現できる多孔質フィルムとして、ポリエチレン系樹脂40~60質量%、炭酸カルシウム等の無機充填材60~40質量%を含む樹脂組成物よりなる未延伸フィルムを、少なくとも一軸延伸してなる多孔質フィルムであって、MFRが3.0g/10分を超え10g/10分以下、密度が0.930~0.950g/cmであるLLDPE40~70質量%と、MFRが0.1g/10分を超え3.0g/10分以下、密度が0.910~0.950g/cmであるLLDPE60~30質量%からなるポリエチレン系多孔質フィルムCが知られている(特許文献3参照)。前記ポリエチレン系多孔質フィルムCは、衛生材料用防水透湿シートとして好適に使用できる他、手術着等の医療用途、使い捨て雨合羽等の衣料用途、乾燥剤や使い捨てカイロ等の機能包装材料用途、ハウスラップ等の建築材料用途、マルチ農法用シート等の農業用途、堆肥被覆シート等の廃棄物処理用途等にも好適に使用できる。
【0005】
高い通気性を有し、熱収縮率が低く、熱がかかる2次加工に適した多孔質フィルムとして、ポリエチレン系樹脂60~30質量%、炭酸カルシウム等の無機充填剤40~70質量%を含む樹脂組成物をインフレーション法により製膜し、得られた未延伸フィルムをフィルムの流れ方向に延伸するポリエチレン系多孔質フィルムであって、前記ポリエチレン系樹脂として、MFRが3.0g/10分を超え10g/10分以下、密度が0.930~0.950g/cmのLLDPE100~40質量%、MFRが0.1g/10分を超え3.0g/10分以下であるLLDPE0~60質量%よりなるものを使用し、かつ、前記未延伸フィルムを製膜する際に、フロストラインの高さをダイス径の0.5~4.0倍に調整したポリエチレン系多孔質フィルムが知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-168207号公報
【特許文献2】特開2005-263862号公報
【特許文献3】特開2006-241276号公報
【特許文献4】特開2007-016064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献4には、異なるMFRを有する2種のLLDPEと炭酸カルシウムの具体的な組合せとして、炭酸カルシウムが、フィルム全体を100質量部とした場合には、50質量部以上の組合せが開示されている。
特許文献2及び3には、異なるMFRを有する2種のLLDPEと炭酸カルシウムの具体的な組合せとして、炭酸カルシウムが、フィルム全体を100質量部とした場合には、50質量部以上の組合せ、MFRが2.1g/分のLLDPE30重量部、MFRが8g/分のLLDPE30重量部、炭酸カルシウム40重量部の組合せ、及びMFRが2.1g/分のLLDPE27重量部、MFRが4g/分のLLDPE27重量部、炭酸カルシウム46重量部の組合せが開示されている。
【0008】
しかし、上記組合せからなるフィルムは、柔軟性が不十分であるため、筆記、印刷ができる包装材料としては不十分であった。
本発明は、筆記、印刷が可能であり、包装材料等に使用できる柔軟性のある樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、異なるMFRを有する2種類のLLDPEと炭酸カルシウムを特定範囲の量で混合した樹脂組成物をフィルムとすることにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、MFRが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)(以下本明細書中のMFRは、すべて前記した条件で測定しているので省略することがある。)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレン(以下本明細書中、「LLDPE(1)」ということがある。)を3~18質量部、MFRが3.00より大きく20.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)未満の範囲である直鎖状低密度ポリエチレン(以下本明細書中、「LLDPE(2)」ということがある。)を40~90質量部、及び炭酸カルシウムを7~42質量部を含む樹脂組成物からなるフィルムに関する。
MFRが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンが9~18質量部であるのが好ましい。
前記フィルムの流れ方向(以下、本明細書内で「MD」ということがある。)及び流れ方向に対して垂直方向(以下、本明細書内で「TD」ということがある。)の破断伸度が600%以上であり、MD及びTDの破断応力が14.0MPa以上であるのが、好ましい。
前記フィルムのMD及びTDの引張弾性率が、50.0~160.0MPaの範囲であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルムは、筆記、印刷等が可能であり、柔軟性を有するために包装材料等に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフィルムは、MFRが0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを3~18質量部、MFRが3.00より大きく20.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)未満の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを40~90質量部、及び炭酸カルシウム7~42質量部を含む樹脂組成物からなるフィルムである。
【0013】
前記LLDPE(1)及び前記LLDPE(2)は、密度が0.860~0.925g/cmの範囲にあり、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数4~8のα-オレフィンを微量(数%程度)、エチレンに共重合させたことで低密度化されたものであり、分子の線形性が極めて高いエチレン共重合体である。特に前記α-オレフィン成分として炭素数4又は炭素数6を含むものが好ましい。
【0014】
前記LLDPE(1)及び前記LLDPE(2)は、所定のMFRを満たす範囲であれば特に限定されず、チーグラー型チタン触媒、フィリップ型酸化クロム触媒、例えば周期律表第4族から選ばれる遷移金属とシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、有機アルミニウム化合物、及び前記メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでなるメタロセン系触媒を用いて、気相又は液相で重合して製造することができる。
【0015】
前記LLDPE(1)のMFRは、0.10~3.00g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)の範囲Aであるが、前記範囲Aの下限は、0.12g/分以上であることが好ましく、0.15g/分以上であることがより好ましく、0.18g/分以上、0.20g/分以上、0.22g/分以上、0.25g/分以上、0.28g/分以上、又は0.30g/分以上で、後者の下限以上とするほどより一層好ましい。また、前記範囲Aの上限は、2.80g/分以下であることが好ましく、2.50g/分以下であることがより好ましく、2.20g/分以下、2.00g/分以下、1.80g/分以下、1.50g/分以下、1.20g/分以下、1.00g/分以下で、後者の上限以下であるほどより一層好ましい。
【0016】
前記LLDPE(1)の含有量は、前記樹脂組成物中、3~18質量部の範囲Bであるが、前記範囲Bの下限は、4質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、9質量部以上がより一層好ましく、12質量部以上がさらに一層好ましい。また、前記範囲Bの上限は、17.5質量部以下が好ましく、17.0質量部以下がより好ましい。
【0017】
前記LLDPE(2)は、前記したとおり、どのような方法で製造されたものであってもよいが、中でもメタロセン系触媒を用いた液相重合で製造されたものが好ましい。
前記LLDPE(2)のMFRは、3.00より大きく20.0g/10分(JIS K 7210:1999に準じて、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定)未満の範囲Cであるが、前記範囲Cの下限は、3.30g/分以上であることが好ましく、3.70g/分以上であることがより好ましく、4.00g/分以上、4.30g/分以上、4.70g/分以上、5.00g/分以上、5.30g/分以上、又は5.70/分以上で、後者の下限以上であるほどより一層好ましい。また、前記範囲Cの上限は、19.0g/分以下であることが好ましく、18.0g/分以下であることがより好ましく、17.0g/分以下、16.0g/分以下、15.0g/分以下、12.0g/分以下、10.0g/分以下、8.00g/分以下、又は7.00g/以下で、後者の上限以下であるほどより一層好ましい。
【0018】
前記LLDPE(2)の含有量は、前記樹脂組成物中、40~90質量部の範囲Dであるが、前記範囲Dの下限は、41質量部以上であることが好ましく、42質量部以上であることがより好ましく、43質量部以上であることがより一層好ましい。また、前記範囲Dの上限は、85質量部以下が好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下、70質量部以下、60質量部以下で、後者の上限以下であるほどより一層好ましい。
【0019】
前記LLDPE(1)とLLDPE(2)は、それぞれ一種のLLDPEによって構成されていてもよいし、2種以上のLLDPEによって構成されていてもよい。2種以上のLLDPEによって構成される場合、そのMFRは、構成される各LLDPEのMFRの加重平均値で表す。
【0020】
前記炭酸カルシウムとは、貝殻、鶏卵の殻、石灰岩、白亜などの主成分である組成式CaCOで表されるカルシウムの炭酸塩であれば特に限定されない。より具体的には、石灰石を粉砕、分級して得られる重質炭酸カルシウム(天然炭酸カルシウム)、前記重質炭酸カルシウムと化学反応により得られる軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)が挙げられる。
【0021】
本発明においては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムのいずれも用いることができるが、表面処理をすることを考慮し、軽質炭酸カルシウムを好ましく用いることができる。
【0022】
前記炭酸カルシウムは、カルサイト結晶(三方晶系菱面体晶)、アラゴナイト結晶(直方晶系)、バテライト結晶(六方晶)等の結晶多形のうち、いずれも用いることができるが、中でもアラゴナイト結晶であることが好ましい。
【0023】
前記炭酸カルシウムは、表面処理された炭酸カルシウムであることが好ましい。ここで、表面処理炭酸カルシウムとは、炭酸カルシウムの表面を表面処理剤が覆う状態となっている炭酸カルシウム、又は少なくとも炭酸カルシウムの表面に表面処理剤が付着した状態となっている炭酸カルシウムを示す。
【0024】
炭酸カルシウムの表面処理剤として、具体的には、脂肪酸及びその誘導体、樹脂酸及びその誘導体、シリカ、有機ケイ素化合物、縮合リン酸及び縮合リン酸塩等が挙げられる。中でも、表面処理剤としては、脂肪酸の金属塩が好ましく、特に脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩が好ましく挙げられる。
【0025】
前記脂肪酸として、具体的には、炭素数が6~24の飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数が10~20の飽和又は不飽和脂肪酸等が挙げられる。前記脂肪酸として、具体的には、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの脂肪酸及びその金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
前記表面処理された炭酸カルシウムは、例えば、前記脂肪酸を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液中で加熱しながら、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を得、次に、炭酸カルシウムと水とのスラリーに、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を添加して攪拌し、さらに得られた炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス等の方法によって脱水し、箱型乾燥機等を用いて乾燥することによって製造することができる。
【0027】
表面処理された炭酸カルシウムを含む前記炭酸カルシウムのレーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)は、特に限定されないが、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上がより一層好ましい。また、累積50%粒子径(D50)の上限は10.0μm以下が好ましく、9.0μm以下がより好ましく、8.0μm以下がより一層好ましく、6.0μm以下が更に一層好ましい。
【0028】
前記樹脂組成物中に含まれる前記炭酸カルシウムの量は、7~42質量部の範囲Eであるが、前記範囲E下限は、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上で、後者の下限であるほど好ましい。また、前記範囲Eの上限は、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがより一層好ましい。
【0029】
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記LLDPE(1)、前記LLDPE(2)及び炭酸カルシウム以外の成分を含めることができる。そのような成分として、具体的には、酸化防止剤、耐候剤、顔料、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤、均一な延伸性を得るためにシリコンオイルやワックス等を配合することもできる。
【0030】
前記樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。具体的には、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等で前記樹脂組成物を構成する成分を混合した後、高混練タイプの2軸押出機、タンデム型混練機等でストランドカット、ホットカット、アンダーウォーターカットなどの方法で混練し、ペレット化する方法等が挙げられる。
【0031】
前記フィルム(延伸,未延伸ポリエチレンフィルムの両方を含む。以下同様)は、Tダイ法やインフレーション法等の常法のフィルム成形法により、前記樹脂組成物を溶融押出し、未延伸のフィルムとして成形させることができる。
【0032】
前記未延伸フィルムは、必要に応じて、ロール延伸法またはテンター延伸法等の公知の方法により、常温以上、樹脂の軟化点未満の温度範囲で、少なくとも一軸方向に延伸することができる。延伸は、一軸方向のみであってもよいが、得られる延伸ポリエチレンフィルムの強度を高くするためには、二軸方向に延伸することが好ましい。また、延伸倍率は、特に制限されることはないが、MDの延伸倍率1.1~3.0倍、TDの延伸倍率1.1~2.0倍であることが好ましい。また、延伸は一段延伸でも多段延伸でもよく、必要に応じて延伸後に熱処理を行ってもよい。
【0033】
前記フィルムは、23℃におけるMD及びTDの破断伸度が600%以上であり、23℃におけるMD及びTDの破断応力が14.0MPa以上であるのが好ましい。破断伸度が600%以下、破断応力が14.0MPa未満では、包装の一種である機械による帯封用のテープに用いた場合、テープが破断する場合があった。
【0034】
前記フィルムは、23℃におけるMD及びTDの引張弾性率が、50.0~160.0MPaの範囲であるのが好ましい。前記引張弾性率が50.0MPa未満では、フィルム成形性が悪く、160.0MPaより大きい場合には、フィルムの柔軟性に欠け、2次加工の成形性に問題があった。
【0035】
前記フィルムの厚さは、特に限定されないが、2~200μmの範囲が好ましく、10~180μmの範囲、50~160μmの範囲が好ましく、60~140μmの範囲がより好ましく、80~130μmの範囲が特に好ましい。
【0036】
前記フィルムを全面又は片面に用いて袋体を形成することができる。具体的には、前記フィルムの端部を結合して袋形態とすることができる。フィルム端等の結合には、ヒートシール方式、超音波エンボス方式等の方式をとりうるが、中でも融着方式を好ましく適用することができる。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定
されるものではない。
【実施例0038】
前記マスターバッチ樹脂1を10質量部、LLDPE(3)(MFR:5.00g/10分)90質量部を押出温度210℃でフィルム厚さが90μmとなるようにTダイで押出して本発明のフィルムを作製した。
【0039】
[実施例2~6、比較例1~3]
表1に示す割合で前記マスターバッチ樹脂1とLLDPE(3)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、フィルムを得た。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例及び比較例で得られたフィルムにつき、以下の方法で評価を行った。
[引張弾性率(MPa)]
各実施例及び各比較例で得られたフィルムを、TD15mm及びMD100mm、並びにTD100mm及びMD15mmに切断し、チャック間距離50mmの装置にセットした。引張速度300mm/分、23℃×相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、荷重-伸び曲線を得た。得られた荷重-伸び曲線の立ち上がり部(3%伸長時)の接線から引張弾性率を求めた。
【0042】
[破断伸度及び破断応力]
破断伸度と破断応力は、引張試験機を用いて測定した。各実施例及び各比較例で得られたフィルムを、TD15mm及びMD100mm、並びにTD100mm及びMD15mmに切断し、間隔を50mmにセットしたチャックに挟んで固定した。100mm/分の速度で引張り、試験機に装着されたロードセルで荷重を測定した。荷伸曲線の破断時の荷重を読取り、引張前のサンプル断面積で割って破断応力(MPa)を計算した。また、破断伸度は、初期のチャック間隔(L)と破断時のチャック間隔(L)から、下記式を用いて算出し、破断伸度(%)とした。
破断伸度(%)=(L-L)/L×100
【0043】
評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフィルムは、包装袋、帯封用のテープ等として有用である。