(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158894
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】試料調製カートリッジ及び自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20241031BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N1/10 B
G01N35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074514
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA04
2G052CA18
2G052DA22
2G052EA03
2G052EA08
2G052EA17
2G052GA24
2G058BA07
2G058CB04
2G058CD04
2G058CE08
2G058GA11
(57)【要約】
【課題】 試料調製領域から直接調製済み試料を分析部に供給することができる試料調製カートリッジ及び自動分析装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に従う試料調製カートリッジは、所定の物質を補足する第1捕捉部と、第1捕捉部に間隔を空けて配置した、夾雑物を補足する第2捕捉部と、第1捕捉部の一面側に設けた第1空間と、第2捕捉部の一面側に設けた第2空間と、第2捕捉部の他面側に設けた流路と、を容器内に備え、第2空間は、第1空間と並列に設けてあると共に、第1捕捉部と第2捕捉部との間の第3空間に連通している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物質を捕捉する第1捕捉部と、
第1捕捉部に間隔を空けて配置した、夾雑物を捕捉する第2捕捉部と、
第1捕捉部の一面側に設けた第1空間と、
第2捕捉部の一面側に設けた第2空間と、
第2捕捉部の他面側に設けた流入路と、を容器内に備え、
第2空間は、第1空間と並列に設けてあると共に、第1捕捉部と第2捕捉部との間の第3空間に連通している、試料調製カートリッジ。
【請求項2】
前記第1捕捉部は固相抽出材であることを特徴とする、請求項1に記載の試料調製カートリッジ。
【請求項3】
所定の物質を捕捉する第2捕捉部と、
夾雑物を捕捉する第1捕捉部と、
第1捕捉部の一面側に設けた第1空間と、
第2捕捉部の一面側に設けた第2空間と、
第1捕捉部と第2捕捉部の間に設けた第3空間と、
第2捕捉部の他面側に設けた流出路と、を容器内に備え、
第2空間は、第1空間と並列に設けてあると共に、第3空間に連通している、試料調製カートリッジ。
【請求項4】
前記第2捕捉部は固相抽出材であることを特徴とする、請求項3に記載の試料調製カートリッジ。
【請求項5】
前記固相抽出材に試料を通過させ、所定の物質を前記固相抽出材に捕捉させ、前記固相抽出材を通過した試料の残部を、自動分析装置の分析部へ分注する、請求項2又は4に記載の試料調製カートリッジ。
【請求項6】
前記固相抽出材に試料を通過させ、所定の物質を前記固相抽出材に捕捉させ、前記固相抽出材を通過した試料の残部を、自動分析装置の分析部へ分注し、
さらに前記所定の物質を捕捉させた前記固相抽出材に、前記所定の物質を溶出することができる溶液を通過させ、前記固相抽出材に捉えられた成分を溶出した溶液を抽出し、その溶出液を自動分析装置の分析部へ分注する、請求項2又は4に記載の試料調製カートリッジ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の試料調製カートリッジを用いて分析する自動分析装置であって、
分析部を備え、
前記分析部は質量分析部と、試料調製領域と、を備え、
前記試料調製領域は、
試料供給部と、反応槽と、試薬庫と、試料調製カートリッジ供給部と、試料調製カートリッジ設置機構と、廃棄部と、を備え、
前記試料調製カートリッジ供給部は、前記試料調製カートリッジを搬送する機構及び前記反応槽内の試料を前記試料調製カートリッジへ送る試料吸引機構を有し、
前記試料調製カートリッジ設置機構は、前記試料調製カートリッジを前記質量分析部又は前記廃棄部へ移動させるものである、自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析用の試料調製カートリッジに関するもので、特にミネラル成分やタンパク質成分を含む試料や血液試料の調製に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の質量分析装置は、分析用に調製した試料を、試料調製領域とは別に設けられた試料保存領域で保存する構成である。このような装置では、調製試料を保存する容器の洗浄機構、もしくは使い捨ての場合は容器の提供および廃液機能が必要となり、装置の小型化が難しいという課題がある。
また夾雑物等の所定の物質を捕捉する捕捉部が2以上ある場合、従来の装置では、各捕捉部が1つの流路上に配置された構成である。1つの流路上に捕捉部が配置されているため、第1の捕捉部で捕捉した夾雑物が、第1の捕捉部を通り抜けると、通り抜けた夾雑物が次の第2の捕捉部に送られる虞がある。さらに第1の捕捉部で目詰まりがあると、次の第2の捕捉部へ十分に送液できないため、第2の捕捉部が十分に機能しない虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の問題点を解決する複数の捕捉部を備えた試料調製カートリッジ及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態に従う試料調製カートリッジは、所定の物質を補足する第1捕捉部と、第1捕捉部に間隔を空けて配置した、夾雑物を補足する第2捕捉部と、第1捕捉部の一面側に設けた第1空間と、第2捕捉部の一面側に設けた第2空間と、第2捕捉部の他面側に設けた流入路と、を容器内に備え、第2空間は、第1空間と並列に設けてあると共に、第1空間と第2空間は、第1捕捉部と第2捕捉部との間の第3空間に連通している、試料調製カートリッジである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の試料調製カートリッジによれば、カートリッジ容器内に試料を調製する試料調製領域と、調製済み試料を保持する試料保持領域を保有させることができるため、調製済み試料を、試料調製カートリッジから直接分析部に分注することができる。
また捕捉部はそれぞれ別の流路上に配置されているため、夾雑物等の所定の物質が次の捕捉部に到達する可能性を低減することができる。さらに試料の分注と固相抽出材の平衡化液を同時に供給することが可能となるため、試料調製時間(TAT)を短縮することができる。
【0006】
さらに、本発明の試料調製カートリッジを用いた自動分析装置によれば、試料調製カートリッジ内で保持された調製済み試料を直接分析部へ分注することができるため、装置内に調製試料保存領域及び調製試料保存容器を別途設ける必要がなくなり、分析装置の小型化が可能となる。また調製試料保存領域が不要となるため、測定コストを低減することができる。さらに調製試料保存容器が不要となるため、容器を洗浄する工程、または保存容器の供給及び廃棄機構が不要となり、測定コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】試料吸引形式の試料調製カートリッジの断面図である。
【
図2】第1の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法を表したスキーム図であり、(a)~(d)は、各々試料調製カートリッジの断面図である。
【
図3】第1の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法のフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法を表したスキーム図であり、(a)~(g)は、各々試料調製カートリッジの断面図である。
【
図5】第2の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法のフローチャートである。
【
図6】第3実施形態にかかる試料供給形式の試料調製カートリッジの断面図である。
【
図7】第3の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法を表したスキーム図であり、(a)~(e)は各々試料調製カートリッジの断面図である。
【
図8】第3の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法のフローチャートである。
【
図9】第4の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法を表したスキーム図であり、(a)~(g)は各々試料調製カートリッジの断面図である。
【
図10】第4の実施形態での試料調製カートリッジの使用方法のフローチャートである。
【
図11】試料調製カートリッジを用いた自動分析装置のブロック図である。
【
図12】自動分析装置の分析部の構造を示した斜視図である。
【
図13】試料吸引形式の試料調製カートリッジを用いた自動分析装置のブロック図である。
【
図14】試料吸引形式の試料調製カートリッジを用いた自動分析装置の分析手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。複数の実施形態に共通している構成については、同一の符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、各図は、それぞれの実施形態についての理解を促すための模式図である。したがって、形状や寸法、比などは、実際と異なる箇所がある。また、各図と以下の説明と公知の技術を参酌することによって、適宜設計変更することが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の試料調製カートリッジの一例について
図1を用いて説明する。
図1は、試料吸引形式の試料調製カートリッジ1の断面図である。試料吸引形式の試料調製カートリッジ1は、カートリッジ容器内に、第1空間11と、第2空間12と、第3空間13と、第1捕捉部14と、第2捕捉部15と、流入路16と、を備える。第1空間11は第1捕捉部14の一面側に、第2空間12は第2捕捉部15の一面側に、それぞれ設けられている。また第2捕捉部15の他面側には、流路16が設けられている。第2空間12は、第1空間11と並列に設けられていると共に、第1空間11と第2空間12は、第1捕捉部14と第2捕捉部15との間の第3空間13に連通している。
【0010】
第1捕捉部14及び第2捕捉部15は、夾雑物等を取り除くためのフィルターでもよいし、特定の成分を特異的に捕捉することができる固相抽出材でもよい。
【0011】
試料吸引形式の試料調製カートリッジ1は、例えば、流入路16内に逆止弁を設け、吸引した試料を流出しない機構を設けてもよい。流出を防ぐ手段は、流入路16内の試料吸引部を塞ぐ等の手段を用いてもよい。
【0012】
試料調製カートリッジのカートリッジに用いる容器の材料は、例えば、化学的に安定している、ポリスチレン等がある。
捕捉部に用いるフィルターの材質は、例えば、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリエステル等がある。フィルターのメッシュの孔径は約0.5~2.0μmである。
捕捉部に用いる固相抽出材は、例えば、ジルコニア結合シリカゲル、ポリスチレンジビニルベンゼン等の合成ポリマー、等がある。
次に、第1の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジの使用方法の一例を、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジ1を使用するときの手順の一例を示すスキーム図であり、(a)~(d)は、各々試料調製カートリッジの断面図である。また
図3は、第1の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジを使用するときの手順の一例を示すフローチャートである。
【0013】
第1空間11を閉鎖し、第2空間12を陰圧状態にすることで試料を吸引し(
図2(b)及び
図3(S1))、流入路16を通して第2捕捉部15に送液する。試料中の夾雑物111は、第2捕捉部15で捕捉され、試料中から除去される(
図2(b)及び
図3(S2))。第2捕捉部15はフィルター又は特定の成分と特異的に結合することが可能な固相抽出材を用いる。ここでは、不要な介在物を固相抽出材に補足させて吸着除去し、固相抽出カートリッジを通過した溶液を測定用試料溶液としている。また詳しくは後述するが、試料は、カートリッジに吸引される前に、予め試薬が添加されている。試薬は、試料中の夾雑物111と特異的に結合する成分が含まれる。
【0014】
試料に試薬を添加すると、試薬中の成分が試料中の夾雑物111と反応し、特異的に結合する。試薬中の成分と結合した夾雑物111は、夾雑物111単体と比較して体積が大きくなる。体積が大きくなるため、試薬の成分と結合した夾雑物111は、容易にフィルターで捕捉され、試料から夾雑物111が除去することができる。試料中の夾雑物111は、例えばリン脂質、高分子タンパク質等がある。
【0015】
例えば試料中の夾雑物111がリン脂質の場合、試薬として例えば、チタニア又はジルコニア粒子等を用いることができる。チタニア又はジルコニア粒子と結合したリン脂質は、リン脂質単体と比較して体積が大きくなり、容易にフィルターに捕捉されるため、夾雑物111であるリン脂質を試料中から除去することができる。
【0016】
例えば試料中の夾雑物111が高分子タンパク質である場合、試薬として例えばメタノール等を用いることができる。メタノールと高分子タンパク質が反応すると、タンパク質沈殿が発生する。発生したタンパク質沈殿は高タンパク質と比較して体積が大きくなり、容易にフィルターに捕捉されるため、夾雑物111である高分子タンパク質を試料中から除去することができる。
【0017】
第2捕捉部15で夾雑物111を除去した後、夾雑物除去済み試料113を第2空間12へ送液し、第2空間12内で夾雑物除去済み試料113を保持する(
図2(b))。次に、試料吸引形式の試料調製カートリッジ1の上面を閉鎖し、第2空間12を陽圧に、第1空間11を陰圧にして、第2空間12内の夾雑物除去済み試料113を、第1捕捉部14を介して第1空間11へ送液する。第1捕捉部14では、夾雑物除去済み試料113中の所定の物質112が捕捉される(
図2(b)、(c)及び
図3(S3))。陽圧の変化のみで第2空間12内の試料を第1空間11へ送液できるのであれば、第2空間12を陽圧にするのみでも良い。第1空間11で保持された試料の残部114を吸引し、残部114を自動分析装置の分析部80へ分注する(
図2(d)及び
図3(S4))。
【0018】
この第1の実施形態によれば、第1捕捉部14及び第2捕捉部15に通過させて調製した調製済み試料を、試料調製カートリッジ1内に保持することができるため、調製済み試料を試料調製カートリッジ1から直接分析部80に分注することができる。また第1捕捉部14と第2捕捉部15の流路はそれぞれ異なるため、第2捕捉部15で夾雑物111が通り抜けたら夾雑物111が第1補足部14に達すると考えられる。これにより夾雑物111が通り抜けを防止できる。一方、第1補足部14に夾雑物除去済み試料113を送液する時に、夾雑物111が第1補足部14に送られる可能性を低減することできる。次の第1捕捉部14に夾雑物111が送られる可能性を低減することができる。さらに、第2捕捉部15で夾雑物111等による目詰まりが発生しても第1捕捉部14での送液には影響しないという作用効果が得られる。
【0019】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジの使用方法の一例を、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、第2の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジ1を使用するときの手順の一例を示すスキーム図であり、(a)~(g)は各々試料調製カートリッジの断面図である。また
図5は、第2の実施形態の試料吸引形式の試料調製カートリッジを使用するときの手順の一例を示すフローチャートである。第2の実施形態で使用する試料調製カートリッジは、
図1に示す試料吸引形式の試料調製カートリッジ1で、さらに第1捕捉部14に固相抽出材を用いたものである。
【0020】
第1の実施形態で試料の残部114を自動分析装置の分析部へ分注した後、第2空間12の上面から、第1捕捉部14に捕捉された所定の物質112を溶出する溶液115を送液する(
図4(e)及び
図5(S5))。その後、上述の同様の圧力の変化による方法で、第2空間12内の溶液を、第1捕捉部14へ送液し、第1捕捉部14で捕捉された所定の物質112を溶出する。さらに第2空間12を陽圧に、第1空間11を陰圧にして、所定の物質112を溶出した溶出液115を第1空間11に送液し、その溶出液を第1空間11内に保持する(
図4(f))。陽圧の変化のみで第2空間12内の試料を第1空間11へ送液できるのであれば、第2空間12を陽圧にするのみでも良い。第1空間11内に保持された溶出液を吸引し、自動分析装置の分析部80へ分注する(
図4(g)及び
図5(S5))。
【0021】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、1の試料から2種の分析対象物質を自動分析装置の分析部へ分注することができる。
【0022】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の試薬調製カートリッジの一例について
図6を用いて説明する。
図6は、試料供給形式の試料調製カートリッジ2の断面図である。試料供給形式の試料調製カートリッジ2は、カートリッジ容器内に、第1空間11と、第2空間12と、第3空間と、第1捕捉部14と、第2捕捉部15と、試料供給部21と、流出路22と、を備える。第1空間11は第1捕捉部14の一面側に、第2空間12は第2捕捉部15の一面側に、流出路22は、第2捕捉部15の他面側に、それぞれ設けられている。また第1捕捉部14と第2捕捉部15との間に、第3空間13が、設けられている。第2空間12は、第1空間11と並列に設けられていると共に、第1空間11と第2空間12は第3空間13に連通している。
【0023】
第1捕捉部14及び第2捕捉部15は、夾雑物111を取り除くためのフィルターでもよいし、特定の成分を特異的に捕捉することができる固相抽出材でもよい。
【0024】
第1捕捉部14の下部に逆止弁を設け、第2捕捉部15に到達した試料が第1捕捉部14に逆流することを防止してもよい。逆止弁を用いることで、第1捕捉部14の開口部を閉鎖する手段を省くことが可能となる。
【0025】
次に、第3の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジの使用方法の一例を、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、第3の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジ2を使用するときの手順の一例を示すスキーム図であり、(a)~(e)は各々試料調製カートリッジの断面図である。また
図8は、第3の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジ2を使用するときの手順の一例を示すフローチャートである。
【0026】
まず試料供給部21から試料を供給し、第1空間11へ送液し、保持する(
図7(b)及び
図8(S1))。次に第1空間11に夾雑物111と結合する試薬を分注する(
図9(c)及び(d))。分注する試薬が2以上ある場合、試薬は同時に分注してもよいし、それぞれ分けて分注してもよい。
【0027】
次に、第2捕捉部15と連通する流出路22の開口部を閉鎖し、第1空間11を陽圧にして、第1空間11内に保持された試料を、第1捕捉部14を介して第3空間13へ送液し、第3空間13内で試料を保持する(
図7(e)及び
図8(S2))。試料中の夾雑物111は、第1捕捉部14に介した際に、第1捕捉部14で捕捉され、試料中から除去される(
図7(e)及び
図8(S3))。さらに第1空間を閉鎖した状態で第1空間11を陽圧にし、第3空間13内の夾雑物除去済み試料113を第2捕捉部15へ送液する。第2捕捉部15では、夾雑物除去済み試料113中の所定の物質112が捕捉される。試料の残部114は流出路22を通り、自動分析装置の分析部80へ分注する(
図7(e)及び
図8(S4))。
【0028】
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、調製済み試料を試料調製カートリッジから直接自動分析部の分析部80に分注することができる。また第1捕捉部14で夾雑物111が通り抜けても第1捕捉部14の夾雑物111に圧力が加えられないため、次の第2捕捉部15に夾雑物111が送られる可能性を低減することができる。さらに、第1捕捉部14の目詰まりが発生しても第2捕捉部15での送液には影響しないという作用効果がある。
【0029】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジの使用方法の一例を、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、第4の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジ2を使用するときの手順の一例を示すスキーム図であり、(a)~(g)は各々試料調製カートリッジの断面図である。また
図10は、第4の実施形態の試料供給形式の試料調製カートリッジ2を使用するときの手順の一例を示すフローチャートである。第4の実施形態で使用する試料調製カートリッジは、
図6に示す試料供給形式の試料調製カートリッジ2で、さらに第2捕捉部15に固相抽出材を用いたものである。
【0030】
第3の実施形態で試料の残部114を自動分析装置の分析部80へ分注した後、第2空間12の上面から、第2捕捉部15に捕捉された、所定の物質112を溶出する溶液115を、第2空間を介して送液し、第2空間12内で保持する(
図9(f)及び
図10(S5))。その後、上述の同様の圧力の変化による方法で、第2空間12内の溶液115を、第2捕捉部15へ送液し、第2捕捉部15で捕捉された所定の物質112を溶出し、溶出液を得る。さらに第2空間12を陽圧にして、その溶出液を、流出路22を介して自動分析装置の分析部80へ分注する。
【0031】
この第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、1試料から2種の分析対象物質を自動分析装置の分析部へ分注することができる。
【0032】
(第5の実施形態)
第5の実施形態として、試料調製カートリッジを用いた自動分析装置の一例について、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、試料調製カートリッジを用いた自動分析装置200の構成を示したブロック図を示す。この自動分析装置200は、被検試料やキャリブレータの測定を行う分析部80と、分析部80の制御を行う分析制御部70と、分析部80から出力された分析信号を処理して分析データを算出する分析データ処理部30と、分析データ処理部30からの分析データを出力する出力部40と、分析条件や各種コマンド信号を入力する操作部50と、上述したこれらのユニットを統括して制御するシステム制御部60と、を備える。
【0033】
分析制御部70は、詳しくは後述するが、分析部80に備えている試薬庫302及び303、ディスクサンプラ306の夫々回動と、反応ディスク305の回転と、分注アーム310、第1試薬分注アーム308、第2試薬分注アーム309及び攪拌ユニット311の夫々回動及び上下動と、洗浄ユニット312の上下動等と、を行う機構及び各機構の制御部と、を備える。また分析制御部70は、分注プローブ316から被検試料及びキャリブレータを吸引及び吐出させるための分注ポンプと、第1試薬分注プローブ314から第1試薬を吸引及び吐出させるための第1試薬ポンプと、第2試薬分注プローブ315から第2試薬を吸引及び吐出させるための第2試薬ポンプと、洗浄ユニット312から反応管304内洗浄用の洗浄液を供給及び吸引させるための洗浄ポンプ及び反応管304内を乾燥させるための乾燥ポンプなどの各種ポンプ及び各種ポンプの制御部と、を備える。さらに、分析制御部70は、攪拌ユニット312を攪拌駆動する機構及び制御部を備える。
【0034】
図12は、自動分析装置200の分析部80の構造を示した斜視図である。
【0035】
分析部80は、試薬庫302及び試薬庫303と、反応管304を配置した反応ディスク305と、被検試料やキャリブレータを納める被検試料容器317をセットするディスクサンプラ306と、を備える。さらに、試薬庫302及び試薬庫303には、試薬ボトルを収納した試薬ラックが収納されている。試薬ボトルには、被検試料や、被検試料のキャリブレータに対して選択的に反応する第1試薬、第1試薬と対の第2試薬などの試薬が保管されている。反応管304は、反応ディスク305上に、円周上に複数配置されている。
さらに分析部80は、被検試料分注位置に停止した反応管304に分注する分注プローブ316と、第1試薬分注プローブ314、第2試薬分注プローブ315、及び分注プローブ316を回動及び上下動可能に保持する第1試薬分注アーム308と、第2試薬分注アーム309及び分注アーム310と、を備える。また分析部80は、反応管304内を洗浄及び乾燥する洗浄ユニット312を備える。また分析部80は、測光ユニット313を備える。
【0036】
試薬庫302、試薬庫303及びディスクサンプラ306は1サイクル毎に夫々回動し、反応ディスク305は回転して分析制御部70により制御された位置に停止する。また分析部80は、1サイクル毎に、試薬庫302及び試薬庫303の第1試薬吸引位置及び第2試薬吸引位置に備えられている試薬ボトル307から、第1試薬及び第2試薬を吸引する。各試薬を吸引後、第1試薬分注位置及び第2試薬分注位置に停止した反応管304に分注する第1試薬分注プローブ314及び第2試薬分注プローブ315を用いて、ディスクサンプラ306の分析制御部70に制御された位置に備えられている被検試料容器317内の被検試料あるいはキャリブレータを吸引する。
さらに、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応管304内における混合液を攪拌する攪拌ユニット312と、これら混合液を含む反応管304を測光位置から測定する測光ユニット313と、洗浄および乾燥位置に停止した反応管304内の測定を終えた混合液を吸引する。撹拌位置に停止した反応管304内における混合液は、被検試料及び第1試薬の混合液又はキャリブレータ及び第1試薬の混合液又は被検試料、第1試薬及び第2試薬の混合液又はキャリブレータ、第1試薬及び第2試薬の混合液などである。測光ユニット313は、回転移動する反応管304に測光位置から光を照射して混合液の吸光度変化を測定し、その測定から得られた被検試料あるいはキャリブレータの分析信号あるいはキャリブレーション信号を分析データ処理部30に出力する。混合液の測定を終了して洗浄及び乾燥された反応管304は、再び測定に使用される。
【0037】
試料吸引形式の試薬調製カートリッジを用いた自動分析装置の使用方法の一例について、
図13及び
図14を用いて説明する。なお第5の実施形態では、分析部は質量分析装置を想定しているが、その他の分析装置でも良い。
【0038】
図13は、試料吸引形式の試料調製カートリッジを用いた自動分析装置の分析部のブロック図である。分析部80は、質量分析部401と、試料調製領域402と、を備える。さらに試料調製領域402は、試料供給部403と、反応槽404と、第1試薬庫405及び第2試薬庫406と、試料調製カートリッジ供給部407と、試料調製カートリッジ設置領域408と、廃棄部409と、を備える。試料調製カートリッジ供給部407は、試料調製カートリッジを搬送する機構及び反応槽内の試料を試料調製カートリッジへ送る試料吸引機構410を有し、試料調製カートリッジ設置領域408は、試料を質量分析部401へ送液する試料吸引機構411及び試料調製カートリッジを廃棄部へ搬送する機構412を有する。
【0039】
図14は、試料吸引形式の試料調製カートリッジを用いた自動分析装置の分析手順のフローチャートである。
【0040】
分析装置は、試料吸引位置に到達した試料を分注プローブ316にて反応槽404の反応管304に分注する(
図14(S1))。反応管304は反応槽404の機能により試薬分注位置414に到達し、試薬中の夾雑物111と結合する試薬が反応管に分注される。反応管304内で試料と試薬が混合され、夾雑物111と試薬が反応し、夾雑物111と試薬の成分が結合する(
図14(S2))。試薬が2以上ある場合、試薬を一度に試薬へ分注してもよいし、別の分注プローブを用いて、それぞれ分けて分注してもよい。
【0041】
試料調製カートリッジ搬送機構410は、カートリッジ供給部407から、試料調製カートリッジ1を取得し、反応槽404の調製試料吸引位置413へ試料調製カートリッジを搬送する。試料調製カートリッジ搬送機構410は反応槽404の反応管内の試料及び試薬の混合液を、試料調製カートリッジを介して吸引し、試料調製カートリッジ内に混合液を分注する(
図14(S3))。試料調製カートリッジ搬送機構410は混合液を内包した試料調製カートリッジを試料調製カートリッジ設置領域408の試料調製カートリッジ設置位置に搬送し、設置する。試料調製カートリッジ設置領域408は、試料調製カートリッジを調製試料分注位置へさらに搬送する(
図14(S4))。試料調製は、上述の調製試料分注位置へ搬送の工程で行い、完了させる。試料調製後、分析装置は、調製試料分注機構411を用いて、調製した試料を分析部に1回以上分注する(
図14(S5))。その後、使用済みとなった試料調製カートリッジは、試料調製カートリッジを移動させる機構412を介して廃棄部409へ搬送し、廃棄させる(
図14(S6))。
【0042】
この第5の実施形態によれば、試料調製カートリッジを用いた自動分析装置は、試料調製カートリッジ内で保持された調製済み試料を直接分析部へ分注することができるため、装置内に調製試料保存領域及び調製試料保存容器を別途設ける必要がなくなり、質量分析装置の小型化が可能となる。また調製試料保存領域が不要となるため、測定コストが低減することができる。さらに調製試料保存容器が不要となるため、容器を洗浄する工程、または保存容器の供給及び廃棄機構が不要となり、測定コストが低減することが可能となる。
【0043】
〈実施例〉
実施例1 試料吸引形式の試料調製カートリッジでの試料調製方法
(試料)
実施例1の試料として、試料中のNa、K、Mg等のミネラル成分、Cl等の成分及びタンパク質を含む試料を用意する。また試料は予め分析部80で試薬を分注している。
試料中の夾雑物111は、リン脂質等又は高分子タンパク質である。
試薬は、試料中の夾雑物111と結合する溶液であり、リン脂質と結合する試薬として、チタニア粒子やジルコニア粒子を含む溶液、高分子タンパク質と結合する試薬として、トリクロロ酢酸又はメタノールを用いる。リン脂質と結合する試薬と高分子タンパク質を結合する試薬は、両方を一度に試薬へ分注してもよいし、別々に分けて分注してもよい。
【0044】
(使用する試料調製カートリッジ)
試料調製カートリッジは、試料吸引形式のカートリッジ1を用いる。また第1捕捉部14はタンパク質を捕捉する固相抽出材、第2捕捉部15はフィルターである試料調製カートリッジを用いる。
【0045】
(試料調製カートリッジを用いた試料調製方法)
実施例1の試料を試料調製カートリッジ1の流入路16から吸引し、第2捕捉部15へ送液する。第2捕捉部15で試料中の夾雑物111捕捉し、試料中から夾雑物111を除去する。さらに夾雑物除去済み試料113を第2空間12へ送液し、第2空間12内で保持する。夾雑物111がリン脂質である場合、リン脂質は試薬中のチタニア粒子又はジルコニア粒子と結合し、第2捕捉部15のフィルターにより除去される。夾雑物111が高分子タンパク質である場合、高分子タンパク質は試薬中のメタノールと反応し、タンパク質沈殿を発生させ、第2捕捉部15のフィルターにより除去される。
【0046】
次に第2空間12を陽圧及び第1空間11を陰圧にし、第2空間12内の夾雑物除去済み試料113を、第1捕捉部14を介して第1空間11へ送液し、第1空間11内に保持する。なお陽圧の変化のみで第2空間12内の試料を第1空間11へ送液できるのであれば、第2空間12を陽圧にするのみでもよい。
【0047】
第1捕捉部14の固相抽出材で試料中のタンパク質が捕捉され、第1空間11内に保持された試料の残部114は、試料から夾雑物111及びタンパク質が除去された状態となった。つまり第1空間11内の試料の残部114は、Na、K、Mg等のミネラル成分及びCl等の分析に適した状態となる。自動分析装置の調製試料分注機構が残部114を吸引し、自動分析装置の分析部80へ分注する。
【0048】
第2空間12へ、溶出用溶液115を分注する。溶出用溶液115は、第1捕捉部14の固相抽出材で捕捉されたタンパク質成分を溶出する溶液、例えばメタノール等である。第2空間12を陽圧に及び第1空間11を陰圧にして、溶出用溶液115を第1捕捉部14へ送液する。なお陽圧の変化のみで第2空間12の試料を第1空間11へ送液できるのであれば、第2空間12を陽圧にするのみでもよい。溶出用溶液115が第1捕捉部14の固相抽出材を通過し、固相抽出材が捕捉したタンパク質成分が溶出された。その溶出液が第1空間11へ送液され、第1空間11に保持された。自動分析装置の試料調製分注機構は第1空間11内の溶出液を吸引し、自動分析装置の分析部80へ分注する。
【0049】
上述のように、1つの試料調製カートリッジで、Na、K、Mg等のミネラル成分及びCl等の測定に適した試料及びタンパク質成分の測定に適した試料を質量分析装置に提供することが可能となる。なお、固相抽出材が捕捉する成分をミネラル成分にして、1回目の測定がタンパク質に適した試料に調製してもよい。
【0050】
実施例2 試料供給形式の試料調製カートリッジでの試料調製方法
(試料)
実施例2
実施例2の試料として、血液を用意する。血液が全血の場合は、血液試料に溶出用溶液115を予め分注してもよい。
【0051】
試料中の夾雑物111は、実施例1と同様に、リン脂質等又は高分子タンパク質であり、試薬も実施例1と同様のものを使用する。リン脂質と結合する試薬と高分子タンパク質を結合する試薬は、両方を一度に試薬へ分注してもよいし、別々に分注してもよい。
【0052】
(使用する試料調製カートリッジ)
試料調製カートリッジは、試料供給形式のカートリッジ2を用いる。また第1捕捉部14はタンパク質を捕捉する固相抽出材、第2捕捉部15はフィルターであるカートリッジを用いる。また第1捕捉部14に固相抽出材を用いる場合は、試料分注時に第1捕捉部14へ固相抽出材のコンディショニング及び平衡化するための溶液を予め分注する。
【0053】
(試料調製カートリッジを用いた分析)
試料供給形式の試料調製カートリッジ2の第1捕捉部14を介して、第1空間1へ試料を分注する。試料と共に濃度が既知である標準物も分注してもよい。標準物とは、測定対象物質の相対測定に用いる溶液である。さらに第1捕捉部14へ固相抽出材のコンディショニング及び平衡化するための溶液を分注する。さらに第1空間11に、リン脂質と結合して捕捉するための試薬として、チタニア粒子を含む溶液を、高分子タンパク質と反応してタンパク質沈殿を生成するための試薬として、メタノール溶液を分注する。
第2捕捉部15と連通する流路の開口部を閉鎖し、第1空間11を陽圧にする。第1空間11内の試料は、第1捕捉部14を介して、第3空間13へ送液された。試料中の夾雑物111が第1捕捉部14で捕捉され、試料中から夾雑物111が除去された。さらに第3空間13内の夾雑物除去済み試料113は、さらに第2捕捉部15を通過し、第2捕捉部15の固相抽出材で夾雑物除去済み試料113中のタンパク質が捕捉された。
【0054】
第2捕捉部15を通過した試料の残部114は、分析部80へ分注される。なお残部114は、試料調製カートリッジ2から直接自動分析装置の分析部80に供給してもよいし、調製試料を保持する調製空間を別途設け、調製空間へ残部114を供給し、分析部80の調製試料分注機構により質量分析装置に残部114を供給してもよい。
【0055】
次に、第2空間12へ溶出用溶液15を分注する。溶出用溶液15は、第2捕捉部15の固相抽出材に捕捉されたタンパク質成分を溶出する溶液、例えばメタノール等である。第1空間11及び第3空間13の開口部を閉鎖した状態で、第2捕捉部15に圧力を加える。これにより、溶出用溶液15が第2捕捉部15を通過し、固相抽出材が捕捉したタンパク質成分が溶出した溶液を得る。この後、その溶出液を自動分析装置の分析部80に分注してもよい。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や 要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…試料吸引形式の試薬調製カートリッジ、2…試料供給形式の試薬調製カートリッジ、11…第1空間、12…第2空間、13…第3空間、14…第1捕捉部、14…第2捕捉部、80…分析部、200…自動分析装置